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蛋白質核酸酵素:成長円錐の情報伝達系
成長円錐の情報伝達系 五十嵐道弘 成長円錐は,発 生初期の神経細胞の突起の先端に形成される特殊構造で,突 起の成長と Database Center for Life Science Online Service 成長経路の選択を担っている。神経突起の成長を促進あるいは抑制する種々の因子の存在 が最近の研究で明らかになってきているが,そ れらは成長円錐の情報伝達系を介 して作用 するはずである。しかし,成 長円錐における情報伝達の詳細はほとんどわかっていない。本 稿では,高 等脊椎動物の成長円錐に関する最近の知見を基に,断 片的ながら成長円錐の情 報伝達を概観する。今回は伝達物質,チ ロシンキナーゼ,GAP-43,神 経突起成長の抑 制分子に力点をおいた。 【成 長 円 錐 】【GAP-43】 【チ ロ シ ン キナ ー ゼ 】【 突 起成 長 の抑 制因子 】 は じめ に 脳 機 能 の 解 明 は 人 類 の 科 学 に お け る究 極 の 長 円錐 は,神 経 結 合 の 法 則 性 を理 解 す る キーで あ り,脳 目 標 の ひ とつ で あ る 。 そ の複 雑 な 機 能 の 基 盤 は神 経 結 機 能 を理 解 す る一 里 塚 で あ る 。 合 に あ り,こ の 回 路 網 が 脳 の 機 能 を生 み 出 す 。 きわ め 神 経 結 合 が で き あ が る た め に は,成 長 円 錐 が 正 しい て 多 数 の 神 経 細 胞 を 有 す る脳 内 の 神 経 結 合 が,非 常 に 方 向 性 を認 識 し て そ の 方 向 に 運 動 し,標 的 を見 い だ し 正 確 に形 成 さ れ る 事 実 に は驚 嘆 せ ざ る を え な い 。 この て そ こで 停 止 し,シ 「か ら く り」 の 解 明 は,神 経 研 究 に携 わ る者 だ けで な く, 作 業 が 必 要 で あ る 。 わ れ わ れ の所 有 す る 最 新 の,そ 人 類 共 通 の 夢 で あ ろ う。 て最 高 の 技 術 を駆 使 して も,Ramony この 「 夢 」 に 到 達 す る た め の 第 一 歩 は,す 紀 前 に踏 み 出 さ れ て い た。Ramony 円 錐(growth cone)の Cajalに を分 子 レベ ル の 正 確 さ で 翻 訳 す る こ と は と う て い 不 可 よ る成 長 能 な状 況 に あ る。 シ ョウ ジ ョ ウバ エ や 線 虫C.elegansな 経細 胞 の 突 起 の 先 端 に 膨 大 す る構 造 を見 い だ し た。 彼 は,こ 構 造 が運 動 性 を も ち,化 し Cajalの 洞 察 力 で に1世 発 見 で あ る1)。彼 はニ ワ ト リ胚 脊 髄 の 運 動 神 経 の 発 生 を形 態 学 的 に 調 べ,神 ナ プ ス 終 末 へ 変 化 して い く と い う の 学 的 な 信 号 分 子 に よ る正 確 な ど を 使 っ て,成 長 円錐 の経路 選択 機能 の モデル が明 ら か に な りつ つ あ るが,そ の情 報 伝 達 系 に話 が及 ぶ と,こ れ らの 単 純 な 生 物 で は あ ま り研 究 が 進 ん で い な い 。 本 稿 で は 高 等 脊 椎 動 物 の 成 長 円 錐 の情 報 伝 達 機構 に 経 路 選 択 の 機 能 を 担 っ て い る こ と を 予 測 した 。 この 洞 中 心 を お き,概 説 し て み る 。 拡 散 性 の因 子(NGFな 察 力 の正 し さ は,最 新 の デ ー タ が 裏 づ け る と こ ろ と な の 受 容 機 構 に つ い て は紙 数 の 制 限 も あ り,本 稿 の範 囲 っ た 。 成 長 円 錐 に 影 響 を 及 ぼ す 分 子 は 多 様 で あ り,脳 を越 え る の で,総 の 部 位 に よ り異 な っ て い る が,脳 ウ ジ ョ ウバ エ な ど の無 脊 椎 動 物 や,最 の あ ら ゆ る部 位 で 成 長 円 錐 の基 本 的 な性 質 は 同 じで あ る と考 え ら れ る。 成 Michihiro Igarashi,群 馬 大 学 医 学 部 分 子 病 態 学 教 室(〒371 Neurobiology,Gunma Signal 1100 Transduction University in the Nerve School of Growth Cone ど) 説 を参 照 さ れ た い2)。 また 線 虫,シ ョ 近研 究 が さかん な ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ に つ い て は総 説 を参 照 され た い3∼5)。 前 橋 市 昭 和 町3-39-22)[Department Medicine,Showa-machi,Maebashi,Gunma of 371,Japan] Molecular and Cellular 23 成 長円錐の情報伝達系 形 態 に つ い て述 べ る(図1)。 中 央 の膨 大 部 分 は“cortical area” と よ ば れ,微 細 構 造 で は 小 胞 に 富 ん だ 部 位 で あ り, large Clear vesicle” と よ“ ば れ る200nm径 の ものが集 積 し て い る7)。 これ らの 小 胞 の機 能 と して は,先 端 で の膜 付 加 に よ る表 面 積 の 拡 大 と考 え る 説 が 有 力 だ が8),異 論 も あ る9)。 ま た神 経 突 起 の 構 造 に必 須 の 微 小 管 は こ の 部 分 まで 入 り込 Database Center for Life Science Online Service ん で い る。 一方 ,成 長 円 錐 か ら放 射 状 に 広 が る指 状 の 細 突 起 は 糸 状 足(filopodia)と よばれ る。 糸 状 足 は 培 養 神 経 細 胞 で 特 に顕 著 で あ るが,軸 索成 長 円錐 で はin vivoで も数 や 長 さの違 い 図1成 長 円錐 の 模 式 図 中 央 部 に はlarge clear vesicle(V),コ の 小 胞 の ほ か,小 胞 体(ER),2次 官 に富 む。 細 胞 骨 格 系 で は,微 lipodia(L)に ー ト小 胞(CV),multivesicular リソ ソー ム(SL),ミ 小管(MT)が body(MVB)な トコ ン ドリア(M)な 中 央 部 に 入 り込 み,末 ど,種 々 どの 細 胞 内 小 器 梢 側 の 糸 状 足(F)やlamel- は ア クチ ン繊 維 が 密 に 入 り込 ん で い る。 ニ ュー ロ フ ィ ラ メ ン ト(NF)は の 基 部 ま で しか 入 り込 ま な い。(文 献98よ は あ れ,よ く見 られ る 。 糸 状 足 の 実 体 は ア ク チ ン繊 維 束 (microfilament)で あ り,成 成 長円錐 長 円錐 の運 動 性 を担 っ て い る。 り改 変) また中井準 之助 が 推測 した よ 約5年 前 に筆 者 は,本 誌 に 同様 の テー マ で 総 説 を 書 い た の で6),今 回 は そ れ 以 後 の 発 展 を 中 心 に 記 述 す る。 う に,そ の 機 能 は突 起 伸 長 に適 す る経 路 を 選 択 す る こ とで あ る と考 え られ る。 す な わ ち,こ の 部 位 に は 「方 向 性 を も っ た 運 動 」 を 担 う分 子 メ カ ニ ズ ム が あ る と考 Ⅰ .成 長円錐の構造と機能 え られ る。 こ の よ う に膨 大 部 と糸 状 足 が 成 長 円 錐 の形 態 を 特 徴 づ け,ま 成 長 円錐 の情報 伝 達 系 に関 する知見 を概 観す る前 に, た特 殊 な機 能 を担 う基 盤 と な っ て い る。 成長 円錐 とは どの よ うな実体 であるかを要約 してお く。 成 長 円錐 は突 起 の成 長期(発 生時期)お よび突起再 Ⅱ .伝 達物質と成長円錐 生 の ときに神 経 の突 起(入 力 系 の樹状 突起,出 力系 の 軸索 の双 方)の 先端 に形 成 され る運動性 の高 い構 造体 成 長 円 錐 の挙 動 に 影 響 を及 ぼ す こ とが 知 ら れ て い る で あ る と定義 され る。成 長 円錐 の形態 は神経 細胞 の種 物 質 は実 に 多 数 に の ぼ っ て い る(こ 類,突 起 の性 質,生 物種 の違 い,な どに よって異 な る 機 能 に 抑 制 的 な 物 質 に つ い て は後 述 す る)。 この う ち, が,in 拡 散 性 の 神 経 栄 養 因 子 を 除 く と,多 vivoで はRamony Cajalが 最初 に記 載 した 「円 の う ち,成 長 円錐 くの もの は細 胞 の 錐 状 」 また は 「棍 棒状 」 で ある こ とが多 く,突 起先 端 接 着 性(細 胞 間 お よ び 細 胞-細 胞 外 基 質 問)を 変 化 さ せ の膨大 部 として観 察 され る。一 方,培 養 神経細 胞 で は る性 質 を もつ と考 え られ る グ ル ー プ で あ る 。 一 方,成 (培養 条件 によ って異 な るが)手掌 状 を して いる こ とが 長 円 錐 の 挙 動 に 影 響 す る物 質 の う ち,作 多 い。 今 日で は成 長 円錐 に関す る大部 分 の研究 が培 養 に解 明 され て い な い もの に 神 経 伝 達 物 質 が あ る。 