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11 - 日本経済研究センター

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11 - 日本経済研究センター
日 本 経 済 研 究 セ ンタ ー
Japan Center for Economic Research
http://www.jcer.or.jp
Table of Contents
2011/11
「インフラ復興投資推進機構」の創設を−東日本...
2011/11
経済年齢30歳、中国の危うさ
2011/11
IMFの融資枠拡大と金融危機予防会議の設置を...
2011/11
欧州ソブリン危機はなぜ解決が困難なのか 2011/11
起業の減少と海外シフト:脱“草食系資本主義”...
2011/11
混乱・復興を記録せよ
2011/11
「デスティネーション・マネジメント」を実践せ...
2011/11
多宗教国家インドの今―内政やビジネスのカギを...
2011/11
米国内で広がる「公平」を求める動き
2011/11
都道府県別成長率予測 2010−20年の成長...
2011/11
変わりつつある北朝鮮と世界/マーカス・ノーラ...
2011/11
11−12月のセミナー(東京・大阪)
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本記事は日本経済研究センターの会報ページを印刷したものです。無断複製、無断転載を禁じます。
2011年11月号
「インフラ復興投資推進機構」の創設を
-東日本大震災からの復旧・復興で政策提言
平田英明
日本経済研究センターの金融研究班(研究生11名、主査・岩田一政理事長、総括・平田
英明)はこのほど、3月の東日本大震災からの復旧・復興に向けた金融面からの取り組みの
方向性を示すべく「復興対策・原発問題への金融面からの政策提言」と題して、インフラ復
興に向けた民間投資の呼び込み策、二重ローン軽減に向けた対策、原発問題の金融面からの
対策の3点に関する政策提言を行った。3つの政策提言自体の重要性もさることながら、現
状の金融面にかかる課題を明らかにしたことに大きな意義のある内容となっている。詳細は、
センターHPで公開されている各論文を参照して頂くとして、本稿では、各提言のポイント
を紹介していく。
リポート1 インフラ復興に民間投資呼び込め
11年7月の東日本復興対策本部による復興基本方針では、復旧復興にかかる事業費を1
0年間で23兆円としているが、その内訳は明らかでない。そこで当班では、阪神淡路大震
災の資本ストック被害額と復興事業費の比率等から推計した結果、復興復旧にかかる公的セ
クターによる支出は約25.1兆円と試算した(放射能汚染対策を除く)。更に、その内訳
を試算すると、図表1(文末参照)のような結果となった。初期の「復旧」を終えた後、「
復興」へと向かうフェーズⅡの事業費は約19.4兆円となり、民間資金が活用できる事業
をライフライン施設、社会基盤施設およびその他施設(文教施設や医療福祉関係施設)の3
分野とすれば、その総額は合わせて約9.7兆円分となる。
官と民の連携、特に民間資金の活用という観点で手法を考えた場合、一般的に知られてい
るのはPFIである 。PFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、
経営能力及び技術的能力を活用して行う手法であり、民間資金等の活用による公共施設等の
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2011年11月号
整備等の促進に関する法律(PFI法)に基づき実施される。
PFIでは、公共事業とは異なり、公共施設等の管理者である国や地方公共団体は、事業
単位で民間業者と事業契約を締結する。工程ごとに入札などを行うことなく、事業内の建設
工事、施設管理等の実施は、ファイナンスを含めて、事業契約を締結したPFI事業者の責
任において実施される。財政負担を考えたときのメリットは、事業を実施する際の初期費用
(および方式によってはその後の運営費用も)が行政から切り離される点である。
このようにPFIは極めて有効な方法論と考えられるが、PFI事業の国内での実績を確
認すると、PFI 法が施行された1999年から2010年末までの事業費の総額は累計
約3兆円にとどまる。その背景としては、官民でリスクをどのように分担するかという部分
の難しさ、民間側からの提案が出来ないこと、PFI事業の専門家の不足などが指摘されて
きた。
以上のような問題を踏まえて2011年6月に施行された改正PFI法では、従来は認め
られていなかった民間提案制度や公的施設の運営権(コンセッション)を民間に売却できる
制度が導入されたことがポイントである。民間からの提案を受けることでPFI事業の活性
化を期待できるほか、たとえば運営施設の団体割引制度を独自に実施できるなど運営面での
自由度が広がった。運営権に抵当権を設定できるなど金融機関などからの資金調達環境の整
備も図られた。ただし、民間提案を受けた自治体が受諾を決めるまでの期限が区切られてい
ないため、提案側にとっては申請をたなざらしにされるリスクが残る点、コンセッションに
おいても、個別の公物管理法に基づく制約が完全に解消できたとは言い難い点など課題も大
きい。
PFIの円滑な活琇へ新渉織創設を
そこで当班では、PFIの復興への活用を円滑に進めるため、人材・ノウハウの集約、審
査窓口を一元化してPFI事業の審査を自ら行う一方、復興基金を自ら運用する新組織であ
る「インフラ復興投資推進機構」の創設を提言する(文末図表2参照)。この新組織では、
国内でのPFI事業経験者やインフラの建設を担う建設会社・商社、インフラ運営に携わっ
てきた公的部門の職員やOB、インフラへの投資に詳しい金融機関、海外でのノウハウを持
つ外資系ファンドなどから人材を集める。新機構は主に民間セクターからPFIを活用した
事業案を広く募集し、事業目的や採算性の一括審査を担う。地方自治体や国は審査を通過し
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た案件に対して速やかに契約を結ぶ。行政計画と矛盾する案件が通らないように、案件は該
当する国・自治体と新機構とが共同で審査する。そして、基金を新機構自体がもつことで、
審査とモニタリングの品質を担保しつつ、スピード感のあるインフラ建設・運営にかかる実
施如何の判断・指揮権を担うこととなる。
震災からのインフラ復興にPFIを活用する具体案としては、仙台空港が注目されている。
その他にも、復興特区を作ることでインフラ運営やその関連事業で収益を生みやすい環境を
整備し、「スマートシティ」と呼ばれる環境配慮型都市の建設構想にPFIを活用するとい
ったことが考えられるだろう。
リポート2 生活/経済復興へ二重ローン軽減を
二重ローン問題とは、地震や火災で被災した企業や個人が、生産設備の修繕や住宅を新築
したりするために債務(新債務)を抱え、被災前からの債務(旧債務)と併せて二重に債務
を負う問題を指す。二重ローン問題として支援対象となりうる旧債務残高は、5月末時点で
明らかになったものだけでも、個人・企業合わせて5,500億円を超える。しかし、今回
の甚大な被害を考えれば、今後さらにその規模は拡大するだろう。
当班の推計(放射能汚染対策を除く)では、被害の大きかった被災3県及び茨城県のみで、
二重ローンの支援対象となりうる住宅ローン残高は約1兆1,000億円、中小企業債務に
関しても、4県の中小企業等向け貸出残高約12兆円(金融庁公表データを集計)のうち、
約2兆2,000億円が二重ローンの支援対象となり得る。更に、ラフな推計とはなるが、
企業債務のうち約7,000億円、個人債務の約1,500億円程度が実際に不良債権化し
得る。そのため、金融機関(特に地域金融機関)も、政府設立の「産業復興機構」への債権
売却、私的整理指針に沿った債権放棄等に伴う損失を今後負担することとなり、財務が相当
痛むことが予想される。
現在における政府による主な二重ローン対策を考察すると、金融機関への公的資金注入の
条件緩和は、貸出供給能力を維持する対策として適切と考えられるが、企業(とくに中小・
零細企業)の抱える新債務に対する補償が金利負担軽減、返済期間延長等にとどまっており、
根本的な負担解消までは至っていない。私的整理等を認める旧債務の補償と比較すると支援
策が極めて弱いこと、産業復興機構の債権買い取り額が明らかに少なく、中小・零細企業の
抱える問題にまで効果が及びにくいと考えられること、既存のスキームでは審査のスピード
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が早くないことなど改善の余地も大きいと考えられる。対個人の二重ローンについても、同
