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Title 日中国際結婚に関する一考察 : 業者婚する中国女 性の結婚

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Title 日中国際結婚に関する一考察 : 業者婚する中国女 性の結婚
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<論文>日中国際結婚に関する一考察 : 業者婚する中国女
性の結婚動機を中心に
郝, 洪芳
京都社会学年報 : KJS = Kyoto journal of sociology (2010),
18: 67-81
2010-12-25
http://hdl.handle.net/2433/192726
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
67
日中 国 際結 婚 に関 す る一考 察
業者婚す る中国女性 の結婚動機 を中心 に 一
都
1は
洪
芳
じめ に
日 本 で は 、1980年
代 後 半 か ら結 婚 総 数 に 占 め る 国 際 結 婚 の 比 率 が 全 体 的 に 上 が り、 国 際
結 婚 が 大 幅 に 増 加 して きた 。 そ の 中 で も特 に 日本 人 夫 ・外 国 人 妻 とい う組 み 合 わ せ の 結 婚
の 増 加 が 顕 著 で あ り、 す で に そ の 割 合 は 、 国 際 結 婚 総 数 の70%強
に 達 し て い るq)。
現在
日本 人 夫 ・外 国 人 妻 と い う組 み 合 わ せ の な か で 、 日本 人 夫 ・中 国 人 妻 と い う組 み 合 わ せ が
最 も多 くな っ て い る(2)。 こ の 日 本 人 男 性 と 中 国 人 女 性 の 国 際 結 婚 に は 、 恋 愛 結 婚 と紹 介
に よ る お 見 合 い 結 婚 が 含 ま れ る と考 え られ る 。 近 年 、 日本 と 中 国 との 間 の 交 流 が 盛 ん に な
り、 日本 か ら中 国 に 向 か う観 光 客 、 駐 在 員 、 ま た 中 国 か ら 日本 へ の 観 光 、 留 学 も増 え て い
る 。 この よ う な状 況 に お い て 、 交 流 す る 人 々 が 恋 愛 を して 結 婚 に 至 る こ と も 当 然 あ り う る
だ ろ う。 一 方 、1980年
代 か ら 日本 農 村 男 性 は 、 結 婚 難 、 い わ ゆ る 「嫁 不 足 」 の 問題 に 直 面
し て い た の で 、政 府 斡 旋 に よ る ア ジ ア の 女 性 との お 見 合 い 国 際 結 婚 も出 て き た(3)。 そ の 後 、
政 府 に か わ っ て 、斡 旋 業 者 が 国 際 結 婚 を 仲 介 す る よ う に な っ た 。 現 在 、そ の よ う な結 婚 は 、
日本 の 農 村 部 だ け で は な く、 都 市 部 に も及 ん で き て い る 。 本 稿 は 自 由恋 愛 で は な く、 斡 旋
業者 に よるお 見合 い結 婚 を論 じるこ とにす る。
こ う した 斡 旋 業 者 に よ る結 婚(本
稿 で は 以 下 「業 者 婚 」 と呼 ぶ)の
成 立 経 緯 は、 斡 旋 業
者 の ホ ー ム ペ ー ジ と後 述 す る 筆 者 の 調 査 結 果 か ら 、 お よそ 以 下 の3タ
イ プに分 類す るこ と
がで きる。
タ イ プ1〈 訪 中2回
数)を
〉:日 本 人 男 性 が 日本 の 結 婚 紹 介 所 で 、中 国 人 女 性 の 結 婚 候 補 者(複
写 真 で 選 択 した 後 、 中 国 に お 見 合 い に 行 く。 お 見 合 い を 通 して 日本 人 男 性 が 一 人 の
q}平 成18年
度 厚 生 労 働 省 人 口 動 態 統 計 特 殊 報 告 「婚 姻 に 関す る 統 計 」 の概 況 、 婚 姻 の 推 移 部 分 の
図2に よ る。
ω 平 成18年
度 厚 生 労 働 省 人 口 動 態 統 計 特 殊 報 告 「婚 姻 に 関す る 統 計 」 の概 況 、 夫 妻 の 国 籍 別 にみ
た婚 姻 部 分 の 表14に よ る。
〔3)『
農村(む ら)と 国 際 結 婚 』(佐 藤1989) 、 『ア ジ アか ら 来た 花 嫁 』(宿 谷1988)に
よる。
京 都社 会 学 年 報
第18号(2010)
68
都:日
中 国 際結 婚 に 関す る一 考 察
中 国 人 女 性 を選 び 、 選 ば れ た 女 性 も結 婚 に 同 意 す れ ば 婚 約 に い た る。 日 本 人 男 性 は い っ た
ん 日本 に 帰 り、 挙 式 の た め 再 度 訪 中 す る 。
タ イ プ2〈
話(イ
日本 で お 見 合 い ・訪 中1回
ン ター ネ ッ ト上)を
〉:日 本 人 男 性 が 、 日 本 の 結 婚 紹 介 所 で テ レ ビ電
通 して 中 国 人 女 性 た ち と お 見 合 い を す る 。 お 互 い の こ と を 気 に
入 り、 結 婚 の 意 思 確 認 が で き れ ば 、 そ の 女 性 と 実 際 に 会 っ て 結 婚 す る た め に訪 中 す る。
タ イ プ3〈
の 候 補 者(複
中 国 で お 見 合 い ・訪 中1回
数)を
〉:日 本 人 男 性 が 日本 の 結 婚 紹 介 所 で 中 国 人 女 性
写 真 で 決 め る。 そ の 後 、 中 国 で 彼 女 た ち とお 見 合 い を 行 い 、 相 手 が 決
ま り次 第 す ぐ に結 婚 式 を挙 げ る 。
こ の3タ
イ プ と も、 挙 式 後 に 日本 人 男 性 が 日本 に 戻 る とい う点 、 ま た 、 中 国 人 女 性 は 結
婚 ビザ が 下 りた ら 日本 に 渡 り、 日本 人 男 性 と一 緒 に 暮 ら し始 め る と い う2つ
の点 で共 通 し
て い る 。 以 上 の よ う な結 婚 の 流 れ を 見 れ ば わ か る よ う に、 ど の タ イ プ で も ほ とん ど双 方 一
度 会 う だ け で 結 婚 が 決 ま る の で あ る 。 し か も、 こ の よ う に 初 め て 対 面 し た 時 で す ら、 互 い
に 言 葉 が 通 じな い 場 合 が ほ と ん どで あ る。 ま た 、 男 性 は30代
後 半 か ら50代
の人 が比 較的
多 く、相 手 の 女 性 は ほ とん ど20代 前 半 か ら30代 前 半 の 人 た ち で あ り、年 齢 差 が 小 さ く な い 。
次 に 本 稿 が 、 この 業 者 婚 に注 目す る理 由 を説 明 し よ う 。 ま ず 挙 げ られ る の は 、1980年
の 農 村 花 嫁 問 題 か ら 、2006年
滋 賀 県 の 幼 稚 園 児 殺 害 事 件(4)や2010年
代
の 日本 男 性 被 害(5)
な どで 新 聞 を賑 わ せ る の は こ の タ イ プ の 結 婚 が 多 い とい う こ とで あ る 。 ま た 、 日 本 語 もで
き ず 、1回 会 っ た だ け の 男 性 と結 婚 して 日本 で 暮 ら して い る女 性 た ち は 日 本 で い か な る状
態 に お か れ て い る の か 、 あ る い は 、 こ う した 女 性 た ち が 日本 社 会 や 地 域 社 会 に ど の よ う な
影 響 を 及 ぼ し て い る の か 、 と い う 関 心 の 高 ま りが あ げ ら れ る。 さ ら に 、 こ の よ う な 国 際 結
婚 は 日本 だ け で は な く、 台 湾 や 韓 国 で も急 増 して お り、 研 究 が 盛 ん に な り、 政 府 も対 策 を
講 じ始 め て い る 。 しか し他 方 で 、 日本 で は こ の 問 題 に 対 す る学 術 研 究 は 大 変 不 十 分 で あ る
の が 現 状 だ と い わ ざ る を得 な い 。 筆 者 は こ の 業 者 婚 の 問 題 を重 要 視 し、 調 査 ・研 究 を 進 め
て き た 。 業 者 婚 に つ い て は 実 に さ ま ざ ま な ア プ ロ ー チ が 考 え られ る が 、 本 稿 で は 日本 で 生