を用 いて行 なわれ るので,培 養条 件下で の成長 円錐 の Katerら 用機 序 が十 分 の グ ル ー プ に よ り,カ タ ツム リの 成 長 円 錐 に 1101 24 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.40 No.9(1995) に そ れ ぞ れ選 択 的 な ア ン タ ゴ ニ ス トで あ る ピ レ ン ゼ ピ ン とAF-DX 116を 使 っ て,成 長 円錐膜 のム スカ リン 性 受 容 体 の性 質 を さ らに 詳 し く調 べ た。 そ の 結 果,初 期 の 成 長 円 錐 膜 に存 在 す るム ス カ リ ン性 受 容 体 は50% がM2で あ り,発 達 に伴 っ て しだ い にM2の 比 率 が減 少 し て い く こ とが わ か っ た。 これ を成 熟 脳 の シ ナ プ ス 膜 と比 較 す る と,大 な わ ち,シ がM1タ き な 差 異 が あ る こ とが わ か る 。 す ナ プ ス膜 の ム ス カ リ ン性 受 容 体 は ほ と ん ど イ プ で あ り,M2は5%程 度 に す ぎな い 。 こ の よ うな点 か ら,成 長 円 錐 にお ける 受 容 体 の性 質 は,一 般 に 成 熟 シナ プ ス と はか な り異 な っ て お り,こ れ に共 Database Center for Life Science Online Service 役 す る情 報 伝 達 系 も成 熟 脳 の デ ー タ の 単 純 な ア ナ ロ ジ ー で は説 明 で きな い 可 能 性 が あ り ,問 題 を 複 雑 に し て い る。 筆 者 ら の グ ル ー プ は 最 近,代 型 受 容 体 で あ るGABA-A受 表 的 なイ オ ンチ ャネル 容 体 につ いて も成 長 円 錐 に か な り多 量 に存 在 し,そ れ が 単 な る結 合 部 位 で はな く, Cl-透 過 能 を有 す る機 能 的 な受 容 体 で あ る こ とを証 明 し た(福 良 ら:投 稿 準備 中)。 こ の よ うに成 長 円 錐 の 受 容 体 は 限 局 的 な もの で な く,か な り広 範 に存 在 す る も の と 考 え られ る。GABA自 体 もか な り神 経 系 発 達 の 初 期 か ら存 在 し,濃 度 的に もか な り高 濃 度 存 在 す る こ とか ら, 図2成 (A)発 長 円 錐 膜 の ム ス カ リ ン 性 受 容 体11) 達 期 ラ ッ ト前 脳 由 来 の 各 画 分 に お け る[3H]QNB結 関 す るBmaxの 比較 。E17は 胎 生17日 わ す 。 成 長 円錐 膜(GCM)で 周 囲 部 の 膜(PNM)に (B)成 は,P2画 比 べ て,有 目,P5は 生 後5日 合に 目 を表 分 由 来 の 膜(P2M)や,核 意 にBmaxの 比 べ,成 長 円 錐 で は 明 らか にM2の 分 に 考 え られ る状 況 と な っ て い る 。 Pooら はXenopusの 比 率 が 高 い こ とが わかる。 継 続 的 に研 究 して い るが,局 所的 な アセ チ ル コ リンの 投 与 が 成 長 円錐 の 運 動 方 向 性 を大 き く変 化 さ せ る こ と を見 い だ した13)。アセ チ ル コ リン を ミク ロ ピペ ッ トで 遊 離 させ る と100μmの 5-HTが 神 経 筋 接 合 部 の シナ プ ス 形 成 を 値 が 大 き い。 長 円 錐 の ム ス カ リン性 受 容 体 の サ ブ タ イ プ 。 シ ナ プ ス 膜 (SPM)に 細 胞 移 動 に対 す る関 与 な ども含 め12),生 物 学 的 意 義 は十 抑 制 的 に 作 用 す る こ とが 発 見 され10),成 長 円 錐 こで100μm先 範 囲 に濃 度 勾 配 が 形 成 され る。 こ か ら450の 角 度 で 成 長 円 錐 に 向 か っ て30 に 伝 達 物 質 の 受 容 機 構 が 存 在 す る こ とが 明 らか と な っ ∼100mMの た。 ュ ー ロ ン成 長 円錐 の糸 状 足 の 伸 長 が ア セ チ ル コ リ ン の 筆 者 ら の グ ル ー プ は典 型 的 なG蛋 白質 共 役 型 受 容 体 ア セ チ ル コ リン を遊 離 す る と,脊 髄 運 動 ニ 濃 度 の 高 い 方 向 へ 方 向 転 換 し,最 終 的 に は 成 長 円 錐 全 で あ るム ス カ リ ン性 アセ チ ル コ リン受 容 体 に 着 目 し,成 体 が そ ち らの 方 向 へ 移 動 し て く る。 ま た 形 態 的 に は 成 長 円 錐 で の局 在 を調 べ た11)(図2)。 長 円錐 の糸状 足 がア セチル コ リンの濃度 の高 い側 に よ ム ス カ リ ン性 受 容 体 に 特 異 的 な ア ン タ ゴニ ス ト[3H]QNBを 実 験 を行 な っ た と こ ろ,ラ で は胎 生17日 用 いて結 合 ッ ト前 脳 由 来 の 成 長 円 錐 膜 目 に す で に相 当 量 の ム ス カ リン性 受 容 体 が 局 在 して い た(Bmaxは 成 熟 脳 シ ナ プ ス 膜 の 約1/3)。 り多 数 出 現 す る よ う に な る。D-ツ ボ ク ラ リ ン が この 反 応 を ブ ロ ッ クす る と い う薬 理 学 的 な 実 験 か ら,こ 程 に は ニ コ チ ン性 ア セ チ ル コ リ ン受 容 体(筋 現 され て い る もの で は な く,成 長 円 錐 に 局 在 す る もの) ム ス カ リ ン性 受 容 体 に は セ カ ン ドメ ッセ ン ジ ャ ー 系 の が 関 与 し て い る と 思 わ れ る 。 細 胞 内Ca2+の 差 異 に よ り,薬 理 学 的 にM1受 Fura-2標 M2受 1102 容 体(cAMPを 容 体(IP3を 介 す る)と 介 す る)に大 別 で きる。M1,M2 の過 細胞 に発 動 きを 識 で 観 察 す る と,成 長 円 錐 に 限 局 し たCa2+ 濃 度 の 上 昇 が 方 向 転 換 に先 だ っ て 起 こ る 。 この 実 験 か 25 成 長円錐の情報伝達系 ら,伝 達 物 質 がchemotropic factorと し てCa2+を 介 最 近,伝 の で,特 定 の因子 が特定 の非受 容体 型 チ ロ シ ンキナー ゼ を情 報 伝 達 に 用 い て い る こ と は大 い に あ り う る だ ろ して 作 用 す る 可 能 性 が 示 唆 され る。 達 物 質 受 容 体 の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス が 作 製 う。 た だ し,一 般 に 接 着 分 子 の 神 経 成 長 誘 導 能 は,細 され る よ うに な っ た14)。出生 時 の 形 態 変 化 は予 想 外 に小 胞 間 基 質(ラ さ いが,利 tors;た 根 川 ら の結 果 で は,NMDA型 受 容 体 の1つ で あ るNMDAR1の グ ル タ ミン酸 欠 損 マ ウス で は髭 の 三 叉 神 経 に よ る精 密 な 支 配 パ タ ー ンが 乱 れ て い る と い ミニ ン な ど)や 液 性 因 子(diffusible と え ばNGFな in vivoで fac- ど)に 比 べ る と は る か に 弱 く, は一 時 的 か つ 局 所 的 な 反 応 に しか 役 立 た な い と思 わ れ る 。 う。 こ の こ と は伝 達 物 質 が 局 所 的 に成 長 円 錐 の挙 動 の モ デ ュ レ ー タ ー と し て 作 用 し,受 容 体 が そ の 情 報 伝 達 2,チ に 関 与 して い る とい う考 え に矛 盾 しな い と思 わ れ る15)。 A.チ ロシ ンキナ ーゼの成 長 円錐 にお け る基質 ュ ーブ リ ン 成 長 円 錐 画 分 に お け る チ ロ シ ンキ ナ ー ゼ の基 質 と し Ⅲ .成 長円錐 とチ ロシンキナーゼ て,最 も著 明 に リン 酸 化 され る の は微 小 管 の構 成 蛋 白 Database Center for Life Science Online Service 質 で あ る チ ュ ー ブ リ ン(tubulin)で 成 長 円 錐 に 非 受 容 体 型 チ ロシ ンキナ ー ゼpp60c-srcの グ ル ー プ を 含 め,3つ あ る ことが筆者 の の グ ル ー プが 独 立 に 確 認 した 。 チ 活 性 が 高 い こ と は成 長 円錐 画 分 を 用 い て初 め て 明 ら か ュ ー ブ リ ン は α チ ュ ー ブ リ ン,β チ ュー ブ リン の い ず とな っ た16)。以 来,成 れ も チ ロ シ ン リ ン酸 化 を受 け る22∼24)。in vitroで は 接 長 円 錐 にお け るチ ロ シ ンキ ナ ー ゼ の 種 類 と そ の 基 質 が 報 告 さ れ,そ の活 性 調 節 に も 関 心 着 分 子 の うち,免 疫 グ ロ ブ リ ン ス ー パ ー フ ァ ミ リー に が は ら わ れ て い る 。 これ らの デ ー タ と培 養 神 経 細 胞 の 属 す るN-CAM,MAG(myelin-associated 成 長 円 錐 に対 す る 薬 理 学 的 解 析 か ら,成 長 円 錐 に 内 在 protein),L1な す る チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 系 が 突 起 成 長 の制 御 に きわ め て リンの チ ロ シ ン リン酸 化 は抑 制 され る25)。このpp60c-src 重 要 な 役 割 を 果 た す 可 能 性 が 示 唆 され て い る。 に よ る チ ロ シ ン リ ン酸 化 が チ ュ ー ブ リ ン の 重 合 能 に及 glyco- どの刺 激 に よ り,成 長 円 錐 の チ ュー ブ ぼ す 影 響 に つ い て の 直 接 的 な証 明 は な い が,受 1.