...

蛋白質核酸酵素

by user

on
Category: Documents
26

views

Report

Comments

Transcript

蛋白質核酸酵素
HPLCや
固 定 化 酵 素 法 に よ る, 血 液 な ど体 液 中 の 低 分 子 成 分 の臨 床 検 査 が 近 年 盛 ん に 行
なわ れ て い る。 この 際, 検 出 の 妨 害 要 因 とな る蛋 白質 成 分 を あ らか じめ 除 去 (前処 理)
て お く必 要 が あ る。 従 来 の 沈 澱 法 や 透 析 法 な ど で は必 要 な検 体 量 が 多 くな る こ とや,
し
目的
Database Center for Life Science Online Service
物 質 の化 学変 化, 希 釈, テ ー リン グな ど種 々の 問 題 が 起 こ る。 これ に 代 わ る もの と して,
最 近 注 目さ れ て い る限 外 濾過 膜 に よ る迅 速 除 蛋 白法 や,
蛋 白質 に特 異 的 相 互 作 用 を 示 す 高
分 子 樹 脂 を充 填 した 前処 理 用 プ レ カ ラ ムを用 い る簡 便 な 除 蛋 白法 に つ い て 紹 介 した い 。
血 液 や 尿, 髄 液 中 の成 分 の分 析 は各 種 疾 病
機 溶媒 に よ る被 検 物 質 の 抽 出 法, ま た, 硫 酸 ア ン モ ニ ウ
の診 断 の 際 の, いわ ゆ る臨 床 分 析 の 中 で も最 も重 要 な も
は じめ に
ム, 硫 酸 ナ ト リウ ム, 亜硫 酸 ナ ト リウ ムな どに よ る塩 析
の の ひ とつ で あ る^<1)>。
わ け て も, 血 液 あ るい は そ れ を除
法, さ らに は タ ン グ ステ ン酸,
血 球 処 理 した 血 漿 や血 清 の 分 析 が 最 も頻 繁 に行 な わ れ て
リク ロ ロ酢 酸 な どの 酸 に よ る 沈 澱 法 が あ る^<4)>。
これ らの
リン タ ン グ ステ ン酸,
ト
お り, 被 検 対 象 と して は低 分 子成 分 で あ るブ ドウ糖, 尿
手 法 は 現在 も多 用 され て お り, た とえ ば Folin-Wu
素, 尿 酸 な どが ポ ピ ュ ラ ーで あ る。 これ らの 分 析 に は通
は, 全血 と10%タ
常 の化 学 反 応 に伴 う発 色 法 な どに 加 え て, 酵 素 な どを 用
を1:1:1に
い た 生 化 学 的 手 法 が頻 用 され て お り, 最 近 で は 固 定化 酵
放 置後 に2500∼3000rpmで5∼10分
素 を 用 いた 酵 素 分 析 法 が 普 及 し始 め て い る^<2,3)>。
これにつ
よ り, 除 蛋 白 が行 な え る^<5)>。
しか し上 に示 した 手 法 は,
い ては 別 の項 で村 地 らが詳 述 して い る。
い ず れ も, お もに 大量 の血 清 な どの処 理 に 用 い られ る も
酸
混 ぜ た もの に, 水7容 を 加 え, 10∼20分
の で あ り, 遠 沈, 分 液,
と ころ で, 低 分 子 成 分 の 臨 床 検 査 の 際 に は血 清 中 に 含
法で
ン グス テ ン酸 ナ ト リウ ム, 2/3N硫
間遠 沈 す る こ とに
濾 過 な どの 手 順 が 必 要 な こ と
まれ て い る高 分 子 成 分, わ け て もア ル ブ ミン, グ ロ ブ リ
も併 せ て, 現 在 の 臨床 科学 の 目指 して い る微量 検体 の 迅
ンや 各 種 プ ロテ ア ー ゼ な どの 蛋 白質成 分 が 検 出 を 妨 害 す
速 な 除蛋 白処 理 と, そ れ に続 く分 析 に は い さ さか不 向 き
る こ とが しば しば あ る。 た とえ ば, 固 定化 酵 素 法 に 限 っ
で あ る。一 方, 現 在使 用 され て い る固 定 化酵 素 カ ラ ムを
て み て も蛋 白質 成 分 が酵 素 カ ラ ムに つ ま った り, あ るい
有 す る臨床 診 断 用 機 器 で は, 透 析 器 を用 い て 除蛋 白を 行
は 固 定 化 され て い る酵 素 の 分 解 ・失 活 を もた らす こ とが
な って い る もの が 多 い が, サ ンプ ル 中 の 目的物 質 の ほ と
あ り, サ ンプ ル 中 の蛋 白質 を あ らか じめ除 い て お く こ と
ん どが 透 析 膜 を通 らず に 無 駄 に な り, 結 果 と して 多 量 の
が酵 素 カ ラ ム の寿 命 を延 ば し, 検 査 の精 度 を上 げ る こ と
サ ン プル が 要 求 され る こ とや, 試 料 が希 釈 さ れ る こ と,
に つ なが る。
テ ー リン グが 大 きい こ とな ど多 くの 問 題 が 指摘 され て い
る。
従 来 の除 蛋 白 法 と して 代 表 的 な もの は アセ トンや アセ
トニ トリル の よ うな 水 溶 性 の 有 機 溶 媒 に よ る沈 澱 法, 酢
本 稿 で は, これ ら在 来 法 に 代 わ る もの と して, 最 近,
酸 エ チ ル, 塩 化 メチ レ ン, エ ーテ ル の よ うな非 水溶 性 有
注 目 され て い る限 外 濾 過 膜 を 利 用 した 除 蛋 白法 や 蛋 白質
Hiromi
Kitano,
mentof
Katsunori
Polymer
Nakamura,
Chemistry,
Kyoto
Norio
University,
Ise,
京 都 大 学 工 学 部 高 分 子 化 学 教 室
Kyoto
606,
Key【除
word
蛋 白】 【多 価 フ ェ ノー ル 樹 脂 】 【ホ ル ミル 化 多 孔 性 樹 脂 】
210
(〒606
京 都 市 左 京 区 吉 田 本 町)〔Depart
Japan]Separation and Removal of Proteins from Biological Samples
I
検体か らの蛋 白質の分離除 去
17
と特 異 的 相 互 作 用 を 行 な う高 分 子 樹 脂 を充 填 した カ ラ ム
子 量64000)
法 に よ る蛋 白質 除 去 につ い て述 べ てみ た い。
が ほ とん どな い ミオ グ ロ ビ ン (分子 量16500)
子 量30000の
.
