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(国際交流基金ケルン日本文化会館) ワークショップ

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(国際交流基金ケルン日本文化会館) ワークショップ
第二回フランス日本語教育シンポジウム 2000 年フランス・トゥール
2ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Tours France, 2000
文化を取り入れた日本語授業
澤井康子
国際交流基金ケルン日本文化会館
外国語を学習するときにその文化の背景にある文化を理解することが重要であること
は、申し上げるまでまもない。しかし、日本語教育と関連づけて文化紹介を実際の教育
現場で実践するのは必ずしも簡単ではない。
一口に文化というが、文化の定義も一筋縄ではいかかない。しかし、私はこの文化と
いう曖昧なものをその国、あるいは地域が共通して持っている考え方としている。その
考え方という抽象的なものが中心の核にあり、それが具体化されたものが芸術、つまり
音楽であり、絵画ではないかと考えている。これらのいわゆる大きい文化だけでなく、
日常生活の習慣なども文化に入るし、言語もその一つだと思う。
このように文化は言語と表裏一体をなしているから、教師は日本語を教える時に、文化
を意識するしないに拘わらず、自然に日本文化に触れている。しかし、自然に触れるの
ではなく、教師はもっと意識的に文化を言語教育に取り入れていくべきではないかと私
は考えている。勿論、学習者の学習目的によってその係わり方も違って、どれをいつど
のようにどの程度入れるかなどにはいろいろな違いが出てくるのは当然であるが。
そこで、まずは第一歩として文化を実際にどのように日本語学習の中に取りいれてい
るかを実例でみて、次にご出席の各先生方の文化授業のアイディアなども紹介していた
だけたらと考えている。
まず、はじめに財団法人国際文化フォーラムの「文化を取り入れた日本語授業のアイデ
ィアコンテスト集」をご紹介いたしたい。これは、初等・中等教育レベルでの実例集で
あるが、成人対象でも十分ご利用いただけると思われる。これを参考にして、皆さんの
アイディアも出していただいて、そのヒントをこの本といっしょに持ち帰り、授業でご
利用いただきたい。
今回のこの配布はこの国際文化フォーラムのご厚意により可能になった。国際文化フ
ォーラムには心から感謝申し上げたい。
次にいくつかの実際の授業例を紹介する。
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第二回フランス日本語教育シンポジウム 2000 年フランス・トゥール
2ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Tours France, 2000
文化を取り入れた授業例
1.鯉のぼり
(1)対象:初等教育低学年生徒
(2)学習目的:
文化-日本では、年間を通して様々な行事が催される。これらの年中行事の背景にある
文化的意味を知ることによって、日本文化の一つを理解すること。
「こどもの日」に立
てる鯉のぼりには鯉のようにたくましく育ってほしいという親の願いがこもっているこ
とを知り、日本の親の願いも知ること。
言語-色の名称、目・口・体などの体の部分の名称、お父さん・お母さん・子どもなど
家族の呼び名、大きい・小さい・高いなどの形容詞などの単語を学習すること。
(3)手順:
①鯉のぼりの様子を写真パネルやビデオで紹介し、この行事の説明をする。
②語彙を導入する。大きい紙の鯉を黒板にはり、体の部分の語彙と色を導入する。
③色紙を生徒に配って、鱗状に丸く切らせる。
④黒板に貼った大きい鯉の鱗の一つ一つには色が平仮名または学習者の言語で書かれて
いる。「赤い鱗を貼ってください。
」と教師がいうと、赤くて、丸い鱗を持っている生徒
がそれを貼る。目や口も貼らせる。
⑤折り紙で小さい鯉を折って、竹竿につけて、小さい鯉のぼりを作る。
⑥「鯉のぼり」の歌を歌う。
「屋根より高い鯉のぼり、大きいまごいはお父さん、小さ
い緋鯉は子ども達、おもしろそうに泳いでる。」
⑦今日学習したことを宿題として書かせる。
例:今日私は学校で鯉のぼりを作りました。お父さんの鯉とお母さんの鯉と赤ちゃんの
鯉を作りました。鯉のぼりの歌も歌いました。
2.七夕祭
(1)対象:生徒・学生・一般成人
(2)学習目的:
文化-ビデオや写真パネルなどで七夕伝説と七夕祭の伝統行事を紹介すること。学習者
の国に同じような話があるかどうか、あるとしたらどんな話か、どうして同じょうな話
があるのかなどを話し合う。
言語-「~たい」
「~ほしい」など希望を表す表現を学習すること。
(3)手順:
①笹と短冊を用意する。笹がなければどんな木の枝でもかまわない。短冊は折り紙で学
習者に作らせる。
②願い事を各自に書かせて、笹につける。
3.節分と豆まき
(1)対象:生徒・学生・一般成人
(2)学習目的:
