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日消外会 誌 7 ( 3 ) : 2 1 7 ∼ 2 3 0 , 1 9 7 4 年
一原 著 一
噴門部手術侵襲後 の逆流性食道炎 につい て
一―主 として食道内圧 お よび食道 内
―
pHか らみた術 式別検討 ―
新潟大学医学部第 1 外 科教室 ( 指導教授 : 武 藤輝 一 )
谷
(昭和48年 12月19日 受 付)
STUDIES ON REFLUX ESOPH▲
CITIS FOLLOWINO SURCERY
IN THE CARDIAC RECION
い
― COMPARISON OF SEVERAL OPERATIVE PROCEDURES BY MEANS
OF INTRALUMINAL PRESSURE AND PHaMttTRY―
Hisashi TANI
lst Departlnent oF Surgery,Niigata University Scho。
1 0f MIedicine
(DirectOr: Prtt Terukazu MIuto)
噴門部 になん らかの型 で手術侵襲の及ぶ各種手術術式
につ いて,術 後食道内圧曲線 ,岬 測定 ,内 視鏡観察およ
る。
び同時生検所見か ら,そ の生理機能面,逆 流 の程度,食
道内圧を測定 し研究 す る 試みが なされている.こ れは
1883年 Kronecker3)に
よ り始め られ,つ いで MeltZerり
,
道炎 の実態などにつ いて比較検討 した。食道下端部 お よ
び噴門部が切除 された術式では全例に昇圧帯は消失 し,
IIt曲
線測定上 で もやは り逆流現象が認 め られた。 胃全摘
/J合術式間には,食 道内圧測定上 の差は認め ら
例 の各種「
れなかつたが,Itt測定 では,に
指腸液 の流入通路 と食
道 の間に距離を とる術式では逆流の少ない ことが認め ら
れた。下部食道上部 胃切除術 ,食 道 胃吻合術後における
胃内容はアルカ リ性が殆 ん どであ り,そ の逆流によるア
ルカ リ環境下において 胃炎 お よび食道炎を起 こす ことが
観察 された。
I 緒
言
食道 胃接合部 (以下 ECJと
略す)は ,体 腔内圧上か
らみる と胃内陽圧 と胸部食道内陰圧 の境界部を意味 し,
明 らかな括約筋を もたない とされなが ら,胃 内容 の逆流
防止機構は確かに存在す るといわれている。 この逆流防
止機構については,後 述する如 く,解 剖学的 , レン トゲ
ン学的 ,生 理学的立場か ら数多 くの研究報告があるが,
このEG」 の生理学的機能の一面を把握す るため,食
Schreiber5)ら
の 報告 が み られ る。 これ ら は いずれ も
bal10m法 に よる 。ncometricな間接的伝達法に よる研
■icsの 進歩 に伴 い
究であつたが,近 年 medical electr。
内圧を直接捕 らえ うる 。pentiP法に よる manometricな
測定が実用化 され ,小 範囲の圧変化を正確に測定できる
ようになつた。ButinC),Sanchezめ
,Code3)ら の詳細な報
9),
官 10),赤 ll)ら
の
告 に続 き,本 邦 において も坂西
川
倉
研究以後 ,そ の面での報告 も数多 くみ られ る。
さて,消 化器外科領域において,こ れ らの問題 につい
ての 日常 の課題 として,噴 門部手術侵襲後に意外に多 く
の食道炎 の発生がみ られ,症 候学的にあるいは診断及び
治療 の面 で難渋す ることが 多い。 これは主 として同部 の
逆流防止機構 の手術侵襲 に よる機能低下あるいは廃絶 に
よるものである。 とくに胃全摘あるいは上部 胃切除術後
の長期経過観察中に逆流性食道炎を起 し,愁 訴が強 く食
旬摂取 も困難 とな り,栄 養低下をきたすほか,時 に多量
の出血 ,努 孔 ,狭 窄な どの合併症を きた し貴重な症例を
その多様性は この解明 の 困難 さを 物語 るものである.
Reichl〕は 「
種 々の研究は ,た だ確かに逆流防止機構は
存在す るとい う点 で しか一致 しない」 といい,Ingelin_
失な うこともある。 このよ うな事実か ら,こ れまでにい
ろいろと逆流性食道炎を予防 しようと積極的 に手術的な
gerのは,“The SPhincter tttt is a sPhinf'と
述べ てい
試み ,す なわち逆流防止弁作製術,腸 管間置移植術な ど
噴門部手術侵襲 後 の逆 流性 食道炎 について
2(218)
も
S S段
冴
空B間 と術
I―
含 畠 切座行
`口
電全 崎命
洪捕
。
c―
」
表 1 教 室 で 施行 した 胃全摘後 各種 吻合術 式
吻
合
術
式
R召26. 1
∼ F召44. 12
F召45. 1
ハツ町
目47. 12
ル ー プ式
336(78.3)
13(27.1)
lal.t'. Plenk AE
27(6.2)
22 (45.8)
53 (12.4)
6(12.5)
1 1 ( 2 . 6 )
2 ( 0 5 )
3号
(EF)の 2種 類を用いているが,現 在では操作上 の有
機性 の問題 で後者を主 として使用す ることが多かつた。
図 1 胃 切除後主 として行 つた吻合術式
町 全 崎 行
J I 都日 切 除 術
日消外会 議 7巻
7(146)
429
観察時 に 所見を記録 ,写 真撮影 と同時 に 2な い し8個
(平均約 4個 )の 生検を行い,組 織学的検索を行つた。
食道炎 の組織学的診断 には,粘 膜 ,粘 膜下層 ,さ らには
筋層を含めた組織片を必要 とす る こともあ り,生 検鉗子
の構造 上,的 確に摘 出で きない こともあつ て,標 本作製
上 ,観 察 に十分な切片を作 ることに困難な ことが多 く,
参考程度に とどまる こともあつた.
2.食 道内圧測定法
圧誘導管 として, 長 さ 約 100Cmの ポ リエチ レン 管
(ICARASHI No.33:外 径 1.9ml)を 使用 し,受 圧面
として,チ ユ ーブに先端孔及びその極 く近 くに内径 とほ
9)に
ぼ等 しい側孔を開けた。教室 においては以前, 坂 西
よ り先端孔 に よる測定が 行われ てお り, また 一方Hei_
tmann12)らは,同 時 レ線透視を行 うため,先 端を レ線透
●
視 で確認 で きるような ク リップで止めて側孔を開け測定
してい る。著者 も最初,両 者を試 みてみたが,時 に受圧
孔 が食道粘液 ,逆 流消化液,食 物残澄な どに よつて閉塞
され内圧の伝達が障害 されることがあ り,そ のため先端
孔 お よび側孔 の近接 した 2受 圧孔を作製 して測定 した と
ころ,か な り満足すべ き結果がえ られた。
輸液 セ ッ ト中の生 ゴムとビニール管を利用 した コネ ク
タ ーを作製 し,前 述 のポ リエチ レン管を低圧型圧カ トラ
LPじ o.1型)に 接続 し,
ンス ジューサ ー (日本光電製ヵ
さらにア ンプ (MEO_1500.FUKUDA ELECTRO)を
曲線を
通 して,同 附属 の PENRECORDER MN_lx 5で
先達 によ り考案 された術式は数 10種にのぼつている.
