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集合住宅におけるペット問題の解決に向けた取組 森の里荘自治会

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集合住宅におけるペット問題の解決に向けた取組 森の里荘自治会
集合住宅におけるペット問題の解決に向けた取組
森の里荘自治会(名古屋市緑区)
1
地域の課題と目標
森の里団地は、1979 年から 80 年にかけて入居が始まった市営住宅である。その世
帯数は 1,252 世帯約 3,500 人の人口を要する高層の集合住宅である。高齢化率は、15%
程度で名古屋市全体の 18%より若い。自治会加入率はほぼ 100%である。
この団地の森の里荘自治会は、①自分たちの地域は自分たちでつくる自覚的住民自
治組織、②その活動は、住民の福祉(しあわせづくり)に連動する創造的改革的な住
民自治組織、③地域内の諸団体(子ども会、PTA,老人クラブ、学童保育、区政協
力委員会、民生委員会、保健委員会、その他自主的なサークル)をはじめ、官公署と
の行政と対等平等に協働できる自立(自律)的住民自治組織という 3 本柱を基本的な
コンセプトとして、多様な活動を展開してきた。
団地内におけるペット問題は、団地ができて以来の課題であり、その解決に向けた
議論の波は幾度かあったが、その時々の対処療法的な議論と解決にとどまり、本質的
かつ根本的な問題解決には至らなかった。そのためペットをめぐるトラブルは、日常
的に発生して近隣の人間関係を悪化させてきた。
ペット飼育肯定派は、少子高齢化の時代を迎えた今日、ペットは、高齢者にとって
家族同様であり、ペットとの共生を抜きにしては語れない。また、子育て世代にとっ
ては、ペットを飼育することが子どもの情操教育の一端を担っている。いわゆる、ア
ニマルセラピー、アニマルコンパニオンといわれるゆえんである。と主張する。
一方、ペット飼育否定派は、集合住宅ではペット飼育は禁止されている。大体ペッ
トが飼育できる住宅構造になっていない。また、ペット飼育者は、エレベーターの中
で糞尿をさせる。散歩中にリードをつけない。鳴声がうるさい。臭い汚い等、マナー
の悪さとペット飼育の弊害を主張する。
このようにペット飼育の肯定派、否定派の言い分は、平行線のまま 29 年間、何の
問題解決もできずに今日に至っている。ペット飼育は、約 2 割の世帯が 200 匹(頭)
以上のペットを飼育し続け、トラブルの火種がくすぶり続けているのが今日的課題で
ある。
「集合住宅におけるペットとの共生」構想は、こうした歴史的経過と現状の中で、
住民自治力で問題を解決する方向を模索するために打ち出された。
以下、私たちが取り組んだペット問題が、その解決に向けてどれだけ迫ることがで
きたか。また、解決の見通しはあるのか。を報告する。
2
事業の概要
(1) 事業の目的
「集合住宅におけるペット問題の解決に向けた取組」をモデル事業として実施する
ことにより、近隣コミュニティの活性化を図る。
(2)事業の内容
ア
ペット飼育に関する住民の意見を集約する。
イ
集合住宅でのペットとの共生の可能性を検討する。
ウ
ペット飼育に関する規約を作成するとともに、ペットクラブの育成をおこな
う。
エ
3
ペット飼育に関する講演会を開催し、ペットへの理解を深める。
具体的な実施結果
(1) ペット問題プロジェクトの立ち上げ
自治会内に、自治会三役と事務局3名の計7名で「ペット問題プロジェクトチー
ム」を立ち上げ、この問題(事業)の取り組み方や方向性を検討することにした。
とはいえ、ペットに関する知識は、基本的には皆無に等しいメンバーである。しか
し、団地内で起きるペットをめぐるトラブルや苦情は、日々身に染みて感じ、その
問題の根本的解決に向けた取り組みの必要性は共有していた。そこで、次のような
方針を出した。
ア
