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本態性振戦の診断(070111)
ROCKY NOTE 本態性振戦の診断(070111) 家族歴がある場合には家族性振戦、個発例では本態性振戦といわれることもある。神経病理 学的、病態生理学的には未だ不明な点が多い疾患である。 本態性振戦は 5%の人に認められるともいわれるほどの高頻度疾患である。頻度が高い割に、 あまり正確に診断されていないようだ。2006 年の Arch Neurol では本態性振戦と診断された 37% の患者で誤診があったと報告している。その内訳は Parkinson disease (11 patients [15%]) dystonia (6 patients [8%]) Parkinson disease with ET (5 patients [7%]) other disorders (4 patients [6%]). と、パーキンソン病との鑑別が大きな問題であることが分かる。ジストニアは作動筋と拮抗筋の同 時集収縮が基本像であり、他のジスキネジアと区別される。dystonia tremor は本態性振戦と類似 するが、単独で出現することはめったになく、異常姿勢などを伴うようだ。振戦は本態性振戦と比 較して不規則である。 年齢が上昇するにつれ、頻度も増加する。地域で診察していると、高齢者も多いので、なるべく 誤診を防ぎたいものである。本態性振戦の特徴に関してまとめてみた。 □ 神経症状は振戦のみ(*1) □ 動作時振戦、姿勢時振戦 □ 屈曲進展の振戦(パーキンソンは回内回外の振戦) □ 家族歴あり(パーキンソン病はより少ない □ 少量のアルコールによって軽減 □ 生理学的振戦が増強(興奮やアドレナリン作動性の機序で増悪) □ 腕や手に多い(*2) □ 脚にはまれ □ 歩行障害はまれ □ 振戦は非対称的である □ 固縮が無い □ 経過が長い(3 年以上) □ 20 代と 60 代での発症が多い(パーキンソンは 50 歳以上) □ 書字で大きく、震えた、角張った文字(パーキンソンでは小字症) ROCKY NOTE ROCKY NOTE (*1)重症例では軽度の歩行障害や小脳症状を認めることもある。 (*2)頭部の振戦が優位であったり、唯一の症状の場合もある。水平または、垂直な振戦を認め る。振戦は声に現れる場合もある。顎や唇の振戦はパーキンソンに多い。 参考文献 1. Overview of tremor UoToDate 14.3 (http://www.uptodate.com/) 2. Dystonia Medical Research Foundation ホームページ (http://www.dystonia-foundation.org/) 3. Jain S et al. Common misdiagnosis of a common neurological disorder: how are we misdiagnosing essential tremor? Arch Neurol. 2006 Aug;63(8):1100-4. ROCKY NOTE