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c
物理学 A (仲光)!2008
by Kuniaki Nakamitsu
1
1.1
微分積分の復習
微分
・以下では t2 ,sin t, cos t のように.関数の変数に文字 t を用いる.記
号 f (t) は t を変数とするある関数を表す.
・ 時刻 t における物体の速度 v(t) を知るには,まず時刻 t における物
体の位置 x(t) を測定し,次に時刻 t + ∆t における物体の位置 x(t + ∆t)
を測定し,位置の変化 x(t + ∆t) − x(t) を経過時間 ∆t で割ればよい.こ
うして得られる物体の速度
v(t) =
x(t + ∆t) − x(t)
∆t
は,経過時間 ∆t を短くすればより正確な値となる(時間が ∆t 経過する
間に物体の速度が変化してしまうことがあるから).従って,正確な速度
v(t) というものを式で表現すれば
x(t + ∆t) − x(t)
∆t→0
∆t
v(t) = lim
となる.ここで記号 lim は ∆t を 0 に近付けることを表す.次に述べる
∆t→0
導関数の記号を用いれば,上式は
v(t) =
dx(t)
dt
と表せる.
・関数 f (t) の 導関数
df (t)
を
dt
df (t)
f (t + ∆t) − f (t)
= lim
∆t→0
dt
∆t
で定める.
d t2
問.関数 t の導関数
を (1.1) を使ってを求めよ.
dt
2
1
(1.1)
解.(1.1) で f (t) が t2 の場合である.f (t) = t2 なら f (t + ∆t) = (t + ∆t)2
である.従って (1.1) より
d t2
=
dt
(t + ∆t)2 − t2
∆t→0
∆t
2
(t + 2t∆t + (∆t)2 ) − t2
= lim
((t + ∆t)2 を展開した)
∆t→0
∆t
2t∆t + (∆t)2
= lim
(分子を整理した)
∆t→0
∆t
= lim (2t + ∆t) (約分した)
lim
∆t→0
= 2t. (∆t を 0 に近付けた)
・関数の導関数を求めることを,関数の 微分 を求める,関数を 微分する
df (t)
df (t)
df
などと言う.
を簡単に f " (t) と書くこともある.
(
は
(t) と
dt
dt
dt
書く方が好ましいが,ここではこのようなことにはこだわらないことに
する,
)
・後で利用する微分公式は,
dc
= 0 (c が定数のとき),
dt
d tn
= ntn−1 ,
dt
d sin at
= a cos at,
dt
d cos at
= −a sin at,
dt
d eat
= aeat ,
dt
(1.2)
(1.3)
(1.4)
(1.5)
(1.6)
および
df (t) dg(t)
d (f (t) + g(t))
=
+
,
dt
dt
dt
d (cf (t))
df (t)
=c
(c は定数),
dt
dt
d (f (t)g(t))
d f (t)
d g(t)
=
g(t) + f (t)
.
dt
dt
dt
2
(1.7)
(1.8)
(1.9)
注.(1.2) より定数の微分は 0 であるが,この逆も言える.つまり,微分
して 0 となる関数は定数である:
df (t)
= 0 ⇒ f (t) = 定数.
dt
問.x = 3 cos 2t − 4t2 + 5t + 6 のとき,微分
(1.10)
dx
を求めよ.
dt
解.
dx
d
=
(3 cos 2t − 4t2 + 5t + 6)
dt
dt
d cos 2t
d t2
dt d6
= 3
−4
+5 +
((1.7), (1.8) より)
dt
dt
dt
dt
= 3 · (−2 sin 2t) − 4 · 2t + 5 · 1 + 0 ((1.5), (1.3), (1.2) より)
= −6 sin 2t − 8t + 5.
問.x = t2 sin t のとき,微分
dx
を求めよ.
dt
解.
dx
d t2 sin t
=
dt
dt
d t2
d sin t
=
sin t + t2
((1.9) より)
dt
dt
= 2t sin t + t2 cos t. ((1.3), (1.4) より)
x という変数を持つ関数 f (x) を変数 t で微分するとき,次の式が成り
立つ:
df (x)
df (x) dx
=
(1.11)
dt
dx dt
注.(1.11) は分数計算における規則
b
b c
= ·
a
c a
と同じ形である.
3
問.x = t2 + 1 のとき
dx4
を求めよ.
dt
解.
dx4
dx4 dx
=
((1.11) より)
dt
dx dt
dx4 d(t2 + 1)
=
(x = t2 + 1 より)
dx
dt
= 4x3 · 2t ((1.3), (1.2) より)
= 4(t2 + 1)3 · 2t (x = t2 + 1 より)
= 8t(t2 + 1)3 .
d sin(t2 + 1)
問.
を求めよ.
dt
解.sin(t2 + 1) を sin x, x = t2 + 1 と2段階に分けて考えると
d sin(t2 + 1)
d sin x
=
(t2 + 1 = x より)
dt
dt
d sin x dx
=
((1.11) より)
dx dt
d sin x d(t2 + 1)
=
(x = t2 + 1 より)
dx
dt
= cos x · 2t ((1.4), (1.3) より)
= 2t cos(t2 + 1) (x = t2 + 1 より).
・記号
d2 f (t)
は f (t) を2回微分したものを表す.つまり
dt2
d2 f (t)
d
=
2
dt
dt
!
df (t)
dt
"
注.(1.12) の両辺を見比べるとわかるように,
(1.12)
d2
d d
は
の略.
2
dt
dt dt
問.
x = C1 cos at + C2 sin at
(1.13)
(C1 ,C2 は定数)と置くと,x は式
d2 x
= −a2 x
2
dt
4
(1.14)
を満たすことを示せ.
解.まず
dx
= −C1 a sin at + C2 a cos at ((1.5) と (1.4) より)
dt
(1.15)
となる.これを更に微分すると
!
"
d2 x
d dx
=
((1.12) より)
dt2
dt dt
d
=
(−C1 a sin at + C2 a cos at) ((1.15) より)
dt
= −C1 a2 cos at − C2 a2 sin at ((1.4) と (1.5) より)
= −a2 (C1 cos at + C2 sin at)
= −a2 x ((1.13) より)
となり (1.14) が成り立つことがわかる.
注.(1.14) を満たす x は (1.13) の形のもの以外には無い.つまり
d2 x
= −a2 x
2
dt
1.2
⇒
x = C1 cos at + C2 sin at (C1 , C2 は定数)
(1.16)
積分
・t3 を微分すると 3t2 になるが,微分すると 3t2 になる関数は t3 だけ
ではない.定数の微分は 0 であるから,t3 + C(C は定数)も微分すれば
3t2 となる.このように,微分すると 3t2 となる関数の 一般形 は t3 + C
(C は任意の定数)である.
・関数 f (t) の 不定積分
#
f (t)dt とは,微分すると関数 f (t) となるよう
な関数の一般形のことである.
例.関数 3t2 の不定積分
#
3t2 dt とは,微分すると関数 3t2 となるよう
な関数の一般形のことであるから,
t3 + C (C は任意の定数)のことで
#
ある.つまり 3t2 dt = t3 + C (C は任意の定数).
5
問.不定積分
#
sin 2tdt を求めよ.
解.微分すると sin 2t となる関数の一般形を求めればよい.これには (1.5)
が利用できる. (1.5) で a = 2 ととると
d cos 2t
= −2 sin 2t
dt
両辺に −
1
を掛けて,
2
$
%
d
1
− cos 2t = sin 2t.
dt
2
(1.17)
1
つまり,微分すると sin 2t となる関数のひとつは − cos 2t である.この
2
ことと定数の微分が 0 であることより,微分すると sin 2t となる関数の
1
一般形は − cos 2t + C (C は任意の定数).つまり
2
#
1
sin 2tdt = − cos 2t + C
2
(C は任意の定数).
・上の例や問の解答ように,不定積分を計算すると必ず
#
(C は任意の定数)
f (t)dt = · · · + C
(1.18)
という形になる.
(不定積分の「不定」とは,このように不定の定数 C が
付くことを言っている.
)この任意定数 C は 積分定数 と呼ばれる.
・後に利用する不定積分の公式は,
#
#
(c が定数のとき),
cdt = ct + C
tn+1
+ C,
n+1
#
1
sin atdt = − cos at + C,
a
#
1
cos atdt = sin at + C,
a
#
1
eat dt = eat + C,
a
tn dt =
6
(1.19)
(1.20)
(1.21)
(1.22)
(1.23)
および
#
#
(f (t) + g(t))dt =
cf (t)dt = c
#
#
f (t)dt +
#
g(t)dt,
f (t)dt (c が定数のとき).
(1.24)
(1.25)
注.(1.19) で特に c = 0 ととると
#
0dt = C.
(1.26)
#
問. (4 sin 2t − 3t2 + 2)dt を求めよ.
解.計算結果は (1.18) のように任意定数 C がひとつ付く形になることは
始めからわかっている.従って,計算中に上の不定積分の公式を何度か
使う場合,定数 C はいちいち書かずに略しておき,最後に C をひとつ
付ければよい.つまり次のように計算:
#
(4 sin 2t − 3t2 + 2)dt
= 4
#
sin 2tdt − 3
#
2
t dt +
#
2dt ((1.24), (1.25) より)
1
1
= 4(− cos 2t) − 3( t3 ) + 2t + C
2
3
= −2 cos 2t − t3 + 2t + C .
!
(1.21), (1.20), (1.19) を C を略し
て使い,最後にひとつ C を付けた
問.(1.2)-(1.6) を利用して,(1.19)-(1.23) の右辺の関数の微分が左辺の積
分の中に書かれた関数となることを確かめよ.
・記号
#
b
a
f (t)dt は,不定積分
#
f (t)dt(の任意定数 C を略したもの)
の t = b における値から t = a における値を引いたものを表す.
#
#
1
t2 dt = t3 + C の C を略したもの(つまり
3
1
1 3
t )の t = 2 における値から t = 1 における値を引いたものを表す.つ
3
まり
&
'
# 2
1 2 1
1
7
t2 dt = t3 = 23 − 13 = .
3 1 3
3
3
1
例.
2
t2 dt は,不定積分
7
"
ここで記号 [· · ·]ba は括弧内の量 · · · の t = b における値から t = a におけ
る値を引くという操作を表す.
#
・
b
a
f (t)dt を,区間 [a, b] 上での f (t) の 定積分 と呼ぶ.上の記号 [ ]ba
を用いると
#
b
a
f (t)dt = [F (t)]ba
(1.27)
と表せる.ここで F (t) は f (t) の不定積分の任意定数 C を略したものを
表す.
df (t)
df (t)
・
の不定積分とは,微分すると
になる関数のことだから f (t)+
dt
dt
C .従って,(1.27) より
#
この
b
a
df (t)
dt = [f (t)]ba = f (b) − f (a).
dt
#
df (t)
dt = f (b) − f (a)
dt
a
という結果は,微分積分学の基本定理 と呼ばれる.
注.定積分
#
b
a
b
(1.28)
f (t)dt の値は,関数 f (t) のグラフと t 軸(横軸)の間に
挟まれた領域の t = a から t = b までの部分の面積を表している(グラ
フが t 軸より下にあるときは面積にはマイナス符号が付く).
2
力学の基本単位
・力学における基本的な単位は,長さの単位,質量の単位,時間の単
位.
・これらの単位によく用いられるのは
m(メートル),kg(キログラム),s(セコンド = 秒),
あるいは
8
cm(センチメートル),g(グラム),s (セコンド).
・力学で使用される他の単位は,長さ,質量,時間の単位を組み合わせ
て表せる.
注.kg や g は重さの単位ではなく質量の単位である.重さは力の単位
(後述)を用いて表される.
・単位のついた量の加減乗除を行うとき,単位を付けたまま計算をすれ
ば,計算の結果得られた量の単位がわかる.
問.100 m を 10 s(s = 秒)で走る人の平均速度 V(=
移動した距離
)
移動にかか っ た時間
を求めよ.
解.
V =
100 m
100 m
m
=
= 10 .
10 s
10 s
s
・関数の変数 t や値 f (t) が単位を持つ量であるとき,次の事が成り立つ:
df (t)
f (t) の単位
の単位 =
.
dt
t の単位
(2.1)
例.時刻 t (s) における物体の位置を f (t) (m) で表すとき,
df (t)
f (t) の単位
m
の単位 =
= .
dt
t の単位
s
注.(2.1) は導関数の定義式 (1.1) から導かれる.実際,
(1.1) の左辺
df (t)
f (t + ∆t) − f (t)
の単位 = (1.1) の右辺の分数
の単位
dt
∆t
f (t) の単位
f (t) と同種の量
の単位 =
.
=
t と同種の量
t の単位
9
3
3.1
直線上を運動する物体
位置 → 速度 → 加速度
・ここでは物体が直線上を運動している場合を扱う.この直線を x 軸
と見なす.時間や時刻は t で表す.(t は time の頭文字.
)直線上を運動
する物体の例として,真下に落下して行く物体や,ばねの力を受けて左
右に振動する物体などがある.
・物体の位置をその座標 x で表す.一般に物体の位置 x は時間 t と共に
変化する.つまり物体の位置 x は時間 t の関数である.例えば x = t2 は
時刻 t における物体の座標 x が t2 という値であることを意味する.
!
物体
x
! x軸
・物体の 速度 v とは,物体の位置 x を時間 t で微分したもの.つまり
v=
dx
dt
(3.1)
(v は velocity(速度)の頭文字.
)
・物体の 加速度 a とは,物体の速度 v を時間 t で微分したもの.つまり
a=
dv
dt
(3.2)
(a は acceleration(加速度)の頭文字.
)
問.物体の位置 x が時間 t を用いて x = t3 と表されるとき,物体の速度
v と加速度 a を求めよ.
解.
v =
dx
dt
((3.1) より)
10
d t3
dt
= 3t2 ,
=
(x = t3 より)
dv
((3.2) より)
dt
d 3t2
=
(上で求めた v = 3t2 より)
dt
= 6t.
a =