様の改善の余地がある。そこで、以下では、企業向け・個人向けごとに必要と考えられる対
策に関して提言を行う。
企業向けについて考えると、零細企業を含めた経済の下支えをする企業をできるだけ多く
救済する対応が必要であり、債権の買い取りを専門に行うための組織を新たに設立し、債権
買い取りを進めることが必要と考える。具体的な流れは以下の通りである。まず、再建を希
望する被災中小企業の再建可能性を、従前より融資を行うなどして情報の蓄積がある銀行等
の金融機関がスピーディに判断する。政府案の産業復興機構による債権買い取りにおいては、
中小企業再生支援協議会が再生可能性を判断することになっているが、判断まで時間がかか
る懸念もある。そこで、より迅速に債権買い取りへと進むように、判断主体は金融機関とす
る。
「被災企業再生機構」の設冇を
債権の買い取りは、新たに『被災企業再生機構』(仮称)を設立し、同機構が行うことと
する。必要となる債権買い取り額は約1.5兆円が見込まれる。対象となる中小企業は、農
林水産業者や医療従事者にも広げ、規模的にも零細事業者も含むこととし、幅広く債権買い
取りの門戸を開くスキームとする。一方で、モラルハザードを防止するため、債権の買い取
りを被災企業再生機構に応じてもらった金融機関には当該企業に対して新規融資を行うこと
を義務付けることとし、金融機関のモラルハザードを防止しつつ、企業活動の再生をスピー
ディに図るようにする。政府案との比較については図表3(文末)を参照されたい。
個人向けの負担軽減、すなわち住宅ローンの二重化に関して考えると、複合災害で被害が
甚大化している点や被災地域は震災前から長期にわたり人口減少が続いている点を考慮した
対策が肝要である。そこで、事情が類似していた米国のハリケーン・カトリーナの被害への
支援策などを参考にしながら対策を考えることが有効である(文末図表4参照)。第1に、
既存の対策に加え減税策や土地買い取りといった更なる経済的支援を打ち出すことが必要と
考えられる。それに加え、新たな財政支出を伴わない形での対策として、住宅ローン減税を
手厚くし、不動産取得税等の減免を通じて、住宅の再建に向けた入り口段階のハードルを下
げる支援策を導入する。
第2に、耐震補強の助成金の増額なども検討に値するだろう。もともと人口減少や高齢化
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の問題を抱える地域を襲った未曾有の災害であり、津波は生活を難しくしただけでなく生活
基盤・経済基盤であるコミュニティそのものを破壊した。我々の提言は、甚大な被害を乗り
越えて、生活基盤を構築する上で効果的であると考えられる。ちなみに再建築価格が2,0
00万円のケースでは、既存の政策に加え、この支援策を追加することにより合計で約60
0万円の減税および補償金(全壊かつ域内に再建の場合)となる。なお、この他、土地の買
い上げを行う場合の、財政負担平準化策などについても提案を行っている。
以上を合計すると総額で2.8兆円程度の資金が必要になる。今回の震災は、地震・津波
・原発といった様々な要因が絡み、被害がより甚大になっていることが特徴であり、被害の
大きかった地域は人口減少が進んでいる、地銀のシェアが高いといった事情がある上、復興
に向けて震災に強い街づくりを進めるなど、中長期的な対策も必要とされる。政府にはこう
した状況を踏まえた上で、前例に縛られない対策が求められる。
リポート3 あいまいさ残す原発賠償ヽ処理費次第で行き詰まり
も
東京電力福島第1原発事故に起因する放射能汚染により、被災者や被災企業に対し、膨大
な賠償債務が発生している。被災者に対する迅速な賠償支払いが求められる中、8月3日に
東京電力の損害賠償を支援する支援機構法が成立し、5日には損害賠償の概要を定めた「東
京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する
中間指針」(以下、中間指針)が策定された。
同法に基づき、電力の安定的な供給を前提とした賠償支援が東京電力に対して行われ、被
害者への迅速かつ適切な賠償が期待されている。しかし、同法の枠組みにおける支援機構や
国の役割、電力会社の負担が不明確であり、賠償金額が拡大する可能性もあることから、同
法に基づく賠償が有効に機能しない恐れもある。東京電力は4月17日に東電福島第1原発
事故の収束に向けた工程表を発表したものの、未だに収束の目処は立っておらず、今後、賠
償金額と廃炉費用の増大により東京電力の一層の資金繰り悪化を招く可能性がある。
巨額の損害賠償が発生することを踏まえ、将来にわたり賠償の支払いに対応するために政
府が成立させた支援機構法では、政府の対応として、国民負担を極力小さくしつつ、①被害
者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置、②東京電力福島原子力発電所の状態の
安定化・事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避、③電力の安定供給、の3つを確保
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することが企図されている。同法においては原子力事業者が損害賠償の支払い等に対応する
にあたっては、原子力事業者は「相互扶助」の考え方に基づき、それぞれ資金を拠出し合っ
て備え、必要な場合には政府が損害賠償の支払等に関わる援助を行う仕組みの構築、すなわ
ち、支援機構の成立とその機能を定めている。支援機構を通じた措置により、原子力損害の
賠償に関する法律(以下、原賠法)上の賠償責任を有する事業者において、迅速かつ適切な
賠償の実施が行われることを想定したものである。
支援機構を通じた賠償スキームは、図表5(文末参照)の通りであり、図の○番号に対応
する各資金の役割は以下の通りである。
①資金の交付は、原賠法第3条の規定により、原子力事業者が負う賠償金額が1,200
億円を超えると見込まれる場合には、迅速な原子力損害賠償、電気の安定供給等を確保する
ため、機構に対し資金援助措置を申し込むことができる資金である。原賠法で定める賠償措
置額1,200億円を超えた場合には、原子力事業者が自ら支払う義務が発生する。同法で
は東京電力を原則として債務超過にしないことを前提としており、原子力損害賠償債務を負
った原子力事業者を対象に、ⅰ)資金交付、ⅱ)株式引き受け、ⅲ)資金の貸し付け、ⅳ)
社債または約束手形の買い取り、ⅴ)借入金に対する債務保証を行うことができる。
②「援助(交付国債)」とは、特別事業計画に基づく事業者への援助である。特別事業計
画とは、機構が原子力事業者に対し資金援助を行う際、政府の特別な支援が必要な場合に、
主務大臣の認定を要するものである。特別事業計画には、原子力損害賠償額の見通し、賠償
の迅速かつ適切な実施等を記載する。主務大臣の認定後、機構は特別事業計画に基づく資金
援助を実施するため、政府は機構に国債を交付する。機構は国債の償還を求め、必要な資金
を得ることができる。③一般負担金とは、支援機構法では、原子力事業者は事業年度ごとに
業務に要する費用として負担金を機構に対し納付しなければならない、とされている。機構
による業務の適切な実施、各原子力事業者による電力の安定供給等の円滑な運営を前提に、
当該事業の利用者に著しい負担を及ぼすことのない範囲で、東京電力を含む原子力発電所の
設置者である電力会社9社に課す負担金である。
最後に、④特別負担金とは、支援機構法では、交付国債を原資とした特別資金援助を得た
原子力事業者が、機構に対して納付すべき負担金を規定している。一般負担金とは別に機構
が運営委員会を経て追加的に負担させることが相当な額であり、特別資金援助を受けた原子
力事業者は、特別負担金を納付する義務が課されている。
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しかし、本スキームの円滑な運用に際しては、損害賠償の金額に関する全容が判明してい
ないこと、廃炉費用が不明なこと、原子力事業者が支援機構に納付する一般負担金額の規模
がはっきりしないこと、などの課題も大きい。そこで、当班では損害賠償や廃炉費用の試算
を行い(現在は、10月の第三者委員会の報告書で損害賠償や廃炉費用に関する大まかな見
通しが示されたが、概ね同様の結果となっている)、一般負担金の計算方法に関する試案を
示した。その詳細については、提言論文を参照されたい。
賠償衍額を約1.8兆~6兆円と試算
試算された賠償金額は、土地の買い取り規模にもよるが、約1.8兆∼6兆円となる。賠
償金額がこの範囲内に収まる場合、支援機構法を活用することにより賠償金額を支払うこと
は可能であると考えられる(文末図表6参照)。第3次補正予算での交付国債の発行枠の2
兆円から5兆円への拡大、東京電力による人件費削減による5,000億円の捻出等が予想
