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Moodle のテストを楽しくリビングで行う方法

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Moodle のテストを楽しくリビングで行う方法
情報処理学会第 74 回全国大会
5ZG-9
Moodle のテストを楽しくリビングで行う方法
奥井
上総†
菱田
隆彰‡
愛知工業大学大学院経営情報科学研究科
1. はじめに
受験勉強や資格取得をはじめ普段の授業のた
めの予習復習といった自習を行う際,その学習
のためのモチベーションを維持することは,非
常に難しい問題である.学習は多くの場合学生
に と っ て 少 な か ら ず 苦 痛 を 伴うものであり,
我々はそれを和らげる方法を模索する必要があ
る.その方法の1つとしてシリアスゲームがあ
げられる.本研究では,大学生の自習時間の拡
大を目指し,以下の2つの目標を達成するシリ
アスゲームの構築を行う.目標の1つは昨今学
校 教 育 で よ く 利 用 さ れ て い る LMS(Learning
Management System)の持つ試験機能に着目し,
その問題を利用可能なシリアスゲームとするこ
と,もう1つは学生のいる場所に依存すること
なく,いつでもどこでも利用可能なシステムと
して構築することである.
2. 学習意欲とシリアスゲーム
昨今学生の学力不足が問題視されている.一
つの要因として,学校の授業時間外における自
習時間の減少が考えられる.
学生にとって本来自習をするということは,
事前の予備知識を得ることや,学校で得た知識
を定着させるために必要な行為である.学生の
本分である勉学の成果を効果的に得るため,意
識的に最優先事項として行われるべきである.
しかし現実には,学生の限りある余暇を消費す
るための単なる選択肢の一つとなっており,何
らかの必要性がなければ行われない状況となっ
ている.
平成 18 年と 20 年に行われた学生生活調査[1]
では,20 年の大学生の平均自習時間が 18 年の
学生に比べ 2 時間以上少なくなっており,学校
の授業時間以外の学習時間を確保する効果的な
方法の考案が急務である.
The proposal for taking Moodle tests joyfully in a living room.
†
Kazusa Okui, ‡Takaaki Hishida,The Graduate School of
Business Administration and Computer Science, Aichi Institute
of Technology.
その一つの解決方法として,シリアスゲーム
の利用があげられる.シリアスゲームは,学習
を目的としたゲームのことを指し,エンターテ
イメント性を学習に組み入れることで,学習意
欲につなげることができる.具体例として大学
経営に関する知識を身につける「Virtual U」
[2]は米国各地の大学院の高等教育や教育政策等
の授業で利用され実績を上げている.また国連
の食糧支援活動への理解を深めるゲーム「Food
Force」[3]は日本語への翻訳も行われ 3 日間で
10 万本がダウンロードされ,近年では FaceBook
アプリとして遊べるゲームとして公開されてい
る.
最近の学生は,幼少期からテレビゲームや携
帯型のゲーム機などの身のまわりにデジタルゲ
ームを触れる機会が多く与えられた状況で育っ
てきている.シリアスゲームはこのような最近
の学生に対して,自然と受け入れられること予
想でき,結果として自然に学習を促すことに繋
がる仕組みとして有効であるといえる.
また,学生の余暇は自宅にいる時間だけでは
ない.高校生や大学生においては,通学時間内
で余暇として利用できる時間も多い.本研究で
は,さまざまな学外の余暇も自習時間に転化す
るシリアスゲームの開発を目指す.
3. ゲーム開発における問題点と解決方法
実際に大学生向けのシリアスゲームを作るに
あたって解決しなければならないことは以下の 2
点である.
1 つ目は学習のための資料や問題の作成コスト
の問題である.大学生の学習している内容が専
門的な事柄が多いため,対象となる学生に合わ
せたゲーム専用の問題を教員が用意しなければ
ならない.しかし個々のシステムに向けて固有
の問題を作ることは,手間の増大につながり,
内容の統一性を削ぐ事になる.これらは,教員
の問題作成のための負荷の増大と学習効果の低
下に繋がるため解決しなければならない.
2 つ目は学生のいる場所に依存しないシリアス
ゲームを開発するための手間の問題である.
