...

蛋白質核酸酵素:X線小角散乱法による生体高分子の構造研究

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

蛋白質核酸酵素:X線小角散乱法による生体高分子の構造研究
法による生体高分子の構造研究佐藤
生体高
衛分 子 は い ろ い ろ な 顔 を もつ ら しい 。 温 度, 圧 力,
イ オ ン強 度, そ してpH,
その
いず れ か1つ が 変 化 して も違 った 顔 色 や 形 を示 す 。 他 の 分 子 と相 互 作 用 す る と き も同 様 で
あ る。 そ の 変 化 す るひ とつ ひ と つ の 顔 をみ るた め に は,
あ る状 態 で 観 察 しな け れ ばな らな い 。 ま た,
そ の生 活 の場 で も あ る 溶液 の 中 に
一ロに 顔 をみ ると い っ ても,
観察 する手段に
Database Center for Life Science Online Service
よ って 見 え 方 が 異 な る 。 研 究 者は 各自 の 目的 に 応じ て 手 段 を選 び, 多 くの 情 報 を 得 よ うと
努 力 す る。X線 小 角散 乱 法 もそ の 手 段 のひ とつ であ る。 本 稿 で は, X線 小 角 散 乱法 か らど
の よ うな情 報 が得 られ,
そ れ が 構 造 と機 能 と の 関連 を 研 究 す る うえ で どの よ うに 応 用 され
るか, あ る い は 応 用 され る 可 能 性 が あ るか を考 え て み た い 。
は じめ に
入 射X線
の近 傍 に散 乱 され るX線 に, 分 子
の解 析 も進 行 して い る^<13)>。
の 大 き さや 形状 に特 有 な 強 度分 布 を与 え る。 この 強度 分
X線 小角 散 乱 法 の 用 途 は 広 い 。 ここ で は, 生 体 高 分 子
布 を 解 析 して構 造に 関 す る情 報 を 得 るの がX線 小 角 散 乱
の溶 液 構 造 を解 析 す る ひ とつ の手 段 と してX線 小 角 散 乱
法 で あ る。そ の歴 史 は 古 く, 1940年 代 初期 の フ ラ ン ス の
法 を と りあ げ る。X線 結 晶解 析 法 とは 異 な り, 対 象 が 溶
ギニエ の研 究^<1)>に
まで さ か の ぼ る。 当 時 は,
X線 源 も検
液 中 の分 子 で あ るた め, 結 晶 の よ うに分 子 を あ る一 定 の
出 器 も未 熟 で, 構 造 解 析 とい うよ りは む しろ 固 体 や 溶 液
規 則 で空 間 的 に 固定 させ る こ とは で き な い。 そ の た め に
中 の粒 度 分 布 とい った 物 理 化 学 的 な パ ラ メ ー タ の算 出 に
時 間 的 ・空 間 的 な平 均 化 が 生 じ, 多 くの構 造 情報 が 失 わ
主眼 が お か れ て いた よ うで あ る^<2∼5)>。1970年ころ
にな る
れ る。 しか しなが ら, 溶 液 を扱 う とい う点 に お い て, 研
と, 対 象 も生 体 高 分 子, と くに, 蛋 白質^<6)>や
核 酸^<7)>,
ウイ
究対 象 に あ る試 料 を試 した い条 件 で 自由 に測 定 で き る と
ル ス^<7)>に
移 行 し, 解 析 も構 造 解 析 に 主 眼 が お か れ る よ う
い う利 点 も あ る。 さ らに 多 くの構 造 情 報 を得 るた め に,
に な った 。 新 しいX線 源 や 検 出 器 の 開 発 が, X線 小角 散
新 た に 考 案 した 解 析 法 か ら要 求 され る測 定 条 件 の 設 定 も
乱 法 に 飛 躍 的 な 進 化 を もた ら した とい え よ う。
容 易 であ る^<14)>。
中 で も, 新 た に開 発 され た 一 次 元 検 出器 の実 用 化^<8)>は,
本 稿 では まず, X線 小 角 散 乱 法 の理 論 お よび測 定 法 全
X線 小 角 散 乱 法 に大 きな 変 革 を 生 み 出 した。 測 定 時 間 が
般 を 解 説 した あ と で, 筆 者 らが これ まで に行 な って きた
従 来 の100分
解 析 例 を 紹 介 して, ど の よう な測 定 か ら どの よ うな 構 造
の1以 下 に 短 縮 され, 測 定 デ ー タの 精 度 も
飛 躍 的 に 向 上 した か らで あ る。 また, X線 源 に も大 きな
情 報 が 得 られ るか を 説明 し て いき た い。
進 歩 が み られ た 。 従来 のX線 管 に 代わ り, 回 転対 陰 極 型
のX線 発 生 装 置 が, さ らに最 近 で は, シ ン ク ロ トロ ン放 射
I. 理 論
光 が 登 場 して 時 分 割測 定 ま で も可 能 とな って ぎた^<9∼12)>。
時 間 を 軸 と した 速 度論 的 な解 析 と と もに動 的 な構 造変 化
Mamoru
Sato,
大 阪 大学 蛋 白 質 研究 所
(〒565
大 阪 府 吹 田 市 山 田丘
X線 は, 物 質 中 の電 子 と相 互 作用 して 散 乱 す る。 溶 液
3-2)
[Institute for
Protein
Research, Osaka
University,
Yamadaoka, Suita, Osaka 565, Japan]
Small-Angle X-ray Scattering Study of Biological Macromolecules in Solution
Key【X線小
word 角散乱法】【X線溶液散乱法】【コン トラス ト変調法】
2883
26
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol 35
No. 16
(1990)
こ こ で, I_V(s) は 形 状 関 数,
I_P(s) は ゆ ら ぎ⊿ ρ(r, ρ)
に よ る散乱 強度, I_<PV>(S)は, I^P(S)とI_V(S)の
クロ
ス項 で あ る。 また, γ(r,ρ_s)は, ⊿ρ(r,ρ_s)の 自己 相 関
関 数 を 空 間 平 均 した も ので, 粒 子 内 で距 離rだ け 離 れ た
2つ の 位 置 で の⊿ ρ(r,ρ_s)の積 の総 和 を 表 わ す 。
粒 子 内 の 電 子 密 度 分 布 が 溶 媒 の電 子 密 度 に よ っ て変 化
しな い と きに は (invariant
volume
hypothesis^<15,16)>),
(4) 式 か らわ か る よ うに3種 類 以 上 の ρ_sで散 乱 強 度 を
図1.