されているためである。一方、賠償支援目的で設立された支援機構は、原子炉の廃炉費用に
充てる資金を確保する目的で活用することはできないと考えられるため、その原資を調達す
るためには別の手段を検討する必要がある。東京電力は6,000億円相当の有価証券や不
動産等の資産を保有するため、資産売却を廃炉費用に充て、一段のリストラを実施すること
により、廃炉費用の原資を確保することは可能であると考えられる。
ただし、リスクシナリオとしては、賠償規模の更なる拡大、廃炉費用の大規模化、経営基
盤の脆弱化などが考えられ、その場合には、会社更生、会社分割といった対応策を講じざる
を得なくなる可能性もあることには留意が必要であろう。
(日本経済研究センター副主任研究員、金融研究班総括)
−−−
◆金融研究リポート
「復興対策・原発問題への金融面からの政策提言」
・リポート1 インフラ復興に民間投資呼び込め(9/16公表)
・リポート2 生活・経済復興へ二重ローン軽減を(9/28公表)
・リポート3 あいまいさ残す原発賠償―処理費次第で行き詰まりも(9/30公表)
http://www.jcer.or.jp/report/finance/detail4221.html
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新井淳一の先を読む
経済年齢30歳、中国の危うさ
経済の近代化に関して中国は30年の経験しかない。中国の経済年齢は人間にたとえると3
0歳で、孔子が言う「30にして立つ」年頃である
(肖敏捷 人気中国人エコノミストによる中国経済事情 日本経済新聞出版社)
肖さんは、中国で大躍進が始まった1958年から78年までを中国経済の「失われた2
0年」と呼ぶ。文化大革命など政治闘争の激化で経済がズタズタになったからだ。78年の
鄧小平の登場と改革・開放。経済の近代化という意味では中国は「30にして立つ」年頃と
いうのである。一方、肖さんの見立てでは日本の経済年齢は「60にして耳順う」。朝鮮動
乱の勃発を日本経済の近代化の始まりと見ると、以来61年、確かに耳順である。
30歳の若い経済と60歳の年老いた経済、GDP(国内総生産)で見た「経済体重」が
入れ替わったのが今年である。成長率で見ても日本はゼロから1%近辺を低迷している。中
国は2桁近い成長率。人間の年齢と国の経済年齢は何の関係もないとのお叱りは承知のうえ
だが、あえて弁明すれば、日本と中国は同文同種の間柄、孔子様の教えは国の経済年齢にも
きちんと答えを出してくれるのである。
成長の転換は起きるのか
では孔子様にもう少しおすがりして「30にして立つ」頃の日中経済比較をしてみよう。
30年前の日本経済と現在の中国経済を比べたらどうなるかということである。1970年
代前半の日本は円切り上げ、石油ショック、列島改造景気による地価高騰と激動の連続。だ
が、激動の局面が終わってみれば、日本経済のトレンド成長率が半分になったのである。高
度成長から安定成長へ。10%前後の成長率が5%を割るまで落ち込み、以来、日本経済か
ら2桁成長は消えた。「30にして立つ」は日本経済の転換点だったのである。経済年齢3
0歳の現在の中国に日本同様の成長の転換が起こるのかどうか、私には気になるところなの
である。
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同文同種でも、まさかそこまでは似ないだろう、というのが大方の見方だ。だが、結構、
同じ現象が目立つことも事実である。たとえば、国内の労働力移動。日本の場合、高度成長
のシンボルである農村から都会への労働力の移動は、1960年代末にほぼ終わっていた。
農村の余剰労働力を都会の成長部門が吸収できる限り高度成長は続くが、それができなくな
ると高度成長は終了する。日本はその典型であった。
中国ではいま内陸部から沿岸部への労働移動は目立って細くなっている。内陸部へ帰る労
働者も増えた。その結果が沿岸部での労働賃金の高騰だ。賃金が高くなっても内陸からの移
動が増えないというのは、トレンド成長率の転換を示す重要な材料ではないか。
もうひとつ似た現象は物価の高騰だ。70年代前半の日本は狂乱物価の時代。年率20%
を超す消費者物価の上昇に加え全国的な不動産投機による地価高騰が起きた。いま中国経済
の最大の悩みはジリジリ上がる一方の物価と内陸部まで蝕んだ不動産投機である。30歳の
頃の日本経済とそっくりと言ってもおかしくない。
むろん、日中で事情が違う面もある。狂乱物価には石油ショックという外部要因が絡んで
いたし、地価上昇は田中内閣が主導した列島改造政策に起因することが多かった。しかし、
基本はトレンド成長率の半減など経済の体質が変わっていたにもかかわらず、マクロで総需
要を拡大しようとした政策判断のミスにある。5%の成長能力しかない経済が10%成長を
求められたらどうなるか。供給制約に直面したのである。
中国のインフレや地価上昇も、元の切り上げが不十分であるとか、財政金融面からのてこ
入れが続いているなどの同国固有の事情はある。だが、その背景に供給制約という需要に供
給が応えきれない経済体質の変化があったとするなら、話は別だ。財政や金融でいかに需要
を刺激しても生産は増えず、値段だけが上がることになる。30歳の日本経済と同じジレン
マに陥るのである。
スポーツ・イラストレーテッド。この有名な雑誌の表紙を飾った人物やチームは翌年には災
害、成績の低下、止めようもない衰退、その他の不運に見舞われるというジンクスがある
(マッテオ・モッテルリーニ 経済は感情で動く 紀伊国屋書店)
スポーツ・イラストレーテッド誌。スポーツ選手ならこの雑誌の表紙になることは文字通
り生涯の夢である。だが、生半端な業績では表紙までいかない。例を挙げれば、世界的自転
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2011年11月号
車レースのツール・ド・フランスで7回連続優勝といった真の猛者だけがそこを飾る。
では経済の分野で同誌のようなものがあったら一体、何が起こるか。世界中の経済人が表
紙にのるのを生涯の夢とするものだ。2008年のリーマンショックからの世界経済の回復
局面。誰が考えても表紙は中国であった。世界経済を先導していた米国は自らの失敗もあっ
て動きが取れない。欧州や日本などの先進国は頼りにならない。新興国頼みだったが、中で
も中国の獅子奮迅振りが目立った。ツール・ド・フランスの連続優勝に匹敵する存在だった
ことは間違いない。
中国はジンクスを免れるか
その中国経済がいま転換期にあるのではないかというのが孔子さまの教えの経済年齢30
歳説。要は中国が10%成長、正確には10%近い成長が今後も続けられるのかどうかとい
うことなのである。仮に今年は無理にしても来年以降、10%路線に復帰するなら、中国は
経済版スポーツ・イラストレーテッドのジンクスを免れる。成長率低下なら、同誌のジンク
ス通りということか。
経済の歴史は「頂点の直後は奈落の底に」と、スポーツ選手並みの浮き沈みが目立つ。9
0年を境にバブル崩壊に至った日本、その10年後、全てを金融が決めたといわれる市場原
理主義を謳歌した米国がITバブルの崩壊で手痛い目に合う。それからまた10年、ユーロ
という統一通貨を武器に市場の拡大を果たしたEUが、いま統一通貨の呪いでどん底を這い
回っている。
80年代後半の日本経済、90年代後半の米国経済、2000年代中ごろのEU経済。仮
に経済のオリンピックがあったら優勝の金メダルをそれぞれ手にしていたはずだ。その金メ
ダルの後に確実にやってきた衰退や不幸という歴史的事実。リーマンショックの後だから言
ってみれば、最新号の「表紙の国」である中国で、不幸があっても不思議ではない。それが
トレント成長率の低下、高度成長の終焉である。むろん、日本のようにトレンド成長率が半
減ということはないだろう。だが、それが2∼3ポイントであっても中国でそれが起きたら、
次なる問題は、世界がそうした「想定外」に耐えられるかどうかなのである。
(日本経済研究センター会長)
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2011年10月号
岩田一政の万理一空
IMFの融資枠拡大と金融危機予防会議
の設置を
―11月のG20首脳会議に期待する
G20財務相・中央銀行総裁会議は10月15日に閉幕し、欧州財政金融危機について欧
州金融安定化基金の再強化と欧州における銀行の資本強化を含めた金融システム安定を要請
した。新興国は、「国際金融安定網」として国際通貨基金(IMF)の資金基盤拡充を訴え
たが、共同声明に盛り込まれることはなかった。
アメリカ、イギリス両政府は、財政制約から現在以上のIMF資金拡充には反対した。ガ
イトナー米財務長官は、「IMFには、まだコミットしていない資金が十分ある」と説明し
た。また、ユーロ加盟国以外の国も、ユーロ圏の問題なので欧州レベルで解決すべきである
と主張した。しかし、IMFの融資規模は、本当に十分であろうか?
