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多発関節炎(060917)

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多発関節炎(060917)
ROCKY NOTE
多発関節炎(060917)
6 つの臨床的な要素が多関節炎(多関節炎とは 4 つ以上の関節炎)を鑑別する上で有用!特異的
診断法が確立しているわけではなく、鑑別が多彩なのでチェックシート形式にして診断に役立てる。
AFP の内容を参考にしたチェックシートを作成してみた。
1 DISEASE CHRONOLOGY
□ 慢性
□ 急性
急性(6 週間以下)または慢性。急性のものとして感染症(ウイルス、細菌)に関連するものがある。
関節炎発症 1 ヶ月以内に感冒様症状があれば感染症に起因するものも考える。多くは数週間から
1 ヶ月以内に改善する。淋菌以外の菌はめったに直接感染による多関節炎を起こさない。典型的に
は oligoarticuler(→神経の分野でいう多発性単関節炎のように、多発性単関節炎のようなもの)で
ある。反応性のものとしては腸管感染症(サルモネラ、シゲラ、キャンピロバクター、エルシニア)、
尿路感染(クラミジア)などがある。下肢の関節炎が主体になる。
2 INFLAMMATION
□ 炎症
□ 非炎症
関節炎と関節痛を区別しなければならない。(例:乾癬の患者が膝痛を訴えても炎症がなければ、
乾癬性関節炎とは言わず乾癬と変形性関節炎の2つの病名がつくことになる)一般的に炎症の所
見は発赤、腫脹、熱感、圧痛である。朝のこわばりも炎症を示す。ただし、線維筋痛症は炎症性で
はないにもかかわらず朝のこわばりを示す。逆に、炎症の所見がないにもかかわらず筋肉痛を伴う
多関節炎を認めた場合には線維筋痛症を疑う。感染性関節炎、痛風、関節リウマチ、SLE、反応性
関節炎などは関節炎である。
3 DISTRIBUTION
Pattern
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PIP
DIP
MCP
ソーセージ指
手関節
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肘関節
股関節
膝関節
足関節
脊椎
手の変形性関節炎は PIP、DIP 関節がメインで MCP 関節を侵さないが、関節リウマチは PIP、
MCP 関節は侵すが DIP 関節は侵さない。乾癬性関節炎や結晶誘発性関節炎、サルコイドーシスで
はどこでも出現する。PIP から MCP まで全体に侵しているようなら単純に関節リウマチや変形性関
節炎と考えない。ライム病は手指の関節炎はまれ。ライム病は慢性期には oligoarthritis となる。強
直性脊椎炎では典型的には下肢の大関節を侵す。変形性関節症では手関節、足関節、肘関節な
どは侵さない傾向がある。指の炎症(ソーセージ様)が脊椎関節症(強直性脊椎炎やライター、乾癬
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性脊椎炎など)に特徴的。(ほかPSS)
Symmetry
□ 対称性
□ 非対称性
通常、RA、SLE、PMR、ウイルス性関節炎、血清病などでは対称性である。乾癬性関節炎、痛風で
は非対称性で末梢に発症する傾向がある。
Axial involvement
□ 頚部痛
□ 腰背部痛(朝のこわばり)
変形性関節炎では末梢の関節痛と背部痛や頚部痛を伴うことがあるが、関節リウマチでは説明
できない。末梢の関節炎に腰部の朝のこわばりを伴う場合は強直性脊椎炎や乾癬性関節炎や炎
症性腸疾患関連関節症、反応性関節炎を考える。
4 EXTRA-ARTICULAR MANIFESTATIONS
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レース様皮疹 (伝染性紅斑)
蝶形紅斑 (伝染性紅斑、SLE)
皮下結節 (関節リウマチ)
手根管症候群 (関節リウマチ)
口腔内潰瘍 (SLE、ベーチェット、反応性、
ウェゲナー)
耳下腺腫脹(シェーグレン症候群)
頭部の圧痛(側頭動脈炎)
黄疸(肝炎、ヘモクロマトーシス)
胸膜 (SLE)
心膜炎 (SLE)
末梢での脈拍低下(側頭動脈炎、高安
病)
筋肉痛 (リウマチ性多発筋痛症)
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□
乾癬 (乾癬性関節炎)
ソーセージ指 (乾癬性関節炎)
