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二次性高血圧の診断と治療

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二次性高血圧の診断と治療
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二次性高血圧(070907、100123)
(100123)二次性高血圧の講演会に出席した内容を加筆
二次性高血圧は治る!(ものが多い)。ので、疑われる症例はスクリーニングをしておきたい。見
た目も重要であるし、検査をしないと判断がつかないものも多い。Panzer の赤本、ガイドラインを
中心に、二次性高血圧について勉強してみた。22 年 1 月の二次性高血圧の講演会で勉強した部
分も加筆。
頻度
参考文献1によると二次性高血圧の頻度は 1~5%。成人の二次性高血圧の最も良くある原因
は腎血管狭窄と腎不全であるとしている。参考文献1で紹介されている Mayo Clinic と Cleveland
Clinic の疾患の頻度は以下のとおり。セッティングが異なるのでそのまま頻度は使えないが、あく
まで目安として以下のような疾患が多いという目安となる。
Mayo Clinic
Cleveland Clinic
Renovascular disease
0.18%
4.4%
Pheochromocytoma
0.04%
0.2%
Hyperaldsteronism
0.01%
0.4%
Coarctation
0.6%
Cushing syndrome
0.3%
参考文献2によると、欧米の高血圧専門外来での頻度は 5%未満~10%とされ、その中でも腎実
質性高血圧が大半を占めている。日本の報告では内分泌性高血圧と腎血管性高血圧だけで高
血圧患者の 9.1%を占めるとされている。内分泌/循環器専門の先生の中にはもっと多いと考えた
ほうがいいという先生もいた。久山町研究では、1961 年からの 20 年間に 131 例の高血圧者が剖
検されたが、二次性高血圧の頻度は 3.8%であったという。
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(参考文献 2 より引用)
どんなとき疑うか?
発症年齢が若い、急性発症、非常に高い高血圧のほか、慢性の経過であっても説明できない
高血圧の増悪や難治性などの特徴を持った高血圧で二次性高血圧の可能性が高くなる。また、
本態性高血圧は、通常症状がないので、症状を伴う高血圧(以下の項目を参照)は二次性高血
圧を疑う。本態性高血圧の発症年齢は通常 30-55 歳といわれているが、人種差がある。目安とし
て覚えておく。50 歳以上であれば家族歴の相対危険度は 1 なので、聴取してもあまり診断に関与
しないという。
アルコール、肥満、SAS も良くある原因である。生活習慣の変更(塩分摂取など)、服薬状況
(NSAIDs、甘草製剤、糖質コルチコイド、シクロスポリン、エリスロポエチン、エストロゲン、交感神
経刺激薬)も確認する。
豆知識であるが、偽性アルドステロン症は高血圧と低カリウム血症を呈する。原因である甘草
(グリチルリチン)が鉱質コルチコイド作用を示して症状を呈すると考えられがちのようだが、実際
は 11β‐HDS2 という酵素を阻害することにより、ミネラルコルチコイドが増産されることが原因。
参考文献 2 に紹介されている NSAIDs の血圧に及ぼす影響を検討した報告では、平均血圧
5mmHg 程度の上昇をきたすとされている。また、甘草 50~200g/日摂取(2~4 週)により収縮期血
圧は 3.1~14.4mmHg 上昇したと紹介されている。糖質コルチコイドは低用量では高血圧をきたさ
ないとするものの、高齢者ではプレドニゾロン服用量の増加に伴い、血圧上昇度が大となり、
20mg/日以上を服用すると、その上昇は顕著としている。エリスロポエチンは急激な高血圧発症を
きたすことがある。日本での市販後調査では 29%に血圧上昇を認めた。
検査方針
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参考文献1では、二次性高血圧はまれなので、病歴、身体所見、Cr や電解質(K、重炭酸)など
の検査所見の異常や尿検査の異常を認めたとき更なる検査を進めるべきとされている。しかし、
それだと見逃す疾患も多く、積極的に診断するためにはスクリーニング検査の網を広げる必要が
ある。中年の患者で病歴や身体所見で二次性高血圧を疑う所見が無く、腎機能や電解質、尿検