教室 では 従来 胃全摘術 に 対 しB.エ ル ープ 式吻合兼
Braun吻 合 ,上 部 胃切除術に対 し食道 胃吻合が大勢を占
めていた。最近その術後愁訴などの追跡調査 に よ り,逆
描記せ しめた (図 2).
図2 食
道 内圧 お よびpH測 定法
流性食道炎 の発生が意外 に多い ことか ら,原 疾患 に対す
る治療は もちろん重要 であるが,術 後愁訴 について も,
で きればその予防対策を考慮 に入れた治療方針で臨むベ
きであ ると考え,そ のための予防的再建術式を試 みてい
る (図 1,表 1).著者は これ らの手術施行例 に対 し,食
道 ファイパ ース コープに よる観察 ,同 時生検所見 ,食 道
内圧曲線 お よび 食道内ぷ変動な どに よ り各術式別に比較
検討を加 え若子の知見を得たので報告す る。
II 模 査方法
1.食 道内視鏡検査および同時生検
ー
食道鏡 には,金 属製硬性鏡 とグラス ファイパ 製軟性
鏡 とがあるが,食 道炎 の検索 のためには後者がはるかに
ー
ー
有利 である.教 室 では,町 田製食道 ファイパ ス コ
ー
ー
プ (FES)と
,オ リンパス光学製 ファイパ ス コ
内圧 測 定 上 の 注 意
上述 のセ ッ トを使 い,電 気内圧曲線を測定す るわけで
あ るが,食 道内圧は低圧 で, しか も圧変化 が 微妙 であ
り,と くに留意 しなければな らない事項があ る。 まずチ
ューブ先端 の受圧面 に,常 に圧を媒介す る液面がで きて
いることであ る。つ ぎに受圧面か ら トランス ジューサに
至る液体中に気抱がない ことである。 このどち らが欠け
■
3(219)
1974年5月
て も圧 の伝達は障害 され る。受圧孔を 2つ に して も,水
の表面張力,毛 細管現象に より,チ ューブの先端には常
図 4 圧 変換 器 と受 圧 面 の i 首さの相違 に よる基 線 の
変動
に液体が存在 していることが確認 された。以前 よりこれ
らに対する対策はいろいろと考え られ てお り,Texter3ち
Pert14)らは, チ ューブにゆつ くり水を流入 させなが ら
測定す る ことを提唱 した.
Hcitmann12),Bombeck15),caStell16)ら
は輸液 ビンなど
を使用 し,途 中の コネ クターよ り 0.2∼2m1/min・の一
,伊
定速度 でチ ューブに水を送 りなが ら測定 し,ZfaSSlめ
13)ら
ヤ
まinfusion pumpの
藤
使用を強調 している.著 者は,
Schlegel19),坂
西9),CChen20〕
らと同 じく, トランス ジュ
ーサ近 くの三方括栓 よ り時 々 nushing し なが ら測定 し
at
an equsl
level
た。
また,内 圧曲線上 にチ ューブのユ レなどに よる余計な
波形が入 りこまない よう測定操作は静かに,か つ丁寧に
●
行わなければな らない。
食 道 内圧 曲線 に 及 ぼ す 諸 因子
測定 された食道内静止圧曲線をみると,呼 吸に一致 し
Trsnsducer
:
at
e I0
cn h!8her
Isvel
たかな り大 きく上下に振れる波 と,そ の波の間に も心縛
動に一致 した小 さな振れを認める.こ の心緯動 による波
は食道上部程影響が薄れ るのは当然である (図3)。
図 3 呼 吸および心揮動 の食道内圧 におよばす影響
図 5 正 常人食道 内圧 お よびpH曲 線
( 首列 よ り) ' O C m
●
静 止圧 基 準 点 につ い て
教室 では さきに坂西に より呼気時 腎内圧を基準点 とし
て測定 されていた 今 回著者はつ ぎのような理 由か ら大
気圧を 0点 として選んだ。
食出 静 止 圧 曲 線
くに 常例 )
(1)主 なる測定対象 である胃切除術 の 手術前後 で
は,腎 内圧 の変化が 当然考えられ,し か も対象症例 の大
半が 胃全摘術後 であつた.
(2)受 圧面 と圧変換器を同一 レベルに置け ば,圧 絶
対値 (大気圧を 0と した時の圧近似値 )を 知 ることがで
きる.し か し図 4の 如 く圧変換器 と受圧面 の高 さが変 る
と,基 準線 にズ レが 出るため十分注意 し,息 者 の体格等
に よ り1例 づつ調整 しなければな らない.
ーマ
静 止 圧 師位 別 平均 生 シ ェ
(3)測 定 の始め と終 りに基線を確認できる。
3.食 道内 PH測 定法
食道内ぷ測定 には,消 化管用複合電極 (堀場製640125T)を 使用 し, その 記録 にはpHメータ (日立―― 堀
( 歯 列 エ り ) 4,c口
噴門部手術侵襲後 の逆流性食道炎について
4(220)
場製M-5型
)を 用 いた.測 定前後 に 堀場製ぷ標準液
補正を行つた,
(100-4, 100-7, 100-9)で
IH 正 常大食道内圧および PH曲 線 (図5)
口消外会 誌 7 巻
3号
cm(平 均44cm)の 点 でJは 急陵に上昇 し,食 道内ぷ平均
7.1となつた (図 5,上 段).急上昇す る点は,食 道静止
圧曲線で認めたHPZの
胃側境界 に 一致 し, こ こにお
1.検 査対象
いて 胃内陽圧∼胸部食道内陰圧 の Pressure gradient(圧
正常例 として,外 米及び入院息者 の中か ら,な ん ら食
差)に よる逆流の防波堤を形成 していることを認めた
IV 膏 手術後の食道内圧曲線およびPHの 変動
道疾患を有 さない もの10例を選び,前 述 の方法 で食道内
変動を記録 した.対 象例 の年令は ,29才
静止圧及びIIIの
よ り45才までで,平 均36.3才であ り,性 別は男 5例 ,女
5例 であつた.
2.正 常人食道内静止圧曲線
の 速 さで静
胃内に挿入 した ポ リエチ レン管 を l cm/秒
かに引 き抜 きつつ記録 した。 同様に記録紙の速 さを l Cm
1.検 査対 象
検査対象は,教 室 において 胃癌あるいは下部食道癌根
治手術を うけた もので,術 後 1カ 月か ら最長 16年を経過
した 症例 である.そ の うち わけは表 2に 示す如 くであ
り,計 52例に対 して前述 の方法 に よ り食道内圧 お よびN
を測定 した。
/秒とし,こ れによリグラフ上の 長さと実際の食道の長
さは一致 し,極 めて対比 し易いグラフができた。
(1)胃 底部圧
胃底部では,吸 気時に上向きのフレ,呼 気時に下向き
のフレを示す曲線を描いた 吸 気圧呼気圧 の 中間値 は
の範囲にあ り,全 rllの
で
1.5∼5.Omlll地
平均は 3.4mmに
あつた。大気圧を基準とした時,胃 底部圧は必ず陽圧で
(2)食 道 胃接合部圧
EC」 は食道静止圧曲線の うえで,昇 圧帯 (high Pre_
Ssure zone以
下HPZと 略す)と して 正常人 の 全例に
42.5cm(平均41.2
認められた。HPZは 歯列 より40.5∼
clll)の
距離か ら,巾 は 1.5∼4.5cm(平均 2.8cm)の範
囲にあつた,圧 の大きさは 6.0∼15.OmmHgで
あ り,全 例
の平均は 9.6mlll地
であつた.