団地内で起きるペット問題を整理し、住民の意見を集約する。(具体的には住
民アンケート)
イ
ペットの専門家の意見を聞く。
ウ
他の集合住宅のペット問題の取り組みから学ぶ。
エ
この事業は、07 年度と 08 年度の 2 年間で取り組み、ア∼ウまでは 07 年度に
実施し、以下のオは 08 年度の取り組みとする。
オ
ペットクラブの育成と規約づくり(ペット飼育の規制)
(2) ペット知識の向上の取り組み
ア
専門家の視点から
・ 7 月 2 日、緑保健所に出向いて、ペットの現状のヒヤリングを試みたが、保
健所では狂犬病等の予防関係を扱い、趣旨(集合住宅でのペットとの共生)の
ような内容には答えられない。ということであった。
・ 7 月 2 日、名古屋市動物愛護センター(千種区)にメンバー5 人で出向いて、
獣医さんからペット問題全体についてお話をうかがうと同時に、施設内を見学
した。
(ア) 獣医さんのお話
①自治会でペット問題を解決しようとする取り組みは素晴らしい。
②ペットは人間社会とともに歩いてきた。人間の都合で可愛がられたり、捨て
られたりしたらペットの生きる権利を否定することになる。(実際、この愛
護センターには、捨てられた犬がたくさんいた。それも一見高価な犬が。こ
れには驚いた)
③ペットブームでペット飼育者が増える一方、都市化と住宅事情等でペットを
めぐるトラブルも増加した。また、ペットの習性や本能等を理解しないま
ま、ブームに乗って安易にペット飼育した結果、捨てられるペットも増加し
た。
④少子高齢化の時代、高齢者にとってペットは家族の一員であり、かけがえの
ないものになっている。
(イ) ペット飼育を可とするモデル住宅から
∼神戸市の震災復興公営住宅での「ペット問題研究会」の報告書から∼
(平成 9 年 6 月)
①ペットは、高齢者にとっては、生きる仲間、心を癒してくれる存在。
②子どもにとっては、生命への感受性を育んでくれる存在。
③あらゆる年齢層にとって、ペットは、よりよい暮らしのパートナー、共に生
きる仲間。
④動物は、被災者の生活の精神的な支えになっている。
以上、ペット問題研究会会長
延藤安弘千葉大学教授(当時)
以下は、ペット問題研究会報告書の要点
①入居者(飼い主)➝動物の本能、習性等をよく理解するとともに、動物の適
正な飼育に細心の注意を払わなければならない。飼い主としての責任を自覚
した上で、一定のルールを定め、それを全員で守っていく。
②団地居住者(自治会)➝動物も含めた「共生」「集住」について理解と協力
に努め、良好なコミュニティを形成・維持していく。
③獣医師等の専門家➝適正な飼育に関する知識の普及や啓発の機会を充実さ
せるための努力。
④行政➝入居者によるすまい・まちづくり活動を支援。適正な飼育に関する知
識の普及や必要な情報提供、指導、助言及び支援に努めるとともに、住宅の
適正な保管について啓発・指導を行う。
⑤モデル住宅における飼育のルール➝入居者みんなが迷惑行為をどのように
防ぐかを考え、専門家、関係機関との協働のもと、ルールをつくり、守るこ
とによって、良好なコミュニティを形成・維持していく。
(ペットクラブの育
成とその規約)
この研究会報告は、非常に示唆にとみ、今後の私たちの取り組みの方向性が見
えてきた。
(3) ペットの現状把握と意見の集約(アンケートの集約)
・9 月、プロジェクトチームのメンバー➝ペット飼育の実態把握と住民アンケート
の素案づくり【資料 1】
・10 月、自治会役員会へ「ペット飼育の実態調査とアンケート」を提案、了承さ
れる。
・11 月、「ペット飼育の実態調査とアンケート」の集約【資料 2】
(4)ペット問題講演会の実施
集約されたペット飼育の実態調査とアンケートに基づいて、テーマである「集
合住宅におけるペットとの共生」について、神戸市の「ペット問題研究会」の会
長をなされた延藤安弘愛知産業大学大学院教授に講師を依頼し、11 月 25 日、12