査で異常が無い場合には本態性高血圧として治療を開始する。難治であったり、急激な増悪を認
めたりする場合には二次性高血圧を疑えばよい。前述のように、発症年齢が若い、急性発症、非
常に高い高血圧のほか、慢性の経過であっても説明できない高血圧の増悪や難治性は要チェッ
クである。
ただ、網を広げるといっても、プライマリケアに携わる医師であれば様々な事情でスクリーニン
グに手を出せないことも多いのではないだろうか。ある循環器の先生の講演で、「アムロジピン1T
で良好なコントロールが得られるようなら二次性高血圧では無い」と述べていた。まあ、例外はあ
るとしても、貴重な Tips の一つと思われる。
腎実質性高血圧
参考文献2によると、二次性高血圧の中で腎実質性高血圧の頻度が最も高い。糖尿病性腎症、
慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎などが腎実質性高血圧に含まれる。高血圧を指摘された場合に、
既に疾患が診断されている場合も少なくないと思うが、一般には、クレアチニンが高かったり、電
解質異常があったり、尿検査で異常がみられる場合には腎臓疾患による高血圧も考慮される。こ
れらの検査の組み合わせは感度も特異度も高いが、高齢女性ではクレアチニンが上昇しないこと
もあるので注意が必要である。
□ クレアチニン高値
□ 電解質異常
□ 尿検査で異常
慢性腎疾患は高血圧の原因となりうるが、逆に高血圧によりしばしば腎臓が障害される。両者
が合併している場合、どちらが原因か判断できない場合も多いが、大まかに以下のような場合に
腎疾患による高血圧を考える。
□ 高血圧に先行して腎疾患、妊娠腎、検尿異常が存在
□ 検尿異常や腎障害に比較して、高血圧が軽症である場合
□ 腎以外の高血圧性心血管合併症が少ない場合
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腎動脈狭窄
参考文献 2 によると、狭窄の原因として比較的若年者に好発する線維筋性異形成(約 38%)と、
中・高年に多い粥状動脈硬化(約 38%)が主要なものであり、若年女性に多い大動脈炎症候群(約
15%)や先天性奇形、腎動脈瘤などもあるとされる。繊維筋性異形成は 30 歳以下の女性に多い。
動脈硬化による腎動脈狭窄は 50 歳以上で認められる。
大動脈炎症候群では脈拍・血圧の左右差、頸部あるいは腹部血管雑音の聴取、頸動脈洞反射
の亢進などが主要所見であるが、発生機序は単一ではなく、1)腎血管性高血圧、2)大動脈狭窄
性高血圧(異型大動脈縮窄症)、3)大動脈弁閉鎖不全性高血圧、4)大動脈壁硬化性高血圧など
の各要素があるとされる。
一般に、身体所見で、腎血管の bruit(高調な雑音)が聴取される場合にこれらの疾患を疑う。
約 40%の患者で bruit が聴取される。低カリウム血症は無い事も多いので、疾患の有無の評価に
は向かない。ACE 阻害薬、ARB 投与後に急性腎不全や急激な Cr の増加を認めた場合には疑わ
しい。
□ 腎血管の bruit(約 40%)
□ 低カリウム血症
□ ACE 阻害薬、ARB 投与後に急性腎不全や急激な Cr の増加
参考文献 1 によると、腎動脈狭窄が疑われる場合の検査には captopril renal scan が第一選
択の検査で、第二選択の検査は duplex ultrasonography とされている。これらの検査は、どの施
設でも手軽に出来るわけではない。エコーは検査者により技術が異なることが問題である。また、
肥満の患者では腎動脈を描出するのが困難である。腎のサイズの左右差は腎動脈狭窄を疑う手
助けにはなるが、軽度から中等度の腎動脈狭窄では 70%で左右差を認めず、高度であっても
25%の患者で左右差を認めない。カプトプリルテストは感度も特異度も報告によってさまざまであ
り、snsitivity 34~76%、specificity 58~93%とする報告もあれば、各々96%、55%とする報告も
あれば、73~91%、72~89%とする報告もある。参考文献 2 では基礎値のレニン活性の上昇とカ
プトプリル試験を機能的スクリーニング検査としてあげている。カプトプリル試験であれば負荷前
後のレニン活性を測定するだけなので、設備の整っていない診療所でも出来そうである。一時間
後のレニン活性が①12ng/ml/h 以上、かつ②前値より 10ng/ml/h 以上、かつ③150%以上の増加
で陽性とする。それでも、ホルモンデータからは確定診断も除外診断も難しいため、結局は画像