膜
に
よ
る 分
離
と, そ れ と可 視 領 域 で の ピー ク位 置 の違 い
を分 画 分
限 外 濾 過 膜 を 有 す る ミク ロ濃 縮 器 ア ミコ
ン製30^<TM>を 用 い て分 離 し, ミオ グ ロ ビ ンの定 量 を分 光
法 に よ り簡 単 に行 な った 報 告 も あ る^<9)>。
いず れ の場 合 も,
単 な る構 造 材 料 で はな く高 い機 能 を備 えた 高 分 子, い
わ ゆ る機 能 性 高 分 子 の中 で, 最 近, 最 も進 歩 の著 しい も
の は高 分 子 膜 で あ ろ う。 医 学 にお い て も, 人 工 腎 臓 にみ
ポ リサ ッカ ライ ド系 のYMタ
イ プ とい う蛋 白質 吸着 が
少 な い膜 を用 い て い る。 同 様 の考 え に 立 った 製 品 は ザ ル
トリウ スか ら も発 売 さ れ て い る。 最 近 で は,
ミリポ アか
られ る中 空 糸 型 透 析 器 や, 免 疫 不 全 の患 者 の血 球 を分 離
ら シ リ ンジ の先 につ け る コ ンパ ク トな タ イ プ の限 外 濾 過
後 に血 漿 中 の グ ロブ リン分 画 のみ を除 去 し, ア ル ブ ミ ン
器 も売 り出 され て お り, 価 格 面 につ い て は 日常 的 使 用 に
以 下 の 低 分 子 成 分 は 血 球 成 分 と混 合 して, 再 び 患 者 に戻
は若 干 まだ 高 い とい う難 点 が あ る も の の, 緊 急 の場 合 な
す いわ ゆ る血 漿 分 離 法 (plasmapheresis)
な ど も膜 の孔
径 や 厚 さの 精 密 な コ ン トロ ール 技 術 の進 歩 と と もに 可 能
ど に は, 今 後 こ の タ イ プ の デ ィ ス ポ ー ザ ブ ル型 限 外濾 過
キ ッ トは ます ます 普 及 す る も の と思 わ れ る。
に な っ てい る^<6)>。
Database Center for Life Science Online Service
臨 床 検 査 に お い て も この よ うな 高 分 子 膜 の 利 用 が 進 ん
II.
プ
レ カ
ラ ム 法
で お り, た とえ ば, 除血 球 に つ い て も小 さな 限 外 濾 過 膜
(孔 径0.6μm)
を プ ラス チ ッ ク製 の ス ペ ー サ ー上 に 装 着
した も ので, 2.5mlの
全 血 か ら0.5mlの
血 漿 を60秒
シ リカ ゲル な ど を充 填 した高 速 液 クロ に よ る臨 床 化 学
分 析 は 非 常 に 有 効 な も の で あ るが, 先 述 した よ うに 検 体
で 得 る こ との で き る 簡 便 な製 品 が 出 回 って い る (IL-
中 の高 分 子 成 分 は検 知 精 度 を下 げ る と と もに, 分 析 カ ラ
Statsep)^<7)>。
さ ら に, も っ と孔 径 の 小 さ な 膜 を コ ンパ ク ト
ム の寿 命 を 著 し く損 な う。 そ こで, 通 常 は分 析 カ ラ ム 内
な 遠 心 管 中 に組 み込 ん で や れ ば, 簡 単 な 除 蛋 白装 置 が で
き る。た とえば, ア ミコ ン製 のMPS-1
外 濾 過 膜 付 き遠 心 管 の 場 合, 1mlの
15分 間 の遠 心 で0.3mlほ
(図1)
とい う限
血 清 か ら2000g,
どの蛋 白質 を 含 ま な い液 が得
られ, これ を利 用 して血 中 のBr^-の
定 量 が 行 なわ れ て
い る^<8)>。
同 様 に して, 尿 中 に混 入 した ヘ モ グ ロ ビ ン (分
図1.
遠 心 管 型 の除 蛋 白 キ ッ トの概 略 図^<8)>
図2.
プ レ カ ラ ムス イ ッチ 法 の概 念 図^<10)>
211
18
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No. 3
(1986)
の 充 填 剤 と同 じ成 分 の ゲ ル を詰 め た 小 さ な カ ラ ムを デ ィ
た 三 方 バ ル ブを 取 り付 け た だ け の きわ め て 簡 単 な もの で
スポ ーザ ブ ル の プ レカ ラ ム と して 用 い る こ とが 多 い 。
あ る。予 備 実験 に よ って 得 た プ レカ ラ ムヘ の蛋 白質 の 保
Waters
持 時 間 を も とに, サ ン プル 中 の 蛋 白質 成 分 が プ レ カ ラ ム
の液 ク ロ を例 に とっ て も Guard-Pak,
Sep-Pak
な ど の名 称 で プ レカ ラ ムが 使 用 され て い る。
を通 過 し, 三 方 バ ル ブを通 って 系 外 に 流 出 した の ち に,
これ を さ ら に発 展 させ た もの と して, 最 近 試 み られ た
流 路 の 切 替 え に よっ て 被 検 物 質 を 分 析 カ ラム に送 り込
プ レ カ ラ ム ス イ ッチ 法^<10)>と
プ レカ ラ ムベ ンテ ィ ン グ法^<11)> み, 高 速 液 ク ロ分 析 を 行 な うの で あ る。 この方 法 に よ り
に つ い て 述 べ て み た い 。 プ レカ ラ ム ス イ ッチ法 は Roth
分 析 カ ラ ム の寿 命 が 著 し く延 び, プ レカ ラム を サ ン プル
らに よ り 試 み られ た もの で,
注 入 ご とに変 え る とい う場 合 に 比べ て も格 段 の安 定 性 を
そ の概 念 図 を 図2に
示し
Database Center for Life Science Online Service
た 。 サ ン プ ル イ ンジ ェ クタ ー か ら打 ち込 ま れ た検 体 中 の
示 した 。
被 検物 質 は プ レカ ラム に 吸着 さ れ る。図 中 の2, 3の 六 方
最 近, 逆 相 ク ロマ ト用 シ リカ ゲ ル充 填 剤 の外 側 塗 ウ シ
バ ル ブを 切 り替 え て ポ ンプBを 用 い て溶 離 液 を先 ほ ど と
血 清 ア ル ブ ミンで コー トした も のが 除 蛋 白用 カ ラ ム と し
は逆 の 方 向 か らカ ラム に通 す こ とに よ り, 被 検物 質 は分
て実 用 化 され て い る (図4)^<12)>。
この場 合, 検 体 中 の蛋 白
析 カ ラ ムに 送 り込 まれ る こ とに な る。 プ レ カ ラム を 図 の
質 は カ ラ ム充 填 剤 内部 に拡 散 で きず, そ の ま ま流 出 して
よ うに2つ 用 い てや れ ば, プ レカ ラムヘ の 吸着, 逆 方 向
い き, 被 検 物 質 を含 む 低 分 子 成 分 のみ が ゲ ル 内部 に拡 散
か ら の洗 浄 を 併 行 して行 な え, 効 率 的 な分 析 が 可 能 とな
し保 持 され る。 そ こ で, 溶 媒 を ア セ トニ トリルー緩 衝 液
る。Roth
の よ うな溶 離 液 に段 階 的 に変 え る と, 目的 物 質 が 溶 離 し
ら は これ に よ り血 漿 中 の 薬 物 抗 凝血 剤R-A
233の 検 出 を 行 な っ て い る が, 10∼150μlの
1000回
血 漿 を
打 ち込 ん で も, 分 析 カ ラ ム の 性 能 に 変 化 は なか
て く る こ とに な る。 現 在, こ の よ うな プ レカ ラ ムを 含 む
除 蛋 白 前 処 理 シ ス テ ムが 市 販 され て い る。
この 他 に, 簡 単 な分 子 ふ るい 用 カ ラ ムを 用 い て 高 分 子
った 。
示 した
成 分 と低 分 子 成 分 の分 離 を 行 な い, これ を コ ンピ ュ ー タ
が, プ レカ ラム と分 析 カ ラ ムの 間 に, 圧 力 調 整 器 を 備 え
プ レカ ラ ム ベ ンテ ィ ン グ法 の 概 念 図 を 図3に
制 御 した 多方 バ ル ブに よ り, そ れ ぞ れ 別 の 流 路 に 導 き分
析 を 行 な う とい う手 法 も 開 発 され て い る (図5)^<13)>。こ
の 場 合, 一 定 時 間 流 れ を 止 め る こ とに よ り検 出器 の セ ル
中 で 酵 素 反 応 を 行 な い, そ の 吸 光 度 変 化 を 追 う とい うス
トッ プ トフ ロー 法 を 用 い て い る^<39)>。
これ に よっ て高 分 子
成 分 の分 析 時 に お け る低 分 子夾 雑 物 に よ る妨 害 除去 や,
逆 に低 分 子 成 分 の分 析 時 に お け る除 蛋 白操 作 が 同 時 に行
な え る。 図6に は, 例 とし て血 清 中 の グル タ ミン酸 オ キ
サ ロ酢 酸 トラ ンス ア ミナ ー ゼ (GOT)
と グル コー ス の 同
図3.