溶液中にあ る粒子の電子密度分布
ρは 粒子 (溶質) の平均電子密度, ρ_sは溶媒の電子密度
である。横線 で示 した部分が電子密度のゆ らぎに相当する。
コン トラ ト変調法では, ρ_sを
変化 させて電 子密度の ゆ らぎ
に関す る情 報を得る。
測 定 す る こ とに よ っ て, I_V(s), I_P(s), I_<PV>(s) を求 め
る こ とが で き る。 こ の方 法 は, コ ン トラ ス ト変 調 法^<17,18)>
(ρ-ρ_sを コン トラ ス トと い う) とよば れ,
粒 子 の形 状
I_V
(s) のみ な らず, 粒 子 内 の電 子 密 度 のゆ ら ぎ に関 す る
中 で は, 粒 子 (溶 質) は 溶媒 に と り囲 まれ て存 在 して い
るの で, 粒 子 の 構 造 を 解 析 す るた め に は粒 子 内 の電 子 密
Database Center for Life Science Online Service
度 が 溶 媒 の 電 子 密 度 と異 な って い な けれ ば な ら な い。 し
た が って, 溶 質 と溶 媒 の電 子 密 度 の差 が 構 造 を意 味 す る
の で, この 差 に も とづ く散 乱 強 度 を 導 く必 要 が あ る。
図1は,
溶 液 中 の電 子 密 度 分 布 の様 子 を表 わ した も の
で あ る。 溶 媒 の電 子 密 度 が ρ_sの とき の溶 質 と溶 媒 の電
(1)
こ こ で, ρ は粒 子 内 の 平 均 電 子 密 度, ⊿ ρ(r,ρ) は粒 子
内 の電 子 密 度 の ゆ らぎ で あ る。 また, V(r)
状 を表 わ し, 粒 子 内 で は V(r)=1,
V(r)=0と
も得 られ, 構 造 解 析 に有 効 で あ る。 しか し
なが ら, 粒 子 内 のゆ ら ぎ の情 報 を得 るた め に は, 強 度 を
散 乱 角 の大 き な領 域 ま で測 定 す る必 要 が あ るが, 高 角 領
域 の強 度 は 弱 く, I_P(s) を精 度 よ く求 め る の は きわ め て
困難 で あ る。
一方
, 低 角 領 域 の散 乱 強 度 は比 較 的 強 い の で, 高 精 度
の測 定 が可 能 で あ る。 低 角 領域 で は, 散 乱 パ ラ メー タs
(=2sinθ/λ)
子 密 度 の差⊿ ρ(r,ρ_s)は, 次 式 で 与 え ら れ る。
⊿
ρ(r,ρ_s)=⊿ρ(r,ρ)+(ρ-ρ_s)・V(r)
情 報I_P(s)
が 小 さ い の で, (2)
る 際 に, 指 数 関数 の項 を Taylor
式 を (3) 式 に代 入す
展 開 して第 二 項 ま でを
考 慮 して, 次式 が得 られ る。I(s)=V^2(ρ-ρ_s)^2[1-(4/3)π^2・Rg^2・s^
は粒 子 の形
ま た, 粒 子 外 で は
定 義 され る。 以 下 で は, 希 薄 で, 粒 子 間 に お
≒V^2(ρ-ρ_s)^2・exp[-(4/3)π^2・Rg^2・s^2] (5)I(0)=V^2(ρ-ρ_s)^2 (6)上 式 よ り,
い て散 乱X線
が 干 渉 しな い均 一 粒 子 か らな る溶 液 を 考 え
る。 この よ うな 系 で は, 一 粒 子 の み か ら の散 乱 を 考 慮 す
れ ば よ く, 入射X線
に対 して 散 乱角2θ
るX線 の散 乱 振 幅A(s)は, ⊿
方 向 に 散 乱 され
ρ(r,ρ_s)の フ ー リエ変 換
で与 え られ る。A(s)=∫⊿ρ(r, ρ_s)exp(2πr・s)dVr (2)
ρ は, I(0)^<1/2>-ρ_sプ ロ ッ ト か ら 求 め る こ と
が で き る 。Vは
粒 子 の 体 積, Rgは
の と き の 粒 子 の 慣 性 半 径 (radius
Rgは,
(5)
Rgと
of gyration)
で あ る。
式 の 両 辺 の 対 数 を と り, s^2に 対 し て プ ロ ッ
ト (ギ ニ エ プ ロ ッ ト)
ま た,
溶 媒 の 電 子 密 度 が ρ_s
して, そ の 直 線 の 傾 き か ら 求 め る 。
コ ン トラ ス ト (ρ-ρs)
との 関係 は 次 式 で
与 え ら れ る 。Rg^2=R_V^2+a・(ρ-ρ_s)^<-1>-b・(ρ-ρ_s)^<-2> (7)R_V^2=V^<-1>∫r^2
した が って, 散 乱 強 度I(s)
は, (3) 式 で与 え られ る。
I(s)=<│A(s)│^2> (3)
<>は, │A(s)│^2の
空 間 平均 で, 溶 液 中 の粒 子 が, 時
間 的 か つ 空 間 的 に ラ ン ダ ムに 配 向 して い るか ら で あ る。
した が って, sは
ス カ ラ ー 量s (=2sinθ/λ,
波 長) とな り, 入 射X線
λはX線 の
に対 して 等 方 的 な散 乱 強 度 分 布
を 与 え る。(2) 式 を (3) 式 に 代 入 して粒 子 の重 心 を原 点