的な診断が最も信頼の置ける検査となる。MRIも感度と特異度が非常に高い。参考文献 2 には最
近のメタアナリシスを引用して、腎血管性高血圧の診断には造影 CT による血管造影、またはガド
リニウム投与による三次元磁気共鳴血管造影(MRA)の有効性が高いと記載している。これらの
検査で腎動脈狭窄が疑われれば gold standard である腎動脈造影を行ない、治療を行なう。治療
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のためには詳細な腎血管の評価が必要であり、最終的に大動脈造影や選択的腎動脈造影が不
可欠である。
この疾患は最終的に狭窄を改善して血圧が改善すれば、腎血管性高血圧と判断することもあ
る。それくらい診断が難しい場合もあるということを覚えておきたい。
スクリーニングに画像診断を適用する場合、どのような患者に画像診断のスクリーニングを行う
のかが問題となる。ただ、負荷試験を含めたホルモン検査ではなかなか診断に結びつかないこと
から、ほぼ全ての症例に画像診断のスクリーニングを行うという専門の先生もいる。
(参考文献 1 より引用)
□ レニン
□ アンギオテンシン
□ captopril renal scan
□ ultrasonography
□ カプトプリルテスト
□ CT/MRI
□ 腎動脈造影
治療の第一選択は経皮経管的腎動脈形成術(percutaneous transluminal renal angioplasty:
PTRA)である。最近ステントが併用されるようになり、治療成績が向上してきているようだ。血行再
建が困難な場合、バイパス術や自家腎移植などの外科的血行再建を検討する。一側の腎機能が
完全に廃絶している場合は、腎摘出術で血圧の改善が期待できる。血行再建が不可能な症例に
は降圧薬による治療を行う。参考文献 2 によると、降圧薬としては RA 系を抑制する β 遮断薬、
ARB や ACE 阻害薬を選択するとされる。ARB や ACE 阻害薬使用時は、両側性腎動脈狭窄がな
いことを確認した上で、少量から投薬を開始する。
ステントの適応は施設によって様々と思うが、75%程度の狭窄であってもステントを入れるという
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先生もいる。その理由として、放置すれば進行する可能性も高く、患側の腎機能は廃絶することに
なり、仮に両側の腎動脈で狭窄が進行した場合、完全に腎機能が廃絶してしまうので、長期的な
腎保護の観点から施行するという。
褐色細胞腫
褐色細胞腫は持続的または一過性の高血圧を認める。症状(頭痛、動悸、発汗)があるときに
は症状のあるときに蓄尿をしたほうが良い。この 3 つの症状があると強く褐色細胞腫を疑う。起立
性低血圧、蒼白、不安、体重減少もしばしば認められる。よく、5H:高血圧(Hypertension) 、代謝
亢進(Hypermetabolism) 、高血糖(Hyperglycemia) 、頭痛(Headache) 、発汗過多(Hyperhydrosis)
といわれるが、大抵 5 つはそろわない。二次性高血圧の講演会で、腹部症状が多いことも話題に
上がっていた。褐色細胞腫はエピネフリンまたはノルエピネフリンまたはその両方を分泌するが、
中にはドーパ、ドーパミン、他のペプチドホルモンを分泌し、症状はそのホルモンの種類によって
異なる。MEN1、2を伴う場合にはその症状も伴う。褐色細胞腫を見つけたら、家系調査もしなけ
ればならない。
□ 持続的または一過性の高血圧
□ 頭痛
□ 動悸
□ 発汗
□ 腹部症状(腹満感など)
□ 代謝亢進
□ 高血糖
□ MEN1、2を伴う場合にはその症状
褐色細胞腫を疑う場合には 24 時間蓄尿による VMA、メタネフリン、カテコラミン測定が各々同
様の検査特性を有している(薬剤や食事に注意)。VMA、メタネフリン、カテコラミンのそれぞれが
独立していると考えると、単独で1項目が高いからといって褐色細胞腫の確率は高くならない。判
別がつかない場合には同じ検査を繰り返したり、クロニジン抑制テストを行なう。クロニジン抑制テ
ストは非常に感度と特異度が高い。利尿剤とβブロッカーはテストの前に中止する。カテコラミン
は変動が大きいので、軽度の上昇だけでは診断に直結しない。正常値の 3 倍を超えたら疾患の
存在を疑うという専門家もいる。
蓄尿が困難な場合にはどうしたらよいだろうか?内分泌科の先生に聞いたところ、蓄尿は必ず
しも必要なく、随時尿(クレアチニン補正)のメタネフリンとノルメタネフリンの和が1を超えたら褐色
