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市民社会科における対話的交渉過程の評価方法開発とその実践的検証

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市民社会科における対話的交渉過程の評価方法開発とその実践的検証
社
会
系
教
科
教
育
学
会
『社
会
系
教
科
教
育
学
研
究
』
第21
号 2009
(pp.81-90)
市民社会科における対話的交渉過程の評価方法開発とその実践的検証
一中学校公民的分野単元匚
成人年齢を考える」を事例として−
Developing
and
Practicing
‘Social
Studies
of Negotiation
Educatio
for Civil A
Society' :
Case
Study ofAssessment
Opinion-Making
on
the L
柴 田 康弘
(飯
塚
市
立
穂
波
西
中学校
)
,授業単元における一連の過程の中
I はじめに
(問題の所在)
,社会科の究極目標である匚
市民的資質」 社
会
形
成
力
は
,特に議論の
場面
を中心に発揮
され
,育成さ
近年
,匚
市民社 でも
。そうであるならば
,その
育成を
主
眼
と
し
た
社
会
科
教
育
論
と
し
て
れ
る
も
の
と
想
定
で
き
る
,議論その
もの
を対象
としてもなされ
るべ
」に総称1
)される諸論が盛んに提案され, 評
価
は
会科
。この社会
あろう。 ,市民社会科授業において育
その研,
究特
成に匚
果も社
相当
積原
さ理
れに
ても
きと
たづいて,社 きで
会数
の蓄
構成
科論は
そ
こで本研究では ,子ども間
で交わ
され
」2
)
し,匚
『社会知』
会秩序を批判的」3
に几
つ收
く
り
出
ま
れ
る
社
会
形
成
力
に
つ
い
て
,さら
において,従来の論との違
の形成をめざ。
す
る
議
論
の
様
相
に
着
目
し
た
評
価
方
法
を
開
発
し
そして,育成すべき資質の中核を, に
その有効性
を実践によ
り検証するものである
。
いを主張する
,よりよい社会を
議論による批判や調整を通じ
て
,
匚
社会形成力」とし
形成
・更新するための資質
H オーセンティック
・アセスメン
トとしての対
て構想する4
)
。
話
的
交
渉
過
程
の
評
価
方
法
,授業実践の事実から説明さ
「市民社会科」に求められるオーセンティッ
授業論の有効。
性は
その際,授業において育成され 1 ク
・アセスメン
ト
れねばな,
ら何
なら
いかの評価方法によって見取り,示
オーセンティッ
た資質を
教育評価研究の進展に伴い,匚
。このことに関しては,本
・アセ
ス
メ
ン
ト:Authentic
(真
Assessment
すことが不可欠である
, ク
」
概
念
が
注目されている。この論
の代正
表
学
会
第15
回
研
究
発
表
大
会
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
に
お
い
て
も
の
評
価
)
は,
匚
評価できないものを学力と称することは裸の王 的な提唱者である,ウィギンズ(G.Wiggins)
」との辛辣な表現によって,すでに問
る。
様に等しい 。市民社会科においては,社会 これを次のように規定してい
,個
人的な生活の場で
題
提
起
さ
れ
て
い
る
「大
人
が
仕
事
場
や
市
民
生
活
,その文脈
を模写すること」5
)
形成力をいかに
して評価するか,が問われていよ
試
さ
れ
て
い
る
,匚
知識は主体によってそのま
う。
こ
の
評
価
概
念
は
,市民社会科は社会の原理に
先に。
述そ
べた
よ
う
に
『対話』
『共
し
構
,同
構』
成
主つ
義つ
の学
の方法は匚
議論」であり,目標は匚
社 わりにある人やモノと
していくもの」6
)であるとする
基づく ,再構築=社会
をつくる
(社会形成)
」 築
習
観
に
基
づ
い
て
い
る。
会秩序の
成
。構
こ
れらは,匚
授業
(学習活動)における
,市民社会科も構成主義の学習観に依拠
である ,子どもが
同様に。 (あるべ
き)社会
(のルー
この
「 ̄
構成主義」
,さらには匚
現実
議論に
よ
っ
て
し
て
い
る
」を志向する点においても,市民社会科論
ド)についての,間主観的な理解を構築
ルやコー
(社
会
)
,
オ
・アセスメン
トとは,理論
」であると言い換えられよう。その意味 と ーセンティック
す,
るこ
と
市民社会科における議論は,関係的に社会を
。
で
,かつ新たに作りか 的対応,
関社
係に
会あ
科
(特
るもに匚
のと社
いえ
会科
る学科)に代表され
わ
が
る
た
め
の
“
方
法
”
で
あ
り
え,形成する社会の
“内容”でもある。よって, る従
社来
会認識形成を主眼とした社会科論)の評価と
-
81−
,ペーパーテス
ト
・レポー
ト
(説明文)な
し
どて
,は
何
らかの子どもの匚
記述物
」に拠る方法が提
。授業後の学習成果を,
“静的
案されてきた
,評価
しようとす
(static)
”なも
の
と
し
て
見
取
り
。しか
し,授業や評価が構成主義に
るもの
で
あ
る
,現実
(社会)を志向するならば,実際の
依拠
し ,その
知が構成され
ていく有
り様
を
文脈
に
お
い
て
,見取
らなけれ
ばならない。それ
は,学校
を
こそ
,社会においても発揮できる
力であるか
どう
越
え,授
業の今,ここにおいて真正な課題に取
り
か
を
組
む子
どものパ
フォーマンスか
ら,・
い評
わ
ば
“
的
,
価
し動
よ
う
(dynamic)"
な学習成果と
して捉
え
とするものであ
る7
≒
,議論を前提とする市
民社会科にお
これ
ら
り
,よ
オ
ーセ
ンティック
・アセス
メン
ト概
念に
いては ,すなわ
ち匚
現実の(
真正な)
状況(
文
基づく評価,子どものパ
フォーマンスによる評
脈)
における
価」
こそが相応
しく,また要請
されて
いるといえ
よう8)
。
,異なる見解を持つ他者との間において,両
とは
,新たな意味を交渉する対
者の納得を導くための
話なのである。
一方,社会科における交渉に関しては,谷口和
,自立した市民に必要な資質の一つとして,
也
氏
が
匚
交渉や合意を通じて新たなルールを形成できる」
,それを次のように定義している。
資質を挙げ
ー
と特殊
な社会
的問題状況を前
「特定の参加メンバ
,合意に
達するための資質で,
自
提と
して交渉を行
い
。
」12
)
分たちの所属す
る社
会
を
更
新
さ
せ
る
も
の
で
あ
る
,社会をつくる
(社会形成の)
これらの
こ
と
か
ら
,独りよがりの主張や対立状況を生むも
議論とは,社会的関係として互いに働きかけつつ
のでなく
。その議論は,
交
わ
る
も
の
で
あ
る
こ
と
が
重
要
で
あ
る
匚
ディベー
ト」のように意見の異なる相手を“論
,むしろ異なる主張を持つ他
破”することよりは
,例えば説得や妥
者と
の
間
に
お
け
る
双
方
向
の
説
明
,調整 よって,お互いが納得
・共有できるも
協
。この
のへと再構成することこそ
が
目
指
さ
れ
る13
)
,いわば匚
対話的交渉」
ような関係における議論は
というべき性格のものである。
,このような対話的交渉から,社会形成力
では
。谷口氏は,先に引用した
「 ̄
新
をいかに
見
取
る
か
ールを形成できる資質」の定義に続けて,
たなル
,次のように述べている。
その評
価
に
関
し
て
匚
ある条件下で提出
され
た社会問題に
,子どもた
,結論に達
したかで評価され
ちがどのように
し
。対
そ処
の
中で,授業で培われた知識
・理
るべきである
解や諸
リテラシーがどのように生かされたかが重要
である
。
」14
)
,対話的交渉としての議論の過程にお
以上
よ
り
,構成員間における間主観的理解の成否,お
いて
,評価
よびそのための諸技能を社会形成力として
すべきである。
-
2 対話的交渉過程から社会形成力をいかにみと
るべきか
,どのよ
社会をつくる
(社会形成の)議論とは
うなものだろうか。
,人々の相互行為とは,匚
互いに
門脇厚司氏は ,同時に相手から働きかけら
相手に対し働きかけ 」9
)
であり,こうした
れるという行為のやりとり
相互行為こそが,匚
社会の
“現場”に他ならない。
」
のだという。
理解」の観点からは,
また議論の結果としての匚
。
バフチ
ン(M.M.BaMitin)
が
次
の
よ
う
に
述
べ
る
匚
理解すべ
き発話の
一つ一つの言葉の
上に
,私だ
一連の答える言葉を,いわば積み
重ね
る
ちは自ら。
の答
える言葉が
多くなれ
ばなるほ
ど,また
,
わ
けです
それ
らが重要なものであれ
ばあるほど理解はより深 3 対話
的交渉の発話分析指標
いもの
とな
り,よ
り本質的なものとな
ります
。
」10
)
さらに,
(transactiveによ
discussion)
る質的分析
,使用された形態の再認ではな (1)TD
手法 ,社会科(
厂
了
解
の
主
目
的
(
,
略
)
あ
た
ら
しは
きものの
了解に
ある」11
)
市民社会科も含め)
における
く 。このように捉えるならば,たとえ同
これまで ,
トゥール
ミン図式を利用
し,主
のだという
導
で
は
,文脈や話者によっ 議論の指
,
吟
味
を行
う手だてが
多くとられ
てきた
。
じ
を
用
い
た
発
話
で
あ
っ
て
も
張の
作成
て記
,号
そ
の
定
義
は
異
な
る
も
の
と
なる。つまり,議論 し
か
し
,
トゥー
ルミン図式は
,国語をは
じめ
とす
82−
ールであ
り, 科カリキュラムの核となる討論のスキルとして,
る他教科でも取
り入れ
られる論理。
ツまた
,図式に
。
社
会
科
固
有
の
手
だ
て
と
は
い
え
な
い
表
1
に
示
す
6
点
を
挙
げ
る
表1 :w.c.
