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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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金属クラスターの魔法数系列(原子核とマイクロクラスタ
ーの類似性と異質性)
園田, 幸治
物性研究 (1997), 68(2): 163-166
1997-05-20
http://hdl.handle.net/2433/96041
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
「
原子核 とマイクロクラス ターの類似性 と異質性」
金属クラスターの魔法数系列
広大 VBL
園 田幸治 I
§
1 は じめに
現在までの金属 クラスターの質量スペク トル等の観測により,原子数 Ⅳが数万個ま
での Naクラスターで魔法数が確認 されている.ト 3)その観測 された魔法数は,価電子
状態による穀構造お よび原子による殻構造を反映 していることが指摘 されてきた.ク
ラスターサイズが 2
0
0
0個程度以下では価電子の殻構造が支配的である.価電子 による
殻構造は,原子核 中の核子の運動を等方的な有効ポテンシャル中の独立運動 として記
述す るMe
ye
rとJ
e
ns
e
nにより提唱 された殻模型を適用 して,ある程度説明がな されて
きた.さらに,金属クラスターの模型 としてジェリウム球を採用 し,密度汎関数理論 を
基礎 とした電子状態の計算が主 として行われてきた結果,電子の殻構造 を定量的に求
めることに多 くの成功 を収めてきた.〟-8
0
0-1
0
00個においては,三角形 と四角形 を
つ くる準古典的な閉 じた軌道運動の間の干渉によるスーパーシェルが現れ ることが指
摘 されている.4
)
2
00
0個程度以上になると原子の殻構造が支配的になる.この よ うな
金属 クラスターの殻構造において,特に電子状態の殻構造を反映 した結果生 じる魔法
数のサイズ依存性に関 して,系統的に説明 された とは言いがたい.
この電子の殻構造の解明を試みるために,金属 クラスターの模型 としてジェ リウム
球 を採用 し,密度汎関数理論 を基礎 とした電子状態の計算 を行い,殻構造のサイズ依
存性 に関 して詳細に検討 した.5・6) その結果,金属 クラスターの電子の殻構造 がクラ
スターサイズの増加 に伴って徐々に変化 してい くことを示 し,その殻構造 を反映 した
魔法数のサイズ依存性 を表現す る4つの数列 (
魔法数系列)を提案 した.これ によ り,
三角形の軌道 と四角形の軌道の干渉だけでは,十分に説明されなかった Ⅳ ∼1
00の魔法
数 も説明できると考えられる.以下のセクションでは,その魔法数系列お よびそれ と電
子の殻構造 との関係について述べる.
§
2 魔法数系列
金属 クラスターの電子の殻構造はサイズの増加に伴って質的に変化 してい くことが
示 された.殻構造にその変化が起こるサイズは,Ⅳ=3
4
∼4
0,∼2
0
0および 800
∼1
000で
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1
63 -
研 究会報告
ある.エネル ギー準位は,そのサイズを境にして,2
n+l
的縮重,2
n+はうよび 3
n+l
の混
n+l
的縮重お よび 4
n+l
的縮重- と変化 してい く.ここで,nは動径量子数 ,l
成縮重,3
は軌道角運動量子数である.
その殻構造の質的変化 を反映 した 〃-1
∼200
0での魔法数のサイズ依存性 を以下の
4つの数列 (
N.
?
n
+
t
,
Ni
,
N.
?
n+l
,
N.
t
n
+l;i
-1
,
2,
3,
-- )で示 した.
NZ
n
+l-i
(
i+1
)
(
i+2)
/3
(
1)
Ni- Nt
?
n
+
i
-(
i-1
)
(
i-2)
(
2)
Nt
?
n
+'
l
I
,
M]- Nf
=
n
Ll
+6I3+3(
2
M +3)
I2+(
2
M 2+6M +3)
I
(
3)
ただ し,I-i
nt
(
i
/3)
,M -mod(
i
,
3)
.
N.
J
n
+l
l
I
,
M]- Nt
?
=
n
LLl+【
32
t3+2
4(
M +1
)
I2+2
2
M 2+6
M -1
I]
/3
ただ し,I-i
n
t
l
(
i+1
)
/
4
】
,M -mod(
i+1,
4)
.
図 1は,魔法数系列について説明した ものである.