・物体の位置 x の微分は速度,速度の微分は加速度だから,加速度は位
置 x を2回微分したものである. つまり加速度 a は
d2 x
a= 2
dt
(3.3)
とも表せる.
問.物体の位置 x が時間 t を用いて x = cos t と表されるとき,物体の
加速度 a を求めよ.
解.
d2 x
((3.3) より)
dt2! "
d dx
=
((1.12) より)
dt dt
!
"
d d cos t
=
(x = cos t より)
dt
dt
d
=
(− sin t) = − cos t.
dt
a =
11
3.2
速度と加速度の単位
・物体の位置は,例えば「座標原点からマイナス 3 cm の位置」などと
いうように,長さの単位を用いて表せる.つまり
位置の単位 = 長さの単位
(3.4)
・速度 v や加速度 a の単位を知るには,(2.1) を使えばよい.いま
dx
dx
の単位 ((3.1) より v =
だから)
dt
dt
x の単位
=
((2.1) より)
t の単位
v の単位 =
ここで位置 x は長さの単位,t は時間の単位を持つから,上の結果は次
のように表現できる:
速度の単位 =
長さの単位
時間の単位
(3.5)
加速度 a についても同様に
dv
dv
の単位 ((3.2) より a =
だから)
dt
dt
v の単位
=
((2.1) より).
t の単位
a の単位 =
つまり
加速度の単位 =
速度の単位
.
時間の単位
この右辺の分子を (3.5) を使って書き直すと
加速度の単位 =
長さの単位
2
(時間の単位)
(3.6)
注.簡単に言えば,位置 → 速度 → 加速度の各ステップごとに単位が
1
1
倍される(つまり時間 t で微分をするごとに単位が
時間の単位
時間の単位
12
倍される).
問.物体の時刻 t (s)(s = 秒) における位置が x = sin 2t (cm) で表され
るとき,物体の速度 v と加速度 a を求めよ.
解.速度 v と加速度 a を計算すると
v =
=
=
a =
=
=
dx
((3.1) より)
dt
d sin 2t
dt
2 cos 2t,
dv
((3.2) より)
dt
d 2 cos 2t
(上で求めた v = 2 cos 2t より)
dt
−4 sin 2t.
また,この問では時刻 の単位に s,長さの単位には cm を使っているから
長さの単位
((3.5) より)
時間の単位
cm
=
,
s
長さの単位
加速度 a の単位 =
((3.6) より)
2
(時間の単位)
cm
=
.
s2
速度 v の単位 =
従って求める速度は v = 2 cos 2t (cm/s),加速度は a = −4 sin 2t (cm/s2 ).
3.3
加速度 → 速度 → 位置
・直線上(x 軸)を運動する物体を考える.物体の位置の微分は物体の
速度,物体の速度の微分は物体の加速度であることは既に述べた.ここ
では逆に,加速度から速度,速度から位置を求めることを考える.
・物体の加速度 a を積分すると,物体の速度 v が得られる. つまり,
v=
#
13
adt
(3.7)
注.右辺は不定積分であるから,この式を利用して求めた速度 v には任
意定数 C が付く((1.18) 参照).この定数 C の値は,ある時刻(例えば
最初の時刻)における物体の速度がわかれば定まる(後の問参照).
・物体の速度 v を積分すると,物体の位置 x が得られる. つまり,
x=
#
vdt
(3.8)
注.右辺は不定積分であるから,この式を利用して求めた位置 x には任
意定数 C が付く.この任意定数の値は,ある時刻における物体の位置が
わかれば定まる(後の問参照).
注.
「積分」の項の最初に述べたように,
#
f (t)dt は,微分すると中に書
かれた関数 f (t) になる関数を表す.従って,(3.7) は (3.2) の,(3.8) は
(3.1) の言い換えに過ぎない.
問.物体の加速度 a が a = cos 2t で表されるとき,物体の速度 v はどの
ように表されるか.ただし t = 0 のときの物体の速度を v0 とする.
解.物体の速度は
v =
=
=
#
#
adt ((3.7) より)
cos 2tdt (a = cos 2t より)
1
sin 2t + C
2
(C は定数) ((1.22) より).
得られたこの速度
1
sin 2t + C
2
の定数 C の値を求める.問の最後の条件より,上式で t = 0 としたとき
v の値は v0 にならなければならない.つまり
v=
v0 =
1
sin 0 + C.
2
14
これと sin 0 = 0 より C = v0 .従って求める物体の速度は
v=
1
sin 2t + v0 .
2
問.物体の速度 v が v = 2t と表されるとき,物体の位置 x はどのよう
に表されるか.ただし t = 1 のときの物体の位置を x0 とする.
解.物体の位置は
x =
=
#
#
vdt ((3.8) より)
2tdt (v = 2t より)
= t2 + C. (C は定数) ((1.20) より)
得られたこの結果
x = t2 + C
の定数 C の値を求める.問の最後の条件より,上式で t = 1 としたとき
x の値は x0 にならなければならない.つまり
x 0 = 12 + C
これより C = x0 − 1.従って求める物体の位置は
x = t2 + x0 − 1.
3.4
物体の運動方程式
・直線上(x 軸上)を運動する物体を考える.この物体に対するニュー
トンの運動方程式は
ma = F
(3.9)
ここで m は物体の質量,a は物体の加速度,F は物体の受けている力.
(m は mass(質量)の頭文字,F は force(力)の頭文字
・力 F の符号は,力 F が物体に対しどちら向きに働いているかを表す:
F > 0 のとき力の向きは x 軸正方向. F < 0 のとき力の向きは x 軸負方向
(3.10)
15
・物体の質量 m と物体の受けている力 F がわかっていれば, (3.9) から
物体の加速度 a がわかる.逆に,物体の質量 m と加速度 a がわかって
いれば, (3.9) から物体の受けている力 F がわかる.
・(3.3) より,運動方程式 (3.9) は次のようにも表せる.
m
d2 x
=F
dt2
(3.11)
・(3.1) より,運動方程式 (3.9) は次のようにも表せる.
m
dv
=F
dt
(3.12)
・(3.9) から力の単位がわかる.実際,
F の単位 = ma の単位 ((3.9) より)
= m の単位 × a の単位
= 質量の単位 × 加速度の単位
長さの単位
= 質量の単位 ×
(時間の単位)2
((3.6) より).
これより
力の単位 =
質量の単位 × 長さの単位
.
(時間の単位)2
(3.13)
・長さ,質量,時間の単位に m(メートル),kg(キログラム),s (秒)
を用いた場合,(3.13) より,力の単位 = (kg · m)/s2 .この単位 (kg · m)/s2
を ニュートン と呼び,記号 N で表す.
問.質量 10 kg の物体が加速度 5 m/s2 で運動している.この物体に働い
ている力 F を求めよ.
16
解. (3.9) に m = 10 kg,a = 5 m/s2 を代入すると
F = 10 kg × 5
m
kg · m
= 50
= 50 N.
2
s
s2
・力は足し合わせることができる.物体がいくつかの力 F1 , F2 , F3 , . . . を
受けているなら,物体の受けている正味の力(合力) F はこれらを足し
合わせた F = F1 + F2 + F3 + · · · である.
3.5
力を受けずに運動している物体
・直線上(x 軸)を運動する物体を考える.この物体の受けている力 F
が 0 の場合,物体の運動方程式 (3.9) は
ma = 0.
これより物体の加速度 a は
a = 0.
(3.14)
このとき物体の速度 v は
v =
=
#
#
adt ((3.7) より)
0dt ((3.14) より)
= 定数 C
((1.26) より)
この結果より,力を受けていない物体の速度 v は一定で変化しないこと
がわかる.特に,静止した物体はそのまま静止し続ける.
・逆に,物体の速度 v が一定で変化しないときは(静止している場合も
含む),物体が受けている力 F は 0 である.実際このとき
F = m
dv
dt
((3.12) より)
= m · 0 (v は一定,つまり定数だから
= 0.
dv
= 0)
dt
問.机の上に置かれている本は,重力以外の力を受けているか.
17
解.重力以外の力も受けている.この本は静止しているから,上で述べ
たことより本が受けている正味の力は 0 のはずである.従ってこの本は,
地球の重力の他に,それを打ち消すような力,つまり重力と大きさが等
しく向きが逆の力を机から受けていることになる.
(この力は本が机から
受けている抗力と呼ばれる.
)
3.6
地表の近くで重力を受けながら運動している物体
・地表の近くで重力を受けながら運動する物体を考える.いま x 軸を
次図のようにとり,物体はこの軸に沿って運動しているとする(つまり
真下に落とした物体や真上に投げ上げた物体などを考える).物体の位置
座標 x は物体の地表からの高度を表している.
x
"
x "
F = −mg
!
x = 0 (地表)
・地表近くで質量 m の物体の受ける重力 F は
F = −mg
(3.15)
と表される.g は 重力加速度 と呼ばれる正の定数.
注.(3.15) の重力 F が負の値であるのは,上図のように x 軸を上向きに
とったために.重力の向きが x 軸負方向となるため((3.10) 参照).
注,天体間の重力の式は上と異なる.地表の近くなどこれに比べて小さ
な範囲では,重力の式は上の簡単な式 (3.15) で近似される.
18
・(3.9) と (3.15) より,重力を受けながら運動する物体の運動方程式は
ma = −mg
(3.16)
つまり
a = −g.
(3.17)
注.方程式 (3.17) には物体の質量 m が含まれていない.従って地表の
重力の下での物体運動は物体の質量に無関係である(ガリレオの法則).
例えば,空気の抵抗が無い月面では,同じ高さから同時に落としたハン
マーと鳥の羽が同時に着地する.
・(3.17) より,重力加速度 g は加速度 a と同じ単位を持つ(だから g を
重力「加速度」という).重力加速度 g の値は約 9.8 m/s2 .
問.時刻 t = 0 に高さ x0 の位置から物体を落下させた.時刻 t における
物体の位置(高度) x を求めよ.始めの時刻 t = 0 における物体の速度
は 0 とする.
解.まず物体の速度 v を求め,次にそれを使って物体の位置 x を求める.
物体の速度 v は
v =
=
#
#
adt ((3.7) より)
(−g)dt ((3.17) より)
= −gt + C. (C は定数) ((1.19) より)
得られたこの速度
v = −gt + C
の定数 C の値を求める.問の最後の条件より,上式で t = 0 としたとき
v の値は 0 にならなければならない.つまり
0 = −g · 0 + C
これより C = 0.従って物体の速度は
v = −gt
19
(3.18)
これを用いると,物体の位置 x は
x =
=
#
#
vdt ((3.8) より)
(−gt)dt ((3.18) より)
1
= − gt2 + C. (C は定数) ((1.20) より)
2
得られたこの結果
1
x = − gt2 + C
2
の定数 C の値を求める.問の最初に書かれている事より,上式で t = 0
としたとき位置 x の値は x0 にならなければならない.つまり.
1
x0 = − g · 0 + C
2
これより C = x0 .従って求める物体の位置は
1
x = − gt2 + x0 .
2
問.上の問で時刻 t = 0 における物体の速度を v0 としたとき,物体の時
刻 t における位置 x はどう表されるか.
解.
(上の (3.18) が v = −gt + v0 になることに注意.
)
1
x = − gt2 + v0 t + x0 .
2
3.7
ばねの力を受けて振動する物体
・下図のような,ばねの先端に取り付けられた物体を考える.x 軸をば
ねに沿ってとり,ばねが自然長(伸び縮みのないときの長さ)のときの
物体の位置を座標原点 x = 0 にとる.
ばねが自然長のときの物体の位置
#
F = −kx
%&
ばね固定 $% $% $% $% $"
%
%$ %$
%$ %$
0
20
%$#$
x
! x
・上図における物体の位置座標 x を物体の平衡点(x = 0)からの 変位
と呼ぶ.
・ばねの先端に取り付けられた物体がばねから受ける力 F は,物体の平
衡点からの変位を x とするとき
F = −kx
(3.19)
と表される.k は ばね定数 と呼ばれる正の定数であり,ばねの強さを表
す.
注.ばねの力の式 (3.19) の右辺のマイナス符号は,ばねの力が常に物体
を平衡点に引き戻す向きに働くことを表している.実際,(3.19) ( (3.10)
も参照)より
x > 0 (物体が平衡点の右) のとき F < 0 (力の向きは x 軸負方向)
x < 0 (物体が平衡点の左) のとき F > 0 (力の向きは x 軸正方向)
となる.結果として,物体は平衡点を中心にして左右に振動を続ける.
・ (3.11) と (3.19) より,ばね定数 k のばねの力を受けながら運動する質
量 m の物体の運動方程式は
d2 x
m 2 = −kx
dt
(3.20)
ここで x は物体の平衡点からの変位.
(上式は加速度の記号 a を使って
ma = −kx と表すこともできるが,上の書き方の方が応用上便利である.
)
・(1.14) の解は (1.13) の形であること,つまり
d2 x
= −a2 x
2
dt
⇒
x = C1 cos at + C2 sin at
(3.21)
(C1 ,C2 は定数)であったことを思い出す.と置くと,x は式
d2 x
= −a2 x
2
dt
21
(3.22)
問.質量 m の物体が,ばね定数 k のばねにつながれている.時刻 t = 0
における物体の平衡点からの変位が x0 ,速度が v0 であるとき,時刻 t に
おける物体の変位 x を求めよ.
解.この物体の変位 x は運動方程式は (3.20) を満たす.この (3.20) は
d2 x
k
=− x
2
dt
m
と書き直せる.(3.21) で a =
(
す x は,
x = C1 cos
(
k
と置けばわかるように,上式を満た
m
k
t + C2 sin
m
(
k
t (C1 , C2 は定数)
m
(3.23)
の形である.後はこの変位 x の式の定数 C1 , C2 の値を求めればよい.問
の条件より,上式で t = 0 としたとき x は x0 とならなければならない.
つまり
x0 = C1 cos 0 + C2 sin 0
これと cos 0 = 1, sin 0 = 0 より
C1 = x0 .
(3.24)
次に定数 C2 の値を求める.いま (3.23) から物体の速度 v を求めると
v = −C1
(
k
sin
m
(
(
k
k
t + C2
cos
m
m
(
k
t
m
(3.25)
となる.実際
dx
((3.1) より)
dt 

