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ブランド戦略と環境改善に注力する企業訪問記
平成24年度県外工場見学 年月日:2012 年 11 月 30 日 記事:(株)千代田精機 浪本進一郎 「ブランド戦略と環境改善に注力する企業訪問記」 琵琶湖の北端にあります「兵神装備株式会社 滋賀工場殿」を見学しました。兵神装備さんは、色々 な液体を移送する産業用ポンプメーカーで、特に「モーノポンプ」は食品の原料、具入りスープなど の固形物を含んだ液、変質しやすい化学薬品の移送、汚泥の排出など多くの産業分野で高粘度・高濃 度液の移送に使われています。 製造業にとって製品や部品を製造する加工技術は最も重要なことですが、顧客を獲得し拡大するに はその優れた製品・部品を製造していることを認知してもらう必要があります。それが企業ブランド、 製品ブランドです。企業ブランドの確立を戦略的に進め、さらに環境対策に注力している会社の状況 を見学・視察することとなりました。 滋賀工場は神戸から車で約 3 時間、琵琶湖の北端・長浜にあります。途中黒壁スクエアで昼食を取 り、予定通り1時半に到着後、早速テクニカルセンター4階会議室に案内されました。 総務部小谷副部長様から、本社は神戸市兵庫区御崎本町にあり、滋賀工場は生産拠点として 1973 年 に竣工された等の会社概要の説明を受けました。引き続いてブランドマネージャー高瀬部長に「企業 ブランド」の必要性、取り組み方、さらにその効果などを約1時間講演していただきました。 「ブランド」と言うのは銘柄や商標のことで、ノルウェーの放牧民が自分の家畜を示すために焼印 を押した「バーンド」に由来します。スコッチというウイスキーが有りますが、あれはスコットラン ドで生産されているモノで、そのウイスキーを示すために樽にスコッチの焼印をいれた。その後、ス コッチと言えば美味しいウイスキーと言うまさにブランドになっています。多くのファンから信頼を 得て「また買いたい」と思われるモノになってきました。これが会社名をいわなくても分かる商品ブ ランドです。さらに企業としてのブランドが向上すると「この会社の製品を買いたい」と思われる。 また就職活動している学生は「この会社で働きたい」と願望する。これが企業ブランドです。 その企業ブランドをデザインすることが加工技術と同じように重要となってきています。 ●ブランドデザインの基本に「基本価値」「情報価値」「周辺価値」などが有ります。 ・基本価値とは製品そのものです。性能はもちろん製品のデザインは重要です。美的デザインに加え 人間工学的なデザインをする“設計とデザインのコラボレーション”が必要です。 高付加価値で美しく、環境に配慮したエコロジー製品で、そして安全であり、価格が最適である等々、 ブランドエッセンスとして、高性能で高精度な高級ポンプから技術力を示すことができます。 例として、「ロボディスペンサーシリーズ」は意匠・特許を取得しグッドデザイン賞受賞、発明大 賞受賞しました。これらは一からデザインを見直し、かつてはまさに工業製品といった形であり、 無駄な部品や操作しにくいところがあり、「ダサイ」といった感じでしたが、設計コンセプトから 見直し、デザインして完成させました。事例は他の製品に水平展開しています。 ・情報価値として他社と識別するために、「ロゴ・マーク」はもちろん会社そのものをデザインする ことがあります。商標のロゴ・マーク、パンフレット、袋などあらゆる物を一新しました。それら は全てデーターベース化して、例えばお渡しした会社の袋は、「サイズ、色、発注先、価格」など データーベースに収められています。このデーターは全社員が閲覧できます。 ・周辺価値としてはアフターサービスをデザインすることで得られるモノがあり、どの様なアフター サービスが顧客にとって、また自社にとって有意義で効果があるかアフターサービスのやり方をデ ザインする。すべての製品はオーダーメイドで供給しており、納入後も速やかなメンテナンスが行 えるよう全国の拠点を整備し、現在アフターサービスは充実してきていると思っています。 ・またマナーについてもデザインする。お客が来られたときの対応について「どの様にすれば好印象 にお招き出来ているか」デザインすることが必要です。 さらに会社の建物をデザインすることで、印象に残る工場になります。たとえば高速道路から見て 企業の状態が一目でわかる様にする。夜になるとLEDライトが点灯して「HEISIN」のマー クが浮かび上がる。すると高速道路からでも良く見えるわけです。 ・工場は省エネルギーでなければなりませんし、安全な作業環境が求められます。これらをデザイン した結果がこの工場です。