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アオトウガラシのカプサイシン

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アオトウガラシのカプサイシン
マニュアル参考様式 Ver.1
食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル
平 成 22年 3月 作 成
四国地域イノベーション創出協議会
地 域 食 品 ・健 康 分 科 会 編
[email protected]
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アオトウガラシのカプサイシン
作 成 者 :高 知 県 工 業 技 術 セ ン タ ー
主任研究員 森山洋憲
1 .ト ウ ガ ラ シ に つ い て
1.1 概要
ト ウ ガ ラ シ は ジ ャ ガ イ モ や ト マ ト 等 と 同 じ く ナ ス 科 の 植 物 で あ り 、 Capsicum 属 の い
くつかの種の総称である。熱帯アメリカの原産で、コロンブスによってヨーロッパに
伝えられ、インドや東南アジアに伝わった。我が国への伝来は戦国時代末期である。
日 本 で は Capsicum 属 の 作 物 を 辛 味 の 有 無 や 果 実 の 形 状 か ら 区 別 し て 呼 ん で い る 。辛 味
の 強 い 香 辛 料 に 用 い ら れ る ト ウ ガ ラ シ ( red pepper、 Capsicum annuum ) 、 辛 味 の な い
青 果 用 の ピ ー マ ン ( sweet pepper、 green pepper、 Capsicum annuum ) が あ る 。 辛 味 の
強いトウガラシは成熟によって青色から赤色に変化し、果実が成長して赤くなる直前
が最も辛いとされる。
高 知 県 の ピ ー マ ン 出 荷 量 は 13800 ト ン で あ り 、 シ ェ ア 10.8%、 全 国 3 位 で あ る ( H19
年 農 林 水 産 省 統 計 ) 。 冬 春 期 ( 11~ 6 月 ) の ハ ウ ス 促 成 栽 培 を 中 心 に 、 夏 秋 期 ( 7~ 11
月)は露地と雨よけで周年生産している。県内の主な産地は土佐市、芸西村、須崎市
で あ る 。品 種 は 肉 厚 で 濃 い 緑 色 を 呈 し 、艶 と ハ リ の あ る 表 面 の も の が 主 流 で あ る 。150g
袋 詰 め と 4.5kg バ ラ 詰 め の 包 装 で 京 浜 、 京 阪 神 地 域 を 中 心 に 全 国 へ 出 荷 さ れ て い る 。
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マニュアル参考様式 Ver.1
シ シ ト ウ ( 獅 子 唐 辛 子 、 sweet pepper、 Capsicum annuum ) は 辛 味 の 少 な い 小 果 の 系
統である。トウガラシよりもピーマンの成分値に類似しており、市場でもピーマンの
区分に入れる場合が多い。しかし栽培条件によって時々辛味の強いものが発生し、ト
ウガラシ様の強い刺激を呈することから、需要の拡大を妨げる要因とされている。高
知県では冬春期にハウス促成栽培、夏秋期に雨よけと露地栽培による産地リレーを形
成 し 、周 年 生 産 に 成 功 し て い る 。出 荷 量 約 3578 ト ン( H21 年 3 月 、高 知 県 の 園 芸 p.6)
