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確率・確率変数
1 第1章 確率・確率変数 1.1 条件付確率 確率の定義 B が起こる確率 (P (B) 6= 0) のうち,A が起こる確 Laplace(ラプラス) の定義 率 (条件付確率) は 平等に確からしい結果 N 通りに対し,A の起こり 方が n 通りのとき,A の起こる確率 P (A) は P (A) = n N P (A ∩ B) P (B) で与えられる. 和の法則・積の法則 で与えられる. 例1 P (A|B) = サイコロを2つ投げて出た目の合計が 10 以上で Kolmogorov の確率の公理・条件付確率から以下の性質 が成り立つ. ある確率を求めよ. ♦ A ∩ B = φ ⇒ P (A ∪ B) = P (A) + P (B) 解 一般には 1 6 = 36 6 ♦ P (A ∪ B) = P (A) + P (B) − P (A ∩ B) 例2 トランプのポーカーで,1回のカード配りでロイ ♦ P (A ∩ B) = P (B)P (A|B) ヤルストレートフラッシュが出る確率を求めよ. B が A の起こり方に影響せず P (A|B) = P (A) 解 ならば A と B は独立であるといい, 4 4 = C 2598960 52 5 1.2 ♦ P (A ∩ B) = P (A)P (B) 事象と確率 Kolmogorov(コルモゴロフ) の確率の公理 (a) すべての事象 A に対し 0 ≤ P (A) ≤ 1 (b) P (Ω) = 1 (Ω : すべて可能な結果の集合) 例3 サイコロを2つ投げて出た目の合計が 10 以上で あるという条件下で,偶数である確率を求めよ. 解 P (B) = {10 以上である確率 } = 1 , 6 P (A ∩ B) = { 偶数かつ 10 以上である確率 } = (c) 互いに排反な事象 A1 , A2 , A3 , · · · に対して P Ã∞ [ i=1 ! Ai = ∞ X i=1 よって求める確率は P (Ai ) P (A|B) = P (A ∩ B) 2 = P (B) 3 1 9 2 第 1 章 確率・確率変数 1.3 1.4.3 分散・標準偏差 確率変数 分散とは,確率の各値のばらつきを表すもので, 変数 X の各値にその確率が合わさっている場合,X を V (X) = E[(X − µ)2 ] 確率変数といい,確率の集まりを確率分布という.確率 分布には大きく分けて離散型確率分布と連続型確率分布 で与えられる.各値と平均 (期待値) との差を平方する がある.離散型確率分布とは,コインをトスした時の裏 ことで,ばらつき度を強調している.また,分散の平方 か表かや,サイコロを投げたときの1∼6というバラバ 根を標準偏差といい, ラの値のもので,連続型確率分布とは,利回りなど,値 D(X) = p V (X) がなんらかの関数に従い連続的に存在するものである. 各分布について詳しくは第2章で扱う. と表す.分散と違い,ばらつきの尺度をそのまま表して P (·) を · が起こる確率という意味で扱い,確率変数の値 いる. を小文字の x などで表す.例えば P (X = x) は,X = x である確率,P (X ≥ 0) は,X ≥ 0 である確率を表す. 注意 確率変数は大文字 X, Y, · · · で記す. 1.4 ◦ 離散型 V (X) = ◦ 連続型 x Z ∞ V (X) = 期待値・分散・標準偏差 1.4.1 X (x − µ)2 f (x) (x − µ)2 f (x)dx −∞ 1.4.4 分散の性質 期待値 分散について次の性質が成り立つ.(c ∈ R) 期待値とは, (確率変数の値 x) × (その確率 f (x)) の和 (a) V (X + c) = V (X) (b) V (cX) = c2 V (X) である.この和を E(X) と記し,X の確率論的期待値 (c) V (c) = 0 という.