(
(
d 
k
k 
=
C1 cos
t + C2 sin
t
dt
m
m
v =
= −C1
(
k
sin
m
(
(
k
k
t + C2
cos
m
m
(
((3.23) より)
k
t ((1.4), (1.5) より)
m
問の t = 0 における条件より,(3.25) で t = 0 としたとき v は v0 となら
なければならない.つまり
v0 = −x0
(
(
k
k
sin 0 + C2
cos 0
m
m
22
これと sin 0 = 0, cos 0 = 1 より
C2 =
-
m
v0 .
k
(3.26)
(3.23), (3.24), (3.26) より求める変位は
x = x0 cos
(
k
t+
m
-
m
v0 sin
k
(
k
t.
m
(3.27)
・関数 sin t や cos t の値は t を 2π 増やすと元に戻る.つまり
sin(t + 2π) = sin t,
cos(t + 2π) = cos t
この事を,sin t や cos t は周期 2π の関数であるという.より一般に,関
数 f (t) の値が t をある定数 T だけ増やすと元にもどるとき,つまり
f (t + T ) = f (t)
となるとき,T をこの関数 f (t) の 周期 という.
問.上の問で求めた物体の位置 (3.27) の周期 T を求めよ.
解.(3.27) は二つの関数
f1 (t) = sin
(
k
t,
m
f2 (t) = cos
(
k
t.
m
から成る.(3.27) の周期を求めるには,この f1 (t) と f2 (t) の周期を調べ
ればよい.sin t の周期は 2π である.つまり
sin(t + 2π) = sin t
t はどんな値でもよいのだから,この式の文字 t を
もよい.このとき上式は
(