成 長 円 錐の チ ロシ ンキナー ゼ 成 長 円 錐 画 分 に お け る,高 が 注 目 され て い る が,受 容体 型 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ で リ ン酸 化 し た結 果 か ら類 推 す る と, いチ ロシンキ ナー ゼ活性 容体型 チ ロシンキ ナー ゼ につ この チ ロ シ ン リン酸 化 は重 合 に阻 害 的 に作 用 す る26)。一 方,チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ の 阻 害 剤 は,培 養神 経細 胞 に対 い て は ほ とん ど知 られ て い な い。 非 受 容 体 型 チ ロ シ ン して 突 起 形 成 ・突 起 伸 長 に 促 進 的 に 作 用 す る こ と が 報 キ ナ ー ゼ に つ い て は,src,src+,fyn,yesの 告 さ れ て い る。 産 物 に関 し て研 究 さ れ て い る17,18)。 以 上 の 知 見 を総 合 す る と,接 着 分 子 に よ る 突 起 伸 長 々 の作 用 機 序 の ひ とつ と して,「 チ ュー ブ リンのpp60c-src の 欠 損 マ ウ ス が 得 ら れ,神 経 系 の発 生 に影 響 が 期 待 さ ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス を用 い た 実 験で,src,fyn各 依 存 性 チ ロ シ ン リ ン酸 化 の 阻 害 に よ る重 合 の 脱 抑 制= れ て い た が,予 突 起 成 長 」 と い う経 路 が 考 え ら れ る。 想 外 に 変 化 が 少 な か っ た。pp60c-srcの 欠 損 マ ウ ス は接 着 分 子L1を 培 養 の基 質 に し た と き に, 小 脳 由 来 の神 経 細 胞 で成 長 がやや 抑 制 され る19)。Fyn欠 損 マ ウ ス はN-CAM依 円 錐 で は しか し,リ 存 性 の成 長 が 抑 制 され る。 成 長 ン酸 化 基 質 の 変 化 は あ ま り み ら れ B.ビ ンキ ュ リン 筆 者 は成 長 円 錐 画 分 に お け る 内 因 性 チ ロ シ ン リ ン酸 化 を検 討 し て,チ な い20)。ま た培 養 細 胞 レベ ルで は確 か に有 意 差 が 出 る よ 蛋 白 質 は2次 う だが,著 グ,免 明 な形 態 変 化 は神 経 系 で は少 な い。 しか し, とfyn,srcとyesを 死 的 で あ る の で,そ ュ ー ブ リン(55K)に に リ ン酸 化 さ れ る130K蛋 次 い で,顕 著 白 質 を見 い だ し た22)。 こ の 元 電 気 泳 動 の 位 置 や,免 疫ブ ロ ッ テ ィ ン 疫 沈 降 な どの結 果 か ら,ビ ンキ ュ リン(vinculin) 同 時 に不 活 性 化 した マ ウ ス は致 src で あ る こ とが 示 さ れ た 。 成 長 円 錐 に お い て こ の 蛋 白 質 れ ぞ れ が補 償 で き る経 路 は 限 定 さ は リ ン酸 化 さ れ る と細 胞 骨 格 画 分 に 多 く分 布 す る と い れ て い る と思 わ れ る21)。今 の と こ ろ,後 述 のWalshら う結 果 が 得 ら れ た が,こ の デ ー タ で も神 経 系 に 特 異 的 な 細 胞 間 接 着 分 子 は チ ロ 組 織 化 学 の デ ー タ と合 致 す る27)。 シ ン キ ナ ー ゼ 系 を 介 して 神 経 成 長 を ひ き起 こす よ うな れ も繊 維 芽 細 胞 に お け る免 疫 ビ ン キ ュ リ ン は接 着 斑 を構 成 す る細 胞 内 蛋 白 質 の ひ 1103 26 蛋 白 質 核 酸 酵素 とつ で,形 Vol.40 No.9(1995) 質 膜 と ミク ロ フ ィ ラ メ ン ト(ア ク チ ン繊 維) 再 生 の 際 に,発 現 量 や 軸 索 内 輸 送 を受 け る量 が きわ め をつ な ぐ役 割 を果 た してい る28)。成 長 円 錐 に お け る接 着 て 増 大 す る こ とか ら,43kDa 斑 形 成 の 調 節 に そ の リン 酸 化 が 関 与 す る 可 能 性 が 示 唆 tein(GAP-43)と growth-associated 命 名 され た 。 こ こ5年 pro- 間 で,こ の蛋 され る。 筆 者 ら は,成 長 円 錐 に お け る 顕 著 な ビ ン キ ュ 白 質 の 遺 伝 子 構 造 や 生 化 学 的 性 質 に つ い て 種 々 の新 知 リ ン の チ ロ シ ン リ ン酸 化 が,基 見 が 報 告 され て い るが,「 神 経 成 長 に お け る この 蛋 白 質 質 と して の ビ ン キ ュ リ ン の量 が 多 い か ら で は な く,チ ロ シ ンキ ナ ー ゼ 活 性 が の 役 割 」 とい う肝 心 の点 は,解 高 い こ とに起 因 す る こ とを示 した29)。この結 果 はBixby い 。 しか し成 長 円 錐 で の 発 現 量 が き わ め て 多 い こ と, ら に よ っ て,確 種 々 の重 要 な 蛋 白 質 との相 互 作 用 が あ る こ とか ら,「 神 最 近,ビ れ,成 認 さ れ た30)。 ン キ ュ リン を欠 損 し たPC12細 長 円 錐 のlamellipodiaの 胞 が作 製 さ 機 能 が 異 常 とな る こ と 明 が さ ほ ど進 ん で い な 経 成 長 」 と い う事 象 の 解 明 に こ の 蛋 白 質 の生 理 的 意 義 の研 究 が つ な が る こ とが 期 待 され る。 が 示 され て い る31)。この こ とか ら,成 長 円 錐 に お け る ビ ン キ ュ リ ンの チ ロシ ン リン酸 化 は,糸 状 足 お よび1amel- Database Center for Life Science Online Service lipodiaの ア ク チ ン繊 維 系 の 安 定 化 に 寄 与 す る可 能 性 が 1.ド メイン構 造 こ の蛋 白質 の遺 伝 子 は3つ の エ キ ソ ンか らな る35)。エ キ ソ ン1で コー ドさ れ る の はN末 高 い と考 え られ る 。 が 膜 と の結 合 部 位(パ Ⅳ .成 長円錐 とCキ ナーゼ(PKC) 端 の10残 基 で,短 ル ミチ ン酸 結 合 部 位)お い よ びG 蛋 白質 活 性 化 に必 須 の領 域 を 含 ん で い る。 エ キ ソ ン2 は そ れ に続 く190個 弱 の ア ミ ノ酸 を コ ー ドす る 領 域 で cDNAク ロ ー ニ ン グ の 結 果,Cキ kinaseC)は10種 ナ ー ゼ(protein 類 以 上 の ア イ ソ フ ォ ー ム に分 か れ て Cキ ナ ー ゼ に よる リ ン酸 化 部 位 や カル モ デ ュ リン結 合 部 位 を含 ん で い る。 エ キ ソ ン3は 残 り30個 い る こ と が わ か っ た32)。1次 構 造 か ら,①cPKC(Ca2+ を コ ー ドし て い る。C末 感 受 性 のC2ド 領 域)は メ イ ン を もち,活 性 がCa2+依 る も の),②nPKC(C2ド 存 性 であ メ イ ン を欠 き,活 性 がCa2+ 非 依 存 性 の も の),③aPKC(C2ド メ イ ン を 欠 く う え, 他 の 機 能 ドメ イ ン を も欠 い て い る もの)の3種 別 され る。 成 長 円 錐 で は,β,α,δ,ε,ζ 認 され て い る(文 献33お うち,βPKCはGAP-43に skeleton)に 対 して 基 質 特 異 性 が 高 い34)。 成長 円錐 の膜 骨格 存 在 す る 唯 一 のPKCア フ ォ ー ム で あ る こ とが 示 さ れ,GAP-43と イソ 局 在 性 も一 致 して い る こ とが わ か った35)。通 常 の 条 件 下 で は活 動 性 の 成 長 円 錐 で も細 胞 内Ca2+濃 PKCが 度 は10-7M程 度 で あ り, 膜 へ移 行 す るの に は十 分 で な い 。 この こ とか ら, 成 長 円 錐 で膜 骨 格 に βPKCとGAP-43が は,成 長 円 錐 付 近 でGAP-43が 共 存 する こと リ ン酸 化 され る の を保 障 す る機 構 として 重 要 な もの と考 えて い る(次 節 参 照)。 極 性 ア ミノ 酸 が 多 い も の の,意 い な い。 ウ シ,マ 構造と機能 2.蛋 義 はわ か っ て ン ギ ョ,ゼ ブラ 白質 問相 互作用 GAP-43は カル モ デ ュ リ ン結 合 蛋 白 質 で あ るが,Ca2+ 依 存 的 に解 離 す る37)。また,PKCに よ る リ ン酸 化 は カ ル モ デ ュ リ ンの 結 合 を阻 害 す る37)。PKCに よ る リ ン酸 化 が 成 長 円錐 お よ び 突 起 の遠 位 部 で 生 じ て い る こ と を 示 唆 す る結 果 が 報 告 さ れ て い る38)。 GAP-43は ア ク チ ン と共 沈 し,Fア ク チ ン と結 合 す る 性 質 が あ る39)。しか し この 結 合 はMARCKS蛋 ど と違 っ て,Ca2+や リン酸 化 に依 存 せ ず,ア 白質 な ク チ ン繊 維 の 機 能 的 修 飾 な ど も起 こ らな い よ う で あ る。 成 長 円 錐 膜 に存 在 す る5種 バ ン ドが3量 類 の主 要 な 蛋 白 質 の うち, 体GTP結 合 蛋 白 質(G蛋 白質)の α お よ び β サ ブ ユ ニ ッ トで あ る こ とが 証 明 さ はPfenningerら もい う)は 成 チ ュ ー ブ リ ン,GAP-43で 長 円 錐 画 分 を 用 い て,成 長 円 錐 に 高 濃 度 存 在 す る こ と な って い る)。