離散型確率変数では一つ一つの値が決まってい (d) V (X) = E(X 2 ) − {E(X)}2 るため全部足せばいいが,連続型確率変数ではどんな値 もとり得るので,確率関数 (確率密度関数)f (x) を積分 することで,範囲の確率を求める. ◦ 離散型 E(X) = ◦ 連続型 X ◦ 離散型 V (X) = xf (x) ◦ 連続型 x Z X x2 f (x) − µ2 x Z ∞ V (X) = ∞ x2 f (x)dx − µ2 −∞ xf (x)dx E(X) = −∞ 1.4.2 また,性質 (d) より 期待値の性質 期待値について次の性質が成り立つ.(c ∈ R) を計算すればいいことがわかる. 注意 これ以降,分散 V (X) を σ 2 ,標準偏差 D(X) を σ で書くことがある. (a) E(X + c) = E(X) + c (b) E(cX) = cE(X) 補足 (c) E(c) = c 期待値・分散について,確率変数 X と Y が独立である (d) E(X + Y ) = E(X) + E(Y ) とき以下が成り立つ. 注意1 これ以降,期待値 E(X) を µ で書くことが ある. 注意2 確率密度関数を pdf(probability density func- tion) と書くことがある. (a) E(XY ) = E(X)E(Y ) (b) V (X + Y ) = V (X) + V (Y ) 3 第 1 章 確率・確率変数 1.5 よって Chebyshev の不等式 P (| X − µ |≥ kσ) ≤ Chebyshev(チェビチェフ) の不等式 確率変数 X の平均を µ,分散を σ 2 ,標準偏差を またこれより σ としたとき,すべての k > 0 に対して次が成り P (| X − µ |< kσ) ≥ 1 − 立つ. ° P (| X − µ |≥ kσ) ≤ 1 k2 1 k2 例4 ある確率変数に対して,期待値 µ = 0.5,標準偏 もしくは 差 σ = 0.15 であるとする.X が 0.5 ± 0.3 に入 ° P (| X − µ |< kσ) ≥ 1 − る確率はどのくらいか. 1 k2 解 1 k2 期待値µから標準偏差σ の k 倍以上の確率は Chebyshev の不等式に µ, σ の値を代入してみ ると 1 以下である. k2 期待値µから標準偏差σ の k 倍より内の確率は 1 1 − 2 以上である. k P (| 0.2 ≤ X ≤ 0.8 |) = P (| X − 0.5 |< 2 × 0.15) より k=2 であることがわかる.よって P (| X − 0.5 |< 2 × 0.15) ≥ 1 − 証明 1 = 0.75 22 となるため,75 %以上であることがわかる. | X − µ |< kσ が成り立つ範囲と,| X − µ |≥ kσ が成 り立つ範囲に分けて考える. I1 =(−∞, µ − kσ] I2 =(µ − kσ, µ + kσ) 補足 Chebyshev の不等式は kσ = ε とおいた ° P (| X − µ |≥ ε) ≤ I3 =[µ + kσ, ∞) ε2 k2 ° P (| X − µ |< ε) ≥ 1 − とし,X の確率密度関数を f (x) とすると Z 2 の形の方がよく使われる. ∞ σ = −∞ µZ = 2 (x − µ) f (x)dx Z Z ¶ + + (x − µ)2 f (x)dx I1 I2 I3 と表せる.I1 , I3 で | X − µ |≥ kσ であり,各積分が負 になることはないので, µZ 2 Z Z ¶ + (x − µ)2 f (x)dx I3 µZ Z ¶ ≥ + (x − µ)2 f (x)dx I1 I3 µZ Z ¶ ≥k 2 σ 2 + f (x)dx σ = + I1 I2 I1 I3 =k 2 σ 2 P (| X − µ |≥ kσ) ε2 k2 4 第 1 章 確率・確率変数 第1章 演習問題 1. トランプのカード 52 枚の中から,ランダムに 5 枚のカードを取るとき,以下の確率を求めよ. (i)♥ も ♠ も含まれない確率 (ii)♥ か ♠ が含まれる確率 (iii)♥ も ♠ も含まれる確率 2. A, B, C を任意の事象とするとき P (A ∪ B ∪ C) = P (A) + P (B) + P (C) − P (A ∩ B) − P (B ∩ C) − P (C ∩ A) + P (A ∩ B ∩ C) を示せ. 3. 