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JALにおける勤務状況
2.24 日乗連勤務学習会 ∼JALにおける現行勤務基準∼ JCA 今泉 修一 JFUは「運航乗務員の勤務に関する協定」を2011年1月24日に締結。 JALにおける勤務基準に関する交渉と取り組みの経緯 会社が勤務協定を一方的に破棄し、改悪就業規則を強行。 Ex NRT-‐SFO往復シングル、JPN→LAXシングル、JPN―HKG・MNL日 帰り。 1994年4月∼2005年3月 乗員組合が勤務裁判を開始。会社は勤務基準に関し協議を拒否。 1993年11月 2006年10月 組合の主張をほぼ全面的に認める高裁勝利判決が確定。 確定判決を踏まえた暫定協定(有期限)を労使合意で締結。組合 から科学的知見を盛り込んだ協定案を要求。 会社は暫定協定の延伸を拒否。 確定判決を無視した就業規則を再度強行。 JFUは判決を超える一部の路線を業務拒否。 2006年11月∼2007年 判決を超える路線を行わないことを徐々に会社に認めさせる。 2007年3月 西松社長(当時)がこれまでの交渉姿勢を謝罪し暫定協定を締結。 勤務本協定に向け業務拒否方針等を凍結。 勤務本協定に向け労使で協議。 JAL経営破綻 科学的知見を盛り込んだ協定案を会社が提示し、交渉が加速。 合意した部分から暫定協定(Ⅱ∼Ⅳ)を締結。 勤務本協定締結 2005年3月 2005年8月 2005年11月 2007年∼2010年 2010年1月19日 2010年3月∼ 2011年1月 〇FDP(飛行勤務時間) Flight Duty Period.乗務のため所定の場所に出頭すべき時刻 から、最後の乗務便のブロック・インまでの総経過時間。 ○ローカルナイト 滞在地の現地時間で22:00∼08:00内の連続する8時間。 〇スプリット勤務 一連続の乗務に係わる勤務の途中で、連続3時間以上の休養 を予定する場合、その休養時間に応じて以下の時間分をFDP から減算。休養施設が与えられなければならない。 1. 休養時間が3時間以上6時間59分以下:休養時間の1/2(1 分未満の端数は切り捨てる) 2. 休養時間が7時間以上:休養時間の2/3(1分未満の端数は 切り捨てる) 3. 8時間以上の休養時間がローカルナイト内に予定:休養時 間に等しい時間 〇RESERVE DAY 勤務割の不時の変更に備え、勤務指示を行う可能性 のある日。 具体的な勤務指示は、前日までに行う。勤務指示のな かったRESERVE DAY(RF:RESERVE FREE)は、一連 続の乗務に係わる勤務の前の休養時間に包含する。 〇WOCL(Window of Circadian Low) 基地における02:00∼05:59の4時間。 基地との時差が3時間を超える地点への移動を伴う場 合で、当該地滞在が48時間以上の場合、それ以降に 適用するWOCLは当該出発地の現地時間の02:00∼ 05:59の4時間となる。時差の算定にあたり、12時間を 超える時差は、24時間から当該時差を減じたもの。 現行勤務基準の特徴 • 90年代、SFO線シングル、HKG日帰りで悪名 高かった前就業規則が、「交代なしの長時間 乗務」に着目した効率化であったとすれば、 現勤務協定は「休養、休日削減による勤務密 度」に着目した効率化。 休養:これまであった「パターンH(休日)」、暦日での 休日の概念はなくなった。 休養とは、すべての会社業務から解放される状 態。休養施設とは、仰臥して休息をとりうる設備を 有する施設。(自宅、ホテル、その他これに代わる もの) 基地においては連続15時間30分、基地以外の地 点においては連続11時間の休養を予定。時差が4 時間以上の場合、上記の休養時間に時差1時間(1 時間未満の時差は1時間に繰り上げる)あたり30 分を加算。 基地との時差が3時間を超える地点間の乗務を 行った場合に基地に帰着後与える休養には、連続 して3回以上のローカルナイトを含む。 基地での休養は、基地での休日(月間10日)に包 乗務時間・飛行勤務時間制限 月間および年間の乗務時間の制限 • 1暦月 95時間 • 3暦月 265時間 • 1暦年 900時間 2暦月にまたがる場合の乗務時間は当該飛行 の到着日の属する暦月(JST)の分として算入。 