は 全 国 1 位 で あ り 、シ ェ ア 約 50%で あ る 。特 に 冬 春 期 の 生 産 量 は 全 国 の 約 80%を 占 め て
いる。品種はハウス栽培を中心にした県独自の「土佐じしビューティ」、「ししほま
れ」等である。県内の主産地は南国市、須崎市、土佐市である。県内のトウガラシ生
産 は 僅 か で あ る が 、 JA 馬 路 村 が 柚 子 に つ い で 加 工 品 開 発 に 力 を 入 れ て い る 。
アオトウガラシという表現は一般的に赤くなる前の青いトウガラシについて使われ
ているようであるが、本手順書では高知県特産品であるシシトウも含めた分析例とし
て記述する。
1.2 トウガラシの機能性
カプサイシン類(カプサイシノイド)はトウガラシ辛味の総称である。品種によっ
て 異 な る も の の 、 辛 味 の 主 成 分 と し て カ プ サ イ シ ン と ジ ヒ ド ロ カ プ サ イ シ ン が 約 80%
~ 90%を 占 め る 。 辛 味 の 程 度 は 品 種 に よ っ て 異 な る 。 鷹 の 爪 は 辛 み が 強 く 、 カ プ サ イ シ
ン が 生 鮮 物 で 100 g 当 た り 200 mg 含 ま れ て い る 。 辛 味 は 種 子 部 と 胎 座 部 に 多 く 、 果 肉
部は極めて少ない。カプサイシンは体熱産生に関与しており、脂質代謝を亢進する作
用を有する1-2)。また抗炎症作用3)と抗がん作用4-5)についても研究されている。
1.2.1 トウガラシを含む食品
トウガラシは香辛料のひとつとして各種料理に用いられており、加工食品へも広く
利用されている。高知県の主力園芸品目であるピーマンやシシトウは青果として専ら
利用されており、加工品への応用例はほとんどない。
<引用・参考文献>
1. Kawada, T., Hagihara, K., Iwai, K.: J. Nutr., 116, 1272(1985)
2. Kawada, T., Sakabe, S., Iwai, K.:J. Agric. Food Chem., 39, 651(1991)
3. C.S. Kim, W.H. Park, J.Y. Park,J.H. Kang, M.O. Kim, T. Kawada, H.Yoo, I.S.
Han, R. Yu:J. Med. Food, 7, 267-273(2004)
4. Y. J. Surh:J. Natl. Cancer Inst., 94, 1263-1265(2002)
5. J. Beltran, A. K. Ghosh, S. Basu: J. Immunol., 178, 3260-3264(2007)
2.カプサイシンについての説明
カプサイシンはバニリルアミンと不飽和分岐脂肪酸がアミド結合したものである。
バニリルアミンは共通構造であるが、アミド結合する脂肪酸の構造によって名称が
異なる。主なカプサイシン類はカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒド
ロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンである。脂溶性の
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マニュアル参考様式 Ver.1
無色結晶であり、エタノール、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル等の溶媒
には溶解するが、水には溶けない。
O
MeO
N
H
HO
カプサイシン
表
カプサイシン類の通称名と部分構造
通称名
カプサイシン
ジヒドロカプサイシン
ノルジヒドロカプサイシン
ホモジヒドロカプサイシン
ホモカプサイシン
脂肪酸部位
8-methylnon-trans-6-enoic acid
8-methylnonanoic acid
7-methylnonanoic acid
9-methyldecanoic acid
9-methyldec-trans-7-enoic acid
3. 定量分析の方法について
カ プ サ イ シ ン と ジ ヒ ド ロ カ プ サ イ シ ン の 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ( HPLC) 装 置 に
よる分析方法を述べる。
3.1 準備する器具など
1.エ バ ポ レ ー タ ー
3.試 料 濾 過 用 フ ィ ル タ ー (親 水 性 テ フ ロ ン 膜 を 使 用 し た も の 、 ポ ア サ イ ズ O.45μ m
ま た は 0.2μ m、 13mm 径 )
4.グ ラ ジ ェ ン ト の 出 来 る 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ シ ス テ ム 紫 外 検 出 器 (PDA 検 出
器 )、 カ ラ ム 恒 温 槽
5.C18 逆 相 カ ラ ム ( Atlantis T3 3μm、 100×4.6mm I.D.、 ウ ォ ー タ ー ズ 製 )
6.ガ ー ド カ ラ ム
[試 薬 ]
1.メ タ ノ ー ル (HPLC 用 )
2.エ タ ノ ー ル (試 薬 特 級 ま た は HPLC 用 )
3.カ プ サ イ シ ン 類 標 品 (シ グ マ 製 )
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3.2 分析用試料の前処理・調製方法
1.試 料 10g を 細 か く 切 断 す る 。
2.均 質 化 し た 試 料 0.1g を 採 取 す る 。
3.エ タ ノ ー ル 10mL を 添 加 す る 。