確率変数 X のとり得る値を x1 , x2 , · · · , xn とし、それぞれの確率を p(x1 ), p(x2 ), · · · , p(xn ) とすると, Y = (X − 1)2 の期待値 E(Y ) を求めよ.ただし E(X) = µ, V (X) = σ 2 とする. 4. 次の離散型確率変数 X についての期待値と分散の性質を示せ. (i)V (X) = E(X 2 ) − E(X)2 (ii)V (aX + b) = a2 V (X) (∀a, b ∈ R) 5. 次の連続型確率変数 X についての期待値と分散の性質を示せ. (i)V (X) = E(X 2 ) − E(X)2 (ii)V (aX + b) = a2 V (X) (∀a, b ∈ R) 6. X を連続型の確率変数とし、その確率密度関数を f (x) とする。次の確率変数たちも連続型になるが、その確 率密度関数 g(x) を f (x) を用いて表せ. (i) 2X − 5 (ii) X 2 (iii) X 3 √ (v) e2X (v) log X (vi) X 7. X の確率密度関数を f (x) = 6x(1 − x) , 0 < x < 1 とするとき,P (µ − 2σ < X < µ + 2σ) を求めよ. 8. X を平均が µ,標準偏差が σ の確率変数とし,Z = P (|Z| ≥ z) ≤ 0.5 が成立する Z の最大値を求めよ. X −µ とおく. σ 5 第2章 確率分布 2.1 2.2 いろいろな確率分布 分布関数 Brown(ブラウン) 運動 (Wiener(ウィーナー) 過程) はラ 確率変数 X が離散型確率変数または連続型確率変数の ンダム性を含む様々な変化の過程を表すが,その確率分 とき 布は連続型で正規分布といわれる.Poisson(ポアソン) 過程と呼ばれる事象の生起回数をカウントしていく過 程の確率分布は離散型で,Poisson 分布といわれる.そ F (x) = P (X ≤ x) = の Poisson 分布は同じ離散型の Bernoulli(ベルヌーイ) 分布・二項分布から導かれる.事象の生起時間を表すこ X f (xi ) xi ≤x Z X が離散型 x f (t)dt X が連続型 −∞ で定義される関数 F (x) を X の分布関数という. とに役立つ連続型の確率分布は指数分布といわれる.こ のように,離散型と連続型,また使い道によって多種多 様な確率分布がある.この章では離散型と連続型に分け 分布関数の性質 分布関数について次の性質が成り立つ.(∀a, b ∈ R) て,一つずつ簡単に説明していく.扱う分布は以下 離散型確率分布 連続型確率分布 . Bernoulli 分布 . 一様分布 . 二項分布 . 正規分布 . 三項分布 . 指数分布 . 多項分布 . Cauchy 分布 . 幾何分布 . ガンマ分布 (a) P (a < X ≤ b) = F (b) − F (a) (b) P (a ≤ X ≤ b) = F (b) − F (a) + f (a) (c) P (a ≤ X < b) = F (b) − F (a) + f (a) − f (b) (d) P (a < X < b) = F (b) − F (a) − f (b) ただし,f (x) は X の確率関数とする. 例1 連続型確率変数 X の確率密度関数を 3x2 2 . 超幾何分布 .χ 分布 . 負の二項分布 . ベータ分布 f (x) = . Poisson 分布 ここで注意したいのが,連続型確率分布ではある一点で 0 0<x<1 それ以外 とする. (i) 分布関数 F (x) を求めよ. µ ¶ (ii) P 長さ (2次元では面積,3次元では体積,· · · ) を考える 1 1 <X≤ を求めよ. 3 2 1 (iii) P (X ≤ a) = となる a の値を求めよ. 4 (iv) E(X), V (X) を求めよ. が,その長さを持つ集合とは何か.また,その区間での 解 積分はどうやって定義されるのか.ということについて (i) の確率を考えると,確率 0 となってしまうため,ある区 間での確率を求めることになる.ある区間として集合の 論じるものが Lebesgue(ルべーグ) 積分論である.