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イタリア早期解散のサブシナリオ ~上院の過半数確保は薄氷
EU Trends イタリア早期解散のサブシナリオ 発表日:2016年12月13日(火) ~上院の過半数確保は薄氷~ 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 田中 理 03-5221-4527 ◇ これまで民主党政権を閣外から支えてきた中道右派政党がジェンティローニ政権の閣僚人事に不満を 表明している。同党の支持が得られない場合、上院の過半数確保には与党から最早1名の造反も許さ れない。連立内の不協和音が高まれば、五つ星運動に不利な選挙制度に改正できないまま、議会の前 倒し解散・総選挙に突入するリスクもある。 イタリアでは次期首相に指名されたジェンティローニ外相が12日、閣僚名簿を提出し、就任宣誓を行な った。銀行危機対応で中心的な役割を演じるパドワン経済財務相のほか、多くの閣僚がレンツィ政権から 留任。後任外相には連立パートナーとして民主党政権を支えてきた新中道右派のアルファノ前内相が就任 する。首相を含めた全18閣僚のうち、13名が最大与党の民主党の議員が占め、新中道右派の議員が3名、 国民投票で改憲に反対する立場を採った中道政党から分離独立した新党の議員が1名、IMFやOECD のエコノミストを歴任した非政治家のパドワン経済財務相が1名の布陣。事実上の内閣信任投票と位置づ けられた国民投票が大差で否決されたにもかかわらず、政権の布陣がレンツィ政権とほとんど変わらない ことに対して、野党勢は一斉に反発。早期の解散・総選挙を求めている。 上院の立法権限を制限する国民投票が否決されたことで、政権発足には上下両院の信任が必要となる。 現在の議会構成を考えると、近く行なわれる信任投票で政権発足が覆ることはひとまずなさそうだ。だが、 中道右派系の小政党「自由主義人民連合(ALA)」が閣僚人事に不満を表明している。同党はベルルス コーニ氏が率いる「フォルツァ・イタリア」が2015年7月にレンツィ政権への支持を撤回した際、フォル ツァ・イタリアから離党したヴェルディニ下院議員が中心となって旗揚げした政党で、これまで民主党政 権を閣外から支えてきた。 同党は上院で18議席、下院で8議席を保有する。同党の支持が得られない場合も、民主党と新中道右派 などの連立与党で過半数を優に超える下院(定数630議席)の信任に不安はない。他方、上院(定数320議 席+終身議員5名)では、連立与党の現有議席が162と終身議員を除いた過半数(161議席)を僅かに上回 るに過ぎない(図表1)。ALAの18議席の協力が得られなくなれば、与党内から最早1名の造反も許さ れない薄氷の信任となる。 イタリアでは総選挙時や政権発足時の多数派工作が盛んで、政権発足から時間が経過するとともに、離 党・合流・新党設立などの動きが活発化する。2014年2月のレンツィ政権発足時の上院の信任投票は、今 の議会構成とだいぶ様変わりしている(図表2)。今回、ジェンティローニ政権が議会の信任を得られた としても、懸案の選挙制度の再改正で連立内部に亀裂が生じれば、いつ政権が行き詰まったとしてもおか しくない。現在のメインシナリオは、総選挙が来年中に前倒しされるにしても、それは反体制派のポピュ 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 1 リズム政党「五つ星運動」に不利な選挙制度に改正された後なので、反EU政権の誕生は回避されるとの もの。だが、選挙制度改正を待たずに政権が崩壊し、総選挙に突入するサブシナリオの不安も拭えない。 (図表1)イタリア上院の現在の議会構成 与党+閣外協力 与党 民主党 みんなの場所(新中道右派など) 左派系地方政党 閣外協力 自由主義人民連合 野党 フォルツァ・イタリア 五つ星運動 北部同盟 右派系地方政党 その他 定数 180 162 114 29 19 18 140 42 35 12 14 37 320 注:2016年12月13日現在の上院ウェブサイトより 出所:イタリア上院資料より第一生命経済研究所が作成 (図表2)レンツィ政権発足時の上院の信任投票(2014/2/25) 信任 民主党 新中道右派 左派系地方政党 市民の選択系政党 その他 不信任 フォルツァ・イタリア 五つ星運動 北部同盟 右派系地方政党 その他 定数 176 109 32 13 17 5 144 59 40 15 9 21 320 出所:イタリア内務省資料より第一生命経済研究所が作成 以上 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内 容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 2