Fishmanら が 最 初 に確 認 され た 蛋 白質 で あ る。 神 経 突 起 の 成 長 や よ びGTP加 1104 ワ ト リ,キ フ ィ ッ シ ュ で も,上 述 の構 造 が 保 持 さ れ て い る こ とが れ た40)。(他 の3種 GAP-43(neuromodulin,F1,B-50と ウ ス,ニ コー ド わ か った。 38Kと34Kの V.GAP-43の 弱 の ア ミノ 酸 キ ソ ン3の の存 在 が 確 よび筆 者 ら:投 稿 準 備 中)。 この 筆 者 ら の 検 討 に よ り,βPKCは (membrane 類 に大 端 領 域(エ に よ り,ア ク チ ン, あ る こ とが す で に 明 らか と は,G蛋 白 質 のGTP結 合お 水 分 解 能 がGAP-43に よ り約3倍 程 度増 成 長円錐の情報伝達系 加 す る こ とを見 い だ した41)。ラ ッ ト胎 仔 脳 由来 の成 長 円 これ ら の残 基 の 存 在 が 関 連 す る と考 え て い る。 こ の う 錐 画 分 で はG。 が 主 で,Giも ほ ち,2個 白 ン酸 結 合 部 位)に 少 量 存 在 す る が,Gsは とん ど見 い だ さ れ な い41)。 ま たGAP-43に 質 α サ ブ ユ ニ ッ トの 活 性 化 は,Goお Gsお よ び 低 分 子 量GTP結 ま たRasフ よ るG蛋 よびGiに 限 られ, 合 蛋 白質 に は作 用 しな い 。 ァ ミ リー に 属 す る よ うな 低 分 子 量GTP結 合 蛋 白質 は,GAP-43で は活 性 化 され な い。 こ の活 性 化 に 必 要 な 部 分 は,GAP-43のN末 端 の10残 基であ り,こ の部 位 が 欠 損 し て い る と活 性 化 は 生 じな い42)。 GAP-43に よ るG蛋 経 由 の 場 合 の1/5程 Database Center for Life Science Online Service 27 白 質 の 活 性 化 の程 度 は,受 容 体 度 の 強 さ で あ る。 し か し,通 常 の はG蛋 の シ ス テ イ ン残 基 は膜 との 相 互 作 用(パ ル ミチ 重 要 で あ り,残 り の塩 基 性 ア ミノ 酸 白質 の 活 性 化 に 必 要 で あ る と考 え られ る。 この 部 位 は 西 本 ら に よ り提 唱 され て い る受 容 体 のG蛋 活 性 化 配 列 と相 同 性 を有 す る 。Strittmatterと この10残 白質 筆者が 基 をペ プ チ ドの形 で 神 経 系 の 細 胞 に作 用 さ せ た と こ ろ,①NIE-115細 誘 導)が,② 胞 で は突 起 成 長 の促 進(分 化 初代 培 養 の後根神 経 節細胞 や網膜神 経節 細 胞 に お い て は反 対 に成 長 円 錐 の 退 縮,突 制 が 認 め られ た42)(図3)。 起伸長 の抑 これ は成 長 円 錐 にお け るG 受 容 体 の 密 度 が きわ め て 低 い の に比 べ る とGAP-43濃 蛋 白 質 よ り下 流 の情 報 伝 達 系 の 差 異 に基 づ くも の と解 度 は成 長 円 錐 で 約1μMで,増 釈 され るが,成 幅 の弱 さを補 っ てい る と 考 え られ る。 43のN末 3.GAP-43と A.リ 端 由 来 の ペ プ チ ドに ア ミノ 酸 置 換 を施 し たペ プ チ ドの 生 物 活 性(糸 成長 円 錐機 能 ン酸化 部位 の機 能 GAP-43の 長 円 錐 の 情 報 伝 達 系 にGAP-43のN末 端 が 広 く関 与 す る こ とを 示 す デ ー タで あ る。特 にGAP- 状 足 形 成 能,成 化 を ひ き起 こす 能 力)は,G蛋 完 全 長cDNAをCOS細 胞 に トラ ン ス フ ェ ク ト した と こ ろ,非 神 経 細 胞 で あ るCOS細 胞 に きわ 長 円錐 の形態 変 白質 の 活 性 化 能 と強 い 相 関 に あ る こ とが 重 要 な点 で あ り,N末 端 の10残 リ ン酸 化 部 位 お よ び そ の 周 囲 の カ ル モ ジ ュ リン結 合 部 め て 多 数 の 糸 状 足 が 一 過 性 に形 成 され た とい う,Fish- 位 と と も に,こ manら ン を 独 立 に形 成 し て い る と考 え られ る。 の グ ル ー プ の報 告43)か ら,成 長 円 錐 の形 態 変 化 とGAP-43の ドメ イ ン と の 関 連 性 に注 目が 集 まっ て い る。 は リン酸 化 部 位 に 注 目 して,ニ ワ トリGAP- 43cDNAのSer42(哺 た も の をL6細 ①Ser→Alaへ 乳 類Ser41に 胞 やCOS-7細 の増 加,細 相 当)を 変 異 させ 胞 に発 現 さ せ た と こ ろ, の変 異 は糸 状 足 の 著 減,細 加 を もた らし,②Ser→Aspへ 胞 の伸 展 の増 の 変 異 は短 い 糸 状 足 の数 胞 の 伸 展 の 低 下 をひ き起 こ した44)。発 現 させ た細 胞 で のGAP-43の られ た の で,リ 分 布 は ア ク チ ン との 共 存 が認 め ン酸 化 部 位 が ア ク チ ン繊 維 との 相 互 作 用 に 重 要 で あ る と い う結 論 を くだ して い る。 B.G蛋 蛋 白質 の第1エ 使 っ た 実 験 は3グ ル ー プか ら 胞 お よび 後 根 神 経 節 細 胞 での 突 起 形 成 不 全 や 成 長 円錐 の 形 成 不 全(体 部 の面 積 の狭 小 化), PC12細 胞 か ら の ドー パ ミン放 出 の 障 害 な どが 報 告 され て い る46∼48)。た だ し,突 起 が 成 長 し て い る 際 のGAP43発 現 量 は きわ めて 多 量 で,ア ンチ セ ンスcRNAの 効 果 は ご く一 時 的 に しか 期 待 で き な い よ うで あ る。 最 近, GAP-43欠 損 マ ウ ス が 作 製 され た99)。このマ ウスで は神 経 の 突 起 成 長 は起 こ る も の の,成 長 の方 向性 に障害 が あ り,視 交 叉 の 形 成 に異 常 が 認 め られ,個 体 の寿命 も 短 い。 白質 活 性 化 能 は この キ ソン に相 当 す るN末 在 す る こ とが示 され てい る。Fishmanグ matterら 結 果,先 ア ン チ セ ン スcRNAを 白質活 性化 部位 の 機 能 す で に述 べ た がGAP-43のG蛋 COS細 の 蛋 白 質 の きわ め て 重 要 な 機 能 ドメ イ 報 告 が あ り,PC12細 Caroniら 基 は はGAP-43の 端 の10残 基 に存 ル ー プのStritt- 一 部 分 が 欠 損 し たcDNAを 胞 に 発 現 させ て そ の形 態 変 化 を追 跡 した 。 そ の GAP-43につ 突 起 伸 長 に 必 須 か? い て はin で の 実 験 か ら,こ vitroお よ び 培 養 細 胞 レ ベ ル の 蛋 白 質 が 神 経 成 長 に重 要 な役 割 を 果 た す こ とが 示 唆 さ れ て き た。 しか し,こ の 蛋 白 質 が 突 起 成 長 に 必 須 の成 分 で あ る と は 見 な し え な い デ ー タ 基 の存 が し だ い に 得 られ て きた 。 た と え ば こ の 蛋 白 質 は す べ ン 酸 化 部 位 な ど の存 在 に は依 存 し て の 脊 椎 動 物 に 発 現 して い る と考 え ら れ る が,無 脊 椎 に述 べ た 糸 状 足 の発 現 はN末 在 に 強 く依 存 し,リ 4.GAP-43は な い とい う45)。10残 基 の うち,特 Lys9の 存 在 が 重 要 で,COS細 端 の10残 にCys3,Cys4,Arg6, 胞 のspreadingの 減少も 動 物 の線 虫C.elegansな ど に は 存 在 し な い(シ ョウ ジ ョウ バ エ に も存 在 して い な い と考 え ら れ て い た が,最 1105 Database Center for Life Science Online Service 28 蛋 白質 核 酸 酵 素 図3GAP-43のG蛋 (A)GAP-43のN末 Vol.40 No,9(1995) 白 質 活 性 化 能 と 突 起 成 長 修 飾 作 用42) 端 由 来 の ペ プチ ドの性 質 。 (B)各 種 ペ プチ ドの成 長 円 錐(ニ (C)各 種 ペ プチ ドの 突 起 成 長 に対 す る 影 響 。 こ の 場 合,G蛋 ワ トリ胚 後 根 神 経 節 細 胞)に 対 す る効 果 。PBSは 対 照,MPは マ ス トパ ラ ン を表 わ す 。 白 質 を活 性 化 す る 能 力 の あ る も の は,突 起 成 長 に抑 制 的 に作 用 し,活 性 化 能 の な い も の は 突 起 成 長 に影 響 しな い こ と に注 目 され た い。 近 に な ってGAP-43のN末 蛋 白 質iglooが 端 側 の1/3と 相 同 性 の高 い 見 い だ され た49))。 また,NGFに 反応 し 5.GAP-43の 成 長円錐 機 能 に関す る仮説 こ の よ う に 成 長 円 錐 機 能 とGAP-43の て突 起 を伸 長 す る 際 に こ の 蛋 白質 を ほ とん ど発 現 し て か な り曖 昧 で あ る 。 しか し,GAP-43の い な いPC12細 学,生 胞 の 変 異 株 が 見 つ か っ た50)。 