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知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

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知の知の知の知 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会
い~な
あまみ
中 央
しらさぎ
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 539 号 2011.9.26 発行
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社説:新しい公共の世紀へ―市民の力で社会を変える
朝日新聞 2011 年 9 月 26 日
行政を担うのは、だれか。そんなの役人に決まっている。
私たちはずっと、そう考えてこなかったか。だが、そろそろ発想を変えてみよう。もっ
と市民、住民が主役になるべきではないのか、と。
いわゆる「新しい公共」という考え方だ。
利点は、役所の合理化にとどまらない。市民がみずからの意思で参画し、
「公」の責任を
分かち合うことで、やりがいや生きる価値も見いだせるはずだ。そんな前向きな発想であ
る。
行政はいま、国も地方も、低成長による税収減と、高齢化に伴う行政需要の膨張にあえ
ぐ。この窮状を打開するカギとして「新しい公共」を考えてみる。
行政を立てなおす取り組みには、二つの潮流がある。
ひとつは「小泉・竹中改革」のような小さな政府路線だ。
「官から民へ」を掲げ、行政コ
ストを下げて増税を避け、企業活動の活力や消費を生もうとする。労働人口が減っていく
日本では、著しい経済の成長は望みにくい。活力を引きだそうと考えれば、
「官から民へ」
の手法は一定の説得力を持つ。
もうひとつは増税路線だ。福祉社会を維持する費用を社会全体で担おう。高齢人口が増
え、膨らんでいく福祉予算を賄うには増税しなければならない。借金を続ければ、いずれ
日本もギリシャのような債務危機になりかねないと警告する。
■ウィン・ウィン関係
だが、どちらにも危うさが潜む。
「小さな政府」は行政が担うべき役割を放棄して、弱者
に厳しい格差社会を招く恐れがある。増税論は納税者の財布を直撃し、消費など国内経済
をしぼませかねない。
そこに「新しい公共」の出番がある。
原発事故で避難を強いられた福島県双葉町の人々が多く暮らす埼玉県加須(かぞ)市に
は、ユニークな事業がある。
「ちょこっとおたすけ絆サポート」だ。
買い物の代行や病院への付き添い、庭の草むしり……。誰かの手を借りたい人は、商工
会が発行する「絆サポート券」を買う。1枚500円で1時間の支援サービスを受けられ
る。支援するサポーターは、商工会に登録した市民だ。09年度の開始から、1500時
間分の券が売られ、高齢者らの利用が広がる。
券は市内の商店などでの買い物に使えるので、お金が地元に落ち、地域経済を元気づけ
る。サポーターは券とともに、人々の役に立つことで精神的な満足感も得られる。市は商
工業をてこ入れでき、福祉充実の経費を抑えられる。それぞれがメリットを享受できる「ウ
ィン・ウィン」の関係だ。
埼玉県も資金を援助した。
「ただし3年間。立ち上がりは助けるが、担うのは市民。継続
するには、やってみて市民自身がその価値に気づくことが大切だ」と、上田清司知事は話
す。
■大震災を契機に
東日本大震災の後、民間の復興支援サイト「助けあいジャパン」が立ち上がった。政府
の情報を市民が加工し、避難者の生活を応援し、ボランティアの便宜を図っている。費用
は手弁当だ。
「民間なので、あえて公平にこだわることなく情報を出すなど、小回りがきく
のが強みです」と、運営する佐藤尚之さん(50)は言う。
大震災の義援金が象徴するように、この国にも寄付文化が拡大しつつある。後押しする
制度もできてきた。前の国会で成立した改正NPO法と税制改正法だ。寄付額の約半分を
納税額から直接減らせる方式になり、税の配分を自分で判断できる範囲が広がった。
「新し
い公共」づくりへの大きな一歩になる。
この流れをさらに加速させよう。それには「公」が担うべき施策なら、まずは市民の手