(3)胸 部食道 内圧
胸腔内食道の引き抜 き法による静止圧曲線は,胃 底部
とは 逆に 吸気時で下向き, 呼気時で 上向きの フレを認
めた。 この 吸気圧呼気圧の中間値 は 全例陰圧を示 し,
-2.0∼ -10.Omll地(平均-5.lllmHg)でぁつた。 吸
気呼気に よる 内圧変動 が 逆転する個所を呼吸相変換点
目全 摘 術
B H ル ープ式吻 合兼 B r a u n 吻 含
同 上 .PIenk変 法
Roux‐
Y吻 合
空暢間置術 , S ― S 吻 合
上部 胃切除術
食道 胃吻合術
空腸間置術
し,こ れ らを合成 した ものであ る。
3,正 常人胃食道内PHの 変動
消化管用複合電極を 胃内に挿入 し,静 かに引 き抜 きな
が ら, 1な い し5 cmの
間隔でIttの
変動を預J定し,グ ラフ
上にプ ロッ トして曲線を船記せ しめた。
宵内ぷは 1.2∼ 2.5(平 均 1.9)で ,歯 /11よ
り42∼47
7例
2例
5例
下部食道 な らびに 目噴門部切除術
食道 胃吻合術
3例
胃幽門側亜全摘術
G ―
」, B I I
9例
2.胃 全摘術 ,食 道空陽 Blllroth II法
ルー プ式吻合
ー
Bra_吻
プ式吻合 と略す)術 後の
兼
合 (以下 BIル
食道内圧曲線およびPHの 変動 (図 6)
(1)食
道 静 止 圧 曲線
図 6 目 金摘術,食 道空腸 BIル ープ式吻合兼
Braun吻 合術後 の食道内圧曲線およびPH
の変動
下 PIPと 略す)と 呼び,
(PreSSure invettion Point,以
HPZに 存在 した.
以上 の測定結果を総合 し,平 均的 シエ ーマを作つてみ
ると,図 5下 段に示す如 くである。 このシエ ーマは,胃
底部屋 の平均 ,胸 部食道内圧 の平均 ,そ れにHPZの み
を別個に,圧 の大 きさ,巾 および門歯か らの順離を計算
18例
例 例
あ り,陰 圧を示 した症例はなかつた。
表 2 検 査対象
食 道 伸 止 E曲 線
1974年5月
5(221)
図 8 高 度逆流 を認 めた症例
① 腹 腔内空腸内圧
正常例における胃内圧に相当す るのは,こ の場合食道
下端 と吻合 された 空腸内圧 である。 圧の高 さは 1.5∼
3.3mlBHg(平
均 2.4mllHg)であ り,正 常例 胃内圧 に 比
べ ,か な り低いが,全 例陽圧を示 した。
!
② 食 道空腸吻合部圧
正常例でみ られたHPZに
相当す る部分であるが,本
例 の場合,HPZの
認め られた症例は無 く,腹 腔内空腸
内圧が生理 的横隔膜部位 まで続 き,そ こで逆転 して陰圧
とな り,胸 部食道内圧 へ と移行 した。
③ 胸 部食道内圧
正常例同様全例が陰圧を示 した.圧 の高 さは -3.2∼
-5.41Rlllllg(平
均 -4.lmmIと)で あつ た。腹腔 内空腸内
圧 と胸部食道内圧 との間の圧差は 6.5mllHgで
あ り,正 常
例 の 8.5mm叱に比 し, かな りの 低下 が 認 め られた (図
7).
図 9 博 全摘 術, B I ル ー プ式吻合, P l e n k 変 法術
後 の食道 内圧 曲線 お よびp H の変動
図 7 食 道静止圧曲線 シ ェーマ ( 正常例 ならびに胃
金摘術後)
f簸
を ::丁
一o . [ n E l n g
( 胃的
(会
期
的
_4. i nttHg
に
蹟潟E)に
道 内D
ヨープで も,食 道内への胆汁の逆流が認 め られ るもので
正 常例
( l o 例 平均)
日
全 摘 ,BI・
ル ー プ式
素 Braun 功 合
あ り,つ ぎの症例はそ の典型的な ものである。
N.64才 ,女 性 (図 8)
症 例 :I・
38年
12月12日胃全摘術, BIル ープ 式吻合術施
昭和
(2)食 道 内Hi
胃全摘 ,BIル ープ式吻合術後 の食道内Itt曲
線は,正
常例 に比べ いち じる しく異つ ていた。食道下端 と吻合 さ
行.現 在,「 苦 い ものが こみ上げる感 じ」 と 「胸骨後部
の灼熱感」を訴え,外 来通院加療中 の患者であ る。食道
れた空腸内 は アルカ リ性 であ り,そ のIHは 7.2∼ 7.5
(平均 7.4)で あつた.吻 合部にHPZは 認め られず,
静止圧曲線をみ ると,32∼ 39cmの間で,食 道内に貯溜 し
た十二指腸液へ心拍動が影響 した異常波がみ られ,ぷ 山
Ittの
急峻な変動 もみ られず,空 腸内アルカ リ性 よ り,食
道上部ぷ 7.0(平 均値6.98)に 向つてなだ らかな変動を
みせた。ただ18例中 6例 (33%)に 歯列 よ り35cm付近 で
線 で も同中央部35cmにおいて辞 7.8と高 くなつ ていた。
まで胆汁を主 とした十二指腸
内視鏡で も歯列 よ り28oBl位
IItの
軽度上昇がみ られた。
例外 の 2例 :図 6上 段のIIt曲
線 (症例① 66才 6,症
例② 41才 9)に み る如 く,極 めて高いぷを示 した もの
3.胃 全摘術 ,BIIル ー プ式吻合,PleaL21)変 法 (以
下 Plenk変 法 と略す)術 後の食道内圧曲線およびPHの
があつた。 これは下部腸管癒着のためであ り,こ の 2例
は平均値か らも除外 した.
HPZは 圧差に対す る防波堤であ り,こ の消失 と圧差
の低下は,腹 腔内陽圧 よ り胸腔内へ十二指腸液を伴つた
圧流入が関係 していると考えられ る。災際 ファイバ ース
液 の逆流を認めた.