k
sin 
t + 2π  = sin
m
23
(
k
t.
m
(
k
t に置き換えて
m
となる.左辺の括弧の中を
sin
(
(
k
でくくると,この等式は
m
-
$
k
m
t + 2π
m
k
と書ける.左辺は f1 (t) の t を t + 2π
いから,上式は
%
-
= sin
(
k
t.
m
m
に置き換えたものに他ならな
k
-
m
) = f1 (t).
k
m
と表せる.これは f1 (t) が周期 T = 2π
を持つことを示している.上
k
の議論は sin を cos に置き換えてもそのまま成り立つから,
f2 (t) も同じ
m
周期 T を持つ.従って (3.27) の周期は T = 2π
.
k
f1 (t + 2π
3.8
物体の運動量とエネルギー
・直線上(x 軸)を運動する物体を考える.この物体の 運動量 p とは,
物体の質量 m と速度 v の積である.つまり
p = mv
(3.28)
・物体が力を受けていない場合,物体の運動量は一定で変化しない.実
際,物体の受けている力 F が 0 なら
dp
dv
= m
((3.28) より)
dt
dt
= F (物体の運動方程式 (3.12) より)
= 0 (仮定 F = 0 より).
となるから p は定数((1.10) より).
・物体の 運動エネルギー T を
1
T = mv 2
2
24
(3.29)
で定める.ここで m は物体の質量,v は物体の速度.
(前に記号 T を周
期を表すために使ったが,ここでは記号 T を運動エネルギーを表すため
に用いる.
)
・(3.28) より v = p/m であるから,(3.29) で定めた物体の運動エネル
ギー T は物体の運動量 p を用いて
T =
p2
2m
(3.30)
と表すこともできる.
・物体の受けている力を F とすると
dT
= Fv
dt
(3.31)
が成り立つ.実際,
dT
dt
=
=
=
=
=
=
=
$
%
d 1 2
mv
dt 2
1 d v2
m
2 dt
1 d(vv)
m
2 !dt
"
1
dv
dv
m
v+v
2
dt
dt
1
dv
m·2 v
2
dt
dv
m v
dt
F v ((3.12) より)
((1.9) より)
注.上の計算を (1.9) の代わりに (1.11) を使って行うと(こちらの方が
普通)
dT
dt
$
d 1 2
=
mv
dt 2
1 dv 2
=
m
2 dt
%
25
1 dv 2 dv
m
((1.11) の 文字 x を v に変えたものより)
2 dv dt
1
dv
=
m · 2v
2
dt
dv
= m v
dt
= F v ((3.12) より)
=
・物体が力を受けていない場合,物体の運動エネルギー T は一定で変化
しない.実際,このとき
dT
= F v ((3.31) より)
dt
= 0 (物体の受けている力 F = 0 より)
となるから T は定数((1.10) より).
・物体が重力 (3.15) を受けている場合は,その位置エネルギー V を
V = mgx
(3.32)
により定める.ここで x は物体の位置の地表からの高さ.この物体のエ
ネルギー E とは,その運動エネルギー (3.29) と位置エネルギー (3.32)
の和のことである.つまり
1
E = mv 2 + mgx
2
・エネルギー (3.33) は時間によらず一定値を保つ.実際,
d 1 2
dE
=
( mv + mgx)
dt
dt $2
%
d 1 2
d mgx
=
mv +
dt 2
dt
dx
= F v + mg
((3.31) と (3.29) より)
dt
= F v + mgv ((3.1) より)
= Fv − Fv
(物体の受けている力の式 (3.15) より)
= 0.
26
(3.33)
従って E は定数((1.10) より).
問.物体を地表からの高さが x0 の位置から真上に速度 v0 で投げ上げた.
この物体が着地する直前の速度 v を求めよ.
解.重力を受けながら運動する物体でのエネルギーは (3.33) で定めたよ
うに
1
E = mv 2 + mgx
(3.34)
2
である.ここで x, v は物体の高度と速度である.上に示したように,こ
のエネルギー E の値は一定である.問の条件より,物体のはじめの高度
は x0 ,速度は v0 である.このときは
1
E = mv02 + mgx0
2
(3.35)
である.物体が着地する直前は,物体の高度 x は 0 である.従ってこの
ときは
1
1
E = mv 2 + mg · 0 = mv 2
(3.36)
2
2
である.ここで v は着地直前の物体の速度である.エネルギー E は時間
によらず一定なのであるから,(3.36) の右辺は (3.35) の右辺と同じ値で
ある.つまり
1 2 1 2
mv = mv0 + mgx0
2
2
m
両辺を
で割れば
2
v 2 = v02 + 2gx0 .
これより
.
v = ± v02 + 2gx0 .
着地直前の物体は下方に向かって運動しているから,その速度 v は負.
従って,求める速度は
.
v = − v02 + 2gx0 .
問.物体を地表からの高さが x0 の位置から速度 v0 で投げ上げた.この
物体が到達する最高点の高さ x を求めよ.
27
解.
(この物体のエネルギー (3.33) が一定であることと,最高点での物体
の速度は 0 になることを用いる.
)
v02
x=
+ x0 .
2g
・物体がばねの力 (3.19) を受ている場合は,その位置のエネルギー V を
1
V = kx2
2
(3.37)
により定める.この物体のエネルギー E とは,その運動エネルギー (3.29)
と位置エネルギー (3.37) の和のこと.つまり
1
1
E = mv 2 + kx2
2
2
(3.38)
・エネルギー (3.38) は時間によらず一定値を保つ.実際,
$
d 1 2
kx
dt 2
%
=
=
=
=
=
1 d x2
k
2 dt
1 d(xx)
k
2 ! dt
"
1
dx
dx
k
x+x
2
dt
dt
1
dx
k · 2x
2
dt
kxv ((3.1) より)
= −F v
(物体の受けている力の式 (3.19) より).
これと (3.31) を用いると
d 1 2 1 2
dE
=
( mv + kx )
dt
dt $2
2
%
$
%
d 1 2
d 1 2
=
mv +
kx
dt 2
dt 2
= F v − F v = 0.
28
従って E は定数((1.10) より).
$
%
d 1 2
注.上の
kx の計算では (1.9) を使ったが,(1.11) を使って次の
dt 2
ように計算してもよい:
$
d 1 2
kx
dt 2
%
=
=
=
=
1 dx2
k
2 dt
1 dx2 dx
k
((1.11) より)
2 dx dt
1
dx
k · 2x
2
dt
kxv ((3.1) より)
= −F v
((3.19) より).
問.物体がばねの力を受けながら運動している.ある時刻におけるこの
物体の平衡点からの変位は x0 ,速度は v0 であった.この物体の変位 x
の最大値を求めよ.
解.ばねの力を受けながら運動する物体のエネルギーは (3.38) で定めた
ように
1
1
E = mv 2 + kx2 .
(3.39)
2
2
である.ここで x, v は物体の変位と速度である.上に示したように,こ
のエネルギー E は一定である.問の条件より,ある時刻における物体の
変位は x0 ,速度は v0 である.このときは
1
1
E = mv02 + kx20 .
2
2
(3.40)
である.エネルギー E は時間によらず一定なのだから,(3.39) の値は常
に (3.40.) に等しい.つまりどの時刻でも
1 2 1 2 1 2 1 2
mv + kx = mv0 + kx0
2
2
2
2
が成り立っている.右辺は x0 と v0 によって定まっている定数だから,左
辺の x2 が最大となるのは,左辺の第1項が最小の値 0 となるときであ
る.つまり上式が
1 2 1 2 1 2
kx = mv0 + kx0 .
2
2
2
29
となるときである.この式を書き直すと
m
x2 = v02 + x20 .
k
これより
m 2
x=±
v + x2 .
k 0 - 0
m 2
m 2
2
これは物体の x 座標(変位)の最小値が −
v0 + x0 ,最大値が
v0 + x20
k
k
m 2
であることを示している.従って,変位 x の最大値は
v0 + x20 .
k
問.物体がばねの力を受けながら運動している.ある時刻におけるこの
物体の平衡点からの変位は x0 ,速度は v0 であった.この物体の速度の
最大値を求めよ.
(
解. v02 +
k 2
x .
m 0
・エネルギーの単位を求める.エネルギーの式 (3.33) や (3.38) の運動エ
1
ネルギー mv 2 の部分に注目すると
2
1
エネルギーの単位 = 運動エネルギー mv 2 の単位
2
= 質量の単位 × (速度の単位)2
= 質量の単位 ×
!
長さの単位
時間の単位
"2
((3.5) より)
従って
エネルギーの単位 =
質量の単位 × 長さの単位2
.
時間の単位2
(3.41)
・長さの単位に m(メートル),質量の単位に kg(キログラム),時間の単
位に s(秒)を用いた場合,(3.41) よりエネルギーの単位は (kg · m2 )/s2 .
この単位 (kg · m2 )/s2 を ジュール と呼び,記号 J で表す.3.4 節で述べ
たニュートン N を使うと,J = N · m と表せる.
3.9
力のポテンシャル
・前節では,物体の受ける力が重力の場合とばねの力の場合に対し,物
体のエネルギーを定めた.ここではより一般的な場合に対し物体のエネ
30
ルギーを定める.
・重力 F = −mg を受ながら運動する物体の位置エネルギーは,(3.32)
で定めたように
V = mgx
である.この V は位置 x のみを変数に持ち(速度 v や時間 t を変数に
持たない),x で微分すれば
dV
dx
d mgx
dx
= mg
=
= −F
(F = −mg, より)
(3.42)
となる.また,ばねの力 F = −kx を受ながら運動する物体の位置のエ
ネルギーは,(3.37) で定めたように
1