文化-節分の意味と伝統行事について、写真パネル、ビデオ、新聞などで紹介すること。
同じような行事が学習者の国にもあれば、調べて説明・発表させる。
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第二回フランス日本語教育シンポジウム 2000 年フランス・トゥール
2ème Symposium sur l’enseignement du japonais en France, Tours France, 2000
言語-数の数え方を学習すること。
(3)手順:
①節分用の炒った大豆を買うとおまけについてくるような鬼の面と紙の升を予め用意し
ておく。
②「鬼は外」
「福は内」の説明と練習をする。
③一般成人対象のクラスで年男がいれば、その人に豆をまかせる。教師が鬼になって教
室の外に逃げる。次に豆をまく人を交代し、学習者に鬼の役をさせる。
④年の数だけ豆を取らせ、豆を数える。それから、豆を食べさせてみる。
4.桃太郎
(1)対象:初等教育生徒
(2)学習目的:
文化-昔話を通して、日本を紹介して、全くの初心者に日本に親近感を持たせること。
言語-簡単な挨拶や表現ができるようになること。
(3)手順:
①絵本や紙芝居で桃太郎の話を学習者の言語で紹介する。
②学習者の国にも同じ話があるか調べて、学習者の言語で発表させる。
③日本の鬼の説明をする。学習者の国の鬼との違いを話させる。
④自国語で桃太郎の話を語りの部分を多くして、簡単な劇にする。
⑤劇の中で使う挨拶や簡単な日本語を学習者の人数分だけ用意する。
例:「どんぶりこどんぶりこ」
「あ、桃だ。」「 行ってらっしゃい。
」「ただ今。」
「いってまいります。
」
「 それを一つください。」「ご免なさい。
」
「これからは悪いことはしません。」
「ど うぞ許してください。」
⑥「桃太郎」の劇をする
⑦猿や雉や犬がもらった吉備団子を作って、試食させる。
5.ミステリー・ボックス
(1)対象:生徒・学生・一般成人
(2)学習目的:
文化-ビデオや写真などの間接的な情報ではなく、実際に見たり触ったりすることによ
り、日本と自国の日常生活を比較すること。
言語-ミステリー・ボックスから取り出して、何かと問うことによって実際のコミュニ
ケーションを経験すること。
初級の始めのレベルなら「これはなんですか」など。また少し進んだレベルなら「これ
は何に/どう使いますか」などの学習をすること。
(3)手順:
①ミステリー・ボックス用の大きな箱とその中味を準備する。学習対象者によって様々
な可能性があるうる。例えば、初等教育学習者の場合は、お金・切符・醤油の入れ物・
箸・日本にしかないようなボールペン・鉛筆など。成人学習者の場合は、風呂敷・徳
利・盃・箸箱・下ろし金・トイレのペーパーホルダーの棒など。
②学習者にミステリー・ボックスから物を一つ取り出させて、何かと質問させる。教師
が答える。学習者のレベルによっては教師がすぐ答えるのではなく、学習者に推測させ
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る。また、知っている学習者がいれば、説明させる。
③学習者が小学校の低学年の生徒の場合は、画用紙を用意してその絵を描かせ、それに
平仮名を書かせて、ひらがなの練習をさせることもできる。
また、切符やお金の説明をして日本の生活・文化情報を与えることもできる。成人の場
合は、徳利や盃から陶器や酒を話題に話すこともできる。
④学習者に一つずつ持って来させ、持ってきた人が説明するというバリエーションもで
きる。
6.日本の家
(1)対象:生徒・学生・一般成人
(2)学習目的:
文化-日本の住習慣を理解すること。
言語-許可・禁止の表現を学習すること。
(3)手順:
①許可・禁止・命令の表現「~てもいい」
「~てはいけない」「~なければならない」を
学習する。
②家に関する必要な語彙を導入する。例えば、玄関・お風呂・台所・居間・子どもの部
屋・和室。
③ビデオ「ヤンさんと日本の人々」6 話を見せて日本の家の全体像を掴ませる。
④写真パネルで和室・居間・台所・子ども部屋・風呂・トイレなどを紹介する。
⑤玄関から順に、許可・禁止・命令の表現を使って、していいこと、してはいけないこ
と、しなければならないことを学習者の国と比べながら話す。
例:玄関で靴を脱がなければなりません。
スリッパははいてもいいです。はかなくてもいいです。
和室にはスリッパをはいて入ってはいけません。
風呂の中で体を洗ってはけいません。
トイレのドアを閉めなければなりません。
居間でテレビを見てもいいです。
台所で料理をしてもいいです。
台所で洗濯をしてはいけません。
注:
例の 1.2.5.は『Opening the Minds and Hearts of Your Japanese-Janguage Students
to Cultureー異文化理解のための日本語の授業実例集』(国際文化フォーラム)からの
紹介
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