不十分なIMFの資金力
IMFの融資枠は、2009年4月のG20ロンドンサミットで従来の融資能力の3倍に
当たる7500億ドルに拡充した。この拡充には、日本のイニシアティブ発揮も貢献した。
2011年第3四半期以降に利用可能な、まだコミットしていないIMFの資金は、24
60億SDRであり、ドルに換算すると3860億ドル、ユーロに換算すると2800億ユ
ーロである。イタリアの国家債務の1.8兆ユーロと比較すると余りに小さい。イタリア債
務残高の15%でしかない。
仮にEU諸国が、欧州金融安定化基金をさらに拡充するとしても、危機が規模の大きな国
に伝染した場合には、IMFは、これまでのような形での融資には応ずることが不可能であ
ろう。
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2011年10月号
そもそもIMFは、その発足当初から金融センターや大国で金融危機が発生した場合、国
際的な「最後の貸し手」の役割を担うことが出来るように設計されていなかった。
歴史を振り返ると、IMFは成立して間もなく、大国が危機に陥った場合に、国際流動性
を供給するうえで資金が十分でないことが明確になった。このため、イギリスの国際収支危
機に際して、IMFに「一般借入取極」が締結された。
戦前の「BISヴュー」を代表した論客のヤコブソンは、戦後3代目のIMF専務理事に
なり、この取極めに尽力した。当時、日本は、まだ先進国の十分な一員とは見なされていな
かったが、日本政府代表IMF理事の鈴木源吾氏は、この取極成立に重要な役割を演じ、G
10のメンバー入りを果たした。
強固な国際金融網の構築を
韓国は、2010年11月のソウルG20首脳会議の準備過程において、米連邦準備制度
理事会(FRB)のスワップ協定とIMFの緊急融資プログラムをリンクした「国際金融安
全網」の設立を提案した。この提案は、モラルハザードを高めるなどの理由から採用されな
かった。
FRBを中心とするドル資金供給スワップ協定は、2007年12月の欧州中央銀行(E
CB)、スイス国民銀行とのスワップに始まる第1次スワップ協定から、2008年9−1
0月のバンク・オブ・イングランド、日本銀行、カナダ銀行、韓国銀行などを含む第2次ス
ワップ協定へと大きく展開した。スワップ金額は、一時6200億ドルに達し、FRBのバ
ランスシートの規模を大きく押し上げた。
韓国は、2008−09年の2回目の通貨危機に直面して、IMF融資に頼らなかった。
1回目の通貨危機におけるスティグマが強かったからである。また、チェンマイ・イニシア
ティブによる資金を活用することもなかった。借入資金の規模を考慮すると、チェンマイ資
金を活用した場合でも、韓国が事実上IMFのコンディションナリティの下に置かれる可能
性が高かったためである。
韓国において、FRBとのスワップ協定は、自国の外貨準備を活用するよりも金融市場を
安定化する効果が大きかった。資金の借り手にとって、FRBからの資金借り入れの方が、
16
2011年10月号
韓国中央銀行からの借り入れよりも市場の信頼が高かったことと、スワップ協定による資金
供給は、事実上韓国の外貨準備を増加させる効果をもったからである。
今回のグローバルな金融危機において中央銀行間のスワップ協定は、画期的な中央銀行間
の協調行動であり、金融市場のドル流動性危機を鎮静化し、市場ストレスを低下させた。そ
の一方で、インドネシア政府は、FRBとのスワップ協定締結を望んだか、実現しなかった。
かつて、ピーターソン研究所のトルーマン氏は、FRBを中心とする中央銀行のスワップ
協定網をIMFに移管してはどうかと提案したことがある。韓国提案もこの線上にある。グ
ローバルな流動性危機を回避するためには、より強固な「国際金融安全網」の構築が求めら
れる。先進諸国は、いずれも財政危機のリスクに直面している。しかし、先進国の金融財政
面でのショックが新興国や発展途上国に与えるマイナスの効果は余りに大きい。また、仮に
ギリシャがユーロ圏を離脱した場合に、その破綻処理は誰が責任をもって行うのだろうか?
日本を含め先進国の政府は、IMFの資金基盤強化を急ぐべきである。
スピルオーバー効果の議論、対応策が肝要
さらに、IMFの資金基盤強化よりも重要であるのは、今回のような財政金融危機を事前
に防止することである。IMFは、多角的なサーベイランスの一環として財政金融政策の海
外諸国へのスピルオーバー効果の分析を強化している。
金融センターの金融政策や金融面でのショックに関するスピルオーバー効果を事前に十分
に議論し、その対応策を事前に準備しておく必要がある。
ブルッキングス研究所は今年9月に「中央銀行制度再考」という報告書をまとめた。そこ
では、新たな中央銀行の任務として、伝統的な物価安定のみならず、マクロプルーデンス政
策の実施を位置付けるべきであるとしている。中央銀行集団からなる「国際金融政策会議」
を定期的に開催し、世界のリーダーに対して主要国の政策の国際的な帰結について報告すべ
きであると勧告している。
この提案は、本来IMFが多角的サーベイランスの一環として実施すべき事柄であるよう
に思われる。また、会議の名称も「国際金融政策会議」とするよりも「金融危機予防会議」
とすべきであろう。専門家集団による勧告は、世界経済の安定的な発展に大きく寄与するこ
17
2011年10月号
とになろう。11月のG20首脳会議が「国際金融安全網」と「金融危機予防会議」につい
て建設的なステップを踏み出すことを期待したい。
(日本経済研究センター 理事長)
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2011年11月号
深尾光洋の金融経済を読み解く
欧州ソブリン危機はなぜ解決が困難な
のか 本稿は10月20日までの情報で執筆されており、23日から開催される予定の欧州サミ
ットによる対応策を織り込むことは出来ていない。しかし筆者は、欧州ソブリン危機の解決
は非常に困難であるとの認識を持っており、サミットでも十分な対応策を打ち出せるとは予
想していない。以下では、ギリシャから拡大しつつあるユーロ圏の危機への対応が、従来の
通貨危機に比べてなぜ困難なのか、その理由を整理してみよう。
従来のソブリン危機とその解決
過去に通貨危機に見舞われた国は、タイ、韓国、アルゼンチン、ロシアなど多数あるが、
IMF(国際通貨基金)による資金援助により解決を見てきた。信用不安に直面した国では、
政府も企業も、非常に高い金利でなければ借り入れができなくなる。例えばギリシャ政府が
1年満期の国債を発行しようとすると、年利50パーセント以上という法外な金利でなけれ
ば借り入れができなくなっている。そこでIMFは、市場からの借入金利を大幅に下回る金
利による貸し出しを対象国に実行する見返りに、対象国に対して「コンディショナリティ」
と呼ばれる貸し出し条件を遵守させてきた。具体的には、緊縮財政と金融政策の引き締め、
為替相場の切り下げ、経済構造改善などの政策を実施させてきた。また、こうした政策を確
実に実行させるために、貸し出しを一度に実施せずトランシュ(tranche)とよばれ
る部分に分割して、パフォーマンスを監視しながら実施してきた。
従来通貨危機に陥った国々は、独自の通貨と中央銀行を持っていたので、国際収支と財政
収支を改善するために、為替相場の切り下げと独自の金利政策を行うことができた。通貨の
切り下げは、国内産業の競争力を強めて輸出を拡大し輸入を減少させる。さらに財政支出を
削減し金融を引き締めると、企業は運転資金獲得のために輸出を必死に拡大する。これによ
り、緊縮財政による景気落ち込みは短期間で終わり、通貨危機の後のV字型回復が可能とな
った。
19
2011年11月号
ギリシャ危機解決の困難さ
ギリシャの場合も、IMFとユーロ圏諸国が設立したEFSF(欧州金融安定化基金)が
ギリシャに対して財政赤字削減を条件に貸し出しを実行しようとしている。ところがギリシ
ャの場合は、通貨統合によりユーロを導入した結果、独自の通貨と中央銀行を持っていない
ため、通貨切り下げによる景気刺激策が使えない。また国債価格の暴落でギリシャの金融機
関の信用は失墜しており、預金の流出などで貸し出しを縮小せざるを得なくなっている。こ
の結果、ギリシャのGDPは、2010年に4.5%のマイナス成長のあと、2011年も
5.5%もの落ち込みが予測されており、景気回復のめどは立っていない。こうした中で、
ギリシャ政府が必死になって財政支出を削減し税率を引き上げても、景気が悪化するため財
政赤字削減目標をなかなか達成できない。