V = kx2
2
である.この V も位置 x のみを変数に持ち,x で微分すると
dV
dx
d 1 2
( kx )
dx 2
= kx
=
= −F
(F = −kx より)
(3.43)
となる.
・上に述べたように,力 F が重力やばねの力の場合,V は位置 x のみ
を変数に持つ関数であり (3.42), (3.43) に示したように
F =−
dV
dx
(3.44)
という式を満たしている.力 F が重力やばねの力でない場合でも,力 F
に対して,位置 x のみを変数に持つ関数 V で (3.44) を満たすようなも
のが見つかることがある.このとき V を力 F の ポテンシャル と呼ぶ.
(上の重力やばねの力の場合のように V を位置エネルギーと呼ぶことも
ある.
)
31
・一般に,力のポテンシャル V を求めると任意定数 C が付く.つまり
(C は任意定数)
V = ··· + C
(3.45)
の形となる.
例.力 F が
F = sin x
(3.46)
と表されるとき,力 F のポテンシャル V は
(C は任意定数)
V = cos x + C
(3.47)
の形となる.実際,
dV
dx
d(cos x + C)
dx
= − sin x
=
= −F
(3.46) より)
となるから V は C の値が何であっても (3.44) を満たしている.
・通常は,ポテンシャルの基準点を適当に選び(例えば x = 0),その点
でのポテンシャル V の値が 0 となるように (3.45) の定数 C の値を定め
る.
問.力 (3.46) のポテンシャル V は,ポテンシャルの基準点を x = 0 に
とったときどのように表されるか.
解.力 (3.46) のポテンシャル V の一般形は (3.47) に示したように
V = cos x + C.
基準点 x = 0 ではこのポテンシャル V の値は 0 でなければならないか
ら C = −1(cos 0 = 1 より).つまり,V は規準点を x = 0 としたとき
V = cos x − 1 と表される.
32
・物体の受けている力 F が保存力であり,従って式 (3.44) を満たすよう
なポテンシャル V があるとき,物体のエネルギー E を
E =T +V
(3.48)
で定める.ここで T は (3.29) で定めた物体の運動エネルギーである.
・(3.48) で定めたエネルギー E は時間によらず一定値を保つ.実際,
dE
dT
dV
=
+
dt
dt
dt
dV
= Fv +
((3.31) より)
dt
dV dx
= Fv +
((1.11) より)
dx dt
= F v − F v ((3.44) と (3.1) より)
= 0.
従って E は定数((1.10) より).
問.物体の受けている力 F が
F = −x3
と表されるとする.この物体のエネルギー E はどのような式となるか.
ただし力 F のポテンシャルの基準点を x = 0 とせよ.
解.いま
1
V = x4 + C (C は任意定数)
(3.49)
4
と置く.この V は位置 x のみを変数とする関数であり,しかも
$
%
dV
d 1 4
=
x + C = x3 = −F
dx
dx 4
となるから (3.44) を満たす.従って V は力 F のポテンシャルである.
基準点 x = 0 ではこのポテンシャル (3.49) の値は 0 でなければならない
から C = 0.従って
1
V = x4
4
33
従って (3.48) より物体のエネルギーは
1
1
E = mv 2 + x4 .
2
4
3.10
仕事
・物体を位置 x = a から位置 x = b まで力 F を加えながらゆっくり移
動させたとする.このとき,定積分
W =
#
b
a
F dx
(3.50)
の値を物体にした 仕事 と呼ぶ.(W は work(仕事)の頭文字.定積分に
ついては (1.27) 参照)
注.物体をゆっくりと移動させるとは,物体が外部から受けている力を
打ち消して 0 にするのに必要なだけの力 F を加えながら(つまり,釣り
合いを保ちながら),物体を移動させるということである.
問.地上にある質量 m の物体を,ゆっくりと高さ h の位置まで持ち上げ
た.物体になした仕事 W を求めよ.重力加速度を g とする.また,こ
の仕事 W が,持ち上げた後の物体の位置エネルギーから持ち上げる前の
物体の位置エネルギーを引いたものに等しいことを確かめよ.
解.物体は重力 −mg (3.15) を受けている.これをゆっくり持ち上げるに
は,逆の力 F = mg を加えることが必要.物体の最初の位置(高度)は
0,最後の位置は h であり,また mg は定数であるから,
W =
=
#
h
0
#
0
h
F dx ((3.50) より)
mgdx
= [mgx]h0
((1.27) の 文字 t を x に変えたものより)
= mgh − mg · 0
= mgh
従って求める仕事は W = mgh.(3.32) より,物体が高さ h の位置にあ
るときその位置エネルギーは mgh.また,物体が地表にあるときその位
34
置エネルギーは mg · 0 = 0.従って,前者から後者を引いたものは mgh.
これは求めた W に等しい.
問.ばね定数 k のばねに取り付けられた物体を,平衡点からゆっくりと
x0 だけ変位させた.物体になした仕事 W を求めよ.また,この仕事 W
が,変位させた後の物体の位置エネルギーから変位させる前の物体の位
置エネルギーを引いたものに等しいことを確かめよ.
解.物体はばねが引き戻す力 −kx (3.19) を受けている.この物体をゆっ
くりと変位させるためには,逆の力 F = kx を加えることが必要.物体
の最初の位置(変位)は 0,最後の位置は x0 だから,
W =
=
#
x0
#0x0
&
0
F dx ((3.50) より)
kxdx
'
1 2 x0
kx
((1.27) の 文字 t を x に変えたものより)
=
2
0
1 2 1
=
kx − k · 02
2 0 2
1 2
=
kx .
2 0
1
従って求める仕事は W = kx20 .物体の変位が x0 のとき,(3.37) より物
2
1 2
体の位置エネルギーは kx0 .また,物体が変位が 0 であるとき,物体
2
1
の位置エネルギーは k · 02 = 0.従って,前者から後者を引いたものは
2
1 2
kx .これは求めた W に等しい.
2 0
3.11
物体の衝突
・x 軸上を運動してい2つの硬い小球 A と B が衝突したとする.衝突
時に小球 A が小球 B から受ける力 FA と小球 B が小球 A から受ける
力 FB は,向きが逆で大きさが等しい.つまり
FB = −FA .
(3.51)
である.これを 作用反作用の法則 と呼ぶ.衝突の前と後は小球 A も小
球 B も力を受けずに運動しているものとする.
35
・衝突後の2つの小球の運動量の和は,衝突前の運動量の和に等しい(運
動量は (3.28) で定めた).つまり,小球 A と B の衝突前の運動量を
pA , pB ,衝突後の運動量を p" A , p" B とすれば,
p" A + p " B = p A + pB
が成り立つ.運動量の定義 (3.28) より,上式は
mA vA" + mB vB" = mA vA + mB vB
(3.52)
と表すこともできる.ここで mA , mB は小球 A,B の質量,vA , vB は小球
A,B の衝突前の速度,vA" , vB" は小球 A,B の衝突後の速度である.
・衝突後の2つの小球の運動エネルギーの和が,衝突前の運動エネルギー
の和に等しいとき(運動エネルギーは (3.29) で定めた),つまり
1
1
1
1
2
2
mA vA" + mB vB" = mA vA 2 + mB vB 2
2
2
2
2
(3.53)
が成り立つとき,この衝突を 完全弾性衝突 と呼ぶ.
注.物体の衝突によってその運動エネルギーの一部が物体内部のエネル
ギーに転化する場合 (物体の温度上昇などが起る)は,衝突は完全弾性衝
突とはならない.
・(3.52) が成り立つことを示す.いま,時刻 t における小球 A, B の速度
を vA (t), vB (t) と書き,時刻 t に小球 A, B が受けている力を FA (t), FB (t)
と書く.(3.12) より,小球 A と小球 B の運動方程式はそれぞれ
d vA (t)
= FA (t),
dt
である.小球 A と B の運動量の和
し,上の2つの式を用いると
d
(mA vA (t) + mB vB (t)) =
dt
=
mA
d vB (t)
= FB (t).
(3.54)
dt
mA vA (t) + mB vB (t) を時間 t で微分
mB
d vA (t)
d vB (t)
+ mB
dt
dt
FA (t) + FB (t) ((3.54) より) (3.55)
mA
36
を得る.ここで,どの時刻 t においても
FA (t) + FB (t) = 0
(3.56)
が成り立っている.実際,小球 A,B が衝突している最中は,(3.51) よ
り (3.56) が成り立ち,それ以外の時刻 t では小球 A, B の受けている力
FA (t), FB (t) はどちらも 0 だから,やはり (3.56) が成り立つ .(3.55) と
(3.56) より
d
(mA vA (t) + mB vB (t)) = 0
dt
この結果は小球 A,B の運動量の和 mA vA (t) + mB vB (t) が定数であり変
化しないことを示す((1.10) より).従って衝突後の小球 A と B の運動
量の和は衝突前の和と同じである.つまり (3.52) が成り立つ.
問.静止している質量 m の小球 A に,同じ質量を持つ速度 vB の小球
B が衝突した.この衝突は完全弾性衝突であった.小球 A と小球 B の
衝突後の速度を求めよ.
解.小球 A と B の衝突後の速度をそれぞれ vA " ,vB " で表す.問の条件
より,小球 A と小球 B の質量は m であり,また衝突前の小球 A の速度
vA は 0 である.従って (3.52) より
mvA" + mvB" = mvB .
(3.57)
が成り立ち,また (3.53) より
1 "2 1 "2 1 2
mv + mvB = mvB .