今日 の確率論のほとんどすべては Lebesgue 積分論に基づい ていることから,第3章で簡単にふれておく. Z x F (x) = 3t2 dt = x3 µ ¶ µ ¶0 1 19 1 (ii) F −F = 2 3 216 √ 3 1 2 . . .a = (iii) P (X ≤ a) = F (a) = a = 4 2 3 6 第 2 章 確率分布 Z (iv) E(X) = 1 0 Z 3x3 dx = 1 3 4 2.3.3 三項分布 3 3x dx = E(X ) = よって 5 0 µ ¶2 3 3 3 V (X) = − = 5 4 80 4 2 ある集団で特性 A1 を持つ割合を p1 ,特性 A2 を持つ割 合を p2 ,特性 A3 を持つ割合を p3 とし,p1 + p2 + p3 = 1 とする.この集団から n 個とり出しだとき,特性 A1 , A2 , A3 を持つ標本の確率変数を X1 , X2 , X3 とする と,確率関数は 2.3 離散型確率変数 P (X1 = k1 , X2 = k2 , X3 = k3 ) = n! pk1 pk2 pk3 k1 !k2 !k3 ! 1 2 3 離散型確率変数は加算個の値をとる確率変数であり,確 率変数から分布関数を求めることができる.平均・分散 で表される. については紹介程度にしておき,計算は章末の演習問題 平均・分散 で扱う. E(Xi ) = npi (i = 1, 2, 3) V (Xi ) = npi (1 − pi ) (i = 1, 2, 3) 2.3.1 Bernoulli 分布 ある集団で特性 A を持つか持たないかだけを考える. 2.3.4 多項分布 特性 A を持つ割合を p,持たない割合を 1 − p とすると ある集団で特性 A1 を持つ割合を p1 ,特性 A2 を持 確率変数 X は つ割合を p2 ,· · · ,特性 AN を持つ割合を pN とし, ½ X= よって ½ P (X = k) = 0 A が起きないとき 1 A が起きるとき p1 + p2 + · · · , pN = 1 とする.この集団から n 個とり 出しだとき,特性 A1 , A2 , · · · , AN を持つ標本の確率変 数を X1 , X2 , · · · , XN とすると,確率関数は 1 − p (k = 0) p (k = 1) となる.このような試行を Bernoulli 試行といい,この 分布関数を Bernoulli 分布という. P (X1 = k1 , X2 = k2 , · · · , XN = kN ) n! = pk1 pk2 · · · pkNN k1 !k2 ! · · · kN ! 1 2 で表される. 2.3.2 平均・分散 二項分布 Bernoulli 試行を n 回独立して繰り返す試行を考える. E(Xi ) = npi (i = 1, 2, · · · , N ) ある集団で特性 A を持つ割合を p,持たない割合を 1−p V (Xi ) = npi (1 − pi ) (i = 1, 2, · · · , N ) とし,この集団から n 個とり出しだとき,特性 A を持 つ標本の確率変数を X とすると,確率関数は µ P (X = k) = n k 2.3.5 幾何分布 Bernoulli 試行において,特性 A が初めて起きるまでの ¶ k p (1 − p) n−k 試行回数の確率変数を X とする.特性 A を持つ割合を p,持たない割合を 1 − p とすると確率関数は, で表され,分布関数は F (X = x) = x X k=0 ¶ x µ X n P (X = k) = pk (1 − p)n−k k k=0 で表される. 平均・分散 E(X) = np, V (X) = np(1 − p) P (X = x) = (1 − p)x−1 p x ∈ N で表される. 平均・分散 E(X) = 1−p 1−p , V (X) = p p2 7 第 2 章 確率分布 2.3.6 超幾何分布 グラフ N 個の母集団で,そのうち M 個が特性 A を持つとす る.この母集団から n 個を取り出したとき,特性 A を 持つ標本の個数の確率変数を X とすると,確率関数は µ P (X = k) = M k ¶µ N −M n−k µ ¶ N n ¶ 2項分布 で表され,分布関数は F (X = x) = x X P (X = k) k=0 で表される. 