この よ う 化 学,分 役 割 は現 在, 研究者 は形態 子 生 物 学 な ど,幅 広 い 分 野 に わ た っ て 発現は お り,そ れ ぞ れ の 作 業 仮 説 に従 っ て 神 経 成 長 に 対 す る 必 須 で な い こ と を示 唆 し て い る。in situハ イ ブ リダ イ 役 割 が 検 討 さ れ て い る 。 そ の な か で 注 目 す べ き仮 説 を な報 告 は,成 長 円 錐 を 形 成 す る の にGAP-43の ゼ ー シ ョン の 結 果 で は,こ の 蛋 白質 は突 起 成 長 期 の 神 経 細 胞 の な か で は モ ノ ア ミ ン作 動 性 ニ ュ ー ロ ン に きわ め て発 現 量 が 多 く,コ リ ン 作 動 性 ニ ュー ロ ン で は ほ と あ げ て み る。 A.Fishmanら Fishmanら の仮説 はG蛋 白 質 の 活 性 化 能 に着 目 し 「成 長 円 ん ど発 現 され て い ない と考 え られ た51)。これ らの 点 か ら, 錐 で 発 現 して い る種 々 のG蛋 必 ず し もす べ て の 神 経 細 胞 に お い て,GAP-43が をGAP-43が 成長 白 質 共 役 性 受 容 体 の機 能 修 飾 す る こ と に よ っ て,成 長 円錐 の 形 態 円 錐 機 能 に重 要 性 を 担 っ て い る と は い え な い よ う で あ や 機 能 も制 御 され る52)」と考 え て い る。G蛋 る。 容 体 は成 長 円 錐 膜 の 上 に 多 種 類 局 在 す る と考 え られ て い るが,そ 1106 白質 関 連 受 の 密 度 は きわ め て低 い はず で あ り,GAP-43 成長円錐の情報伝達系 な どの 内 因 性G蛋 29 白 質 活 性 化 な ど も含 め た 増 幅 系 の作 用 が 成 長 円 錐 で の 効 率 的 な情 報 伝 達 に必 須 で あ ろ う と い う考 え 方 で あ る42,52,53,100)。 この場 合,問 GAP-43の 題 になるのは 上 流 に あ る信 号 分 子 が不 明 な点 で あ る。G蛋 白 質 活 性 化 を調 節 す る 因 子 と し て既 知 な の は,非 酵素 的 なパ ル ミチ ン酸 付 加 の み で あ る54)。G蛋 白 質 活 性 化 部 位 は リ ン酸 化 部 位 ・カ ル モ デ ュ リン結 合 部 位 の 修 飾 と は独 立 して 機 能 す る と考 え ら れ,成 長 円 錐 に作 用 す る 信 号 分 子 がGAP-43に どの よ うに 作 用 す るの か,の 明 が 欠 け て い る。 しか し,G蛋 抑 制 因 子 の情 報 変 換 に重 要 で あ る(後 述)こ Database Center for Life Science Online Service 説 白質が 成長 円錐 機 能 の とか ら,興 図4接 着 分 子 の 突 起 伸 長 に 関 す る作 用 機 序 モ デ ル58) 他 の ニ ュー ロ ン に局 在 す る接 着 分 子(CAM;N-cadherin,L1,N- 味 深 い説 であ る。 CAMな B.Willardら 接 着 分 子 とFGF受 の 仮説 も と も と軸 索 内 輸 送 の研 究 か らGAP-43を Willardら はGAP-43の し て,GAP-43そ 発 見 した カ ル モ デ ュ リ ン結 合 性 に着 目 れ 自体 よ り も カ ル モ デ ュ リ ン に 重 要 ど)が 成 長 円 錐 膜 上 の 同 一 分 子 と結 合 す る と,こ チ ロ シ ンキ ナ ー ゼ が 活 性 化 し,2 量 体 化 が 起 こ る 。 次 い で,PLCγ リセ ロー ル(DAG)が 生 成 され,さ られ る 。 最 終 的 に は,AAが の 活 性 化 に よ り,ジ ア シ ル グ ら にア ラ キ ドン酸(AA)が 電 位 感 受 性Ca2+チ 作 ャネ ルを活性 化 入 が 起 こ る。 こ の 経 路 の ほ か に,G蛋 ス ホ リパ ー ゼA2(PLA2)を れ らの の 間 に 一 時 的 な相 互 作 用 が 生 ず る。 これ に よ って,FGFRの して,Ca2+流 性 を置 く仮 説 を提 唱 して い る。 す な わ ち,「GAP-43が 容 体(FGFR)と 白質 か ら ボ 介 す る バ イ パ ス も 考 え ら れ る。 速 い軸 索 内 輸 送 で先 端 に輸 送 さ れ る と,結 合 し て い る カ ル モ デ ュ リ ン も大 量 に輸 送 さ れ,成 長 円 錐 付 近 で リ ン 酸 化 に よ りGAP-43が とが,成 カ ル モ デ ュ リン を遊 離 す る こ 長 円 錐 機 能 に重 要 で あ る」とい う もの で あ る55)。 養 して,突 起 を進 展 させ る系 を確 立 した57)。次 い で,情 報伝 達 因子 に関す る種々 の特 異 的 な阻 害剤 を用 いて接 この 説 で は カ ル モ デ ュ リン以 下 の 情 報 伝 達 系 が ま っ た 着 分 子 に誘 導 され た 突 起 伸 長 の 変 化 を観 察 し た 。 そ の く説 明 され て い な い。 カ ル モ デ ュ リ ン を 介 す る 伝 達 系 結 果,接 着 分 子 の 突 起 伸 長 で は,①Ca2+チ ャ ネ ル(L は シ ョウ ジ ョ ウバ エ の神 経 発 生 で 正 中 線 を越 え る経 路 型 お よびN型),②bFGF受 選 択 に 重 要 で あ る可 能 性 が 示 唆 され て お り56),本 格 的 な ロ シ ン キ ナ ー ゼ,の3つ 検 討 が 望 ま れ る。 明 ら か に な っ た と し て い る 。 こ れ ま で の 結 果 を総 合 し て,Dohertyは Ⅵ .接 着分子の突起成長促進機能と成長円錐の情報伝達 容 体,③(非 以 下 に 示 す 情 報 伝 達 経 路 を接 着 分 子 の 情 報 を 受 容 す る 主 要 経 路 と考 え て い る 。 細 胞 間 接 着 分 子(N-CAM,N-カ basic FGF受 神 経 系 の細 胞 間 接 着 分 子 は,N-CAM,L1,N-カ ド 受 容 体 型)チ の 活 性 化 が 必 要 で あ る こ とが ドヘ リ ン,L1)→ 容体 の活性 化→ チ ロシ ンキ ナ ーゼ の活性 化 →PLCγ の活 性 化 → ジ ア シ ル グ リセ ロ ー ル(DG)生 ヘ リン な ど,数 多 くの 分 子 が 見 い だ さ れ て い る 。 これ 成 →DGリ ら の 多 くは神 経 突 起 の 成 長 促 進 活 性 を もつ こ とが 証 明 受 性Ca2+チ さ れ て い る。 突 起 が 成 長 し続 け る た め に は,接 流 入 → カ ル モ デ ュ リ ン キ ナ ー ゼIIの 活 性 化 → 蛋 白 質 リ が 成 長 円 錐 に 存 在 す る 受 容 体 に 作 用 し て,情 着分 子 報伝 達 機 構 を 駆 動 す る は ず で あ る。 現 在 ま で に多 くの 情 報 伝 達 パ ー ゼ活 性 化 → ア ラ キ ドン酸 の生 成 → 電 位 感 ャネ ル の 活 性 化(N/L型)→Ca2+の 細胞 内 ン酸 化 → 突 起 成 長58)(図4)。 た だ し,こ の 経 路 の 根 拠 の多 くが,阻 害 剤 の効 果 に 系 が 接 着 分 子 の 作 用 機 序 に関 連 す る こ とが 示 さ れ て い 基 づ く薬 理 学 的 実 験 の み か ら得 られ て い る た め,そ る が,最 ぞ れ の ス テ ッ プ に 関 す る分 子 レ ベ ル で の検 討 は十 分 で も精 力 的 に ア プ ロ ー チ して い るWalshら のグ ル ー プ の結 果 を 紹 介 す る 。 彼 ら はN-CAM,L1,N-カ はな い 。 た と え ば,接 ドヘ リン のcDNA全 長 い な い3T3細 れ 着 分 子 を トラ ン ス フ ェ ク トし て 胞 に お い て も,高K+刺 激 に よ る脱 分 極 を3T3細 胞 に トラ ン ス フ ェ ク トし,こ の上 に神 経 細 胞 刺 激 の み で 接 着 分 子 を 発 現 させ た も の と 同 程 度 の 神 経 (PC12細 胞,海 突 起 伸 長 作 用 が 得 られ る な ど,理 解 し が た い 結 果 も あ 馬 神 経 細 胞,小 脳 神 経 細 胞 な ど)を 培 1107 30 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.40 No.9(1995) が 突 起 成 長 を促 進 す る 因 子 に 関 す る も の で あ っ た。 し か し 軸 索 の経路 選択 が成長 円錐 の 直 進 運 動 の み で起 こる とい う こ と は 考 え に くい 。 成 長 円 錐 は 経 路 に不 適 当 な 因 子 が あ れ ば,後 退 した り方 向転 換 を す る 必 要 が あ る。 こ の よ う な 現 象 が 存 在 し,そ れ を ひ き起 こ す因子 が存 在 す る ことを最初 に 証 明 し た の は,Raperで あ っ た 。 彼 ら は異 な る種 類 の 神 Database Center for Life Science Online Service 経 細 胞 に 由 来 す る突 起 の 成 長 円 錐 が 出 会 う と き の挙 動 を ビ デ オ で 解 析 し た。 そ の 結 果, 網膜 神 経節細 胞 の成長 円錐 と 後 根神 経節 細胞 の成長 円錐が 接 触 す る と,成 長 円錐 の 退 縮 (growth cone collapse)と い う著 明 な 形 態 変 化 が 生 じ,成 長 円 錐 の 運 動 性 が 失 わ れ て, 突 起が 後退 す る現 象が観 察 さ 図5成 長 円 錐 の 微 分 干 渉 顕 微 鏡 像53) 正 常 の 成 長 円 錐(a)に が,百 脳 由 来 の粗 退 縮 活 性 画 分 を加 え る と成 長 円 錐 の 退 縮(b)が 日咳 毒 素 で前 処 理 す る と退 縮 活 性 を 加 えて も,退 成 長 円 錐 を退 縮 させ る(d)。 