プ レ カ ラ ムベン テ ィン グ法 の 装 置 図^<11)>
1 : プ レカ ラ ム (10×3.2mm),
2 : 三 方 バ ル ブ, 3 : 圧 力調
時 定 量 を行 な った 結 果 を示 した が,
30μlの 血 清 をサ ン
整 器, 4 : 分 析 カ ラム
プ ル と して, 数 分 で両 者 の定 量 結 果 が得 られ る。
図4.
溶媒
212
蛋 白 質 で コ ー
ト し た 充 填 剤^<12)>
(1) の 条 件 で 検 体 を 注 入 。 溶 媒 (2) は 溶 離 液 。
検体か らの蛋白質の分離除去
19
必 要 で あ る こ とな ど の問 題 が あ る。 こ
れ らを 解 決 す る手 段 と して は, 蛋 白質
と特 異 的 相 互 作 用 を有 す る樹 脂 を前 処
理 用 カ ラ ム と して用 い て, 少量 の検 体
を 分 析 流 路 へ 直 接 注 入 す る とい う方 法
が 考 え られ る。 蛋 白質 を結 合 す る担 体
と して 種 々 の活 性 基 を有 す る高 分 子 樹
脂 が これ ま で に も 調 製 さ れ て は い る
が^<3,14)>,
こ れ らは 活 性 の 高 さ に比 例 し
て 水 媒 体 中 で の安 定 性 が低 く, しか も
コ ス ト的 に も問 題 が あ る。 臨床 検 査 に
図5.
GPCと
共役 させ た高 分子 ・低 分 子 成 分 の 同 時定 量 装 置 の概 略 図^<13)>
限 らず 分 析 用 検 体 の前 処 理 用 素 材 と し
て は, (1)
を 有 す る こ とに 加 え て (2)
蛋 白 質 と の強 い相 互 作 用
調 製 が 簡 単 で, (3)
中 で 比較 的 安 定 で, しか も (4)
水溶液
廉 価 で あ る こ と, が要
Database Center for Life Science Online Service
求 され る。 この よ うな 条 件 を 満 た す 材 料 と して, 筆 者 ら
が 種 々検討 した 中 で は, 多 価 フ ェ ノ ー ル樹 脂 とホ ル ミル
基 を 有 す る多 孔 性樹 脂 が 適 して い る と考 え られ るの で,
これ らに つ い て 以下 に 述 べ る こ とにす る。
1.
多 価 フ ェ ノー ル 樹 脂
タ ン ニ ンに 代表 さ れ る よ うな 天 然 由来 の多 価 フ ェ ノー
ル は 蛋 白質 と特 異 的 に 相 互 作 用 を行 な うこ とが 知 られ て
い る。 た とえ ば, タ ン ニ ンは 蛋 白質 と結 合 して不 溶 性 ゲ
ル を 形成 す るこ とが 知 られ て お り, 酵 素 との複 合 体 を 固
定 化 酵 素 と して 用 い た 報 告 もあ る^<15)>。
また,
1:2の
卵 白 との
複 合 体 は帯 褐 色 で水 に 不 溶 の 無 臭 の 粉 末 で タ ン
ナ ル ビ ン と呼 ば れ, 整 腸 剤 に 用 い られ て い る。 千 畑 ら は
スペ ーサ ーを 導 入 した セ ル ロー ス に タ ンニ ンを 結 合 さ
せ,
固 定 化 酵 素 用 担 体 と して 使 用 し, 好 結 果 を 得 て い
る^<16)>。
筆 者 らは 多 価 フ ェノ ー ル とア ル デ ヒ ドと の付 加 縮
合 体 が 蛋 白質 を 強 く結 合 す る こ とに着 目 し, これ を 除 蛋
白用 カ ラ ム充 填 剤 と して用 い る こ とに した^<17)>。
用 い る多
価 フ ェ ノ ール は1, 4-ジ ヒ ドロ キ シベ ンゼ ン (ヒ ドロキ
ノ ン) を は じめ とす る比 較 的 簡 単 な構 造 の もの で, これ
と過 剰 量 の ホ ル ム アル デ ヒ ドとを 酸 触 媒 を用 い て 加 熱下
図6.
血 清 中 の ブ ドウ糖 とGOTの
同 時 定 量^<13)>
付 加 縮 合 させ る と, 収 率 よ く黒 褐 色 の不 定 形 樹 脂 が得 ら
れ る。 この樹 脂 は 取 扱 い が 非 常 に 容 易 で, カ ラ ムに充 填
後 も圧 損 が ほ とん どな い 。 これ に 血 清 蛋 白溶 液 を 臨床 検
III.