R_Vは,
コ ン トラス トが 無 限 大 の と きの慣 性 半 径 で, ゆ
らぎ が 小 さ く 無 視 で き る場 合 〔⊿
ρ(r, ρ)≒0; 均 一 な 電
に と る と, 次 式 が 導 か れ る。I(s)=∫4πr^2γ(r, ρ_s)・sin(2πr・s)/(2πr・s)dr=I_P(s)-(ρ-ρ_s)・I_<PV>(s)+(ρ-ρ_s)^2・I_V(s)
子 密 度 分 布 を もつ 粒 子 〕 は, Rg≒R_Vと
な る。aは,
ゆ
らぎ⊿ ρ(r,のρ) 二 次 モ ー メ ン トで, 粒 子 の 表 面 近 くに
正の ゆ ら ぎ の領域 (電 子 密 度 の高 い 領 域) が, 内部 に負
の ゆ ら ぎの 領 域 (電 子 密 度 の低 い 領 域) が 局 在 す る と, ,
2884
27
X線 小角散乱法に よる生体高分 子の構造研究
正 の値 を とる。 また, bは
ゆ らぎ⊿ ρ(r,ρ) の モ ー メ ン
シ ミュ レー シ ョンす る。 こ の場 合, I(s)_<obs>は,種 々の コ
トの二 乗 量 で, b・(ρ-ρ_s)^<-2>が
ゆ らぎ と形 状 の重 心 距 離
ン トラ ス トで測 定 され て い るた め に, そ れ ぞ れ のI(s)_<obs>
の二 乗 を表 わ す 。 した が って, ゆ らぎ の重 心 と形 状 の重
を 使 って モ デル の妥 当 性 が 確 か め られ る。 した が って,
心 が一 致す る とb=0と
コ ン トラ ス ト変 調 法 を 使 わ な い場 合 に比 べ て 一 義 的 な 解
な る。I_P(s) が精 度 よ く求 ま ら
な い場 合 に は, こ う して慣 性 半 径 の コ ン トラス ト依 存 性
(構 造 モ デ ル) が 得 られ や す い。 この よ うに,
か ら粒 子 内 部 の 電 子密 度 に 関 す る情報 が得 る。
X線 小 角
散 乱 法 に よ る構 造 解 析 は, 実 測 の 散乱 強 度 分 布 とモ デ ル
構 造 解 析 は, 実 測 され る散 乱 強 度 分 布I(s)_<obs>とモ デ
か ら理 論 的 に 計 算 され る散 乱 強 度 分 布 を比 較 しな が ら行
ル か ら理論 的 に計 算 され る散 乱 強 度分 布 を 比較 しな が ら
な うが, 散 乱 強 度 分 布 を フ ー リエ変 換 して得 られ る距 離
行 な う。粒 子 内 の ゆ ら ぎが 小 さい 粒 子 で は, (4) 式 の 第
一 項 お よび 第 二 項 は 無 視 され , 次 式 とな る。
分 布 関 数P(r)〔=r^2・ γ(r, ρ_s)〕^<23)>を
用 い て比 較 した ほ う
I(s)_<obs>=k・I(s)≒k・(ρ-ρ_s)^2・I_V(s) (8)
kは 比 例 定 数 で, 入 射X線 強 度 や 溶 質 濃 度 な どに 依 存 す
る。 解 析 では,
種 々 の形 状 のI_V(s)
を理論的に計算 し
が 実 空 間 の情 報 が 得 られ, モ デル の修 正 に便 利 な 場 合 が
あ る。 静 的 な 測 定 の場 合 な どで, 散乱 強 度 が 比較 的 高 角
度 ま で精 度 よ く測 定 され る と き^<*2>に
は, P(r)
関 数 を使
って 解 析 した ほ うが よ い。
て^<*1>, I(s)_<obs>に
も っ とも よ く一 致 す る よ うに シ ミュ レー
Database Center for Life Science Online Service
シ ョンす る。 こ の と き, 構 造 モ デル は三 次 元 デ ー タ であ
II.
測
定
法
る の に対 し, 散 乱 強 度 は 一 次 元 デ ー タ で あ る の で, 一 義
的 な モ デル が 得 られ な い 可 能 性 が あ る。 電 子 顕 微 鏡 写 真
図2に,
筆 者 らが使 用 して い るX線 小 角 散 乱 測 定 装 置
な どか らの構 造 情 報 が あ る と役 立 つ 。 一 方, 粒 子 内 のゆ
の構 成 図 を示 す^<26)。
装 置 は, X線 発 生 装 置, X線 光 学 系,
らぎが 大 き いた め に溶 媒 の電 子 密 度 を変 え て測 定 した 場
試 料 槽 お よびX線 検 出器 か ら構成 され る。
算 出 して, 粒 子 内部 の電 子 密 度
X線 発 生装 置 は, で き るだ け 焦 点 (X線 が 発 生 す る部
分 布 に関 す る情 報 か ら初 期 モ デル をた て る。 そ して, そ
分) サ イ ズ の小 さい も のを 使 う。 と くに, 後 述 の集 光 光
の モ デル のI(s)を
学 系 を 使 うと きに は, 焦 点 サ イ ズが 大 き い と集 光 性 が著
合 に は, まず, a, bを
図 で は,
計 算 してI(s)<-obs>に一 致 す る よ うに
図2.
