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11 月 15 日 自律神経薬理(解説編) 要点 ・ 自律神経は交感神経,副交感神経から成り,内臓諸器官を支配し,体内の恒常性維持に働く. ・ 交感神経は瞬発的な全身活動を促し、副交感神経は栄養と安静を保持し、生理機能を維持する. ・ 各々の神経機能が亢進しすぎると抑制させる薬物を,機能が低下しすぎると興奮させる薬物を投 与して,神経支配のバランスを調節する. ・ 交感神経の支配するアドレナリン受容体にはα,β受容体があり,基本的には,α1 受容体は平滑 筋の収縮,α2 受容体は交感神経の異常亢進の抑制,β1 受容体は心臓機能促進,β2 受容体は平滑 筋の弛緩に働く. ・ 副交感神経の支配するアセチルコリン受容体にはムスカリン(M)受容体があり、M2 受容体は心 臓機能抑制,M3 受容体は平滑筋収縮,分泌腺亢進に働く(内皮細胞からの NO 遊離も M3). ・ 各受容体を刺激したり遮断したりする薬物,または各神経の機能を亢進したり抑制したりする薬 物により,体内の恒常性維持を図る. ・ 自律神経節には,アセチルコリン受容体のニコチン受容体(NN 受容体)や M1 受容体があり,神 経伝達の制御に関わる. 【学習の要点】まず,交感神経や副交感神経が興奮したときの生体の反応を正しく理解することが大 切である/薬物は生体の機能を亢進させたり抑制したりするだけで,新たな反応を生じるわけで はない/薬物がどこに作用するかを理解していればどのように働くかはおのずとわかるはずであ る/各受容体の作用機序を頭に入れ,そこに働く薬物を覚える/薬物の種類が多くて大変ではあ るが,他の分野でも出てくる薬物が多いため,同じ作用を持った薬物ごとにまとめて整理してお くこと/最近は構造式・構造活性相関の出題が最も多い分野であるため,カテコールアミン,ア セチルコリンの基本構造,代表的な刺激薬・拮抗薬の構造も覚えるようにすること/自律神経系 は薬理学の基本となるため,完全にかつ正しく理解すること. 以下の文章が正しければ○,間違っていれば正しく直せ.( 問1 )には適切な語句を入れよ. 麻酔した動物の血圧を測定するとき,アドレナリンの静脈内注射による血圧上昇は,プロプラ ノロールを前もって静脈内注射しておくと増強される。 ○:アドレナリンを静脈内注射した際に観察される血圧の変化は,抵抗血管の収縮・拡張によって 説明される。すなわち,血管のα1 受容体を介した血管収縮作用による血圧上昇と,血管のβ2 受容体を介した血管拡張作用による血圧低下が同時に起きており,全体としては血圧が上昇す る。非選択的β受容体遮断薬であるプロプラノロールによってβ2 作用を遮断しておくと,α1 作用による血圧上昇のみが現れるため,血圧上昇が増強される。 問2 麻酔した動物の血圧を測定するとき,フェントラミンを前もって静脈内注射したのち,ノルア ドレナリンを静脈内注射すると,血圧は下降する。 ×:ノルアドレナリンは,α1 作用による血圧上昇作用を有するが,β2 作用による血管拡張作用を ほとんど持っていないため,フェントラミンによってα受容体を遮断しても,血圧の上昇は抑 制されるものの,血圧の下降はみられない。 問3 麻酔した動物の血圧を測定するとき,チラミンを静脈内注射すると,血圧は上昇する。この現 象は,イミプラミンを前もって静脈内注射しておくと抑制される。 ○:チラミンは間接型交感神経興奮薬で,ノルアドレナリンの再取り込みを行うアミン取り込み機 構を通って交感神経に入り,アミン顆粒を刺激して神経終末からのノルアドレナリン遊離を促 進することによって血圧を上昇させる。イミプラミンはアミン取り込み機構阻害薬であるた め,チラミンの神経終末への取り込みが抑制され,チラミンの作用は減弱する。 自律神経薬理 20111115- 1 - 問4 麻酔した動物の血圧を測定するとき,アトロピンを静脈内注射したのちに大量のアセチルコリ ンを静脈内注射すると,血圧は上昇することがある。この血圧上昇反応はヘキサメトニウムを 静脈内注射前処置することによって抑制される。 ○:アトロピン投与によりムスカリン受容体を遮断した条件下に大量のアセチルコリンを投与する と,ムスカリン受容体を介した作用は遮断されているため,ニコチン受容体を介した作用のみ が発現する。交感神経節における節後線維の NN 受容体刺激による交感神経終末からのノルア ドレナリン遊離,ならびに副腎髄質 NN 受容体刺激によるアドレナリン遊離を生じ,両者によ って血圧が上昇する。いずれも NN 受容体を介した反応であるため,NN 受容体遮断薬であるヘ キサメトニウムの前処置によって抑制される。 問5 麻酔した動物の血圧を測定するとき,レセルピンを 24 時間前に投与しておいた後に,ノルア ドレナリンを静脈内注射すると,その血圧上昇反応は抑制される。 ×:レセルピンは交感神経終末のノルアドレナリンを枯渇させる。しかし,投与されたノルアドレ ナリンは直接受容体に作用するため,レセルピンはノルアドレナリンの作用には直接は影響し ない。しかし,レセルピンの投与が 24 時間前であるため,受容体の up regulation を生じてい ると考えられ,血圧上昇反応は増強されると考えられる(除神経性感受性増大)。 問6 メペンゾラートは,鎮痙作用があるので,過敏大腸症の治療に使用される。 ○:メペンゾラートは抗コリン薬で、4 級アンモニウム構造を持つ。鎮痙作用を示し,特に下部消 化管に選択的に作用するため,過敏大腸症の治療に用いられる。 問7 トリヘキシフェニジルは,中枢性抗コリン薬に位置づけられ,パーキンソニズムの遅発性ジス キネジアを特異的に改善する。 ×:トリヘキシフェニジルは,パーキンソニズムに用いられる中枢性抗コリン薬で,特に振戦に有 効である。遅発性ジスキネジアは抗精神病薬を数ヶ月以上使用した際に生じる口,舌,頬など の不随意運動で,確実な治療法はない。 問8 ブチルスコポラミンは,中枢作用は弱く,前立腺肥大による排尿障害の改善に使用される。 ×:ブチルスコポラミンは,4 級アンモニウム化合物であるため中枢作用は弱いが,ムスカリン受 容体遮断作用によって排尿障害を起こす副作用があるため,前立腺肥大の患者には使えない。 問9 フルトロピウムは,気管支ぜん息時にみられる迷走神経反射性の気管支収縮を緩解させる目的 で,吸入により使用される。 ○:フルトロピウムは,吸入で使用する抗コリン薬。気管支ぜん息や COPD における迷走神経反射 の亢進している病態で,気管支収縮を緩解させる目的で使用される。 