特 異 的 吸 着 力 ラ ム に よ る 蛋 白 質 除去
査 時 と同 様 に, 数10μlず
つ パ ル ス的 に注 入 し, こ の こ
とか ら蛋 白質 の 樹 脂 へ の不 可 逆 的 結 合 を検 討 して み た 。
これ ま で に 膜 や 比較 的単 純 な プ レ カ ラ ムを 用 い る除 蛋
そ の 結果,
ホ ル ム ア ル デ ヒ ドーヒ ドロキ ノ ン 樹 脂 (以
白法 に つ い て 述 べ て きた が, 遠 心 や流 路変 更 な どの 手 間
下FA-HQと
略 す) を例 に とる と, 蛋 白 質 と して ウ シ血
が か か る こ とや, 膜 の場 合 に は 比較 的 多量 の サ ン プル が
清 アル ブ ミンを パ ル ス で注 入 した 場 合, 樹 脂1gあ
た り
213
20
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No.
3
(1986)
か らも 支 持 され る (図8)^<18)>。
赤外吸収 ス
ペ ク トルか ら図9に 示 した よ うなFA-HQ
の構 造 が 妥 当 と考 え られ る。
こ の こ とか ら蛋 白質 との結 合 様 式 と して
は, 図10に
示 す よ うな い くつ か の可 能 性
が考 え られ る。.こ こで (a)
は Manecke
らが ヒ ドロキ ノ ンを有 す る ポ リス チ レ ンの
蛋 白質 結 合 に 関 して 提 唱 し た も の で^<19)>,
(b)
図7.
ウ シ 血 清 ア ル ブ ミン のFA-HQカ
カ ラ ム サ イ ズ : 5×103mm,
ル ブ ミン 溶 液 を50μlず
55mg分
0.03Mリン
ラ ム か ら の 流 出^<18)>
酸 緩 衝 液,
っ 注 入 。 ○ : pH5.5,
か とな った (図7)。
ここ で得 られ る 結 合 量 は, 通 常 試
Database Center for Life Science Online Service
み られ て い る高 分 子 へ の蛋 白質 の平 衡 吸着 量 に比 べ て小
まれてい る
は
多 価 フ ェ ノ ール樹 脂 へ の蛋 白質 結 合 に 関 し
30mg・ml^<-1>のア
● : pH8.0。
ま で の 注 入 では 完 全 に 除 蛋 白 され る こ とが 明 ら
は樹 脂 中 に塩 素 が 数%含
こ とを 考 慮 した もの で あ る。ま た, (c)
て アル ギ ニ ン の役 割 が 重 要 で あ る と して
Chaplin
らが 示 唆 した も の で あ り^<20)>,
(d)
は 植物 由 来
の ポ リフ ェ ノ ー ルヘ の蛋 白質 結 合 に は水 素 結 合 が 重 要 で
あ る と McManus
らが提 案 した もの で あ る^<21)>。
先に図
さい が, これ は 先 述 した よ うに不可 逆 的 な 吸着 量 のみ を
8に 示 した よ うに, ア ル ブ ミン分 子 中 の ア ル ギ ニ ン残 基
取 り出 した た め で あ る こ とに 留 意 され た い 。 い った ん結
を1,
2-シ ク ロヘ キ サ ン ジオ ン で ブ ロ ッ ク して も, FA-
合 した 蛋 白質 は0.1N塩
HQ樹
脂 へ の 結 合 に ま った く影 響 が な か った こ とは (c)
6M尿
素,
50%ア
酸, 0.1N水
ル コー ル,
酸 化 ナ トリウ ム,
さ ら に界 面 活 性 剤 な ど に
よ って も ま った く溶 離 せ ず, 共 有 結 合 に よ っ て蛋 白質 が
の可 能 性 を否 定 して い る と考 え られ る。
一方
, 図11に
示 した よ うに, ウ シ血 清 ア ル ブ ミ ンの
樹 脂 に 結 合 して い る こ とを示 唆 して い る。 また, 温 度 上
FA-HQへ
の結 合 量 が ア ル ブ ミ ンの等 電 点 付 近 で最 大 と
昇 に よ って 蛋 白質 結 合 量 が 増 加 す る傾 向が み られ る。 こ
な る こ とは, 疎 水 性 相 互 作 用 に よ り蛋 白質 が 樹 脂 に接
れ は通 常 の疎 水 力 に よ る ク ロマ トグ ラ フ ィー で は あ ま り
近, 吸 着 した の ち に, ア ミノ基 と樹 脂 間 に共 有 結 合 が 生
み られ な い現 象 で あ り, こ の こ とは, こ の蛋 白質 結 合 が
化 学 結 合 を伴 うも の で あ る こ とを示 して い る。
一 方 , 臨 床 検 査 の対 象 と して重 要 な低 分 子 化 合 物 で あ
る尿 素, 尿 酸, ブ ドウ糖 な どは ま っ た く結 合 され ず に カ
ラ ム を素 通 り し, 蛋 白質 と混 合 した場 合 も低 分 子 化 合物
のみ が カ ラム か ら 流 出 し, 文 字通 り除 蛋 白 が 行 な わ れ
た。 ア ミノ酸 に つ い て は, 中 性 か ら弱酸 性 で は ま った く
結 合 さ れ な い が, pHを
弱 アル カ リ性 に す る と結 合 が み
られ, ア ミノ酸 の遊 離 ア ミノ酸 が 結 合 に 関 与 して い る こ
とを 示 唆 して い る。 こ の こ とは,
ポ リL-グ ル タ ミン酸
で は ま った く結 合 が み られ な い の に対 し, ε-アミノ基 が
分 子 中 に多 量 に 存 在 す る ポ リL-リ シ ンで は 強 く結 合 さ
図8.
FA-HQへ
の修 飾 アル ブ ミン の結 合 挙 動^<18)>
○ : 未 修飾 アル ブ ミン,
△ : アル ギ ニン ブ ロ ック アル
れ る こ とや, 蛋 白 質上 の ア ミノ基 を ブ ロ ッ クす る と結 合
ブ ミン,
量 が下 が る一 方 で, カル ボ キ シル 基 を ブ ロ ッ ク して ア ミ
ノ基 の 求 核 性 を 上 昇 させ る と結 合 量 が 増 加 す る こ とな ど
図9.
214
FA-HQの
□ : ス ク シ ニル 化 アル ブ ミン,
化 ア ル ブ ミン,
ア ル ブ ミン。
構
造
式^<17,20)>
◇ :アミド
▲ : ア ル ギ ニン ブロ ック ス ク シ ニル 化
検体か らの蛋 白質 の分離除去
Database Center for Life Science Online Service
図10.