活 す る彼 女 た ち を 理 解 す る 上 で 重 要 だ と考 え られ る 、'日本 に 来 る まで の 結 婚 動 機 とい う観
点 か ら論 じて み た い。
〔4)2006年2月17日
、 中 国 人妻 が 子 ど もの 同級 生 二 人 を刺 し殺 した事 件 。
(5)毎 日新 聞2010年5月27日
記事 『
国 際 結 婚 トラ ブ ル:県 内 な ど願 望 強 い 農村 部 男 性 が 被 害
2日 相 談 会』
Kyoto Journal
of Sociology
XVIII / December
2010
来月
69
都:日 中 国際 結 婚 に 関す る一 考察
2先
行研究
中 国 の 女 性 た ち は 、い か な る 動 機 や 社 会 的 背 景 の も とで 日本 に や っ て く るの で あ ろ うか 。
この 問 い か け は 、 業 者 婚 の 問 題 を理 解 す る 上 で 基 本 的 か つ 重 要 な 問 題 だ と思 わ れ る。 こ れ
まで こ の 問 題 は 、 多 くの 場 合 、 日 本 と 中 国 に お け る経 済 格 差 と い う視 点 か ら論 じ ら れ て き
た。
た と え ば 、 日本 の 東 北 農 村 の 「外 国 人 花 嫁 」 に 関 す る研 究 で は 、 格 差 ゆ え の 「よ り よ
い 暮 ら し」 へ の 願 望(宿
谷1988)、
「ア ジ ア 諸 国 の 女 性 に と っ て 、 日 本 との 経 済 力 と の 格
差 が 結 婚 の 動 機 で あ る 」(佐 藤1989)と
1996)に
か 、 あ る い は 生 活 水 準 の 向 上 や 経 済 的 格 差(中
澤
よ る も の だ と論 じ ら れ て き た 。 そ して 、 中 国 人 妻 に 関 して は 、 経 済 格 差 が 根 本 的
原 因 に よ る 金 銭 崇 拝(葛1999)が
あ る と さ れ 、 雑 誌 記 事 な ど に お い て も 「経 済 格 差 の 存 在
や 日 本 の 暮 ら しや す さ 」(加 藤2004)こ
そ が 中 国 人 女 性 の 結 婚 動 機 だ と論 じ ら れ て きた 。
しか し、 こ れ らの 結 婚 動 機 に 関 す る論 評 は 実 証 的 な研 究 が 根 拠 に あ る わ け で は な く、 な か
ば 自明 な も の と して 挙 げ ら れ て い る もの で あ る 。
その 一方 で、 近年 の研 究 の 中で は経 済 的要 因 とと もに、結 婚 あ るい は家 父長制 的 諸制 度
な どの 社 会 文 化 的 な 要 因(伊
藤2002)や
出 身 国 に お け る 離 婚 や 失 恋 、 失 職 な ど人 生 の 不 遇
を経 験 した 後 に 結 婚 移 民 を 選 択 し た とい う見 解 も 出 て き た(Nakamatsu2003)。
最 近 の 研 究 で は 、 中 国 農 村 部 出 身 の 女 性3名
そ して 、
の 事 例 を 通 して 、結 婚 動 機 と し て 、経 済 要 因 、
ジ ェ ン ダ ー 的 要 因 、 文 化 的 要 因 が 見 られ る と指 摘 さ れ て い る(饗
漢 卓 梛2007)。
具 体的 に
は 、 経 済 要 因 と して 、 日本 と 中 国 の 国 レベ ル の 経 済 格 差 だ け で な く、 女 性 の 出 身 国 国 内 の
経 済 格 差 や 出 身 地 域 と 日本 の 受 け 入 れ 社 会 との 間 の 格 差 の 存 在 に 注 目す る こ と が 重 要 だ と
述 べ られ て い る 。 ま た ジ ェ ン ダ ー 的 要 因 と して は 、 中 国 的 家 父 長 制 的 ジ ェ ン ダ ー 要 因 ㈲
と新 国 際 分 業 に お け る ネ オ 家 父 長 制 的 ジ ェ ン ダー 要 因{7)が
あ る と分 析 して い る。 最 後 に 、
文 化 的 要 因 と して 中 国 の 「面 子 」文 化 が 背 景 に あ る と指 摘 さ れ て い る。そ の 上 で 、日本 に行 っ
た 中 国 農 村 出 身 の 女 性 た ち は 多 重 な要 因 に よ っ て 周 辺 化 さ れ て い る存 在 で あ り、 与 え られ
た 「国 際 結 婚 」 し か な い と い う状 況 に お い て 、 海 外 へ 結 婚 移 民 す る 道 を 「最 善 」 と し て 選
(6)養 漢卓 郷 の論 文 で こ の 要 因 の 具 体 的 な 内 容 は 「男 尊 女 卑 」、「女 子 な ら容 姿 が 重 要 な価 値 を有 す る」
とい う認 識 、「
女 性 は結 婚 に よっ て 、家 族 に 貢 献 す る 者 と期 待 され 、家 族 は交 換 の 『
成 果』 を 享受 す る」、「農
村共同体における女性の 『
適 齢 期 』 とい う文 化 的 規 定 」 と い うこ と を指 して い る。
(7)奏 漢卓 梛 の 論 文 で こ の要 因 の 具 体 的 な内 容 は 「農村 出 身 の 若 年 女 性 は グ ロ ーバ ル経 済 の 『
雇用の
調 節 弁 』 に な って い る こ と」、 及 び 「この 雇 用 に よ り伝 統 的 労 働 構 造 が 解 体 す る の み な らず 、 女 生 た ち と出
身 共 同 体 との 間 に 『
文 化 的 隔 た り』、 出稼 ぎ女 工 の 配 偶 者 選 択 の 困 難 を 」 生 じ させ る こ と、 「グ ロ ー バ ル化
は モ ノ、 カ ネ 、 ヒ ト、 情 報 の移 動 を促 進 す る こ と に よ っ て 、 ジ ェ ン ダ ー の 不 平 等 を 国 を 超 え て 再 生 産 して
い る 」 こ と を指 して い る 。
京都社会学年報
第18号(2010)
70
都:日 中 国 際 結 婚 に関 す る一 考 察
択 し た と結 論 づ け て い る(養
漢 卓 郷2007)。
こ れ ら の研 究 は 女 性 の 出 身 国 の 経 験 や 事 情 を 重 視 し、 結 婚 要 因 を 多 面 的 に 分 析 して い る
点 に お い て は 画 期 的 な 意 義 が あ る 。 し か し、 女 性 た ち の 語 り に 焦 点 を あ て る 一 方 で 、 女 性
た ち は どの地域 か ら来 るのか とい ったマ クロ的 な問 いが 欠 けて い る。 これ で は グロー バ ル
な 結 婚 行 動 が 生 じ る 要 因 を総 合 的 に 分 析 し た 研 究 とは 言 え な い だ ろ う 。 そ こ で 本 稿 は 、 ま
ず3節
で マ ク ロ 的 に 女 性 の 送 り出 し地 域 を調 べ 、 そ の 地 域 特 性 を 分 析 す る 。 次 に4節
でミ
ク ロ的 に 個 々 人 の 人 生 経 歴 か ら生 ま れ る 結 婚 要 因 を 紹 介 す る 。 さ らに 、 そ の 相 互 作 用 に 注
目 す る 。 最 後 に5節
3マ
で こ れ らの 知 見 を 踏 ま え な が ら、 結 論 を述 る 。
クロ的に見る女性の送 り出 し地域 と地域特性
3-1日
本 人 男 性 と業 者 婚 す る 中 国 女 性 の 送 り 出 し地 域
斡 旋 業 者 に よ る 結 婚 で 日本 に 来 て い る 中 国 人 女 性 は 中 国 の ど の よ う な 地 域 か らや っ て く
る こ とが 多 い の だ ろ うか 。 ど の よ う な 地 域 の 出 身 者 が 、 い か な る 条 件 の も とで 、 移 動 して
い る の だ ろ う か 。 彼 女 た ち は 中 国 の 「貧 困 地 域 」 か ら来 て い る の だ ろ う か 。 管 見 の 限 り、
こ う した 問 い に注 目 し た研 究 は 存 在 して い な い 。
斡 旋 業 者 に よ る 結 婚 の 統 計 が な い た め 、 筆 者 は イ ン タ ー ネ ッ トで の 検 索 情 報 を 手 が か り
に 調 査 を お こ な っ た 。 あ る 国 際 結 婚 紹 介 所 の ホ ー ム ペ ー ジ に 日 中 国 際 結 婚 の 仲 介 を行 う 業
者 の 情 報 を 集 め た 表 が 載 っ て い る(8)。 作 成 者 に よ る と、 こ の 表 は 各 地 域 の 大 き く有 名 な 、