問 10 プロピベリンは,膀胱平滑筋を弛緩させるため,神経性頻尿に使用される。 ○:プロピベリンは,抗コリン作用を有するだけでなく,平滑筋直接作用による平滑筋弛緩作用も 持っており,排尿運動抑制作用を示す。アトロピンで抑制されない経壁電気刺激による膀胱収 縮も抑制する。このため,神経性頻尿に使用される。 問 11 レセルピンは,アドレナリン作動性神経末端のシナプス小胞に存在するアミン取込み機構を阻 害するため,ノルアドレナリンの枯渇を起こす。 ○:レセルピンは,アドレナリン作動性神経で合成されたドパミンがアミン顆粒(シナプス小胞) 膜を通過してノルアドレナリンに変換されて取り込まれる段階と,神経終末に再取り込みされ たノルアドレナリンがアミン顆粒に取り込まれる段階を阻害することで,ノルアドレナリンの 枯渇を起こす。 自律神経薬理 20111115- 2 - 問 12 コカインは,アドレナリン作動性神経末端細胞膜に存在するアミン取込み機構を阻害するた め、神経末端からのノルアドレナリンの遊離を阻害する。 ×:コカインは,アミン取り込み機構を阻害するため,神経終末でのノルアドレナリンの再取り込 みが阻害される。その結果,ノルアドレナリンの作用を増強する。 問 13 へミコリニウムは,コリン作動性神経末端細胞膜に存在するコリン取込み機構を阻害するた め、アセチルコリンの生合成を阻害する。 ○:アセチルコリンの前駆体であるコリンは,4 級アンモニウム化合物であるため,細胞膜を受動 拡散によって通過することはできず,能動的なコリン取り込み機構を通じて神経細胞内に取り 込まれる。ヘミコリニウムはこの機構を阻害することにより,神経細胞内のコリンを低下させ, アセチルコリンの生合成を阻害する。 問 14 ボツリヌス毒素は,コリン作動性神経末端のシナプス小胞に存在するアセチルコリン取込み機 構を阻害するため,アセチルコリンの枯渇を起こす。 ×:ボツリヌス毒素は,コリン作動性作動性神経終末からのアセチルコリン放出を阻害する。神経 細胞膜とシナプス小胞膜の融合には,シナプス小胞の表面のシナプトブレビン,細胞膜側のシ ンタキシンおよび SNAP-25 という SNARE タンパク質とよばれる 3 つのタンパク質が会合する ことが必要である。ボツリヌス毒素は,SNARE タンパク質のいずれかを特異的に切断する(毒 素の型によるが,神経ブロック等に用いられる A 型毒素は SNAP-25 を切断する)。その結果, シナプス小胞と細胞膜の膜融合が起こらなくなり,神経伝達物質の放出が阻害され,神経伝達 が遮断される。 問 15 クロニジンは,アドレナリン作動性神経末端細胞膜上のα2 受容体に作用するため,細胞膜に 存在するアミン取込み機構を阻害する。 ×:クロニジンは,Gi タンパク質と共役したα2 受容体に対する刺激薬で,神経細胞のアデニル酸 シクラーゼ活性を抑制する結果,細胞内 cAMP 濃度を低下させ,アドレナリン作動性神経終末 からのノルアドレナリン遊離を抑制する。 問 16 ニコチンは、用量の多尐にかかわらず自律神経節後線維を脱分極させ、一過性の興奮に引き続 いて持続的な伝達の遮断をもたらす。 ×:ニコチンは,尐量では自律神経節の NN 受容体に作用して脱分極を起こし,節後線維を興奮さ せるが,大量では一過性の興奮に続く持続的脱分極により,神経伝達の遮断を起こす(脱分極 性節遮断)。 問 17 ニコチンは、ガム剤や貼付剤として禁煙の補助に使用されるが、他の用途で医療に用いられる ことはない。 ○:禁煙による離脱症状を軽減することを目的として,ガムや貼付剤によりニコチンの補給をする のに用いられるが,それ以外に医療で用いられることはない。 問 18 ニコチンの主な作用部位は自律神経節と神経筋接合部であり、中枢作用はない。 ×:ニコチンは,中枢神経系にも作用する。低用量では中枢興奮作用を示し,呼吸興奮,嘔吐,振 戦などが現れる。大量では中枢抑制作用を示し,呼吸麻痺等が現れる。 問 19 ニコチンの受容体はイオンチャネル内蔵型であり、Na+や Ca2+を透過させる。 ○(△?):ニコチンの受容体は Na+チャネルを内蔵するイオンチャネル内蔵型受容体であり,Na+ を透過させる。その結果,細胞膜が脱分極し,膜電位依存性の L 型 Ca2+チャネルが開口するこ とで,間接的に Ca2+の透過性も上昇する。 自律神経薬理 20111115- 3 - 問 20 チラミンは、神経終末からのノルアドレナリン遊離を促進して、血圧上昇を起こす。 ○:チラミンは,交感神経節後線維終末からノルアドレナリンの遊離を促進する間接的交感神経興 奮薬である。遊離されたノルアドレナリンにより,血圧が上昇する。 問 21 フェニレフリンは、アドレナリンα1 受容体を刺激することにより、散瞳を起こす。 ○:フェニレフリンは,α1 受容体選択的刺激薬である。瞳孔散大筋のα1 受容体を刺激することに より,瞳孔を散大させる作用を持つ。 問 22 コカインは、局所麻酔作用によりノルアドレナリンの神経終末への取り込みを抑制する。 ×:コカインの局所麻酔作用は,知覚神経細胞の内側から Na+チャネルを遮断して,活動電位の発 生を抑制することによるものである。ノルアドレナリン遊離促進による間接型交感神経興奮作 用とは異なったメカニズムによるものである。 問 23 メタンフェタミンは、神経節のニコチン受容体に作用して、血圧上昇を起こす。 ×:覚醒剤であるメタンフェタミンは,交感神経節後線維終末からノルアドレナリンの遊離を促進 することにより血圧上昇反応を惹起する,間接型交感神経興奮薬である。 問 24 ピロカルピンは、シュレム管からの眼房水の排出を促進し、緑内障を改善する。 ○:ピロカルピンは,コリン作動薬であり,毛様体筋の M3 受容体を刺激して収縮させ,シュレム 管を拡大して眼房水の排出を促進することで,眼圧を低下させ,緑内障を改善する。 問 25 ネオスチグミンは、手術後の腸管麻痺や膀胱麻痺に用いられる。 ○:ネオスチグミンは,4 級アンモニウム構造を持つコリンエステラーゼ阻害薬で,中枢作用を持 たず,手術後の腸管麻痺や膀胱麻痺の改善に用いられる。 問 26 プロパンテリンは、前立腺肥大にもとづく排尿障害に有効である。 ×:プロパンテリンは抗コリン薬であり,副作用として排尿困難を起こすため,前立腺肥大の患者 には使えない。 問 27 ブチルスコポラミンは、パーキンソン病に用いられる。 ×:ブチルスコポラミンは,4 級アンモニウム構造を持った抗コリン薬で,中枢神経系に移行しな いため,パーキンソン病に用いることはできない。トリヘキシフェニジルやビペリデンが用い られる。 