縮 は 生 じ な い(c)。 生 ずる マ ス トパ ラ ン は バ ー は10μm。 れ た62)。最 初,こ 末 梢 神 経 と中 枢 神 経 の 間 に 特 異 的 な標識 分子 が あ るため と られたが 、現在 る59)。またCa/CaM一 キ ナ ー ゼⅡ の 基 質 とな る成 長 円 錐 の 蛋 白質 は あ ま り研 究 さ れ て お らず,突 の 現 象 は, ではもっ考え と複 雑 な機 序 で 生 ず る と考 え られ て い る 。 起 成長 への情 成 長 円 錐 の 退 縮 は どの よ う な 細 胞 内 機 序 で 生 ず るか 報 伝 達 系 は ま っ た くわ か っ て い な い 。 ア ラ キ ドン酸 も, はわ か っ て い な い。 現 象 と し て は,成 長 円 錐 の 体 部 が こ の よ う な実 験 の み で は 確 実 に作 用 して い る の か ど う 縮 小 し,糸 状 足 の 数 が 減 少 す る こ とが 定 義 と な る。 か,不 Raperら 明 で あ る60)。彼 ら も,イ ン テ グ リンを介 す る系 で は こ の と き,F-ア ク チ ンの 含 量 が 著 し く減 少 は チ ロ シ ンキ ナ ー ゼ の 活 性 化 が 必 須 で は な いな ど,個 々 す る こ とを 明 らか に して い る63)。成 長 を抑 制 す る情 報 を の刺 激 に よ り こ の 経 路 に 当 て は ま ら な い 成 長 円 錐 の情 受 容 す る と,最 終 的 に は 糸 状 足 お よ びlamellipodiaの 報 伝 達 系 が あ る こ とを認 め て い る61)。しか しな が ら,成 F-ア ク チ ンが 脱 重 合 して,成 長 円錐 に おいて ひ とつの情報 伝達 経路 の モデ ルが提唱 糸 状 足 の 退 縮 が 起 こ る の で あ ろ う が,ど さ れ た意 義 は大 き く,こ れ か ら成 長 円 錐 の 情 報 伝 達 系 チ ン 調 節 蛋 白 質 が 関 与 し て い る か は不 明 で あ る。 微 小 の研 究 に お い て,こ 管 に お い て は 新 し く重 合 した 微 小 管 の マ ー カ ー で あ る, の仮 説 を さ ら に一 つ 一 つ 詳 細 に検 討 す る 必 要 が あ ろ う。 長 円 錐 の 表 面 積 の減 少 と の ようなア ク 末 端 の チ ロ シ ン化 が 正 常 な 成 長 円錐 で 顕 著 な の に,退 縮 した もの で は チ ュ ー ブ リ ン の チ ロ シ ン 化 が 認 め られ ,?.成 長円錐機能の抑制因子とその情報伝達 な い63)。 筆 者 ら は,成 成長 円錐 の情報 伝達機 構 に関 す る研 究 は,ほ とん ど 1108 (Goま た はGi)の 長 円 錐 を 百 日 咳 毒 素 感 受 性G蛋 白質 活 性 化 因 子 で あ るマ ス トパ ラ ンで 刺 成長円錐の情報伝達系 激 す る と成 長 円 錐 の退 縮 が 著 明 に 生 ず る こ とを示 した53) ホ モ ロ グ は,す (図5)。 ウバ エ に は膜 貫 通 部 位 を も た な い ホ モ ロ グ も存 在 し て こ の こ とか ら,成 長 円 錐 に は,こ れ ら のG蛋 べて可 溶性 蛋 白質で あ る。 シ ョウジ ョ 白質 を介 す る 内 因 性 の 退 縮 機 構 が 存 在 す る こ とが 示 さ お り,semaphorinⅡ と命 名 さ れ た 。semaphorinは 突 れ た 。 一 方,百 起 の成 長 を抑 制 的 に制 御 す る と 思 わ れ,collapsin同 様 日咳 毒 素 そ れ 自 体 は成 長 円 錐 機 能 に対 して 抑 制 的 で は な い の で,成 長 円 錐 の 退 縮(突 の 抑 制 因 子 に 対 す る反 応)は 前 進(突 起成長 れ と は別 個 の,独 の 役 割 が 推 定 さ れ て い る67)。 起 成 長 の促 進 因 子 に対 す る反 応)の 逆 経 路 を単 純 に た ど るの で な く,こ 2.ミ 自 の 情 報 伝 達 経 路 を 介 して 生 ず る と 考 え ら れ る。 エ リン蛋 白質 の神 経成 長 阻 害作用 髄 鞘 の 機 能 は軸 索 を絶 縁 し て 跳 躍 伝 導 に よ る出 力 の 高 速 化 を達 成 す る こ と に あ る。 しか し,高 等 動 物 の 中 成 長 円 錐 の 機 能 抑 制 に 関 与 す る 分 子 の う ち,興 味深 い もの を 以 下 に あ げ て お く64)。 枢 神 経 系 の神 経 突 起 再 生 の 困 難 さ の 原 因 の ひ とつ を 中 枢 ミエ リ ン に 求 め る考 え 方 が 有 力 とな っ て い る 。 中 枢 神 経 は突 起 再 生 が き わ め て 困 難 で あ るが,末 1.collapsin/semaphorin Database Center for Life Science Online Service 31 Raperら は 可 能 で あ る 。 中枢 性 ミエ リ ン と末 梢 性 ミエ リ ン は分 は成 長 円 錐 の 退 縮 活 性 を定 量 化 す る た め, 以 下 のcollaspe assayを 行 な っ た 。 ニ ワ ト リ脳 か ら粗 膜 画 分 を調 製 し て こ れ をCHAPSで 可 溶 化 成 分 をDRGニ 梢神 経 で 抽 出 し,透 析 後 の ュー ロ ン の培 養 液 に加 えて,何% 子 構 成 が 異 な っ て お り,突 起 再 生 に お け る中 枢 と末 梢 の 差 異 を ミエ リ ンの 性 質 の 違 い に求 め る 考 え方 が あ る 。 こ の考 え を 押 し進 め,成 長 円 錐 に 対 す る抑 制 因 子 の 観 点 か ら研 究 を推 進 し て い る の はSchwabの グル ー プで の成 長 円 錐 退 縮 が 起 こ るか を 測 定 した65)。この ア ッセ イ あ る。in vitroで はオ リゴ デ ン ドロ サ イ トは常 に成 長 円 で 有 意 の 成 長 円 錐 退 縮 活 性 が 認 め られ た た め,数 錐 に対 し てnon-permissiveと の精 製 過 程 を経 て,こ の 活 性 成 分 の1つ た。 そ の 部 分 ペ プ チ ド構 造 か らcDNAク 行 な い,分 子 量100Kの 段階 を部 分 精 製 し 中 枢 ミエ リ ン は成 長 円 錐 機 能 の 抑 制 分 子 を含 ん で い る ロー ニ ン グ を とす る研 究 が 数 多 い 。 新 規 蛋 白質 の構 造 を決 定 し た66)。この 蛋 白質 はcollapsinと 命 名 され た が膜 結 合 部 位 が な く,可 溶 性 蛋 白 質 と考 え られ たの で,COS細 に発 現 させ て培 養 上 清 をDRGニ 10pMのcollapsinで い うわ けで は な い69)が, 胞 ュー ロ ン に投 与 す る と, も強 い 成 長 円 錐 退 縮 活 性 を 示 し A.NI-35 NI-35はSchwabら に よ り見 い だ され た分 子 量35K の成 長 円 錐 抑 制 因 子 で あ る 。 分 子 構 造 な ど の詳 細 は不 明 で あ る が,CNSミ エ リ ンの微 量 成 分 と考 え られ る70)。 彼 ら は上 頸 神 経 節 細 胞 の 突 起 成 長 が オ リゴ デ ン ドロ サ た 。 この 蛋 白 質 は 必 ず し も粗 活 性 の性 質 す べ て を再 現 イ トお よびCNSミ で き る わ け で は な い 。 た と え ば,粗 の 効 果 は末 梢 ミエ リ ン に は な い こ と,な 活性 は網膜神 経細 胞 の 成 長 円 錐 の 退 縮 をひ き起 こ す が,collapsinは 活 性 が 非 常 に 弱 い(最 近,collapsinと い,collapsin-2が この ホモ ロ ジーの高 ク ロ ー ニ ン グ され た が,網 膜 の成長 collapsinは 比 較 的 広 い 範 囲 に 存 在 して,発 達の際の ど を見 い だ し た 。 次 い で 中 枢 ミ エ リ ン蛋 白質 を 電 気 泳 動 して,各 ン ドを ゲ ル か ら溶 出 さ せ,リ バ ボ ソ ー ム に 再 構 成 して 突 起 成 長 抑 制 能 を ア ッセ イ し た 。 そ の 結 果,35Kと250 K蛋 円錐 に対 す る作 用 は明 らか で な い)。 エ リン に よ っ て 抑 制 され る こ と,こ 白 質 に 活 性 が 存 在 し て,そ れ ぞれNI-35,NI-250 と命 名 した70)。ビ デ オ 下 で の 観 察 で は,オ リゴデ ン ドロ 発 現 変 化 は少 な い66,67)。こ の 蛋 白 質 は ヒ ト,マ ウス な ど サ イ ト と成 長 円 錐 の 糸 状 足 が 接 触 す る と,成 長 円 錐 の に もホ モ ロ グ が 存 在 す る。 既 知 の 蛋 白 質 と し て は,バ 退 縮,停 ツ タ のfasciclin(シ 生 じ,こ れ ら の 反 応 はNI-35に ョ ウ ジ ョ ウ バ エ のsemaphorin Ⅰ) 止,後 退 な ど の種 々 の 成 長 円 錐 機 能 の抑 制 が 対 す る抗 体IN-1で 阻 と ホ モ ロ ジ ー が 高 か っ た。fasciclin Ⅳ は,直 進 して成 害 され る71)。