変動 (図9)
(1)食 道 静 止 圧 曲 線
1)腹 腔内空腸内圧
全例陽圧 を 示 し,圧 の 高 さは 1.8∼ 3.5mllHg(平
均
2.411m性
)で あ り,前 に述べた 目全摘 ,BIル ープ式吻
合 と全 く同 じ傾向を示 した。
噴門部手術侵現後 の逆流性食道炎について
6(222)
2)食 道空腸吻合部圧
全例にHPZは
認 め られず,ま た機能的変化を思わせ
全例陰圧であ り,圧 の高 さは-2.2∼ -4.8mll叱 (平
均 -3.llllHg)で ぁつ た。腹腔内空腸内圧 と胸部食道内
であ り,正 常例 に比 し,か な
圧 との間の圧差は 5.51Bll叱
.そ
の圧差 の間に隔壁 となるHPZ
りの低下 がみ られた
3号
均 -4.OmllHg)で ぁつた。空腸 内圧 と胸部食道内圧 との
圧差は 6.OmmHgであつた,
る特別な波形は認め られなかつた。
3)胸 部食道内圧
日消 外 会 誌 7 巻
(2)食
道 内pH
吻合部直下 の 空腸内Jを みてみ ると,S‐S吻 合 :Ilt
7.1∼ 7.3(平 均 7.2),Roux_Y吻 合 :ぷ 7.3∼ 7.4,
空腸間置術 :PH 7.3であつ た.た だ間置空腸40cmを目標
として十分余裕を もつ て吻合 されたのは,こ の症例 の中
では 母S吻 合 のみで,た とえば空腸間置術では, 6字 型
は認め られず,空 腸 内陽圧か らなだ らか な変化 で徐 々に
に有茎移植 された空腸 の長さは20cmにす ぎなかつ た。胸
胸部食道内陰圧へ移行 した。
部食道内Jは 6.9∼ 7.2(平 均 7.0)で あ り,IH変 動 の
傾斜は極めてなだ らかであつた.
(2)食 道 内 pH
Plenk法 による術後 の食道内IIt測
定で ,食 道下端 と吻
, 7.2∼ 7.5(平 均 7.3)と アルカ
合 された空腸内IItは
リ性であつた。吻合部付近 において,ぷ 7.0∼ 7.3(平
均 7.17)と 少 し下が るが,ま た胸部食道 ・歯列 よ り30∼
5.上 部 胃切除術 ,食 道胃吻合術後の食道内圧曲線お
よびPHの 変動 (図11)
(1)食 道 静 止圧 曲線
1)胃 内圧
35cmにおいて,ぷ 7.2∼ 7.4(平 均 7.3)と わず かでは
あ るが上昇す る傾 向がみ られた。 これは仰臥位におけ る
噴門側 胃亜全摘術を うけた後 ,胃 幽門側 でつ くられた
Miとぃ
胃管 の内圧 である。 これ ら症例は全例に Heineke‐
解剖学的関係か ら,吻 合部がやや高 く位置す るため と考
え られる。
licz'typeの幽門成形術が施行され ている.
4. 胃 全摘術 ,ROux‐ Y吻 合,単 S吻 合および空腸間
E術 後 における食道内圧曲線 および PHの 変動 (図10)
道 静 止 圧 曲線
図11 上 部 胃切除術,食 道 胃吻合術後 の食道内圧山
線お よびJlの変動
︲
︲
︲
︲
︲
︲
卜
↑
仰
巾
抑
(1)食
胃管内圧 は 全例陽圧 であ り,呼 気 に よ り上向きの フ
レ,呼 気 に より下向きの フレを示 し,そ の中間値は 2.3
1)腹 腔内空腸内圧
圧 の高 さは 1.7∼ 2.3醐Hg(平 均 2.OmllHg)でぁ り,
他 の吻合術式 との間に差はみ られなかつた。
図10 胃 全摘術,Roux‐Y吻 合,S‐S吻 合および竺
腸間置術後の食道内圧曲線およびp11の
変動
●
・
!ユ 狙経ヤ
十
止
︲﹂
﹁的
,
一︲
伸H
図1 2 上部 胃切除術, 食 道胃吻合術後に仮性昇圧帯
を認めた 1 例 ( 症例 : S . H . 7 7 , 6 )
ta列 と ,)
2)食 道空腸吻合部圧
全例 にHPZは
認 め られず,空 腸内陽圧か ら胸部食道
内陰圧へ なだ らかに移行 した。
3)胸 部食道内圧
全例陰圧であ り,圧 の高 さは-2.5∼ -5.28111Hg(平
45い
46oコ
〔 白列 と ,,
7(223〕
1974年5月
∼ 4.3mll性(平均 2.9mllHg)で
ぁつた。
2)食 道 胃吻合部圧
のまま逆転 して食道内陰圧へ移行 した。 1例 のみ図13の
如 く仮性昇圧帯を認め,pH曲 線 (図13上段実線)で も胃
み られず ,胃 管内陽圧 か らただ
ちに胸部食道内陰圧へ移行 した.1例 にのみ仮性昇圧帯
管内は アルカ リ性 ,食 道内はほぼ中性 であつた,
とも考え られ る曲線を認 めたが,IH曲 線 では,同 部 にお
ける逆流防止を思わせる急峻な変動を認 めなかつた (図
全例陰圧 で あ り, -1.7∼
帥IIg)であつた.
12)
管 ・食 道 内 pH
40cmから
肛側 ではIIt 7.9∼7.4と高 く,ほ ぼ
歯列 より
十二指腸液 の値を 示 した。 挙上 胃管内 では, IIt 7.5∼
5例 中 4例 にHPZは
3)上 部食道内圧
-5.4mmHg(平
均 -2.9
(2)胃
3)胸 部食道内圧
全例陰圧であ り,吸 気呼気 において 目管内圧 とは逆 向
きの フレを示 した。圧の高 さは-2.2∼ -5.Ommlヒ
(平均
-3.31mll地
)で あ り,圧 差は 6.2mllrgで
ぁった.
(2)食
道 内pH
胃幽門側 で作製 された胃管内は弱 アルカ リ性ゴ17.3∼
7.4(平 均7.36)で あつた,
7.2であ り,吻 合部 よ り上方の食道内では,ほ ぼ中性で
あつた。
7.上 部胃切除術 ・空腸間置術後の食道内圧曲線およ
びPHの 変動 (図14)
(1)食
道 静止 圧 曲線
これは全例胃癌症例であ り,上 部 胃亜企摘術のため 胃
酸分泌領域が殆 んど切除 されてお り,両 側芳噴問 リンパ
1)間 置空腸内圧
腎全摘 ・BIル ープ式吻合術 における空腸 内圧 とほぼ
節郭清時 に迷走神経 も切断 され , 無 酸状態 のところヘ
Heineke_Mituliczの幽門成形術を 行つた ところよ り,
等 しく,圧 の高 さは 19∼ 2.5mm地 (平均 2 2mmHg)で
あつ た.
に
指腸液が逆流 したためであろ う.