平均・分散 M N µ ¶µ ¶ M M N −n V (X) = n 1− N N N −1 E(X) = n 多項分布 補足 M を特性 A がある割合 p とすると, N µ ¶ N −n E(X) = np, V (X) = np(1 − p) N −1 上で, で表される. 2.3.7 幾何分布 負の二項分布 Bernoulli 試行において,特性 A が m 回あるまでに A が起きなかった試行回数の確率変数を X とすると確率 関数は, à P (X = x) = k+m−1 k ! pm (1 − p)k (k = 0, 1, 2, · · · ) 超幾何分布 で表される. 平均・分散 E(X) = k p p , V (X) = k 1−p (1 − p)2 2.3.8 Poisson 分布 パラメータ λ のポアソン分布に従う確率変数を X とし たとき,確率関数は P (X = k) = 負の二項分布 λk −λ e k! で表される. 平均・分散 E(X) = λ, V (X) = λ Poisson 分布 8 第 2 章 確率分布 2.4 平均・分散 連続型確率変数 1 1 , V (X) = 2 λ λ E(X) = ある区間の任意の値を取ることができる確率変数.連続 型確率変数は各点で確率密度が定義されている.分布関 2.4.4 Cauchy 分布 数が表されれば確率密度関数を求めることができる.平 パラメータ m, c (m ∈ R , c > 0) に従う Cauchy(コー 均・分散については紹介程度にしておき,計算は章末の シー) 分布の確率密度関数は 演習問題で扱う. f (X = x) = 2.4.1 1 c 2 π c + (x − m)2 一様分布 区間 [a, b] 上である一点 c(a ≤ c ≤ b) の確率を考える で表される. と,[a, b] 上には無限個の点があるので,一点での確率 は 0 になる.よって区間での確率を考えなければならな 積率が存在しないため,期待値・分散は存在しない. い.まず各点での確率変数 X は ½ 2.4.5 ガンマ分布 A が起きないとき パラメータ p に従うガンマ分布の確率密度関数は A が起きるとき 1 p p−1 −αx であり,Aが区間 [a, b] 上の点 c で起きるとすると, f (X = x) = α x e (x > 0) Γ(p) 確率密度関数は Z ∞ ½ (b − a)−1 a ≤ x ≤ b Γ(a) = xa−1 e−x dx (a > 0) f (x) = 0 0 その他 で表される. p = 1 の場合は指数分布である. で与えられる. X= 0 1 平均・分散 平均・分散 2.4.2 λ λ , V (X) = 2 α α E(X) = 1 1 E(X) = , V (X) = 2 12 2.4.6 χ2 分布 正規分布 自由度 φ = n に従う χ2 (カイ2乗)分布の確率密度関 正規分布に従う確率変数 X の確率密度関数は · f (X = x) = √ 2 1 (x − µ) exp − 2σ 2 2πσ ¸ 数は f (X = x) = n x 1 2 −1 e− 2 (x > 0) n x 2 Γ( 2 ) n 2 で表される.また,Gauss(ガウス) 分布と呼ばれること で表される. もある. 平均・分散 平均・分散 E(X) = φ, V (X) = 2φ E(X) = µ, V (X) = σ 2 2.4.7 ベータ分布 2.4.3 パラメータ λ1 , λ2 に従うベータ分布の確率密度関数は 指数分布 パラメータ λ の指数分布に従う確率変数 X の分布関 数は F (X = x) = 1 − e−λx で表され,確率密度関数は d f (X = x) = F (X = x) = λe−λx dx で表される. 1 xλ1 −1 (1 − x)λ2 −1 (0 < x < 1) B(λ1 , λ2 ) Z 1 B(p, q) = xp−1 (1 − x)q−1 dx f (X = x) = 0 で表される. 平均・分散 E(X) = V (X) = λ1 λ1 + λ2 λ1 λ2 (λ1 + λ2 )2 (λ1 + λ2 + 1) 9 第 2 章 確率分布 グラフ ガンマ分布 一様分布 χ2 分布 正規分布 ベータ分布 指数分布 参考−二項係数 二項分布,超幾何分布,負の二項分布などででてきた µ 二項係数 n k ¶ は µ Cauchy 分布 と定義される. n k ¶ :=n Ck = n! k!