Comments
Description
Transcript
EPHESUS 試験(071018)
ROCKY NOTE EPHESUS 試験(071018) 今度、選択的アルドステロンブロッカーが某製薬会社から発売されるとの事で、関連論文を読 んでみた。この系統の薬剤では、スピロノラクトン(アルダクトン)が有名であるが、より副作用が少 ないらしい。参考文献1によると、副作用は、男性では勃起不全および女性化乳房、女性では乳 房痛および月経異常をきたしやすく、また、腎障害を有するものでは、高 K 血症をきたすことがあ るとされている。これらの点は有名な副作用なので、注意して使用していることと思う。 今回読んだ論文は EPHESUS 試験という論文である。エプレレノンという選択的アルドステロンブ ロッカーについて検討したものである。この薬剤は米国で使用されていたが、日本でも近日発売さ れることになるようだ。副作用が少なく、より使いやすいというのがスピロノラクトン(アルダクトン) との大きな違いである。 まず PECO を確認。全て抄録中に記載がある。 P:左心機能障害と心不全を合併した心筋梗塞患者 E:最適な治療に追加してエプレレノン(25mg/日から 50mg/日) C:プラセボ O:総死亡、心血管死亡+心不全による入院+心筋梗塞による入院+脳卒中による入院+心室 性不整脈による入院 アウトカムも患者にとって重要な真のエンドポイントとなっている。 次に妥当かどうかを確認する。ランダム化に関しては抄録中に記載がある。ITT 解析されている かどうかは抄録中に記載はないが、Statistical Analysisの中に Analysis of the primary and secondary end points were conducted according to the intention-to-treat principle との 記載がある。ただし、RESULT の STUDY PATIENTS を見てみると、6642 人がランダム化を受けて いるにもかかわらず、その後 10 人が解析から除外されている(解析されたのは、介入群 3313 人、 対照群 3319 人の計 6632 人)。厳密にはランダム化は守られていない(ただし、10 人程度の脱落 を最悪シナリオで解析しても結果はゆるぎないので、あまり気にしなくてもいいかもしれない)。妥 当性に関してはまずまず問題ないといえそうである。 次に結果を見てみる 総死亡に関しての結果は ROCKY NOTE ROCKY NOTE 介入群 478/3319 対照群 554/3313 RRR 0.86 ARR 2.3% NNT 43 心血管死亡+心不全による入院+心筋梗塞による入院+脳卒中による入院+心室性不整脈に よる入院に関する結果は 介入群 885/3319 対照群 993/3313 RRR 0.89 ARR 3.3% NNT 30 であった。 (参考文献 2 より引用) この結果が役立つかどうかであるが、平均 16 ヶ月の観察期間で NNT が 30-43 なので、相当良 い結果である。心不全を合併する心筋梗塞患者に対しては積極的に投与しても良さそうである。 ただし、診療所レベルではこの論文の対症患者とかなり背景が異なる。16 ヶ月で 14%が死亡する ようなハイリスク群と較べると、自分の見ている患者は明らかにリスクが異なる。しかも、この薬剤 のパンフレットには「降圧治療に心強いパートナー」と記載されているが、低リスク患者に対する降 圧を目的とした研究ではないので、今回の結果をそのまま適用するわけには行かない・・・。 副作用を見てみると、女性化乳房やインポテンス等の副作用は少ない。女性の乳房痛も少ない。 高カリウム血症の副作用はあるものの、スピロノラクトンと較べると使いやすい薬剤である。スピロ ROCKY NOTE ROCKY NOTE ノラクトンの効果に関しては別項目を参照(アルダクトンの効果(RALES 試験))。 (参考文献 2 より引用) 薬価は他の利尿薬と比較して相当高い・・・ セララ錠 25mg 錠 49.00 セララ錠 50mg 錠 93.40 アルダクトン A 錠 25mg 錠 25.2 アルダクトン A 錠 50mg 錠 52.4 フルイトラン錠 2mg 錠 9.7 参考文献 1. 日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン 2004.ライフサイエンス出版.2004. 2. Pitt B et al for the eprelenone post-acute myocardial infarction heart failure efficacy and survival study investigators: Eplerenone, a selective aldosterone blocker, in patients with left ventricular dysfunction after myocardial infarction. N Engl J Med. 2003; 348: 1309-21. ROCKY NOTE