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広告における社会貢献アピールの効果:ブランドイメージと

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広告における社会貢献アピールの効果:ブランドイメージと
広告における社会貢献アピール
広告における社会貢献アピールの効果(1)
―購買意図とブランドイメージの分析―
杉谷陽子(上智大学経済学部)・尾崎由佳(東海大学チャレンジセンター)
キーワード:広告、社会貢献、ブランド態度
企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR: Corporate Social
(Cause-related Marketing)」と呼ばれ、近年欧米を
Responsibility)の重要性が叫ばれるようになって久
中心として研究が盛んに行われている(Chun-Tuan
しい。企業はもはや単に利潤を追求するだけの組織
Chang, 2008)。例えば、実利的商品(例:洗剤や教科
とはみなされず、適切な情報公開や地域貢献活動な
書)の購入よりも、快楽型商品(例:菓子、映画鑑賞)
どを通じ、社会の公的存在としての責任を果たすこと
の購入の方が、社会貢献アピールが有効であること
が期待されている。そのような消費者からの視線に
(Strahilevitz&Myers, 1998)や、高価格商品よりも
対応すべく、現在、環境問題に取り組んだり、貧しい
低価格商品で社会貢献アピールの効果が出やすい
地域へのチャリティー活動などの活動を積極的に行
こと(Chun-Tuan Chang, 2008)などが分かってい
う企業が多くなってきている。
る。
しかしながら、これらの活動は莫大なコストがかか
しかしながら、これらは欧米を中心とした海外の研
るのも事実である。企業活動の本質は利潤の追求で
究知見であって、そもそもチャリティー活動に対する
あり、企業が社会貢献活動に取り組むのは、あくまで
考え方には文化的価値観が大きく影響するだろうこと
それらの活動を通じて消費者の企業・ブランドイメー
を考慮すれば、必ずしも本邦のコーズリレーティッドマ
ジを向上させ、売上を獲得することが目的であること
ーケティングにそのまま適用することはできない。ま
は否定できない。コストに見合うリターンがなければ、
たさらに、本研究は、コーズリレーテッドマーケティン
これらの社会貢献活動は、やがては下火になってい
グがなぜ消費を促進する効果をもつのか、その心理
ってしまうだろう。
プロセスにも焦点をあてることを通じ、より効果的なコ
そこで本研究は、企業の社会貢献活動が、消費者
ーズリレーティッドマーケティングのあり方を提案する
のブランドイメージや購買意図にどのような影響を与
ことも目指す。具体的には、商品の購買を通じて他者
えることが出来るのかを、実証的に検討することを目
を助けるという行動は、自尊心の向上や自己高揚等
的とした。筆者らは、自らの経験や先行研究(e.g.
の効果を有すると思われることから、自己意識との関
Berger,
連を中心として検討を行っていく(詳細は連続発表の
Cunningham,
&
Kozinets,
1999;
Bronn&Vrioni, 2001)に基づき、企業の社会貢献活
同タイトル(2)を参照)。
動は、ブランドイメージの向上や商品の購買を促進さ
本発表では、これらの一連の研究プロジェクトの第
せるだけの十分な力をもちえると考えている。しかし、
一のステップとして、東海大学で実施されている障害
その影響力のあり方や大きさについて、個人差との
者自立支援プロジェクト「パン de ラポール」から協力
関連についてなど、詳細はいまだ解明されていない。
を得て行った第一実験の結果を報告する。「パン de
現在進行中の一連の研究プロジェクトを通じ、企業の
ラポール」とは、障害者が作成したパンを移動販売車
社会貢献活動がコストに見合うだけの効果を有する
で運び大学構内で販売する活動を行い、その売り上
ことを実証的に示すことによって、企業の社会貢献の
げは障がい者の給与に反映されるというものである。
さらなる発展に寄与することを目指したい。
本実験は、このパン販売の広告に実験操作を加える
企業が自らの社会貢献をアピールして利益を獲得
ことによって、社会貢献アピールの効果を検討した。
しようとするマーケティング活動(例:消費者が水を1ℓ
■■■■■■■■ 方法 ■■■■■■■■
購入するごとにその売り上げの 5%が貧しい国に寄
日時:2009 年 11 月
付される)は、「コーズリレーティッドマーケティング
被験者:東海大学学部生 216 名。ただし、商品の社
広告における社会貢献アピール
会貢献性の認識について操作チェックを行い、操作
帰 分 析 を 行 っ た ( 購 買 意 欲 R2=.587, 購 買 意 図
どおりの認識を示した参加者 166 名(男 127、女 31、
R2=.487)。
不明 8)のみを分析対象とした。
その結果、購買意欲では、社会貢献アピールがな