X線 小 角 散 乱 測 定 装 置 の 構 成 図 (一 例)
X線 光 学 系 と して, Franks
タイ プ の 集 光 光 学 系^<27)>を
示 し てい る。PSPC
: 一 次 元 の位 置 敏 感 型 比 例
計 数 管, MCA
: マ ル チ チ ャネ ル ア ナ ライ ザ ー 。 散 乱 強 度 の 測 定, ス ト ップ トフ ロ ー装 置 の制 御 (時 分割 測 定 の
場 合) お よび 解 析 は, マ イ ク ロ コ ン ピ ュ ー タで 行 な わ れ る 。*1 いくつかの triaxial body (たとえば, 楕円体, 角柱, 楕円柱など) の形状関数については
2885
28
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 35
No
16
(1990)
し く悪 くな る。
X線 光 学 系 とは, 入 射X線 近 傍 の散 乱X線 を 効 率 よ く
測 定 で きる よ うに 入 射X線 を 細 く整 形 す るた め の も の
で, 発 散 光 学 系 と集 光 光 学 系 に 大 別 され る。 発 散 光 学 系
で は, い くつ か の ス リ ッ トを組 み 合 わ せ て入 射X線
を整
形 す る 。 光 学 系 の組 み 立 て は容 易 で あ るが, 散 乱X線 が
発 散 して 広 が る のが 欠 点 で あ る。一 方, 集 光 光 学 系 で は,
湾 曲 さ せ た 鏡 を 使 っ て入 射X線
を全 反 射 集 光 させ る。 組
立 て に 多 少 時 間 を費 や す が, 収 束 した 強 いX線 が 得 られ
るの で 現 在 で は 広 く用 い られ て い る。 こ の ほか に も種 々
の 米 学 系 が あ るが, 詳 細 は 参考 文 献 に ゆず りた い^<27)>。
試 料 槽 は, X線 光 学 系 の直 後 に セ ッ トされ, 以 下 の条
件 を 備 え て い る必 要 が あ る。1) 測 定 温 度 を広 範 囲 に 変
化 で き, しか も, 高 精 度 で制 御 で きる。2) 測定 中, 常 に
Database Center for Life Science Online Service
試 料 温 度 が モ ニタ ー で き る。3) 試 料 の必 要 量 が 少 量 で
図3.
散 乱 強 度 分 布I(s)
横 軸 は, MCAの
の シ ョ糖 濃 度 依 存 性
チ ャネ ル 番 号 で, 散 乱 パ ラ メ ー タsに 対 応
す る。 図 中 の数 字 は,
シ ョ糖 濃 度 (%)
を 示 して い る。
あ る こ と。 時 分 割 測 定 で は, ス トップ トフ ロー装 置 を備
え た 試 料 槽 を使 う^<28,29)>。
試 料 か ら の散 乱X線
の電 子 密 度 を変 化 さ せ た。 図3に,
そ れ ぞ れ の シ ョ糖 濃
の検 出 に は, 一 次 元 の比 例 計 数 管
度 で の散 乱 強度 分 布 を示 す 。 こ の 図 をみ る と, 強 度 分 布
を 用 い る。 溶 液 を対 象 に して い る の で, 筋 肉や 生 体 膜 の
に きわ め て 高 い シ ョ糖 濃 度 依 存 性 が 認 め られ る こ とがわ
よ うに 分 子 の配 向 を考 慮 す る必 要 は な い。 散 乱 強 度 デ ー
か る。 シ ョ糖 濃 度0%で
タは, 散 乱 角 に応 じて マル チ チ ャネル ア ナ ライ ザ ー の メ
モ リー に格 納 され,
コ ン ピ ュー タ に転 送 され る (図2)。
は, 35チ
ャ ネー
ル
(s=0,01
Å^<1>)付 近 にサブ ピー クが 観 察 され るが, 濃 度 を高 め て
い く と, この ピー クは しだ い に低 チ ャネ ル側 に移 行 して
また, 時 分 割 測 定 で は, この メモ リー を い くつ か の ブ ロ
い く。I(0)
ッ クに分 割 して, 各 時間 に対 応 した 散乱 強 度 デ ー タを各
と ころ で 一 転 して 単 調減 少 の プ ロ フ ァイ ル に変 化 す る。
ブ ロ ッ クに格 納 す る。
は, これ に伴 い減 少 す るが, 30%を
越 えた
電 子 密 度 の ゆ ら ぎが 無 視 で き る 粒 子 の 場 合 は,
(8)
式 か らわ か る よ うに, コ ン トラス トの 変 化 は, 比 例 定 数
III.
解
析
例
k'〔=k・
(ρ-ρs)^2〕のみ に 反映 す る。し た が っ て, 図3
に宗し た シ ョ糖 濃 度 依 存 性 は, 分 子 内部 に電 子 密 度 の 大
この節 で は, これ ま で 筆 者 ら炉行 な って きた構 造 解 析
の例 を紹介 す る。基本的な解析方法については理論
のと
ころで言及 したが, より実際に即 した内容で解析手順に
つ いて述 づたい。誌面 の都合 で多 くは紹介で きないの で
きく異 な る領 域 が 存 在 して, 電 子 密 度の ゆ ら ぎが 無 視 で
き な いこ とを 意 味 す る。
こ の様 子 は, 各 シ ョ糖 濃 度 に お い てP(r)
す る と, さ ら に よ くわ か る。 図4 (a)
ショ糖濃度のP
(r) 関数では, r=30Å
静的 な測定 と動的な測定に分けて1つ ずつ紹介 したい。
き り とわ かる2つ
1.
