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特集2 クロック伝送システム
特集2 クロック伝送システム ~小型化、省電力化により設備装置の環境負荷低減~ 通信サービスに不可欠なクロック 電話や専用線等の既存サービスの多くは、時分割多重方 式を用いたネットワークで提供されています。また、近年 はこの既存サービスと IP ベースの NGN サービスの両方を 収容するネットワークも開発・提供されていますが、これ らのネットワークにおいては、各装置の動作クロックを高 精度に一致させ、ネットワーク全体で同期をとる(網同期) 必要があります。 ネットワークサービス研究所 網同期を実現するためには、マスタクロック(大手町) ネットワーク伝送基盤プロジェクト から供給されるクロックに、従属するビル内の各装置のク 金光 秀明 須田 祥生 桜井 一也 坂入 健 ロックを合わせる必要があります。 マスタクロックから供給されるクロックは、各ビルに分 らに、クロックパス網の設計では、ビル分散、ルート分散、 配され、各ビルのクロック供給装置(CSM:Clock Supply 装置分散を行い、高い信頼性を確保しています。 Module)は、分配されたクロックを基にクロックを生成 しビル内の各装置に分配します。これによって、網内の各 大容量システム導入によるクロックパス網 の課題 装置の動作クロックが同期することになります。 もし、網同期せず送信側の装置と受信側の装置で、信号 の読み出しと書き込みタイミングが合わなくなると、デー タの重複読みや、欠落が発生することになり、正常な通信 クロックパス網は、クロックを生成・供給する CSM と、 が出来なくなります。 下位の CSM にクロックを伝送する SDH(Synchronous このクロックを伝送するクロックパス網は、通信サービ Digital Hierarchy)リンク系システムで構成されています。 ス提供に不可欠です。現状のクロックパス網は、信頼性を 上位の CSM から受信したクロック信号を、電話の音声信 高めるために N(Normal)系と E(Emergency)系の 2 号や、専用線のデータ信号を重畳して SDH リンク系システ 系統としており、N 系に異常が発生したときでも E 系に切 ムで下位の CSM まで伝送しています。 り替えることで安定したクロック供給を担保してます。さ (a) (b) 現状のクロックパス ADM 装置移行後の 網構成 適用形態例 クロックパス網の現状と今後の構成例 7 特集2 クロック伝送システム ~小型化、省電力化により設備装置の環境負荷低減~ 1998 年以降、トラフィックの増加に柔軟に対応可能な 定することで部品数も少なくなり、またパッケージをコン 大容量の ADM システム (Add Drop Multiplexer) の導入 パクト化したことで、小型で省電力な装置を実現しました。 が進んでおり、従来、複数の SDH リンク系システムで伝 従来の SDH リンク系システムと比べても、大きさは 3 送していた電話や専用線などのデータを、1つの ADM シ 分の1以下(19 インチラック搭載可能、高さ 10cm 以下) ステムで伝送できるようになりました。また、この ADM となり、さらに消費電力は 9 分の1と省電力化を図ってい システム上でクロックパス網を構築することもできますが、 ます。 このクロックパス網では、信頼性向上のためのルート分散 2012 年の 10 月から CPM システムの導入が始まり、 は可能な反面、ビル分散や装置分散ができません。そこで、 2013 年度には本格的に導入開始となります。この CPM クロックパス網の信頼性を確保するために ADM システム システムの導入が進むことにより、通信設備の CO2 排出量 を 2 系統導入することになりますが、これでは電力使用量 の削減 ( 従来の SDH リンク系システムと比較して 22%削 も大きく、コストも高くなり、効率的ではありません。そ 減 ) にも貢献しています。 うなると、1989 年より導入している SDH リンク系システ 今後もこのような環境に優しい通信技術の開発に取り組 ムを利用することが必要となり、クロックパス網のために んでいきます。 回線収容率の低い装置を使い続けなければなりません。 そこで、これらの課題を解決するために、クロック伝送 に特化した CPM(Clock Path Module)システムを開発 しました。 小 型 で 省 電 力 なクロック伝 送 システム -CPMシステム CPM システムは、クロック伝送に特化した装置構成にす CPM システム例 ることで、小型化及び省電力化を実現しました。機能を限 環境貢献度評価 開発されたクロック伝送に特化した CPM システムを ◆評価結果 使用して構築した場合(CPM モデル)と従来の SDH CPM モデルの CO2 排出量削減効果は 2,610t-CO2 (削減率 22%)となりました。 リンク系システムによってクロックパス網を構築した場 合 ( 従来モデル)の CO2 排出量を定量化し、環境貢献 主な削減要因は、クロック伝送に特化することで、 度評価を行いました。 CPM 装置が小型化、省電力化されたことによる CO2 排 出量の削減効果です。 ◆評価条件 ・クロック信号の伝送: 12,000 CO2 排出量(t-CO2/ 年) マスタクロックから冗長化 ( ビル分散・ルート分散・ 装置分散など)されたクロックパス網で 1 年間(365 日 24h)1200 箇所のビルに伝送 ・クロックパス網の構成 〈従来〉送受信側合わせて 2400 台の SDH 装置を使用 〈CPM〉送受信合わせて 2400 台 CPM 装置を使用 10,000 使用 8,000 削減量:2,610 t-CO2/ 年 削減率:22.2 % 廃棄 使用 6,000 4,000 製造 2,000 0 8 廃棄 従来モデル 製造 CPM モデル