21
多 価 フ ェ ノー ル 樹 脂 へ の 蛋 白 質 の 結 合 機 構^<17)>
学 反 応 に よ り樹 脂 に結 合 して い る と考 え る のが 妥 当 で あ
ろ う。
バ ッチ法 に よ る血 清 蛋 白質 の樹 脂へ の 吸 着 実 験 を試 み
た と ころ, 蛋 白質 は1分 以 内 に総 結 合 量 のほ とん どが 結
合 され た 。 実 際 に生 体 サ ンプ ル と して ウ シ血 清 を用 いた
場 合 に も, 同 様 の迅 速 な結 合 が み られ た 。 また, ウ シ血
清 に よ る実 験 で は ア ル ブ ミン よ りも グ ロ ブ リン のほ うが
若 干 結 合 量 が 多 く, こ の こ とも先 に述 べ た 疎 水 性 相 互 作
用 の寄 与 を 示 して い る も の と考 え られ る。 この よ うに バ
ッチ 法 で の検 討 に お い て も, FA-HQの
蛋 白質除去材料
と して の 有 用 性 が 示 され た 。
と ころ で, 熱 収 縮 テ フ ロ ン チ ュ ー ブ内 にFA-HQ樹
脂 を充 填 した の ち に 熱 処 理 す る こ とで, 密 に充 填 され た
蛋 白質 除去 用 カ ラ ムが 得 られ る^<18)>。
これ に シ リ ンジ用 ア
ダプ ター を付 け て や れ ば, シ リ ンジ タ イ プ の簡 単 な除 蛋
白用 キ ッ トと して 用 い る こ とが で き る。 実 際, 85mgの
樹 脂 を充 填 した テ フ ロ ンチ ュ ー ブ に よっ て120μlの
血
清 か ら, 迅 速 か つ 完 全 に蛋 白質 が 除 か れ た 。 また, 全 血
図11.
種 々 の血 清 蛋 白 質 のFA-HQへ
の 結 合 (30℃)^<17)>
0.03Mリン
酸 緩 衝 液, ○
: ウ シ血 清 アル ブ ミン, ● :
ウシ 血 清
γ-グ ロ ブ リン,
□ : α-1-アン
に つ い て も除血 球 ・除 蛋 白 を 同 時 に 行 な え る とい う結 果
が 得 られ てい る。 こ の よ うな形 態 の 前処 理 用 カ ラ ム は量
△ :トランスフェリン (ポロ),
チ ト リ プ シン,
産 も可 能 で, ク ロマ トサ ンプ ル前 処 理 用 に もか な り有 用
: オ キ シ ヘ モ グ ロ ビン 。
で あ る と考 え られ る。
じて い る こ とを示 唆 して い る^<22)>。
さ らに, FA-HQを
ア
ル カ リ処 理 す る こ とに よ りキ ノ ン基 の量 が 増 加 す るが,
2.
これ に 伴 って 蛋 白質 結 合 量は い った ん 増 加 し, そ の後,
先 に述 べ た 多 価 フ ェ ノ ー ル樹 脂 の場 合, 蛋 白 質 に 対 す
ホ ル ミル 化 多孔 性 樹 脂^<23)>
減 少 す る とい う結 果 が 得 られ た 。 この こ とか ら, 疎 水 性
る選 択 的 結 合 性 は高 いが,
相 互 作 用 に よ り樹 脂 に 吸着 され た 蛋 白質 が, (a), (b),
m^2g^<-1>と
小 さ い た め に, 蛋 白質 の 総 結 合 量 は100mg・
(d)
g^<-1>前
後 に とど ま る。 大 量 のサ ンプ ル を迅 速 に除 蛋 白処
【right fined circle】
の よ うな 機構 を は じめ とす る複 数 の 官 能 基 との 化
不 定 形 樹 脂 で 表 面 積 が90
215
22
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No. 3
(1986)
理 し よ うとす る と, 多 価 フ ェノ ー ル樹 脂 で は い まだ 不 十
分 な 点 が あ る。 これ を解 決 す る手 段 と して有 効 表 面 積 ・
物 理 的 強 度 が 大 き く, 圧 損 が 小 さ い とい う利 点 を有 す る
多 孔 性 材 料 を母 体 と し, これ を さ らに蛋 白質 結 合 材 料 と
して 機 能 化 して い くのが 適 当 で あ る と考 え られ る。
と ころ で, 中 性 付 近 の穏 や か な条 件 下 で蛋 白質 と速 や
か な 結 合 をす る官 能 基 と して は, ホ ル ミル基 が知 られ て
お り, これ ま で に も 固定 化 酵 素用 担 体^<24)>,
免 疫測 定 用 ラ
テ ック ス^<25)>,
ア フ ィニ テ ィ クロ マ ト用 担 体^<26)>な
どの 官能
基 と して 広 く用 い られ て きた 。 そ こ で筆 者 らは, 蛋 白質
結 合 材 料 と して, ホ ル ミル基 を有 した 多孔 性 樹 脂 の合 成
を試みた。
図12.
高 分 子 樹 脂 充 填 カ ラ ム か ら の ア ル ブ ミン の 流 出 挙 動^<23)>
カ ラ ム サ イ ズ : 5×103mm,
従 来, ホ ル ミル基 を高 分 子 樹 脂 上 に導 入す る手 法 と し
て, ア クロ レイ ン (ア ク リル ア ル デ ヒ ド) な ど の ホ ル ミ
Database Center for Life Science Online Service
ル 基 を 含 む モ ノ マ ー の重 合 に よるか, 高 分 子 反 応 を利 用
pH5.5,
0.03Mリン
液 を50μlず
充 填 材 粒 子 径44∼74μm,
酸 緩 衝 液,
30mg・ml^<-1>の
ア ル ブ ミン 溶
つ 注 入 。
□ : XAD-2,
■ : ホ ル
ミ ル 化XAD-2, ○
: HP-20,
● : ホ ル ミル 化HP-20
した ホル ミル基 の導 入 が 試 み られ て きた 。 しか し, 前 者
の 場 合 に は ホ ル ミル基 の 含量 の高 い も の は得 られ る が,
う処 理 を施 す こ とに よ り, ホ ル ミル基 を導 入 した 。 反 応
有 効 表 面 積 や 物 理 的 強 度 の小 さ い も の が 多 く, 高 能 率 の
条 件 を変 え るこ とに よ り, ホ ル ミル 基 の導 入 率 を容 易 に
蛋 白質 結 合 材 料 は得 に くい。 後 者 の 例 と して は, 多糖 類
コ ン トロー ルす る こ とが 可能 で あ る。
の 過 ヨ ウ素 酸 開 裂 に よる導 入 が知 られ て い るが^<26,27)>,
物
こ の樹 脂 を ガ ラス カ ラム に充 填 し, 蛋 白質 溶 液 を パ ル
理 的 強 度 の低 下 が著 し く, む しろ 多 孔 性 の 固 い樹 脂 に ホ
ス 的 に一 定 時 間 間 隔 で繰 り返 し流 す こ とに よ り, 除 蛋 白
ル ミル基 を導 入 す るほ うが 実 用 的 と考 え られ る。
能 の 検討 を行 な った。 これ は先 述 した よ うに, 実 際 の 臨
樹 脂 へ の ホ ル ミル 基 の 導 入方 法 と して は, ク ロ ロ メチ
ル 化 ポ リス チ レ ンをDMSO中NaHCO_3の