将来の景気回復の見通しがない中で、政府が借り入れの条件となっている財政赤字削減の
ために財政支出のカット、公務員の削減、増税などを次々に打ち出しているため、国民の不
満は極度に高まっており、ストライキや暴動の頻発や治安の悪化で、同国の重要産業である
観光業は危機に瀕している。こうした社会不安の増大は、ギリシャ政府の信用低下に拍車を
かけ、ソブリン危機を悪化させる悪循環に陥っている。
ギリシャの国際競争力低下も深刻である。ギリシャがユーロ圏に加盟した2001年から
現在までの消費者物価上昇率を見ると、ユーロ圏の中心国であるドイツで18%であるのに
対して、ギリシャは39%と21ポイントも高い。このため、ギリシャは2010−11年
の2年間でGDPが10%前後も低下する極めて深刻な不況下にあるにもかかわらず、経常
収支は大幅な赤字を続けている。為替相場の切り下げができないギリシャが国際競争力を回
復するためには、ドイツやオランダがインフレになるか、ギリシャが生産コストを2割程度
引き下げるしかない。しかし各国が独自の金融政策を使えない中でギリシャ政府が採用しう
るのは、財政引き締め、公務員給与や政府が関与する公共料金の引き下げ、最低賃金の引き
下げ程度であり、政府が民間部門で働く大多数の労働者の賃金を直接カットすることは不可
能に近い。過去の国際収支調整の事例を見ても、デフレの実施は非常に困難であり、為替相
場の切り下げが行われてきた。
ギリシャの国際競争力が回復せず、経常収支赤字が続く場合には、ドイツなどユーロ圏中
心国は長期間にわたってギリシャに巨額の資金援助を続ける必要に迫られる。これはドイツ
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2011年11月号
国内の世論をギリシャ支援反対に回らせ、ユーロ危機を深刻化させている。
困難なユーロ圏の意思決定
ユーロ圏諸国は今年7月に合意した相互援助基金であるEFSFの貸出限度の引き上げと、
同基金による貸出目的の拡大による強化策を、10月になって漸く批准した。これにより各
国によるユーロ圏諸国の銀行に対する資本注入をEFSFの資金で行えるようになった。し
かし3ヶ月の間に事態は悪化し、EFSFの貸出限度の大幅再引き上げや欧州中央銀行(E
CB)によるEFSFの支援、ギリシャに対する資金援助の増額などが欧州サミットなどで
協議されている。このプロセスからも分かるように、ユーロ圏17カ国による全会一致方式
の政策決定プロセスは、時間がかかりすぎて経済や金融市場の動きについていけず後追いに
なってしまっている。さらにユーロ圏の中核であるフランスとドイツが、ECBが財政危機
において果たすべき役割について対立していることも、対処を困難にしている。フランスは
ECBが、イタリア、スペインなど政府債務の返済が可能と見込まれる国の国債金利を抑制
するために、大規模な国債買いオペを行うべきだと主張している。これに対してドイツは、
かつてのハイパーインフレの経験から、ECBは財政赤字のファイナンスに対して距離を置
くべきであり、EFSFなど中央銀行以外の機関が対処すべきだとしている。問題は、EF
SFは中央銀行と違って財源に限りがあり、また機動的な対応ができない機関であることで
ある。
(日本経済研究センター 研究顧問)
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2011年10月号
小島明のGlobal Watch
起業の減尐と海外シフト:脱“草食系資
本主義”その2
大震災で甚大な被害を受けたサプライチェーン(供給網)の予想以上に早い復活、生産活
動全般のほぼ震災前水準への回復などに見せた日本企業の現場力、復元力は、日本企業の底
力を内外に改めて印象づけた。しかし、である。電力供給への懸念や一段の円高も加わり、
企業の生産拠点、さらには研究開発拠点の海外への移転が加速しつつある。
また、震災前の水準回復だけでは、震災前から進行していた日本経済の長期停滞トレンド、
潜在成長力の低下傾向に戻るだけである。重要なのは震災そのものへの対応に加え、これま
での「失われた20年」を直視し、経済・社会の次なる長期的な発展・成長モデルを構築す
ることである。
今年4月に公表された経済協力開発機構(OECD)の日本経済報告が紹介していた幾つ
かの国際比較をみてぎょっとした。起業の容易さのランキングでは98位、廃業の容易さで
は1位、つまり起業は難しく、廃業は世界一簡単だということである。製造業・サービス業
の売り上げに占める外資系のシェアはOECD加盟国のなかで段差をつけてどん尻。ベンチ
ャーキャピタルによる投資の対国内総生産(GDP)比率でもどん尻である。
減り続ける“企業人口”
経済産業省の調査によると、2009年中に開業した製造業の事業所の全事業所に対する
比率(開業率)は1%を下回り、統計を開始した1999年以来最低となった。廃業数は3
年連続して増加する一方、開業数は直近のピークだった2006年より4割近く落ち込んだ。
“企業の少子化”、“企業人口の減少”が進んでいる。傾向は製造業以外でも同様のようだ。
『通商白書』2011年版によると、外国企業の日本への直接投資(対内直接投資)は減
少傾向を続け、09年には撤退(164社)が新規参入(82社)を大きく上回り、外国企
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2011年10月号
業人口も減少が顕著である。同白書は外国企業からみた日本の事業環境面の魅力が近年急速
に低下し、09年調査ではアジア地域統括拠点、あるいは研究開発拠点といったこれまで日
本が競争力を有していた拠点機能において首位から転落した。
そうした傾向に加え、震災により「ジャパン・リスク」が生まれた。経済産業省の調査に
よると外資系企業にとっての日本の立地環境上の問題点は、高いビジネスコスト(71%)、
市場の閉鎖性(62%)、制度・許認可の難しさ(53%)などである(回答430社、複
数回答)。しかも、これは震災前の状況である。震災後、あらたに地震など自然災害リスク
だけでなく、電力供給への懸念、現在でも韓国の2倍以上という高い電力料金の引き上げの
可能性、円相場の急騰などが加わっている。こうした立地環境上の問題は外資企業だけでな
く日本企業にとっても同様である。現に、日本企業の海外移転は震災前から進行していた長
期トレンドである。
被災地域のサプライチェーンは予想以上のペースで回復したが、日本企業もジャパン・リ
スクを意識し、日本に限定せず世界的な視野で代替調達先を検討しだした。サプライチェー
ンも単に「復旧」するだけでなく、1工場での生産集中体制の調整などシステム全般の変更
と強化を迫られている。
“立地競争力”の強化を
日本経済新聞社が7月半ばに集計した「社長100人アンケート」によると、ほぼ40%
が「国内制度や経営環境が現状のままなら、何らかの機能を海外に移転せざるを得なくなる」
と回答、海外シフトの対象も17%が「一部の研究開発拠点」、10%が「一部の本社機能」
「主力の生産拠点」だと答えている。中国、韓国、台湾など近隣のアジア諸国・地域は技術
力のある日本の中堅・中小企業をこの際、誘致しようと積極的な働きかけをしている。政府
は産業空洞化対策の一環として立地補助金などの導入を議論しているが、場当たり的である。
問われているのはグローバルな“立地競争力”である。ますます「企業が国を選ぶ」時代に
なっているからだ。
11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に政府内
では環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉に参加するかどうか詰めの議論を始めている。
その一方で、TPPに参加すれば農業は衰亡し、日本経済が外国の準占領下に置かれてしま
うとの懸念からTP P反対運動も過熱しつつある。だが、農業は政策次第では高度ハイテ
23
2011年10月号
ク産業となり、成長力、輸出力を強化できる可能性もある。
農業就業人口は減少している。しかも専業者の減少と高齢化が進行し、兼業者が圧倒的に
多い。兼業者の職場の多くは地域の製造業であり、その製造業が立地競争力を失って廃業し
たり、海外へ移転したりして縮小しつつある。立地競争力を回復しなければ兼業職場の喪失
が加速する。TPP問題を農業対製造業の対立の構図でばかり議論すると、日本の経済全体
がますます劣化してしまう。
いわゆるダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)が2011年9月に発表し
た「2011年版世界競争力報告」で、日本の総合順位は前年より3つ下がり、9位となっ
た。調査項目をみると、「生産工程の先進性」「技術革新力」「研究開発投資」などではま
だトップを維持し、特に製造業への評価が高いが、農業政策では138位である。
農業の総産出額は1985年あたりがピークで過去20年余りの間に3.5兆円も落ち込
んでしまった。農業政策は保護政策の歴史でもあると言われる。保護政策を重ねても強い農
業になれなかったことは農業にとって不幸なことであり、国民経済全体にとっても残念なこ
とである。保護政策のあり方に問題があったと見るのが自然だろう。今後も保護政策を続け
るにしても、当座しのぎのバラマキ策ではなく農業の未来の可能性を追求し、農業に真剣に
取り組もうとしている若い世代に希望を与えるような長期的で抜本的な農業政策のありかた
を点検することが肝要だろう。 TPPで必要な国内の活弸化
また、TPPや経済連携協定(EPA)に関して製造業の輸出機会の確保という側面でだ
け議論することにも問題がある。日本が直面している立地競争力の問題は、単にTPPやE
PAの有無による関税の面での不利、有利の問題ではなく、上記の外資系企業のアンケート
調査にも示されたように経営環境全般の問題だからである。輸出だけでなく輸入や対内直接
投資を通じ、国内産業に刺激を与え、経済を活性化させる効果も重要である。それなしには、
多少とも元気のある企業は海外に流出し、競争も自己改革も回避したい企業ばかりが国内に
残りかねない。日本経済の将来にとって最悪のシナリオである。
(日本経済研究センター研究顧問)
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2011年11月号
竹中平蔵のポリシー・スクール
混乱・復興を記録せよ
3月11日に発生した東日本大震災から、早くも7カ月が経過した。2万人もの犠牲者を
出した大災害からの復興は、残念ながらまだ本格化していない。本格的な復興予算に当たる
第3次補正予算の編成も、復興を担う復興庁の設立も、7カ月経過した時点でまだ実現して
いないのだ。一方で、サプライ・チェーンの復興は民間の力で予想以上に早く進んでおり、
一部に復興需要の芽も見える。混乱の収束と復興の実現は、まさに野田内閣の最重要課題だ。
本格的デジタル時代の大災害
筆者は震災当初から、総理官邸のなかにリアルタイムで事態の推移を記録し、検証するチ
ームを作るべきだと主張してきた。それは、今回日本社会が経験した災害による混乱とそこ
からの復興は、世界の人々や未来の世代に対して、これまでにない貴重な情報を提供しうる
からである。
これまでにない経験という意味で第1の点は、今回の災害がまさしく「本格的デジタル時
代」で最初に起こった災害であることだ。東日本大震災に匹敵する大災害として我々の記憶
に新しいのは、1995年1月の阪神淡路大震災であろう。マグニチュード7.4(因みに
今回は9.0)の都市直下地震は、死者約6400人(今回約19900人)、資本損失9
.9兆円(今回16.9兆円)という悲惨な被害をもたらした。
Windows95という言葉を記憶している方も多いと思うが、この言葉が示すように、
一般にインターネットが普及したのが95年である。95年1月時点では、まだ一般にはそ
れほど普及しておらず、携帯電話の普及もわずか3.5%に留まっていた(現在は94.5
%)。因みに、95年の流行語大賞をとったのは「インターネット」だった。その意味で今
回の経験は、デジタル時代になって最初の大災害ということになる。
重要なポイントがある。それは、インターネット時代の到来とともに、インターネットの
25
2011年11月号
弱点として「電源」が意識されるようになり、そのための備えがなされるようになった点だ。
具体的に、バッテリーの改良と、常に電源を準備するための「充電」の習慣づけが定着した。
これによって今回の災害では、多くの人々が携帯を通じたメールで、家族との安否確認を行
った。インターネットの専門家村井純氏(慶応大学教授)によると、携帯電話によるデータ
通信パケット数は3月11日の地震直後通常の約3倍に増大したこと、かつそのデータサイ
ズは約半分に低下したことが示されている。つまり、地震の直後人々はメールで安否確認し、
その際「大丈夫?」「生きてる!」といった短く機能的な会話をおこなったことが分かる。
さらに村井氏によると、モバイル通信を担う携帯電話そのものはユニバーサル・サービス
に含まれないが、ユニバーサル・サービスに繋がるものとして位置付けられている。そのた
め総務省のガイドラインでは、通常の基地局に3時間以上の非常時電源装置が設置されてい
た。このため、少なくともケーブルが切断されないかぎり、少なくとも地震から3時間の間、
基地局は機能したのである。
このことを通じて、バッテリーというものの重要性が改めて浮かび上がってくる。
大都市災害の教訓
今回の震災から、もう一点貴重な教訓が導かれるのは、「大都市災害」に関してである。
東日本大震災で最も大きな被害を受けたのは、岩手・宮城・福島という東北3県である。し
かしその影響は、広く東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に及んだ。東北3県が
日本全体に占める割合は、人口・GDPともに4%である。しかし首都圏は、人口で28%、
GDPで32%のウエイトを占める。このような大都市圏で何が起こったかを正確に記録し、
検証することの意義は大きい。
東京圏は、昼夜間人口比が世界で最も大きい都市である。明治大学の市川宏雄教授によれ
ば、3月11日には地震の発生を知って、山手線内一帯の約340万人が自宅に向って一斉
に動き出した。その最大の理由は、家族の安否が不確かなことであった。情報不足のゆえに、
大きな移動になったと考えられる。地震当日は、夜9時から一部の鉄道が運行を再開し、1
0−11時ごろから私鉄も運行を再開するところが増えたため、混乱状態を回避できた。結
局約8割(270万人)が自宅に帰り、約2割(70万人)が帰宅困難者となった。このう
ち会社に泊まった人が約41万人(12%)、避難所に泊った者が約20万人、残る約7万
人が歩きながら夜明けを迎えたと考えられる。
26
2011年11月号
その際重要な役割を果たした避難所に関しては、東京都施設・都立高校・区など合計10
30施設が9.4万人を、残り10万強は国の省庁、ハローワーク、大学などに宿泊したと
されている。
首都という点では、在外公館が放射能を恐れて脱出するという現象も目についた。一時的
に在京の大使館を閉鎖した国は32カ国。このうち4月28日には、29カ国が再開した。
こうした混乱がどのような情報提供と判断で生じたのか、何らかのコミニュケーション不足
や誤解があったのかどうか、十分な検証が必要だろう。
ここにとりあげた「デジタル時代」という視点からの観察、「大都市問題」という視点か
らの観察は、ほんの一例に過ぎない。ただいずれにしても、今後の大災害とリスク・マネジ
メントに備えるために、貴重な経験であることは確かだ。
政府も国民も、やはりどうしても目の前の問題に関心が集中する。今回のように、当面の
復興予算や復興計画が遅れている場合には、なおさら過ぎたことへの関心は薄くなるだろう。
しかし、だからこそ起こった現実を現在進行形で観察・記録し、事後的な評価を行って教訓
を引き出す仕組みが必要になる。関東大震災を受けて、後藤新平は「復興史」をしたため、
世界にその教訓を発信した。新しい復興庁にはその設立初日から、復興史の執筆準備を始め
てもらいたいと思う。
(日本経済研究センター 研究顧問)
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2011年10月号
小峰隆夫の地域から見る日本経済
「デスティネーション・マネジメント」
を実践せよ
日本では今後も人口減少が続くことは避けられない。かつては地域の発展計画というと、
最初に人口の展望があり、その人口がある程度増えるような見通しを想定することが常だっ
た。しかし、今となっては、そんな計画は誰が見ても非現実的なものとなる。どの地域も、
ある程度人口が減ることを前提に計画を立てる必要があるのだ。
しかし、地域の人口が減ることは、どうしてもその地域の活力が失われることにつながり
やすいし、元気が出にくいことも事実だ。そこで登場するのが「交流人口」を増やすことだ。
定住人口は減っても、訪れてくる人が増えれば地域の活力は維持されやすい。こうした観点