この滋賀工場は湖北にあり、冬はとてつもなく寒い。工場全体を暖房す ることは膨大な電気が必要でありますし、また夏は暑いので冷房が大変です。そこで省エネ工場と してデザインしたのがこの工場です。 例えば必要な設備、必要な人員などを考慮して、工場の中に「製品組立工場内作業ルーム」を造り ました。壁をすべてガラス張りとし外と中に一体感を持たせ、さらにデザインの本領として色で区 分けしていますが、この「製品組立工場内作業ルーム」もグッドデザイン賞を受賞しました。 ・地下水(温度は約 15℃)をくみ上げて循環させ、それを利用して冷風を吹き出し、クーラーの代わり にしています。その結果約10℃位は温度が下がっています。また冬は室外の気温が零度であって も吹出す風が15℃なので温かいし、少しの暖房費で充分効果があります。 ・研究開発を行う建屋は全面二重ガラス張りにしていて、ガラスとガラスの間は人が通れる空間を設 けています。ガラス張りの天井には自動開閉のルーバーを設置し、冬には太陽光を取り入れ床を暖 めることで外は雪でも温かい。 ・工場の中をさらに細かくデザインしています。ブルーの大きく表示しているパネルラインには工場 の組立ラインを表示しています。また顧客の立会場所を特別に設置し、そこでは3組が同時に立会 出来ます。設備・測定器はすべてその場所にあり、測定数値はデジタル表記で検査確認できます。 ・その他、今日パンフレットをお渡ししましたが、そのパンフレットも「日経広告大賞」「日本Bto B広告賞 銀賞」を受賞しました。これはモーノポンプの特長を素早くお知らせ出来るように工夫 されています。従来の機械・機械したカタログを一新してより分かりやすい表現にしています。 ・最後に、展示会といえば東京のビックサイトですが、会場では十分な説明が出来ないため展示効果 が薄い。そのために「展示車:キャンペーンカー」を6台(4ton 車)持ち、営業活動しています。営 業マンが客先でいくら説明しても十分には伝わりませんが、現物と実演を見てもらう事でポンプの 効果が実証出来ます。車には展示会場にも展示出来るモジュール(1m ×1m)にして搭載しているの で、製品の交換が容易であり、この車両のまま展示もできます。 ・最後に、ブランドデザイン戦略の一つとして、かなり分厚いが技術データー集を各者(技術者)に 無料で提供しています。これはネット Web にアクセスしてパソコンで見ることが出来、計算ソフト の指示に従って必要数値をインプットすると即座に計算できます。 その後、2人の可愛い女性の案内で工場を見学しました。説明している女性は今回初めての説明との ことでしたが、マニュアルに従って懇切丁寧な説明を受けました。 ・本社の入口に自社製品の写真をプラスチックの額に納めて並べている。 食堂は室内の壁・ドア・テーブル・椅子など何処かのレストランに行った感じです。 ・工場の社員は其処ここで立ち上がって挨拶をしてくれました。内部は事前に説明を受けた通りで、 「製品組立工場内作業ルーム」「部品検査場+検査機器ルーム」「顧客立会専用場所」「部品倉庫」 があり、部品倉庫の部品はその日の3時までに注文を受けるとその日の内に発送します。自動倉庫 では有りませんので人間が作業します。そのために部品の有る場所は通路側から見ても一目でわか る様にしている。組立に必要な部品は別ラインにしている。 ・工場で消費する電力、太陽光発電で得られる電力などが表記され、省エネにどれだけ寄与している かを表示している。 ・加工現場では「モーノ」の実物を触ることが出来ましたが、残念ながら「秘密」と言うことで加工 は見学できませんでした。 ・製品の出荷は金属製の専用網かごに収納して行っている。木脇にするとその処置に困るし環境対応 の一環として実施しているが、網かごの回収率は90%以上あり、この方法がお客様の理解を得て いると思われる。 ・研究棟では天井の自動ルーバーを開閉しましたが、確かに室温は太陽光によるもので、暑くもなく 寒くもない適度な温度でした。他の工場建屋も同じ感覚でした。 ・製品に関することはトレーニング室が有って、そこには各主要パーツや加工試験用パーツがあり、 新入社員の教育、メンテナンス関係の研修、社外の人の研修などが行われている。 その他、多くの所を見学させていただきましたが書ききれません、ここまでとします。 会社概要 滋賀工場 本社所在地:神戸市兵庫区御崎本町 1-1-54 代 表 者:代表取締役社長 小野純夫 資 本 金:99,500,000 円 設 立:1968 年(昭和 43 年)1 月 16 日 売 上:93 億円(2011 年 12 月期) 従 業 員 数:336 名(2012 年 1 月 1 日現在) 写真はホームページより