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(前編) ~二度あることは三度ある

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(前編) ~二度あることは三度ある
EU Trends
ギリシャ危機再燃の予兆(前編)
発表日:2016年3月3日(木)
~二度あることは三度ある~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ ギリシャの次回融資を巡っては、必要な改革規模や債務負担軽減を巡って債権者間の意見の隔たりが
大きく、交渉が難航している。ドイツ政府は難民危機対応でギリシャ政府の協力を得る必要があり、
従来よりもギリシャ支援に柔軟姿勢で臨んでいる模様。他方、IMFはギリシャの改革遂行能力を疑
問視しており、より大規模な財政再建や債務負担軽減を求めている。IMF抜きのギリシャ支援はド
イツの国内世論の反発が予想され、ドイツもIMFの主張にある程度耳を傾けざるを得ない。ギリシ
ャ政府は今以上の追加緊縮措置を求められることになり、政治情勢が不安定化する恐れがある。
昨夏に開始されたEUによるギリシャの三次支援プログラム(3年間で最大860億ユーロ)は、当初計画
から遅れがちではあるものの、ギリシャ政府が合意した改革条件を概ね履行してきたことから、初回の融
資トランシェ(銀行救済費用を含めて最大で260億ユーロ)が複数回に分けて実行されてきた(図表1)。
今年から始まったEUの新たな銀行破綻処理指令では、銀行の債券保有者や大口預金者などの救済参加
(ベイルイン)が求められる。新ルール適用による預金流出リスクなどを警戒したギリシャ政府は、昨年
12月に駆け込みで銀行の資本増強を完了した。この間、大規模な融資返済がなかったこともあり、市場参
加者の間で融資打ち切りによるデフォルト懸念が意識されることはなかった。だが、次回の融資トランシ
ェを巡る債権者との協議が難航しており、融資実行の目処が立っていない。ギリシャ政府がすぐさま資金
繰りに窮する状況にはないが、7月に国債償還を控えており、市場の不安心理が徐々に高まっている(図
表2)。ギリシャの10年物国債利回りは、世界的に金融市場が不安定化した2月にかけて、昨夏以来とな
る10%超に上昇した。その後、やや落ち着いたものの、なお9%台半ばで高止まりしている。
海外メディアなどによれば、次回の融資実行を巡っては、EU側(欧州委員会、融資の実行主体である
ESM、ユーロ圏各国政府)とIMFの債権者の間で意見の隔たりが大きいと伝えられる。欧州委員会や
ドイツ政府などが債務危機と難民危機の二重苦に喘ぐギリシャの窮状に理解を示し、政治的なハードルが
高い年金改革案などでギリシャ政府が提案する代替案を一定程度評価しているのに対して、IMFはギリ
シャの改革遂行能力や債務管理能力を引き続き疑問視しており、より大規模な財政再建案を求めている。
今回の融資交渉では、ギリシャの債務負担軽減協議とIMFの融資継続の是非も同時に検討される。E
U側は返済期限の再延期や金利条件の再見直しに応じる構えだが、IMFはより大規模な債務負担の軽減
をしない限り、ギリシャの債務の持続可能性が確保されないと主張している。IMFの二次支援プログラ
ムは3月で終了する予定で、昨夏にEUが三次支援を開始した際、IMFは3月以降もギリシャ支援を継
続するかの判断を保留していた。今回新たな金融支援を開始するに当たって、IMFはギリシャにより厳
しい財政再建を求め、EU側にはより踏み込んだ債務負担軽減を求めることが予想される。仮にIMFが
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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ギリシャ支援から手を引けば、ドイツ政府が今後の支援継続で連邦議会の理解が得られない恐れがある。
折しも、難民危機対応を巡ってメルケル首相が率いるCDUや姉妹政党のCSU内の結束に綻びがみられ、
来年秋に連邦議会選挙が近づくなか、3月13日にはその前哨戦となる3つの州議会選挙も控えている。
これまでギリシャ支援に厳しい態度で臨んできたドイツ政府だが、難民危機対応ではギリシャ政府の協
力が必要な状況にあり、ギリシャの金融支援に従来以上に柔軟な姿勢を覗かせている。ただ、その一方で
IMFのギリシャ支援からの離脱を回避するため、IMF側にも譲歩せざるを得ない難しい立場にある。
IMF専務理事にフランス財務省出身のラガルド氏の再任が決まったことで、こうしたドイツやギリシャ
のナイーブな政治情勢にIMF側が配慮する余地もあるとは言え、IMFが融資ルールを曲げてギリシャ
支援を継続することは難しい。融資再開にはギリシャ側がさらに踏み込んだ年金改革など追加の財政緊縮
を求められる可能性が高い。今後の融資交渉の難航が避けられないほか、追加緊縮の受け入れを巡ってギ
リシャ政局が流動化する事態も想定される。ギリシャ政局については次稿で論じる。
(図表1)ギリシャ三次支援の融資実行状況
実行日
2015年8月20日
2015年11月24日
2015年12月1日
2015年12月8日
2015年12月23日
用途
財政資金・債務返済
債務返済
銀行資本増強
銀行資本増強
債務返済
金額
130億ユーロ
20億ユーロ
27億ユーロ
27億ユーロ
10億ユーロ
累計金額
130億ユーロ
150億ユーロ
177億ユーロ
204億ユーロ
214億ユーロ
出所:ESM資料より第一生命経済研究所が作成
(図表2)ギリシャの政府債務の返済スケジュール
(億ユーロ)
利払い
融資返済
国債償還
政府短期証券(借り換え)
80
70
60
50
40
30
20
10
2017年12月
2017年11月
2017年10月
2017年9月
2017年8月
2017年7月
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年11月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
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出所:Bloomberg資料より第一生命経済研究所が作成
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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