か つ ホ ー ム ペ ー ジ を 持 つ 仲 介 業 者 を 中 心 に 作 成 し、 リ ン ク切 れ や 廃 業 が な い か とい う調 査
も 定 期 的 に 行 い 、 更 新 し て い る とい う。 この 表 に は 「女 性 地 域 」 とい う項 目が あ り、 結 婚
紹 介 所 は どの 地 域 の 女 性 を 紹 介 して い る か が 掲 載 さ れ て い る 。 大 手 業 者 が 仲 介 を 行 う地 域
の 情 報 な の で 、こ れ で 主 な女 性 の 出 身 地 域 が 一 瞥 で き る と 思 わ れ る 。筆 者 は そ の 「女 性 地 域 」
の 部 分 を 下 記 図1に
図1の
ま とめ て み た 。
横 軸 は 女 性 の 出 身 地 域 で あ る 。 業 者 が 使 用 した 表 記 の ま ま な の で 、 行 政 区 分 が 統
一 され て い な い 。 縦 軸 は そ の 地 域 出 身 の 女 性 を 紹 介 す る結 婚 紹 介 所 の 数 を示 して い る 。 こ
の グ ラ フ か ら見 れ ば わ か る よ う に 、結 婚 紹 介 所 は 主 に黒 龍 江 省 の ハ ル ピ ン と遼 寧 省 の 溶 陽 ・
丹 東 ・大 連 と い う 地 域 の 女 性 を 紹 介 して い る の で あ る 。 特 に黒 龍 江 省 の ハ ル ビ ン に は 圧 倒
的 に 多 い 。 ほ か に は 上 海 、 桂 林 、 北 京 も あ る。
11( http://www
Kyoto Journal
.kalin-enet.com/gyousyaitiran.htm]
of Sociology
XVIII / December
2010
2010年8月28日
に ア クセ ス
カ
日rD【kl[箋モ糸∼f女
昏iこ1対rξ る
71
・考'釜
ζ
≦
数
由身 地 域
図1日
本男性 と業者 婚 す る中国女 性の 出身 地域
(http://www.kalin-enet.com/
mus
aitiran.
htmI
1こ弓
局 榔∼(ノ)匡lF祭
系lil女
昏尉{介つりrσ)糸
充1司'よ り 筆1∼1イ
乍I」
文)
で は 、 な ぜ 日 本 人 と 業 者婚 す るIlllK汝 性 は こ れ らの 地 域 に 集 中 して い る の か 、.
時 問 と経 費 の 制[a乏
で 、 す べ て の 地 域 に 調 査 を 行 う こ とが で き な い の で 、 番 多 く 女性 を
送 り出 して い る 黒 龍 江 省 ハ ル ピ ン と経 済 的 に 進 ん で い る 人:連と 南 部 の 桂 林 を 選 ん で 、 資 料
を 集 め 、 実 際 に 行 っ て 、 観 察 及 び 調 査 を す る こ と に し た.
筆 者 は2009年8月
察 お よ び 中ll{1女性8人
か ら9月
に か け て こ れ らの 地 域 で 、 お 見 合 い 様 ∫・と現 地 の 状 況 の 観
、 業 者7人
に'卜構 造 化 イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を実 施 した 、,文献 資 料 と調
査 内 容 の 知 見 を 通 して 、 そ れ ぞ れ の 地 域 を 見 て み る こ と に した い 、
3-2日
本 人 と 業 者 婚 す る 中 国 女 性 の 送 り出 し地 域 の 地 域 特 性
ハ ル ビ ン 、 大 連 、 桂 林 と い う3つ
の 地 域 で 行 っ た 調 査 を通 して 、 こ れ ら の 地 域 に お い て
は 共 通 的 な 地 域 特 性 が あ る こ と が わ か っ た 、,その 地 域 特 性 と い うの はli本 と深 い 関 わ りを
持 っ て い る こ と な の で あ る1以
(1)ハ
ドで 詳 し く 見 て み よ う 、
ル ビ ン市 方 正 県
ま ず 黒 龍 江 省 の 場 合 、 省 都 ハ ル ビ ン 市 出 身 の 女性 が 最 も 多 い こ とが 図1か
京都社会学年報
ら 分 か る,.さ
第18号(2010)
72
都:日 中 国 際 結 婚 に関 す る一 考 察
ら に 調 査 結 果 か ら よ り詳 し く言 う と、 ハ ル ビ ン市 の 中 の 方 正 県(9)出
身 の女 性 が最 も多 い
こ とが 明 らか に な っ た。 で は 、 ど う して 方 正 県 に 集 中 し て い る の だ ろ うか 。
そ の 要 因 の1つ
と して 、方 正 県 と 日本 との 深 い 歴 史 的 な つ な が り を挙 げ る こ とが で き る 。
方 正 県 政 府 の ホ ー ム ペ ー ジ(10)に よ る と 、 「日 中 戦 時 中 に 黒 龍 江 省 に送 ら れ た 日本 の 開 拓 民
た ち が 、 日本 敗 戦 後 方 正 県 を 経 由 して ハ ル ビ ンか らの 帰 国 を望 ん だ と こ ろ 、 方 正 県 に着 い
た と き に 、 寒 さ と伝 染 病 で 結 局4,500人
もの 婦 人 や 子 ど も が 方 正 県 に 留 ま る こ と に な っ て
し ま っ た 」 そ うだ 。 今 日の い わ ゆ る 「残 留 婦 人 」、 「残 留 孤 児 」 の こ と で あ る 。
日 中 国 交 正 常 化 の 後 、 「残 留 婦 人 」、 「残 留 孤 児 」 た ち は 日本 の 肉 親 を 探 し、 家 族 を 連 れ
て 日 本 に 帰 国 す る よ う に な っ た 。 そ の 時 に 、 中 国 で 生 ま れ 育 っ た 「残 留 孤 児 」2世 の 男 性
た ち は 日本 で 結 婚 相 手 を 探 す の が 難 し く、 生 ま れ 育 っ た 故 郷 に 帰 っ て 探 して い た 。 ま た 、
中 国 の 親 戚 や 近 所 の 人 を 日 本 人 男 性 に紹 介 す る 人 も現 れ て き た 。 そ う す る と、 方 正 県 か ら
日本 に 行 く人 が ま す ます 増 え て い っ たm)。
実 際 に 方 正 県 に お い て は 、 日本 に 親 戚 が い る 人 が 多 く住 ん で お り、 国 際 結 婚 紹 介 業 者 、
日本 語 学 校 と航 空 チ ケ ッ トの 販 売 店 な どが 多 い 。 ま た 各 銀 行 に は 日本 円 の 両 替 レ ー トが 書
か れ て い る掲 示 物 が あ り、 日僑 が 住 む マ イ ホ ー ム の 建 設 が 進 ん で い る。 こ の よ う な風 景 は
極 め て 珍 し く、 ほ か の 地 域 に 比 して 日本 と の つ な が りの 強 さ を 表 して い る 。 ま た 、 こ の 地
域 で は 、 人 々 は 日本 に 対 し て 大 き な 関 心 を も っ て お り、 筆 者 が 宿 泊 し て い た ホ テ ル で 開 催
され て い た 結 婚 式 で は 、 司 会 者 が 「日本 多 仏 神 秘,日
本 多 仏 美 雨 」(日 本 は い か に 神 秘 で 、
い か に きれ い)と
言 っ て か ら、 新 婚 の 夫 婦 は 結 婚 後 ま も な く 日本 に 行 く こ と を発 表 し、 彼
ら は 「去 日本,去
排 搏,去
力 了 自 己 的 梵 想 而 奇 斗 」(日 本 に行 っ て 、 一 生 懸 命 に 自分 た ち
の 夢 の た め に が ん ば っ て い く)と 話 し て い た 。 この 小 さ な 県 で は 日本 の こ とが 日 々 の 話 題
と な っ て い る の で あ る。
(2)大
連市
次 に 大 連 を 見 て み よ う。 大 連 は19世
紀 の 中 頃 以 降 、 列 強 の 中 国 侵 略 の 一 環 と して 開 か
れ て い っ て 、 ロ シ ア や 日本 な ど に 占領 さ れ た歴 史 を 持 つ(関2000:41)。
方 の 代 表 的 な 工 業 基 地 の 一 つ で あ り、1984年5月
に 中 国 沿 海 の14の
現 在 は中 国東北 地
港湾 都市 の 一つ と し
て 対 外 開 放 され た 。 大 連 は、 遼 寧 省 ・吉 林 省 ・黒 龍 江 省 と い う 中 国 東 北 の 各 省 に とっ て の
玄 関 口 で あ る 。 開 放 以 来 、 大 連 を 「北 の 香 港 」 に す る とい う中 央 の 意 向 も打 ち 出 さ れ て い