問 28 ホマトロピンは、瞳孔散大筋の収縮を抑制することにより瞳孔を縮小させる。 ×:ホマトロピンは,抗コリン薬であり,瞳孔括約筋の収縮を抑制することにより,瞳孔を散大さ せる。 問 29 カルバコールは、副腎髄質からアドレナリンを遊離させる。 ○:カルバコールは,アセチルコリンのアセチル基をカルバモイル基に置換した構造を持つ化合物 で,コリンエステラーゼで分解されないため,作用時間が長い。ムスカリン作用とニコチン作 用の両方を持っているため,副腎髄質の NN 受容体に作用して,アドレナリンを遊離させる。 アセチルコリンの類似化合物で,ニコチン作用が減弱しているのは,β位にメチル基を入れた メタコリン(コリンエステラーゼで分解される)とベタネコール(コリンエステラーゼで分解 されない)。 問 30 イプラトロピウムは、経口投与により速やかに吸収され、選択的に気道平滑筋のムスカリン性 アセチルコリン受容体を遮断する。 ×:イプラトロピウムは,消化管吸収が悪く,経口投与では用いられない。吸入薬として,気管支 喘息や COPD の治療に用いられる。ムスカリン性アセチルコリン受容体の遮断薬であるが,気 自律神経薬理 20111115- 4 - 管支腺分泌にはほとんど影響せず,過度の迷走神経緊張状態による気管支平滑筋収縮を抑制す る。 問 31 ピレンゼピンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体 M2 サブタイプの選択的遮断薬であり、 心機能亢進が尐ない。 ×:ピレンゼピンは M1 受容体選択的遮断薬で,胃酸分泌を抑制する。心臓には M2 受容体が分布し ており,ピレンゼピンの M2 受容体に対する作用は弱いため,心機能亢進作用は弱い。 問 32 ネオスチグミンは、コリンエステラーゼ阻害作用を有し、手術後の腸管麻痺や排尿障害に用い られる。 ○:可逆性コリンエステラーゼ阻害薬のネオスチグミンは,4 級アンモニウム化合物であり,血液 脳関門を通過しにくいため,主として末梢で作用する。コリンエステラーゼを阻害してアセチ ルコリンの分解を抑制し,アセチルコリンのムスカリン作用を増強することにより,腸管麻痺 や排尿障害を改善することを目的として使用される。 問 33 アトロピンは、点眼により眼圧を低下させる。 ×:アトロピンは,ムスカリン受容体を遮断することによって,毛様体筋を弛緩させ,シュレム管 を閉塞させて眼房水の排出を抑制し,眼圧を上昇させる。このため,緑内障には禁忌の薬物で ある。 問 34 フェントラミンは、アドレナリンα1 及びα2 受容体を遮断して血圧を下降させ、また心拍数を 減尐させる。 ×:フェントラミンは,競合的かつ非選択的なα受容体遮断薬。α1 受容体遮断作用により,血管を 拡張させて血圧を低下させる。しかし,α2 遮断作用により,交感神経終末からのノルアドレ ナリン遊離は促進され,結果的に心臓のβ1 受容体に対する刺激は増強するため,心拍数の増 加を惹き起す(反射性頻脈)。 問 35 クロニジンは、交感神経節後線維終末のアドレナリンα2 受容体遮断を介して、ノルアドレナ リン遊離を抑制する。 ×:クロニジンは,選択的α2 受容体刺激薬。延髄血管運動中枢のα2 受容体を刺激して,交感神経 インパルスの放出を抑制し,中枢性に交感神経を抑制する。また,末梢交感神経のα2 受容体 を刺激して,ノルアドレナリン遊離を抑制する。 問 36 チラミンを短時間内に反復投与すると、タキフィラキシーが発現して血圧上昇作用が次第に減 弱する。 ○:チラミンは,間接型交感神経興奮薬で,交感神経終末のアミンポンプによって取り込まれ,ア ミン顆粒のノルアドレナリンと置換することにより,ノルアドレナリンの遊離を促進すること で,血圧上昇作用を示す。チラミンの投与を短時間に反復して繰り返すと,アミン顆粒内のノ ルアドレナリンが枯渇し,作用が低下する。この現象がタキフィラキシーである。 問 37 クロニジンは、中枢のα2 受容体を遮断して交感神経活動を抑制し血圧を下降させる。 ×:クロニジンは,上述のように選択的α2 受容体刺激薬で,主として延髄血管運動中枢のα2 受容 体を刺激することにより,交感神経の活動を抑制し,血圧を低下させる。 問 38 カルテオロールは、β1 受容体に特異性が高く、気管支ぜん息を有する循環器疾患患者の治療 に頻用される。 ×:カルテオロールは非選択的β受容体遮断薬。β1 及びβ2 のいずれの受容体も遮断する。β1 受 容体遮断作用により高血圧症や上室性・心室性不整脈などの循環器疾患に用いられるが,β 2 自律神経薬理 20111115- 5 - 受容体遮断作用により気管支収縮を惹起するため,喘息患者には禁忌である。 問 39 プラゾシンは、α1 受容体を選択的に遮断することにより末梢血管を拡張させて、血圧を下降 させる。 ○:プラゾシンは,選択的α1 受容体遮断薬。α1 受容体を遮断して末梢血管を拡張させて血圧を下 降させるが,α2 作用を持たないため,反射性頻脈を起こしにくい。高血圧症や前立腺肥大に 伴う排尿困難に使用する。 問 40 ラベタロールは、α、β受容体遮断薬であり、高血圧症の治療に用いられる。 ○:ラベタロールはα,β受容体遮断薬で,α1 受容体遮断作用による血管拡張や,β1 受容体遮断 作用による心機能抑制作用により,血圧を低下させる。高血圧症の治療に用いられる。 問 41 フェノテロールは、β1 受容体への選択性が高い遮断薬であり、不整脈の治療に用いられる。 ×:フェノテロールは,選択的β2 受容体刺激薬。気管支平滑筋のβ2 受容体に作用して気管支拡張 作用を示し,気管支喘息による呼吸困難の治療に用いられる。 問 42 グアネチジンは、神経終末へのノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで交感神経系の 機能を増強する。 ×:グアネチジンは,神経細胞のアミンポンプによって交感神経節後線維内に取り込まれ,初期に は神経膜上に分布して膜安定化作用によりノルアドレナリン遊離を阻害し,その後,アミン顆 粒に貯蔵されているノルアドレナリンと置換して枯渇させるため,交感神経遮断作用を示す。 神経終末へのノルアドレナリン再取り込みを阻害して交感神経系の機能を増強するのは,三環 系抗うつ薬やコカインなどである。 問 43 プロカテロールは、アドレナリンβ1 受容体に対する高い選択性を有する刺激薬である。 ×:プロカテロールは,選択的β2 受容体刺激薬で,気管支平滑筋のβ2 受容体に作用して気管支拡 張作用を示すため,気管支喘息の治療に用いられる。 