爪甲剥離・陥凹(乾癬性関節炎)
尿路感染 (反応性関節炎)
下痢 (反応性関節炎)
慢性遊走性紅斑 (ライム病)
Bell 麻痺 (ライム病)
陰部潰瘍(ベーチェット病)
尿道炎(Reiter 症候群)
眼症状(Reiter 症候群)
慢性の腸管症状(クローン病、潰瘍性大
腸炎)
蝶形紅斑や口腔内潰瘍は SLE を疑わせるし、近位筋の筋力低下は PM を疑わせる。乾癬性の
皮膚変化は乾癬性関節炎を疑わせる。また、膝関節炎、結膜炎、口内炎の患者が最近尿路感染
や下痢を起こしていたなら反応性関節炎を疑わせる。慢性遊走性紅斑と Bell 麻痺はライム病を示
す。発熱、レース様皮疹、全身関節痛(特に手)であれば伝染性紅斑を疑う。
5 DISEASE COURSE
Intermittent arthritis
□ 期間限定(数日から数ヶ月で終了)のエピ
ソード
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□ 単発
□ 再発性
数日から数ヶ月の期間限定であれば痛風や偽痛風を考える。もし、穿刺にて結晶が認められな
い場合は回帰性リウマチも考慮する。高率に関節リウマチに移行する。発作的に関節炎を繰り返
すが、関節破壊は起こさない。腫れも痛みも数時間から数日で消失。間欠期には症状なし。
Migratory arthritis
□ 遊走性
□ 非遊走性
症状が消失するにしたがい、同様の症状が他の関節に現れる。(通常非対称性)淋菌性関節炎、
サルコイドーシス、SLE、ライム病、細菌性心内膜炎、Whipple's disease などで認められる。
6 PATIENT DEMOGRAPHICS
Gender
□ 男性
□ 女性
閉経前の女性で SLE や RA の頻度が数倍高い。線維筋痛症も女性のほうが数倍高い。パルボウ
イルス B19 による伝染性紅斑では 60%の女性が関節症状を示すのに対し、男性ではずっと頻度は
低い。痛風は閉経女性にはまれである。
Age
□ 若年
□ 老人
リウマチ熱、SLE、RA、反応性関節炎、脊椎関節症は若い人に多い。変形性関節症、リウマチ性
多発筋痛症、巨細胞血管炎などは老人に多い。また、老人では癌性多発関節炎、悪性リンパ腫に
伴う関節炎なども考えられる。
Race
□ 白人
□ 黒人
リウマチ性多発筋痛症やウェゲナー肉芽腫症は白人に多い。サルコイドーシスや SLE は黒人に
多い。
FAMILY HISTORY
□ 家族歴あり
□ 家族歴なし
RA、脊椎関節症、Heberden's 結節などは家族集積性がある。特に強直性脊椎炎と HLA-B27 に
強い関係がある。
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LABORATORY INVESTIGATIONS
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ANA
RA
血算(血球減少)
尿(蛋白尿、潜血)
ASO
□ 一般検査(血算、生化学、X 線写真、便潜
血など)
□ MPO-ANCA(顕微鏡的多発動脈炎を疑
うとき)
ANA は一般の健康な人でも 5~10%が陽性になる。診断には有用でない。SLE に対しては感度
が高く、除外には有用。リウマチ因子は一般の健康な人で 5~10%陽性になる。また、関節リウマ
チの人でも 20%は陰性になる。必ず症状と一緒に判断する。アメリカリウマチ学会の診断基準にし
たがると感度 91~94%、特異度 89%である。血算、尿も有用である。尿潜血、蛋白尿、白血球減少、
血小板減少などは SLE に特徴的であるし、小球性低色素性貧血は IBD の場合もある。伝染性紅斑
は網状赤血球減少とそれに引き続く汎血球減少を示すこともある。ASO 上昇の時にはリウマチ熱も
疑われる。ただし、リウマチ熱は成人にはまれ。(典型的には小児で、A 群β溶連菌感染後に心炎、
小舞踏病、輸状紅斑、皮下結節、多発性関節炎を認める)一般検査では癌のスクリーニングなどが
有用かもしれない。消化器系、前立腺、悪性リンパ腫などを考慮する。顕微鏡的多発動脈炎は多
関節炎、壊死性半月体形成性腎炎、間質性肺炎のように腎と肺の症状が特徴。
参考文献
1. Mies Richie A, Francis ML. Diagnostic approach to polyarticular joint pain. Am Fam Physician.
2003 Sep 15;68(6):1151-60.
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