(9)こ
この
「県 」 は 中 国 の 行 政 区 分 単 位 で 日 本 の
qolhttp:〃221
「郡 」 に 当 た る 。
.212.34.1711mlqxlqxyV201007142016.htm2010年8月29日
ω)方 正 県 の 人 た ち の 話 に よ る 。
Kyoto Journal
of Sociology
XVIII / December
2010
にアクセス
73
那:日 中 国 際 結 婚 に関 す る一 考 察
た(関2000:12)。
そ の よ う な 背 景 か ら、 大 連 は 積 極 的 に 外 資 を 受 け 入 れ 、 発 展 して きた の
であ る。
一 方 、 日本 企 業 に と っ て 、 大 連 は 、 海 洋 性 気 候 で 過 ご しや す く、 海 産 物 も 豊 富 で 、 戦 前
の 影 響 か ら 年 配 者 の 間 で は 比 較 的 日本 語 が 通 じ る こ とな ど も あ り、 当 初 か ら注 目 さ れ て い
た(関2000:12)。
事 実 、 大 連 に お け る 日 本 の 存 在 感 は 大 き い 。1984年
連 に 進 出 す る よ う に な り、1997年
か ら 日本企 業 は大
末 に大連 の外 資 系の 企業 の 中で、 従業 人員 数、 生産 額 の
い ず れ を み て も、 日本 企 業 が ほ ぼ 半 数 を 占 め て い る(関2000:132)。
日本 企 業 の 大 連 へ の
直 接 投 資 は 上 海 に及 ば な い が 、 都 市 規 模 を 差 し引 け ば 、 大 連 に お け る 日 本 企 業 の 存 在 感 は
圧倒 的 に大 きい。上 海 にお い て 日本企 業 は、香 港 、台 湾、 欧 米諸 国 な どの企 業が 集積 して
い る 中 の ひ とつ の 部 分 で しか な い が 、 大 連 に お い て は 日本 企 業 に よ っ て 外 国 企 業 の イ メ ー
ジが 形 成 さ れ て い る(関2000:2)。
日系 企 業 と と も に 大 連 が 発 展 して き た と 言 え る ほ ど、
日本 企 業 と大 連 の 関 係 は 密 接 で あ る 。
ま た 、 大 連 外 国 語 学 院 と い う 大 連 に あ る大 学 は1964年
日語 専 科 学 校(大
連 日本 語 専 門 学 校 の 意)だ
の 日本 語 学 院 に は3,300名
に 設 立 され 、 当 時 の 名 前 は 大 連
っ た 。 そ して 、2010年
現在 の大 連外 国語 学 院
の 学 部 生 が 所 属 し て お り、 世 界 で も最 大 の 日本 語 教 育 機 関 で あ
るq2)。 更 に 、 そ れ と は 別 に 大 連 に は 日本 に研 修 生 を 送 り 出 す 機 関 も 存 在 し、 大 連 市 近 郊
農 村 部 の 若 い 人 た ち を 日本 に送 り出 して い る の で あ る 。 こ の よ う に 大 連 は 様 々 な場 面 に お
い て 日本 と密 接 に か か わ っ て い る都 市 な の で あ る 。
(3)桂 林 市
最 後 に 桂 林 に つ い て 説 明 す る 。 中 国 で は 「桂 林 山 水 甲 天 下 」 と い う言 葉 が あ り、 桂 林 の
山 水 景 色 は 天 下 で 一 番 と い う 意 味 で あ る。 中 国 で 最 も 早 く観 光 産 業 を 発 展 さ せ た 地 域 で 、
1973年
に対 外 開 放 され た 。 毎 年 、 多 くの 人 が 訪 れ て お り、 特 に 外 国 か らの 観 光 客 が 多 い こ
とが 桂 林 の 特 徴 で あ る 。1997年
比 率 は全 国 第1位
で あ る(那
に 桂 林 市 の 国 際 観 光 客 か ら得 た 収 入 と、 第 三 次 産 業 収 入 の
・李 ・越2005:713)。
近 年 は そ の 他 の 新 興 都 市 も観 光 地 と し
て の 地 位 が 高 ま っ て き た が 、 桂 林 は 依 然 と して 中 国 全 国 の な か で も上 位 を 占 め て い る 。 ま
た 国 際 観 光 客 の 中 に は特 に 日本 と 台 湾 の 旅 行 者 の 比 率 が 高 い 。 日本 に 関 して は 、1980年
か ら(2002年
を 除 き)ず
っ と桂 林 市 随 一 の 「客 源 」(13)(昊2008)に
代
な っ て い る 。 多 くの 日
本 人 は そ の 景 色 に 惹 か れ て 訪 ね て く る の で あ る 。 近 年 、 定 年 後 桂 林 に移 住 す る 日本 人 も現
`,2)http:41p .dluf1.edu.cn!xygk!2010年8月30日
にアクセス
u3)客 源:「 観 光 客 の 源 」 の 意 味 で 、 得 意 先 を さ す 。
京都社会学年報
第18号(2010)
74
都:日
中 国際 結 婚 に 関す る一 考 察
れ る よ うにな った。
筆 者 が 桂 林 市 で イ ン タ ビ ュ ー した 日本 男 性 は15年
感 動 し、 そ れ か ら40回
前 に初 め て桂 林 に来 て、 そ の景 色 に
ぐ らい 桂 林 に 来 て い る と い う。 ま た そ の う ち に 、 物 価 が 安 い 、 人
間 が 暖 か い とい う こ とが わ か り、2004年
か ら桂 林 に 移 住 して きた の で あ る。 住 ん で か ら 日
本 語 教 室 を 開 い て 日本 語 を教 え る よ う に な っ て 、 生 徒 た ち に 日本 男 性 との 結 婚 を斡 旋 す る
ように な った。
ま た 、 台 湾 や 香 港 の 会 社 も桂 林 に 進 出 して 、 そ れ に よ り台 湾 人 や 香 港 人 と の 結 婚 も少 な
く な い 。 そ の よ うな ケ ー ス が 、 桂 林 市 の 国 際 結 婚 の70%を
と 日 本 で20%を
占 め て い る(振1994:93)の
占 め て お り、 そ の 次 が ア メ リ カ
で あ る。
こ う して 実 際 に調 べ て み る と 、 桂 林 も開 放 的 な 地 域 で 日本 とつ な が っ て い る の で あ る。
3・3考
察:社
会関係 資 本 の重要性
以 上 、 日本 人 男 性 と業 者 婚 を す る 中 国 女 性 の 送 り出 し地 域 と筆 者 の 調 査 に よ る3つ
の地
域 の 特 性 を見 て きた 。 大 手 業 者 が 仲 介 す る地 域 の 統 計 か ら み れ ば 、 女 性 は 中 国 各 地 域 か ら
来 る の で は な く、い くつ か の エ リ ア に集 中 して い る こ とが わ か っ た 。 また 、実 際 に ハ ル ビ ン、
大 連 、 桂 林 とい う地 域 を 見 て み る と、 日本 と関 連 が 強 い こ と、 つ ま り両 国 に お け る 社 会 関
係 資 本 が 蓄 積 され て い る こ とが 共 通 の 特 徴 で あ る こ とが 明 らか に な っ た 。
まず 、 方 正 県 に は 残 留 婦 人 と残 留 孤 児 の 数 が 最 も多 く、 日本 に 関 す る 情 報 が 豊 富 で 、 規
模 に比 し て 社 会 関 係 資 本 が 多 く 蓄 積 さ れ て い ・
る 。 ハ ル ビ ン市 に は い くつ か の 県 が あ る が 、
国 際 結 婚 業 者 が 集 中 して い る の は 方 正 県 だ け で あ る 。 そ の 理 由 は い くつ か 考 え ら れ る。 ま
ず 、 日本 を訪 れ た こ と の あ る 人 た ち が 帰 っ て き た 時 に、 「日 本 の 環 境 が よ い 」、 「現 地 と比
べ て 給 料 が 高 い 」、 「日本 は住 み や す い 」 な どの 情 報 を 人 々 に 伝 え る こ とで 、 ま わ りの 人 々
の 日本 に 対 す る憧 れ を煽 る の で あ る 。 と同 時 に 、 そ の よ う な 人 た ち の 変 わ り様 や 現 地 の 不
動 産 投 資 な ど を見 る と、 人 々 に相 対 剥 奪 感 が 生 じ、 日本 へ の 憧 れ が 強 く な る 。 ま た 、 日本