問 44 ラベタロールは、アドレナリンβ受容体及びアドレナリンα1 受容体に対して遮断作用を示す。 ○:ラベタロールは,α,β受容体遮断薬。 問 45 ジスチグミンは、コリンエステラーゼを阻害して副交感神経系の機能を増強する。 ○:ジスチグミンは,可逆的コリンエステラーゼ阻害薬で,アセチルコリンの分解を抑制すること により副交感神経の機能を増強する,間接型副交感神経興奮薬である。 問 45 ヘキサメトニウムは、自律神経節後神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体に作用して節 遮断を起こす。 ○:ヘキサメトニウムは,NN 受容体遮断薬であり,自律神経節節後線維の NN 受容体をアセチルコ リンと競合的に拮抗し,神経伝達を遮断する。 問 46 プロピベリンは、抗コリン作用と直接的膀胱平滑筋弛緩作用をもち、頻尿の治療に用いられる。 ○:プロピベリンは,ムスカリン受容体遮断作用だけでなく,アトロピンで抑制されない経壁電気 刺激収縮に対しても抑制作用を示す薬物である。平滑筋直接作用及び抗コリン作用を有し、主 として平滑筋直接作用により排尿運動抑制作用を示すと推定されている。 問 47 タムスロシンは、アドレナリンα1 受容体遮断作用をもち、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治 療に用いられる。 ○:タムスロシンは,選択的α1A 受容体遮断薬で,前立腺及び下尿道に分布するα1A 受容体を遮断 し,前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する目的で使用される。血管に分布するα1B 受容体に 対する作用は弱いため,血圧下降作用は弱い。 自律神経薬理 20111115- 6 - 問 48 ネオスチグミンは、コリンエステラーゼ阻害作用により排尿筋を弛緩させるため、頻尿の治療 に用いられる。 ×:ネオスチグミンは,可逆的なコリンエステラーゼ阻害薬であり,アセチルコリンの分解を抑制 してアセチルコリンの作用を増強することで作用を発揮する,間接的副交感神経興奮薬であ る。排尿筋には M3 受容体が分布しており,アセチルコリンの作用によって排尿筋が収縮して 排尿を起こすため,手術後や分娩後の排尿困難の治療に用いられる。 問 49 クレンブテロールは、β2 アドレナリン受容体遮断作用をもち、排尿障害の治療に用いられる。 ×:クレンブテロールは,選択的β2 受容体刺激薬。気管支平滑筋のβ2 受容体に作用して気管支拡 張作用を発揮するため,気管支喘息の治療に用いられる。また,膀胱に対して,膀胱平滑筋弛 緩作用示すため,腹圧性尿失禁の治療にも用いられる。 問 50 ベタネコールは、ムスカリン性アセチルコリン受容体刺激を介して排尿障害を改善する。 ○:ベタネコールは,ムスカリン受容体刺激作用により,排尿筋を収縮させる作用を有しているた め,手術後や分娩後,神経因性膀胱等の低緊張性膀胱による排尿困難の治療に用いられる。 問 51~問 55 下図の構造を持つ化合物の構造活性相関に関する記述について、正しいものま○、間違 っていれば正しく修正せよ。ただし、R1 と R2 は特に記述のない場合は水素とする。 問 51 側鎖のβ位炭素に結合した水酸基は、アドレナリン受容体刺激作用に必須である。 ×:この構造は,カテコールアミン類の構造であるが,β位に水酸基を持たないドパミンもβ1 受容 体刺激作用を持つため,アドレナリン受容体刺激作用に必須とは言えない。 問 52 R1 を水素からメチル基に置換すると、モノアミン酸化酵素(MAO)で代謝されやすくなる。 ×:MAO は,酸化的脱アミノ化反応により,R2 の結合しているアミンを切り離すともに,R1 の結 合している炭素(α位)をカルボン酸まで酸化する酵素(-CHOH-CH2-NH2 → -CH2-COOH)。 α位炭素にメチル基が存在すると,カルボン酸までの酸化反応が進まないため,MAO で代謝 されにくくなる。 問 53 R2 を水素からイソプロピル基に置換すると、アドレナリンβ受容体に対する刺激作用が強く なる。 ○:R1 が水素で R2 をイソプロピル基に置換したものがイソプレナリンであり,β受容体刺激薬で ある。アミノ基に結合するアルキル基の炭素数が増えると(他の部分の構造が同じであれば), β受容体刺激作用が強くなる。 問 54 ベンゼン環の 2 つの水酸基を水素に置換すると、中枢神経系への移行率が増加する。 ○:ベンゼン環の 3 位と 4 位に水酸基を持つこの構造がカテコール骨格であるが,二つのフェノー ル性水酸基のために親水性が高く,血液脳関門を通過しにくいため,中枢神経系への移行性は 悪い。この二つの水酸基を水素に置換すると,疎水性が増し,血液脳関門を通過しやすくなり, 中枢神経系への移行性が増加する。エフェドリンやメタンフェタミンがその例。 問 55 ベンゼン環の 3 位の水酸基を水素に置換すると、アドレナリンα受容体に対する刺激作用が強 くなる。 ×:ベンゼン環の 4 位の水酸基を水素に置換すると,フェニレフリンやエチレフリンのようなα刺 自律神経薬理 20111115- 7 - 激薬となるが,3 位の水酸基を水素に置換しても,α作用は強くならない(デノパミン,チラ ミン)。 問 56 ジスチグミンは、シュレム管を閉塞させ、眼房水の流出を妨げる。 ×:ジスチグミンは,可逆性コリンエステラーゼ阻害薬。アセチルコリンの分解を阻害して副交感 神経の作用を増強し,毛様体筋を収縮してシュレム管を開口させる。その結果,眼房水の流出 が促進され、眼圧が低下する。 問 57 ベタネコールは、主としてムスカリン様作用を発現する。 ○:ベタネコールは,アセチルコリンのアセチル基をカルバモイル基に置換していることから,コ リンエステラーゼによる分解を受けず,β位にメチル基が入った構造をしていることからニコ チン作用をほとんど持たず,主としてムスカリン様作用のみを発揮する。 問 58 カルバコールは、真性及び偽性コリンエステラーゼのどちらの酵素によっても分解されにく い。 ○:カルバコールは,アセチルコリンのアセチル基をカルバモイル基に置換した構造をしており, 真性及び偽性コリンエステラーゼのとぢらの酵素によっても分解されにくい。 問 59 プロパンテリンは、前立腺肥大に基づく排尿障害を改善する。 ×:プロパンテリンは,抗コリン薬であり,副作用として排尿障害を起こすため,前立腺肥大症に 伴う排尿障害のある患者への投与は禁忌である。 