2 A
2
2
(3.58)
が成り立つ.(3.57) の両辺を m で割った式より
vB = vA" + vB"
これを (3.58) の両辺を m/2 で割った式の右辺に代入すると
2
2
vA" + vB" = (vA" + vB" )2
この式は右辺を展開した後,整理すると
vA" vB" = 0
37
(3.59)
という式となる.これより
vA" = 0
(3.60)
vB" = 0
(3.61)
と
の少なくとも一方が成り立たなければならない.いま (3.60) が成り立つ
としてみる.これは衝突後も小球 A が静止したままであることを意味す
る.一方,(3.59) よりこの仮定 (3.60) のもとでは vB " = vB であり,小
球 B は衝突後も衝突前と同じ速度で運動していることになる.従って,
衝突後,小球 B は静止したままの小球 A を通り抜けたことになる.こ
れは不可能.従って (3.60) は成り立たない.従って (3.61) の方が成り立
つことになる.つまり衝突後の小球 B の速度は 0.このとき (3.59) より
vA" = vB .つまり衝突後の小球 A の速度は vB .
(A と B の速度が衝突で
入れかわったことになる.
)
ベクトルの復習
4
4.1
ベクトル
・ベクトル とは向きと大きさを持つ量.
・ベクトルを次図のように矢印で表す.矢印の向きはベクトルの向き,矢
"
印の長さはベクトルの大きさを表す.ベクトルに名前を付けるときは,A
のように上に矢印のついた記号を用いることにする.
#
#"
# A
#
$
#
" ,B
" の和 A
"+B
" とは,A
" ,B
" を2辺とする平行四辺形の
・ベクトル A
対角線で表される下図のようなベクトル.
38
"
A
%
(
)
(( $
" &
(( $$
B
&
(
" "
&((( A + B $
&
(
%$
&'
&
"
& B
&
&
&'
"
A
" +B
" は下図のように A
"とB
" を繋げることで
注.右端の図のベクトル A
も得られる:
)
((
&'
(
"+B
"(
&
A
(
"
&B
((
&
((
(
%&
"
A
" の 定数 k 倍 k A
" とは,下図のように A
" の大きさを |k| 倍
・ベクトル A
し(例えば k = −2 なら | − 2| 倍,つまり2倍する),k が負のときは更
に向きを逆にしたベクトル.
&'
&
"
& A
&
&
&'
&
&
& kA
"
&
&
&
&
&
&
& kA
"
&
&
&*
k が正のとき k が負のとき
" とは −1A
" のこと.従って −A
"はA
" と大きさが同じで向きが逆の
・−A
"−B
" とは A
" + (−B)
" のこと.
ベクトル.差 A
" に対し A
" −A
" = (A
" + (−A))
" やA
" の 0 倍 0A
" を作図すると,大きさ
・A
(長さ)が 0 のベクトルとなる.大きさが 0 のベクトルを記号 "0 で表し,
零ベクトル と呼ぶ.零ベクトル "0 を表す矢は長さが 0 であるからその向
きは重要ではない.
" の大きさ,つまりベクトル A
" を表す矢印の長さを,記号
・ベクトル A
" で表す.ベクトル A
" の大きさを,上の矢印を取り除いた A で表すこ
|A|
ともある.
39
"とB
" の 内積 A
"·B
" を
・ベクトル A
"·B
" = |A||
" B|
" cos θ
A
(4.1)
"とB
" のなす角.つまり下図の角
により定める.ここで θ はベクトル A
θ.
&'
" &
B
&
&
& θ
"
A
%
" とB
" が直交しているときは A
"·B
" = 0 となる.実際,こ
・ベクトル A
◦
のとき θ = 90 だから cos θ = 0.従って (4.1) の右辺は 0 となる.
" の大きさが 2,B
" の大きさが 3,A
" とB
" のなす角が 2π のとき,
問.A
3
"·B
" を求めよ.
内積 A
解.
"·B
" = 2 × 3 × cos 2π ((4.1) より)
A
3
1
2π
1
= 6 × (− ) (cos
= cos 120◦ = − より)
2
3
2
= −3.
" の大きさ |A|
" は,内積を用いて
・ベクトル A
" =
|A|
.
"·A
"
A
"がA
" 自身となす角は 0 であるから,
と表せる.実際,A
"·A
" = |A||
" A|
" cos 0 ((4.1) より)
A
" 2 (cos 0 = 1 より).
= |A|
これより (4.2) を得る.
40
(4.2)
4.2
ベクトルの成分
・以下では平面上にあるベクトルを考える.この平面上に xy 座標をと
る.
" を,A
" を表す矢を下図のように座標原点から書いたときの
・ベクトル A
矢の先端の x 座標 Ax ,y 座標 Ay を用いて,
"=
A
!
Ax
Ay
"
.
(4.3)
" の x 成分,y 成分 と呼ぶ.ベク
と表す.Ax , Ay をそれぞれベクトル A
トルを (4.3) のように表すことを,ベクトルの 成分表示 という.
y
+
,
+
+
+"
+ A
+
"
Ay
+
+
+
+
+
,
+
Ax
! x
・零ベクトル "0 とは大きさが 0 のベクトルのことであった.これは
"0 =
!
0
0
"
(4.4)
" が "0 の場合,矢印の長さは 0.従って上図右
と表せる.実際,上図で A
の座標 Ax も座標 Ay も 0 となる.
" は,これを表す矢を座標原点から書いたとき,そ
例.下図のベクトル A
!
"
−2
"
の先端の x 座標が −2,y 座標が 3 となる.従って A =
である.
3
41
y
-.
"
-A
3
-
"
.-
−2
-
! x
" B
" が
・ベクトル A,
"=
A
!
Ax
Ay
"
" =
B
,
!
Bx
By
"
と表されるとき,
"+B
" =
A
!
"=
kA
!
"
Ax + Bx
Ay + By
kAx
kAy
"
(4.5)
(k が定数のとき)
(4.6)
となる.言い換えれば
!
k
"=
問.A
!
5
3
"
Ax
Ay
!
" =
,B
"
Ax
Ay
!
+
"
!
=
"
4
−1
Bx
By
!
"
=
kAx
kAy
!
Ax + Bx
Ay + By
"
,
"
(4.8)
" − 3B
" を求めよ.
のとき,2A
解.
" − 3B
" = 2
2A
=
=
!
!
!
5
3
10
6
−2
9
"
"
−3
+
"
!
!
4
−1
−12
3
"
"
((4.8) より)
. ((4.7) より)
42
(4.7)
" の先端の x
注.(4.5) は下の左のような図を書けば確かめられる.矢 A
" の先端の x 座標は Bx である.矢 A
" と矢 B
" から平
座標は Ax ,矢 B
"+B
" の先端の x 座標は Ax + Bx
行四辺形の規則に従って作図した矢 A
であることがわかる.また y 座標についても同様なことが確かめられる.
(4.6) は下右のような図(これは k > 0 の場合の図)を書けば確かめられ
" の先端の x 座標は Ax である.矢 A
" からベクトルの定数倍の
る.矢 A
" の先端の x 座標は kAx とであることがわか
規則に従って作図した矢 k A
る.また y 座標についても同様なことが確かめられる.
y
y
"
"
&
&
1
2
&&
&
$$
1
&
&
&
1 $
&
By
1
'
$
1
&&
1"
" &
"$
B
1 A
+B
Ay & 11
0$
/
//
&1////"
A
/
! x
&1/
Ay + By
0
Bx
kAy
Ay
Ax Ax + Bx
+
,
+
+
,
" ++
kA
+
+A
"
+
! x
+
Ax kAx
・(4.5),(4.6) と (4.4) より
" + "0 =
A
k"0 =
!
つまり
!
Ax + 0
Ay + 0
"
k×0
k×0
=
"
!
=
0
0
!
"
Ax
Ay
"
,
.
" + "0 = A,
"
A
k"0 = "0
(4.9)
が成り立つ.
" ,B
" が
・ベクトル A
"=
A
!
Ax
Ay
"
" =
B
!
Bx
By
"
" の大きさ |A|
" と, A
" ,B
" の内積 A
" ·B
" は
と成分で表されているとき,A
次のように表せる:
" =
|A|
.
A2x + A2y ,
43
(4.10)
"·B
" = Ax Bx + Ay By
A
(4.11)
と表せる.言い換えれば
/!
"/
/
/ A
.
x
/
/
/ = A2x + A2y ,
/
/ Ay /
!
" !
"
Ax
Ay
·
Bx
By .
(4.12)
= Ax Bx + Ay By
(4.13)
(4.10) と (4.11) からも (4.2) が得られる.
"=
問.A
!
4
−3
"
" =
,B
!
2
5
"
" とA
"·B
" を求めよ.
のとき,|A|
解.
" =
|A|
=
.
√
42 + (−3)2
((4.10) より)
25 = 5,
"·B
" = 4 × 2 + (−3) × 5 ((4.11) より)
A
= −7.
注.(4.10) は次左図を用いて次のように確かめられる:
" = ベクトル A
" を表す矢印の長さ
|A|
!
"
.
図の矢印の長さをピタゴラス
2
2
=
Ax + Ay
.
の定理を使 っ て求めた
y
y
"
Ay
By
+
,
+
+
+"
+ A
+
Ax
Ay
! x
"
&&'
" &
B
&
0
/
//
& θ ///
"
/
A
&//
Bx
Ax
! x
" とB
" のなす角を θ,
(4.11) は次のようにして確かめられる.上右図の A
" と x 軸のなす角を θA ,B
" と x 軸のなす角を θB とすると,
A
"·B
" = |A||
" B|
" cos θ
A
((4.1) より)
44
" B|
" cos(θB − θA ) (θ = θB − θA より)
= |A||
" B|(cos
"
= |A||
θB cos θA + sin θB sin θA )
(cos(x − y) = cos x cos y + sin x sin y より)
"
B
A
B
A
x
x
y
y
" B|
"
= |A||
+
" |A|
"
" |A|
"
|B|
|B|