脊 髄 の 切 断 後 にIN-1を 長 す る バ ッ タ の 運 動 神 経 の 軸 索 が 突 然 大 き く方 向 性 を わ ず か の距 離 だ が 突 起 再 生 が 生 ず る(無 投 与 群 で は ほ 投 与 す る と,ご 変 え る部 位 の上 皮 細 胞 に特 異 的 に発 現 され る抗 原 で,免 と ん ど突 起 は再 生 し な い)72)。 これ ら の デ ー タか ら,中 疫 グ ロ ブ リン ス ー パ ー フ ァ ミ リー に属 す る接 着 分 子 の 枢 神 経 系 の髄 鞘 に お け る突 起 再 生 抑 制 因 子 が こ のNI- と考 え ら れ る68)。fasciclinはcollapsinと 膜 貫 通 部 位 を有 す るが,脊 異 な り, 一種 椎 動 物 の 既 知 のsemaphorin く 35で あ ろ う と推 測 して い る 。 筆 者 ら は ミエ リ ン を オ ク チ ル グ ル コ シ ドで 可 溶 化 し 1109 Database Center for Life Science Online Service 32 蛋白質 核酸 酵素 図6中 (A)可 Vol.40 No.9(1995) 枢 ミエ リン由来 の成 長 抑 制 因 子 の作 用機 序 溶化 した 中枢 ミエ リン の成 長 円 錐 退 縮 活 性 。 (B)Nl-35の 成 長 円 錐 退 縮 活 性 。(A),(B)と (C)Nl-35の 推 定 さ れ る 作 用 機 序 。 斜 線 はNl-35,Rは した(本 も に百 日咳 毒 素(PTX)で 阻 害 され る。 そ の 特 異 的 受 容 体 を指 す。 細 胞 内Ca2+の た画 分 が成 長 円 錐 退 縮 活 性 を有 す る ことを見 い だ した54)。 この 作 用 は百 日咳 毒 素(pertussis toxin;PTX)感 性 で あ り,そ の 前 投 与 で 阻 害 され る 。 またNI-35を た もの も,PTX感 く,細 胞 内Ca2+貯 蔵 部 位 か ら の放 出,特 改変 2つ の デ ー タ は ど の よ う につ な が る の で あ ろ うか? 出 に よ る可 能 性 を薬 理 学 的 に 示 した73)。この 筆 者 は 図6に Schwabら 示 す よ う な 作 業 仮 説 を 考 え て い る。 の 結 果 か ら,NI-35がCa2+誘 出 を介 す る と して,引 制 因 子 はNI-35の 因 す る ので あ ろ うか?少 み で はな い の で,PTX感 受 性 のG蛋 受 性 の唯 一 な く と もNI-35はPTX感 依 存 性 のCa2+チ 白 質 を介 し て 作 用 して い る可 能 性 が 考 え ら れ る53)(図6)。 れ て い る の で,最 き金 とな るCa2+放 はNI-35が 成 長 円 錐 の退 縮 の 前 に 度 を 上 昇 させ る こ と,こ のCa2+濃 昇 は,電 位 感 受 性 チ ャ ネ ル を 通 じて のCa2+流 度上 入 で はな C(PLC)の PTX感 発 性Ca2+放 出 は ど こ に起 な く と も細 胞 外Ca2+が も可 能 性 が 高 い の はIP3に よ るCa2+ 産 生 はホ ス ホ リパ ー ゼ 活 性 化 が 必 要 で あ る。 こ のPLC活 受 性G蛋 電位 ャ ネ ル を通 って 流 入 す る こ と は否 定 さ 遊 離 で あ る74)。 この場 合,IP,の ,Schwabら 細 胞 内Ca2+濃 発 性Ca2+放 受 性 の 成 長 円 錐 退 縮 をひ き起 こした。 の 因 子 とは い え な い が,少 にCa2+誘 電 後 述 の よ う に オ ク チ ル グ ル コ シ ド可 溶 性 の突 起 成 長 抑 1110 献74を 受 気 泳 動 後 の ゲ ル か ら切 り出 して リ ボ ソー ム に 再 構 成 し 一方 移 動 機 序 に関 して は,文 文 参照)。 性化 に 白 質 が 関 与 して い る ので はな い か と考 え て い る 。 ま たNI-35に 関 して 特 異 受 容 体 が 存 在 す る 33 成長円錐の情報伝達系 は ず で,こ れ がG蛋 白 質 と共 役 す る こ とで この よ う な 作 用 機 序 が 考 え ら れ る。 B.MAG(myelin-associated glyco- protein) 分 子 量 約100Kの 糖 蛋 白質 で,免 疫 グ ロブ リ ン ス ー パ ー フ ァ ミ リー に 属 す る。 中 枢 神 経 系 の ミエ リ ン に 特 異 的 で,オ リ ゴ デ ン ド ログ リ ア が 軸 索 に 髄 鞘 見 られ た 。 この 蛋 白質(ま た は後 半 部 由 来 の膜)をPI-PLC(phosphatidylinositol phospholipase MAGは C)処 理 す る と成 長 円錐 に対 す る抑 制 的 な 効 果 は 失 わ れ る ので,GPI-ア ン カ ー 蛋 白 質 と考 え ら れ る80)。 この ような抑 制 因 子 の存 在 は,nasa1側 か らtemporal を 形 成 す る際 に 重 要 な機 能 を果 た す と思 わ れ て い た が, 側 へ 勾 配 をな して高 濃 度 に分 布 す るこ とが 示 唆 され た81)。 ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で の 髄 鞘 の構 造 変 化 は認 め られ な 膜 画 分 の 懸 濁 液 を シ リコ ンマ ト リ ッ ク ス に 吸 着 さ せ て い とい う75)。しか し,こ の 分 子 が成 熟 神 経 細 胞 の突 起 再 み る と,網 膜 成 長 円 錐 に対 し て 阻 害 的 な 作 用 を受 け る 生 を 阻 害 す る活 性 を 有 す る こ とが わ か り,注 目 を集 め 成 長 円 錐 の 数 は,距 離 に対 し て きわ め て 急 勾 配 を 形 成 て い る76,77)。 す る こ とが わ か っ た 。 こ れ に対 し て 抑 制 性 反 応 を 受 け 可 溶 化 し た ミエ リ ン をDEAE-セ Database Center for Life Science Online Service っ た 。 こ の 蛋 白 質 を リ ボ ソー ム に入 れ て 培 養 す る と成 長 円 錐 の 回避(avoidance)が か け,各 画 分 をNG108-15細 フ ァロ ー ス カ ラム に 胞 の培 地 に 加 え て24時 間 後 の 突 起 伸 長 を測 定 す る ア ッセ イで,DEAE分 は2つ の 活 性 ピ ー ク が 認 め られ,そ の1つ はMAGで あ っ た77)(も う1つ は性 質 は不 明 だ が,NI-35の が あ る)。 第1ピ 失 し,ま MAG抗 ー ク の活 性 は抗MAG抗 画で 可 能性 体 で 完 全 に消 た 可 溶 化 画 分 自体 の 突 起 成 長 抑 制 活 性 も抗 体 で対 照 の63%に またMAGを 低 下 し た77)。 強 制 発 現 したCOS細 な い 成 長 円 錐 の比 率 は,距 離 に 対 して 緩 や か に推 移 す る。 同様 に,ラ 丘(rostral ッ トのtemporal superior 上 丘(caudal retinal axonは colliculus)に 吻側 上 投 射 を送 り,尾 側 superior colliculus)に は 投 射 し な い 。 こ れ も異 常 な 分 枝 に対 す る 抑 制 因 子 が 存 在 す る こ とが 示 さ れ た82)。 この 因 子 もGPI-ア ンカ ー 型 膜 蛋 白 質 で,成 長 円 錐 の 阻 害 で は な く軸 索 分 枝 の抑 制 を行 な っ て い る 胞 は,新 生 ラ ッ ト よう であ る。 小 脳 ニ ュ ー ロ ン や 成 体 ラ ッ トの 後 根 神 経 節 細 胞 の突 起 形 成 を抑 制 し,こ の 効 果 も抗MAG抗 体 で 阻 害 され た と い う76)。 4.体 節 に関与 する成 長抑 制因 子 脊 髄 由 来 の 末 梢 神 経 の 成 長 は,ニ ュ ー ロ ン と体 節 の 相 互 作 用 に よ っ て決 ま るが,sclerotomeの 3.視 を 運 動 神 経,知 蓋 での成 長 円錐 抑制 因子 網 膜 神 経 節 細 胞 か ら視 蓋(上 丘 に相 当)へ の投 射 は 覚 神 経 の突 起,神 前半部 のみ 経 堤 が 移 動 して い く。 この 原 因 を 「成 長 円 錐 の抑 制 因 子 が後 半 部 に あ って,そ 正 確 に決 定 され て い る 。 このretinotectal projectionは の 動 き を抑 制 す る た め に,そ 神 経 路 の 正 確 な 決 定 の モ デ ル と して研 究 が 進 ん で い る。 か ら突 起 が 出 て行 くと考 え る説 が 提 出 され た83)。現 在, この 現 象 の 起 こ る機 構 が,古 こ れ に 関 与 して い る と推 測 さ れ る 因 子 が2つ くか ら研 究 者 の 関 心 を集 め て お り,現 在 も新 しい 手 法 を用 い て盛 ん に研 究 され て い る。 最 近,成 (1)PNA結 して い る こ と を強 く示 唆 す る デー タが 報 告 され て い る。 あ るが,1次 retina)は, 見いださ れ て い る。 長 円 錐 の 抑 制 因 子 が この 現 象 に 関 与 側 頭 部 側 の 網 膜 神 経 節 細 胞(temporal の 因 子 を 回 避 し て前 半 部 合性 因 子 分 子 量 は48Kと55Kで 構 造 は ま だ決 定 さ れ て い な い 。 後 節 か らレ クチ ン結 合 性 とCHAPS可 溶 性 を指 標 に部 分 精 製 され, 視 蓋 の 前 半 部 に選 択 的 に 投 射 し,後 半 部 に は投 射 しな DRGニ い 。 