パー
カー
に
よ
る討
論ス
キ
ル
よ
り記述的論理性が高まった
としても,それ
を刻
一刻と変わ
る実際の議論の文脈
においで発揮” ①教師よりもむしろ生徒同士で話し合うこと。挙手はしない
できる
か否か
はまた別の
話であ
り,
評価の観
点か こと。
,その厂
真正性(authenticity)」
に課題が残る。 ②話すだけでなく聞くこと。
,聞
くだ
けで
なく話す
こと。)
らは
(あ
る
人
に
と
っ
て
は
,授業分析の新
しい方法 ③
互いに批判
しあうこと。
教
育,
心理
社学
会の
的分
相野
互で
作は
用過程に着
目した質的研究 ④討論に他者の参加を促すこと。
⑤
論拠
をそえて,意見
を裏付
ける
ことO
として
几そ
こでは,特に,匚
相互作用 ⑥
人
格
よ
り
も
む
し
ろ
見
解
に
対
し
て
を申し立てること。
(個
人的な攻
撃を避
けること。)異議
が行われ
ている
w.c.
パー
カー
,藤
本将
人訳
「社会
科
の
核
に位
置
づ
く討
論授
のある対話(transactive
以
下
T
D)」
discussion,
。対話のラリーや
方向
性
,
状
況なに
ど
。
業
」溝
上
泰
編
著
『社
会
科
教
育
実
践
学
の
構
築
』
明
治
図
書
焦点を定める
,すでに
,複 2004
年,pp.370-371.
よ
り柴
田が
引
用
,整
理
した
。
)
の詳細な対話分析を行
うもの
であり。
,社会科における発話分析指標を次ペー
そこ
数の発話分析指標が開発
さ
れ
て
い
る
,
社
会
科
授業における
2で
のように設定した。これは,対話的交渉に
ジ表
このような
T
Dの手法は
る筆
合者
意が
を仮
め
ざ的
しに
た
意
見
調
整
の
お
り
方
に
重
点
を
対話
的交
対象
した
評価
を
行
う
と
,示
唆渉
的を
で
あ
ると
。
か
し
,
教
育
心本
理研
学究
研に
究
にっ
お おけ,
説
設
定
し
た
も
の
で
あ
る
。
な
お
,
置
き
て
,社会科固有のそれ
と
し
,既に示されている
T
Dの分析
設
定
に
あ
た
っ
て
は
いて示された分析指標は。そ
こで,以下では
,
ールミン図
指
標
お
よ
び
議
論
の
基
本
形
と
し
て
の
ト
ゥ
て設定されたものでは
な
い
,社会科としての評価に資
,協調的交渉の技能,
T
Dの手法
を援用して
式の諸要素を基盤とし
な
が
ら
,パーカーによる討論スキル
する発話分析指標
を設定する。
社会科固有のわかり
(2)
社会科固有の発話分析指標の,
設定
まず,組織心理
分析指標を
設
定
す
る
に
あ
た
り
紛争解決」の考え方を参照しよう。
学における匚
,紛争解決には次のような
「協調的
野沢聡子氏は
交渉」が必要であるという。
匚
素直に相
手に
自分のことを伝え,相手の話にも
,お互
いに情報交換をしながら,それぞれ
耳を傾
け思惑
,
,感情な
どをきちん
と受け止めて
。匚
問
の
欲
求
」を
「 ̄
われわれの問題」と
して取
り組み
,お互い
題
一緒
に探
し出すこと。
」16
)
に満足で
き
るの
解決
を
,
そ
た策
め
の主要技能として,冂青
報伝
そ
し
て
」匚
情報収集」匚
共通の基盤づくり」を挙げる。
達
,野沢氏が,匚
紛争解決だけではなく,
これ
らは
ルの問題解決に応用できる汎
社会のあらゆるレ
ベ
」17
)
であると述べるように,社会
用性のある技,
術あるいは市民社会科授業の)とし
形成
(現実の
。
ての議,
論に
お
い
て
も
適
用
す
る
こ
と
が
で
き
る
市民社会科では,社会形成として,議論
次に
によ
社
会れ
の
間社
主会
観
的
理
解
構
築
が
目
指
さ
れ
る
の
で
っる
た。
こ
は
科
固
有
の
わ
か
り
で
あ
る
。
ま
た
,
あ
これに関わって,パーカー(W.C.Paiker)
は,社会
を加味することで,社会科固有の枠組み構築を志
向している。
,これは単なる
“コミュニケーションの
ただ
し
。なぜならば,
技能”のみ
を
評
価
す
る
も
の
で
は
な
い
ルな対話的交渉
(授業時の議論も含む)
よりリア,
こうした技能を駆使
したやりとりを実
において ,当然,対象となる社会事象
(論
現す
る
た
め
に
は
)に関する認識を不可欠とするからである。こ
題 ,匚
認識と資質を結びつけ,媒介する」18
)
のことは
。そこ
という
市
民
社
会
科
の
特
質
と
も
対
応
し
て
い
る
,その時々の文脈に応じて,知識
・経験
・技
では
能といっ,
た自
の能
即興
発話
構己
成員
間力
でを
共総
有動
す員
るし
社た
会が
形的
成な
でき
た
によって
か否か,が重要となるのである。
Ⅲ 開発評価
方法検証のための実証授業の概要
表
2において示
した発話分析指標による評価
方
法を適用するため,
市
民社会科授業を開発
し,2008
年5月,
福岡
県内の
中
学
校
3
年
生
O学
121
名
)
。
な
お
本
研
究
は
,評級,
価
方法
の
開
を
対象
実施
し
た
・
検に
証を
第
一義
とす
る。紙幅の制限によ
り,開
発
発授
業については
,その概要
を示すに留める
。
−83−
表 2:社会 科における対話 的交渉 の分析指標 (分析カ テゴリー)
交渉
の
技 能*
発話カ テゴリー
分 類 基 準 ( 発 話 内 容)
上位カテ ゴリー
情
報
主 張
・ 自己 の意 見, 解 釈, 立場 の提 示。 「 被 害 家 族 の 心 情 に 第 一 の 配 慮 を し て , 被 告 人 を 有 罪 に す べ き
だ と思 い ま す。」
正当化
・ 自 己 の主 張 を 裏 付 け る, デ ー タ 「 こ れ まで の 同 様 の 事 件 の 判 例16 例 を 見 て も , そ の 二
匳刑は妥当
や 論 拠 , 事 例 の提 示 。
で す。」
批 判
(反 論)
・ 他 者 の主 張 を 否 定 , あ る い は 他 「 で も , 企 業 間 競 争 の 促 進 は , 消 費 者 の 立 場 か ら 見 れ ば, む し
者 と 対 立 す る 発 話 。 ま た, 相手 の ろ メ リ ッ ト だ と 思 う よ。」
主 張 の 不 備 を 指 摘 し たり , 疑義 を 「 そ の デ ー タ は, 2000 年 当 時 の も の だ か ら, 現 在 は 大 き く 様 子
唱 え る こ と で 正 当 化 を 促 す 発話 。 が 変 わ って い る よ。」
質 問
・ 相 手 の主 張 や 議 論 の不 明 点 を 明 「 そ の 意 見 に は , 育 児 休 業 中 の 給与 保 障 や , 福 利 厚 生 な ど の さ
確 化 す る た め の発 話 。
まざ まな 保 障 も 含 ま れ て い る と 考 え て 良 い の ?」
主 張
伝
達
情報
伝達
ま たは
情報
収集
正当化 要請
情報
収集
留保 条件
共
通
く
り
−
ボo
匚第三 者 機 関 によ る 調 査 の 結 果 , 生 態 系 へ の影 響 の 無 さ が 数 値
で 示 さ れ るな ら, 空 港 建 設 に は 賛 成 で す。 」
・ 他 者 の主 張 を 認 めつ つ , 条件 を 「 確 か に, 現 状 で は 公共 施 設 充 実 よ り も , 地 域 へ の 経 済 効 果 を ,
( 一 部 ) 踉 るこ とを 表 明 す る 発 話。 企 業 誘 致 の 大 き な メ リ ッ ト と し て 優 先 し て 考 慮 す る 必 要 か あ る
な。」
一 般化
・ 自 己 や 他 者 の主 張 を , よ り 広 く 「 そ れ はつ ま り , 交 通 ア クセ ス の 良 い と こ ろ に 作 っ た方 が い い