熱 処 理 をす る^<28)>か,あ るい はp-ヒ
床 検 査 で サ ンプ ル が や は りパ ル ス 的 に 注 入 さ れ るこ と,
存在下 で加
さ らに, 蛋 白質 溶液 の パ ル スの 間 に, カ ラム に流 入す る
ドロキ シベ ン ズ アル
緩 衝 液 に よ って カ ラ ムが 常 に洗 浄 さ れ る形 とな り, 従 来
デ ヒ ドと共 役 させ る^<29)>方
法 が こ れ ま で に 報告 され て い る
の 先 端 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー^<31)>に
み ら れ る可 逆 的 な結 合 で
が, い ず れ も煩 雑 で あ る。 筆 者 らは
は な く, 不 可 逆 な蛋 白質 結 合 の み を と り出 して解 析 が で
Friedel-Crafts 反
応 を 用 い て, 従 来 法 よ りも容 易 に 多孔 性 樹 脂 中 に ホ ル ミ
き る とい う理 由 か らで あ る。 図12に
ル基 を導 入 す る こ とに よ り, 高 活 性 で 高 能 率 の蛋 白 質 結
20に
合 樹 脂 を得 る こ とが で きた 。
の の 両者 に つ い て, ウ シ血 清 アル ブ ミンを 注 入 しだ場 合
こ こ で用 いた 蛋 白質 結 合樹 脂 の母 体 は 多 孔 性 の ス チ レ
はXAD-2,
HP-
つ い て未 修飾 の もの と, ホ ル ミル 化 を 行 な った も
の結 果 を 示 した 。XAD-2は,
蛋 白質 結 合 能 を 示 し, 医
ンージ ビニ ル ベ ンゼ ン共 重 合体 で あ る。 あ らか じめ 種 々
用 材 料 と して の 検 討 も行 なわ れ てい るが^<32)>,
そ の 結 合能
の孔 径 を有 す る シ リカ ゲル を 用 い た 実験 か ら蛋 白質 の 吸
は, 先 述 した よ うにHP-20に
着 結 合 効 率 は300∼1000Å
HP-20に
の 孔 径 を もつ も のが 高 い と
の知 見 を 得 て い た 。 実 際 に,
は るか に 及 ぼ な い 。 この
ホル ミル 基 を 導 入 す る こ とに よ り, 結 合 能 は
スチ レンージ ビ ニル ベ ンゼ
さ らに 増 加 す る。 ホル ミル 化 樹 脂 に 結 合 され た蛋 白質 は
ン共 重 合 体 の 多 孔 性 樹 脂 に つ い て 検 討 してみ る と, 孔 径
酸, ア ル カ リ, 尿 素 や 界 面 活 性 剤 な ど に よ る洗 浄 で は ま
90Å
の Amberlite
50で
は 蛋 白質 結 合 量 は小 さ く, 三 菱 化 成HP-20
1000Å)
XAD-2や2000Å
の三 菱 化 成HP(孔径
の も のが 良 好 な結 果 を示 した 。 そ こ で, HP-20
を 温 メ タ ノ ール 中 で撹 伴,
濾 過 を 数 回 繰 り返 した の ち
に, 真 空 乾燥 した もの を Gross らが 低 分 子 ア ル デ ヒ ド合
成 の際 に用 いた 手 法^<30)>に
よ り, 塩 化 メチ レ ン中 でAlCl_3
った く溶 出 せ ず, きわ め て強 固 に結 合 し て い る。 これ
に 対 して ブ ドウ糖, 尿 素, 尿 酸 な ど はFA-HQ樹
脂の
場 合 と同 様 に, 定 量 的 に カ ラ ムか ら流 出 す る こ とか ら,
こ こ で検 討 した 樹 脂 の除 蛋 白剤 と して の有 用 性 が 示 され
た。
一 方 , 蛋 白質 (こ こで は ウ シ血 清 アル ブ ミン) の等 電 点
を 触 媒 と して ジ ク ロ ロメ チ ル メチ ル エ ー テ ル と 反 応 さ
(4.7∼4.9)^<33)>よ
りも少 し高pH側
せ, 引 き続 き これ に希 塩 酸 を滴 下 して撹拌 を行 な うと い
とな り, 樹 脂 と蛋 白質 間 の疎 水 性 相 互 作 用 の寄 与 も大 き
216
(5.5) で 結 合 能 が 最 大
検体か らの蛋 白質 の分離除去
23
い こ とが 示 唆 され た 。 しか し, 通 常 の 疎 水 吸 着 の場 合 に
はpHを
変 化 させ る こ とに よ り担 体 か ら溶 離 す る こ とか
ら^<34,35)>,
こ こで み られ る強 固 な 結 合 は 疎 水 性 相 互 作 用 に
よ り, 樹 脂 上 に吸 着 した 蛋 白質 分 子 中 に 遊 離 の形 で残 っ
て い る ア ミノ基 と, 樹 脂 上 の ホル ミル 基 と の間 に Schiff
塩 基 が 形 成 され て い るた め と理 解 され る。 一 般 に, 低 分
子 化 合 物 間 の Schiff 塩基 は そ れ ほ ど強 固 では な いが,
蛋 白質-高 分 子 担 体 間 で は両 者 の間 に 複 数 の Schiff 塩基
図13.
カ ラ ム のj番
目領 域 で の 物 質 収 支^<23)>
が 形 成 され, 両 者 が 非 常 に 接 近 す るた め, そ の間 に あ る
Schiff 塩 基 が バ ル ク中 の 不 安 定 因 子 か ら遮 へ い 保 護 され
る形 とな り, 飛 躍 的 に安 定 性 が 増 す と考 え られ る。また,
ホ ル ミル基 の導 入 率 を 増 す と, い った ん 結 合 能 が 増 加 す
るが, 一 方, 樹 脂 自身 の親 水 度 が 増 加 す る こ とに よ っ て,
高 い導 入 率 の場 合, か え って 結 合 能 が 低 下 す る とい う結
Database Center for Life Science Online Service
果 も得 られ, 疎 水 性 相 互 作 用 の 重 要 性 を 示 して い る。
とこ ろ で, パ ル ス で蛋 白質 溶 液 を カ ラ ムに 注 入 し, そ
の溶 出挙 動 をみ る とい うこ とは, す で に 述 べ た よ うに蛋
白質 の不 可 逆 結 合 を調 査 してい る こ と にな る^<36)>。
このス
テ ップ は,
P+S^^k→P・S
(1)
とい う反 応 式 で簡 単 に 表 現 で き る。 こ こでPは 蛋 白質 分
子, Sは 結 合部 位 を表 わ す 。 い ま, 流 出 ピ ー クの 半 値 幅
⊿V
(ml) を カ ラ ム内 で の蛋 白質 溶 液 の 体 積 と し, 一 定 体
積 で, 一 定 濃 度 の蛋 白質 溶 液 が カ ラ ムを 通 過 す る と仮 定
す る。 た とえ ば, 濃 度C
(mg・ml^<-1>),
体 積⊿V(ml)
白質 溶 液 が カ ラ ム 内 の微 小 区 間⊿xを
結 合 量 を考 え てみ る。 総 量W(g)
ラ ムをm個
の蛋
通 過 す る場 合 の
の樹 脂 を 充 填 した カ
に 分 割 し, そ のj番
目の 位 置 をi回
目に 注
入 した 蛋 白質 溶 液 が 通 過 す る場 合, 通 過 前 の 蛋 白質 濃 度
図14.