昨今,学生がいる場所で利用できる情報端末は
4-849
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情報処理学会第 74 回全国大会
パーソナルコンピュータだけに限らない.家の
リビングにはゲーム機が置かれ,スマートフォ
ンやタブレット型の携帯情報端末を常時持ち歩
いている.これらの様々な情報端末をうまく利
用できるゲームを用意することで,学生をいつ
でもどこでも自習する環境に誘うことができる.
そのためには,できるだけ開発効率の良い環境
を選ぶ必要がある.
これらの問題点に関して,我々は以下の方法
を使用することで,解決を図る.
1 つ目の問題作成コストの問題を解決するため
に,我々は,本ゲームに対してよく知られた学
習支援システムである Moodle の問題バンクと連
携機能を設ける.具体的には Moodle で作成した
問題を,Moodle XML フォーマットでエクスポー
トしたファイルを本ゲームで利用する.
この仕組みを設けることで教員が1度 Moodle で
問題を作成すれば,学生は Moodle 上でも,本ゲ
ーム上であっても同じ問題で学習ができ,内容
の統一性の問題を軽減することが可能である.
2 つ目の問題に対しては,Microsoft XNA を利
用する.XNA は WindowsPC,XBOX360,Windows
Phone 上でのゲーム開発用のツール群である.ラ
イブラリの多くが共通化されており,ほとんど
コードを改変することなく各機種に対応した開
発ができることが特徴である.ゲームを3種類
のプラットフォーム向けに開発をすることで自
室にある WindowsPC においても,XBOX360 のおか
れたリビングにおいても,Windows Phone を使っ
て通学途中のちょっとした時間においても,手
軽に同じ内容のゲームを使って学習することが
できる.
4. 3 次元射的ゲーム
我々は,3 節に述べた Microsoft XNA 開発環境
を利用し,Moodle との連携機能を実装したシリ
アスゲームとして,多肢選択式の 3 次元射的ゲ
ームの開発を行った.Moodle で作成した問題バ
ンクの多肢選択問題(2 から 8 択問題)に対応し
ており,ゲームに組み込むことで問題を簡単に
変更して遊ぶことができる.ゲームは Windows
PC,XBOX360,Windows Phone で動作する.
ゲームを起動すると,問題選択画面に移動す
る.問題選択画面では登録されている問題の問
題タイトルが表示される.問題を選択すると,
ゲーム開始となり,Figure.1 に示すメイン画面
が現れる.
メイン画面では画面上部に問題文,画面下部
に4つの解答群が表示される.解答群から正解
だと思う番号と同じ番号が書かれた箱を撃ち落
とすことで解答を行う.Windows PC と XBOX360
については,XBOX360 用のコントローラを使用し,
射的の銃はコントローラの左スティックで前後
左右に移動,右スティックで銃を回転すること
ができる.弾の発射は,右トリガを引くことで
行い,箱を台から落下させることができれば,
その箱の番号によって,問題の正解,不正解の
判定が画面に表示される.A ボタンを押すことで
次の問題が表示される.画面右側ではゲーム開
始からの経過時間と,現在までの解答数と正解
数,スコアを表示し確認できる.順次,問題フ
ァイルに入っている問題が出題され,それらを
すべて回答するまで続ける.
解答し終えると結果画面が表示される.結果
画面には経過時間と正答率スコアが表示される.
経過時間,現在までの解
答数と正解数,
スコアを表示
問題文
解答郡
Figure.1
射的ゲームメイン画面
5. まとめ
自習問題の拡大を目指したシリアスゲーム「3
次元射的ゲーム」の制作を行った.Moodle の問
題をインポートして利用することで,問題作成
者に過剰な負荷をかけることなく,リビングや
通学途中で,Moodle の問題をゲームとして遊ぶ
ことを可能とした.本ゲームによって,学生の
自習意欲の向上が期待できる.
今後多くの人に射的ゲームに触れてもらい,
その評価や実際の学習効果を確かめたい.
参考文献
[1] 独立行政法人日本学生支援機構 http://www.jasso.go.jp/
[2] Virtual U Project 2003 http://www.virtual-u.org/
[3] Konami Digital Entertainment World Food Programme
2011 http://www.foodforce.konami.jp/
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