でできないのか、と考える気風を国全体に広げていくことだ。
その前提としては、市民が担った方が、より質の高いサービスを実現できることが欠か
せない。同時に「行政の下請け」にならない仕組みが要る。英国では、NPOなどと政府、
自治体が「コンパクト」という合意文書を結び、下請け関係に陥らない制度を用意してい
る。日本でも知恵を絞ろう。
■政治の責任は重い
「新しい公共」づくりに向けた制度づくりに、政治が果たすべき役割は大きい。とりわ
け政権交代を機に、政策として提示した民主党の責任は重い。鳩山政権は旗を振ったが、
菅政権は増税路線が先に立ち、野田首相の所信表明演説には「新しい公共」の言葉すらな
かった。
しかし、大震災の後、ボランティア活動の領域と、かかわる人々の数は確実に増大して
いる。市民の知恵と力が、社会を変える大きなうねりになりそうなエネルギーを感じ取れ
る。
「市民が主役」が党名の由来である民主党であれば、これを好機と捉え、いまこそ「新
しい公共の世紀」を築いていく覚悟で取り組んで欲しい。
障害者 思い票に託したい
被後見人
選挙権喪失
専門家「判断力に差 改正を」
読売新聞 2011 年 9 月 26 日
「なぜ、投票できないのか」
。公職選挙法に「選挙権を有
しない」と規定された成年被後見人からの訴えが相次い
でいる
知的障害や認知症などで判断能力が不十分な
人の財産を管理するための成年後見制度で、後見
人をつけると公職選挙法の規定で選挙権を失う
のは国民の選挙権を保障した憲法に違反すると
して、京都市内の男性(57)が6月、地裁に提
訴した。同制度を巡る選挙権確認訴訟は今年に入
って相次ぎ、京都は、東京、さいたま両地裁に続
き3例目。今月も札幌で4例目の提訴があった。
「もう一度、投票したい」
。広がりを見せる切実な願いの背景を追った。(増田尚浩)
「
(再び)選挙に行けたら、障害者のために頑張ってくれる人を選びたい」
京都地裁で8月25日に開かれた第1回口頭弁論の意見陳述で、男性は訴えた。就労経
験もあるが、中程度の知的障害があり、1994年に禁治産宣告を受け、選挙権を失った。
禁治産制度が2000年に廃止され、成年後見制度に移行した後も選挙権は制限されたま
ま。
計算は苦手だが、日頃から新聞を読み、障害者向けの政策への関心も高い。講演会にも
足を運ぶといい、閉廷後の集会では「僕らはバカじゃない。障害者の声にもっと耳を傾け
てほしい」と声高に叫んだ。
成年後見制度が導入されたのは、禁治産・準禁治産制度の利用しにくさや名称が社会的
偏見につながるなどの問題点を解消するためで、成年後見制度の趣旨は、財産管理能力に
主眼を置く。
具体的には、後見人らが財産管理を行うほか、福祉サービスなどの契約を結ぶ。家庭裁
判所が判断能力を審査して決める法定後見では、衰えが重い順に「後見」「保佐」「補助」
という三つの類型が設けられた。
ただ、保佐、補助は選挙権が認められている一方で、後見では、選挙権の制限が旧来か
ら引き継がれた。地裁に提訴した男性の弁護団は「財産管理能力が問題になっているのに、
全く違う選挙権の能力を合理的な根拠もなく、結びつけて制限するのはおかしい」と指摘。
諸外国では、同趣旨の制度の利用の有無にかかわらず、選挙権を有すると定めているケー
スが増えてきているという。
これに対し、国側は選挙権には単なる権利だけではなく、代表者を選ぶ「公務」として
の意味合いがあると主張。判断能力を欠くとされる被後見人には、「公務としての選挙権の
行使を期待し得ないというべき。公選法の規定は合理的で憲法に違反しない」として全面
的に争う姿勢だ。
知的障害者やその家族らの全国組織「全日本手をつなぐ育成会」(東京)が09年、会員
約2000人に行ったアンケート調査によると、選挙権がなくなることへの疑問を持つ人
は8割に上ったという。同育成会は「人格を否定するもの」として、公選法の規定の見直
しを求める署名活動を展開している。
後見人も務める社会福祉士らが所属する上京区の社団法人「京都社会福祉士会」のちき
り憲之事務局長も「投票は、障害者らが社会に参加して生きていることを認識できる場」
と話す。同会には、選挙権を失ったことへの戸惑いの声が介護などの現場から報告されて
おり、府内の女性(89)は昨年、自らの選挙権が失われていることを知り、「ひどく傷つ
いた」と周囲に漏らしたという。