から、交流人口の増大を目標に掲げる地域が多くなっている。その手段としては、別荘地の
開発、観光の促進、コンベンションや教育機関の誘致などが主なものである。
私はかねてから、こうした交流人口の促進政策をもう少し体系的に整理できないものだろ
うかと考えていたのだが、そこで出会ったのが「デスティネーション・マネジメント」とい
う考え方である。これは、目的地(デスティネーション)を自分の地域にしてもらうにはど
んな政策が必要かという考え方で、欧米では既に1990年代から盛んに取り入れられてい
るということだ。アジアにおいても、シンガポールや香港では、このデスティネーション・
マネジメントに基づいて、観光組織、マーケティング、観光政策などが立案されているとい
う。私もまだ学習中だが、その考え方はおおむね次のようなものである。
競争優位を通じた交流人口低加
デスティネーション・マネジメントの基本は競争である。例えば、観光について言えば、
観光客はどこかの地に行こうと考え、いろいろな要素を考慮して選択を行う。他方で、観光
地を有する地域は、「選択される側」となるから、自分の地域と他の地域とのデスティネー
ション(目的地)をめぐる競争となる。
28
2011年10月号
自地域が選択されるためには、何らかの比較優位を持たなければならない。その比較優位
を確保するためにはどのような戦略を持ち、それをどう政策的に実現していくか。そうした
政策立案の枠組みを提供しようとするのがデスティネーション・マネジメントである。
観光を例にしてデスティネーション・マネジメントの考え方を説明しよう。観光資源は「
中核的な資源」と「補完的な資源」に分けることができる。
中核的な観光資源というのは、その地域が人を引き付ける上でのコアとなる資源である。
これには、自然、風土、気候、文化・歴史、イベント、エンターテイメントなどさまざまな
ものが考えられる。
堺屋太一氏は、しばしば観光を振興する上での「アトラクティブス(人を引き付けるもの)」
として、次の6つを指摘する。それは、「歴史(遺跡や史実の現場となったところ)」、「
フィクション(物語や映画の舞台になったところ)」、「リズム&テイスト(音楽があり、
おいしい食事が楽しめるところ)」、「ガール&ギャンブル(きれいな女性がいてゲーム性
のあるところ)」、「サイト・シーイング(景色や気候のいいところ)」、「ショッピング
(安くて品揃えが豊富なところ)」という6つである。
デスティネーション・マネジメントの観点からは、こうした6つの要素は、いずれも中核
的資源に当たる。
補完的な資源というのは、中核的な資源の存在が、実際に人を引き付けるように機能する
上で重要な役割を果たす資源である。ホテルなどの宿泊施設、交通インフラ(アクセスの容
易さ)、ホスピタリティ(地域の人々の歓迎する気持ち)、企業活動(企業が中核資源を生
かして活力を発揮しやすい環境)、政治的意思(地域の政治的指導者が本気で観光振興を考
えているか)、治安といったものがそれである。
補完的資源だけがあっても観光客は来ない(便利な飛行場があるからというだけでは人は
集まらない)。また、立派な中核的資源があっても、補完的資源がこれをサポートしないと
やはり観光客は来ないのである。
29
2011年10月号
デスティネーション・マネジメントに基づく観光政策
こうした概念に基づいて、競争力のあるデスティネーション力を実現させるための方策を
検討していくことになるのだが、そのためのフレームワークとしては、図のようなものがあ
る。これは、デスティネーション政策は、「デスティネーション力を高めるための計画」、
「デスティネーションのマーケッティング」、「デスティネーションのマネジメント」とい
う3つの柱からなるという考え方である。
この図(文末参照)は、2007年にオーストラリアで開かれた”National F
ramework for Best Practice Destination Ma
nagement Planning”というコンファランスに提出されたペーパーに基づ
いている。当時、オーストラリアの国内観光業には、国際競争力を失いつつあるという危機
感があった。要するに、人々がオーストラリア国内観光ではなく、海外観光に出かけてしま
うようになったのである。そこで何とかしようということになり、デスティネーション・マ
ネジメントの考え方で観光振興策を練り上げようということになったのである。
3つの柱の内容を説明しよう。「デスティネーション力を高めるための計画」としては、
まず、観光地として観光客に認識させる地域を設定した上で(これをデスティネーション・
エリアという)、①中核的資源が持つ潜在力についての評価、②全てのステークホルダー(
政府、企業、住民など)とのコラボレーション、③補完的資源を充実させるためのインフラ
投資、④地域における雇用創出に応えられるような人材の確保、⑤長期的な戦略の確定など
が必要としている。
「デスティネーション・マーケッティング」としては、①ターゲットとする顧客層の絞り
込み、②地域ブランドの確立、③ターゲット市場層に対する働きかけ(PR)などが必要と
している。
最後に「デスティネーション・マネジメント」としては、①デスティネーション力の源と
なっている中核的資源の保全を図ること、②訪問者の体験の質を高めること、③地域におけ
る観光産業を育成することなどが必要としている。
ざっと調べた限りでは、デスティネーション・マネジメントの内容はおおよそ以上のよう
30
2011年10月号
なものである。最後に私の感想を述べておこう。
第1に、デスティネーション・マネジメントの基本は、要するに「交流人口を増やすため
に、各ステークホルダーが目的意識を共有し、力を合わせていく必要がある」ということで
ある。その意味では分かりきった結論になるのだが、目新しさがあるとすれば、交流人口増
加のための戦略を立てるに際して、概念整理を明確化し、戦略に整合性を持たせるように工
夫したことであろう。
第2に、この点は多くの論者が指摘していることなのだが、デスティネーション・マネジ
メントの具体的な内容は、地域によって異なるということだ。これは、中核的資源の内容が
各地域で独自のものなのだから、ある意味では当然だともいえる。したがって、デスティネ
ーション・マネジメントの一般型のようなものは存在しない。あくまでも緩やかな統一概念
に基づいて、各地域が練り上げていくしかないものである。
第3に、デスティネーション・マネジメントの考え方は、日本においても有効であろう。
多くの地域が交流人口の増大を目指した地域づくりを進めている。どうせ進めるのであれば、
概念整理を明確化した上で戦略を練ったほうが効率的な促進策が可能となるだろう。
もちろん、その基本は中核的資源の存在と、それを生かそうとする地域の熱意である。デ
スティネーション・マネジメントが交流人口増大の特効薬だというわけではないが、大きな
手助けになるということは言えそうだと思われる。
(日本経済研究センター 研究顧問)
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2011年11月号
山田剛のINSIDE INDIA
多宗教国家インドの今―内政やビジネス
のカギを握る
人口12億1000万人を抱えるインドは、世界でも類を見ない多宗教国家である。イン
ドで独自の発展を遂げたヒンドゥー教徒が多数派を占めてはいるが、日本の人口を上回る1
億6000万人ものイスラム教徒をはじめ、「ターバン」や「ひげ」がステレオタイプなイ
ンド人の特徴となっているシーク教徒、フランシスコ・ザビエル以来の信徒もいるキリスト
教徒、仏教発祥の地インドにありながら少数派である仏教徒など、非常に多彩だ(図表1、
2)。
※図表1「インドの宗教別人口比率(%)」、図表2「インドの主要宗教の特徴」は会員限
定PDFをご覧ください。
http://www.jcer.or.jp/international/insideindia.html
牛肉を食べないヒンドゥー教徒や豚肉や酒を忌避するイスラム教徒の存在で、外食産業や
食品メーカーは、宗教に配慮したマーケティングや品ぞろえを企画しなければならないが、
そこには新たなビジネスチャンスもある。また、ヒンドゥー・イスラムの宗教対立も散発的
に発生し、しばしば政治的に利用されるなど、内政を左右する要因としても要注意だ。イン
ド自体は憲法でも宣言している世俗主義国家だが、インドでビジネスを展開するには、各宗
教の最新動向にも気を配る必要があるのは言うまでもない。
信者9億人超のヒンドゥー教
