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空と睾丸
日 生 研 だ よ り ■4管』農場サ写 野 犬 のセル トリ細胞性 精巣 (睾丸)腫 瘍 鹿児 島大学農学部 家畜病理学 教室 出題 。第 7回 獣医病理学研 修会標本 No.95 ヽ ¬ 犬 ,雑 種 ,雄 ,15才 ,鹿 児島市産 病院 精巣 (睾丸)が 著 しく腫大 してきた ので本学家畜 瘍 と診 断 に治 療 を乞 うた もので あ る。病院 では睾丸腫 し,手 術 に よ り睾丸 の全 摘 出を行 なつ た。摘 出 された睾 々 丸 は 大人拳 を縦 に二 つ重ねた大 きさで,陰 嚢皮膚 は所 は 欠損 し,一 部 には黄色 の実質 が現れ てい る。陰嚢皮下 白膜 におおわれ結節状腫瘤 か らな り,凹 凸が 著 明 で あ る。腫瘤 は給 々硬 く害1面は黄 色を呈 し,灰 白色 の条紋 が (副睾丸) 縞 をな し,出 血壊死部 もみ られ る。精巣 上体 は見当 らな い。一 狽1の睾九及び 冨1睾丸 は合せ て拇指大 で 萎縮 顕著 で■ つ甚 だ硬 い。犬 は手術後 学校 にて貰 い飼養 していた が,術 後45日 目不慮 の事故 に よ り安楽死 させた もので あ る。剖検す るに睾丸摘 出部位 は治 癒 してい る。 内部所見 で内腸骨 リンパ節は鳩卵大 に腫大 し,そ れ に沿 つて骨盤腔 内に小児攀大 の腫瘍 が認め られ, 何 れ も 表 面に出血 ,壊 死 , 面 ,害 J面共に黄灰 色を呈 し,柔 軟 で書」 裏胞形成 も見 られ る。 又肺には灰 自色 で給 々柔 い小豆大 ∼蚕 豆大 の結節 が多 数 認 め られ,害 1面も同様 で 周囲 の境 界 は 明瞭 で あ る。 内腸骨 リンパ 節,骨 盤腔 内腫瘤 ,肺 の 結節 は何れ も一見 して腫瘍 と診 断出来 る。そ の他 の臓器 は肝,酔 の萎縮 以外特 に異常を認 めない。 同一 個体 内に 異なつた腫瘍 が 同時 に発 生す るこ とは あるが珍 らしいの で,先 に摘 出 した睾丸腫瘍 と内部臓器に見 られた腫瘍 は 同一 の ものか,叉 異 な るものか何れ に しても極 め て興味 が もたれた。 写真 は摘 出睾丸 の組織像 の 弱拡大 (A),強 拡 大 (B)で あ る。像 は腫瘍性変化 を示 してい る。即ち明瞭 な胞巣状 構造 を呈 し,胞 巣 の境界 は比較的僅小な間質 に よ り境 さ れ てい る。胞巣 は長 円形,紡 錘形乃至 円柱形 の腫瘍細胞 よ りなつてい る。腫瘍細胞 は大 部分緻密 で充実 性 の胞巣 を形成 し,胞 巣辺縁 の細胞 は甚 だ多層 で不 整乍 らも各細 胞 は胞巣中心に向つ て縦 に放線状 に排 列 し,中 心に は空 ` ][亡 [[][] り「[を あ「]を ilる ['7:3う で網状或 は顆粒状 で核小体 は 1∼ 2コ 明瞭 に見 え る もの が多 い (写真 B),本 組織像 は 円柱 上 皮性細胞 よ りなれ る瘍腫 と認め られ よ う。扱 睾丸腫瘍 には セル トリ細胞 に 由来す るセル トリ細胞腫 ,精 上皮細胞 に由来す る精細 胞 腫 (セミノーマ ア),間 細胞 (ライデ ィヒ細 胞)に 由来 す る間細胞腫 の三種 が知 られ てい るが,本 例 の腫瘍細胞 は セル トリ細胞 に もつ とも酷似す るので セル トリ細胞性 睾丸腫 と診 断 され よ う。 内腸骨 リンパ節 ,骨 盤腔 内及 び 肺 の腫瘍 の組織像 は何れ もセル トリ細胞性睡瘍 である。 よつ て睾丸 の セル トリ細胞腫瘍 が原発 で 肺 ,内 腸骨 リン パ 節等 の腫瘍 はその転移 で あ る。 睾丸腫瘍 は屡 々見 られ る睡瘍で は な い。又一 般 に睾丸 腫 は他 の臓器 に転移す ることは稀 で本例 の如 く内臓 に 見 パ 事 に転移 した例 は珍 らしい。転移 の方法 として リン 道 性 が主 で あろ うが,肺 の転移 は血行性 も考 え られ る。 ―- 2 -― 、