適 用 可 能 な 形 で 言 い 換 え て 示 す。 とい う こ と だ ね。」
例 外
・ 自 己 や 他 者 の主 張 にお い て, 適
用 か 除 外 さ れ る事 例を 示 す。
盤
づ
・ 主 張 の効 力 を 限 定 す る条 件 の 提
譲 歩
調 整
の
基
発話 例
下位カテゴリー
「 で も, 自動 車 産業 だ け は, 逆 に 輸 出 が 増 え て い る よ ね。」
代 替案
・ 互 い か 納 得 で き る よ う な 修正 プ 「 で は , 新 市 民 か ら の 投 票 結 果 に よ っ て , 合 併 後 の 新 市 の 名 称
ラ ン, 次 善 策 を 提 案 す る。
を 決 め た ら ど う ?」
合
・ 提 示 さ れ た代 替 案 へ の 同 意を 示
す。
意
「 そ れ な ら, お 互 い の 意 見 が い か せ る ね。」
*[交 渉 の技 能] は, 野 沢 聡 子 氏 の 示 し た 「 協 調 的交 渉 の 技 能 」 に 依拠 し て い る。 *
* 代 替 案 お よ び合 嵩 とし て は,「 形 式 的 合 意 」
「 実 質 的合 意」 の 両 方 を 想 定 し て い る。「 参 考 : 吉 村 功 太郎 厂社 会 的 合 意 形 成 を め ざ す 社 会 科 授 業 」『 社 会系 教 科 教 育 学 研 究 』 第13 号,
2001 年, pp.21-28.) 1
( 筆者 作 成)
成 に つ い て は, 次 ペ ー ジ表 3 お よ び図 1を 参照 の こ と。)
単 元名
匚成 人 年 齢 を 考 え る 」 一 中 学 校 公 民 的 分 野
2 単 元 の 目 標
4 発 話 デ ータ の 採 取 お よ び 分 析 の 手 続 き
○ 憲 法 改 正 に 関 す る 匚国 民 投 票 法 」 の成 立 以 後 活 発 化
第 3次 , 意 見 調 整 の た め の 議 論( 集 団 討 論) を 行
し てい る,民 法の成 人年 齢規 定見 直し に 関す る議論
う に あ た り, 次 の条 件 を 設 定 し , 指 示 ・ 周 知 し たO
の概 要 を 説 明 で き る。
・ 1 グ ル ープ を , 8 ∼ 9名 で 構 成 す る 。
○成 人年 齢引 き下 げ の是非 に関 す る各主 張 には, そ の
背 景 と な る 社 会 的 見 方 ・ 考 え 方( 現 在 の 社 会 観, 若 者
・ 時 間 は,15 分を 目 途 と し, 教 師 は 極 力 介 入 し な い 。
・ 必 要 な資 料 は, 議 論 の 場 に 持 ち 込 み, 利 用 し て よ い 。
観 , 理 想 と す る 社 会 像 な ど ※ 図 1: 議 論 の 構 図 参 照 )
・ 議 論 は, グ ル ー プ に お け る 合 意 ・ 協 調 を めざ し て 行 う。
に違い があ る ことを 把握 し, そ れら の特 徴を説 明 で
き る。
議 論 の 様 子 を , ビ デ オ カ メ ラ で 録 画 し , 匚発 話
○ 成人年 齢 規定 のあ り方 につい て, 対 話を 通し て互い
デ ー タ」 と し て 全 て 書 き 起 こ し た。 さ ら に, 得 ら
の 意 見 を 調 整 し よ う とす る。
れ た デ ー タを , 表 2 の 基 準 に よ り分 類 し た 。 な お ,
○ 成人 年齢 規定 の おり方を めぐる 他者 と の議論 におい
デ ー タ 分 析 の 手 続 き は, 以 下 の よ う で あ る。
て , 自 己 の 知 識 や対 話 的 交 渉 の 技 能 を 駆 使 す る こ と
で, 見 解 を 合 意 へ と導 く こ と が で き る。
①「 1 発言 : 1 カ テ ゴ リ ー」 とし て 分 類 す る。
②一 つ の 発 言 か 長 く, 明 ら か に 違 う カ テ ゴ リ ー に 属 す る 内 容
が 含 ま れ て い る と判 断で き る 場 合 は, 枝 番 号 を 付 け て 区 別 す
る。
③ 2 名 の 評 価 者 に よ って 発 話 を 分 類 し , カ テ ゴ ラ イ ズ 結 果 が
3 単 元 の 展 開
池野 範男氏 によ る市民 社会 科 の基本 授業 過
異 な る 場 合 は , 事 例 ご と に協 議 し た上 で 確 定 す る。
程19)
に 依 拠 し て 単 元 の 授 業 を 設 計 し た。( ※授業 構
−84
−
表3:開 発した授業 の構成
市民社会科 の
一般的過程
本 開 発 授 業 にお け る 学習 過 程
段
階
学習活動
(としての社会的行為)
前
慣
習
社会的存在として
の事実の確定
( 社 会 的 状 況 の把
握)
○ 匚成 人 年 齢 」 の あ り方 につ い て ど の よ う に
考え たら よいか。 議論を 通して, 互 いの見 解
を 調 整 し よ う。(10 名 程 度 の小 グ ル ープ に よ る
集団討論)
論題:
「 成 人 年 齢 規 定 は, どう あ る べ き か ? 」
・ 広 井 多 鶴 子 北 海道 新 聞2008/3/23,
朝 日新 聞2008/4/6掲 載 の各 記 事
・ 毎 日 新 聞 匚闘論 」2008/3/2付 朝 刊
・ 町 沢静夫 『 成熟 でき ない 若者 た
ち』 講 談 社, 1999 年 な ど
※実 際 の議 論 の 様 子 に つ
い て は, 次 ペ ー ジ 5 議
論( 集団 討 論) に お け る 発
話 デ ータ に お い て , そ
の一 部を 抜 粋 して 示 し た。
陋 ﹄
(筆 者 作成)
││ ・ 非正規雇用 就業率低下など 若者を取り准く諮間闢への持続的な支援体卵│
の檠1』
伽(成 熟を促す社 会環境 づくり)をす すめる。
・若者 の政治 意識高揚を 目桁した, 教 育の充実を岐 倭先にす すめる。
・国民 投 栗という政治的 判 断と,法的 責任とを佃 別に 分け, 大学
験など, 若者の実 態を 勘案した駁 論がす すむ。
一
一
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
W
W
⇔
=
−
一
−
一
一
−
一
−
「 国 民 投 票 法」 施 行 が 迫 るこ とに よる 拙 速 な 議 論 は 避 け ,国 民 的 な 議 論 を 行 う。
一
一 一1
|
1
1
al き下げるべきでない 】
・成 人年 齢は 現状 維持 または ,引 き上げ。(引き下げ へ
の慎重 箚)
・若者 の「保 護」を 重視する立場 からの見 解。
一成 人年 齢引き下げ は, むしろ 成熟 年 齢と成 人年 齢との
乖離を助 長するものである。
現
在
2
O歳とさ れている 成
【成 人年 齢問題とは? 】
2008 年 2 月 ,憲 法 改 正 の 迴 挙 柮 年
齢 を 満18 歳 以 上 と 定 め た「 国 民 投 票
法」 の 成 立 を 受 け, 法 務 大 臣 が 民 法 の
成 人( 成 年) 年 齢 引 き 下 げ の 是 非 を ,
法 制 審 議 会 に 諮 問。 関 係 法 律 も 多 く ,
社 会 辿 念 を 変 更 す ること でも あり, 世 論
を 二 分し た 議 論 とな っ て い る。
【引き下げるべき】
・ 成 人 年 齢 を18 砲 に 引 き 下 げ る 。
・ 若 者 の「 自 立 促 進」 を 重 視 す る 立 場 から の 見 解 。
一
⇒
−
イ匸百 扉匹
−
一
−
陋 ﹄
一
−
・ 権 利 を 与 える こと で ,責 任 を 自 覚 させ るこ とが 可 能 とな
る。
−
若 者 は 成熟 か 進
んで きており,社
会 はさらにそれ を
促 辿 す る必 要 が
ある。
う あ る べき か ?