成年後見制度に詳しい関西福祉大の有田伸弘准教授(憲法)は「最高裁は在外邦人の選
挙権を制限している公選法の規定を巡る訴訟でも違憲と判断したように、安易な選挙権の
剥奪について厳しい姿勢を示している」としたうえで、
「一人ひとりは障害の程度が違う中
で、一律の線引きをするのは時代に合わない。法改正を検討すべき」と話している。
「夢王国」 琵琶湖の真ん中・沖島が首都
読売新聞 2011 年 9 月 26 日
沖島の国旗(後方右)の前で首都協定を結び、握手する
国松国王(左)と西居副会長(近江八幡市沖島町の沖島
漁業会館で)
元知事の国松善次さん(73)が理事長を務
め、障害者支援などを行うNPO法人「夢・同
人」(彦根市)が今年4月に琵琶湖上に〈建国〉
した架空の国「びわ湖夢王国」が25日、首都
に決めた沖島(近江八幡市沖島町)で、
「首都発
足フェスタ」を開いた。
県の政財界人らでつくる同法人が、遊び心を
持って環境や福祉の問題に取り組む団体を作っ
て滋賀を元気にしよう、と建国した。13日に
は、同法人理事で県中小企業家同友会代表理事の蔭山孝夫さん(70)を総理とする〈内
閣〉を、組閣。同日の閣議で、国土である琵琶湖のほぼ真ん中にある沖島を首都に決めた。
沖島漁業会館で行われたフェスタには、近江八幡市や沖島自治会の関係者らが列席。国
旗などが紹介された後、国王に就任した国松理事長と西居英治・同自治会副会長(67)
が首都協定書に署名した。
国松国王は「現実の政治が混迷して活力が失われつつある中、パロディー精神を発揮し
て元気を発信したい」と話した。年内に〈臨時国会〉を開き、具体的な活動内容を決める。
災害時の介護支援充実訴え 遷延性意識障害 郡山でシンポ
河北新聞 2011 年 9 月 26 日
東日本大震災時の在宅介護の苦労などについて発
表するゆずり葉の会の会員家族ら=25日、郡山
市のビッグアイ
重度意識障害者を在宅介護する家族の震
災時の体験や、災害時の支援の在り方など
をテーマにしたシンポジウムが25日、福
島県郡山市の「ビッグアイ」で開かれた。
病気や交通事故などで脳に重い損傷を負っ
た遷延性意識障害者の家族らでつくる「宮
城県ゆずり葉の会」
(沼田孝市会長)の主催
で、医療・福祉関係者ら約80人が参加した。
シンポジウムでは、会員2人が震災時の介護体験を発表。須賀川市の自宅で遷延性意識
障害の長女(21)を介護する車谷晴美さん(48)は福島第1原発事故後、ヘルパー、
医師、看護師が遠方に避難してしまうのではないかとの不安に襲われた当時の心境を語り
「震災と原発事故で遷延性意識障害者の家族は追い詰められている」と支援の必要性を訴
えた。
仙台市太白区のマンション22階で夫(60)を介護する園田淳子さん(55)は停電
の4日間、電動式の介護ベッドの角度を調整できず、エレベーターも利用できなかった。
「電
気が復旧して明るくなった部屋で、主人に経管栄養を入れた時は本当にうれしかった」と
振り返った。
東北療護センター(仙台市)の長嶺義秀センター長は、遷延性意識障害の症状や改善状
況などについて講演した。
シンポジウムに参加した福島県西郷村の相山敏子さん(52)は自身も重度の障害者。
「遷
延性意識障害者は助けがほしくても声も上げられない。重度の障害者が地域で安心して生
きられる制度がほしい」と感想を語った。
障害者住みよい地域に 松山でシンポジウム
愛媛新聞 2011 年 9 月 25 日
第42回中国・四国ブロック肢体不自由児・者父母
の会連合会の大会が24日、松山市道後町2丁目のひ
めぎんホールであり、県内外から約450人が参加。
「障がいある人が楽しく暮らせる地域づくり」をテー
マに、共生社会への議論を深めた。
シンポでは、松山市が進める地域まちづくり協議会
などを取り上げ、コミュニティー参加の視点から意見
交換した。藤目節夫愛媛大名誉教授は「地域を知る、
考える、創る」のまちづくりの進め方を紹介。「どの過程にも障害当事者が参加し、住みや
すい街へ主張していくべきだ」と話した。
松山市社会福祉協議会の五島裕子さんは「(施設中心だった)今までの障害福祉は地域の
力を知らず、あてにもしてこなかった」と指摘。「課題を解決する作戦会議の場」として、
各地域の障害者自立支援協議会の活用を呼び掛けた。
紅白に分かれ車いすで競争~障がい者体育大会