細胞腫を疑えばいいという。スクリーニング検査としてはアドレナリン 3 分画と随時尿のメタネフリ
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ン、ノルメタネフリン、(VMA)を推奨していた。これなら外来でも可能である。
採血で褐色細胞腫が疑われる場合には CT、MRIなどで局在を調べる。はっきりしない場合に
は MIBG スキャンを行なう。15%は副腎外に問題があるため、副腎の画像で問題がないからとい
って否定は出来ないからである。国家試験的には 10%腫瘍(両側、悪性、副腎外が各々10%)とし
て有名である。
この腫瘍は比較的大きい腫瘍が多いので、エコーなどで見つかることも多い。消化器疾患のス
クリーニングで見つかることも多いという。
(参考文献 1 より引用)
参考文献3に紹介されている感度と特異度は以下の通り。組み合わせによる統合尤度比(joint
likelihood ratio)も紹介されている。
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(参考文献 3 より引用)
□ 24 時間蓄尿による VMA、メタネフリン、カテコラミン
□ 随時尿のメタネフリン、ノルメタネフリン、(VMA)
□ カテコールアミン 3 分画
□ 腹部エコー
□ クロニジン抑制テスト
□ CT/MRI
□ MIBG スキャン
診断がついた場合には基本的には手術である。手術不可能な場合でもプライマリケア領域でフ
ォローすることは少ないと思うが、基本的には α 遮断薬と β 遮断薬を使用する。血圧の上昇が
軽度であり、投薬が必要ないと思われる症例でも、必ず血圧が上昇している期間が存在するので、
診断がついたら血圧の高低に関わらずα遮断薬を出すのが鉄則という循環器の専門家もいる。
参考文献 2 によると、長時間作用型 α 遮断薬であるドキサゾシンの有効性は、全体で 79.2%、
単独で 66.7%、β 遮断薬との併用で 91.7%とされるようだ。降圧が不十分な場合には Ca 拮抗薬や
ACE 阻害薬を加える。ちなみに、β 遮断薬の単独投与は、α 受容体刺激作用が優位となり血圧
上昇を招くので禁忌。
大動脈縮窄症
参考文献 1 によると、小児の領域では大動脈縮窄が二次性高血圧の最も多い疾患の一つとさ
れる。血圧の左右差が大きい場合には大動脈縮窄も疑う。上肢と下肢の血圧の差が 20mmHg 以
上ある場合にも強く疑われる。胸腹部の雑音、胸骨切痕上に振戦を認めることがある。半数以上
に収縮期のクリックを認めるとされる。大動脈縮窄が疑われる場合には MRI や心エコーを調べる。
心エコーの感度と特異度は各々、43-86%、79-100%、MRI の感度と特異度は 90%、95%とされ
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ている。正確な評価には血管造影が必要。
スクリーニング検査として四肢の血圧を測定するために、PWV・ABI を測定する機器が便利とい
う専門家もいる。足背動脈の聴診で聴診する場合と比較して時間の節約にはなる。
□ 血圧の左右差
□ 上肢と下肢の血圧の差
□ 胸骨切痕上に振戦
心拍出量増加を伴う血管性高血圧
大動脈弁閉鎖不全症、動脈管開存症、動静脈瘻などでは、1 回心拍出量の増加を主な機序と
して収縮期高血圧を呈する。大動脈弁閉鎖不全症では脈圧の開大が診断のきっかけになること
があるので注意。心雑音が聞こえないこともあり、心エコーが有用。
□ 脈圧の開大(収縮期血圧上昇)
□ 心エコー(心雑音が聞こえないこともある)
脳・中枢神経系疾患による高血圧
参考文献 2 によると、頻度は稀であるが、脳腫瘍、特に後頭蓋窩の腫瘍、脳(脊髄)炎、脳外傷
などの中枢神経性疾患では、頭蓋内圧亢進による延髄孤束核など脳幹部の機械的ストレスを介
して末梢交感神経活性が亢進し、高血圧を呈しうる(クッシング反応)とされている。また、脳卒中
発症 1~2 週間以内の急性期には、脳出血、脳梗塞の病型にかかわらず血圧は高値を示す。
甲状腺疾患
プライマリケア領域でも高頻度疾患である。様々な症状を呈するが、倦怠感を訴えることが非
常に多いという専門家もいる。心房細動を契機に発見されることもある。バセドウ病であっても甲
状腺腫大は高齢男性では認めることは少ないので注意が必要である。
甲状腺機能亢進症も、甲状腺機能低下症も両方高血圧と関連する。甲状腺機能亢進症では通
常収縮期高血圧が認められる。代表的疾患はバセドウ病と無痛性甲状腺炎である。