若 者 を ど のよ う な 存 在 と 見 る か ?
l 。 。 。
若 者 の成 熟 は 遅
れており, 社 会は
若 者を 保 護 する
必要かある。
り
石茸
・若 者に主 相者としての自 覚が芽 生える。
・若者 の政 治・経 済への積 極的 参加がす すみ, 社 会が活性 化する。
一
世 界標申 の成人 年齢 規定が実現 する。
・ 関辿 法の年 齢規 定も見直しが辿 み, 政 治的 判断と法的 責任 や, すで に20歳以
で適 用される義務 や樓利とのー体 化がすす む。
・その中で, 少年法も厳馴化され, 少年 犯罪の抑 止効果 が高まる。 など
3
制 度 により想 定さ れる社 会 像を含 んだ 理解
図 1 : 本 開 発 授業 にお け る 議 論 の 構図 ( 子 ど も に身 につ けさ せ た い 見 方 ・ 考 え 方 )
-
的
段
階
社 会 的 存 在 の改 善
と 正 当 性 の追 究
( 立場 の 選択 と可
能 な 行 為 の究 明 ,
結 果 の予 測 と新 た
な 社会 秩序 の 選択)
一
脱
慣
習
−
的
段
階
(先 行 す る 社 会秩 る のか 。 な ぜ, そ の よ うな 見 方 が で き る のか 。 /17な ど)
序 の 認 知 とそ の構 O 「 成 人 年 齢 を 引 き 下 げ る べ き で な い 」 と す ・ 田 中治 彦 「18 歳 成人 を 考え る」
造 の 探 求)
る 主 張 と は, ど の よ う な も の か 。 な ぜ そ の よ http://www.rikkyo.ne.jp/web/htanaka/
う な 主 張 を し て い る の か 。 な ぜ, そ の よ う な 07/Seijin02.html
見 方 が で き る の か。
・ 斉 藤 環 『 思 春 期 ポ スト モ ダ ン 』
幻 冬 舎, 2007 年 な ど
−
慣
習
獲 得 ・ 判 断 さ せ た い知 識
主 な資 料
○ 成 人 ( 成 年 ) は 法 律 や 辞 書 で は ど の よ う に ・ 広 辞 苑 , 成 人 年 齢 関係 法 律条 文
定 義 さ れ て い る のだ ろ う か 。
・ 読 売 新 聞 世 論 調 査 結 果2008/4/20
O 「 成 人 年 齢 引 き 下 げ 」 につ い て の 議 論 と は, 付 朝 刊
ど の よ う な も の か 。 ま た, ど の よ う な 点 が 問 ・ 「 国 民 投 票 法 」 条 文
・法 制審議会 民 法成年年 齢部会 第
題 と な っ て い る のか 。
※図 1: 本 開 発授 業 に お
1 回 会 議 資 料 な ど
社会的存在の存在 O 「 成人年 齢引き下 げ」 の主張 とは, ど のよ ・新聞各紙社説
( 読 売 新 聞2008/2/14, ける 議 論 の構 図 を 参 照 の
理由の探求
う な も の か 。 な ぜ, そ の よ う な 主 張 を し て い 産 経 新 聞2008/2/15, 毎 日 新 聞2008/2 こ と。
−
的
段
階
主な問い
85 −
5 議 論( 集 団 討 論) に お け る 発 話 デ ー タ( ※一 部抜 粋。 子ども の名 前は全て 仮名。)
(1) B グ ル ープ( 9 名 : 男 子 4名 , 女 子 5 名) の 発 話 デ ータ
免曙分析指標(分析カテゴリー)
尨
免ン
ター
スキル
上 位
カテゴリー
1
(課題提示)
2
伝達
主張
3 伝達・収集 正当化要請
4
伝達
5
6
7−①
7−②
8
伝達
9
伝連
伝達
伝達
主張
27 −(I
28
29
30 −(Σ
130―<2
131-<了
31 −(2
46
47
伝達
あいこ そうなると.(成人を考える上で)やっぱり.選挙櫓とかは大きいよね。
教師 どんな観点からでもいいですよ。いろいろ出して.このグループでの結鵬を出しましよう。
主張
若い人の政治参加が可能になれば、田が盛り上がると思うので。
教師 引き上げるの人は?
批判
批判
ゅうか 引き上げたら.ますます親に甘えて.一人前になれなさそう。
※ 略 ※
それはわかるけど.18皿はまだ高3だよ。
けん 3年後 なん てすぐ じ やん?自 信ね え−。 知皿 は勉強 で きたとし ても ,廿 会経 験もな いし .受験 もあ って 大変 だし 。権利 を与 える のは, 納 観とか の 筱務を
正当化
果たす よう になっ てから で いいん だよ 。
れい 18歳でも納税したり.子育てしたり,皿いたりして羈務果たしている人はいるよ。
なつき まあ.憲法改正の国民投累も18
瘋に決められたわけだし.時代というが社会的にそういう勣きがあることは間還いない。
たく だからといって.民法も.っていうわけじゃない1
まあ.そういうことを考える一つのきつかけでぱあるかねえ?
国艮投票も還挙の投凧も.同じ政冶参加でしよ7
けんご
それなら.年齢基準は一緒じゃないとおかしくない?
※ 略 ※
代替案 あいこ この陣成人?成年?の年恥?.その基準ですべてを決めるのをちよつとやめてみる。
一般化
│ナん 理想ぱ.若い人たちの保護をしながら.権利も与えて,育てることでしょう。
代替案
れい そうすると.成人年齢は現状輒持じゃない?
主張
まあ.その方が混乱も少ないか?世論も真っ二つだし。
留保条件 なつき はじめに言ったみたいに.行きたい人というか.やる気のある人には.政治参加というか選挙の後会を与えても良いと思う。
一般化
れい なるべく多くの人にやらせて.反映させたいなら.選挙権は引き下げた方がよさそう。
基盤
餌整
例外
基盤
調整
一般化
伝達・収集 正当化要請 批判
基盤
調整
譲歩
基盤
調整
一般化
伝 還・ 収 集 正当化要請
批判
代替案
調盛
代替案
主張
調整
調整
51
基盤
合意
合意
52
53
基盤
基盤
餌整
餌整
一般化
留保粂件
54
基盤
代替案
代替案
48 −(I
沖岡の 成人 式なん かの 映像 をみる と.ま だま だそれ に見 合う状 況で はな いよ うに見 える 。選挙 やそ の他 の権利 をま じめ に実 行させ よう と思 うのな ら. 成
人年 齢は引 き上げ ないと だめ そう .
けん
基盤
基盤
基盤
伝達
基盤
基盤
[48-g
49
50
えと. 私は引 き下 げる べき だと思 ってい ます 。ただ 私は .成 人年齢 は20歳のま まにし てお いて .選 挙権 だけ18血に 引き 下げ たらい いと 思っ ていま す 。
なつき
正当化
伝達・収集 正当化要請
よう。
でも.「 民 法亅 は いろい ろな 思母 の基 準と い うか. おおも とに なっ ている から .民 法が 変わっ たら 当然 他の( 法律 )にも 彫 響する でしょ う ?だっ たら .
