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普通教室における ICT を活用した英語授業の実践

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普通教室における ICT を活用した英語授業の実践
普通教室における ICT を活用した英語授業の実践
楠木佳子:広島工業大学
住所:〒731-5193 広島市佐伯区三宅 2-1-1
TEL:082-921-7419
E-mail:[email protected]
1.はじめに
広島工業大学の英語の授業は従来、以下のように実
施されてきた。
(1)普通教室使用。PC 教室の利用は学期中2回程度。
(開講時間重複による輪番使用)
(2)Moodle を授業外の学習支援ツールとして利用。
授業関連資料のオンライン公開、自学自習用オンライ
ン教材の提供等。
教室環境の事情により PC 教室の常時使用が難しいた
め、授業は普通教室で実施し、オンラインの Moodle サ
イトは学生の自主的な利用に任せてきた。
26年度後期より、本学 HIT 教育機構の取り組みと
して、試験的に一部の普通教室の授業においてタブレ
ット端末(主に学生所有のスマートフォン)を導入し、
授業内で Moodle を利用することとした。本発表では、
26年度後期、27年度前期に実施した、普通教室に
おける ICT を活用した授業について実践例を報告する。
2.授業実践の概要
(1)対象クラス(受講生数)
①総合英語(平均40名)1年生 2クラス
②特別英語(平均40名)2年生 2クラス
③科学技術英語(平均25名)3年生 2クラス
(2)使用機器
①個人のスマートフォン
②大学貸出のタブレット端末(Nexus7)
③スマートフォン以外の個人の端末
スマートフォンを持っていない学生、その他希望によ
り大学よりタブレット端末を貸し出している。使用状
況は図1の通りである。
(図1)学生が使用した機器
(3)利用した Moodle の主な機能
①語彙フラッシュカード(Quizlet)
②小テスト
③ミニッツペーパー(アンケート機能)
④音声の録音と提出(課題)
3.実践例
以下に、2(3)で挙げた Moodle の機能の具体的な
利用例を紹介する。また、その際に生じた幾つかの問
題点についても述べる。
(1)フラッシュカードで語彙学習
Quizlet の音声付語彙カードを用いた語彙学習を毎
授業導入時に実施した。本時の学習語彙(10~15
語程度)について、音声を聞きながらの暗記及び発音
トレーニングをまずは学習者個別に、その後ペアで実
施した。最終的にプロジェクタに語彙カードを映し、
時間制限を設けたゲーム形式のマッチング問題などを
活用しながらクラス全体で意味の確認、発音練習を行
った。各過程を3~5分で区切ることで、学習者は短
い時間でカードを進めながら集中して覚えることを要
求された。語彙学習のウォーミングアップで10分~
15分を要した。語彙カードは授業1週間前から
Moodle 上に掲載している。
(図2)Moodle に組み込んだ Quizlet の語彙カード
(2)小テスト
授業の最後に本時の学習内容(語彙、文法問題)を
確認する小テストを実施した。語彙カードで学習した
Quizlet のコンテンツを Moodle の小テストにエクスポ
ートした10問程度の選択問題にその他文法問題を3
問程度加えた内容とした。文法問題は主に多肢選択問
題、語彙の記述(入力)、穴埋め(入力)形式である。
「テスト」であることを学習者に認識させるため、
学習者はテキスト類を全て片付け、机上には端末だけ
を出した状態で受験する。制限時間(5分)を設け、
ほぼ同じタイミングで終えるように実施した。早く解
公益社団法人 私立大学情報教育協会
平成27年度 教育改革ICT戦略大会
答し終えた学習者が会話したり、端末の他の機能を使
い始めるというケースが何度か生じた。問題の量に応
じた時間設定や声掛けのタイミングなどで繰り返し学
習者には注意を促す必要があると感じている。
(3)ミニッツペーパー
アンケート機能を用いて、学習者の授業態度、理解
度、事前学習の有無、学習した内容のまとめ等を入力
するミニッツペーパーを授業の最後に実施した。入力
後、学習者の端末にも表示される「分析」画面をプロ
ジェクタに映して共有し、他の学習者の入力内容も確
認するよう促した。全ての入力内容は匿名で表示され
るよう設定している。
ミニッツペーパー入力にかける時間が短くなると、
学習者によっては不慣れな文字入力の操作にかかる時
間が不足することもあり、学習内容をまとめて入力す
る項目の入力量が明らかに減った。最低10分は確保
し、学習内容の整理をじっくりと行える環境を整えた
い。
(図3)ミニッツペーパーの「分析」画面
稿」については全回答者194名中30名のみが使用
している。
(図4)
各機能に関して、記述のあった主な意見を表1に示す。
(表1)
機能
学習者の意見
小テスト
・文字入力に手間取る
・いつでも何度でも受験できる復
習テストが欲しい
資料閲覧
・空いた時間に学習できるよう、
教科書も載せて欲しい
・終了した部分の解答と解説を全
て載せて欲しい
・板書内容を載せて欲しい
フラッシュカード
・使いやすい
・発音が確認できるのがよい
・熟語や慣用表現も追加して欲し
い
ミニッツペーパー
(4)音声の録音と提出
一部の授業では、テキスト本文を音読、録音し、提
出する課題を実施した。Moodle 上での音源提出という
教員と提出者の1対1のやり取りに留まらないよう、
良い例は教室で音声を他の学習者に紹介し、共通する
発音の間違いやフレーズの読み方などを取り上げて解
説した。声の大きさ、発音の明瞭さともに、回が進む
につれ改善される学習者がみられた。
4.学習者の評価
使用した端末の使用感について4段階で評価を求め
た。大多数が個人のスマートフォンについて、画面の
見やすさ、文字入力のしやすさ、音声の聞きやすさ等
について回答した。画面と音声については9割以上、
文字入力に関しては8割が良い評価であった。
Moodle の各機能については、複数回答で活用状況を
聞いた。
(図4)機能のうち、
「音源の録音・再生」、
「
投
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・学習内容の振り返りができる
・みんなの回答が共有できる
・入力作業で確認になる
上記の意見に加えて、動画の配信、リスニングコン
テンツの配信を希望する声が複数あった。また、一部
教室では Wi-Fi の接続状況が悪く、通信設備の充実を
求める声も多かった。
5.まとめと今後の課題
従来の授業形式との比較では学習者の9割近くがタ
ブレットを利用する授業を希望した。貸出のタブレッ
ト端末については画面の大きさや操作性の良さは認め
つつ、扱いに慣れた個人のスマートフォンの使用を希
望する学生が圧倒的に多い。そのため現状ではスマー
トフォンでの操作を想定し、端末の操作は選択や短文
の入力などに限定している。今後はさらに、学生が使
用する端末の性質に沿い、なおかつより効果的な教材
の作成、提供の工夫が必要である。
学習者の使用端末が多岐にわたるため、操作関連の
トラブルに教員がすぐに対応できない場面もあった。
通信設備の充実や ICT 活用授業に対する支援体制の確
立も必要不可欠である。
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