この 2 つはエコーで大方区別がつく。バセドウ病は筋肉に比べて高輝度で、ふわふわとしたス
ポンジケーキ状であるのに対し、無痛性甲状腺炎では低輝度で、表面が肝硬変みたいにごつご
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つしている。自己抗体(TRAb、TSAb)でも鑑別できる。ちなみに、TSH が下がっていても FT3、FT4
が正常な場合は subclinical hyperthyroidism といい甲状腺機能亢進症へ移行しやすいとされるの
で注意が必要である。甲状腺機能低下症ではカテコラミン上昇により、主に拡張期高血圧を認め
る。甲状腺機能亢進症の場合には抗甲状腺薬による内科的治療が第一選択となる。甲状腺機能
低下症に対しては甲状腺ホ ルモン製剤を使用する。下垂体性甲状腺機能低下症あるいは
Schmidt 症候群で副腎皮質機能が低下している例では副腎皮質クリーゼ(adrenal crisis)を惹起
することがあるので注意する。
□ 倦怠感
□ 動機、体重減少、発汗、食欲増加、下痢など甲状腺機能亢進症状
□ TSH、FT3、FT4
□ 自己抗体(TRAb、TSAb)
副甲状腺機能亢進症
約 20%に高血圧を認める。治療は病的副甲状腺の摘除。
□ Ca/IP
Hypercortisolism(クッシング症候群など)
副腎腺腫、副腎癌、ACTH 非依存性大結節性過形成(AIMAH)と原発性副腎皮質小結節性異
形成(PPNAD)、下垂体腺腫、異所性 ACTH 産生腫瘍などが挙げられる。コルチコステロイド過剰
ではナトリウム保持と末梢血管抵抗の上昇により高血圧を認める。これらの疾患はまず、見かけ
でスクリーニングすることが重要である。その特徴としては、満月様顔貌、中心性肥満、伸展性皮
膚線条、皮膚菲薄化および皮下出血、近位筋萎縮による筋力低下、小児における肥満を伴った
成長過程、無月経などを認める。ちなみに、中心性肥満は中心が肥満しているだけで、その人が
肥満とは限らない。コルチゾールと ACTH を参考に鑑別を進めていく。クッシング病の特徴的な所
見の一つとして、眼の周囲の浮腫を挙げる専門医もいる。
□ 満月様顔貌
□ 中心性肥満
□ 伸展性皮膚線条
□ 皮膚菲薄化および皮下出血
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□ 近位筋萎縮による筋力低下
□ 小児における肥満を伴った成長過程
□ 眼の周囲の浮腫
□ 無月経
□ コルチゾール
□ ACTH
アルドステロン症
アルドステロン症はまれという意見もあるが、最近では見逃されている症例(RAS 系阻害薬でマ
スクされたりすることで)を含めるとかなりの頻度であるという報告もある。大きく分けて①アルドス
テロン産生腫瘍(PA)、②特発性アルドステロン症(IHA)、③糖質コルチコイド奏功性アルドステロ
ン症(GRA)の 3 つに分けられる。89-90%が①である。詳細は正書を参照されたいが、簡単に言
うと①は腫瘍、②と③は過形成である。
参考文献 1 によると、低カリウム血症を認め、アルドステロン症を疑う場合にはアルドステロン/
レニン比や 24 時間蓄尿によるアルドステロン、Na、Kの測定が最初に行なわれる。実際には低カ
リウム、低マグネシウム血症、代謝性アルカローシスを認める。低カリウム血症の症状(筋力低下、
筋クランプ、頻尿など)以外は認められないこともある。低カリウム血症自体も、必ずしも認めるわ
けではなく、55-93%(平均 80%)にしか認められないという報告もある。25%しか認めないとする
専門家もいる。これだと電解質と尿だけのスクリーニングでは限界があり、疑わしい場合には最初
から積極的にホルモン測定によるスクリーニングをする必要がある。レニン活性≦1(ng/ml)、ア
ルドステロン≧100(pg/ml)でスクリーニングするというやり方がある。ただし、アルドステロンは塩
分摂取に非常に大きく影響され、また、血性レニン活性は 25-50%の患者で低値であるため、最
初の検査としては適さないともいわれている。その他の検査には Urinary aldosterone with salt
loading、Urinary aldosterone without salt loading、Plasma aldosteron/rennin ratio などがある。
実際に行なうには Plasma aldosteron/rennin ratio が簡便そうである。午前 8 時(移動後 2 時間)