そうい うとこ ろも 考え ておか ない とじ やな い ?
ちか
主張
主張
(課晒提示)
主張
主張
主張
正当化
(確認)
主張
発 話 内 容
教師 それではよろしくお鳳いします。
たく そもそも .( 成人 年叶を )引 き下 げるの は.羂 神的 にも大 人と して 扱うの は 覬しいと 思 うし. お酒 やタ バコの 同題も あっ て. 厳し いでし
ひろと お酒やタバコぱ.また別の問題じゃない?別の法搶もあるし。r民法Jの成人年齢の規定をどうするかでしよ?
主張
批判
正当化
10 伝達・収桑 正当化嬰請
127 ―(21
免話看
下 位
力予コリー
決ま りだ。 還挙 権だ けを下 げて 哺∼20廬の 間はこ れま で通り 保護も され つつ .政治 に 参加しな がら しう かり 自覚 という か勉 強し て.20 皿で 成人す る。 成
人した ら. もう一 人町 なん だから その 保護が 無くな る。 さ つきの. 国民 投累 法とか との 関係 もスム ーズ でい いね 。
けん
たく じやあ.引き下げてそういう権利は広く与えておいて.やる気のある人は選撃にいけばいいというようにすればいいんだ。
けん ただ .そ のために は高 校ま での 教爾 制度の中 で. 閧逗す るよ うな知 識 を身に つけさ せて おくこ とが 大前 提にな る 。教育 を 変えな いと 行けな いね え。
ゅうか
高筏に 入 る人がほ ぼ100%の 状況 では 教育も大 事 だけど ,現 在そ れでも 政治 への意 皿の差 が ついて いる とい うこと は. 各家 庭の中 でも そう した 意皿 を育 て
ること が大 事だ という こと だと思 う。
※ 略 ※
(2) C グ ル ー プ( 8 名 :男 子 5名 , 女 子 3名) の 発 話 デ ータ
免話分析拑櫺(分祈カテゴリー)
発話
タ
ーン
1
2司)
2-②
3
4司)
44
5
スキル
伝達
伝達
伝達
伝達
収集
上 位
カテゴリー
下 皿
力チコリー
( 課麗鍵示)
主張
主張
主張
正当化
(課題提示)
主張
主張
主張
正当化
正当化要請 質問
10 司 )
伝達
主張
主張
10-②
伝達
主張
正当化
教師 リラックスしてやりましよう。スタート。
仗ば成人年齢は今のまま輒符するぺぎ・
であると思うなあ。
ひろ
成人年齢を変えると椪々な法律が略んできて.現実的にはとてもやつかいだと忠う。
教師 さあ.どうでしよう。同じ判断でも違う判断でも構いません。
えと.違う立鳩で.倶は18
歳以上にするべきだと考えました。
こう
他の国と比べると.やはり遅れていると思える。
りよう 遅れているうて,どんなところが7
※ 略 ※
亀は.成人年齢は下げるぺきと考えています。理食は二つ。
一 つは ,多く の人 が言っ てい るよう に. 一人ひ とりに 責任 が早 くから 生ま れ.社 会人 とし てのル ール を知 り.そ れを 守るよ うに なり ます 。で すから20 贏
か らそ ういう 社金 のルー ルを牟 ぶよ りも .もっ と早く から そうし た勉 虹が できる と言 うこ とは. ニード 問 題など にも 効果が ある と思 われま す 。
りお
10 嵋 )
伝達
主張
正当化
11
伝達
主張
主張
発 話 内 容
発話看
二 つ目 ば.諸 外国 での 凪人年 齢を 調べる と. 162 ヶ国 が 璢瘟を成 人とし てい ます 。ま た.1989 年 に国運 で 課択 さ れた子 ども の槽 利条約 では .こど も は18皿
と 定 羞されて います 。 さらに ヨーロ ッパ では.1970 年 代に 成人 年麟や 選 挙の投 凧年 齢が下 げられ てい て. この 議論の 主役 である 若者 の意見 が 社会に 反映
さ れる しくみ がで きて います 。逆に 日 本では. 餃や学 校 や社会 が.20 溘や それ以 上の 年齢 までこ ども を母 綬する ばか りで, 若 者の意 見が 社会に 反映 され
ていま せん。 これ は.若 者を 未熟と 見な す議皿 ばか りがな され てい るので .こう いう しく みにな って いる のだと 思い ます。 日 本の若 者は 外国 の若者 と比
べて 未熟と いう根 拠はな いの で. 私は成 人年 齢を下 げても 問題 ないと 思い ます。
こう すごい.完璧だ。
※ 略 ※
24 伝通・収集 正当化要請 批判
はじめ 成人年齢を引き上げると.確かに多くの人が羂神的には凪熟するかもしれないけど.今度は大卒の年齢とかも悶麗になるよね。
25 伝連・収集 正当化要請 批判
こう 保護が長くなって.逆に依存が強まるかもしれないし。 ’
26
基盤
調整
一般化 りよう そう かあ. でも そう露 ってい たら りおさ んじ やない けど いろん な問 題が. 結局 何も変 わら なくな っ てしま うよ ねえ。 それ も悶 題だよ な あ。
27
基盤
調整
一般化
りお そう.今の社会の状況に目をつぷることになる。
ふみ でもさ あ、 あと2 年で 国民投 票法 がはじ まるよ 。現実 とし て, 成人年 齢は どうす る ?やう ばり .合 わせて いかな いと いけな い んじ やない の?
28
収集
正当化嬰請 質問
とも や君の言 っ ていた 若者は 未熟 だから 引き下 げな いと 言うこ とです けど .未 熟だ からこ そ無 理矢 理成人 年齢 を引 き下げ るこ とで. 意皿 の高 まりと か自
枇判
29 −(I 伝達・収集 正当化要請
(反論) みき 寛 と か.成 然して いく のだと 思う ので .そうい う点 では ,保腹 しす ぎる のも良 くな いから .選傘 権 や成人 の定 皿など 基本 的に は引 き下げ るべ き。
29 −(Z
伝逗
主張
主張
でも,デメリット.例えばさっき言ったような會?
洒・喫煙などのデメリットの部分については,個別に対応すべきだと思う。
(沈黙)
30
(課題提示)
較師 という愈見ですが.他にはどうでしようか?時聞も来ていますので.まとめてください。
じや あ.は い。 成人年 齢引 き下げ は.若 君の 成長と いう か自覚 を促 すと いう 戚でも 効果が あると 思 う。国 民投 紊法 にも合 うし .政 冶参 加の面 でも .そ れ |
から 少年犯 罪の 防止に も良 い彫 響があ りそう だから 、や はり引 き下 げる ぺき。 伝達
主張
主張
こう
32
収集
正当化要請
質問
とも 変化の混乱とか.若者の未馳さとかはおいておくということ?
※ 略 ※
-
31
86 −
表 4: 総 発 話 数 に 占 め る 発 話 分 析 指 標 別 割合
\
発 話 カテゴリー
総発話 数
(ターン 数)
fΞ 薑鳶冕厠
注 册
,*
涙 座7
f付酌叨 fま 涙7
正当化
主張
批 判( 反論)
質 問
留保条件 譲 歩
一般化
例 外
B
66
(59)
27
7∂
79
6
15
16
2
3
3
7
6
(31.8%) (9.0%) (22J%) (27.2%) (24.2%) (3.0%) (28.8%) (4.5%) (4.5%) (10.6%) (9.0%)
C
37
(33)
24
ぐ
∂4.!