魔 法数 系列
N・
2
仇+
i- -
ニー
b
1ネ
ルt
ト丁20ヰ
曾よ
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一
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(
JJヱ
∼ユ占d
'
) (
∼SP
0
人
)
図 1 横軸は,Ⅳ 1/3でスケール されている.各数字がほぼ等間隔に並んでいる点
に注目.*が観測された魔法数.()中の2
6
0および3
4
0は実験結果 ト 9)の
平均的な値であり,Nf
n
't
の値に最も近い・
警
深
謀
等
+L
g2
6
,
警o
H n
'
i'
J
b法
-1
6
4-
主,
1
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38
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8
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i
3y l
(
4)
「
原子核 とマイ クロクラス ターの類似 性 と異 質性
」
§
3 魔法数のサイズ依存性
図 2において,(
1)
∼(
4)の 4つの数列 と実際に観測 された魔法数7
9)との比較を示
g
i
c
-2,8,2
0,40はi
-1
,
2,
3,
4で Nt
?
n
'l
と一致 し・Nmag
i
c
-58,92,1
38,
す・魔法数 Nma
1
98は i
=5,6,7,8に対す るNi
によって与えられる・さらに,N-250- 80
0の魔法数は,
Nfn'l
が最 もよく合い,Ma
r
t
i
ne
tal
l
8
=よって観測 された c̀
ol
d'Naクラスター に対す
る魔法数 1
040,1
220お よび 1
430は Nt
?
n
+l
*の値に最も近い・それ以上のサイズにおい
ては,原子構造のシェルが顕著にな り,立方八面体もしくは正二十面体が一皮づつ完成
t
i
nらの結果に対 して,Pde
r
s
e
nらに
す るときの原子の殻構造が観測 されている.Mar
ょって観測 された Naクラスターの N -800-20
00での魔法数お よび Br
6
c
hi
gnacらに
n''
の値 と非常に近い・さらに,Pe
de
r
s
e
nらのデー タ
ょる Liクラスターの魔法数は Nf
は N >2000に対 して Nt
?
n+l
ぉよび Nt
f
n'lとも異なる結果を示 した・
N=300∼1
000においてエネルギー準位の縮退で主となるのは 3n+l
縮重であ り,そ
縮重が関与 して,干渉および N -1
0
00において うなり等を起こすが,N -1
00
こへ 4n+l
の場合は,2
n+l
,2
n+は∋よび 3n+l
の混成縮重が,Fe
r
mi
準位付近の縮重 として見 られ,
一
サイズの増加 と共に 3
n+l
縮重,4n+ム
縮重- と変化 していく.2n+l
お よび 3n+l
の混成
縮重は,s
t
a
ror
bi
t
s
l
l
)
に対応づけが可能ではないかと推測 される点が見つかった・また,
Ⅳ=1
0∼1
00程度の場合,このよ うな-電子問題での議論が適切か どうかに関 して検討
の余地があ り,その点は今後の課題である・
図 2 4つの数列と実際に観測された魔法数 7-9) との比較・
-
1
65 -
研究会報告
§
4 まとめ
金属クラスターの電子の殻構造はサイズの増加に伴って質的に変化 してい くことが
示 された.殻構造にその変化が起こるサイズは,〟-3
4
-4
0,-20
0お よび 800-1
000で
ある.Fe
r
血i
準位付近のエネル ギー準位は,そのサイズを境にして 2
n+l
的縮重,2
n+l
お よび 3
n+l
の混成縮重,3
n+l
的縮重お よび 4
n+l
的縮重- と変化 してい くことが明 ら
かに されたこ
その殻構造 の質的変化 を反映 した Ⅳ-1
∼2000での魔法数のサイズ依存性 を 4つの
数列で示 し,観測 された魔法数のサイズ依存性 と比較 した結果,サイズの増加 に伴 って
4∼40,∼20
0お よび 80
0-1
000でクロ
魔法数が異なる 4つの数列で次々に表 され,〟-3
r
mi
準
スオーバー して†、くことが明 らかになった.クラスターサイズの増加 と共に,Fe
位付近のエネルギー準位が,2
n+i
,3
n+l
,4n+l
的縮重 と変化 してい くことと魔法数系
列のサイズ依存性 が対応づ けられた.
文献
I
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A.
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d.Phy
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1
993)611.
2) M.Br
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993)6
77・
3) H.Habe
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6) 園 田幸治,博士論文 (
広島大学),1
996年
7) T.
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