をC(i, j-1),
す で にj番
質 量 をQ(i-1, j),
表 わ す (図13)。
目の部 位 に結 合 して い る蛋 白
新 た に結 合 した 蛋 白質 量 をq(i, j) で
一 定濃 度 の 蛋 白質 溶液 が 微 小 区 間⊿x
を 通 過 す る と仮 定 した の で, そ の 間 の⊿xに
カ ラ ム : HP-20
ン 酸 緩 衝 液,
15mg・ml^<-1)>の
55.5×4.7mm,
pH5.5リ
ア ル ブ ミン 溶 液 を50μlず
つ
注 入 。
(a) ---
お け る蛋
白質 濃 度 は 一 定 とな り, 結 合 速 度 式 は単 純 に 式 (2)
流 出 曲 線 と 計 算 曲 線 と の 比 較^<36)>
(44∼74μm)
(b)---
: q_e=252mg/g-樹
脂, k=0.002ml・mg^<-1>・s^<-1>,・- : q_<e1>=152, q_<e2>=100 , k_1=0.003, k_2=0.0004
: q_<e1>=22, q_<e2>=130, q_<e3>=100,
0.0027,
k_1=0.05,
k_2=
k_3=0.00045
の よ うに な る (q_e: 最 大 結 合 量mg・g^<-1>)。
dq/dt=kC(q_e-q) (2)
蛋 白質 溶 液 が⊿xを 通 過 す るの に 要 す る時 間 を⊿t(S)
とす る と, そ の 間 に 結合 す る蛋 白質 量⊿q(mg・g^<-1>) は
次式
⊿q
=(q_e-q_0){1-exp(-kC⊿t)}
で与 え られ る (t=0の
ときq=q_0)。
∼(6) が 導 か れ る (ω=W/m,
(3)
した が っ て, 式 (4)
C_0 : カ ラ ム入 口濃 度)。
式 (5)
に お い てj=mと
濃:度で あ り, 注 入 回 数iに
した ときが カ ラム か らの 流 出
対 し, C(i, m)/C_0を プ ロ ッ ト
す るこ とに よ り蛋 白 質 の カ ラ ムか ら の流 出 曲線 が得 られ
る。
q(i, j)={q_e-Q(i-1, j)}{1-exp(-kC(i,j-1)⊿t)}
(4)
実 際 の 多孔 性樹 脂 に は, 蛋 白質 の樹 脂 内部 へ の拡 散 の
217
24
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
く,
No. 3
(1986)
そ れ そ れ1.0×10^<-9>,
S_1が 境 膜 拡 散S_2とS_3が
2.2×10^<-10>cm^2・s^<-1>とな り,
孔 内拡 散 で あ るこ とを裏 づ け
た^<37)>。
同 様 に ホ ル ミル 基 を 有 す る樹 脂 に つ い て の 結 果 を
図15に
示 し た 。 ホ ル ミル 基 を 導 入 す る こ と に よ り, k
で は な く, 蛋 白 質 が 入 り込 め る 樹 脂 内 の マ ク ロ ポ ア 領 域
の 結 合 容 量q_<e2>が 大 幅 に 増 加 し,
この こ とが 高 能 率 樹 脂
の理 由 とな っ て い る こ とが わ か る。
お わ りに
以 上, 除 蛋 白法 のい くつ か につ い て述 べ て
き た。 限 外 濾 過 膜 や 蛋 白質 結 合 樹 脂 な ど, いわ ゆ る機 能
性 高 分 子 材 料 といわ れ る分 野 の進 歩 は 日進 月歩 で あ り,
本 稿 を書 く間 に も, よ り コ ンパ ク トで高 能 率 の除 蛋 白用
キ ッ トが 生 まれ て い る で あ ろ う。 除 蛋 白用 材 料 は これ ま
Database Center for Life Science Online Service
で述 べ て き た 臨床 検 査 用 材料 や高 速 液 ク ロ用 プ レ カ ラム
材料 へ の応 用 の み な らず, 産 業廃 水 の処 理, 放 射 性 同 位
元 素 廃 水 の前 処 理 (同位 体 吸着 用 活 性 炭 は蛋 白質 に よ り
著 し く妨 害 を受 け る), 固 定化 酵 素担 体,
ま た一 方,
清
酒 ・ビー ル な ど食 品 の に ご り防 止^<38)>な
ど, 今 後 さ らに 幅
影 響 に よ っ て3種 類 のkを もつ それ ぞれ 独 立 した 結 合 部
広 い分 野 で の応 用 が期 待 され る。
位 が あ る, と仮 定 す る と, 実 験 結 果 を十 分 説 明す る こ と
が で き る。 これ らの 結 合部 位 と して は, 樹 脂 表 面 付 近 に
- : q_<e1>=22,
q_<e2>=214,
k_1=0.05,k_2=0.0027,
k_3=0.00045ml・mg^<-1>・s^<-1>
文
献
存 在 す る迅
速 な結 合 部 位q_<e3>=135mg/g^-樹脂,
(S_1), 樹 脂 内部 の マ ク ロポ
ア
中 の 結 合 部 位 (S_2), ミク ロポ ア中 の 結 合 部 位 (S_3) の3
つ を 想 定 す る こ とが で き よ う。 あ るい は, 細 孔 内 に 結 合
した 蛋 白質 分 子 の 影 響 で, 細 孔 半 径 が 結 合 の 進 行 と と も
に 小 さ くな る こ とを 考慮 に い れ る と^<40)>,
細孔半径が小 さ
い ほ ど, また 樹 脂 内部 に い くほ ど蛋 白質 分 子 の 拡 散 は 著
し く阻 害 を 受け る こ とに な り, この こ とか ら樹 脂 内 部 の
結 合 速 度 を 見 か け上,
2つ に 区 別 す る 必 要 が 起 こっ た と
も考 え られ る。 実 際 に母 体 で あ るHP-20へ
1)
斉 藤 正 行 ・丹 羽 正 治 編 : 臨 床 化 学, 講 談 社 サ イ エ
ンテ ィ フ ィ ク (1975)
2)
「臨 床 検 査, 臨 時 増 刊, 酵 素 に よ る臨 床 化 学 分 析 」
医 学 書 院 (1978)
3) a北 野 博 巳 : 化 学 増 刊 バ イ オ メデ ィ カル ポ リ マ ー
(今西 幸 男 ・高 倉 孝 一 ・丹 沢
宏 編),
p. 113.