陶
扨
3
11
13
6
4
0
(29.7%) (35.1%)(27.0%) (16.2%) (10.8%) ぐ8.1%) (o%)
0
(O%)
3
0
(8.15#) (0%)
5
仇∂幻
3
隲5 紛
∂
佃幻
a
印砂
* 総 発 話 数 に は , 同 一 タ ー ン の発 話 が長 い 場合 等 に, そ の 内 容 か ら 別 カ テ ゴ リ ー と して 区 別 し た も の も カ ウ ント し て い る。
* * 小 数 点 第 2位 以 下 を 四 捨 五 入 し た た め, 合 計 値 が100 % と な っ て い な い 。 ( 筆 者 作 成)
IV 対 話 的 交 渉 の 分 析 結 果 と 評 価20)の 実 際
う に, 相 手 にさ ら な る 説 明(正 当 化 )を 求 め る よ う
1 2 グ ル ープ の 対 話 に お け る 差 異 要 因 の 検 討
な, 相手 から引 き出す た めの批判 的発話 がなさ れ
る。 ま た,[28]例 外 や[29 ]一 般 化 の よ う に , “言
社 会 形 成 の有 り 様 は, 議 論 の文 脈 す な わ ち集 団
変 数" に 影
い 換え” る発話 もみられた。 こ れらは, 互い によ
響さ れる。 そこで, 実証 授業 において発 話デ ータ
り よ く わ か ろ う と す る た め の 発 話 で あ る。 こ う し
を 採 取 し た グ ル ー プ の 中 か ら, 特 に対 照 的 な 議 論
た 発 話 が 繰 り 出 さ れ た こ と で , 結 果 的 に, 総 発 話
を 展 開 し た 2 グ ル ー プ( 3年 C 組 : B ・ C グ ル ー
数 の増 加が みら れたと ともに,議 論 が滞る こと も
プ) を 任 意 に 抽 出 し , 分 析 ・ 検 討 す る。
な く, 議 論 継 続 を 促 す 教 師 介 入 も 不 要 で あ っ た 。
の 構 成 員 や 議 論 内 容( 過 程) と い っ た
表 4 は, 各 グ ル ープ の 議 論 に お い て み ら れ た 発
良 い 意 味 で の “発 話 の 応 酬 ” が な さ れ た も の と い
話 を , 表 2 の 分 析 指 標 ご と に総 発 話 数 に対 す る割
え る。 議 論 後 半 , ま と め段 階 に お い て は , こ れ ら
合 と し て 示 し た も ので あ る 。 B グ ル ー プ は, 上 位
豊 富 な や り と り を 基 盤 に, 合 意 を め ざ し た 意 見 調
カ テ ゴ リ ー[ 主 張] に お い て , そ の 下 位 カ テ ゴ リ ー
整 が行 われた。結 果,個 々 のレベル では最 高の結
主 張 より も, 根 拠 や デ ータ を示 す 正 当 化 が多 く な っ
論 と は 言 え な い ま で も, “次 善 策(second best)”
て い る。 同 様 に[ 正 当 化 要 請] で は, 批 判( 反 論)
と し て , グ ル ープ の 合 意 を つ く る に 至 っ た。
が そ の大 部 分 を 占 め たO[ 調 整] に あ た る発 話 につ
対 し て C グ ル ー プ で は ,[26]や[27]の よ う に,
い て は, 全 発 話 の約 3割 を 占 め, 中 で も一 般 化 や,
説 明 を 一 般 化 し よ う と す る 発 話 が 確 か に見 ら れ る
例外 といっ た他者 の発話を 言い換 えて説 明す るよ
も の の ,[25]や[29-① ]の よ う に , 自 己 の 見 解 を
う な 発 話 が 多 く 見 ら れ る。[ 代 替 案] と し て は, 5
よ り 声 高 に主 張 す る た め の 批 判 的 発 話 がな さ れ る。
発 話 が カ ウ ン ト さ れ, 付 随 し て[ 合 意] を 示 す 発 話
その結果, 調整 や代替 案な ど,互 いの共 通基盤 か
も見 ら れ た 。 対 し て, C グ ル ー プ で は,[ 主 張] が
ら新 たなプ ランをつ くり直 すとい う発話 は見 られ
65% 近 くを 示 し て い る点 が 特 徴 的 で あ る。[ 調 整]
な い 。 い わ ば, 相 手 を 論 破 す べ き 対 象 と みな し,
に お い て は, 一 般 化 の 3発 話 が 見 ら れ る の み で あ
互 い の主 張 の言 い 合 い に 終 始 し て い る。 時 に 議 論
り,留 保条 件や譲 歩, 例外 といった発 話 は見ら れ
に沈黙 を生 じさせ, 再三 にわ たる教師 の介入 が必
な か っ た 。[ 代 替 案] や[ 合 意] を 示 す 発 話 も, 議 論
要 で あ っ た こ と は そ の 証 左 で あ る。
そ れ は ま た , 〈 り お 〉[10 ]の 発 話 に も明 ら か で
中 に は 出現 し な か っ た。
で は , こ れ ら 2 グ ル ー プ の事 例 に お け る 議 論 内
あ る。 こ の くりお 〉 は, い わ ゆ る 匚競 技 デ ィ ベ ー
容( 過 程) , 結 果( 合 意 の 有 無) の 差 異 は, い か な
ト 」 に 習 熟 し た 子 ど も で あ る と 思 わ れ る が, そ の
る 要 因 に よ り 生 じ た の か。
発 話 は , ま さ し く デ ィ ベ ー ト フ ォ ー マ ット の 匚立
両 グ ル ープ と も, 議 論 前 半 は[主 張] の発 話 に よ っ
論 」 に お け る そ れ で あ る。 意 識 的 に せ よ , 無 意 識
て, 互 いの見 解を表 明し合 うや りとり がなさ れる
的 に せ よ, 論 破 の みを 意 識 し た 子 ど も の 姿 勢 が ,
と い う 点 で は共 通 し て い る。 違 い は, そ の 後 で あ
こ う し た 発 話 に現 れ た も の と 解 釈 で き よ う。
る。 B グ ル ープ で は, 自 ら と 異 な る見 解 に対 し て,
こ れ ら よ り , 最 終 結 論 と し て も, グ ル ー プ 内 の
-
例 え ば[30] の 一 連 の 発 話 や[31- ②] に 見 ら れ る よ
多 数 派 で あ り , 終 始 強 く主 張 し 続 け た 匚成 人 年 齢
87 −
,ほぼそのまま採用
される
引
き
下
げ」
派
の
見
解
が
形[31]
∼[35]
となった
。
。社会形成のための議論と
しては
,不十
終わった
った
と言わ
ざるを得ない。
分であ
ー
プを評価する際,構成メ
この
よ
う
に
し
て
グ
ル
ーの違
いをいかに捉えるべ
きかが問題となる。
ンバ ,論題についての豊富な知識を持った子ど
例
えば ,議論の能
力に長けた子どもの有無
,な
もの有無 。
しか
し,匚
社会
をつくる」匚
集団
どが想定され
る
,どの
ような
と
してわ
か
る」
こ
を
す
なら
ー
で
あ
れ
,と
他
者目
を指
意識
し
,ば
ともにわか
ろう
メンバ
。当該メンバー間にお
とす
るい
発か
話に
が振
不る
可舞
欠
であ
る社会形成
,
う
かも
力の一部
とい
いて 。すなわち,その状況(
文脈)
において,
えよう
,自分の意見
を関連
づけ
「他
者
か
ら
引
き
出
しつ
つ
なが
ら
わ
か
る
こ
と」
が
求め
られるの
である21)
O
2 集団
(グルー
プ)
としての評価
,集
団を構成する冂
固
人の
従来
の教
や
評と
価は
」を
高育
め
る
こ
に注目
してきた
。ここには,
能
力
,個
を高め
匚
個の能力の総和が集団の能力であ
り
。
」との前提が
る
こと。
が
集か
団
を
高
め
る
も
の
で
あ
る
し
し
,
市
民
社
会
科
に
お
いては,む
しろ
あろう
」に注
それ
と匚
は
逆
に
匚
集
団
を
い
か
に
し
て
高
めす
るる
か個人の
,
集
団
が
高
ま
れ
ば
,
そ
れ
を
形
成
目
し
。
」ことを前提とする必要がある。
能
力も高ま
る次の
,
通
りである。
その理由は ,複
数の個人か
らなる集団によって
現実社
会つ