吻合部において,逆 流防止を思わせ る急陵なぷ変動を
を間置 した と同様の曲線が得 られた,
6.下 部食道 胃噴田部切除術 ・胸歴内食道胃吻合術後
劇
(下部食道癌症例)の 食道内圧 曲線 および PHの 変動
図14 上 部 胃切除術,空 腸間置術後の食道内圧曲線
およびpHの変動
︲︰
示 した ものはな く,あ たか も食道十二指腸間に短い腸管
(図13)
(1)食
道 静 止 圧 曲線
1)挙 上 冒管内圧
腹腔内陽圧がそ のまま挙上 された 胃管内まで統 き,常
に陽圧を示 した。圧 の高 さは 21∼ 3.8mll叱(平均 2.9
mm叱)で あつた。
2)食 道 胃吻合部圧
4例 中 3例 にHPZを
認めず ,挙 上 胃管内陽圧か らそ
図13 下 部食道 ・胃噴門部切除術,胸 雄内食道 目吻
合術 (食道癌症例)後 の食道内圧曲線および
変動
pllの
2)食 道空腸吻合部圧
み られず,空 腸内陽圧 よ り胸部食道内陰圧へ
移行す る様 子も,胃 全捕 ・BIル ープ式吻合 とほぼ同 じ
HPZは
に
経過をとつた。
3)胸 部食道内圧
ヽ
全例陰圧 で あ り, -2.7∼ -31m8Hg(平
mmllg)であ り,圧 差は 5.lmm地であつた。
(2)食
均 -2.9
道 内 pH
問置空腸内はJ7.2∼
下に保たれていた。
7.3であ り,食 道内はぷ 72以
8.胃 幽門側亜全摘術 ・青空腸 Btliroth H吻合術後
の食道内圧曲線 およびPHの 変動 (図15)
(1)食
道 静 止 圧 曲線
噴門 部手術侵襲 後 の逆 流性 食道炎 について
8(224)
図 1 5 胃 幽門 側 正 全 摘 術 , 胃空腸 B I 法 吻 合術後 の
食道 内圧 曲線, 同 シューマ お よび 食道下端
音再PH
日消外会誌 7巻
3号
炎 3 吻 台術式別 にみた食道 炎 の頻 度
( 内視鏡的観察)
村全 摘 術
会 出 下的 都 , コ
B I ル ー フ 式 吻合
兼 Braun吻 合
3止 E曲 Ⅲシェーマ
「
司_L. Plenk 変 法
Roux‐Y吻
合
前 後
生 腸 間 置術 ,S一 S
吻合
〔中等度以上例〕
31例中 27ク1(87夕ど)〔25例〕
18例中 12例 (67%)〔 10例〕
7例中 3例 (43%)〔 2例〕
6tql中 1例 (17%) 一
上 部 胃切 除 術
会=● LE的 伸
食 道 胃吻 合 術
“
と腸 間 置術
19例中 7例
7例中 2例
(37%)〔 5例〕
(29%) 一
治手術を うけたものの うち,術 後内視鏡 で検索 しえた88
例である.
表 3に 示す 力│く, 宵全摘 例で, BEル ープ 式吻合に
1)冒 内圧
胃底部圧は全例陽圧 で あ り,l■の 高 さは 1.0∼ 40
mm地 (平均 2.6mll地
) で あつた。正常例の胃底部圧に比
し低い傾 向がみ られた,
2)食 道 胃接合部圧
正常例 と同様全例にHPZが 認 め られた。 しか しllの
高 さは 4.4∼ 8.211m雅(平均 6.4mlllk)で
あ り,正 常frl
の平均 9 6mm性に 比 し 低 い値 であつた。 HPZの 巾は
1.8∼ 4.2cm(平均 2.9cm)であ り,正 常例 の平均 28
Cmとほぼ等 しい値を示 した。
3)胸 部食道内圧
HPZの 存在 および胸腔内陰圧 の影響 に よ り全例陰圧
を示 し,そ の圧は -2.8∼ -5 1mm叱(平均 -4.8mm性 )
であつた。
(2)食
道 内 pH
官亜全摘術を うけ,両 側芳噴ド
月リンパ帥郭清時 にl llJ側
迷走神経 も切断 されているため,胃 内」は全例酸性では
あつ たが,そ の値はpH 5.3∼6.5の範囲にあ り,正 常人
に比べか な り高 い値を示 した.
IIl電
極を静かに引き抜 いて くると,HPZす
なわち E
へ
G」 においてぷは 胃内酸性 より食道内中性 と変動をみ
せ るのであるが,そ の変化は正常例ほ ど急峻ではな く,
また食道下端部 において も,plt 6以下を示す例が 9例 中
3例 (鶴%)に み られ (図15),静止圧曲線におけるHPZ
の圧 も低下 してお り,逆 流防止機構 の 機能低下 ととも
に,酸 の逆流が確認 された。
V 食 道炎の発生頻度 とその 内視鏡所見および 同時生
検所見
(1)食
道 炎発 生 頻 度
検査対象は,教 室において 胃痛あるいは下部食道癌根
87%と 最 も高頻度に食道炎 の 発生 がみ られ,つ いで同
Plenk変法 に67%,Roux_Y吻 合に43%で あ り,空 腸間置
術では 6例 中 1例 (17%)に み られたにす ぎなかつた.
上煎!督切除術 では,食 道 胃吻合術で55%に 食道炎を観
察 したが,空 腸間置術 では28%と 低率 であつた,
(2)内
視鏡所見
内視鏡 に よる検索では,粘 膜 の微細 な点につい ての把
握が可能 である反面 ,吻 合部 におけ る発赤や変色性変化
な どもあ り,的 確 な診断は難か しい。 しか し内視鏡 で判
定 しうる所見,す なわち浮腫 , 発 赤 ,腫 脹 ナ廃 爛 ' 潰
瘍 ,膿 苔附着な ど,種 々の所見を合併す る場合が多い。
内視鏡的診断基準を ,1)発
る群 ,2)廃
赤 ,浮 腫 ,腫 脹を主体 とす
爛 ,潰 湯を主 とす る群 ,3)小
頼粒 ,小 隆
起を主 とする群 とに したがつて分類す ると,1)に
相当
す る もの11例(21%),2)に 相当す るもの40例(77%),3)
に相 当するもの 1例 (2%)と な り,圧 倒的に震爛 ,潰
場を主 とす る型が多い。 内視鏡検査実施中に,多 少な り
とも小腸 内容 の食道内逆流現象がみ られ る ことが 多 く,
内視鋭所兄 で陽性所見が著明にみ られる例では,部 位的
に食道後壁における変化が主であ り,吻 合 日よ り日側に
5∼ 10側の長 さに上 向性 の病変 のみ られ ることが多かつ
た,
(3)病
理 組 織 学 的所 見
内視鏡的検査 と並行 し,PunChingtbiop野に よる生検
組織検査を35例に施行 した。生検に よる食道粘膜や粘膜
下層 までの 組織片 の採取 は, 技 術的に難 しい 場合が多
く,と くに粘膜下層全層を採取す ることは困難であ る。
一方逆流性食道炎 とくに アルカ リ性食道炎 の 場合,震
爛 ,潰 瘍病変 は一般 に深達度が浅 く,胃 における潰瘍分
類 の Ul.I,Ul.Iに
相当す るものが殆ん どで,著 者は
1974年5月
9(225)
表 4 逆 流性食道 炎 の生検病理組織所 見
`卜
I : : J O
蛋
戸‐
全摘 術
│
B Ⅱ ル ープ式吻
合兼 B r a u n 吻
合
同
PIenk
│
皿
判定
不能
層 と胃最内側斜定筋層 との境界.