問 60 プラゾシンは、アドレナリンα1 受容体を選択的に遮断し、末梢血管を拡張させて血圧を下降 させる。 ○:プラゾシンは,選択的α1 受容体遮断薬で,血管平滑筋を弛緩させて血圧を下降させる。α2 受 容体遮断作用がないため,反射性頻脈が起こりにくい。 問 61 クロニジンは、交感神経終末におけるアドレナリンα 2 受容体を遮断して、血圧を下降させる。 ×:クロニジンは,α2 受容体刺激薬。中枢神経系及び交感神経節後線維のα 2 受容体を刺激するこ とによる血管運動中枢抑制作用ならびにノルアドレナリン遊離抑制作用により,血圧を低下さ せる。 問 62 カルテオロールは、アドレナリンβ2 受容体に選択性が高く、気管支平滑筋を弛緩させる。 ×:カルテオロールは非選択的β受容体遮断薬で,心機能を抑制し,高血圧や不整脈などの循環器 疾患に用いられるが,気管支平滑筋を収縮させ,喘息発作を誘発する。 問 63 エドロホニウムは、非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬で、その作用は強く効力の持続も長い。 ×:エドロホニウムは,可逆的コリンエステラーゼ阻害薬で,コリンエステラーゼの陰性部と結合 するが,その作用は弱く,作用の持続時間も短い。重症筋無力症の診断に用いられる。 問 64 ピロカルピンは、瞳孔括約筋を収縮させて、縮瞳を引き起こす。 ○:ピロカルピンは,ムスカリン受容体刺激薬である。瞳孔括約筋の M3 受容体を刺激して収縮さ せることにより,縮瞳を起こす。 問 65 ナファゾリンは、アドレナリンα1 受容体に作用し、鼻粘膜細動脈の血流を減尐させる。 ○:ナファゾリンは,選択的α1 受容体刺激薬。血管平滑筋のα1 受容体を刺激して血管を収縮させ るため,鼻粘膜細動脈の血流を減尐させて,鼻粘膜充血の除去に用いられる。 問 66 エフェドリンは、アドレナリンβ受容体刺激作用とともに、交感神経節後線維終末からのカテ コールアミン遊離作用も示す。 ○:エフェドリンは,混合型の交感神経興奮薬。直接β受容体刺激作用とともに,アミンポンプに 自律神経薬理 20111115- 8 - より神経細胞内に取り込まれ,交感神経節後線維終末からのノルアドレナリン遊離を促進す る。 問 67 トロピカミドは、ムスカリン性アセチルコリン受容体に作用し、眼圧を低下させる。 ×:トロピカミドは,ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬。毛様体筋の収縮を抑制してシュ レム管を閉口させるため,眼圧を上昇させる。 問 68 カルバコールは、ニコチン様作用を示し、コリンエステラーゼにより分解される。 ×:カルバコールは,ムスカリン作用のほかにニコチン作用も持っている。しかし,アセチルコリ ンのアセチル基をカルバモイル基で置換した構造を有しており,コリンエステラーゼで分解さ れにくい。 問 69~問 72 薬物(ア〜エ)をイヌに静脈内投与した場合に観察される主な作用について、それぞれ の記述に対応する化合物とその名称を述べよ。 問 69 アドレナリンα1 受容体直接刺激により血圧を上昇させる。 イ:フェニレフリン。フェニレフリンは,α1 受容体刺激薬であり,血管平滑筋のα1 受容体を刺激 することによる血管収縮作用を示し,血圧を上昇させる。 問 70 カテコールアミン遊離及びアドレナリンβ1 受容体直接刺激により心拍出量を増大させる。 ア:ドパミン。ドパミンはβ 1 受容体刺激作用を持つとともに,アミンポンプにより交感神経細胞 に取り込まれ,ノルアドレナリンの前駆体として,間接的にノルアドレナリン遊離を促進する。 これらの効果により,心拍出量が増大する。 問 71 カテコールアミン遊離により中枢神経を興奮させる。 エ:メタンフェタミン。メタンフェタミンは,ノルアドレナリン遊離促進作用を有する間接型交感 神経興奮薬であるが,血液脳関門を通過して,中枢興奮作用も示す。 問 72 アドレナリンβ2 受容体直接刺激により気管支を拡張させる。 ウ:イソプレナリン。イソプレナリンは非選択的β受容体刺激薬で,気管支平滑筋のβ 2 受容体を 刺激して弛緩させることにより気管支拡張作用を発揮する。 問 73 ピロカルピンは、シュレム管からの眼房水の排出を抑制し、眼圧を上昇させる。 ×:ピロカルピンは,毛様体筋の M3 受容体を刺激して収縮させ,シュレム管を開口して眼房水の 排出を促進する。その結果,眼圧を低下させる。 問 74 ベタネコールは、コリンエステラーゼで分解されやすく、作用は一過性である。 ×:ベタネコールは,アセチルコリンのアセチル基をカルバモイル基に,β位にメチル基をつけた 構造をしており,コリンエステラーゼで分解されにくく,作用は持続性である。また,ニコチ ン作用をほとんど示さず,ムスカリン作用を示す。 問 75 ネオスチグミンは、コリンエステラーゼ阻害作用を有し、手術後の腸管麻痺や排尿障害に用い 自律神経薬理 20111115- 9 - られる。 ○:ネオスチグミンは,可逆的コリンエステラーゼ阻害薬で,アセチルコリンの作用を増強させる ため,手術後の腸管麻痺や排尿障害の改善を目的として用いられる。 問 76 ピレンゼピンは、ムスカリン性アセチルコリン M1 受容体の選択的遮断薬であり、胃液分泌を 抑制する。 ○:ピレンゼピンは,選択的な M1 受容体遮断薬。自律神経節の M1 受容体を遮断することで,神経 性に調節される胃酸分泌を抑制し,抗潰瘍薬として用いられる。 問 77 イプラトロピウムは、経口投与による吸収が良く、気管支平滑筋のムスカリン性アセチルコリ ン受容体を遮断する。 ×:イプラトロピウムは,4 級アンモニウム構造を有する抗コリン薬で,消化管からの吸収が悪く, 経口投与では用いられない。喘息や COPD において,吸入で用いられ,気管支平滑筋のムスカ リン受容体を遮断することにより,気管支拡張作用を示す。 問 78 グアネチジンは、神経終末へのノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで交感神経系の 機能を増強する。 ×:グアネチジンは,アミンポンプによって交感神経節後線維終末に取り込まれ,初期には神経細 胞膜上に分布して膜安定化作用によりノルアドレナリン遊離を抑制し,やがて顆粒中に貯蔵さ れているノルアドレナリンと置換してノルアドレナリンを枯渇させることにより,アドレナリ ン作動性神経遮断作用を発揮する。神経終末へのノルアドレナリン再取り込みを抑制して交感 神経系の機能を増強するのは,イミプラミンのような三環系抗うつ薬やコカイン。 