に 親 戚 や 知 り合 い が 多 くい る こ と は 、 人 々 に と っ て 日本 に 行 くこ とに 対 す る 恐 れ を緩 和 す
る 効 果 を もつ 。 さ ら に 、 日本 に 行 くこ と を 希 望 す る 人 が 増 え て い くに つ れ て 、 現 存 の 人 間
関 係 、 社 会 関 係 資 本 が 商 品 化 さ れ 、 仲 介 す る こ とが ビ ジ ネ ス に な り、 市 場 を 通 じ て 人 々 を
外 国 に 送 り出 す ル ー トが 強 化 さ れ る の で あ る 。 以 上 の よ う な 理 由 で 社 会 関 係 資 本 が 蓄 積 さ
れ れ ば さ れ る ほ ど、 日本 に 行 く人 が 増 え て い く と考 え られ る 。 また 、 大 連 は 日本 企 業 の 進
出 や 日本 に 労 働 力 を 送 り出 す こ とが 日本 との 社 会 関 係 資 本 の 蓄 積 を促 進 し て い る と 考 え ら
れ る 。 桂 林 は そ の 気 候 と 自然 景 色 で 日本 人 観 光 客 を集 め 、 日本 か ら の 移 住 者 を招 くこ と に
よ り、 日本 との 社 会 関 係 資 本 が 蓄 積 さ れ る 。
Kyoto Journal
of Sociology
XVIII / December
2010
都:日
75
中 国際 結 婚 に 関 す る 一 考 察
上 記 の 地 域 の よ うに 資 源 や 環 境 が な い と こ ろ で は、 人 々 の 渡 日の 希 望 も薄 く市 場 も存 在
しな い の で あ る 。 筆 者 は あ る仲 介 業 者 か ら、 他 の 地 域 、 例 え ば もっ と貧 し い 地 域 な どの 女
性 に こ の 国 際 結 婚 の 話 を持 ち か け て も、 誰 も 応 じて くれ な い と い う話 を 聞 い た 。 ま た あ る
業 者 は こ の 結 婚 の 話 を 違 う と こ ろ に 持 ち 込 ん だ ら、 「人 を 売 買 す る つ も りか 」 と言 わ れ て
追 い 出 され た 経 験 が あ る とい う。 ほ か に筆 者 が 調 査 で き な か っ た 中 国 女 性 の 送 り出 し地 域
で も何 らか の 理 由 で 日本 との 社 会 関 係 資 本 を持 っ て い る と推 定 で き よ う。
で は 、 こ れ ら の 地 域 で 日 本 人 と結 婚 し た 女 性 や 、 結 婚 を 希 望 す る 女 性 に は ど の よ う な 個
別 の 事 情 が あ る の だ ろ うか 。 そ の 点 に 関 して は 次 節 で 検 討 す る。
4ミ
クロ的に見 る女性たちの人生経歴から生 まれる結婚要因
本 節 で は 上 記 で 見 て き た3つ
の 地域 で行 った女性 の イ ンタ ビュー をそ れぞ れ一 人 ずつ 紹
介 し た い 。 そ れ を通 し て よ り ミ ク ロ な 観 点 か ら、 個 々 人 の ラ イ フ ス トー リー に 注 目 し、 彼
女 た ちが 日本 に 来 る理 由 を 検 討 す る 。
4-1Aさ
Aさ
ん一
ん(イ
ハ ル ビン市
ン タ ビ ュ ー 時 、23歳 初 婚/夫38歳
初 婚)は
方正 県 の 農 家 で生 まれ、 兄 が
一 人 お り、4人 家 族 で あ る 。 彼 女 は 中 学 校 を卒 業 後 、 地 元 を 離 れ 、 親 戚 の い る 都 市 で 働 い
て い た。 そ の 仕 事 は 毎 日 ノ ル マ が 設 定 さ れ 、 そ れ を達 成 す る た め に よ く働 き、 毎 日 が 充 実
して い た 。 彼 氏 もで きて 、と て も幸 せ だ っ た 。 しか し22歳
た。 失 意 の 中 、Aさ
の 時 に そ の 彼 氏 と別 れ て し ま っ
ん は故郷 方 正 県 に帰 った。 農村 では結 婚 が早 い ので 、家 族 にそ の話 を
持 ち か け られ た 。 親 に ま わ りの よ う な 日 本 人 と の 結 婚 は 考 え な い か と も言 わ れ た 。 彼 女 は
自 分 自 身 の 結 婚 の こ と を 考 え る よ う に な っ た。
こ れ か ら ど うす る か とAさ
ん は 考 え 込 ん だ 。 同 級 生 で 仲 の よ い 友 達 の2、3人
は 日本 人
や 韓 国 人 と結 婚 して い る。 親 戚 の お ば さ ん や 近 所 の 人 も 日本 人 と結 婚 して い る 。 い ろ い ろ
と話 を よ く聞 い て い る が 、 う ま く行 く人 も い れ ば 、 す ぐ帰 っ て き た 人 もい る 。 自分 も い つ
も 日本 が き れ い で 、日本 人 は 礼 儀 正 しい 、日本 で は お 金 を 儲 け や す い 、とい っ た 噂 話 を 聞 き、
興 味 が な い わ け で は な か っ た 。 無 論 、 向 こ うで い じめ られ た 、 あ る い は 、 夫 が 変 な 人 だ っ
た と い う話 も聞 い た こ とが あ る 。
い ま 彼 氏 と別 れ て し ま い 、 も う 結 婚 す る歳(14)に な っ た の で 、 彼 女 は ど う な る か 分 か ら
q4}2007年 中 国 農 村 男 性 平 均 初 婚 年 齢 は25 .49歳 で 、 女性 は23.13歳 で あ る(2007年
京都社会学 年報
中国人口年鑑 よ
第18号(2010)
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都:日
中 国際 結 婚 に 関す る一 考 察
な い な と思 い つ つ 、 運 が よ け れ ば 、 良 い 人 と 出 会 え て 、 安 定 的 な 生 活 が 送 れ る か も しれ な
い と い う理 由 か ら、 国 際 結 婚 業 者 の と こ ろ に も一 応 登 録 し て お い た 。 そ の 後 、 日本 人 男 性
が お 見 合 い に 来 た と業 者 か ら電 話 で の 連 絡 が 来 て 、 彼 女 は お 見 合 い に 行 っ て み た 。 実 際 に
行 っ て み る と、 日本 人 男 性 は 一 人 だ が 、 お 見 合 い 相 手 の 女 性 は 何 人 もい た 。 そ れ ぞ れ 次 々
と部 屋 に 入 っ て 、 そ の 男 性 と通 訳 を 通 して 話 を した 。 お 見 合 い した 相 手 の 日 本 人 は 面 白 そ
う な 人 だ と思 っ た が 、 結 局 彼 は ほ か の 人 とつ き合 う こ と に な っ た 。 そ の 後 、1年 半 ぐ ら い
家 に い な が ら何 回 か お 見 合 い を して 、 い ま の 日本 人 夫 と結 婚 し た 。
方 正 県 と い う 日本 に 行 く人 が 多 い こ の 町 で は 、彼 ら1彼 女 ら に は 、 日常 的 に 日本 か ら帰 っ
て きた 人 た ち な ど か ら情 報 が 入 っ て く る。 こ の よ う な 環 境 の 中 、 彼 氏 と 別 れ て し ま い 、 農
村 の 結 婚 適 齢 期 に な っ たAさ
ん は 、 や は り周 りの 友 達 や 親 戚 、 近 所 の 人 と 同 じ よ う に 日 本
人 との 結 婚 も選 択 肢 に 入 れ た の で あ る。
4-2Bさ
ん.大
Bさ ん(イ
の4人
連市
ン タ ビ ュ ー 時 、28歳 未 婚)は
、 大 連 市 郊 外 の 農 村 地 域 で 生 まれ た 。 妹 が 一 人
家 族 で あ っ た 。 中 学 校 卒 業 後 、 大 連 の 開 発 区 付 近 で ア ル バ イ トし て い た 。 そ れ か ら
研 修 生(15)募 集 に 応 募 し て 、 日本 で3年
間 働 い た 。 日 本 に い る 間 は、 仕 事 が 大 変 で 日本 人
と比 べ た ら、 給 料 も とて も少 な い が 、 幸 い 出 会 っ た 人 々 は み な 親 切 だ っ た 。 日本 の 環 境 も
好 き に な っ た 。 日本 か ら帰 っ て きた 後 、 も う農 村 に い る こ と は で きず に 、 大 連 市 内 で が ん