月 3 日と 2 回にわたって講演会を開催した。
【資料 3】
・11 月 25 日
参加者約 70 名
・12 月 03 日
参加者約 60 名
・いずれも会場は、大高南コミュニティセンター、時間は午後 7 時から
・12 月 3 日の講演会には、ゲストとして、森の里団地を直接管理する名古屋市
住宅供給公社南部事務所の太田所長に参加していただいた。そこでの太田所長
の挨拶は「ペット問題は、住宅を直接管理する公社もその解決に向けて努力は
するものの、その場限りの対処に終わっていて根本的な解決に至っていない。
森の里荘自治会が自主的にこの問題に取り組み、住民自治力で解決を図ろうと
する態度に敬意を表すると同時に、一つのモデルケースを構築していただきた
い」と、期待の声が聞かれた。
4
事業の効果
(当面のペット規制)
・1 月、約 200 世帯 200 匹(頭)のペットが野放図に飼育され、近隣住民から苦情の
多い内容について整理して、現段階でも最低のマナーを守るべく啓発をおこなう必
要性が論議された。
・その啓発内容を、看板にして団地内に掲出すことを決定。
【資料 4】
5
今後の課題及び展開
(08 年度の取組)
・ペットを飼育している者も飼育していない者も、マナーを守るならばペット飼育賛
成が 73%であることを受けて、自治会主導で①ペットクラブの設立、②ペットク
ラブの規約、③ペット飼育者の適正なペット飼育に関する学習会(専門家による講
演会)をおこなう。
・特に、ペット飼育に対しては、近隣住民が不快感を受けない飼育の方法を規約の中
に具体的に盛り込み、ペットを飼育する者も飼育しない者も納得できる方向で解決
を図っていきたい。
・そして、真の意味で、「集合住宅におけるペットとの共生」が実現できる道筋を構
築したい。
(おわりに)
いま、地方の時代といわれ、とりわけ良好な地域コミュニティの形成が強調される
ようになったが、都市化や核家族化そして生活の個別化、さらには多様な価値観の中
で、その地域コミュニティを担う主体である自治会・町内会が組織率をはじめ活動が
低調になってきている。
しかし一方では、「自分たちの地域は自分たちでつくる」という情熱に燃えた新し
い地域づくりの先進例が全国いたるところに見られる。そして、こうした先進事例の
自治会の役員が意識しているかどうかに関係なく、これらの自治会は「新しい公共」
をつくり出しているという。この地域住民が担う「新しい公共」とは何か。一口で言
うならば住民自治力である。今回の森の里自治会が取り組んだ「集合住宅におけるペ
ットとの共生」も、行政で問題解決できない課題を自治会がその解決に知恵と力を発
揮して成果をつくり出せるならば、「新しい公共」の典型例として評価されるかもし
れない。
2007 年10月吉日
森の里荘入居者のみなさんへ
森の里荘自治会
ペット問題についての実態調査及びアンケートについてのお願い
森の里荘自治会は、本年の活動方針でペット問題の正しい解決を図るために、
「集合住宅におけるペットとの共生のあり方」を検討することを打ち出しまし
た。
そのために、先ずペット飼育の実態調査をおこない、その後、この実態調査
にもとづき「集合住宅でペットとの共生は可能なのか。可能とするならば、今
野放し状態のペット飼育をどのように規制するのか」などの話し合いをおこな
い、住民合意を図る必要があります。
ペット飼育については、飼育している者と飼育していない者の間で意見の大
きな違いがあります。
◎ 飼育者➝少子高齢化の時代に入り、アニマルセラピー(動物的癒し)とコンパニオ
ン・アニマル(人間の伴侶としての愛玩動物)として、子どもや高齢者にとって有効
である。ペット飼育は、動物愛護と命の尊さの観点からも大切である。
◎ 非飼育者➝大きく分けて二つの意見があります。
・ ペット(特に犬・猫)が根から嫌いな者➝本来ペットを飼ってはいけない住宅でペッ
ト飼育することは許されない。