鼻 側 の網 膜 神 経 節 細 胞 に は この性 質 はな い78)。視 蓋 これ ら に 対 す る抗 体 は後 節 の み に局 在 す る83)。 前 半 部 の 膜 と後 半 部 の 膜 を 並 べ て 網 膜 神 経 節 細 胞 を培 ュ ー ロ ンの 成 長 円 錐 を退 縮 させ る活 性 を有 す る 。 (2)T-カ ドヘ リン(truncate cadherin)Ranscht 養 す る と,軸 索 は前 半 部 の膜 のみ に分 布 した。Raperら ら に よ り発 見 され た95Kの と同様 の 方 法 で 可 溶 化 された 視 蓋 由 来 の膜 の成 分 で,成 ミ リー に 属 す る構 造 を有 す る が,膜 蛋 白 質 で,カ ドヘ リ ン フ ァ 長 円 錐 の退 縮 が 強 く起 こ った79)。ここで視 蓋 の前 半 部 と GPI-ア 後 半 部 の膜 蛋 白質 を2次 元 電 気 泳 動 で比 較 す る と33K homophilic結 蛋 白 質 が 後 半 部 に よ り多 量 に 存 在 して い る こ とが わ か 容 体 は同 一 分 子)。 この分 子 は後 節 が 神 経 堤 細 胞 の 移 動 貫 通 部 位 が な く, ン カ ー で膜 と結 合 す る と考 え られ る84)。接 着 は 合 に よ る と推 定 さ れ てい る(す な わち,受 1111 34 蛋 白質 核 酸 酵素 Vol.40 No.9(1995) を 欠 くこ とか ら,後 節 に 強 く発 現 す る抑 制 性 の 因 子 を 加 え た 。 こ の 結 果,移 検 索 す る う ち に 見 い だ さ れ た。 こ の分 子 の 局 在 は神 経 の 比 率 が 著 増 し,fasciculation(突 堤 の移 動 と強 い 負 の相 関 関 係 にあ る85)。運 動 神 経 に関 し 中 で 融 合 し て絡 み 合 い,ま て は,発 生 初 期(ニ と)の ワ ト リ胚 の ス テ ー ジ21∼24)に 一 様 に運 動 神 経 に 発 現 す る た め ,正 は の誘 導 分 子 の 可 能 性 が あ る も の の,こ れ 以 後 は 減 少 し,し だ い に運 動 神 植 片 培 養 で は 突 起 の あ る移 植 片 っ す ぐな 突 起 が 伸 び な い こ な い 突 起 を もつ 移 植 片 の 比 率 も著 増 し た 。 ま た 小 脳 の小 型 神 経 細 胞 を培 養 し,janusinを 基 質 として 接 着 性 を 調 べ る と,こ の 神 経 細 胞 と は ほ と ん ど接 着 性 が 経 が 通 らな い 後 節 や 筋 細 胞 の 非 シ ナ プ ス 形 成 部 の 表 面 な く,一 方,F3を な ど に局 在 す る よ うに な る86)。この こ とか ら,運 動 神 経 は 強 い 接 着 が み られ た93)。 の伸 長 を抑 制 す る可 能 性 が 考 えられ る。 運 動 神 経 や,知 起 ど う しが 先 端 や 途 トラ ン ス フ ェ ク トしたCOS細 この こ とか ら,小 脳 神 経 細 胞 に対 す るJ1-160/180の 覚 神 経 に対 す る 成 長 抑 制 が 直 接 示 さ れ た わ け で は な い 突 起 成 長 抑 制 作 用 はF3/F11に が,こ 係 し て い る と考 え られ る 。 し か し,F3/F11はGPI-ア の よ う な 機 能 を もつ 可 能 性 も期 待 さ れ る 。 胞 と 媒 介 され る接 着 能 に関 ンカ ー 蛋 白質 で,細 胞 質 内 ドメ イ ン を有 さ な いた め,そ の 先 の 情 報 伝 達 経 路 は不 明 で あ る 。 Database Center for Life Science Online Service 5.Thy-1 Thy-1分 子 もGPI-ア ン カー で膜 と結 合 す る。 脳 で は 発 生 後 期 に な っ て 発 現 が 急 増 す る。 こ の こ とか ら,発 生 後 期 か ら の 突 起 伸 長 の 終 了 と こ の 分 子 の 関 連 性 を示 7.ニ ワ ト リ胚 脳 由 来 のPTX感 筆 者 はcollapsinな 受性 抑 制因 子 ど を含 む粗 退 縮 活 性 が,PTXに す 結 果 が 報 告 さ れ て い る87∼89)。 い ず れ の デー タ もThy- よ っ て 強 く阻 害 され る こ とを 見 い だ した54)。この 主 成 分 1自 体 は突 起 成 長 に抑 制 的 に作 用 し,抗Thy-1抗 は,Mossら 突 起 成 長 を 促 進 す る 。 ま たPI-PLCで 体 は 膜 ア ンカーが失 わ れ る と成 長 抑 制 機 能 が 失 わ れ る。 に よ っ て 精 製 さ れ,collapsinと 分 子 量55KのGPI-ア は異 な る ン カ ー 蛋 白 質 で あ る こ とが 示 さ れ て い る94)。 発 生 の 際 に ネ イ テ ィ ブ に存 在 す る神 経 成 長 の 抑 制 因 6.janusin(J1-160/180) janusin分 子 が 成 長 円 錐 の 退 縮 させ る機 序 は,前 類 縁 物 質 で あ り90),J1/tenascinと 動 を 二 相 性 に 変 化 させ る(す 述 の よ うにあ ま り解 明 さ れ て い な い 。 しか し,現 在 ま で に 見 い だ され 子 は 白質 由 来 で,細 胞 外 基 質Jl/tenascin 同 様 に成 長 円 錐 の挙 て い る 因 子 ま た は そ の 受 容 因 子 は,接 着 因 子 ま た は そ な わ ち,突 起 成 長 に 抑 制 れ と ホ モ ロ ジ ー を 有 す る分 子 で あ り,細 胞 間 ま た は細 的 に作 用 す る場 合 と促 進 的 に作 用 す る場 合 が あ る)91) 。 胞-基 質 問 の 接 着 の モ デ ュ レ ー シ ョ ン に よ っ て 成 長 円 錐 この 分 子 が 血 清 ア ル ブ ミ ン と境 界 を接 して い る と き は, の形 態 を変 化 さ せ る もの と考 え ら れ る。 ま た 同 一 の 分 DRGニ 子 が 成 長 円錐 に対 し て あ る と き は促 進 的 に,あ る が,方 ュー ロ ン の成 長 円錐 は退 縮 せ ず,突 向 性 を変 化 させ てjanusinの 起 は成 長 す あ る領 域 に は入 ら な い(回 避 反 応)92)。 網 膜 神 経 節 細 胞 はjanusinの ある 領 域 に接 す る と,成 長 そ の もの が 抑 制 され る。 成 長 円 錐 に対 す る反 発 反 応 はこの分 子 のEGF様 る とき は抑 制 的 に作 用 す る現 象 が 見 られ る(た とえ ばJ1/tenascin)の で,そ の 作 用 機 序 の 解 析 に は接 着 分 子 に関 し て の 知 見 が 重 要 で あ る と思 わ れ る。 リピー ト3∼5, 型 フ ィブ ロ ネ ク チ ン と ホ モ ロ ジ ー の あ る リ ピー Ⅲ ト4, 5に 存 在 す る。 小 脳 の 神 経 細 胞 にお け るjanusinの 分 子 はF3/F11と 結合 い う接 着 分 子(免 疫 グ ロ ブ リ ン ス ー パ ー フ ァ ミ リー の一 員)と 考 え られ,こ のtenascin様 お わ り に 新 しい テ ク ノ ロ ジ ー の応 用 か ら,新 多 くの 知 見 が 神 経 成 長 に関 し て 得 られ て い る。 成 長 円 錐 の 挙 動 に 関 す る研 究 が 盛 ん に な っ た 結 果,成 細 胞 外 基 質 蛋 白 質 が 神 経 成 長 に 抑 制 的 に作 用 す る際 の を誘 引 す る物 質(netrin95,96)な 受 容 体 と考 え られ る93)。F3/F11はTAG-1/axonin (collapsinな に類 似 性 の 高 い 分 子 で,出 生 後 し ば ら く して ピ ー ク に 到 達 す る。 Schachnerら ど)が 発 見 さ れ,大 の グ ル ー プ は小 脳 移 植 片 をJ1-160/180 抗 体 のFab'を 長 円錐 ど)や 退 縮 さ せ る 物 質 き な話 題 とな っ た。 し か し,成 長 円 錐 自 身 の情 報 伝 達 に 関 し て は,さ 速 な 進 歩 が 感 じ られ な い 。 意 外 な こ と に,成 を基 質 と し て 培 養 し,こ れ にF3/F11に 1112 1 たな数 ほ ど急 長 円錐周 辺 で 神 経 の 突 起 成 長 が どの よ う な 機 序 で 生 ず るか,と い っ た 基 本 的 な こ とが まだ 解 明 さ れ て い な い。 突 起 の 成長円錐の情報伝達系 再 生 な ど,応 用 範 囲 も広 い こ の 分 野 で は 多 数 の ブ レ イ ク ス ル ー が 必 要 で あ ろ う。 近 い将 来 に 筆 者 が 成 長 円 錐 の 総 説 を書 く際 に は,細 胞 骨 格 やCa2+の 問 題 な ど,本 稿 で 取 り上 げ られ な か っ た 部 分 も包 括 し て,さ ら に全 体 像 に 迫 りた い と思 っ て い る。 な お本 稿 で 割 愛 せ ざ る を え な か っ た い くつ か の 点 に 関 して は,筆 者 の別 の総 説 を参 照 して い た だ きた い97)。 文 献 1)RamonyCajal,S.:Anat.Anz.,5,609-613;631639(1890) 2)Barbacid,M.:J.Neurobiol.,25,1386-1403(1994) Database Center for Life Science Online 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