(n − k)! 10 第 2 章 確率分布 2.5 積率母関数・特性関数 2.5.1 2.5.2 積率母関数の性質 積率母関数について次の性質 (定理) が成り立つ. 積率母関数 分布の特徴を数値化する工夫として,積率 (モーメント) (a) MX (0) = 1 と呼ばれるものがある.分布の平均値やバラツキ,ひず (b) MaX+b (t) = ebt MX (at) みや尖り度を数値化するものである.たとえば,1次の (c) MX (t) は非負の定置関数である. 積率は分布の中心がどこにあるか (期待値・平均) を示 し,2次のそれは分布の中心付近において分布がどれほ また次の重要な定理が成り立つ. ど集中しているか (分散) を示している.一般には3次 実数値確率変数 X, Y に対してそれぞれの積率母関 以上の積率も必要で,すべての次数の積率を指定するこ 数 MX (t) と MY (t) が一致するならば,X と Y の とで1つの確率分布が決定されるはずである.すべての 確率分布は一致する. 次数の積率を生成する関数を積率母関数といい, tX MX (t) = E(e ) 2.5.3 特性関数 MX (t) が微分可能であるためには少なくとも t = 0 の 近傍で MX (t) が存在しなければならない.しかし積率 と定義する. 母関数 MX (t) がすべての t 6= 0 に対して存在しない場 ◦ 離散型 MX (t) = X 合があるため,積率母関数と似た性質を持ち,かつ存在 tx e f (x) x ◦ 連続型 Z か確かな別の関数を用意する.その関数を特性関数と いい, ∞ MX (t) = etx f (x)dx −∞ ϕX (t) = E(eitX ) MX (t) を繰り返し微分して t = 0 とおいた導関数は,一 と定義する.この関数は解析的で、積率母関数より厳密 般に積率母関数の l 階導関数から に確率分布を決定することができる. (l) MX (t) = µl 2.5.4 特性関数の性質 となり,各次数の積率が求められる. 0 00 MX (0) = E(X) , MX (0) = E(X 2 ) , · · · 特性関数について次の性質 (定理) が成り立つ. (a) ϕX は R 上の一様連続関数である. (b) ϕX (0) = 1 , |ϕX (t)| ≤ 1 , ϕX (−t) = ϕX (t) (c) ϕaX+b (t) = eibt ϕX (at) 例 Poisson 分布の積率母関数 MX (t) を求め,それ (d) ϕX (t) は非負の定置関数である. を利用して期待値と分散を求めよ. 解 MX (t) = = e ∞ X etk · e−λ k=0 ∞ X −λ λk k! t k (λe ) k! k=0 λet = e −λ = e λ(et −1) 積率母関数と同じく,次の定理が成り立つ. 実数値確率変数 X, Y に対してそれぞれの特性関数 ϕX (t) と ϕY (t) が一致するならば,X と Y の確率 分布は一致する. ·e 0 MX (t) = MX (t) · λet 00 0 0 MX (t) = MX (t) · λet + MX (t) 0 E(X) = MX (0) = λ 00 0 V (X) = MX (0) − MX (0)2 = λ2 + λ − λ2 = λ Fourier(フーリエ) 変換の逆変換に対応して,特性関数 から確率測度を求める公式を Lev́y(レヴィー) の反転公 式という.測度空間を定義した後に扱う. 11 第 2 章 確率分布 第2章 演習問題 1. サイコロを 30 回振ったとき,1の目が8回でる確率を求めよ. 2. 白玉4個,黒玉6個入った箱から4個の玉を取り出すとき,x 個の白玉がでる確率を求めよ. 3. 次の確率分布に従う確率変数の期待値・分散を求めよ. (i)二項分布 f (x) = n Ck pk (1 − p)n−k λk −λ e k! (iii)幾何分布 f (x) = (1 − p)x−1½ p ¾ 1 (x − µ)2 (iv)正規分布 f (x) = √ exp − 2σ 2 2πσ −λx (v)指数分布 f (x) = λe (ii)Poisson 分布 f (x) = 4. 