│
1
4
変法
5
3
1
1
1
1
L
上 部 胃切 除 術
食道 胃吻合術
2
空腸間置術
(*Lodge2の
1
逆 流 防 止機 構 に 関す る文 献 的 考 察
剖学的輪状括約筋 :古 くか ら論争 の的 であ り,
Helvetius33),Lerche24),」
。血StOne34ち
Kay35)ら は括 約筋
1)解
1
Roux-Ytffr
S一S吻 合
I コ
GJの 定義 についてさえ次 の三つが上げ られてお り,そ
.1)重 層痛平上皮と腺上皮 との
の一致をみていない3の
境界 ,2)管 状食道が嚢状 胃へ入る点 ,3)食 道内輪筋
]
に よ る)
胃全摘後 9年 経過 し,他 病死 した 1削 検例 で検索 した結
果 ,粘 漢 の脱落は多発 していたが,粘 膜下層に炎症性変
化が比較的少なかつた所見をみている。
以上のことか ら,採 取組織片における炎症性所見を,
の存在を認 めてい るが ,Lendrum36),Peters3の,矢 野原 ,
Ingelanger2" ら は特殊 な括約 筋 は 存在 しない としてい
る.現 在 では一般 にそ の存在 につ いては否定的 で あ る.
2)酸 性刺激説 :CannOn3的 ャま猫 に よる実験 か ら,腎
内が 分泌 された 胃液 に よ り酸性 に な る と,反 射的 に噴 門
が 閉鎖す る と述 べ た。 現在 では否定 され てい る39).
かわ りに Castell16)40)並
び に Ciles41)らは ガス トリン
に よ り SPhinCteric PresSureが
高 くな る と述 べ ,ホ ルモ
ン依存性 の存在 を報 告 してい る。
3)横
隔膜 の Pinch_cock actioH JackSOn42)″ま食道
炎症性細胞浸潤,Desquamation,Uicer,粘膜下層 におけ
る GranulatiOnゃFibrosisなどの程度 に より3段 階 に分
鏡観察 に際 し,吸 気時横隔膜 に よ り食道 が 閉鎖 され る と
した 。
類 し,表 4の 如 き結果をえた.広 範囲多彩な病変部か ら
の不完全な生横組織片 のため,参 考程度 に とどまること
道 を肝が圧迫 す るためであ る と報 告 .
が 多かつた。
4)Livcr tunnel:Mosher43)は
解 苫U学的 にみて腹部食
5)FiaP valve: Barrett44),c。 1listS〉
らは ECJの
VI 総 括ならびに考案
逆流性食道炎を検討す るにあた り,ECJの
解剖 お よ
び同部 の逆流防止機構を理解 してお くことは当然必要 で
あ り,ま た食道内圧曲線 お よび食道 内岬の変動を//JR析
す
る うえで,ぜ ひ必要な事項で もある。
食道は,咽 頭 と胃を連絡する線維筋肉性管状の臓器で
あ り,輪 状軟骨 の下縁 ,第 6頚 椎 の高 さに始 ま り,第 11
胸椎 の高 さで噴門に移行する.最 内側 に粘膜層が あ り,
ついで内輪筋層その外側 に外縦筋層があるが,他 の消化
管 と具 り,全 部が平滑筋 で構成 されているのではな く,
上方は横紋筋が分布 している.そ の境界は,矢 野原 23)に
よれば気管分岐部付近 であ り, Lerche24)は上 1/4は
横紋
筋 ,つ ぎのV4で徐 々に移行 し食道 の下半分は平滑筋であ
るとしている.Ingelinger2の
は食道 の上73と中173と
の境
が その境界 であると記載 している。また 食道下端部には,
Laimer26)によ り最初 に報告 され,Lerche20,zai∞2めら
斜
角 に よつ て作 りだ され る粘 膜 ヒダが 弁 様 に働 くと した。
46)は
6)横 隔膜右脚 の SIing_like actioE Allis鋤
内的
機構 を認めた うえで ,右 脚 が HiS角 を下内方 へ 肇引圧
迫 し,角 度を増す ことに よ り,外 的括約機構 と して働 く
と述 べ た 。
7)Valvular theott Donnelly47)は 食道 内が 陰圧 で あ
るか らには ,な にか 弁状機構 が あ るはず であ り,嬬 動 波
が 目内圧 よ り高 くな り,弁 を開 くと した ,
8) Cardiac mucosal rosetta:DornhOrst43),Botha49)ャ
ょ
ECJに
おいて粘膜筋板 に よ り粘膜 が 巾着様に閉鎖 され
る と した も
9)HiS角
と Sling gastric abe,cahagan50)は
実験
的 に EGJよ
り口側 の粘膜外筋 層切開群 と胃斜走 筋切開
群 とを比較 し,胃 斜走筋 が 逆流防止 に重要 で あ る と説 明
してい る.
10)PhySi。logic intrinsic sPhincter: Sanchez7))Fy‐
に よつ て認め られている bracket_like muscle fasciculi ke28),Fleshlerm),Pert14),Ingttm52),Nagler33)″
まか 多 く
が縦横 にめ ぐり,特 殊な構造をみせている.
の 研究者 が ,下 部食道噴門部 自体 に逆流防止機構 の主体
食道 と冒の移行部 に,内 圧測定上HPzと して認め ら
れ る部分が あ り,こ れは逆流防止機構を示す もの と意義
づけ られている23)-31).し
か し数cmにわたるHPZの 巾
PhrenoescPhgeal membrane(以下 PEMと
の関係,解 剖構造 と生理的運動機能 との関係
などについてはなお不 明の点が多い。厳密 にいえば,E
た概念 で逆 流防 止機構 を究 明 した。
と,EG」
を認 めてい る。
11)Lower escPhageal vestibular comPleX: Zain027)は
略す)を 合
めた Veslibular segment全
体 を 1つ の括約機構 と考 え
10(226》
噴門 部手 術侵襲後 の逆 流性 食道炎 について
日消外会 誌 7 巻
3号
におけ る逆流防止機構 の構造 お
よび機能は未だ完全に解明されたとはいえない。古 くか
CellSの 大半は幽門前庭部 とそ して 極 く一 部 が 噴門部
6い
などに存在 しているのであ り ,そ れ らが全 く失なわれ
ら解削学的 , レ線学的或 いはさらに外科手術時 に於ける
検索な ど,い ろいろと研究報告が されてきた.EG」 に
る胃全摘例においては,わ ずかに十二 指腸 と膵か ら少畳
のガス トリンが分泌 されるにす ぎず,当 然 のことなが ら
括約作用 の低下 も納得 され る.つ ま りHPZを つ くりだ
上述 した如 く,EG」
おける閉鎖作用を生理機能的 に測定す る試みは,電 気圧
力計の導入によ り発展をみた.Fykeは 食道静止圧測定
に よ り,ま ず咽頭食道移行部 に昇圧常 の存在す ることを
54),翌 EC」 にお
報告 し
年
ける昇圧帯 について詳細な検
2り
討を行つ ている .
