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食道気道瘻を形成した難治性カンジダ食道炎に対する治療

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食道気道瘻を形成した難治性カンジダ食道炎に対する治療
食道気道瘻を形成した難治性カンジダ食道炎に対する治療
神崎隆 1、矢野雅彦 1、高地耕 2、石黒真吾 3、本告正明 1、岸健太郎 1、宮代勲 1、石川治 1、今岡真
義 4(1 大阪府立成人病センター消化器外科、2 公立学校共済組合近畿中央病院外科、3PCLJapan、4NTT
西日本大阪病院)
要旨
食道気道瘻を形成した難治性カンジダ食道炎に対し手術を行った症例を経験した。文献的考察によると抗真菌剤に抵抗
性の難治性カンジダ食道炎は、一度食道気道瘻を形成するときわめて予後不良であることがわかった。手術適応として、
抗真菌剤治療に対し抵抗性であり、内視鏡所見で潰瘍があるもの、食堂壁肥厚を伴うものが挙げられた。
キーワード:カンジダ食道炎
真菌感染症
食道気道瘻
はじめに
考察
カンジダは口腔内、消化管内の正常菌フローラに存在する。
文献的に検討した結果、本症例を含め致死的合併症を発症
健常人の 25%の食道に常在菌として存在すると報告され
したカンジダ食道炎は今までに 14 例報告されていた。合
ている。1、2 カンジダ食道炎の頻度は内視鏡症例の
併症の内訳は食道壊死 4 例、食道穿孔 4 例、食道気道瘻 7
0.7-8.3%と報告されている。3-5 カンジダ食道炎は稀に致
例であった。食道気道瘻 7 例中生存 1 例、死亡は本例を含
死的な合併症を引き起こす。特に食道気道瘻を合併した症
め 6 例であった。生存の 1 例は 28 歳の基礎疾患の無い男
例の致死率は高く、その治療方針は未だ定まっていない。
性で、食道切除・肺葉合併切除術を受けていたが、死亡の
6 例はすべて全身状態的に耐術困難と判断され内科的治
対象と方法
療が行われていた。従って、食道気道瘻は一度発症すると
症例は 70 歳男性。嚥下障害を主訴に平成 17 年 4 月当院を
救命は極めて難しく、発症する前に食道切除術を行う必要
受診し、内視鏡検査の結果カンジダ食道炎と診断された。
性が示唆された。致死的合併症を発症したカンジダ食道炎
抗真菌剤内服にても改善せず、内視鏡所見上食道壁の肥厚、
14 例中、合併症発症以前に食道壁の肥厚または食道の狭
潰瘍形成を認めた。手術加療を薦めたが患者希望にて保存
窄を呈した症例は 5 例、潰瘍を形成した症例は 3 例あり、
的加療を継続した。同年 11 月食道穿通、肺膿瘍にて入院
これらの徴候を示すカンジダ食道炎症例は致死的合併症
となった。CT ガイド下肺膿瘍ドレナージを施行し、抗菌
のハイリスク症例と考えられた。
剤、抗真菌剤を経静脈的に投与した。食道狭窄による食事
摂取困難、食道穿通に対し保存的加療では限界があると考
結論
え、手術の方針となった。全身状態が悪く食道・肺合併切
カンジダ食道炎は食道気道瘻を合併すると致死的である。
除は不可能と判断し、二期的に食道胃バイパス手術を行う
食道切除を行わなければ救命は難しいが、食道気道瘻を合
こととなった。第 16 病日食道皮膚瘻・胃瘻・腸瘻造設術
併した症例では全身状態的に耐術困難な場合が多い。難治
施行。第 112 病日有茎空腸による頚部食道胃バイパス術施
性カンジダ食道炎では致死的合併症を発症する前に食道
行。術後頚部吻合縫合不全、誤嚥性肺炎を発症し、経管栄
切除に踏み切るべきであると考えられる。文献的考察より、
養、抗菌剤、抗真菌剤による治療を続けた。カンジダ食道
①適切な抗真菌剤治療に抵抗性である症例②食道壁の肥
炎の気管支への波及を認め、感染コントロール困難となり、
厚または食道の狭窄を呈した症例③潰瘍を形成した症例
第 408 病日呼吸不全にて死亡した。
が手術適応と考えられる。
結果
剖検の結果食道と肺膿瘍の間に瘻孔を認め、免疫抑制状態
を伴う基礎疾患を示唆する所見は認められなかった。
本研究結果の発表
Candida esophagitis complicated by an esophago-airway
fistula: report of a case. Surg Today.
2010
Mar;40(3):254-6.
文献
1
Andersen LI, Frederiksen HJ, Appleyard M.
Prevalence of esophageal candida colonization in
a danish population. special reference to
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and pulmonary disease. J Infect Dis 1992; 165:
389-92.
2
Cole GT, Halawa AA, Anaissie EJ. The role of the
gastrointestinal
tract
in
hematogenous
candidiasis: from the laboratory to the bedside.
Clin Infect Dis 1996; 22: S73-S88.
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Naito Y, Yoshikawa T, Oyamada H, Tanida K, Kogawa
T, Sugino S, et al. Esophageal candidiasis.
Gastroenterol Jpn 1988; 23: 363-70.
4
Underwood JA, Williams JW, Keate RF. Clinical
findings and risk factors for candida esophagitis
in outpatients. Dis Esophagus 2003; 16: 66-9.
5
Kodsi BE, Wickremesinghe C, Kozinn PJ, Iswara K,
Goldberg PK. Candida esophagitis: a prospective
study of 27 cases. Gastroenterology 1976; 71:
715-9.
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