・ 条件付でペット飼育を認める者➝マナーを守り、適正に飼育するならば、今の時
代よいのではないか。ペットを飼育する者は、「ペット同好会」のような組織をつくっ
て、マナーの向上と自主規制をおこない、非飼育者に不快感を与えないようにす
べきである。
昨年度は、自転車とバイク問題の解決に取り組みましたが、今年度はペット
問題に重点をおいて取り組むことにいたします。別紙の実態調査及びアンケー
トにご協力ください。
なお、この事業は、愛知県の「近隣コミュニティ提案型地域づくりモデル事
業」に選定され、愛知県から支援を受けておこなっています。
【今後の取り組み(予定)】
1 ペットの実態調査とアンケートの集約と集計作業
2 ペット飼育に関わる講演会(11 月予定)
3 ペット飼育者による「ペットクラブ」結成の模索
資料 1−1
ペット飼育(主として犬・猫)の実態調査とアンケート
(この調査で、ペットを飼育しているから不利益になるということはありません。実態
の調査なので正直ご記入ください)
【ペット飼育の実態調査】
1
あなたの家庭では、犬または猫を飼っていますか。
①飼っていない
②飼っている《犬(
)頭、猫(
)匹》
2
あなたの家庭では、1 の犬・猫以外にどんなペットを飼っておられますか。
下記にご記入ください。
(
)
【ペット飼育についてのアンケート調査】
1
あなたは、集合住宅でペットを飼育することにどう思われますか。一つに
○印をつけてください。
①
2
賛成
②
反対
③
ルールを守るならば賛成
④
わからない
現在、ペットを飼育している方のマナーについてお尋ねします。
①
3
マナーはよい
②
マナーは悪い
③
分からない
2 の①で「マナーは悪い」と答えた方にお尋ねします。具体的にどんな点
が悪いと思われますか。四角の中に簡単にご記入ください。
資料 1−2
4
ペット飼育について、日ごろ思っていることをご記入ください。
ご協力ありがとうございました。このペットの実態調査及びアンケートに基
づいて、「集合住宅におけるペットとの共生の可能性」を探りたいと思います。
そして民主的な話し合いを重ねながら、住民合意を図っていきたいと思います。
2007 年 10 月
【お願い】
次の流れのように集約してください。
棟長
➝
コミセン
組長
➝
各世帯
➝
組長
➝
棟長
➝
(11 月 15 日までに)
◎ 全世帯の調査です。簡単な調査ですのでご協力をお願いいたします。
◎ 上記のフロー図(流れ図)にしたがって、11 月中旬ごろまでに集約してく
ださい。
森の里荘自治会
2007 年 11 月
森の里荘入居者各位
森の里荘自治会
ペット問題解決のみちしるべ
ペット問題講演会
10 月に、
「集合住宅におけるペットとの共生のあり方」をテーマに、森の里団
地のペット飼育の現状の実態調査と、ペット飼育についての住民の意識調査(ア
ンケート調査)を実施しました。現在、その調査を整理し統計資料としてまと
めています。まとまりしだい公表いたします。
(できれば講演会までに公表でき
ればと事務局が奮闘中です)
さて、みだしの「ペット講演会」を下記のようにおこないます。ペット飼育
者は原則ご出席ください。会場の収容人数の関係で 2 回に分けておこないます。
ペットを飼育していない方の参加も自由ですが、ペット飼育者を優先いたしま
す。
記
◎
森の里荘 1 棟、2 棟の居住者
日時:11 月 25 日(日)・午後 7 時
場所:大高南コミュニティセンター
◎
森の里荘 3 棟∼10 棟の居住者
日時:12 月 3 日(月)・午後 7 時
場所:大高南コミュニティセンター
2 回とも講師の先生は
講師:愛知産業大学大学院教授 延藤 安弘先生
※この講演会は、愛知県の「近隣コミュニティ提案型地域づくりモデル事業」の事業として、愛
知県から支援を受けておこなっています。
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