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(京都国際アカデミー) フランス人学習者の日本での語学研修
第一回フランス日本語教育シンポジウム 1999 年フランス・グルノーブル 1er Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 1999 フランス人学習者の日本での語学研修 金 和蓮 京都国際アカデミー 1. 京都国際アカデミーについて 京都の中心街、四条烏丸のそば室町通りに位置しております。創立 12 年目を迎えます。 現在中国人、韓国人を中心に 100 名ほどの学生が日本語を勉強しております。フランス人 学生は現在一人、去年の 10 月から就学生として在籍しております。 午前中は日本語学校(初級 II から上級クラスまで) 、午後は日本語の初級 I クラス、お よびプライベートコース、外国語のコースなどを設け、日本語教育のみならず外国語教育 にも力を注ぎ、日本と諸外国と言葉を通じて交流できるよう、尽力しております。 2. フランス人学習者短期集中講座について 実施状況:1998 年 7 月 6 日~11 日(その後新潟大学へ) 7/6:あまり時間がなく自己紹介で終わり、ホストファミリーと面会。 ホストファミリーと共に帰宅。 7/7~10:1 日 4 時間授業(45 分×4) 彼らのみのクラス(初級、中級)にて授業。 7/11:最後の授業。授業後ホストファミリーと送別会を兼ねて食事会 使用教科書:初級-オリジナル。ホームステイ時に生じるであろう場面を想定し、そ の場面毎の会話を中心に、依頼文や禁止文、道の尋ね方等を掲載 中級-『にほんごきいてはなしましょう』 『新日本語の基礎 I、II』 随時 滞在先:ホームステイ。ヒッポクラブというボランティア団体が引き受けてくださり 14 名それぞれ各家庭に滞在できた。 (二人のみ同じ家庭) 〔効果のあった点〕 ☆授業は直接法であったし、家に帰ればホストファミリーとの交流が待っており、日本語 を使わざるをえない状況から逃げられなかったお蔭で日本の友人が出来た。 ☆日本語を日本で学んだことで、日本語のリズムやその空気に接することが出来た。 ☆七夕を挟んだことで、短冊に願い事を書いて笹に飾ったり、七夕のうたを歌ったりして 少ないながらも日本での風習に触れられたのではないだろうか。 〔反省点〕 ☆共通語彙がなかなかお互い掴めなかったこと。1週間という短い期間に探り合いの時間 をさいてしまった。こちらでもプレースメント試験をするべきであったのでは、彼らの学 30 第一回フランス日本語教育シンポジウム 1999 年フランス・グルノーブル 1er Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 1999 習状況をこちらも事前につかむ必要があったと思われる。 ☆ひらがな、かたかなの習得状況が掴めていなかったので、板書をする際、授業時になっ て初めてひらがなを書かない学生がいることがわかり、ローマ字・ひらがな併用にした。 やはりもっと学生の情報収集をするべきであった。 ☆彼らだけのクラスであったため、学校内では彼らのみ固まってしまい、他の学生と交わ ることがなかった。共通クラスにするのが無理であっても、何らかのセッティングをして あげるべきであったと思う。共通語として日本語を使う機会を与えるべきであったのでは …。 〔今後の課題〕 やはり 1 週間という期間が短く制約が多かったので、日本語教育機関としての日本語教 育の立場としては、今後としては 2、3、4 週間ともっと長期の受け入れを希望したい。ま たは 1 日の学習時間をもっと長くできれば良いのでは。長期になればなるほどビデオを見 たり、作文を書いたりなど 4 技能にもっと目を向けられたと思う。また、就学生とのコミ ュニケーションの取り方についても考えていかねばならないだろう。一つの教室のなかに 入れるのは簡単だが、その中でミックスできるかどうか、慎重に考えるべきであると思う。 宿泊先については、今回全員ホームステイが出来たのは幸運と言えるもので、日本 という国柄上なかなか大人数では難しいであろう。またホストファミリーがいたとしても 長期間はやはり難しい。学習時間が長くなればなるほどホームステイは難しくなるという、 この反比例の関係の状況を分かっていただかなければならない。 3. 普段の授業 3 ヶ月を 1 学期としており 1、4、7、10 月に新入学生を迎える。初級は文法中心で中級 から読解、聴解、作文、会話にも時間を割き 4 技能バランス良く学習できるようカリキュ ラムを整えている。しかし会話力の引き出しに課題を抱えているのも事実である。いかに 話させるか、講師会での議論のテーマである。 授業は全て直接法で行っている。授業中は基本的に母国語は禁止している。だがクラ スの生徒のほとんどが中国人学生のときなどは中国語が飛び交うときがあるが、国籍の違 うものがいればいる程日本語のみで話すようになっていく。 学生は中国人学生約 70%、韓国人学生約 20%、その他 10%という感じで名簿には漢 字の名前が並んでいる。そのため漢字教育に時間を注ぎにくいのが現状である。非漢字圏 の学習者のために、午後漢字学習用の時間を設けようという計画がある。 授業以外では遠足や祭り見学、料理会などのイベントを 3 ヶ月に 1~2 度の割合で行っ ている。京都には伝統的な祭りが多く(退屈なものもあるが…)、その際着物を着るチャ ンスを作っている。 4. 京都の学習環境 日本有数の観光都市であるとともに大学の町なので、留学生も多く留学生のための機 関も多い。国際交流会館などでは留学生同士、または留学生と日本人が交流できるよう 様々なイベントが企画されたり、掲示板を通してコンタクトできるようにしてあったりと、 活用しようと思えば日本人の友人を得る機会は多々あるだろう。その掲示板では、 31 第一回フランス日本語教育シンポジウム 1999 年フランス・グルノーブル 1er Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Grenoble France, 1999 LANGUAGE EXCHANGE などでフランス語の人気が高いのでフランス人には有利かもし れない。また日仏会館や日仏カフェなどもあり、フランスに興味のある日本人が集う場所 も多い。 5. 在日本の日本語学校として 金銭的なことを考えずに申し上げると、フランス人学習者はノービザで 3 ヶ月の授業に は参加できるので積極的に日本に来て勉強してほしいと思う。彼ら学習者にとっても短期 間ながらも刺激になるであろうし、日本語学校としても多国籍になればなるほど、クラス の活性化につながると思われる。 積極的な参加を期待しつつ…。 32