に測定する。Aldosterone/PRA が 30:1 以上+血清 aldosterone 20ng/dl 以上で感度 90%、特異
度 91%である。一般には 20:1 で診断、30:1 で確実とする教科書もある。ちなみに、ここで説明され
ている renin はレニン活性のことであるので注意。単位は PAC(ng/dl)/PRA(ng/ml)なので、必要が
あれば検査会社の単位を換算しなければならない(アルドステロン濃度 120pg/ml以上で、かつレ
ニン活性との比が 200 を超えると診断の重要な因子とする意見もある。こちらの方が覚えやすい)。
立位フロセミド試験というのもあるが、詳細は正書を参照。以上これらの検査のためには ACE 阻
害薬と利尿剤を少なくとも 3 日は中止することが重要である。出来ればカルシウム拮抗薬などに
変更して 2 週間は中止したい。
ちなみに、この腫瘍は小さい(3mm 以下)ことが多く、CT やエコーでは診断を疑うのは非常に困
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難である。
□ 筋力低下
□ 筋クランプ
□ 頻尿
□ 低カリウム
□ 低マグネシウム血症
□ 代謝性アルカローシス
□ アルドステロン
□ レニン活性
□ Aldosterone(PAC)/PRA
●二次性高血圧スクリーニングのまとめ●
疑うときの特徴
□ 発症年齢が若い
□ 急性発症
□ 非常に高い高血圧
□ 慢性の経過であっても説明できない高血圧の増悪
□ 難治性
□ 症状を伴う高血圧
□ ACE 阻害薬、ARB 投与後に急性腎不全や急激な Cr の増加
□ 持続的または一過性の高血圧
問診
□ アルコール
□ SAS
□ 生活習慣の変更(塩分摂取など)
□ 薬:NSAIDs、甘草製剤、糖質コルチコイド、シクロスポリン、エリスロポエチン、エストロゲン、
交感神経刺激薬
□ 無月経
身体所見
□ 肥満
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□ 眼の周囲の浮腫
□ 腎血管の bruit
□ 頭痛
□ 動悸
□ 発汗
□ 代謝亢進
□ 高血糖
□ 血圧の左右差
□ 上肢と下肢の血圧の差
□ 脈圧の開大
□ 胸骨切痕上に振戦
□ 倦怠感
□ 動機、体重減少、発汗、食欲増加、下痢など甲状腺機能亢進症状
□ 満月様顔貌、中心性肥満、伸展性皮膚線条、皮膚菲薄化および皮下出血、近位筋萎縮によ
る筋力低下
□ 筋力低下
□ 筋クランプ
□ 頻尿
検査(早朝、30 分以上安静が原則)
□ 電解質(Na/K/Cl/Ca/IP)
□ 腎機能(BUN/Cr)
□ 尿検査
□ IgA
□ レニン活性(PRA)
□ アルドステロン(PAC)
□ カテコールアミン 3 分画
□ TSH、FT3、FT4
□ ACTH、コルチゾール
□ 随時尿のメタネフリン、ノルメタネフリン、(VMA):クレアチニン補正
□ (24 時間蓄尿による VMA、メタネフリン、カテコラミン)
注意
忙しい外来でスクリーニングするときには色々な制約があるので、時間や食事はあまり気にせ
ず、20 分以上安静にした後に普通に採血するという先生もいる。本来はカテーテルを留置した上、
20 分程度安静臥床の後に採血するという作法もあるようだが・・・。
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ただ、日内変動も大きいので、可能な限り早朝に来院してもらい(できれば 10 時までに採血)、
30 分以上は安静にして採血するのが無難と思う。
投薬
スクリーニング後、追加で検査をする可能性があるので、降圧薬を処方するときにはカルシウム
拮抗薬が無難。
参考文献
1.
Edgar R. Black et al. Diagnostic Strategies for Common Medial Problem. Philadelphia, ACP,
1999.
2.
日本高血圧学会高血圧治療 GL 作成委員会 高血圧治療ガイドライン 2004
3.
黒川 清ら.Clinical Problem-Solving Collection from New England Journal of Medicine.東京,
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4.
葛西龍樹.スタンダード家庭医医療マニュアル.大阪,永井出版,2005.
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