巾につ いて,Fyke28)は 約 3 cm, BOtha55)は
2.6cm,坂 西9)は2 7cm, 佐藤56)は3.Ocmと報告 してお
HPZの
32),著 の測 で
り,一 般 に 2∼ 4 cmとされているが
者
定 も
平均 2.8cmとほぼ同様の値を示 した。
しか しこの部位 の 静止圧 につ いては, Fγkc23)は 10
CmH20,坂 西9)は9.8CmH20,佐 藤 56)は9 1cmH20,伊
13)は
14CmH20な どと報告 してお り,発 表者 によ りか
藤
な りのば らつ きがみ られ る。 この差は,測 定装置の差 ,
あ り, それにガス トリ
す主役は intrinsic sPhinCterで
ンがネルモ ン作用 の うえか ら参加 しているもの と思われ
る.
腎全摘術後 のpH曲線 において,食 道下端 と吻合 された
ープ 式吻合 では 7.2∼ 7.5(平 均
空腸内ぷは, BIル
S 吻 合,
7.4),Pienk変法 では 7.2∼ 7.5(平 均7.3),S‐
Roux_Y吻 合, 空腸間置術 など では 7.1∼ 7.3(平 均
7.2)で あつた。胸腔内食道 と,そ の下端部 と吻合され
た空場 との間にHPZつ
ま り SPhincteric barrierは
認め
られず , しか もFj者間の圧差は平均 6.5mmHgであ り,吻
合直下部空揚内ぷが下部食道内脚を大 きく左右するのは
急崚な変動を認
当然 であ る.実 際,吻 合部 においてIttの
受圧 面の違い,ポ リエチ レン管へ の接続管か らの送水加
圧な ど測定方法の違いお よび基準点のと り方 の違 いなど
めた症例 は無かつ た・
に よるものである.
にあ り,そ れに比較す ると食道下部のJは ,そ れ程高い
ものではない.単 純に圧勾配か ら考えた場合 ,も う少 し
著者 の測定では,歯 列 か ら41 2cmの部 よ り44.Ocmの部
のHPZを
にかけ巾平均 2.8cmにわた り,平 均 9.6mmiヒ
認めた.IIt測定 において 目内酸性 よ り食道内中性 へ の
急峻な変動をみせ る点が,や は り歯列か ら約44cmのとこ
ろであ りHPZの 下端部は大凡食道 胃接合輪 に一致す る
Lerche24)のい う Vestibule
もの と思われ る.HPZは
2の
``The Lower Esophageal
に一致 し, Zain。 らのい う
Vestiblllar ComPIex"の
概念での逆流防止機構 の説明の
1つ の証明とな りうる. PerPり,w。 lf57)らもHPZは
Vestibuleに一致 し, その上縁が横隔膜裂孔部 にあたる
と述べ ている
胃全摘術後 の食道静止圧曲線 においては,吻 合法 の如
何 にかかわ らず,金 例にHPZは 認め られなかつた。教
室 の 胃痛症例における胃全摘術では,両 側茅噴門部 リン
パ節郭清は もちろん,食 道下端部 の 1∼ 2 cmが同時に切
IOWer leaf(descending
除 され る.本 術式では PEMの
limb)下 方附着部)の消失 と,芳噴門部 の軟部組織 の消失
胆汁 のIrtは7.4∼ 8.5,眸 液 のPHは 7.8∼ 8.4の範囲
IIIが
高 くなるように思われ るが,こ れは腸管 の嬬動 およ
び食道 の Wash out erect(acid Or alkaline clearing)
に より防がれている.つ ま り胆汁,障 液 の流入路 と食道
空腸吻合部 との間に距離を とることは,逆 流性食道炎予
防に効果があ り,ま たいつたん食道炎を起す とその食道
の Peristaltic contractionは
悪 くな り,さ らにいつそ う
のである61).
させる要因
となる
食道炎を悪化
食道粘膜は,消 化管粘膜 のなかで も,各 種消化液に対
6り
64),ぷ
6め
測
して抵抗力が弱い ことが証明 されているが
定上では,下 部腸管 に癒着あ るいは狭窄 のないか ぎ り,
す17.1∼ 7.5程度の弱 アルカ リ性 にす ぎない。逆流性食
道炎催起物質 としては,正 常 胃液 の作用が最 も強 い とい
65),ァルカ リ
われているが
性環境下で も, トツプシ ン十
63)66).
で
の
胆汁酸 高度 変化を起す ことが報告 されている
逆流防止をはかるには,一 般 に吻合時 に逆流防止弁を
作製す るか,あ るいは胆汁,膵 液 の流入通路 と食道空腸
を伴 うことになる。 また Fyke28),EllisS3),vantraPPen59)吻合部 との間に,あ る程度距離をお くとい う2つ の方法
が とられている。前者の術式は著者の教室では試みてい
らはHPZを PIPを 境 に 日側部 と 胃側部 に分け ,そ
の うち胃側部 に 逆流防止機構構成上 の 重要性を認めて
いる。 これ らのことか ら巾約 3 cmのHPZが
完全 に消失
の
ように
も思われ る。 しか
す ると説明するのは少 し無理
一
し Lower EsoPhageal SPhincterの部が残つた として
ない.後 者 の術式 につ いて も,古 くか らいろんな術式が
施行 され,比 較検討 されている.
Y吻 合を推奨
scott6めは 逆流防止術式 として Roux‐
し,犬 の腸慶造設実験 か ら16インチ以上距離を とると良
ガス トリンに左右 され
い として ヽヽ
る.生 力や8)は同様 Roux_Y吻 合を行つた 12
も,そ の SPhincteric Pressureは
16)40)41),そ
の ことが証明されてお り
のCastrin,cOntaining 例を検討 し,空 腸脚 の長 さが30cm以上の10例に食道炎 の
1974年5月
愁訴をみなかつた としている.ま た犬における実験 で,
Y吻 合 を 比較 し,BIル ー
BIル ープ 式 吻合 と Roux‐
プ式吻合 では 空腸脚 の 長 さが30cmの場合でもかな り多
Y吻 合では30cmの場合に
量 の逆流がみ られ るが, Roux‐
は殆ん どみ られず,30cm以 上になると全 く逆流はみ られ
ープ 式吻合 では,や
なかつた と報告 している.BIル
は り主要路は空腸のル ープであ り,Braun吻 合を胆汁,
眸液 の殆 んどが通つ て くれ ると期待す るのは無理 のよ う
である.井 口ら69)は
本術式において輸出脚へ の胆汁,陣
の
液 流出を容易にす るため Braun吻合を約10cmにした と
ころ,食 道炎は殆ん ど認め られなかつたが,そ の反面 ,
低蛋白,浮 腫が高頻度に認め られ,障 害 の大 きい ことを
報告 し,試 み るべ き術式ではないとしている。なお小腸
右茎移植 の場合な どで も,30∼ 40cm以上の長 さを とるこ
71).
