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変分問題(オイラー・ラグランジュ乗数法) 1 極値の必要条件
変分問題(オイラー・ラグランジュ乗数法) 線形ベクトル空間 X において、その部分領域 D と m +1 個の汎関数 :J(x),K i (x),i = 1, 2, · · · ,m,x ∈ X および実数 ki ,i = 1, 2, · · · ,m が与 T えられたとする。変分問題とは、条件 x ∈ D ∩ i {Ki (x) = ki } のもとで J(x) → min / max となる極値とそのときの値の組; J(x∗ ), x ∗ ∈ X を求 めること。与えられた汎関数の滑らかさを仮定して、これから導かれる微 分方程式を解くことが基本である。 1 極値の必要条件 ガトー微分 δJ(x; h),δK i(x; h),i = 1, 2, · ·· ,m, x,h ∈ X をもちいて、 極値であるための必要条件は、あるラグランジュ乗数 λi, i = 1, 2, · · · ,m が存在して δJ (x∗ ;∆ x) = Σiλi δKi (x∗ ;∆x) 1.1 ∀∆x ∈ X 固定端点の問題 関数 F = F (x,y,z),x,y,z ∈ X 、 定数 x0 ,x 1 ,k 0 ,k 1 が与えられたとき、 Y (x0 ) = k0,Y (x1) = k1 のもとで Z x1 F (x,Y (x),Y 0 (x)) dx → min x0 となる Y をもとめよ。 R x1 このとき、 δJ (Y ;∆Y ) = x0 (FY ∆Y + FY 0 ∆Y 0 )dx,δK 0 (Y ;∆Y ) = ∆Y (x0 ),δK 1 (Y ;∆ Y ) = ∆Y (x1 ) となり、 FY (x,Y (x), Y 0 (x)) − 1.2 d FY 0 (x,Y (x),Y 0 (x)) = 0 dx 固定端点、x によらない場合 d d 関数 F = F (y,z),y,z ∈ X ならば、 [F −Y 0 FY 0 ] = Y 0 [FY − FY 0 ] dx dx より、 F (Y (x),Y 0(x)) − Y 0 FY 0 (Y (x),Y 0(x)) = C (C は定数)の形となる。 1 1.3 固定端点、y によらない場合 関数 F = F (x,z),x,z ∈ X ならば、 FY 0 (x,Y 0(x)) = C (C は定数)の形となる。 時間最短問題 2 問題(流れのある川でのボート横断の時間最小コース) : 流れのある川をボートの操舵コントロールで”川下”のある地点へと横 断したい。川幅は l で、一定の速度 v0 で進み、方向 α をコントロールす る。ボートのコースを曲線 γ : x = ξ(t),y = η(t), 0 ≤ t ≤ T あるいは γ : y = Y (x),x ∈ [0,l] と表し、与えられた2点 P0 = (0, 0),P 1 = (l,y 1 ) RT R l dt を結ぶ曲線で横断に要する時間 T = 0 dt = 0 dx dx を最小にせよ。出 発する川岸 (原点)から正の方向にある距離 x における川の速度は w(x) とする。 速度の関係式は から T dx dy = ξ 0 (t) = v0 cos α, = η 0(t) = v0 sin α + w(ξ(t)) dt dt = = RT 0 1 v0 √ R dt R dt = 0l dx dx = 0l v0 dx cos α R l √1−e(x)2 +Y 0 (x)2−e(x)Y 0(x) 1−e(x)2 0 dx 1−e(x)2 +z 2 −e(x)z となるから、F (x,z) = で、”y によらない場合” となる v0 (1−e(x)2 ) から、FY 0 (x,Y 0(x)) = C の微分方程式を初期条件 Y (0) = 0 で解く。ここ Rx w(x) w(η(t)) e(ξ)+A(1−e(ξ)2 ) で e(x) = v0 = v0 。これを解くとY (x) = 0 √ dξ 1−2Ae(ξ)−A2 (1−e(ξ)2 ) Rl e(ξ)+A(1−e(ξ)2 ) 条件 y1 = 0 √ dξ 1−2Ae(ξ)−A2 (1−e(ξ)2 ) √ 1−2Ae(x)−A2 (1−e(x)2 ) コントロールの角度は cos α(x) = 最短時間は 1−Ae(x) R l Tmin = v10 0 cosdx α(x) 問。 (1) 一定流の速度でつぎの具体的な数値の場合、 v0 = 88,l = 300,w (x) = 88 300 √ √ (constant stream), y1 = 3 のとき計算してみよ。 3 (2) ”川下”ではなく”川上”に目的地があるときには、(1) はどうな るか? 2 3 回転体の表面積 問題(回転体の表面積) :2点が P0 = (x0 ,y 0 ),P 1 = (x1 ,y 1 ), (x0 < x < x1 ,y 0 ,y 1 > 0) と与えられている。この点を通る曲線 γ : y = Y (x) を x 軸 p Rx の周りに回転させたとき、その表面積A(Y ) = 2π x01 Y (x) 1 + Y 0 (x)2 dx x−b を最小とする曲線はカテナリー Y (x) = a cosh (ここで a,b は定数) a となることを示せ。 √ ヒント:F (y,z) = 2πy 1 + z 2 に E-L 方程式を適用せよ。 4 有名な等周問題 古典的な等周問題(Queen Dido’s Problem)ディド女王の城郭の周り に縄を張り、囲いを広く求めた。ローマ時代から知られているという。 問題:2点 P0 = (x0 , 0),P 1 = (x1 , 0), (x0 < x1 ) と曲線 γ : y = Y (x) の長さ l, ただし x1 − x0 < l < π/2(x1 − x0 ) が与えられたとき、この曲 線で囲む面積が最大となるのはどういう場合か? Rx p ヒント:3条件 l = x 01 1 + Y 0(x)2 dx,Y (x0 ) = 0,Y (x1 ) = 0 のも Rx とで、 x01 Y (x)dx → max。この E − L 方程式を導く。すなわち固定 Rx 端点の問題として J(Y ) = x01 F(x,Y (x),Y 0 (x))dx,K 1 (Y ) = Y (x0 ) = Rx 0,K 2 (Y ) = Y (x1 ) = 0,K 3 (Y ) = x01 G(x,Y (x),Y 0(x))dx ならば、適当 µ ¶ d d な定数 λ ; FY − F Y 0 − λ GY − GY 0 = 0 dx dx √ この等周問題では F (x,y,z ) = y,G(x,y,z) = 1 + z 2 とおけば FY = (x − a)2 0 1,F Y 0 = 0,G Y = 0,G Y 0 = √ Y 0 2 であるから、Y 0 (x)2 = 2 1+Y c − (x − a)2 2 2 2 であって、(x − a) + (y − b) = c が求める曲線。定数 a,b,c を定める。 5 最速降下問題 (Brachistochrone problem) スリリングなジェットコースターをつくる。最速降下問題(Brachistochrone problem) とよばれ、お馴染みの曲線、サイクロイドが求めるものである。 問題。固定された2点がつぎの条件 Y (x0 ) = y0 ,Y (x1 ) = y1 で与えら れ, 目的としては Z x1 s 1 + Y 0 (x)2 T (Y ) = dx → minY 2g(y0 − Y (x)) x0 2点の間を最小の時間で到達をしようとするコースを定めよ。 3 s 1+ z 2 で、 2g(y0 − y) 対応する E − L 方程式は ”F が x によらない場合”F − Y 0 FY 0 = C の 形。したがって s A − (y0 − Y (x)) 0 Y (x) = − y0 − Y (x) このときには目的の汎関数の形から、F = F (y,z ) = を得る。ここで係数が負であるの理由は、降下するグラフを対象とする から。この微分方程式を解くために、新しい変数 θ = θ(x); y0 − Y (x) = A A sin2 θ(x) 2 = 2 (1 − cos θ(x)) を導入する。これを積分して γ : x = x0 + A A θ0 ≤ θ ≤ θ1 また P1 = (x1 ,y 1 ) を通る 2 (θ−sin θ),y = y0 − 2 (1−cos θ), から A(θ1 −sin θ1 ) = 2(x1 −x0 ),A (1−cos θ1 ) = −2(y1 −y0 ), 0 < θ1 < 2π これから A と θ1 が定まる。