昆 虫 の リポ蛋 白質 (リポフォリ
ン) の構造 解 析
リポ フ ォ リンは, 昆 虫 の血 液 中 にあ って, 水に 不 溶 な
70Å
0%シ
関数 を 計 算
に 示 す よ うに, 0%
と110Å
には っ
のピークが認 め られる。さらに, r=
に は負の値 を 示 すくぼ みも観 察 されるこ とか ら,
ョ糖 濃 度 で は正 の コ ン トラ ス トを もつ 領 域 と負 の
脂 質 類 を そ の 合 成 や 貯 蔵 器 官 か らそ れ らを 必 要 とす る器
コ ン トラスト を もつ 領 域 間 の距 離 分 布 が 支 配 的 であ る こ
官 に運 搬 す る リポ蛋 白質 で あ る。 した が って, 蛋白 質 以
とが わ か る。 そ の後 さ ら に シ ョ糖 濃 度 を 高 め て い く と,
外 に40∼50%の
r=30Å に み られた ピー クは さ らに増 大 して い くが, r=
脂 質 を含 ん で い る^<30)>の
で, 粒 子 内 に脂
質 が 局 在 して い る可 能 性 が 高 い。一 般 に, 脂 質 の電 子 密
度 は蛋 白 質 部 分 に 比 べて 低 い ので,
リポ フォ リン分 子 内
の 電 子 密 度 の ゆ らぎ は無 視 で き ない。 した が っ て, コン
トラスト変調
法 を用い て解析する ことにした。
実 験 で は,
2886
リポフ ォリ ン溶 液 に シ ョ糖 を添 加し て溶 媒
110Åにみ られ た ピー ク とr=70Å
の くぼ み は減 少 し
て, 最終的に対称的な単一ピークヘと
移 行し て い く。
そこで,
(7)
式 の 慣性 半 径 のコ ントラト
依 存性か
ら, 異 な る電 子密 度なもつ 領域についての情報を得るこ
とに した。 ま ず, (6)
式 を も とに, I(0)^<1/2>と,ρ_sをプ
29
Database Center for Life Science Online Service
X線 小角散乱 法に よる生体高分子の構造研究
図4.
(a)
路 離 分 布 関 数P(r)
の シ ョ糖 濃 度 依 存 性
実 測 の散 乱 強 度 デ ー タか ら計 算 したP(r)
関 数,
図6(a)
に 示 した 電 子 密 度 分 布 か ら 計 算 したP(r)
ρ0%は, ⊿ ρ0%=ρ_s-ρ0% (ρ0% : シ ョ糖 濃 度0%の
密 度) で あ る (図6a参
照)。 また,
(a)
, 18%,
30%のP(r)
関 数 は, I(s)
に あ い ま い さが あり, 省 略 した。
ロ
ッ トして (図5a),
(ρ=0.355e/Å^3)
にお い て,
をs=0に
(b)
関 数。⊿
溶媒電子
5%,
10%
補 外 す る際
リポ フ ォリ ン粒 子 の平 均 電 子 密 度
を 求 め, そ れ ぞ れの ショ 糖 濃 度に お け
る コ ン トラス ト⊿ρ を 計 算 した 。 結 果 を 図5
す 。 最 小 二 乗 法 に よりa, bお
よ びR_Vを
果, a=38.4e/Å, b=0.03e^2/Å^4, R_V=49.1Å
れ た 。a>0, b≒0よ
(b)
図5. I(0)^<1/2>のρ_s依
お よび慣 性
算 出 した 結
と計 算 さ
り, 粒 子 内 で 異 な る電 子密 度 をも つ
を 表 わ し, 実 測 デー タか ら計 算 したP(r)
領 域 の重 心 は, 形 状 の 重 心 に ほ ぼ一 致 し, か つ, 電 子 密
ン した 。 結 果 を 図6
して 得 られ た モ デル のP(r)
分 を 占 め て い るこ とがわ か る。
リポ フ ォ リン分 子 の 外形に つ い て は, 電 子顕 微鏡 写 真
関 数 お よび そ
のコ ン トラス ト依 存 性 を 満 足 す る よ うに シ ミ ュ レーショ
度 の 高 い 領 域 が分 子 の表 面 に, 低 い 領 域 が分 子 の 中心 部
か ら直 径 約160Å
存 性 (a)
半 径 の コン トラス ト依 存 性 (b)
に示
(a)
に 示 す 。 図4
(b)
は, こ う
関 数 を コ ン トラ ス トを変 化
さ せ て 計 算 した もの で あ る。 実 測 デ ー タか ら 計 算 した
P(r)
関 数 (図4a)
と よ く対 応 した コ ン トラ ス ト依 存 性
の 球 状 粒 子 であ る こ とが 報 告 され て
を 示 して い る こ とが わ か る。 最 後 に, 区 形 関 数 の それ ぞ
い る^<30)>。
また,
X線 小 角 散 乱 法 か ら も, R_Vと 粒 子 の最
れ の 関 数値 (電 子 密 度) に リポ フ ォ リン の構 成 員 (ア ポ
大 長 (=170Å)
か ら ほぼ 球 形 に 近 い楕 円体 を して い る
蛋 白質 お よび脂 質 類) を あ て は め て, 最 終 モ デル を構 築
こ とが わ か る の で, リポ フ ォ リ ン粒 子 内 の電 子 密 度 は,
した (図6b)。
球 の 中 心か ら動 径 対 称 的 に分 布 し, 中 心 部 分 に電 子 密 度
ポ蛋 白質 とリ ン脂 質 が, 中 間 層 に ジ ア シル グ リセリ ドが
の低 い領 域 が, 表 層部 分 に電 子 密 度 の高 い領 域 が 存 在 し
存 在す る。 また, 分 子 の 中 心 部 分 に は, 電 子 密 度 の きわ
て い る こ とが示 唆 され る。 した が っ て, 球 の中 心 か ら動
め て低 い炭 化 水 素 が 局在 して お り, 哺 乳 類 の リポ蛋 白質
径 対 称 的 に変 化 す る区 形 関 数 で粒 子 内部 の電 子 密 度 分 布
と大 き く異 な っ て い る 。さ らに, こ の最 終 モ デル を も と
分 子 は三 層 構 造 を と り, 表 層 部 分 に ア
2887
30
に,
蛋 白 質
核 酸
酵 素
リポ フ ォ リン の温 度 に よ る構 造 変 化 を 解 析 した と こ
Vol. 35
No. 16
(1990)
た^<31)>。
こり結 果 は,
リポ フ ォ リン分 子 が い か に して脂 質
ろ, 分 子 の 外 径 に は変 化 が 認 め られ ず に, 中 心 部 分 の炭
を積 み上 げ積 み降 ろす か とい う リポ フ ォ リ ン本 来 の機 能
化 水 素 の 領 域 の電 子 密 度 が 顕 著 に変 化 す る こ とが 判 明 し
との 関連 で興 味 深 い 。
Database Center for Life Science Online Service
図6.