実験計画:1要因計画(社会貢献アピール あり/なし)
い広告を見た場合には、「価格が安い」「パンが好き」
手続き:東海大学内でのパン販売の広告を学生に配
が購買意欲を規定していたが、社会貢献アピールの
布し、質問紙に回答してもらった。広告には、販売の
ある広告では「社会貢献出来るから」という理由が購
曜日・場所等の案内と一部商品の価格等、および簡
買意欲を規定していた。
単な紹介文が掲載されていた(社会貢献アピールなし
一方、購買予測では、社会貢献アピールのない広
条件)。社会貢献アピールあり条件の広告のみ、「売
告を見た場合は「美味しさ」、「パンが好き」、「価格が
り上げは、知的障がい者の自立支援のために役立て
安い」、「ブランドイメージが良い」、「ブランドへの親し
られます。」という一文が挿入されていた。
み」、「小遣い額(この変数のみ負の関係)」が有意と
質問紙:購買意欲、購買予測、ブランドイメージ、購買
なった。一方、社会貢献アピールがある広告を見た
理由、公的・私的自己意識等を尋ねた。
場合では、「美味しさ」以外は社会貢献アピールなし
■■■■■■ 結果&考察 ■■■■■■■
群と全く結果が異なり、「購入場所の便利さ」「既知感」
平均値の分析:購買意欲(「購入したいと思う」)、購買
「品質の良さ」が有意(有意傾向)であった。
予測(「購入すると思う」)、および、商品評価、ブランド
以上の結果は、社会貢献表示がないと、消費者は
イメージに関する複数の項目(table 参照)に対し、社
ブランドへの親しみや商品の安さを重視して購買を行
会貢献アピールありなしによる t 検定を行った。その
うが、社会貢献アピールをするとそれらの効果が消
結 果 、 購 買 意 欲 (t(163)=-1.43, n.s.) や 購 買 予 測
失し、代わりに「社会貢献出来ること」や「品質の良
(t(162)=-1.35, n.s.)では有意な差は得られなかった。
さ」、「購入しやすさ」という視点から購買を行うことが
一方、商品評価やブランドイメージに関しては、多くの
分かった。つまり社会貢献アピールをもった商品は、
項目(例:「価格が安い」「品ぞろえがいい」「温かいイ
既存のブランドイメージによって影響を受けることが
メージ」「美味しそう」)で、社会貢献アピールがあった
なく、また、低価格戦略を用いなくてよいことが示唆さ
方が、ない場合よりも、一貫して高評価であることが
れるため、特に有力なブランドを擁しない企業にとっ
示された。
ては有効な戦略であると考えることが出来るだろう。
この結果は、広告で社会貢献アピールをすることは、
直接に購買に影響することはないものの、商品評価
Table
「購入すると思う」に対する重回帰分析
貢献アピールなし
を向上させる効果があることを示すとも解釈できるが、
商品に「障害者支援」という視点を加えることで、商品
がコンビニなどで扱われている一般商品(コモディテ
ィ)から、付加価値をもった商品へと変化し、価格や品
質についての判断基準(anchor)が下がった、すなわ
ち、「多少高くても仕方がない」「品質が悪くても仕方
がない」という前提で商品が評価されたためだとも解
釈できる。
購買意欲・意図の規定因の分析:平均値の分析では
実験条件によって有意な差が得られなかったが、同
程度の購買意欲・予測であっても、広告に社会貢献
アピールがあるかないかによって、欲しいと感じた理
由に違いがあった可能性がある。そこで、購買意欲
および購買予測を従属変数とし、商品評価やブランド
イメージ、経済状況などの変数を独立変数として重回
β
美味しさ
値ごろ感
社会貢献
ブランドイメージ
既知感
パン好き
購入しやすい
品揃え
商品:美味しそう
商品:品質が良い
商品:値段が安い
商品:品ぞろえが良い
ブランド:温かい
ブランド:やわらかい
ブランド:親しみやすい
ブランド:力強い
ブランド:活発な
小遣い(月)
稼ぎ(月)
0.30
0.07
0.14
0.29
0.06
0.21
0.11
0.13
-0.05
-0.01
-0.27
0.09
-0.23
0.12
0.40
0.03
0.17
-0.21
-0.03
** p <.01 * p <.05 + p <.10
t
2.78
0.90
1.44
** 3.09
0.62
*
2.31
1.32
1.50
-0.34
-0.06
* -2.54
0.74
-1.34
0.84
** 3.21
0.26
1.11
* -2.32
-0.30
**
貢献アピールあり
β
0.31
0.01
0.16
-0.25
0.27
0.08
0.30
-0.01
0.14
-0.31
0.00
0.21
0.07
-0.18
0.08
0.01
0.06
0.15
-0.03
t
2.50
0.05
1.42
-1.65
+ 1.99
0.66
*
2.35
-0.07
0.88
+ -1.74
-0.03
1.49
0.42
-0.98
0.46
0.07
0.48
1.40
-0.33
*
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