読売新聞 2011 年 9 月 26 日
コーンをよけながら進む参加者たち
「第9回佐賀市障がい者体育大会」が、同市の佐賀勤
労者体育センターで行われた。
身体、知的、精神障害者ら約200人のほか、中学生、
大学生ら約40人がスタッフとしてボランティア参加
した。大会は紅白に分かれて行われ、車いすに乗ってコ
ーンをよけながら進む競技や、パン食い競走などがあった。参加者たちは懸命に体を動か
しながらゴールを目指していた。
タンバリンの音を頼りに進む競技などに参加した目が不自由な佐賀市神園の蓮尾和敏さ
ん(61)は、
「日頃なかなか運動することがないので体を動かすいい機会になった。他の
参加者の楽しそうな声が聞けてうれしくなった」と笑顔を見せていた。
爆笑「ご当地ソング」で地域活性
高齢者体操レッスンでも大人気
読売新聞 2011 年 9 月 26 日
甲府市の介護施設で、踊りを披露する藤本さん
中央市のNPO「ルーデンススポーツクラブ」のマ
ネジャー藤本チフミさん(52)=同市東花輪=が、
特産品や地名を歌詞に盛り込んだ県内市町村別の「ご
当地ソング」の作詞作曲を進めている。各曲に合わせ
た振り付けも考案しており、地域活性化に一役買おう
と、全27市町村分の完成を目指している。
これまでに8市町分が完成しており、タイトルは「す
ももの気持ち」(南アルプス市)、「南部の茶茶茶」(南
部町)
、
「ブルーベリーに一目ぼれ」
(北杜市)とユニークなものばかり。中央市のために盆
踊りをアレンジした「とまと音頭」は、「トマトの里だよ」「リニアが通るよ」といった歌
詞の合間に「トマ~ト」のかけ声や「とよとみ寄ってけし 日本一だよ道の駅」などの合
いの手が入る。
藤本さん一番の自信作は、富士川町の「ゆずソング~ゆずりアイ たすけ愛~」。歌詞は
「穂積のみどりが深すぎて君の思い出感じてた」などと、同町穂積地区の風景に恋心を重
ね合わせ、演歌調のメロディーに乗せた。高齢者を対象にした藤本さんの体操レッスンで
は、
「歌詞が良い」と大人気だ。
7年ほど前から、高齢者や障害者の入所施設で体操レッスンを引き受けている藤本さん。
「1、2、3」と声を掛けるより、メロディーに合わせた方が、笑顔で積極的に体を動か
してくれると気づいた。
「どうせなら地域性を出したオリジナルの曲の方が親しんでくれる
のでは」と、今年6月頃から自治体別の曲づくりを開始。「爆笑しながら歌って踊ってもら
えるように」と考えて取り組んでいる。
筑波大在学中、体操の全日本選手権女子団体で優勝経験を持つ藤本さんは、振り付けに
も体操の感覚を生かした。爪先や足の筋肉を鍛えることで高齢者の転倒防止につながった
り、左右で異なる腕や足の動きをすることで「脳トレ」になったりするという。
完成曲の大半は録音済みで、藤本さんが歌い、演奏はプロのピアノ奏者らに頼んだ。自
治体のイベントで歌って踊ってもらえるよう、担当者に働き掛けている。
森づくりで就労支援、障害者の「生きがい」に 活動5年で成果着々/平塚
神奈川新聞 2011 年 9 月 25 日
ビニールハウスでポッド苗づくりに取り組む「どんぐりグ
ループ」のメンバー=平塚市飯島
苗木の栽培、販売によって、森づくりと知的障害
者の福祉的就労の底上げを図ろうという平塚の障
害者施設の取り組みが着実な成果を挙げている。社
会福祉法人「進和学園」
(同市万田、出縄雅之理事
長)が2006年 10 月、ドングリ拾いから始めた
「いのちの森づくり」プロジェクトは、丸5年とな
る来月を目前に、苗木の出荷数が4万5千本を超えた。苗木は県内外で植樹され、森林再
生や緑化に活用されている。障害者の貴重な就労の場になり、施設の収益の柱の一つにな
る期待も高まっている。
プロジェクトは、学園の前理事長、故・出縄明さんが、国際生態学センター長で横浜国
大名誉教授の宮脇昭さんが進める「潜在自然植生」に基づく森づくりに共鳴したのがきっ
かけ。
学園周辺を見渡せば、神社や雑木林などに「潜在自然植生」である常緑広葉樹のシイ、
タブ、カシ類の木が多くあり、ドングリがいくらでも拾える。栽培した苗木で森がつくら
れ地球環境に貢献できれば、学園の知的障害者にも「生きがい」「働きがい」につながる。
福祉、環境、労働、教育の連携となると考えた。
理念先行のスタートだったが幸運が重なった。市内の農家がビニールハウス2棟を格安