リポ フ ォ リン粒 子 内 の 電 子 密 度 分 布 (a) お よび
そ の 電 子 密 度 分 布 を も とに して 描 い た リポ フ ォ リ ン
の模 式 図 (b)
電 子 密 度 分 布 は, 球 の 中 心 か ら動 径 対 称 的 に 描 かれ て い る 。
ApoI,
ApoII : ア ポ 蛋 白 質Iお よびII, PL : リ ン脂 質, HC :
炭 化 水 素, DG
図7.
(a)0℃,
(b)5℃,
2888
慣 性 半径 R_g(●)
(c)10℃,
(d)15℃
: ジ ア シル グ リセ リ ド。
お よび 散 乱 角0° の 強 度I(0)
(■) の 時 間 変 化
。 矢 印〓 で 示 した と こ ろか らI(0)の
増 加 が 観 察 され る。
X線 小角散乱法に よる生体高分子の構造研究
2.
酸 変 性 に 伴 う タカ ア ミラ ー ゼAの 動 的 構 造 変 化^<28)>
I(0)
前 項 で は, 生 体 高 分 子 の静 的 な構 造 を, コ ン トラ ス ト
変 調 法 を用 い て解 析 した が,
の時 間 変 化 を 図7に 示 す 。0℃
で は両 パ ラ メー タ
と もに 時 間 変 化 が 認 め られ な い が, 5℃ で は, Rgの
この よ うな解 析 が 動 的 な構
るや か な増 大 が認 め られ る。 さ らに, 10℃
ゆ
では, I(0)
造 変 化 に応 用 で きれ ば, よ り機 能 に密 着 した 結 果 が 期 待
の増 加 も観 察 され, 15℃ にな る と, 両 パ ラ メ ー タ の変 化
され る。 ここ で は, 一 定 の溶 媒 電 子 密 度 で, ど の程 度 の
が よ り顕 著 とな る。(6)
構 造 変 化 を解 析 で き るか を, タ カ ア ミラー ゼA
二 乗 に比 例 す る の で, 解 離 会 合 に よ り大 き く増 減 す る。
(TAA)
を例 に あげ て示 した い 。
TAAは,
分 子 量51,000で,
が3Å
した が っ て, I(0)が
1980年 にそ の立 体 構 造
分 解 能 で決 定 され た^<32)>。
この酵 素 は,
ム に切 断す る エ ン ド型 の酵 素 で あ る が, pH3.3以
た, I(0)が
依 存 し, pH3.3で
一 定 で, Rgの
分 子 の体 積 の
み が増 加 す る時 間
増 加 す る時 間領 域 で は, 分 子 ど うしが 会 合
して い る こ とが 示 唆 され る。
下の
解 析 は, I(0)
酸 性 条 件 下 で は機 能 を失 い変 性 して い く。 そ の変 性 速 度
は, pHに
式 よ り, I(0)は
領 域 で は, 分 子 の形 態 に変 化 が起 こ って い る こ とが, ま
デ ンプ ン
(ア ミロー ス) 分 子 鎖 の α-1,4-グ リコ シ ド結 合 を ラ ンダ
が 一 定 な 時 間 領 域 とI(0)
が増大す る
時 間 領 域 に分 け て行 な った。 後 者 の 時 間 領 域 で は, 系 中
は 実 験 室 系 のX線 源 で も時
の分 子 サ イ ズが 不 均 一 で, 均 一 溶液 を 前 提 に した 解 析 理
分 割 測 定 が 可 能 とな る。
論 が 成 り立 た な いか らで あ る。
測 定 は, 反 応 速 度 を考 慮 して, 0℃, 5℃, 10℃, 15℃
Database Center for Life Science Online Service
31
で 行 な った。 そ れ ぞ れ の温 度 で 得 られ たRgお
図8.