次の確率分布の積率母関数を求め,各次数の積率を求めることにより期待値・分散を求めよ. (i)二項分布 f (x) = n Ck pk (1 − p)n−k (ii)幾何分布 f (x) = (1 − p)x−1½ p 1 (x − µ)2 exp − 2σ 2 2πσ −λx (iv)指数分布 f (x) = λe ¾ (iii)正規分布 f (x) = √ 5. 確率変数 X の確率密度関数を 1 x (0 ≤ x ≤ 2) 2 f (x) = 0 (その他) とする.このとき X の分布関数 FX (x) を求めよ.また,この X に対して確率変数 Y = 2X 2 + 1 の分布関数 FY (x) を求めよ. 6. X は実数値をとる確率変数とする.次の問いに答えよ. (i)X が平均値 0,分散 σ 2 の正規分布に従うとき,E(|X|n ) (n ∈ N) を求めよ. (ii)X (正規分布に従うとは限らない) が E(|X|n ) < ∞ を満たすとき,任意の正数 a について P (|X| > a) ≤ が成り立つことを示せ. E(|X|) a 12 第3章 Lebesgue 積分論の導入 ここで簡単に Lebesgue 積分論に触れ,確率測度から確 A : R の点集合とする. 率空間を定義していく. 3.1 3.2.3 外測度の性質 (C1) 0 ≤ m∗ (A) ≤ +∞ , 特に m∗ (φ) = 0 Lebesgue 積分とは Riemann(リーマン) 積分では x 軸での分点分割を考え, 微小長方形の和の形で積分を定義したが,Lebesgue(ル (C2) A ⊂ B ⇒ m∗ (A) ≤ m∗ (B) µ[ ¶ X ∞ ∞ ∗ (C3) m An ≤ m∗ (An ) ベーグ) 積分においては y 軸での分点分割を考える.こ n=1 ¡ n=1 ¢ (C4) m∗ [a, b) = b − a のことにより,被積分関数は連続である必要はなく,至 (C5) 点集合 B が A と合同 ⇒ m∗ (A) = m∗ (B) るところ不連続でもよいし,無限大をとることがあっ てもよい.このとき,対応するいろいろな集合の長さを (Lebesgue) 測度という. 3.2 A ⊂ R が次の条件を満たすとき、A は可測 (Lebesgue すべての点集合に対して定義できる長さを外測度という ことにする.以下,Lebesgue 積分を定義するまで,い ろいろな定義と性質を証明なしに挙げていく. A ⊂ R に対して,半開区間の列 {In } で A を覆う ∞ X ときの |In | の下限を A の外測度といい, n=1 m (A) で表す: m∗ (A) := inf ( ∞ X n=1 |In | | A ⊂ ∞ [ ) In n=1 {In } で A を覆うとは,{In } が A の被覆であることを いう. 3.2.2 被覆の定義 A⊂ [ 可測) であるという: ∀ Aλ であるとき、{Aλ |λ ∈ Λ} を A の被覆 λ∈Λ という。特に Aλ がすべて開集合のときは開被覆と B⊂A, ∀ B 0 ⊂ Ac ; m∗ (B ∪ B 0 ) = m∗ (B) + m∗ (B 0 ) または ∀ 外測度の定義 ∗ 可測集合 3.3.1 可測集合の定義 外測度 3.2.1 3.3 X ∈ R ; m∗ (X) = m∗ (X ∩ A) + m∗ (X ∩ Ac ) 3.3.2 可測集合の性質 (1) A が可測 ⇔ Ac が可測 (2) A1 , · · · , An が可測 ⇒ (3) A1 , · · · , An が可測 ⇒ n [ k=1 n \ Ak も可測 Ak も可測 k=1 (4) A, B が可測 ⇒ A\B も可測 ∞ [ (5) A1 , · · · , An , · · · が可測 ⇒ An も可測 (6) A1 , · · · , An , · · · が可測 ⇒ n=1 ∞ \ An も可測 n=1 (7) B が可測集合 A に合同 ⇒ B も可測 いい、{Aλ |λ ∈ Λ} が有限集合のときは有限被覆と 可測集合の例 いう。 半開区間 I ,開集合 G,閉集合 F は可測である. 第3章 3.3.3 13 Lebesgue 積分論の導入 3.3.9 Borel 集合の定義 可測集合族の定義 可測集合全体を L で表し可測集合族という。 