ば っ て 生 き よ う と 決 め た 。 ま た 、 い ま まで 考 え た こ とが な い 英 語 や ダ ン ス や ピ ア ノ な ど の
習 い 事 や 、 旅 行 へ の 関 心 が 大 き くな っ て い っ た 。 しか し、 そ れ ら をす る余 裕 が ま だ な い の
で 、と りあ え ず 日本 語 学 校 に 入 っ て 、続 け て 日本 語 を勉 強 し、日系 企 業 で 働 くよ う に な っ た 。
妹 も 日本 で 研 修 して い て 、 日本 語 能 力 試 験2級
に合 格 した 。 妹 に 対 して は 、 こ ち ら か ら本
を 買 っ て 送 っ て 、1級 に も合 格 で き る よ う とサ ポ ー トし て い る。 妹 は 頭 が よ い た め 、 日本
で 留 学 が で きた らい い とBさ
ん は思 っ て い る 。
日 本 が 好 き に な っ て 、 また 日本 に 行 き た い と思 うBさ
段 出 会 う機 会 が あ ま りな い の で 、Bさ
ん は 日本 人 との 結 婚 も考 え た 。 普
ん は 業 者 の と こ ろ に も登 録 した 。 何 回 か お 見 合 い に
呼 ば れ た が 、 相 手 に 離 婚 歴 が あ っ た り、 歳 が 離 れ す ぎ て い た り し て う ま く行 か な か っ た 。
自分 は ど う して も本 当 に 好 きな 相 手 で な い と結 婚 して 日本 に 行 く こ と は で きな い とBさ
ん
は言 っ た。
り引用)
q5)日 本 の 「
外 国 人研 修 ・技 能実 習 制 度 」 に も とづ き、 日本 に働 き に行 く身分 。2010年7月
度 が 改 正 さ れ た。
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of Sociology
XVIII / December
2010
にこの制
那:日
Bさ
77
中 国際 結 婚 に 関 す る 一 考 察
ん の 場 合 は 、 日系 企 業 が 多 く、 日本 語 の 教 育 機 関 が 充 実 して お り、 市 郊 外 や 農 村 の
若 者 の 日本 へ の 研 修 ル ー トも で き て い る大 連 市 に い る の で 、 研 修 生 と して 日本 で 働 く と い
う こ と を比 較 的 容 易 に 選 択 す る こ とが で き た 。 ま た 、Bさ
ん は 、 研 修 生 と して 日本 で3年
間働 い た こ と に よ り、 日 本 の こ と を 噂 で 聞 く だ け で は な く、 自 ら経 験 す る こ とが で きた 。
そ し て 、 日本 で 出 会 っ た 親 切 な 人 々、 日 本 の 良 い 環 境 に 惹 か れ る こ と に な っ た 。 日 本 か ら
帰 っ て き た 彼 女 は 、 も う農 村 に い る こ と が で き な くな っ た 。 そ して 、 市 の 中 心 部 で 日本 語
を勉 強 し、 日本 企 業 で 働 く よ う に な っ た。 お そ ら く彼 女 は 日本 で い ま ま で と違 う生 活 様 式
を 見 た の で は な か ろ うか 。 日 本 で の 生 活 が よ り文 化 的 に 豊 か な生 活 が 見 え た の か も しれ な
い。 そ の よ う な 生 活 に 憧 れ 、 日本 の 環 境 も好 き で 、 ま た 行 きた い と 考 え て い る が 、 中 卒 の
彼 女 は 留 学 が で き な いq6)。 研 修 生 と して も1度 行 っ た ら、3年 以 内 に 再 び 日本 に行 く こ と
が で き な い 。2度 行 く こ と の で き る 人 は 本 当 に 稀 で あ る 。 つ ま り結 婚 以 外 、 日本 に 行 く道
が な い と 言 え よ う 。 しか し 、Bさ
ん は 結 婚 を 日本 に行 くた め の 単 な る 手 段 と した く な い と
考 え て い る 。 で きれ ば お 互 い の こ とを 好 き な 日本 男 性 と出 会 っ て 、 恋 愛 し て 結 婚 した い と
い う。Bさ
ん が 同 じ研 修 生 の 友 達 で 日本 人 と恋 愛 結 婚 した 友 達 の こ と を う らや ま しそ う に
語 っ た 。 だ が 、 大 連 に は 日 本 人 が 少 な く な い が 、 彼 女 は そ れ ほ ど 日本 人 の 男 性 と接 触 で き
な い の で あ る 。 最 終 的 に は 業 者 の と こ ろ に行 っ た が 、 も と も と お 見 合 い に 来 る 日本 人 男 性
は そ れ ほ ど 多 くな く、 実 際 に お 見 合 い で き る 人 は も っ と少 な い 。 理 想 的 な 人 と出 会 え て い
ない彼 女 は まだ出会 い を待 って い るの であ る。
4・3Cさ
Cさ
ん 一
ん(イ
桂林市
ン タ ビ ュ ー 時 、34歳
再 婚/夫46歳
初 婚)は
桂林 市 に生 まれ、 中学 校 を卒
業 して か ら い ろ い ろ な 仕 事 を して きた 。 桂 林 よ り も南 部 に位 置 す る 大 都 市4年
た こ と もあ る。Cさ
間 ほ ど働 い
ん に は 、8歳 の 娘 が 一 人 い る 。 中 国 人 の 夫 と結 婚 後 、 しば ら く育 児 に
追 わ れ て 、 仕 事 を しな か っ た 。 夫 は 当 時 商 売 を し て お り、 十 分 な 収 入 が あ っ た 。 しか しそ
の 後 、 夫 は 稼 い だ お 金 で賭 け 事 を す る よ う に な り、 浮 気 もす る よ う に な っ た 。Cさ
ん はそ
の こ とが 原 因 で 離 婚 し た。 夫 は す っ か りお 金 を使 い切 っ て し ま っ て お り、 娘 の 教 育 な ど も
夫 の 両 親 が サ ポ ー トし て い る 。
桂 林 市 は 外 国 人 が 多 く訪 ね て く る た め 、 台 湾 や 香 港 、 ま た そ の 他 の 外 国 人 と の 結 婚 が そ
れ ほ ど珍 し い こ とで は な い 。Cさ
ん は ず い ぶ ん 前 か ら外 国 の こ とや 、 外 国 人 と の 結 婚 の こ
㈹ 日本 の 規 定 に よれ ば 、留 学 す るに は 中 国 で12年
以 上 の 正 規 学 校 教 育 を受 けて い る こ とが 条 件 で あ
る。 つ ま り、 高 卒 以 上 で な けれ ば な ら な い。
京都 社 会学 年 報
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都:日
中 国 際結 婚 に 関 す る 一 考 察
と を た く さん 聞 い て い た け れ ど、 全 く関 心 が な か っ た 。 し か し離 婚 後 、 学 歴 も な く、 仕 事
も な い と い う状 況 に お い て 、 自分 は と もか く と して も、 ま だ8歳
の子 ど もの教育 や 将来 の
こ と に つ い て 心 配 す る よ う に な っ た 。 離 婚 した 自 分 は 地 元 で 再 婚 す る の は 簡 単 な こ とで は
な い とCさ
ん は 考 え て い る。 い まか ら仕 事 を し て も非 正 規 雇 用 で 給 料 も安 く、 子 ど も に よ
い 教 育 を させ る こ と が で き な い 。 こ の 時 、Cさ
んは外 国 人 との結 婚 を考 え る よ うにな った
と い う。 よい 人 と 出 会 っ た ら、 一 緒 に 残 っ た 人 生 を幸 せ に 暮 ら した い 。 た と え よ い 人 に 出
会 え な くて も、 日本 で 仕 事 を し、 自分 の 手 で 自分 と娘 の 将 来 の た め に 働 くこ と をCさ
んは
決 め た の で あ る 。 な ぜ な ら同 じ よ う な 仕 事 を し て も 中 国 よ り も 日本 な ど外 国 の 給 料 の ほ う
が 高 い か ら で あ る 。 自分 で 日 本 の こ とを 確 か め た 上 で 、 も し環 境 も よ く、 教 育 も よ い な ら、
娘 を 連 れ て 行 く こ と も選 択 肢 と して あ っ た 。 そ の 後 、Cさ