一連続の乗務に係わる勤務における飛行勤務時間 〇シングル編成の場合 1および2 3 4 12+30 11+30 10+30 2 時 間 以 内 (注3) 11+30 10+30 10+00 2時間超 10+30 10+00 10+00 予定着陸回数 飛行勤務時間制限 WOCL 時間数 (注1)(注2) (注1)予定着陸回数が1回の場合、FDP制限は、12+00。 また、同様に予定着陸回数が1回で時差が3時間を超える地点への移動の 後、出発するまでに48時間を経過せずに乗務する場合、FDP制限は、 11+30。 (注2)予定着陸回数が2回の場合、FDP制限は、11+45とする。ただし、スプ リット勤務において9時間以上の休養が付与される場合は除く。 (注3)時差が3時間を超える地点への移動の後、出発するまでに48時間を 経過せずに乗務する場合、FDP時間帯がWOCLにかからない場合であっ ても、「WOCL時間数2時間以内」の制限を適用。 〇マルティプル編成およびダブル編成の場合 マルティプル編成時 ダブル編成時 仮眠設備が用意 13+00 16+00 されない場合 仮眠設備が用意 18+00 20+00 される場合 仮眠設備が用意されない場合は、原則として窓側と通路あるいは通路と通 路にはさまれた一列の客席を用意。 ・乗員編成に関する覚書 「2地点間を往復する飛行勤務時間が往路・復路ともに11時間を超える3日 以内の乗務パターンにおいて、往路もしくは復路の一方のみがマルティプル 編成となる場合は、往復ともにマルティプル編成と仮定した場合と比較して、 編成内の運航乗務員全員の乗務パターン日数が同じ場合に限り、往復とも にマルティプル編成とする」 乗務パターンに応じた飛行勤務時間制限 3日以上の乗務パターンの場合、1日あたりの飛行勤務時 間は10時間を超えて予定しない。 乗務に関する日数制限 国内線:連続4日(DHのみ、および基地以外の地点で 休養のみの日は除く)を超えて予定しない。 国際線:国際線において基地を離れる日数は連続12 日を超えて予定しない。 休日 休日数は一暦月に10暦日。 基地における休日が1日のみの場合は、休日の後が乗 務のための勤務、DEAD HEADまたは地上移動の場合に は直前の勤務終了後36時間の、それ以外の場合には30 時間の勤務間隔を、次の勤務開始前に予定。 連続2日の休日については、直前の勤務終了後56時間 の勤務間隔を、次の勤務開始前に予定。 一連続の乗務に係わる勤務開始後の取扱い 勤務割上の一連続の乗務に係わる勤務は、開始後完遂 することが基本。 ただし、他の乗員と協議し、運航状況、乗員の疲労度そ の他の状況を考慮して運航の安全に支障があると機長が 判断した時は中断しなければならない。また、飛行勤務時 間が一定の時間を経過する場合は、会社は運航規程附属 書の定めに従い、その乗務または勤務を中断させることが ある。 確認書・運用上の配慮 1. 7時間以上の時差を伴う乗務後はスリーローカルナイト(2 日のH)の翌日勤務は午後から。FLTの場合は14時以降の 出発便。 2. 3時間以上の時差を伴うマルチ路線(FRA、LAX線)で現地 一泊の場合は、頻度に配慮したSKD作成を行い、3日間の Hを付与 運用上の配慮は肝心な時に配慮されない? →管理職除外規定あり。(機長には適用外) →あくまで作成時の配慮であり、呼び出し、SKD変更時に は適用されず。 実際の勤務は? • 運用開始時点の2011年4月の段階では、777乗員部 では、(744からの移行含めて)マンニングに余裕が あったため欧州便、米州東海岸便については帰着 後3∼4日のHが確保されていた。 • 国内線、近距離がメインの767乗員部ではかなり密 度の高い勤務となった。 • その後、2年間で約120名が自主退職しマンニング は会社の言う「適正値(乗員一人当たり年間900時 間、月間平均75時間乗務が前提)」に限りなく近付 いている。 • 2013年内は777乗員部では月間90時間を越える SKDが頻発。 