化
学 同 人 (1980)
b 村地 孝 : 酵素工学 (福井三郎・千畑一郎・鈴木周一編), p. 411, 東京化学
の疎 水 吸着
c
吸着 した蛋 白質 はpHを
た 結果 を 図14に
示 した が, S_1の み,
あ るい はS_1+S_2
らは
多 孔 性 イオ ン交 換 樹 脂 へ の ア ル ブ ミンの 吸着 速 度 を粒 子
外 部 の 境 膜 拡 散 と, 粒 子 内部 の孔 内拡 散 の2つ に分 け た
phase
resistance model
に よ り説 明 し てい るが^<37)>,
実 際 に 筆 者 らが 得 た 流 出 曲線 の解 釈 に は これ だ け で は不
最 適 化 に よ り算 出 した3つ
の結 合 部 位S_1, S_2,S_3の も
つ 結 合 速 度 定 数k_1, k_2, k_3は,
バ ッチ 法 で の結 合 量 の 時 間
依 存 性 か ら求 め た 値 と よ く一 致 して お り, か つ 先 に 述 べ
た Graharn
らの 式 に 従 って 求 め た拡 散 定 数 はS_1領 域 で
5×10^<-7>cm^2・s^<-1>,
S_2,S_3領域 は これ に 比 べ2桁 以 上 小 さ
218
7)
8)
(1985)
十 分 で あ った 。
O. Folin, H. Wu
(1919)
:J. Biol. Chem., 38, 81
6) a桜 井 靖 久 : バ イ オ マ テ リアル サ イ エ ン ス 第2集
医学書院
two
臨床検査9月号,
と した場 合 に は よ い一 致 は示 して い な い。Graham
医用セン5
サ)
ー,
(先 述 した よ うに, 中性pHで
変 え な け れ ば 不 可 逆 的 に吸 着 して い る) につ い て行 な っ
9)
10)
11)
(鶴 田禎 二 ・桜 井 靖 久 編), p. 209, 南 江 堂 (1982)
b血 液 浄 化 法, 日本 臨 床8月 号, 日本 臨 床 社 (1984)
菅 野 剛 史 : 第22回
医 用 高 分 子 研 究 会 予 稿 集,
p. 1 (1985)
M. E. Miller, C. J. Cappon : Clin. Chem., 30,
781 (1984)
M. J. Kelner,
N. M. Alexander : Clin. Chem.,
31, 112 (1985)
W. Roth, K. Beschke, R. Jauch, A. Zimmer,
F. W. Koss : J. Chromatogr.,
222, 13 (1981)
T. Arvidsson,
K-G. Wahlund,
N. Daoud : J.
Chromatogr.,
317, 213 (1984)
25
検体か らの蛋白質の分離除去
12)
H.
Yoshida,
Imai
I.
: Chem.
Morita,
T.
Pharm.
Masujima,
Bull.,
30,
20,
H.
3827
27)
(1982)
13) •½ˆä—m•½•E’†‘º•Ÿ‘¥•E–k–씎–¤•EˆÉ•¨“T•v : ‘æ31‰ñ•‚•ªŽqŒ¤‹†‰ï (•_ŒË), —\•e•W, p
. 11
14)
J. Turkova
: Affinity
vier,Amsterdam
15)
H.
16)
T.
Else
29)
(1978)
Negoro
: J.
Ferment.
Technol.,
48,
sa,I.
M,
Chibata
Fujimura,
: J.
T.
Appl.
Mori,
T.
Biochem.,
To
1,
28
31)
H.
Frechet,
93,
Kitano,
K.
Nakajima,
N.
Nakamura,
Ise
S. Yoshijima,
: J.
Appl.
4,
239
Enzymol.,
C. Schuerch
492
21,
191
F.
Chem.,
Gross,
308
C.
Bailey
A.
12,
Am.
: J.
2141
Chem.
Rieche,
Polym.
Soc.,
(1974)
G.
Matthey
: Chem.
Ber.,
(1963)
aŠ}ˆäŒ£ˆê : ‰»Šw‚Æ•H‹Æ,
N.
: J.
(1971)
Gibson,
H.
37,
Kuramoto,
T.
H.
Biochem.,
W.
96,
b
(1979)
17)
J. M.
H.
30)
Watanabe,
: Methods
Soc.,
Polym.
689
(1970)
(1971)
Goldstein
(1971)
28)
(1985)
Chromatography,
1061
L.
Iijima
M.
: J.
Appl.
294
(1984)
Sakamoto,
Polym.
J.
Sci.,
30,
Komiyama,
2847
(1985)
32) •Ä“¡–ÎŽ÷•E‘••â—E‘¾˜Y•Eˆ¢ŠÝ“SŽO•EŠ‹•¼•_”ü•E•]—ǘa—Y•E•‚•¼Œö‘¾•E“ŒŠÔ •h•E‘¾“c˜a•v : •l•H‘ŸŠí,
(1982)
18)
K.
Nakamura,
Y.
Biochem.,
19)
G.
7,
Manecke,
Chem.,
20)
M.
23
Database Center for Life Science Online Service
309
2144
22)
10,
Appl.
: Angew.
Makromol.
34)
Kennedy
: J.
Chem.
35)
G.
Davis,
Chem.
T.
Soc.,
H.
Lilley,
Chem.
Commun.,
T.
Mizutani,
67,
1102
A.
Mizutani
: J.
Pharm.
R.
J.,
122,
B.
1010
W.
93
A.
Williamson
: Biochem.
: Ann.
N.
Y.
Acad.
Sci.,
(1977)
J. Dillman,
Jr.,
44,
36)
K.
Nakamura
37)
E.
E.
Sci.,
R.
(1971)
Morrissey
50
W.
(1981)
Sallaman,
terfaceSci.,
E.
(1981)
M.
28,
Soc.,
(1979)
K.
: J.
: J.
33)
Beier
J. F.
J. P. McManus,
Halsman
Kitano
(1981)
Chaplin,
Perkin I,
21)
H.
(1985)
W.
97,
F.
Hirai,
145
I. F.
221
Miller
: J.
Colloid
In
(1973)
: ”-•\•€”õ’†
Graham,
C.
F.
Fook
: AIChE
J.,
28,
245
(1982)
38) •ç”¨ˆê˜Y•E“y•²“N–ç•E•X •F•v•E“n•Ó‘׎O : –{Ž•, •Ê•û No. 22, ƒAƒtƒBƒjƒeƒBƒNƒ•ƒ}ƒg‚ƃAƒtƒBƒjƒeƒBƒ‰ƒx
(1978)
23) •½ˆä—m•½•E’†‘º•Ÿ‘¥•E–k–씎–¤ : “ú‰»Ž•,
1042
(1985)
24)
E.
Brown,
1961
25)
26)
S.
Margel,
13,
19
C.
R.
Joyeau
: Makromol.
Chem.,
(1974)
J.
A.
Rembaum
D.
V.
39)
J.
Ruzcika,
40)
Md.
E.
H.
Hansen
: ƒtƒ••[ƒCƒWƒFƒNƒVƒ‡ƒ“•ª•Í–@ (•Î‹´•M•F•E—^•À”Í•-–
(1983)
: Macromolecules,
(1980)
Sanderson,
(1980)
175,
Wilson
: Immunology,
eng.,27,
M.
Hossain,
1126
D.
D.
Do
: Biotechnol.
Bio
(1985)
219
Fly UP