低 分 解 能 のX線 結 晶 構 造 解 析 に よれば^<33)>,
TAA分
よび
は, 軸 比 が 約2.0の
回 転 楕 円体 の短 軸 長aお
(a)
0℃,
(b)
5℃,
(c)
よび 長 軸 長bの
10℃,
(d)
子
回転 楕 円体 を して い る ので, これ を
時間変化
15℃。
2889
32
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 35
No. 16
(1990)
と会 合 体 が共 存 して反 応 が進 み, 会 合 体 め ほ うは 時 間 と
と もに よ り大 き な 会 合 体 を 形 成 して い く こ とが 示 され
る。
以 上, TAA分
子 の動 的 な 構 造 変 化 (形 態変 化)
につ
い て 述 べ て きた が, 従 来 か ら分 光 学 的 な方 法 で 行 な わ れ
て きた 速 度 論 的 な解 析 もX線 小角 散乱 法 で 可 能 で あ る。
I(0)
やRgか
ら反 応 物 や 中 間体 あ る い は 生 成物 の 濃 度
を 見 積 も る こ とが で きる か らで あ る。 しか し, 速 度 論 的
な 解 析 をX線 小角 散 乱 法 で 行 な う利 点 は あ ま りな い 。 こ
こで 述 べ た 変 性 反 応 は, 反 応 速度 が遅 い の で, 実 験 室 系
の装 置 を 使 って 追 跡 す る こ とが で きた が, た とえ ば, 蛋
白 質 の ア ロ ステ リ ックな 変化 を速 度論 的 に解 析 す る と同
Database Center for Life Science Online Service
図9.
時 に, 動 的 に 構 造 変化 を 解 析 す る こ とが で きれ ば, よ り
小粒子 の慣 性半径Rg1お
よび大粒子 の慣 性半径
Rg2の 時間変化
機 能 に 即 した 情報 が得 られ るで あ ろ う。
15℃ の散乱強度 データを使って算出 した。*3 軸比 (長軸長/短軸長) がほぼ2.0になっており, X線結晶解析の結果とよく一致している。一
初 期 モ デル と して 分 子 形 態 の 変化 を 解 析 した。 す な わ
ち, 大き さ が2a×2a×2bの
回 転 楕 円体 の理 論I_V(s)
お わ りに
以上, X線 小角 散 乱 法 に つ い て, 筆 者 ら の
こ
れま での 解 析例 を交 え なが ら紹 介 してき た。X線
小角
をI(s)_<obs>に対 して シ ミュ レー シ ョン して, 短 軸 長aお
散 乱 法 か ら求 め られ る 各種 の構 造 パ ラ メー タ は, 他 の 物
よび 長軸 長bを
理 化 学 的 な 測 定 法 で は 得 られ な い もの が 多 く, その よ う
化を図8に
算 出 した 。 こ う して求 め た軸 長 の 時 間 変
示 す。0℃
では両 軸長 と もに 変化 が認められ
な い こ とか ら, 分 子 形 態 に変 化 が な い こ とが わ か る^<*3>。
と ころが, 5℃, 10℃, 19℃
で は, 明 らかに分 子 形 態の
な 意 味 か ら も, X線 小角 散乱 法 は, 生 体 高 分 子 の構 造 と
機 能 の 関 連 の 解 明 に お お いに 役立 つ こ とが期 待 され る 。
最 近, さ らに 高 輝 度 の 大 型 放 射 光施 設の建 設 が 始 ま っ
た。X線検 長軸長のみ増大しているのが特徴的である。これは,
出 器に
して も, 高感度 で 広 い ダイ ナミック 長軸方向に並
変 化 が 認 め られ る。 しかも, その変化は, 回転楕円体の短軸長にはみられず,
レンジ を 有す るイ メー ジン グ プ レー トがX線の二
次元検
出 器 と して の有 用 性が 認 めら れ て, X線 回 折 実験 に使 わ
れは
じめ
main) から構成 され るTAA分
子が, 酸性 条件下 で ドメイ ン間の相 互
作 用が弱ま り, 長 軸方向に伸 びだ もの と解 釈され る。
い る^<36)>。ノイズレベル
も低 く, 短時間でより
精 度の 高 い デ ー タが 得 られ る こ とが期 待 き れ る。
最 後に, X線 小角散乱装置の開発 に ご協力いただいた同蛋白
質研究所 ・勝部幸輝教授 東京工業大学 ・田中信夫教授 ならび
に理化学研究所 ・植 木龍夫博士に厚 くお礼申 し上げる。
うな シ ミュ レー シ ョンは で きな いが, 散 乱粒 子 の サ イ ズ
分 布 を も とめ る こ とは 可 能 であ る。 ギ ニエ プ ロ ッ トは,
均 一粒 子 か らな る溶 液 では 直 線 に な るが, 二 成 分 系 で は
二 相 性 を 示 し, 異 な る傾 きを もつ2つ の 直 線 で表 わ せ る
よ うに な る^<34,35)>。
しか も,
粒 子 の Rg (Rg1)
(Rg2)
高 角 領 域 の直 線 の 傾 きが 小
を, 低 角 領域 の傾 き が 大粒 子 のRg
を 与 え る。 そ こで, I(0)
が増 加 して い く時 間
領 域 で ギ ニエ プ ロ ッ トを 行 な って み た と ころ, 反 応 時 間
の経 過 と と もに は っ き りと した 二 相 性 を 示 した の で, そ
れ ぞ れ の 時 間 に お い てRg1とRg2を
この 図 か ら, Rg2は
求 め た (図9)。
時 間 と と もに 増 大 して い くが, Rg
1は ほ ぼ一 定 で 変 化 しな い こ とがわ か る。Rg1は
単量 体
の慣 性 半径 に 相 当 す る の で, こ の時 間 領 域 では, 単 量 体
2890
文
献
1) Guinier, A.: Ann. Phys., 12, 161-237 (1939)
2) Bauer, S. H.: J. Chem. Phys., 13, 450-451
(1945)
3) Riseman, J.: Acta Cryst., 5, 193-196 (1952)
4) Roess, L. C.: J. Chem. Phys., 14, 695-697
(1946)
5) Shull, C. G., Roess, L. C.: J. Appl. Phys.; 18,
295-307 (1947),
6) Piltz, I.: in Small Angle X-ray Scattering
(eds. Glatter, O., Kratky, O.), pp.239-293,
Academic Press, London (1982)
7) Zipper, P.: in• Small Angle X-ray Scattering
X線 小角散乱法に よる生体高分子 の構造研究
(eds.