問 79 プロカテロールは、アドレナリンβ1 受容体に対する高い選択性を有する刺激薬である。 ×:プロカテロールは,選択的β2 受容体刺激薬で,気管支平滑筋のβ2 受容体を刺激して気管支平 滑筋を弛緩させ,気管支拡張作用を惹起するため,気管支喘息の治療に使用される薬物である。 問 80 ラベタロールは、アドレナリンα1 及びβ受容体に対して遮断作用を示す。 ○:ラベタロールは,α,β受容体遮断薬。血管平滑筋のα 1 受容体を遮断して血管拡張作用を示 すとともに,心臓のβ1 受容体を遮断して心機能を抑制し,血圧を低下させるため,高血圧症 治療薬として用いられる。 問 81 アセチルコリンは、ムスカリン性アセチルコリン M3 受容体を刺激し、血管内皮細胞における 一酸化窒素 ( NO ) の産生を促進して血管を弛緩させる。 ○:血管内皮細胞にあるアセチルコリンの受容体は M3 受容体。Gq 共役型受容体で,内皮細胞の細 胞内 Ca2+濃度を上昇させ,NOS を活性化して NO 産生を促進する。NO が血管平滑筋のグアニ ル酸シクラーゼを活性化して血管平滑筋内での cGMP 産生を促進し,血管平滑筋を弛緩させ, 血管拡張作用を発揮する。 問 82 アセチルコリンは、ムスカリン性アセチルコリン M2 受容体を刺激し、交感神経終末からのノ ルアドレナリンの遊離を促進する。 ×:交感神経終末からのノルアドレナリン遊離に対するアセチルコリンの作用は知られていない。 なお,アセチルコリンの M2 受容体は心臓に存在して心抑制に作用するほか,副交感神経節後 線維のシナプス前膜に存在し,副交感神経終末からのアセチルコリン遊離を抑制する。 問 83 アセチルコリンは、洞房結節の自動能を抑制して洞性徐脈を起こす。 ○:アセチルコリンは,洞房結節の M2 受容体に作用して K チャネルを開口させ,心筋を過分極さ せることにより自動能を抑制し,洞性徐脈を起こす。 自律神経薬理 20111115- 10 - 問 84 アセチルコリンのアセチル基をカルバモイル基で置換すると、アセチルコリンエステラーゼ及 び非特異的コリンエステラーゼによる分解を受けにくくなる。 ○:アセチルコリンは,4 級アンモニウムの正電荷の部分とアセチル基に,コリンエステラーゼの 陰性部とエステル部がそれぞれ結合し,加水分解される。アセチルコリンのアセチル基がカル バモイル基に置換されると,コリンエステラーゼが結合しにくくなるため,分解されにくくな る。カルバミルコリン,ベタネコール。 問 85 アセチルコリンは、ムスカリン性アセチルコリン M1 受容体を刺激し、Gi タンパク質を介して ホスファチジルイノシトール代謝回転を亢進させる。 ×:M1 受容体は Gq 共役型受容体で,ホスホリパーゼ C を活性化してホスファチジルイノシトール 代謝回転を亢進させ,ジアシルグリセロールと IP3 を産生して情報伝達を行う。Gi タンパク質 と共役したムスカリン性アセチルコリン受容体は,M2 受容体。 問 86 エフェドリンは、節後線維終末からのノルアドレナリン遊離を促進するとともに、アドレナリ ンβ2 受容体を直接刺激し、気管支平滑筋を弛緩させる。 ○:エフェドリンは,混合型の交感神経興奮薬。アミンポンプにより神経細胞内に取り込まれ,交 感神経節後線維終末からのノルアドレナリン遊離を促進するとともに,直接β受容体を刺激す る作用を持っており,気管支平滑筋ではβ2 受容体を刺激することで,気管支平滑筋を弛緩さ せ,気管支拡張作用を示す。 問 87 クロニジンは、節後線維終末のアドレナリンα2 受容体を刺激し、ノルアドレナリン遊離を促 進する。 ×:クロニジンは,Gi タンパク質と共役したα2 受容体に対する刺激薬で,神経細胞のアデニル酸 シクラーゼ活性を抑制する結果,細胞内 cAMP 濃度を低下させ,アドレナリン作動性神経終末 からのノルアドレナリン遊離を抑制する。 問 88 チラミンは、節後線維終末においてシナプス小胞からのノルアドレナリン遊離を促進する。 ○:チラミンは間接型交感神経興奮薬で,ノルアドレナリンの再取り込みを行うアミン取り込み機 構を通って交感神経に入り,アミン顆粒を刺激して神経終末からのノルアドレナリン遊離を促 進することによって血圧を上昇させる。 問 89 フェニレフリンは、アドレナリンα1 受容体を刺激し、アドレナリンより持続的に血圧を上昇 させる。 ○:フェニレフリンは,選択的なα1 受容体刺激薬で,血管平滑筋のα1 受容体を刺激することによ る血管収縮作用を示し,血圧を上昇させる。カテコール構造を持たないため COMT で分解さ れず,アドレナリンよりも作用時間が長いため,持続的に血圧を上昇させる。 問 90 ラベタロールは、アドレナリンα1 受容体を遮断して血圧を低下させるが、血圧降下による反 射性頻脈を起こしやすい。 ×:ラベタロールは,α,β受容体遮断薬。血管平滑筋のα1 受容体を遮断して血管拡張作用を示す とともに,心臓のβ1 受容体を遮断して心機能を抑制し,血圧を低下させるため,高血圧症治 療薬として用いられる。また,β1 遮断作用があることで,反射性頻脈は起こしにくい薬物で ある。 問 91 ネオスチグミンは、末梢においてコリンエステラーゼを可逆的に阻害し、術後腸管麻庫や膀胱 麻痺を改善する。 ○:可逆性コリンエステラーゼ阻害薬のネオスチグミンは,4 級アンモニウム化合物であり,血液 自律神経薬理 20111115- 11 - 脳関門を通過しにくいため,主として末梢で作用する。コリンエステラーゼを阻害してアセチ ルコリンの分解を抑制し,アセチルコリンのムスカリン作用を増強することにより,手術後の 腸管麻痺や排尿障害を改善することを目的として使用される。 問 92 ジスチグミンは、点眼により眼内のコリンエステラーゼを阻害し、眼房水の産生を抑制して眼 圧を低下させる。 ×:ジスチグミンは,可逆性コリンエステラーゼ阻害薬。アセチルコリンの分解を阻害して副交感 神経の作用を増強し,毛様体筋を収縮してシュレム管を開口させ,眼房水の排出を促進する。 その結果,眼圧が低下する。眼房水の産生は抑制しない。眼房水産生を抑制するのはβ遮断薬, 炭酸脱水酵素阻害薬。 問 93 プラリドキシム(PAM)は、コリンエステラーゼ分子に結合した有機リン化合物を解離させて、 コリンエステラーゼを再賦活化する。 ○:PAM は,有機リン化合物とコリンエステラーゼとの結合を解離して,リン酸化されたコリンエ ステラーゼを再賦活化する作用を持ち,有機リン化合物による中毒の解毒薬としてアトロピン とともに用いられる, 問 94 エドロホニウムは、コリンエステラーゼのエステル部位と強固に結合し、コリ.