で貸してくれた。そこから井戸水も出た。経費は大幅に圧縮できた。
栽培にあたったのは知的障害者 11 人の「どんぐりグループ」
。宮脇さんの指導の下、ド
ングリ拾い、水やり、肥料やり、発芽した苗のポッドへの移し替えなどに励んだ。1年半
後の 08 年3月、アラカシ、タブノキなど8種類200本(1本400円)のポッド苗を初
めて出荷した。
一般業者では、付加価値の低い常緑広葉樹の苗木を大量に栽培している例は尐ない。10
年に県内で行われた全国植樹祭では県が2千本を発注。全国各地の自治体、企業、学校、
市民団体などからも発注が来た。
苗木が育ち出荷が本格化した 09 年度は約1万2千本、10 年度は約2万4千本。11 年9
月中旬までの累計は4万5600本に上る。
08 年には植樹のための寄付の受け皿となる「いのちの森づくり基金」も設置。これを活
用して「どんぐりグループ」が各地に出掛け、植樹も行っている。
グループのメンバーは「命そのものを育てる喜びがあります。ドングリ拾い、植樹では
いろんな人と交流できて多くを学べます」と笑顔を見せた。
10 年度のプロジェクトの収入は約1150万円。経費を差し引くと、雇用契約を結べな
いタイプの就労継続支援B型のメンバーに、1人月額3万円以上の工賃を出せる計算。県
内平均1万2453円(同年度)の倍以上だ。
現在、ハウスで 36 種類約5万5千本の苗を栽培している。学園の就業支援を担っている
「研進」社長の出縄貴史さんは「年間2万本の出荷を続けたい。自然の森が広がると同時
に、学園の事業の柱の一つになってほしい」と期待を込めている。
◆進和学園
平塚市内に知的障害者施設 11 カ所を設け、約450人が生活支援、就労支援などで利用
している。うち220人が各種事業で福祉的就労をしている。事業の中心はホンダから受
託した自動車部品組み立てで、収入は約1億6500万円に上る。しかし、リーマン・シ
ョック後に受託が減るなど、自動車関連の受託の今後は不透明なため、事業の多角化にも
着手。製パン、シイタケ販売、クリーニング、いのちの森づくりなどの収入が合計約57
00万円になっている。
認知症でも、自分らしくいられる場所
スイスインフォ 2011 年 9 月 25 日
木があったから、持ってみたかった。そこ
にソファーがあったから、置いてみた。認
知症患者の尊厳を重視した介護施設「ゾン
ヴ ァ イ ト ( Sonnweid )」 の 一 場 面
(Krankenheim Sonnweid)
高齢化と共に、日本同様、スイスで
も認知症患者が増えている。次々に消
えていく記憶。思い出せない家族の顔。
心に残る大切な思い出も、これまで築
いてきたプライドも、認知症は容赦な
く奪い去る。
認知症患者に対する最善のケアが
模索されている中、多くのメディアか
ら賞賛されている介護施設がチューリヒ郊外にある。
認知症患者専門の介護施設「ゾンヴァイト(Sonnweid)」は不安な心の世界を生きる認
知症患者一人ひとりに寄り添った介護を目指し、人の尊厳を最大限に重視している。
光が降り注ぐ大きな窓。気持ちを落ち着かせるような青い廊下。緑に覆われた広い庭に
はカラフルな彫刻でできた噴水が心地よい音をたてている。チューリヒ州ヴェチコン
(Wetzikon)にあるゾンヴァイトは、まるで素敵な保養所を思わせる。
長期滞在者からデイサービス利用者など約150人の重度認知症患者が利用し、若い人
では40代もいる。平均滞在期間は2.5年間。入居者の95%はここで生涯を閉じる。
入居者はみんな「住人」と呼ばれ、施設内ならどこでも自由に心赴くまま歩き回れる。使
用中のトイレを除けば、カギのかかった部屋は原則的に一つもない上、壁で空間を仕切る
ことを極力避けたオープンな構造になっている。
スタッフはパートも含め、約240人。コックであろうと、清掃員であろうと、スタッ
フ全員が認知症患者の介護に関してきちんと教育を受けている。
一人ひとりに合った介護
ゾンヴァイトは認知症の程度によって、グループホーム、ハイム、集中介護部門「オア
シス」の3カ所に入居者を分けている。ハイムとオアシスはゾンヴァイトの敶地内にあり、
グループホームは車で5分ほど離れた町の住宅地にある。
グループホームは一つの住居に6人から10人規模で共同生活をする場所で、個室があ
り、台所やリビングなどは共有する。ゾンヴァイトには4つのグループホームがあり、計