とを推奨す る報告が多い68)7い
S吻 合, Roux_Y吻 合,
著者 の観察及び測定 で も, S‐
下を認めた。 PH測定 で も 醍度逆流 の 所見がえ られた。
Windsor7"は胃切除後 BI吻 合で50%,P。 lya吻合で27%
に逆流を認 め,噴 門部が右方へ引 き寄せ られ,HiS角 が
76)は
開 くためであるとした.し か し島
大による実験 で,
HiS角 を取 つた後,圧 測定を行 つたがHPzの
圧低下
はなかつ たと述べ て いる。 圧低下 は, やは り前述 の如
iOWer leaf
く,両 側傍噴門部 の軟部紅繊 お よび PEMの
の消失 と幽門前庭部切除 によるガス トリン減少 の 問題
が大 きい と推測 され る.冒 酸逆流の場合,実 際上ぷ 4.0
以上では殆 んど臨床的 に問題 にはな らないといわれてお
77),著 の
り
者 教室で も高度の食道炎に悩 まされた症例は
無 い.
以上 のことより,手 術侵襲が EC」 におよぶ場合,ほ
ぼ全例に逆流防止機構 の機能低下あるいは廃絶が認め ら
れるのであ り,そ のよ うな術後障害に対 しては,手 術前
か ら予防対策を考慮す る必要があ り,ま たその効果は十
空腸間置術等の吻合部近 くのNは 7.1∼ 7.2と低 く,ま
分期待できるもの といえ よう。
た食道炎 も13例中 4例 にみ られた のみであつたが,BI
ル ープ式 では吻合部近 くのIItは7.4∼ 7.5とかな り高い
Vll 結
語
下部食道 ・胃噴門部手術侵襲後 の逆流性食道炎 の実態
について,新 潟大学医学部附属病院第 1外 科入院症例を
中′
Ьに,食 道内圧やぷ曲線の変化お よび内視鏡所見や生
ものが大半を占め,内 視鏡検査 で も31例中27例に食道炎
を認めた,Plenk変 法 では Braun吻 合 と食道空腸吻合
との距離が短かかつたため著明な効果は認め られなかれ
つた.
上部 胃切除術,食 道 胃吻合術術後では,あ たか も胃液
逆流に よる酸性食道炎の如 く考え られたが,著 者 の源」
定
では,該 部食道内IIIは
全例 アルカ リ性であ り,そ の主役
は胆汁 ,陣 液を主 とした十二指腸液 に よるものとの結果
が 出た。 胃噴門側亜全摘術においては,両 側芳噴門部 リ
a
11(227)
ンパ節 の郭清 とともに迷走神経は切断 され,胃 酸分泌領
域 も殆ん ど切除 されてお り, しか も HCineke_Mikulicz
検所見によ り検査をすす め,つ ぎのよ うな結論を得た。
1 食 道内圧 お よびIII測
定 にあた り
(1)内 圧測定用チ ューブの先端お よびその極 く近 く
の 2点 に受圧子Lを置いた。
(2)大 気圧を もつ て 0点 とした.
(3)消 化管用複合電極を用い,01き 抜 き法に より食
道内岬を測定 した。
2 正 常例 では,歯 列 よ り約41cmの距雛か ら,巾 平均
2.8cmにわた りHPZが 存在 し,同 部においてIItの
急陵
幽門成形術が施行 されているため,容 易 に十二指腸液 の
な変動を認め, 明 らかに 逆流防止機構 の 存在が示 され
逆流が起 るのである。
た.
下部食道癌における下部食道 ・噴門部切除術 ・食道 胃
吻合術 (胸腔 内)で も全 く同様,挙 上 胃管内は アルカ リ
性であ り,内 視鏡 で も著明な胃炎を認めている.胸 腔内
食道 胃吻合術では吻合部が高位なほ ど食道炎は軽度かつ
.石 川73)の
頻度 も少ないとされている7の
報告では,高 位
食道 胃吻合術で14例中 3例 (21%).低位食道胃吻合術 で
41例中29例 (71%)の 発生頻度である.槙 ?4)も
同様の経
験 か ら,こ れを残 目の大 きさで検討 lン
'食 道炎発生頻度
の差は胃の切除範囲に関係 していると述べ ,切 除範囲が
大 となると食道炎 の発生頻度は多 くなるとしている.材
者はIItの
測定結果か ら,こ れを食道 と十二 指腸間に介在
す る冒管 の長さに よるものと解釈 したいのであ る.
胃幽門側亜全摘術 ・BI法 吻合術後 の内圧測定におい
て, 胃 底部で 0.8mllHg, HPZで 平均 3.2mmIIgの
圧低
3 冒 全摘術後においては,全 例にHPZは
認め られ
ず,ぷ 測定においても明 らかに食道内逆流の所見が認め
られた。吻合術式別にみ ると,胆 汁,膵 液流入通路 と食
道空腸吻合部 との間に,あ る程度距離を置いた症例に逆
流の少ない ことが証明された.
4 上 部 胃切除術後において も,明 らかなHPZの 存
在を認めえた症例はなかつた.III測定において,残 胃内
はぷ 7,3∼ 7.4の弱 アルカ リ性であ り,食 道内へ も軽度
の逆流がみ られた。
5 宵 全摘術後あるいは上部胃切除術後の胸部食道内
圧は,軽 度の上昇を示 し,腹 部空腸内圧あるいは 胃内圧
との圧差の低下 もあつて,胆 汁 ,洋 液を伴つた胸部食道
内へ の圧流入が考え られた。
噴門部手術侵襲後 の逆 流性 食道炎 について
12(228)
6 下 部食道 胃噴 門部切除術 ・胸腔 内食道 胃吻合術 に
おいて ,挙 上 胃管 内は アル カ リ性 で あ り,内 視鏡 で も胃
炎 が認め られた 。 高位吻合 で も逆 流は起 つ てい るが ,介
在す る 胃管 が 移植聞置 された腸 管 の如 き役割をはた し,
胃粘膜 が 食道粘膜 よ り抵抗 が 強 いため ,症 状 と して現あ
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7 胃 幽門側 亜 全摘術後 において,HPZの
圧 は軽度
な低下 を示 し,軽 度 なが ら逆流 もみ られたが ,臨 床的 な
問題 にな る程度 の ものではなかつた.
以上食道 内圧 お よびIIt測
定 ,内 視鏡観察 な どに よ り,
各 術式別 に比較検討 した結果 ,若 子 の知見を得 ,各 検査
法 の意義を認識 し,今 後 の再建術式 のあ り方 に対 して も
若子 の示唆を得 ることが で きた。
稿 を終 るにあた り, ご校 閲 くだ さつた武藤輝 一 教授,
藤巻雅夫助教授 な らびに和 国寛 治講師 に深甚 な る謝意 を
表 す る。 また食道 内圧測定 に ご協 力 いただ いた進藤裕 技
官 に深謝す る。
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