Glatter, O.,
Academic
8)
Gabriel,
43,
9)
A.,
Moody,
M.
Dupont,
F.,
A.,
Foot,
J.,
12)
A.
Koch,
M.
Instrum.,
E.
Nature,
M.,
Moody,
Y.,
33)
Va
A.,
Biochem.
A.,
35)
Mandelkow,
(1980)
Koch,
171-174
M.
H.
J.:
Bio
36)
(1983)
13) –ØŒ´ —T•E’ß“c ”ŽŽk : •¶‰»Šw,
60,
1371-1376
(1988)
14) •Ð‰ªŠ²•v : •¶•¨•¨—•,
15)
H.
Database Center for Life Science Online Service
Chem.
16)
27,
Stuhrmann,
B.,
Aggerbeck,
46,
L.,
ti,V.:
J.
296-304
Kirste,
Frankfurt,
(1987)
R.
G.:
247-250
Yates,
M.,
Appl.
34)
Bio
(1983)
H.,
17,
F.,
Gabriel,
J.
595-599
Kihara,
phys.Chem.,
J.:
Tar
Proc.
(1980)
M.
S. W.,
Harman,
287,
M.,
J.:
4040-4043
317-334
M.,
A.
Bordas,
77,
H.
7,
Mandelkow,
Inoko,
Sci.
Foot,
J.,
USA,
phys.Methods,
E.:
H.
Provencher,
Bordas,
32)
Rev.
P.,
M.
Sci.
chette,P.,
11)
Y.:
Vachette,
Acad.
Fowler,
295-328,
(1982)
(1972)
Koch,
Natl.
pp.
London
1600-1603
dieu,A.,
10)
Kratky, O.),
Press,
Z.
33
Chem., 262, 15857-15861 (1987)
Matsuura, Y., Kusunoki, M., Harada, W., Ta
naka,N., Iga, Y., Yasuoka, N., Toda, H., Nari
ta,K., Kakudo, M.: J. Biochem., 87, 15551558 (1980)
Matsuura, Y., Kusunoki, M., Date, W., Hara
da,S., Bando, S., Tanaka, N., Kakudo, M.: J.
Biochem., 86, 1773-1783 (1979)
Guinier, A., Fournet, G.: in Small-Angle Scat.
tering of X-ray, pp. 149-151, John Wiley &
Sons, New York (1955)
Fankuchen, L., Jellinek, M. H.: Advances in
Catalysis, Chapter on X-ray diffraction, Aca
demicPress,
New York (1948)
Watanabe, N., Sakabe, K., Sakabe, N., Higa
shi,T., Sasaki, K., Aibara, S., Morita, Y., Yo
naha,K.,
Toyama, S., Fukutani, H.: J. Bio
chem.,105,
1-3 (1989)
Phys.
(1965)
Tardieu,
A.,
Crystallogr.,
Luzza
11,
466-472
(1978)
17)
Stuhrmann,
H.
tallogr.,11,
18)
19)
20)
Luzzati,
V.,
Bioeng.,
9,
P.,
triaca,14,
185-211
23)
Y.,
26)
O.:
Acta
Phys.
Aus
Acta
Phys.
Aus
G.:
Acta
Phys.
Aus
S.:
Acta
Crystallogr.,
A
37,
Small
Angle
O.,
London
O.:
Acta
O.:
J.
X-ray
Kratky,
Scattering
O.),
pp.167-196,
(1982)
Phys.
Austriaca,
47,
83-
(1977)
Glatter,
421
(1977)
Sato,
M.,
Kato,
Appl.
M.,
Kakudo,
Crystallogr.,
Kasai,
M.,
N.,
Tanaka,
International,
10,
Hata,
Y.,
M.,
5,
415-
Tana
Ozawa,
T.:
595-602
(1982)
土 井 健 治 ・若 林 克 三 ・植 木 龍 夫 ・三 井 利 夫 : X線
回折
京
29)
Biophys.
(1962)
Press,
Glatter,
Biochem.
28)
in
Glatter,
ka,N.,
27)
G.:
Porod,
Ihara,
Academic
25)
Rev.
(1981)
Glatter,
102
Crys
(1961)
122-147
(eds.
24)
G.:
Porod,
P.,
Hiragi,
Appl.
(1961)
405-439
378-382
Ann.
Porod,
P.,
Mittelbach,
J.
(1980)
Mittelbach,
Mittelbach,
A.:
(1978)
A.:
1-29
triaca,15,
22)
Miller,
Tardieu,
triaca,14,
21)
B.,
325-345
(高 良 和 武 編),
PP.381-426,
共 立 出 版,
東
(1988)
Hozaki, T., Kato, M., Sato, M., Tanaka, N.,
Morimoto, Y., Hata, Y., Katsube, Y., Kasai,
N.: Bull. Chem. Soc. Jpn., 59, 3747-3753
(1986)
Nagamura, T., Kurita, K., Tokikura, E., Kiha
ra,H.: J. Biochem. Biophys. Methods, 11,
277-286 (1985)
30)
芽 野 春 雄
: 化 学
31)
Katagiri,
C.,
と 生 物,
Sato,
M.,
20,
638-645
Tanaka,
(1982)
N.: J. Biol.
2891
Fly UP