さらに θ0 = 0 として s s Z x1 s Z θ1 2 + ( dy )2 ) ( dx 1 + Y 0(x)2 A dθ dθ Tmin = dx = dθ = θ1 2g(y0 − Y (x)) 2g(y0 − Y (x)) 2g x0 0 6 測地線 (Geodesic Curve) 測地線とは, R 3 のある曲面 S 上の与えられた2点を結ぶ最短距離。一 般の位相空間においても同様な最短距離を求めることが行われ、これは最 も基本的な場合となっている。 6.1 直円柱の場合 問題(直円柱上の測地線)曲面S : x = a cos θ,y = a sin θ,z = u, 0 ≤ θ ≤ 2π, −∞ < u < ∞ における曲線 γ : x = a cos θ,y = a sin θ,z = U(θ), θ0 ≤ θ ≤ θ1 の2点 P0 : x0 = a cos θ0 ,y 0 = a sin θ0 ,P 1 : x1 = a cos θ1 ,y 1 = a sin θ1 を結ぶ測地線をもとめよ。 Rθ 目的の汎関数は L(U ) = θ01 F (U 0 (θ))dθ → min . ただし F = F (w) = √ a2 + w 2 で、条件 U(θ0 ) = z0 ,U (θ1 ) = z1 のもとで定めよ。 求める曲線はつるまき線(螺旋) U(θ) = Aθ + B (A,B は定数)で p θ1 z0 −θ0 z1 0 A = zθ11−z a2 (θ1 − θ0 )2 +( z1 − z0 )2 つまりピ −θ0 , B = θ1 −θ0 . Lmin = タゴラスの定理にほかならない。 6.2 球面の場合 問題(球面上の測地線)曲面 S : x = a sin φ cos θ,y = a sin φ sin θ,z = a cos φ, 0 ≤ θ ≤ 2π, 0 ≤ φ ≤ π における曲線γ : x = a sin φ cosΘ(φ),y = 4 a sin φ sinΘ(φ),z = a cos φ, φ0 ≤ φ ≤ φ1, の2点 P0 = (x0 ,y 0 ,z 0 ),z 0 = p p x20 + y02 + z02 cos φ0 , P1 = (x1 ,y 1 ,z 1 ),z 1 = x12 + y12 + z12 cos φ1 (0 ≤ φ0 ,φ 1 ≤ π) を結ぶ測地線をもとめよ。 目的は L(Θ) = Z φ1 φ0 F (φ, Θ0 (φ))dφ → min p で、ただし F = F (φ,w) = a2 1 + w2 sin2 φ とし、条件 tanΘ(φ0 ) = y0 y1 x0 , tanΘ(φ1 ) = x1 となる。E−L 方程式は、”Θ を含まない場合”であって、 √ A2 FΘ0 (φ, Θ0(φ)) = C を解けばよい。 Θ0 (φ) = w = ,A = aC2 2 sin φ sin φ−A ここで A = sin α とおく (α は定数)。新しく変数 u を tan φ = u1 を導入 tan α √ − tan α すると、 dΘ du = 1−u 2 tan2 α 。両辺を積分して cos[Θ(φ) + β] = tan φ 。両辺 に a sin φ をかけると、答えは x cos β − y sin β = z tan α を得る。いう までもなく、平面の方程式で原点を通るもの。α,β は定数。したがって球 面の測地線は中心を通る平面で球を切った切り口となる。L = aζ, cos ζ = x0 y0 +x1 y1 +z0 z1 , 0 < ζ < π。 a2 6.3 円錐の場合 問題(直円錐上の測地線)曲面 S : x = r cos θ,y = r sin θ,z = mr, 0 ≤ θ < 2π,r ≥ 0 における曲線 γ : x = R(θ)cos θ,y = R(θ)sin θ,z = mR(θ), θ0 ≤ θ ≤ θ1 , の2点を結ぶ測地線をもとめよ。 R = R(θ) の満たす式 2 (1 + m2 )r0 2 R0 = R2 (R2 − r0 2 ), ただし R0 = dR dθ . ∃r0 ;0 ≤ r0 ≤ R(θ) これを解いて R(θ) = r0 ¸ θ +β sin √ 1 + m2 · ここで r0,β は S 上の2点 P0 ,P 1 を通ることから定める。 参考書;Donald R. Smith; ”Variational Methods in Optimization”, Dover 0-486-40455-2, 1998 5