" cos θA = Ax /|A|,
"
cos θB = Bx /|B|,


" sin θA = Ay /|A|
" より
sin θB = By /|B|,
!
= Ax Bx + Ay By .
・ベクトルの内積は次のように通常の数の積と似た性質を持つ:
"·B
" =B
" ·A
"
A
" + B)
" ·C
" =A
"·C
" +B
" ·C
"
(A
(4.14)
(4.15)
" · (B
" + C)
" =A
"·B
" +A
"·C
"
A
" ·B
" = k(A
" · B)
"
(k A)
(4.16)
(4.17)
" · (k B)
" = k(A
" · B)
"
A
(4.18)
問.内積が上の性質を持つことを,ベクトルの成分表示を利用して示せ.
" B,
" C
" を
解.ベクトル A,
"=
A
!
Ax
Ay
"
,
" =
B
!
Bx
By
"
,
" =
C
!
Cx
Cy
と成分で表す.このとき
"·B
" = Ax Bx + Ay By
A
((4.11) より)
= Bx Ax + By Ay
" ·A
" ((4.11) より)
= B
となり,(4.14) を得る.また
"+B
" =
A
!
Ax + Bx
Ay + By
45
"
,
"
であるから
" + B)
" ·C
" = (Ax + Bx )Cx + (Ay + By )Cy
(A
((4.11) より)
= Ax Cx + Ay Cy + Bx Cx + By Cy
"·C
" +B
" ·C
" ((4.11) より)
= A
となり,(4.15) を得る.(4.14) と (4.15) を利用すると
" · (B
" + C)
" = (B
" + C)
" ·A
" ((4.14) より)
A
" ·A
"+C
" ·A
" ((4.15) より)
= B
"·B
" +A
"·C
"
= A
((4.14) より)
となり,(4.16) を得る.また
"=
kA
!
kAx
kAy
"
であるから,
" ·B
" = (kAx )Bx + (kAy )By
(k A)
((4.11) より)
= k(Ax By + Ay By )
" · B)
"
= k(A
((4.11) より)
となり,(4.17) を得る.(4.14) と (4.17) を利用すると
" · (k B)
" = (k B)
" ·A
" ((4.14) より)
A
" · A)
" ((4.17) より)
= k(B
" · B)
"
= k(A
((4.14) より)
となり,(4.18) を得る.
・ベクトルの大きさは次のように数の絶対値と似た性質を持つ:
" = |k||A|
"
|k A|
" + B|
" ≤ |A|
" + |B|
"
|A
ここで (4.19) 右辺の |k| は定数 k の絶対値である.
46
(4.19)
(4.20)
問.(4.19) が成り立つことを,ベクトルの成分表示を利用して示せ.
"を
解.ベクトル A
"=
A
!
Ax
Ay
"=
kA
!
kAx
kAy
と成分で表すと
"
"
であるから,
" =
|k A|
.
(kAx )2 + (kAy )2 ((4.10) より)
.
√ .
=
k 2 (A2x + A2y ) = k 2 A2x + A2y
.
√
= |k| A2x + A2y (|k| = k 2 より)
" ((4.10) より).
= |k|||A|
5
ベクトルの微分
・以下では成分が変数
t の関数であるようなベクトルを考える.例え
!
"
cos t
ば
はそのようなベクトルである.
sin t
・ベクトルを微分するということは,その成分を微分するということで
ある.つまり,
!
"
A
x
"=
A
Ay
のとき


dAx
" 

dA
dt  .
=
 dAy 
dt
dt
言い換えれば
d
dt
!
Ax
Ay
"


dAx


dt 
=
 dAy  .
dt
47
(5.1)
ベクトルを2回微分するということは,その成分を2回微分するという
こにとなる.つまり
2
d
dt2
"=
問.A
!
t2
sin t
"
!
のとき,
Ax
Ay
"


d2 Ax


dt2 
=
 d2 Ay  .
dt2
(5.2)
"
d2 A
を求めよ.
dt2
解.
"
d2 A
d2
=
dt2
dt2


= 

=
!
!
t2
sin t
d2 t2
dt2
d sin t
dt
2
− sin t
"




"
((5.1) より)
.
・(1.10) に記したように,微分すると 0 となる関数は定数である.同様
に,微分すると零ベクトル "0 となるベクトルは,成分が定数のベクトル
である.つまり
"
dA
" のどの成分も定数
= "0 ⇒ A
(5.3)
dt
言い換えれば
d
dt
!
Ax
Ay
"
=
!
0
0
"
⇒
!
Ax
Ay
"
=
!
C1
C2
"
(C1 , C2 は定数)
が成り立つ.実際,上の左側の式は (5.1) より


dAx
!
"


0
 dt  =
 dAy 
0
dt
と書き直せるが,これは2つの式
dAx
dAy
= 0,
=0
dt
dt
をまとめて書いたものに他ならない.これらの式から Ax = C1 , Ax = C2
(C1 , C2 は定数)を得る(((1.10) より).
48
6
6.1
平面上を運動する物体
位置,速度,加速度
・ここでは平面上を運動する物体を考える.この平面上に下図のよう
に xy 座標をとる.物体の位置の x 座標と y 座標をそれぞれ x,y で表
す.
y
"
y
3
3
' 物体
3
4
3
3
3 "
r
x
! x
・上図に示したような,座標原点から物体の位置へのベクトル "r を,物
体の 位置ベクトル,あるいは簡単に物体の 位置 という.ベクトルの成分
の定め方 (4.3) より,位置 "r は
"r =
!
x
y
"
と表せる.物体の位置 "r は,物体の座標 (x, y) を縦に書いたものに他な
らない.
・物体が運動していれば,物体の位置 "r は時間 t の関数となる.例えば物体
!
"
cos t
の座標が x = cos t,y = sin t と表されるとき,物体の位置は "r =
sin t
という t の関数となる.
・物体の速度 "v とは,物体の位置 "r を時間 t で微分したもの.つまり
"v =
d"r
dt
(ベクトルの微分については前節を見よ.
)
・物体の 速さ とは,物体の速度 "v の大きさ |"v | のこと.
49
(6.1)
・物体の加速度 "a とは,物体の速度 "v を時間 t で微分したもの.つまり
"a =
!
d"v
dt
(6.2)
"
1 − cos t
問.物体の位置が "r =
と表されるとき,物体の速度 "v と加
sin 3t
速度 "a を求めよ.また物体の速さ |"v | を求めよ.
解.
"v =
=
=
=
"a =
=
=
=
d"r
((6.1) より)
dt !
"
d
1 − cos t
dt
sin 3t


d
(1 − cos t) 

 dt
 ((5.1) より)


d sin 3t
dt "
!
sin t
,
3 cos 3t
d"v
((6.2) より)
dt !
"
d
sin t
((6.3) より)
dt 3 cos 3t


d sin t



dt

 d 3 cos 3t  ((5.1) より)
dt
!
"
cos t
.
−9 sin 3t
また,物体の速さ |v| は
|v| =
=
.
(sin t)2 + (3 cos 3t)2
.
sin2 t + 9 cos2 3t.
50
((6.3), (4.10) より)
(6.3)
・物体の位置の微分は速度,速度の微分は加速度だから,加速度は物体
の位置 "r を2回微分したもの. つまり物体の加速度 "a は次のようにも表
せる:
"a =
問.物体の位置が "r =
!
t+1
t3 + 1
"
d2"r
dt2
(6.4)
と表されるとき,物体の加速度 a を求
めよ.
解.
d2"r
((6.4) より)
dt2 !
"
d2
t+1
=
dt2 t3 + 1
"a =


= 

=
!