4.超 音 波 で 1 時 間 抽 出 す る 。
5.試 料 ろ 過 用 フ ィ ル タ ー に 通 過 さ せ た も の を HPLC 装 置 に 注 入 す る 。
3 . 3 HPLC に よ る 分 析 方 法
3 . 3 . 1 「 HPLC 装 置 の 場 合 」
(1)移動相の調製
移動相 A は超純水、移動相 B はメタノールである。
(2)分析条件
① 検出器、恒温槽、溶媒の流量等の条件は以下の通りとする。
検 出 波 長 :280nm
恒 温 槽 :40℃
流 量 :移 動 相 A、 移 動 相 B の 合 計 で 毎 分 1.5mL
グラジェント溶出の出来る高速液体クロマトグラフシステム(分析システム
例 : ウ ォ ー タ ー ズ 製 デ ル タ 600 マ ル チ ソ ル ベ ン ト シ ス テ ム 、 2998 フ ォ ト ダ イ オ
ー ド ア レ イ 検 出 器 、 カ ラ ム ヒ ー タ ー 、 Empower2)
② 移 動 相 溶 媒 の 混 合 比 (グ ラ ジ エ ン ト )は 以 下 の よ う に 調 整 す る 。
初 期 条 件 は A 液 60%で あ る 。
0 分 か ら 8 分 :A 液 60%か ら 15%に 混 合 割 合 を 直 線 的 に 変 化 さ せ る 。
8 分 か ら 10 分 間 : A 液 15%か ら 1.0%に 混 合 割 合 を 直 線 的 に 変 化 さ せ る 。
10 分 か ら 13 分 間 : A 液 1.0%を 維 持 す る 。
13 分 か ら 15 分 間 : A 液 1.0%か ら 60%に 混 合 割 合 を 直 線 的 に 変 化 さ せ る 。
(3)定性及び定量
① 分 離 さ れ た 物 質 の 定 性 は 保 持 時 間 に よ り 行 う 。PDA 検 出 器 を 使 用 す る と き は ス ペ
クトルを定性の補助、及び、ピークの純度確認に用いることが望まれる。
② 定量は標準試料を用いた、内標を用いない絶対検量線法による。通常はクロマ
トグラムの面積から計算するが、微量物質の場合はピーク高を用いる方が精度
良く定量出来る場合もあるので、計算に用いる装置の特性に注意を払って選択
することが必要である。
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マニュアル参考様式 Ver.1
3 . 3 . 2 「 高 速 タ イ プ HPLC 装 置 の 場 合 」
(1)移動相の調製
移 動 相 は 1%酢 酸 と ア セ ト ニ ト リ ル を 60:40( v/v) で 混 合 し た 溶 液 で あ る 。
(2)分析条件
① 検出器、恒温槽、溶媒の流量等の条件は以下の通りとする。
励 起 波 長 :280nm
蛍 光 波 長 : 325nm
恒 温 槽 :40℃
流 量 :移 動 相 毎 分 0.6mL
注 入 量 : 1.0μ L
シ ス テ ム 構 成 例 : 日 本 分 光 製 X-LC シ ス テ ム 3185PU 型 ポ ン プ 2 台 、3080 型 DG デ
ガ ッ サ ー 1 台 、 3180MX 型 高 圧 ミ キ サ ー 1 台 、 3067CO 型 カ ラ ム オ ー ブ ン 、 3120 型
蛍 光 検 出 器 1 台 、 3159 型 AS オ ー ト サ ン プ ラ ー 、 ChromNAV デ ー タ ス テ ー シ ョ ン
4.分析例
4 . 1 HPLC 装 置 に よ る 分 析 例
分 離 さ れ た 物 質 は 保 持 時 間 か ら (標 準 物 質 と 比 べ )特 定 す る 。 定 量 に は 標 準 試 料 を 用
い、クロマトグラムのピーク面積から濃度を算出する。以下に典型的なクロマトグラ
フを図に示す。
図 4 .1 - 1
標 準 物 質 の HPLC ク ロ マ ト グ ラ ム
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面積値
マニュアル参考様式 Ver.1
濃度(mg/mL)
図4.1-2
4.2
カプサイシン類の検量線作成例
高 速 タ イ プ HPLC 装 置 に よ る 分 析 例
図4.2-1
標 準 物 質 の 高 速 タ イ プ HPLC に よ る ク ロ マ ト グ ラ ム
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図4.2-2
図4.2-3
ト ウ ガ ラ シ の 高 速 タ イ プ HPLC ク ロ マ ト グ ラ ム
シ シ ト ウ の 高 速 タ イ プ HPLC ク ロ マ ト グ ラ ム 例 1
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マニュアル参考様式 Ver.1
図4.2-4
シ シ ト ウ の 高 速 タ イ プ HPLC ク ロ マ ト グ ラ ム 例 2
5.食品の分析結果例
上記手法を用いて定量分析を行った。
図5-1
カプサイシン類の分析例
(*注意)なおこの測定結果はあくまでも一例である。
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マニュアル参考様式 Ver.1
6.分析上の留意、注意点
特になし。
7.その他
特になし。
8.定量法に関する引用・参考文献
1. S-H. Choi, B-S. Suh, E. Kozukue, N. Kozukue, C. E. Levin, M. Friedman: J.
Agric. Food Chem., 54, 9024-9031(2006)
-以上-
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