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再生可能エネルギー導入に対する火力機メリッ トオーダーの変化

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再生可能エネルギー導入に対する火力機メリッ トオーダーの変化
電力中央研究所報告
火
力
発
電
再生可能エネルギー導入に対する火力機メリッ
トオーダーの変化
キーワード:再生可能エネルギー,メリットオーダー,火力発電,
運用変化,揚水発電
背
報告書番号:М15009
景
2030 年の長期エネルギー需給見通し注 1)では、再生可能エネルギーの導入量を 22~24%
(発電電力量ベース)とする目標が掲げられており、中でも日間出力変動の大きい太陽
光発電の発電電力量を 7%程度とすることが示されている。太陽光発電の大量導入が進む
場合、各電源の運用形態が大きく変化し、特に負荷調整を担う電源には、太陽光発電の
出力と電力需要の変化を補完することと経済性の確保の両面が求められる。
目
的
長期エネルギー需給見通しに向けて太陽光発電が大量に導入されることを想定し、太
陽光発電の出力変化が火力発電や揚水発電の運用に与える影響を火力機の運用変化の視
点から分析する。この検討から、火力機の運用に求められる技術要件を明らかにする。
主な成果
1. 火力発電と揚水発電のメリットオーダー注 2)による運用順の確認
太陽光発電の出力と電力需要の変化を補完する火力発電のメリットオーダーに揚水発
電が組み込まれた場合について、発電する火力機の順序を燃料価格注 3)や発電効率を基に
設定し、また火力機により揚水し発電可能となった揚水発電の順序注 4)を算定した(図 1、
全国レベル)。上記で設定した条件下では、石炭火力を電源として揚水された揚水発電が、
どの天然ガス火力よりも優先的に利用できることを確認した。
2. 太陽光発電導入時の日間負荷運用の検討
2010 年の全国レベルにおける日間電力需要の変化、および 2030 年の長期エネルギー需
給見通しで設定された各電源の発電電力量から、太陽光発電が計画通り注 5)に導入された
場合の日間電源運用を、上述したメリットオーダーに従って一例として検討した。電力
需要が少なく、太陽光発電導入の影響が大きい春の電源運用では、昼間に石炭火力によ
り揚水ポンプが駆動され、夜間(17~24 時)に揚水発電が行われる結果が得られた(図 2a, b)
。
3. 天然ガス火力のバックアップ運用における技術要件の提言
太陽光発電の出力が大きい時の出力変動は、最低限の天然ガス火力でバックアップす
る必要があり、上述したメリットオーダーに従う経済的な運用はできない。しかしなが
ら、最低負荷を切り下げる機能や、急速に起動する機能を天然ガスのバックアップ火力
機に付加できれば、よりメリットオーダーに従った運用に近づけることができる(表 1)。
今後の展開
燃料価格の変動がメリットオーダーに与える影響を分析するとともに、再生可能エネ
ルギーの出力変動に対し、常時バックアップ火力機を適正に活用する方法を検討する。
14.0
火力発電に関係する部分のみを表示
石炭
天然ガス
石油
揚水発電の燃料相当費
発電コス トの燃料費分(円/KWh)
12.0
揚水発電の
燃料相当費※
10.0
8.0
A:火力機の出力が低い時
揚水ポンプが駆動し
揚水発電が準備される
6.0
石油火力
B
A
天然ガス火力
Bの天然ガス火力の燃料費は、
Aで準備された揚水発電
の燃料相当費より高く、
Aの揚水発電が優先して発電する
4.0
石炭火力
2.0
105,000
125,000
※揚水発電の燃料相当費:揚水すると
きに使われる火力発電の燃料費のこ
と。
例えば A 点の揚水発電は A 点の下の
石炭火力により揚水されるため、揚水
発電の燃料相当費は、
「石炭火力の燃
料費/揚水発電の効率」となる。
145,000
165,000
185,000
発電設備の積算出力(MW)
205,000
225,000
245,000
図 1. 火力機と揚水発電のメリットオーダー(発電設備の積算出力は太陽光、水力、原子力、火力の合計値)
揚水発電は電力需要が少なく火力機の出力に余裕のある時に揚水され発電準備される(A 点)
。需要が高まり石炭の次に天然ガス火力が発電する時
(B 点)でも、燃料費の安い石炭で揚水された A 点の揚水発電は優先的に発電する。横軸の発電設備の積算出力は太陽光発電の出力により変化す
る。火力発電設備の容量は 2015 年度の全国の電源容量(電力 10 社、電源開発、共同火力分)に基づく。
18,000
20,000
太陽光発電の出力がない場合(春)
電力需要と発電機出力(万kW)
電力需要と発電機出力(万kW)
20,000
16,000
14,000
12,000
天然ガス
10,000
8,000
石炭
6,000
4,000
水力
2,000
原子力
18,000
太陽光発電が出力する場合(春)
16,000
14,000
12,000
太陽光
10,000
天然ガス
8,000
石炭
6,000
揚水ポンプ
4,000
水力
2,000
原子力
0
揚水発電
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間
時間
注 6)
図 2a. メリットオーダーに基づく電源運用
(太陽光発電が出力しない場合)
図 2b. メリットオーダーに基づく電源運用注 6)
(太陽光発電が出力する場合)
表 1. 天然ガス火力のメリットオーダー面からみた技術要件と効果
天然ガス火力の技術要件
起動時間の短縮
既存技術で
最低負荷の切り下げ
対応
低負荷時の高効率化
メリットオーダー面での効果
起動時間短縮による燃料消費量の削減
天候急変に備える天然ガス火力により
揚水ポンプを駆動することを回避
天候急変に備える天然ガス火力の高効率化
新規開発技
急速に起動できる火力機
術で対応
天候急変に備える天然ガス火力により
揚水ポンプを駆動することを回避
具体的な対応技術
昇温スケジュールの最適化
低負荷運用時の燃料と空気量のバランス最
適化等
急速起動型ガスタービンコンバインドシステム
(3on1GTCC、AHAT等)
3on1GTCC:ガスタービン3機と蒸気タービンを組み合わせたコンバインドシステム、AHAT:Advanced Humidified Air Turbine
注 1)
注 2)
注 3)
注 4)
注 5)
注 6)
平成 27 年 7 月 経済産業省策定
発電コストの燃料費分が安い順番で発電すること。運転予備力や周波数調整運用については考慮していない
石油価格:$50/バレル、天然ガス価格:$8/MBTU、石炭価格:$75/トン(6,000kcal/kg ベース)
、$=120 円
揚水発電の燃料相当費は、揚水ポンプの駆動に用いた火力電源の燃料費を揚水発電の効率 70%で割り戻して算出
太陽光発電の導入計画容量とは 2030 年長期エネルギー需給見通しで示された容量に相当
電力負荷は 2010 年値の電力 10 社実績を基に、2030 年長期エネルギー需給見通しで示された電力量となるよう算出
研究担当者
吉葉 史彦(エネルギー技術研究所 エネルギー変換領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 エネルギー技術研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] © 2016 CRIEPI
平成28年6月発行
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