d2 (t + 1)

dt2

2 3
d (t + 1) 
dt2
"
0
.
6t
((5.2) より)
注.物体の位置 "r,速度 "v ,加速度 "a の関係は下図のように表現できる.
矢 "v の方向と長さは,矢 "r の先端(つまり物体の位置)が進む方向と進
む速さを表す.同様に,矢 "a の方向と大きさは,矢 "v の先端が進む方向
と進む速さを示す.つまり,加速度 "a は速度 "v がどのように変化しつつ
あるかを表す.
y
"a
87
7
"
56
5 "
v
5'
物体
1
2
1
1r
1 "
1
! x
51
6.2
運動方程式
・平面上を運動する物体が受けている力は,下図のように平面上のベクト
" で表される.物体がいくつかの力 F"1 , F"2 , F"3 , . . . を受けているなら,物
ルF
" はこれらの力の和 F" = F"1 +F"2 +F"3 +· · ·
体の受けている正味の力(合力)F
となる.
7
8
77
7
F"
'物体
・平面上を運動する物体に対するニュートンの運動方程式は
m"a = F"
(6.5)
" は物体の受けている力.
ここで m は物体の質量,"a は物体の加速度,F
・(6.4) より,運動方程式 (6.5) は次のようにも表せる.
m
d2"r
= F"
dt2
(6.6)
ここで "r は物体の位置.
・(6.1) より,運動方程式 (6.5) は次のようにも表せる.
m
d"v
= F"
dt
(6.7)
ここで "v は物体の速度.
" を受けた物体には加速度 "a = 1 F" が生じる.この
注.(6.5) より,力 F
m
" と同じ方向
加速度 "a は,下図のように物体の速度 "v の矢の先端を力 F
に動かそうとする.つまり,物体の速度の方向を力の方向へ向けようと
する.
52
y
"
1
"
"a = m F
77
8
56
5 "
v
8
7
77 5
7 '物体
"
F
! x
6.3
力を受けずに運動する物体
・物体が力を受けていない場合,言い換えれば,物体の受けている力
F" が
F" = "0
(6.8)
である場合を考える.ここで "0 は零ベクトル "0 =
!
0
0
"
.
" = 0(数の 0)と書くことはできない.実際,F" = 0 と書
注.(6.8) を F
くと,左辺はベクトル,右辺は数であるから,決して成り立たない式と
なる(複数の成分を持つベクトルが通常の数に等しくなることはない).
・物体が力を受けていない場合,(6.7) と式 (6.8) より物体の運動方程式
は次のように表せる:
d "v "
m
= 0.
dt
この両辺に 1/m を掛ければ((4.9) より右辺は 1/m 倍してもやはり "0 )
d "v "
= 0.
dt
となる.従って (5.3) より "v の各成分は定数であり,"v は時間が経過して
も変わらない.つまり,力を受けていない物体の速度 "v は方向も大きさ
も常に一定である.
・逆に,物体の速度 "v が方向も大きさも変えず常に一定であるときは,
物体は力を受けていない.実際,"v が一定ならその成分も一定でだから,
53
"v =
!
C1
C2
"
(C1 , C2 は定数)と表せる.このとき
d"v
F" = m
((6.7) より)
dt !
"
d
C1
= m
dt C2


d C1


dt 
= m
 d C2  ((5.1) より).
dt
!
"
!
"
0
0
= m
=
= "0.
0
0
6.4
等速円運動をする物体
・半径 r の円の周上を一定の速さで運動している質量 m の物体 A を
考える.下図のように,この円の中心を座標原点にとる.
y
"
半径 r の円の周
9:9 "
v
9! 物体 A
r sin ωt
'
r ''
'
'ωt
''
! x
円の中心
r cos ωt
・ 物体 A は時刻 t = 0 に x 軸を横切ったとする.座標原点と物体を結
ぶ直線と x 軸がなす角は時間 t に比例して増大していくから,この角度
を図中のように ωt(ω は比例定数)と書いた.この比例定数 ω は物体 A
の円運動の 角速度 と呼ばれる.
(距離割る時間を速さと呼ぶのと同様に,
角度割る時間 = ωt/t = ω には角速度という名前がく).
・図より物体 A の x 座標は r cos ωt,y 座標は r sin ωt. 従って,物体
A の位置ベクトル "r は次のように表せる:
"r =
!
r cos ωt
r sin ωt
54
"
.
(6.9)
・物体 A の速度 "v と加速度 "a は次のように表せる:
"v =
!
"a =
!
−rω sin ωt
rω cos ωt
"
−rω 2 cos ωt
−rω 2 sin ωt
,
"
(6.10)
.
(6.11)
問.(6.9) から (6.10) と (6.11) を導け.
解.
d "r
((6.1) より)
dt !
"
d
r cos ωt
=
((6.9) より)
dt r sin ωt


d r cos ωt


dt

= 
 d r sin ωt  ((5.1) より)
dt
!
"
−rω sin ωt
=
((1.5), (1.4) より),
rω cos ωt
"v =
d "v
((6.2) より)
dt !
"
d
−rω sin ωt
=
(上で示した (6.10) より)
dt
rω cos ωt


d (−rω sin ωt)



dt
= 
 d rω cos ωt  ((5.1) より)
dt
!
"
2
−rω cos ωt
=
((1.4), (1.5) より).
−rω 2 sin ωt
"a =
・物体 A が等速円運動を続けるのは,ある力を受けているからである.
" を求めると
運動方程式 (6.5) を利用して物体 A の受けている力 F
F" = m"a ((6.5) より)
55
= m
!
−rω 2 cos ωt
−rω 2 sin ωt
= −mω
!
2
!
r cos ωt
r sin ωt
"
"
((6.11) より)
((4.8) より)
"
r cos ωt
となる.この最後の
は (6.9) に記した物体の位置ベクトル
r sin ωt
"r に他ならない.従って上の結果は
F" = −mω 2"r
(6.12)
と表せる.
・物体 A の位置ベクトル "r は,物体 A の円軌道の円の中心にとった座
"
標原点から物体 A へ向かうベクトルである.物体 A の受けている力 F
2
は,(6.12) のようにこの "r を負の定数 −mω 倍したものであるから,"r
" は物体 A からその円軌道の円の中心
と逆の向きを持つ.従って,力 F
" を 向心力 と呼ぶ.
への向きを持つ.物体 A の受けているこの力 F
" | は,物体 A の円軌道
・物体 A が受けている向心力 (6.12) の大きさ |F
の半径 r を用いて
|F" | = mω 2 r
(6.13)
と表せる.
問.(6.13) を示せ.
解.
/
/
/
/
|F" | = /−mω 2"r/
((6.12) より)
= | − mω 2 ||"r| ((4.19) より)
.
= mω 2 (r cos ωt)2 + (r sin ωt)2
.
((6.9) と (4.12) より)
= mω 2 r cos2 ωt + sin2 ωt = mω 2 r · 1 = mω 2 r.
・いま物体 A の速さを v で表す.速さ v とは速度 "v の大きさ |"v | のこと
56
であるから,(6.10) より
v = |"v |
=
=
.
.
(−rω sin ωt)2 + (rω cos ωt)2
((6.10), (4.10) より)
r2 ω 2 (sin2 ωt + cos2 ωt)
.
= rω sin2 ωt + cos2 ωt
= rω · 1 = rω
を得る.これより
v
ω= .
r
(6.14)
向心力の大きさを表す式 (6.13) を上式を用いて書き換えると,
|F" | = m
v2
r
となる.これは物体 A の受けている向心力の大きさを,物体 A の速さ
v を用いて表す式である.
注.(6.14) は次のようにしても得られる.物体 A は時間 t の間に円軌道
に沿って r × ωt の長さだけ動く(本 6.4 節始めの図参照).この移動し
た長さ rωt を移動時間 t で割ったものが物体 A の速さ v である.つまり
v=
rωt
= rω
t
これより (6.14) を得る.
6.5
運動量とエネルギー
・平面上(xy 平面上)を運動する物体を考える.物体の運動量 p
"を
p" = m"v
(6.15)
57
により定める.ここで m は物体の質量,"v は物体の速度である.運動量
p" と速度 "v を
!
"
!
"
px
vx
p" =
, "v =
(6.16)
py
vy
のように成分で表せば,(6.15) は
!
px
py
"
=m
!
vx
vy
"
と表せる.これは2つの式
px = mvx ,
py = mvy
をまとめて表したものに他ならない.
・物体が力を受けていない場合,物体の運動量 p
" は一定で変化しない.実
" が "0 なら
際,物体の受けている力 F
d"p
d"v
= m
((3.28) より)
dt
dt
= F" (物体の運動方程式 (6.7) より)
= "0 (仮定 F" = "0 より).
となる.(5.3) より,上の結果は p
" の成分が定数であり,従って p" は常に
一定であることを示している.
・物体の 運動エネルギー T を
1
T = mv 2
2
(v 2 = "v · "v )
(6.17)
で定める.ここで m は物体の質量,"v は物体の速度であり,内積 "v · "v を
簡単に v 2 と書いた.
問.物体の質量が m であり,その速度 "v が
"v =
!
2t
1 − t2
58
"
と表されるとき,物体の運動エネルギー T を求めよ.
解.
1 2
mv ((6.17)) より)
2
1
=
m"v · "v ((6.17) で v 2 は内積 "v · "v を表すとしたから)
2
1
=
m((2t)2 + (1 − t2 )2 ) ("v · "v を (4.11) を使 っ て計算した)
2
1
1
=
m(t4 + 2t2 + 1) = m(t2 + 1)2 .
2
2
T =
・(6.17) で定めた物体の運動エネルギー T を (6.15) で定めた物体の運動
量p
" を用いて表せば
T =
p2
2m
(p2 = p" · p")
(6.18)
となる.内積 p
" · p" を簡単に p2 と書いた.(6.18) は (6.17) の v 2 を次の
ように書き直すことで得られる:
v 2 = "v · "v
1
1
= ( p") · ( p") ((6.15) より)
m
m
1
1
=
("p · ( p")) ((4.17) より)
m
m
1
=
("p · p") ((4.18) より)
m2
1 2
=
p.
m2
・速度 "v と運動量 p
" を (6.16) のように成分で表したとき,(6.17) の v 2
と (6.18) の p2 は (4.11) より
v 2 = "v · "v = vx2 + vy2 ,
p2 = p" · p" = p2x + p2y
と表せる.従って (6.17) と (6.18) はそれぞれ
T =
1
m(vx2 + vy2 ),
2
59
(6.19)
T =
1 2
(p + p2y )
2m x
と表すこともできる.
(未完)(予定:力のポテンシャル,角運動量,惑星の運行,他)
60
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