はくられ
,
る。この社会の原理に基づく
構成され
,構成主義の立場に 3 子
ども個人と
しての評価
教育,
と
し
市
民
会
科
で
は
集て
団の
に
よ
る社
関
係
的
な
わか
りと
して,匚
社会
,
立
ちが
集
団と
しての評価が
い
か
に
重
要
で
あ
る
と
は
い
え
」
目指されるの
であった
。まさに,ここにお
」
で
あ
る
以
上
,
個
人
の
評
価
が
知 ,集団と
教
育
の
営
み
して匚
いかなる社会をつくる(
かつ それが匚
。本開発方法において,個
人の評価は
求
め
ら
れ
る
いて 」
(社会形成
力)
が問われ
るのであり,
可能か
。その事例
を示そう。
くったか
)
,教育評価原理として
。この
ことは
,リアルな文 いかに
その評価が重要と
な
る
キップス(C.V.Gipps)
は
ー
セ
ンティック
・アセスメン
ト」
匚
信
頼
性
」
概
念と
して,匚
評価の統一
脈に基づく匚
オ
,同様に説明できよう。
の
あらだな
較
可
能
性:comparability)
」
を
提
起
す
る
气こ
れ
の評価観か
らも
,2つの
グルー
プの (比
,
評
価
者
間
でその対象とな
る
パ
フ
ォ
ー
マ
ンス
を
,
これ
らの考え方
に
基
づ
い
て
は
。まず,
Bグルー
プは,集団討
ー
ブリック(rublic
質的評価指
:標)
から公
議論
を見ていこう
同
じ
ル
,最終的に法的な成人年齢規
定を
,評価の
一貫性が確保
され
て
論の結果
と
し
て
平
に
評
価
す
る
こ
と
で
。
「信頼性」を
」と
し,選挙権についてのみ18
歳への
匚
現状維持
い
る
か
否
か
を
検
討
す
る
概
念
で
あ
る
,ルー
ブリックの設定が必要と
。さら
引き
下
げ
を
認
め
る
と
い
う
プ
ラ
ン
で
合
意
し
た
担
保
す
る
た
め
に
は
,59
ター
(66
ン
発話
)
に及ぶや
りとりは発話回数
。そこで
,表
2の発話分析指標
を前提に
,本
に
な
る
,協調的なコミュ
ニケー
ー
ブリックを,次ペー
ジ表
5の
よ
が単に多いだけではなく
研究におけるル 。あえて,暫定的に
と述べ
シ
ョ
ン
ス
キ
ル
を
議
論
の
展
開
に
即
し
て
駆
使
す
る
こ
と
う
に
暫
定
的
に
設
定
し
た
,対象について(
の批判
的)
検討を重ね
,認識の
,本来的にルー
ブリックづ
くりは,子ども
で
るのは ー
マンス事例
を集約することから帰納的
共有化を,
図
っ
て
い
る
点
か
ら
も
評
価
で
き
る
O
の
パ
フ
ォ
Cグルー
プの
討論は,合意というより
,そ
して複
数の評価
(
者教師
)
によって検討
・修
対
して
に
,終始強
く主張
した側の意見が押
し通
さ
。
はむ
しろ
正
さ
れ
続
け
る
べ
き
も
の
で
あ
る
か
ら
で
あ
る23
)
,ルー
ブリックの尺度設定に たっては,
。発話分析結果か
らは
,そのや
れ
たものであった
な
お
,
「 ̄
集団と
してわ
」側面に着目
し,
りと
り
も
主
と
し
て
主
張
に
終
始
し
主
に
分
析
指
標
に
よ
る
発
話
の
匚
質
的
」というよりは
,匚
相
手にわか
らせる」形で
」側
面は考慮
していない。
かる
の
よ
匚
量
どう
んなに
発的
言が
多か
ったと
しても,議論
。それ
でも,結果と 発話数,
あった
こと
が
明
ら
か
と
な
っ
た
そ
れ
は
,社会形成
力と
しては
ー
プを構成する皆が納得
し,互
いが
共有 の文脈
に
無
関
係
な
発
話
で
は
してグル
。
一定の評価はできよう。
で
き
る
認
識
に
到
達
す
れ
ば
価で
き
な
い
か
ら
あ
る
しか
し,その議論は散発的な自己の
認識の表
明に 評
こ
の
ル
ー
ブリ
ッで
ク
を,
Cグルー
プ
:〈りお〉の
−88−
表 5: 本 研 究 に お け る ル ーブ リ ッ ク 例
尺 度(scale)
発話の特徴
4
自 ら の主 張 を , 正 当 化 す る 根 拠 を 元 に し て 明 確 に 述 べ る 。 他 者 に正 当 化 を 要 請 す る 批 判 や 質 問 に よ っ て 議 論 を 焦 点 化
し , 他 の発 言 を 導 く。 留 保 条 件 ・ 譲 歩, 一 般 化 や 例 外 な どを 提 示 し て 意 見 調整 し た り, 議 論 内 容 を 踏 ま え た 代 替 案 を 提
示 し た り し て , 議 論 を 合 意 へ と 導 く。
3
自 ら の主 張 を , 正 当 化 す る 根 拠 を 元 に し て 述 べ る だ け で な く, 他 者 に正 当 化 を 要 請 す る 批 判 や 質 問 によ っ て , 議 論 を
焦 点 化 す る。 共 通 の 基 盤 作 り の 観 点 か ら , 留 保 条 件 ・ 譲 歩 , あ るい は一 般 化 や 例 外 な ど の 提 示 によ っ て , 意 見 調 整 を 試
み る。
2
自 ら の主 張 を 明確 に 述 べ, そ れ を 正 当 化 す る 情 報 を 発 話 す る。 ま た, 他 者 の主 張 と 自 ら の 主 張 と の差 異 を 認 識 し , 批
判( 反 論) や質 問 に よ っ て, 議 論 を 進 め て い こ う とす る 。 共 通 の基 盤 か ら, 留 保 条 件 や 譲 歩 な ど によ っ て 意 見 を 調 整 し た
り,代替案を提示 したりする発話は見られない。
1
い くつ か の主 張 は 述 べ る も の の, そ れ らを 裏 付 け たり 根 拠 を 示 す正 当 化 の 発 話 は 見 ら れ な い 。 他 者 に正 当 化 を 求 め る
よ うな 質 問 , 批 判 と い っ た 発 話 か 見 ら れ な い 。
※ [ 発 話 の 特 徴 ] にお い て ゴ シ ッ ク体 で 示 し た も の は, 表 2 の 分 析 指 標 と対 応 し て い る。
事 例 に 適 用 し , 評 価 す れ ば 次 の よ う に な る。
( 筆 者 作 成)
賛 否 両 論 併 記 と い う,「
“形 式 的 合 意 」 を 選 択 し
匚成 人 年 齢 引 き 下 げ 」 の 立 場 か ら集 団 討 論 に 参
た 専 門 家 ら に よ る 実 際 の 議 論 と , 授業 に お け る 子
加 し た, 〈 り お 〉 の 全 発 話 は次 の 通 り で あ る。
ど も の議 論 は, 同 じ 結 論 で は な い 。 し か し, 既 に
示 し た よ う に, 内 容 的 に は近 似 の議 論 を 展 開 し て
[10]「 成 人 年 齢 引 き 下 げ」 の 立 場 を 表 明 し , そ の主 張 を二 点
の理由から正当化
[15]「 成 人年 齢 現 状 維 持 」 の見 解 に対 し て , そ の 理 由を 質 問
[18]混 乱 や 制 度 変 更 の煩 わ し さ を 理 由 と し た 「 現 状 維 持」 の
主 張 に 対 し て , そ れで は, 若 い 人 を 含 め た 様 々 な 意 見 が
取 り 入 れ ら れ な い と批 判
[27]
[18]の意 見 を,「 社 会 の 状 況 に 目を つ ぶ る こ と」 と, 一
般化 し て 提 示
い る。 つ ま り , 子 ど も た ち の 議 論 は, 現 実 の 社 会
形 成 に 近 い , 匚オ ー セ ン テ ィ ッ ク」 な 議 論 で あ っ
た の で あ り , こ の 点 か ら , 市 民 社 会 科 と し て の本
開発授業 の一定 の成果, 妥当 性を説 明で きる。
他 方 , 個 々 の 発 話 内 容 を 見 れ ば, 個 人 的 な 印 象
〈こ う〉[11 ]の 発言 に見 ら れ るよ う に, C グ ル ー
の みを 語 る も の も多 く 見 ら れ た 。 も ち ろ ん, 社 会
プ の 議 論 で は , 他 を 圧 倒 し て い た くり お 〉 で あ る
形 成 において, 思い や願い の全て が否定 さ れるも
が, 自 ら の主 張 や 議 論 の 焦 点 化 の 発 言 が 目立 つ 一