ん は 業 者 の と こ ろ に登 録 し、 日
本 語 を勉 強 し な が ら、 お 見 合 い を 待 っ て い た 。 そ の 結 果 、 い ま の 夫 と結 婚 した の で あ る 。
筆 者 の 仲 介 業 者 に 対 す る イ ン タ ビ ュ ー に よ る と、 こ の よ う な 業 者 婚 をす る 女 性 は、 離 婚
歴 の あ る 女 性 が 多 い とい う。 先 述 の とお り、Cさ
ん に は 離 婚 の 経 験 が あ る 。 傷 つ け られ て
離 婚 した 女 性 は 、 も との 場 所 を 離 れ た い とか 、 も っ と強 く な っ て 、 自 立 し な い と い け な い
と考 え、 業 者 婚 を 決 断 す る 。Cさ
ん が 自分 と娘 の 将 来 の た め に 外 国 に 行 く こ と を 選 ん だ こ
と は 、 そ の 例 で あ る 。 周 囲 に 結 婚 斡 旋 業 者 が 存 在 して お り、 日本 へ の ア ク セ ス が 比 較 的 容
易 で あ る とい う こ とが 前 提 条 件 に な っ て い る。 こ れ らの 条 件 の も とで 、 い ま の 夫 と 出 会 っ
て 、Cさ
4-4考
ん は 日本 に 行 く こ と に な っ た の で あ る 。
察1:経
済 的 要 因 、 親 密 関係 的 要 因 、 主 体 的 要 因 と い う結 婚 要 因
本 節 は イ ン タ ビ ュ ー 内 容 を通 して 、3節 で 紹 介 し た 三 つ の 地 域 に お い て 、 女 性 た ち が 日
本 に 行 く理 由 を 見 て きた 。 そ の 結 果 、 女 性 の 人 生 経 験 か ら生 まれ る 結 婚 動 機 に は 経 済 的 要
因 、 親 密 関 係 的 要 因 、 主 体 的 要 因 が み られ る こ とが 明 らか に な っ た 。
ま ず 、 経 済 的 要 因 と し て 、Aさ
Bさ
ん の 場 合 は 、 日 本 で も っ と安 定 的 な 生 活 が で き る こ と、
ん の 場 合 は 日本 で よ り豊 か な文 化 的 生 活 を 享 受 で き る こ と、Cさ
ん の 場 合 は 日本 で 高
い 給 料 を も ら い 、 子 ど も に よ い 教 育 を させ る こ と、 と い う そ れ ぞ れ の 具 体 的 な 希 望 を持 っ
て い る 。 ま た 親 密 関 係 的 要 因 と し て 、 彼 氏 と別 れ た こ と、 結 婚 適 齢 期 に な っ て 結 婚 と こ れ
か ら の 人 生 を 意 識 す る よ う に な っ た こ と、 離 婚 し た こ とが 含 まれ る 。 こ れ ら の 要 因 は い ま
まで の 研 究 で も見 ら れ(Nakamatsu2003)、
2010)。 更 に 、 主 体 的 要 因 と して は 、 特 にBさ
筆 者 も以 前 論 文 で 具 体 的 な 例 を 紹 介 し た(都
ん の 行 動 に あ る よ う に 、 実 際 に 日本 に 行 っ
て 、 い ろ い ろ な こ と を見 聞 し、 憧 れ が 生 じ、 再 び 日本 を 訪 れ た い と考 え る よ うに な る こ と
を 挙 げ る こ とが で き る 。 し か し、 制 度 上 で は 簡 単 に 日本 に行 く こ とが で き な い。 そ の よ う
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都:日 中 国 際 結 婚 に 関す る一 考 察
な 状 況 の 中 で 、 す な わ ち現 実 的 な 制 度 の 束 縛 の 中 か ら、 彼 女 た ち は 国 際 結 婚 を 選 択 し よ う
とす る こ と で あ る 。 い ま ま で の 先 行 研 究 で は こ の よ う な 事 例 が 研 究 で あ ま り見 ら れ て い な
い 。 饗 漢 卓 郷 の 論 文 で も研 修 生 の 事 例 に 触 れ て い る が(饗
漢 卓 梛2007)、
一 家 の大 黒柱 と
して 日本 に研 修 に 行 くの も 、 国 際 結 婚 す る の も実 家 の 家 計 を支 え る た め だ と述 べ られ て い
る。 筆 者 が イ ン タ ビ ュ ー し たBさ
ん の 事 例 は そ れ とか な り違 っ た 。Bさ
んの事 例 は妹 を 日
本 で 留 学 させ た い と 考 え 、 自分 も よ り豊 か で 文 化 的 な 生 活 に 憧 れ て 、 普 段 か ら 日本 語 を勉
強 し、 日系 企 業 で 働 き な が ら、 再 び 日本 に 行 く機 会 を待 っ て い る の で あ る。 簡 単 に 外 国 に
行 け な い 中 国 で 、Bさ
考 察2:社
ん は 主 体 的 に 国 際 結 婚 を 考 え よ う と した の で あ る。
会 関係 資本 と女性 個 人動機 の 相互 作用
こ こで 注 目す る必 要 が あ るの は 、 社 会 関 係 資 本 と女 性 個 人 動 機 の 相 互 作 用 で あ る。
本 稿 で と りあ げ た 地 域 は 歴 史 的 、 経 済 的 な どの 要 因 で 日 本 とつ な が り を も ち 、 社 会 関 係
資 本 が 蓄 積 さ れ て い る 。 こ の社 会 関 係 資 本 は 、 自 由 に 外 国 に い け な い 中 国 で は 外 国 へ の 渡
航 を 可 能 に す る 重 要 な ポ イ ン トに な っ て い る 。 この 社 会 関 係 資 本 の 存 在 に よ り、 外 国 の 情
報 が 入 る よ う に な り、 外 国 に 行 く手 段 が 提 供 さ れ る の で あ る 。 仲 介 業 者 に よ る結 婚 紹 介 も
まさに この社 会 関係 資本 の 産物 であ る。 この よ うな社会 関係 資 本 のな い地域 で は、外 国 と
の 間 は 実 質 的 な 交 流 が ほ と ん ど な く、 外 国 の 情 報 も少 な い 。 業 者 婚 も存 在 して い な い の で
あ る。
し か し、 こ の よ う な 地 域 に お い て も、 ど の 女 性 も外 国 人 との 結 婚 を望 ん で い る わ け で は
ない。 本 稿の イ ンタ ビュー か らわか る ように、経 済 的 要因、 親密 的な要 因、 主体 的 な要 因
が存 在 してい る。
つ ま り、社 会 関 係 資 本 と 女 性 個 人 動 機 の 相 互 作 用 で 業 者 婚 が 成 立 し て い る と言 え る 。個 々
人 の 結 婚 動 機 要 因 が 社 会 関 係 資 本 と結 びつ い て は じめ て 国 際 結 婚 と い う 選 択 肢 が 生 まれ て
くる の で あ る。 無 論 、 日本 男 性 側 の 事 情 も あ る の だ が 、 そ れ を別 稿 に て 論 じ る。 ま た 、 い
ま社 会 関 係 資 本 が イ ン ター ネ ッ トを通 じて 作 り 出 され 、広 が っ て い く現 象 が 起 きつ つ あ る。
5お
わ りに
本 稿 は 、 業 者 婚 を し た 、 あ る い は 業 者 婚 を希 望 す る 中 国 女 性 た ち の 結 婚 動 機 を 考 察 して
きた。
い ま ま で の 研 究 で は 女 性 の 結 婚 動 機 に 関 し て は 日本 と 中 国 の 経 済 格 差 が 主 に 強 調 さ れ て
京都社会学年報
第18号(2010)
都:日 中 国 際 結 婚 に関 す る一 考 察
80
き た。 確 か に 経 済 格 差 は 大 切 な 要 因 で あ る。 しか し、 そ の 前 に 歴 史 や 経 済 的 な 理 由 で 中 国
の 特 定 な 地 域 は 日本 とつ な が りが あ っ て 、 両 国 に お け る 社 会 関 係 資 本 が 蓄 積 され て い る こ
と も 見 逃 して は な ら な い 。 ア メ リ カ の 学 者SaskiaSassenが
論 証 して い る よ う に 、 「移 住
自体 は 高 度 に 選 択 さ れ た プ ロ セ ス で あ る 。 特 定 の 人 しか 移 動 で き な い 、 しか も彼 らの 向 か
う 目 的 地 へ の ル ー トは 高 度 に 構 造 化 さ れ て お り、 盲 目 的 に ど れ で も よ い 豊:かな 国 に ど ん ど
