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概要〔和訳〕 (PDF:59KB)
Japanese Monetary Policy Reaction Function and Time-Varying Structural Vector Autoregressions: A Monte Carlo Particle Filtering Approach ∗ 矢野浩一† 吉野直行‡ 概 要 近年、日本における金融政策の有効性についてさまざまな議論が展開されている。本論文で は、モンテカルロ粒子フィルターと自己組織化状態空間モデルに基づく時変構造ベクトル自己回 帰(Time-Varying Structural Vector Autoregressions, TVSVAR)を用いて金融政策の有効性を論じる。本 論文の手法では日本の金融政策の反応関数がどのように変化してきたかを時変(可変)パラメータ 推計を行うことによって求めることができる。また、総供給関数、総需要関数、為替決定の同次方 程式を含む TVSVAR を用いて日本の経済構造の変化を計測する。本論文の手法では時々刻々変化 する係数(時変係数)を求めることができるため、金融政策の反応の変化、経済構造への影響の変 化などを説明することができる。本論文の TVSVAR はフルリカーシブ型構造 VAR の係数を時変と したものであり、同様のモデルに関する先行研究として Primiceri (2005)、 Canova and Gambetti (2006) などがある。これら先行研究の TVSVAR 推定ではマルコフ連鎖モンテカルロ法とカルマンフィル ターを用いているが、本論文では Yano (2008) で提案された TVSVAR 推定方式を用いる。そのアル ゴリズムは Kitagawa (1996)、Gordon et al. (1993)、Kitagawa (1998)、Yano (2007b)、 Yano (2007a) で提案 されたモンテカルロ粒子フィルターと自己組織化状態空間モデルに基づいている。本論文は時変 係数構造ベクトル自己回帰モデルを用いて日本経済を分析した最初の論文であり、その点からも 意義あるものである。本論文では名目短期金利、インフレ率、実質成長率、実質実効為替レート変 化率の 4 変数からなる日本経済モデルを推定する。1990年以降、景気もインフレ率も金利の調 節からほとんど影響を受けなくなっており、金融政策の効果が激減したことを示している。また、 日本経済の低迷の要因が、供給サイドにあるのか、需要サイドにあるのか、大きな論点であるが、 本分析からは、総供給・総需要の両面が原因であることが分かる。 キーワード : モンテカルロ粒子フィルター, 自己組織化状態空間モデル, 時変係数, 構造ベクトル 自己回帰, Markov Chain prior. ∗ 本論文では統計数理研究所の XC4000 スーパーコンピューターシステム、ALTIX3700 スーパーコンピュー タシステム、SR11000 Model H1 スーパーコンピュータシステムををシミュレーションに使用した。なお本稿 の内容は全て著者の個人的見解であり、 金融庁及び金融研究研修センターの公式見解ではない。 † 金融庁金融研究研修センター 研究官 E-mail: [email protected], [email protected] ‡ 慶応大学経済学部教授