33人が暮らしている。ここにやってくる人は、手助けさえあれば、料理や電話など大体
のことは自分できる人たちだ。スタッフはサポート役として、買い物や食事の手伝いをし、
住人ができなくなってしまったことを補う。一緒に何かをやるか、ただその場でみんなの
様子を眺めるかは本人次第。ここでの基本は、人とのつながりを持つこと、人のそばにい
ることだ。
人の話す言葉があまり分からなくなり、社会的能力も失われてしまった人は、ハイムに
入居する。基本的に2人部屋で、ゾンヴァイトの住人の大半(約100人)がここで暮ら
し、一生を終える。歌や工作など、一応のプログラムはあるが、それを一緒にやるかやら
ないかは住人の自由。スタッフがギターをかき鳴らして歌えば一緒に歌ってみる。興味が
なかったらほかのところへ行って、好きなように時間を過ごす。スタッフは良きパートナ
ーとなって、その住人が今という時間を精一杯生きられるよう、最期までサポートする。
認知症のみならず、身体的にも重度の介護が必要な人には「オアシス」がある。現在7
人の住人が暮らしている「オアシス」は、120平方メートルと間取りが大きく取られ、
その広い天井は、朝は温かみのある太陽の色、夜は星の輝く夜空に人工的に変わる。朝に
はコーヒーのいい香りが漂い、寝たきりとなっても朝食の時間だと分かる。個室ではない
ので、周りに人がいることも感じられる。
靴も靴下も、履くものだ (Krankenheim Sonnweid)
家族介護はいずれ限界に
「症状の程度にもよるが、自宅での介護にはいずれ限界
が来る。仕事をする傍ら認知症の家族を介護し、満足のい
く生活を送れる人などほとんどいない」と施設長のミヒャ
エル・シュミーダー氏は話す。
実際、夫に週3回面会に来るという初老の女性は、夫が
ここで暮らしていることに非常に満足していると話す。のんびりとオープンテラスでくつ
ろぐ夫に、女性は聞いてみた。「ここでの暮らしはどう?」。尐し間をおいて、男性はゆっ
くりと答えた。
「とっても、いい」
たとえ質問の意味がよく分かっていなくても、また自分の状況を把握していなくても、
ただ妻と一緒に外の空気を吸い、お茶を飲むという今の瞬間に、男性は満足している。そ
の事実をこの男性は短い言葉で語ってくれたようだ。
気持ちに寄り添う
ゾンヴァイトが実践する介護の基本は、住人の「ウェルネス」
。住人にとって居心地のい
い場であるために、住人を「患者」ではなく「パートナー」と見なし、常に住人と同じ高
さの目線で接する。
「私の夫はどこへ行ったの?」と、すでに20年前に亡くなっている配偶者の姿を探す
住人には、
「ご主人がここにいらっしゃらなくて、寂しいのですか」と声をかけ、住人の悲
しい気持ちを認める。決して、主人が亡くなった事実を説得しようとはしない。
「悲しかったり、寂しかったりする気持ちをありのまま認める。それだけで、自分が他
人に受け入れられたと安心できる。これは何も認知症患者に限ったことではない。あなた
も自分の気持ちが他人に認められたら嬉しいでしょう」とシュミーダー氏は話す。
鏡に映った自分の姿を見て、
「あ、お母さん」と言った住人の女性。記憶がごっそりと消
え去り、母親が生きていた頃の自分に戻ってしまったという。認知症患者がどんな世界を、
いつの時代を生きているのかを把握するのは難しい。だが、シュミーダー氏にとって、そ
れは大した問題ではない。
「住人がどんな世界に生きていようと、みんなが求めていること
はただ一つ。それは、どこにいようとも、自分が受け入れられていると感じること」
物忘れが激しくなっても、意思疎通ができなくても、
「その人に残る心」を大切にし、同
じ目線で接する。人の尊厳を重視するゾンヴァイトは、スタッフの養成や外部に向け講義
なども行っており、ヨーロッパを中心に世界中から見学者が訪れている。
「人の尊厳を基本にする介護が広まるよう、ゾンヴァイトが認知症介護の原動力になれ
ば嬉しい」と、シュミーダー氏は力強く言った。
鹿島田芙美(かしまだ ふみ), swissinfo.ch ヴェチコン(Wetzikon)にて
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行
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