ので はない。 しかし, 社会 科授業 として, あ る問
方 , 合 意 へ 向 か っ て 問 題 を 捉 え な お し た り, 他 者
題 に対 し て 批 判 的 な 考 察 を す す め る た め に は, 議
の 発 話 を 導 く と い っ た 発 話 は見 ら れ な か っ た。
論 の事 前 準 備 と して , 論 拠 や 資 料 を 明 ら か に す る,
こ の よう な くり お〉 の発 話 を ,表 5の ル ー ブ リ ッ
あ るい は そ れ ら を 相 手 に要 求 す る, な ど の 指 導 が
ク に 照 ら せ ば , 冂 」 と 評 定 で き る。
必 要 で あ る こ と が示 唆 さ れ た。
4 カ リ キ ュ ラ ム と し て の 評 価
V おわりに
子 ど も た ち の議 論 内 容( 発 話 デ ー タ)か ら, 本 開
本研究の意義は,市民社会科における対話的交
発 授業 の カ リ キ ュ ラ ム と し て の 評 価 も , ま た 可 能
渉(議論)に着目し,評価方法としての発話分析指
となる。
標およびルーブリックのモデルを示し,さらにそ
2008 年12 月 , 匚成 人 年 齢 規 定 の あ り 方 」 に 関 す
の有効性を実践により検証したことにある。
る, 法 制 審 議 会 民 法 成 年 年 齢 部 会 に よ る 匚中 間 報
開発した評価方法は,オーセンティック・アセ
告 書 」 の 概 要 は 表 6 の よ う で あ る。
スメントとしての一方法であり,実際の議論の文
脈における真正学力として,社会形成力を見取る
表 6 : 法 制 審 議 会民 法 成 年 年 齢 部 会
厂中 間 報 告 書」
ものであった。検証の結果,対話的交渉の動的過
の概要
程とその要因,授業改善に資するフィードバック
情報,さらには開発した授業 の有効性を も明らか
・ 意 見 か ま と ま らず , 賛 否 両 論 を 併 記。
・ 選 挙 権 年 齢 と成 人 年 齢 は, 必 ず し も一 致 す る 必 要 は な く ,
切 り 離 し て 議 論 す べ き で あ る。
[部 会 に お け る 賛 成 意 見] 若 者 の社 会 参加 , 自 立 促 進
[部 会 にお け る反 対 意 見] 消 費 者 被 害 拡 大 の懸 念, ニ ー ト な ど
自立できない若者の拡大,困窮を懸 念
にし,一定の成果が認められた。
他方,今後乗り越え るべき課題として,何より
も本開発評価方法を適用した,匚事例蓄積の必要
(筆 者 作 成)
-
性」 があげられる。それは次の二つの理由による。
89 −
一に
,提案
した評価方法は
,筆者による中学
第
一実践において
,適用
・検証され
校公民的分野の 。評価方法の匚
妥当性JF
 ̄
信頼
た
も
ので
し
か
な汎
い
」
を
確
立
し
,
用可能なものとするには,仮
説
性
・暫定的に設定
した発話分析指標やルー
ブリッ
的
,他の事例への適用とその検討を通
じ
ク
に帰
つ納
い的
て修正
,
・改善が施
され
なけれ
ばな
らない。
た ,指導
と評価の関連についての説明責任
第二は
。本研究において分析
の要請に応えることである
,すなわ
指標と
して示
した対話的交渉の
評検
価証
要件
,
授
業におけ
ち
議論
の
操程
作
的
技
能
に
つ
い
て
は
一
連の
過
中
,
直
接
的
な
指
導
は行われ
ていない。
る
一元的に捉える授業論に立
つ
いかに認識,
と子
資ど
質も
をを評価する以上,そこでどの
とはいえど
,説明責任が
ような指導。
が
な
さ
か
に
つ
ては
オ
ーれ
セた
ンテ
ィ
ッい
ク
・
アセスメン
ト概
求められ
る,真正な評価課題に取
り組む
ことが
,
念に拠れ
ば
,市
真正な学力を形成するこ
と真
に
な
る
飛こ
れ
を
,
正
な
学
力と
し
ての社
民社会科にあて,
は社
め会
れ
ば序の構成
秩
,再構築という
会形成
力育成は
真正
価
課題
み
込ん
授
業
によ
って
。な
い評
わ
ば
,
社を
会組
科授
業
にだ
おけ
る
こ
う
し
たな
評さ
価れ
の
る・繰
り返
しこそが
,まさに指導なのである
。
反復
,かつより長いスパンに
複
数の単元による継続
的
一体化]によって
,その説
お
け
る
[
 ̄
指
導
と
評
価
の
明責任
を果たす
ことが
できるといえよう。
-
房,2005
年,p.35.
,オーセンティック
・アセスメン
ト
7)田中耕
治も
氏の
は
,
ごとの理解度
を明確に
し,子どもだ
によって
」を鍛え,達成度
を自己評価で
ち自身が
自らの厂
知
,と
述べている
。前掲6),
p.35.
きるように
な
る
,
社
会科における他の
評価
方法を
否定する
8)決
して 。評価者が
,各評価方法の
もつ特性を
ものではない
理解
・熟知
して評価にあたることが重要であること
は
言うまでもない。
9)門脇厚
司
『子どもの社会力』岩波書店,1999
年
,
p.39.
,北岡誠司訳
『言語と文化の記号
10)M.
M.
バ
フチン
論』新時代社,1980
年,
pp.226-227.
,桑
野隆訳
『マルクス主義と言語
11)M.M.
バフチン
,p.100.
哲
学
【改
訳
版
】
』
未
来
社,
2004
年
)谷口和
也匚
社会科で求める学力とは何か 9」
『社
12
会科教育J
No.558,
明
治
図
書,
2005
年,
pp.132-133.
,そ
の内容
や
討
論
の展
開に
よっ
ては,論破
13』ただ
し
,認識の共有へ至ることも
することで他者を説得
し
十分想定され
うる
。
)前掲1
气pp.132-133.
14
,
15)高垣マユミ編著
『授
業研究の最前線』北大路書房
年,pp.5-16.
2005
16)野沢聡子
『問題解決の交渉学
JP
H
P研究所,2004
年,p.197.
17』
p.204.
)同
前上,
掲1},
p.46.
18
匚
社会科の読解力を鍛
えるテス
ト問題7」
19)池野範男
,2005
年,p.122.
およ
『社会科
教
育J
No.568
明
治
図
書
匚
市
民社会科歴史教育の授
業構成』
『社会科研
【註および引用・参考文献】
び同
。
1)池野範男氏は,
「開かれた価値観形成」
「合意形成」
究
』
第64
号,
2006
年,
p.52.
な
ど
を
参
考
に
し
た
」は
,個人の学力評価だけ
」等の社会科を
「市民社会科」と総称して
20
)
本
研
究
に
お
け
る厂
評
価
「社会
形
成
,
授
業
,
カ
リ
キ
ュ
ラ
ム
までを含めた,広義の
。池野範男
「市民社会科の構想」社会認識教育
で
な
く
いる
ー
・パースペクティブ』
匚
教育評価」の意
を含むもの
と
して捉える
。これ
らに
学会編
『社会科教育のニュ
ついては
,田中耕
治緇
,前掲6),
pp.6-7.
を参考に
した
。
明治図書,2003
年,pp .44-53.
,
能
力
の
変
容
を
見
取
ろ
う
と
す
る
場
合
に
は
,
2)同上,p.44.
21)ただ
し長期的な評価が必要である
・
。なおその際に
3)同上,p.52.
継
続
的
,
メ
ン
バ
ー
や
討
論
時
間
,
教
師
の
関
わ
りといった諸
4)吉村功太郎
「社会的合意形成をめざす社会科授業」
は
を段階的に変えていくことなどの配慮も必要で
『社会系教科教育学研究』第13
号,2001
年,pp.21-28. 条件
佐長健司
「社会科授業の民主主義論的検討」
『社会科
あろう。 ,鈴木秀幸訳
『新
しい評価
を求めて』
研究』第59
号,2003
年,pp.21-30.
などがある。
22)C.V.
キッ
プス
社,2001
年,p.237.
5 ) G. Wiggins,
Educative Assessme
が:Designing
論
創
Assessm
四な X
∂ Inforr.?7 α
s
j 力?7
伊・ove Student
23)西岡加名恵
『逆向き設計で確かな学力を保障する』
鳬φrmance,
Jossey-Bass,
1998,
p.24.
明
治
図
書,
2008
年,pp.23-26.
24)前掲6
\pp.34-35.
6)田中耕治編
『よくわかる教育評価』
,ミネルヴァ書
90−
Fly UP