ん 入 っ て い くの で は な い 。 移 動 が こ の よ う な 高 度 に 構 造 化 され た 形 を もつ の は 、 送 り出 し
国 と受 入 国 と の 間 の 相 互 作 用 と相 互 関 係 と い う理 由 で あ る 」(Sassen2000:2筆
者 訳)。 本
稿 の 女 性 の 送 り出 し地 域 に 関 す る分 析 を 通 して み れ ば 、 中 国 女 性 の 日 本 へ の 移 動 も両 国 の
相 互 作 用 に よ る もの だ と わ か る 。
本 稿 の 議 論 か ら わ か る よ う に 、 特 定 の 地 域 か ら 中 国 女 性 が 日本 に 移 動 す る こ と は 、 日本
が 中 国 東 北 部 を植 民 地 に して い た こ と 、 日 本 企 業 が 中 国 に 進 出 し て い る こ と、 中 国 か らの
研 修 生 とい う労 働 力 を受 け 入 れ て い る こ と、 日本 人 が 中 国 に移 住 して き た こ と(Aさ
Cさ
ん が 登 録 す る 業 者 は み な 中 国 に長 期 居 住 して い る 日本 人)と
んと
関 わ っ て い る の で あ る。
一 方 で 、 中 国 側 の 改 革 開 放 政 策 が な い と、 女 性 も 出 国 で き な い 。 ま さ に 送 り 出 し 国 と受 入
国 と の 間 の 相 互 作 用 と相 互 関 係 が 社 会 関 係 資 本 に な り、 構 造 的 に 移 民 の ル ー トを 作 っ た の
であ る。
一 方 、 こ の よ う な 日本 と 関 係 を持 つ 地 域 に お い て 、 どの 女 性 で も 日 本 人 と の 結 婚 を 希 望
す る わ け で は な い 。 日 本 人 との 結 婚 を希 望 す る 女 性 に は 人 生 経 験 か ら 生 ま れ る 結 婚 要 因 も
存 在 す る 。 本 稿 で は 三 人 の 事 例 を通 し て 、 彼 女 た ち の 結 婚 要 因 を 三 つ に 分 類 した 。 そ の 中
の 経 済 的 要 因 と 親 密 関 係 的 要 因 は先 行 研 究 で も見 られ た が 、 主 体 的 要 因 は 本 稿 で 新 た に 提
示 した 点 で あ る。
更 に 、 本 稿 で は い ま まで 注 目 して こ な か っ た 社 会 的 関 係 資 本 と女 性 個 人 動 機 の 相 互 作 用
に 注 目 し た。 そ れ ぞ れ 結 婚 要 因 を持 つ 個 人 が ほ か の 地 域 に い れ ば 国 際 結 婚 と い う選 択 を と
ら な い 。 個 人 動 機 と社 会 関 係 資 本 との 相 互 作 用 が な け れ ば この よ う な 国 際 結 婚 は 生 ま れ な
い 点 を あ ら た め て 強 調 し て お きた い 。
無 論 、 本 稿 が 業 者 婚 す る 中 国 女 性 の 結 婚 動 機 を全 面 的 に 論 じた わ け で は な い 。 ほ か の 地
域 や 事 例 に は 違 う状 況 も あ る だ ろ う 。今 後 も事 例 を増 や して 研 究 を 深 め て い き た い と思 う。
ま た 、 日本 男 性 側 の 要 因 や 、 日 本 や 中 国 だ け で は な く、 業 者 婚 が 存 在 す る他 の 国 との 比 較
も課 題 で あ る。
Kyoto Journal
of Sociology
XVIII / December
2010
都:日 中 国 際 結 婚 に関 す る一 考 察
81
付記
本 稿 は 科 学 研 究 補 助 金 ・基 盤 研 究B「
ア ジァ の 女 性 の 国 際 移 動:家 事 ・介 護 労 働 と 国 際 結 婚 に お い て 」
に よ る成 果 の ひ とつ で あ る(課 題 番 号19402011代
表者:上 野 加 代 子)。
ま た、 イ ン タ ビ ュ ー を受 けて くだ さ っ た方 々 、査 読 して くだ さ っ た方 々 に深 くお礼 を 申 し上 げ た い 。
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(か く
こ うほ う ・修 士 課 程)
京都社会学年報
第18号(2010)
118
A research
on international
Focusing
marriages
on Chinese
women's
motivation
Hongfang
In my paper, I discuss
men through
disparities,
Chinese
intermediary
agencies.
women actually
a macro-level
Chinese
studies
for marriage
have
to Japanese
focused
on economic
factors. However, there has been no research
- from a macroscopic
come from. Having this problem
where
for marriage
motivation
Previous
to the question
and Chinese:
HAO
women's
as well as, social and cultural
study paying attention
among Japanese
women married
perspective
- of where these
in mind, I first searched
to Japanese
for regions on
men come from. It became
clear that such women do not come from all over China, but just from certain
quest
of the characteristics
certain
social capitals
of these areas,
with Japan
Moreover, based on such women's
come to Japan
factors,
on a microscopic
agency factors
interaction
between
relations
in this paper
macro-level
factors
Kyoto Journal
clear that these areas
the route to Japan
life experiences,
I also analyzed
level. As a result,
for these
their
economic factors,
Furthermore,
hold
women.
motivation
intimate
to
relation
I also focus on the
the macro and micro levels. Not all of the women living in areas
with Japan
with other
I argue
intend
areas
cannot
that the research
(that is, the social capitals
on the micro-level
international
provide
have been found significant.
that have social capitals
intimate
that
it also became
areas. In
become
XVIII / December
imagine
2010
marrying
of the interaction
men. Women that have
Japanese
between
to understand
men. Thus,
regionality
of a given region with Japan)
indispensable
marriage.
of Sociology
to marry Japanese
the true
on the
and individual
characters
of
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