ある777機長の例 2013年3月:乗務時間91時間30分 1 2 S03 H 3 4 5 6 7 8 9 日帰り H CPM R→S05 407呼出 749→ FRA VAC CPM KMQ DEL→ 408 10 11 12 13 14 15 16 740→ H H CPM 771 SYD 17 18 19 20 21 22 23 R 405 GMT 24 25 26 27 28 29 30 H H H CPM SIM 定期訓練 H *S05:午前5時から8時間の自宅待機 407 CDG H H 31 CDG 772 FRA 406 408 15日間で欧州3往復も可能! 2012年 10/26 27 28 29 30 31 11/1 H H H 41 CDG CDG 42 2 3 4 5 6 7 8 R→ CDG R→ 8416 H H 407 9 10 11 12 13 14 15 H H H S05→ 405DH 呼出 408 FRA FERRY 年間の乗務時間はどの程度伸びたか? 2009年 乗務時間 うちDH時間 2013年 乗務時間 うちDH時間 1月 59+47 64+31 65+53 76+36 76+39 57+11 72+08 80+11 73+02 75+09 8+11 8+25 17+32 15+24 12+29 13+12 12+18 14+06 1月 65+47 76+33 91+30 86+17 62+49 77+55 70+05 72+47 75+18 90+01 4+49 1+14 13+59 6+57 2+38 53+55 66+24 1+06 14+40 11月 55+11 94+31 6+22 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年間 実乗務時間 821+29 704+06 117+23 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 12月 年間 実乗務時間 u 2009年は744での乗務。CGO便が多く、DHも多い。 u 破綻以前の2009年に比べ約25%の乗務時間増。 918+44 882+45 35+59 勤務改悪時の職場の反応とその後 • 現状(2011年当時)のマンニング、路便構成(破たん後 で大幅縮小)では大幅にきつくはならないのでは? • 当初行われたロンドン便一泊、パリ便一泊半の乗務は 安全性も含めて懸念の声が大きい。 →反対する職場の声が大きく、一年半ほどで二泊化 • 767、737等では乗務パターン後の休日は単日で一ヶ月 のSKDが組めてしまう。 →連続する14日間で一回は2連休を入れるよう配慮。 蓄積する疲労 • パターンHが無くなった事で、乗務の疲労が回復し ないまま次の乗務へ。 • 変動給で休めば賃金が減る。 • パターンHの復活を求める声は多い。 • 乗務後の休日では疲労が回復しないため、STAY中 にいかに休息をとるか。 • 制限乗務者を人員削減の標的にしたため、現状病 欠者は表立った増加には至っていない(職場内では 増えているとの報告あり)が、将来的は大きな不安 を抱えている。 マンニングがすべて? • 勤務基準通りの運用を行っても実際の勤務が過密とな るかどうかは、マンニング次第という面がある。 • 実態として、破綻以降に退職した方も多く、それが過密 勤務につながっている。 • 改善を求めても、二言目には「マンニングが、、、」。根本 的解決には健全な乗員計画が必要。 年間制限超過の危機 • 777乗員部では年間の900時間制限に近づく乗員多数。 SIM教官や乗員部職制も800時間超の乗務を強いられ る。 勤務の改訂問題は職場世論が一致し難い。 • 93年の勤務改悪以降の裁判判決、労使関係の悪化 を踏まえて「科学的知見」を合言葉に協議。しかし、 ともすればそれまで培ってきた「経験に基づく職場 感覚」が軽んぜられたのではないか? • 2010年1月の経営破綻直後の「再生のためには協 力できる所は協力すべき」という一部の情緒的世論 に影響された面は否定できない。 • 賃金改悪は生活への影響を想像しやすいが、勤務 改悪による疲労蓄積は事前に想像しがたい。 • 多機種が混在する職場では、他機種における改悪 に思いが及ばない。自分の身に降りかかる前に想 像力を働かせる事の難しさ。 健康で長く働ける勤務基準を目指して • FRMSを学習して各社の勤務基準に活かす取 り組みを進める。 • 乗務機種によって大きく働き方が異なる運航 乗務職の特性を踏まえた勤務基準の策定す る。 • この先数年ではなく、後輩、さらには次の世 代の定年まで、長期的視点が必要。