ンエステラー ゼを持続的に阻害する。 ×:エドロホニウムは,可逆的コリンエステラーゼ阻害薬で,コリンエステラーゼの陰性部と結合 するが,その作用は弱く,作用の持続時間は約 5 分程度と短い。重症筋無力症の診断に用いら れる。 問 95 ラタノプロストは、プロスタグランジン F2α受容体を刺激し、眼房水流出を促進する。 ○:ラタノプロストは,PGF2α誘導体であり,FP 受容体(PGF2α受容体)を刺激して,ぶどう膜強 膜流出路(副流出路)からの眼房水流出を促進する。 問 96 シクロペントラートは、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断し、瞳孔を散大させる。 ○:シクロペントラートは,抗コリン薬であり,瞳孔括約筋の収縮を抑制して散瞳を惹き起す。毛 様体筋を弛緩させてシュレム管を閉口させるため,眼房水の流出を抑制し眼圧を上昇させるた め,緑内障には禁忌。 問 97 ブナゾシンは、アドレナリンα1 受容体を遮断し、眼房水流出を促進する。 ○:ブナゾシンは,選択的α 1 受容体遮断薬であり,ぶどう膜強膜流出路からの眼房水排出を促進 して眼圧を低下させる。緑内障の治療に使用される。 問 98 ドルゾラミドは、毛様体の炭酸脱水酵素を活性化し、眼房水の産生を抑制する。 ×:ドルゾラミドは,炭酸脱水酵素阻害薬で,特に炭酸脱水酵素 II 型を特異的に阻害する。角膜透 過性が優れている。眼房水の産生を抑制し,眼圧を下降させるため,緑内障の治療に点眼で用 いられる。 問 99 ナファゾリンは、アドレナリンβ2 受容体を遮断し、表在性充血を抑制する。 ×:ナファゾリンは,選択的α1 受容体刺激薬で,局所の血管を収縮させるため,表在性充血の除去 を目的として使用される。 問 100 チモロールは、アドレナリンα受容体刺激作用による血管収縮を介して眼内圧を低下させる。 ×:チモロールは,非選択的β受容体遮断薬。毛様体上皮細胞のβ2 受容体を遮断することにより, 眼房水の産生を抑制して,眼内圧を低下させる。なお,気管支喘息や閉塞性肺疾患,コントロ ール不十分な心不全には禁忌。 自律神経薬理 20111115- 12 - 問 101 ジスチグミンは、毛様体筋及び瞳孔括約筋を弛緩させ、眼内圧低下及び近視性調節麻痺を引き 起こす。 ×:ジスチグミンは,可逆性コリンエステラーゼ阻害薬。アセチルコリンの分解を阻害することに より副交感神経の作用を増強し,毛様体筋を収縮してシュレム管を開口させる。その結果,眼 圧を低下させる。一過性に,水晶体が厚くなり,遠くが見えにくくなる近視性調節麻痺が起き る。 問 102 イソプロピルウノプロストンは、瞳孔径に影響を及ぼさず、眼房水流出促進により眼内圧を低 下させる。 ○:イソプロピルウノプロストンは,PGF2αの活性代謝物で,FP 受容体(PGF2α受容体)を刺激し て,ぶどう膜強膜流出路からの眼房水流出を促進し,眼内圧を低下させる。瞳孔散大筋や括約 筋には作用しないため,瞳孔径には影響を及ぼさない。 問 103 トロピカミドは、散瞳を引き起こすため眼底検査の前処置に用いられるが、緑内障には禁忌で ある。 ○:トロピカミドは,ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬。瞳孔括約筋の M3 受容体を遮断 することで瞳孔を散大させるが,毛様体筋の収縮を抑制してシュレム管を閉口させるため,眼 圧を上昇させるため,緑内障に禁忌である。 問 104 クレンブテロールは、抗コリン作用による膀胱平滑筋弛緩作用があり、頻尿に用いられる。 ×:クレンブテロールは,選択的β2 受容体刺激薬。膀胱平滑筋のβ2 受容体を刺激して膀胱平滑筋 弛緩作用示すため,腹圧性尿失禁の治療に用いられる。また,気管支平滑筋のβ 2 受容体に作 用して気管支拡張作用を発揮するため,気管支喘息の治療に用いられる。 問 105 ベタネコールは、コリンエステラーゼ阻害による膀胱平滑筋収縮作用があり、排尿困難に用い られる。 ×:ベタネコールは,コリンエステル類に分類される直接的副交感神経興奮薬で,ムスカリン受容 体刺激作用により排尿筋を収縮させる作用を有しているため,手術後や分娩後,神経因性膀胱 等の低緊張性膀胱による排尿困難の治療に用いられる。 問 106 ナフトピジルは、アドレナリンα1 受容体遮断作用があり、前立腺肥大に伴う排尿困難に用い られる。 ○:ナフトピジルは,選択的α1 受容体遮断薬で,特に,前立腺及び下尿道に分布するα1A 受容体を 遮断し,前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する目的で使用される。血管に分布するα1B 受容 体に対する作用は弱いため,血圧下降作用は弱い。タムスロシンと同様の薬物である。 問 107 フラボキサートは、平滑筋細胞内への Ca2+流入阻害作用及びホスホジエステラーゼ阻害作用が あり、頻尿に用いられる。 ○:フラボキサートは,膀胱平滑筋の電位依存性 Ca2+チャネルに作用して細胞内への Ca2+流入を阻 害し,また,ホスホジエステラーゼ阻害作用により膀胱平滑筋の細胞内 cAMP 濃度を上昇させ るため,膀胱平滑筋を弛緩させる。神経性頻尿などの治療に用いられる。 問 108 オキシブチニンは、抗アンドロゲン作用があり、前立腺肥大に伴う排尿困難に用いられる。 ×:オキシブチニンは,ムスカリン受容体遮作用と,直接的な膀胱平滑筋弛緩作用(Ca2+流入阻害 作用)を持ち,膀胱平滑筋を弛緩させ,膀胱の過緊張状態を抑制する薬物で,尿失禁や神経性 頻尿などの治療に用いられる。 問 109 ブナゾシンは、アドレナリンα1 受容体を遮断し、ぶどう膜強膜流出路からの眼房水の流出を 自律神経薬理 20111115- 13 - 促進する。 ○:ブナゾシンは,選択的α 1 受容体遮断薬であり,ぶどう膜強膜流出路からの眼房水排出を促進 して眼圧を低下させる。緑内障の治療に使用される。 問 110 ナファゾリンは、血管平滑筋のアドレナリンα1 受容体を刺激し、表在性充血を除去する。 ○:ナファゾリンは,選択的α 1 受容体刺激薬で,局所の血管を収縮させるため,表在性充血の除 去を目的として使用される。 問 111 イソプロピルウノブロストンは、瞳孔径に影響せず、眼房水の流出を促進する。 ○:イソプロピルウノプロストンは,PGF2αの活性代謝物で,FP 受容体(PGF2α受容体)を刺激し て,ぶどう膜強膜流出路からの眼房水流出を促進し,眼内圧を低下させる。瞳孔散大筋や括約 筋には作用しないため,瞳孔径には影響を及ぼさない。 