すべての σ -集合体の交わり (最小の σ -集合体) を B で表し.Borel 集合族 (体)(Borel eld) という. 3.3.4 また B の元を Borel 集合という. 可測集合族の性質 (M1) φ ∈ L Borel 集合は可測であり,開集合,閉集合は Borel 集合 (M2) A ∈ L ⇒ Ac ∈ L ∞ [ (M3) An ∈ L (n = 1, 2, · · · ) ⇒ An ∈ L n=1 (M4) G が開集合 ⇒ G ∈ L である.ただ,Borel 集合でない可測集合が存在するこ とが知られている.後の Lebesgue-Stieltjes(ルベーグスティルチェス) 積分を定義するときに考える. (M1)∼(M3) を満たす L を加法的集合族という.下に 3.4 まとめ直す. 3.4.1 Lebesgue 測度の定義 3.3.5 f -集合体の定義 測度 可測集合 A に対して X の部分集合族 A が次の条件を満たすとき, m(A) := m∗ (A) X の f -集合体 (f -eld) または有限加法的集合族 を A の測度 (Lebesgue 測度) という。 という. 3.4.2 測度の性質 (A1) φ ∈ A c (A2) A ∈ A ⇒ A ∈ A A : R の可測な点集合とする. (A3) A1 , A2 ∈ A ⇒ A1 ∪ A2 ∈ A (L1) 0 ≤ m(A) ≤ +∞ , 特に m(φ) = 0 (L2) A1 , A2 , · · · , An , · · · (i 6= j ⇒ Ai ∩ Aj = φ) µ[ ¶ X ∞ ∞ An = =⇒ m m(An ) また,これより次の性質も導ける. 3.3.6 f -集合体の性質 (A4) X ∈ A (A5) A1 , · · · , An ∈ A ⇒ (A6) A1 , · · · , An ∈ A ⇒ n [ k=1 n \ n=1 ¡ ¢ (L3) m [a, b) = b − a Ak ∈ A Ak ∈ A k=1 件を満たすとき,X の σ -集合体 (σ -eld) または σ -加法 3.4.3 測度についての諸定理1 (2) A, B :可測 =⇒ m(A ∪ B) + m(A ∩ B) = m(A) + m(B) 3.4.4 測度についての諸定理2 的集合族という. (A8) A1 , · · · , An , · · · ∈ A ⇒ ∞ [ An ∈ A n=1 A が X の σ -eld とすると,次の性質も成り立つ. σ -集合体の性質 (A9) A1 , · · · , An , · · · ∈ A ⇒ ∞ \ An ∈ A n=1 (A10) A1 , · · · , An , · · · ∈ A ∞ [ ∞ ∞ \ ∞ \ [ Am ∈ A Am かつ =⇒ n=1 m=n また,次に諸定理を挙げておく. =⇒ m(A \ B) = m(A) − m(B) σ -集合体の定義 またさらに,f -eld である X の部分集合族 A が次の条 3.3.8 (L4) 点集合 B が A と合同 ⇒ m(A) = m(B) (1) A, B :可測 , B ⊂ A , m(B) < +∞ (A7) A1 , A2 ∈ A ⇒ A1 \A2 ∈ A 3.3.7 n=1 n=1 m=n An (n = 1, 2, · · · ):可測とすると次が成り立つ: (1) An ⊂ An+1 (n = 1, 2, · · · ) Ã∞ ! [ =⇒ m An = lim m(An ) n=1 n→∞ (2) An+1 ⊂ An (n = 1, 2, · · · ), ∃k ∈ N, m(Ak ) < +∞ Ã∞ ! \ =⇒ m An = lim m(An ) n=1 n→∞ 第3章 3.4.5 14 Lebesgue 積分論の導入 零集合の定義 m∗ (A) = 0 となる A を零集合という。 3.4.6 零集合についての定理 (1) 零集合の部分集合は零集合である。 (2) 零集合は可測集合である。 (3) An (n = 1, 2, · · · ) が零集合 ⇒ ∞ [ n=1 ∗ An も零集合 (4) N :零集合 ⇒ m∗ (A ∪ N ) = m (A \ N ) = m∗ (A)