問 112 トロピカミドは、瞳孔括約筋のアセチルコリン M3 受容体を刺激し、縮瞳を起こす。 ×:トロピカミドは,ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬。瞳孔括約筋の M3 受容体を遮断 することで瞳孔を散大させる。また,毛様体筋の収縮を抑制してシュレム管を閉口させるため, 眼圧を上昇させるため,緑内障に禁忌である。 問 113 グルタチオンは、タンパク質とキノン体の解離を阻害し、水晶体タンパク質の変性を防止する。 ×:水晶体タンパク質の SH 基が酸化されては S-S 結合を形成すると,水晶タンパク質が変性して 水晶体が混濁する。グルタチオンはこの SH 基を保護することにより,水晶体タンパク質の編 成を防止し,白内障の進行を遅らせる。 問 114 緑内障の治療において、チモロールの全身性副作用を軽減するために、点眼後 1~5 分間閉瞼 して涙のう部を圧迫させた後、開瞼するよう指導する。 ○:点眼剤は,鼻涙管を通って鼻粘膜で吸収されて,全身性の副作用を発現することがある。この ため,点眼後数分間は,涙のう部(鼻涙管の入口)を圧迫するよう指導する。 問 115 チモロールの持続性点眼液は、気管支ぜん息患者にも安全に使用できる。 ×:非選択的β受容体遮断薬であるチモロールは,気管支ぜんそく患者には禁忌。 問 116 ラタノプロストは、虹彩に色素沈着を起こすことがある。 ○:ラタノプロストを投与すると,メラニンの増加が現れ,虹彩に色素沈着を起こすことがある。 イソプロピルウノプロスンンでも同様。 問 117 アセタゾラミドは、毛様体上皮に存在する炭酸脱水酵素を阻害することにより房水産生を抑制 して眼圧を低下させる。 ○:アセタゾラミドは,炭酸脱水酵素阻害薬であり,毛様体における眼房水産生を抑制することで 眼圧を低下させる。アセタゾラミドは内服または注射薬として用いられるが,同じ炭酸脱水酵 素阻害薬であるドルゾラミド,ブリンゾラミドは点眼で用いられる。 問 118 緑内障の治療において、ピレノキシンの点眼剤が適応となる。 ×:ピレノキシンは,白内障治療薬。白内障の成因であるキノン体(トリプトファン代謝障害の結 果生じる)が水晶体のタンパク質に結合するのを競合的に阻害して,水晶体タンパク質の変性 を防止する(白内障の進行抑制)。 問 119 アセタゾラミドは、毛様体の炭酸脱水酵素を阻害し、眼房水排出を促進する。 ×:アセタゾラミドは,毛様体の炭酸脱水酵素を阻害して,眼房水産生を抑制する。眼房水の排出 には影響しない。 問 120 ピロカルピンは、毛様体筋を弛緩させ、眼圧上昇及び遠視性調節麻痺を引き起こす。 自律神経薬理 20111115- 14 - ×:ピロカルピンは,コリン作動薬であり,毛様体筋の M3 受容体を刺激して収縮させ,シュレム 管を拡大して眼房水の排出を促進することで,眼圧を低下させ,緑内障を改善する。毛様体筋 が収縮するため,水晶体は厚くなり,近視性調節麻痺を起こす(遠見障害)。 問 121 グルタチオンは、水晶体内可溶性タンパク質のジスルフィド(-S-S-)結合を保護して白濁を予 防するため、白内障治療に用いられる。 ○:グルタチオンは,生体酸化還元平衡剤。白内障の発症に先立ってみられる水晶体中のグルタチ オンの減尐やグルタチオン合成酵素の活性低下に対し,グルタチオンを投与することにより, 発症予防・進行防止効果,SH 酵素やその他の細胞成分の保護を行う。 問 122 チモロールは、毛様体のアドレナリンβ2 受容体を遮断して眼房水の産生を抑制し、眼圧を低 下させる。 ○:チモロールは,非選択的β受容体遮断薬。毛様体上皮細胞のβ2 受容体を遮断することにより, 眼房水の産生を抑制して,眼内圧を低下させる。 問 123 副腎皮質ステロイドは、点眼により白内障や緑内障を誘発することがある。 ○:副腎皮質ステロイドの典型的な有害作用の一つ。眼圧上昇,水晶体タンパク質の変性が関与し ていると考えられる。 問 124 縮瞳薬であるトロピカミドは、緑内障の治療に用いられる。 ×:トロピカミドは,ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬。瞳孔括約筋の M3 受容体を遮断 して瞳孔を散大させる。また,毛様体筋の収縮を抑制してシュレム管を閉口させるため,眼圧 を上昇させるため,緑内障には禁忌。 問 125 ピロカルピンは、瞳孔括約筋のムスカリン性アセチルコリン受容体に結合して縮瞳を起こす。 ○:ピロカルピンは,コリン作動薬であり,瞳孔括約筋の M3 受容体を刺激して,瞳孔括約筋を収 縮させて縮瞳を起こす。毛様体筋の M3 受容体を刺激して収縮させるため,シュレム管を拡大 して眼房水の排出を促進することで,眼圧を低下させ,緑内障を改善する。 問 126 アドレナリンα1 受容体遮断薬であるブナゾシンは、緑内障治療に禁忌である。 ×:ブナゾシンは,選択的α1 受容体遮断薬。ぶどう膜強膜流出路からの眼房水排出を促進して眼圧 を低下させる。緑内障の治療に使用される。 問 127 チモロールの点眼は、瞳孔径や焦点調節に影響を与えない。 ○:チモロールは,非選択的β受容体遮断薬であり,眼房水産生抑制作用により緑内障の治療に用 いられる。また,瞳孔散大筋,瞳孔括約筋には影響を及ぼさないため(それぞれα1,M3 で収 縮),瞳孔径には影響しない。毛様体筋にはβ2 受容体が存在するが,この筋肉の収縮・弛緩 は主に M3 受容体で調節されており,焦点調節にもほとんど影響を及ぼさない。 問 128 カルバコールを点眼すると、まぶしさを訴えることがある。 ×:カルバコールは,コリンエステル類に属する副交感神経興奮薬。ムスカリン受容体を刺激する ことにより,瞳孔括約筋を収縮し,縮瞳作用をあらわすため,副作用として暗黒感がある。ま ぶしくはならない。 問 129 ラタノプロストは、アドレナリンβ2 受容体遮断作用によって眼圧を低下させる。 ×:ラタノプロストは,PGF2α誘導体であり,FP 受容体(PGF2α受容体)を刺激して,ぶどう膜強 膜流出路(副流出路)からの眼房水流出を促進し,眼圧を低下させる。 問 130 アセタゾラミドを内服するときは、L-アスパラギン酸カリウムを併用してはいけない。 ×:アセタゾラミドは,炭酸脱水酵素阻害薬であり,眼房水産生を抑制することで緑内障の治療に 自律神経薬理 20111115- 15 - 用いられる。また,弱い利尿作用があり,低カリウム血症を起こすため,カリウム製剤を併用 することは問題ない。 自律神経薬理 20111115- 16 -