日本のメディアではもっぱら「ヒンズー教」と慣用的に表記される。インドの主要言語の
場合は「ヒンディー語」が正しい。紀元前2∼3世紀ごろ欧州から北部インドに進出したア
ーリア人が編纂したヴェーダ聖典がいわゆるバラモン教の基礎となり、これが土着宗教を取
り込んで発展したのがヒンドゥー教とされ、信徒はインド国民の約80%、9億人を大きく
超える。
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バラモン(ブラーミン、司祭)―クシャトリア(貴族・武士階級)―バイシャ(平民)―
シュードラ(隷属階級)というヴァルナ(四姓)と、最下層の不可触民(ダリット)からな
る身分制度をもつ「カースト制」が有名だが、実際には数千もの職業集団(ジャーティー)
に分かれており、名字を見れば先祖の職業と出身地がわかる場合もある。
都市部や企業、高等教育の現場ではこのカースト差別はほとんど顕在化していないし、高
学歴の若者は最初からカーストを気にせず結婚相手を決めることが多いが、農村や地方では
いまだにカーストに基づいた差別や慣習が残っている場合もある。
インド政府は、国立大学定員のほぼ半数を被差別カースト向け優先枠とするなど様々な留
保制度を設けているが、逆差別につながるケースもあり、しばしば社会問題となる。
ヒンドゥー教の特徴は「究極の多神教」で、さらにそれぞれの神に「化身」が存在する。
たとえば三位一体を体現するブラフマー(創造の神)、ヴィシュヌ(維持の神)、シヴァ(
破壊の神)の三大神のうちヴィシュヌ神は、叙事詩「ラーマーヤーナ」に登場するラーマ王
子や「マハーバーラタ」で活躍する英雄クリシュナなどさまざまな「化身」を持ち、釈迦も
ヴィシュヌ神の化身のひとつとみなされている。また、シヴァ神の妃であるパールヴァティ
ーも、悪魔と戦うドゥルガーや「憤怒相」であるカーリーなどいくつもの化身がある。
このほか、シヴァ神の子息で象の頭を持つ知恵と富の神ガネーシャはインドでもっとも人
気のある神様。「ラーマーヤーナ」に登場する猿の姿をしたハヌマーンは「孫悟空」の原型
といわれ、ガネーシャとともに子供向けの人気アニメ映画にもなっている。
ヒンドゥー教の神と仏教の守護神・諸仏との関係も興味深い。たとえば、シヴァ神の化身
の一つであるマハーカーラは直訳(マハー=大きい、カーラ=黒)通り、仏教における大黒
天と同一とされ、ブラフマー神の妃サラスバティは同様に弁財天(弁天様)のことであり、
インドの絵画では川の流れをバックに弦楽器を持った姿で描かれる。このほかにもヴィシュ
ヌ神の妃ラクシュミー=吉祥天、インドラ(雷神)=帝釈天、ガネーシャ=歓喜天(聖天)
という同一性がある。
国内には様々なヒンドゥー教団体が存在し、前政権党のインド人民党(BJP)ももとも
とは有力ヒンドゥー教団体の政治部門として創設された経緯がある。商都ムンバイを拠点と
するヒンドゥー至上主義政党「シブ・セナ」は、反ヒンドゥー的とされる映画を上映した映
34
2011年11月号
画館やバレンタインデー・ショップを襲撃するなど過激な行動で知られている。また、BJ
Pなどヒンドゥー系政党の内部には、政治的意図をもってイスラム教との宗教対立を扇動す
る勢力もいて、しばしば事件を引き起こす。
近年はBJPの退潮や有権者の穏健化とともに、国民の関心が経済発展や所得増に移った
こともあり、宗教対立はおおむね下火になっている。
【写真1:インド各地から信者が集まるヒンドゥー教の聖地ヴァラナシー(北部ウッタルプ
ラデシュ州)】※文末参照
静かなるイスラム教徒
インドには紀元8世紀ごろ、アラブ商人が海上ルートでイスラム教を伝え、イスラム王朝
であるムガール帝国の発展とともにさらに拡大した。1947年、英領インド内のイスラム
教徒が建国したパキスタンとの分離独立後も、カシミール地方やアッサム州、グジャラート
州やハイデラバードなどイスラム藩王国があった都市などに多数のイスラム教徒が残り、現
在その数は総人口の14%弱、約1億6000万人に達する。ヒンドゥー教徒に比べて進学
・雇用機会や所得水準などの点で明らかな格差があり、議論を呼んでいるが、その割にはイ
ンドのイスラム教徒は概して穏健で、中東や東南アジアのように強大な政治勢力を形成した
り過激派が台頭するようなことは今のところほとんどない。この背景には、民主主義による
言論の自由の保障や社会福祉など、最低限のセーフティーネットがあるからだといわれてい
る。
内外金融機関では膨大なイスラム人口に着目した「イスラミック・バンキング(酒造会社
や豚肉を扱う会社などには投資せず、出資者には利子ではなく利益配分を提供するなど、イ
スラムの戒律に合致した金融機関)」事業の展開を検討する動きも出てきた。
【写真2:インドには敬虔なイスラム教徒も多い(南部アンドラプラデシュ州ハイデラバー
ドのモスク)】※文末参照
身だしなみに5つの「K」~シーク教
16世紀初頭、現パキスタンのラホール近郊でヒンドゥー教徒だったグル(教祖)ナーナ
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2011年11月号
クが創始した宗教。シークとはグルに対する弟子を意味するパンジャビー語。ヒンドゥー教
の教えに、イスラム教の特徴である「平等」「相互扶助」の精神を導入し、独自の発展を遂
げた。信徒はヒンドゥーやイスラムと違って食事のタブーがないため体格に恵まれ、職業的
制限も緩く比較的教育水準も高いことから、官吏や警察官・軍人、運転手、機械工などとし
て活躍。一部は積極的に英国や東南アジアなどに進出したため「ターバンを巻いたシーク教
徒=インド人」というイメージが世界的に定着した。インドの総人口の2%強、約2400
万人のコミュニティーだが、信徒は現首相のマンモハン・シン氏をはじめとしてインドの各
界で活躍している。
男性は「シン」(獅子)、女性は「カウル」を名前に付けるのが原則で、主流派の男性は
「刈らない髪とひげ」「くし」「丈の長い下着」「鉄の腕輪」「短剣」という、いずれもパ
ンジャビー語の発音で頭文字に「K」がつく5つのアイテムを身につけるのが決まりだ。
総本山はパンジャブ州アムリツァルにある黄金寺院で、池に浮かぶ本堂は実際に700キ
ロもの純金を使用しているとされ、内部には信仰の象徴である聖典「グラント・サヒーブ」
が安置されている。
【写真3:シーク教の総本山・黄金寺院(北西部パンジャブ州アムリツァル)】※文末参照
ザビエルも説いた~キリスト教
インドのキリスト教人口は約3000万人。モンゴロイド住民が多いナガランド、マニプ
ールなどの東部州では、かつて米国人宣教師が積極的な布教活動を展開したこともあって、
キリスト教住民が多数派を占める。16世紀にインドで布教した聖フランシスコ・ザビエル
の直系とされる信徒らもいるが、カースト差別から逃れるために改宗した元ヒンドゥー教徒
も少なくない。過去には、キリスト教団体と改宗を阻止しようとするヒンドゥー教徒側との
摩擦が流血の事態に発展することもあった。
発祥の地では少数派~仏教
インドは仏教発祥・発展の地で、国内には仏陀が悟りを開いたブッダガヤ、初めての説法
(初転法輪)を行ったサルナートやブッダ入滅の地クシナガルなど、多くの聖地があり、日
本人にもなじみ深い。このほか、西部マハラシュトラ州には壮麗な壁画・彫刻を伴う石窟寺
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2011年11月号
院群があるアジャンターやエローラなどの遺跡もあり、有力な観光資源となっている。また、
ブッダガヤなど各地には仏教寺院群や信仰団体の拠点などがあり、日本人僧侶も熱心に活動
している。
インドにおける仏教は、ヒンドゥー教の台頭やイスラム教の布教拡大によって圧迫されて
衰退。信徒数は全人口の1%程度しかいないが、初代法相をつとめたアンベードカル博士ら
に率いられてヒンドゥー教の被差別カーストから集団改宗したいわゆる「新仏教徒」とその
子孫も多い。
徹底した不殺生のジャイナ教
シーク教とともに、インド独自の宗教として知られる。紀元前600年ごろ、仏陀とほぼ
同年代の宗祖マハーヴィーラによって創始された。マウリヤ朝の保護を受けてマハラシュト
ラ州、グジャラート州、カルナタカ州などに広がり、輪廻、解脱カルマ(業)や苦行の実践、
禁欲主義など、仏教との共通点も多い。信徒数は約500万人と少数派だが、マハトマ・ガ
ンジーはじめインド人の精神文化に大きな影響を与えたとされる。
【写真4:ジャイナ教寺院(西部グジャラート州アーメダバード)】※文末参照
教義の最大の特徴は徹底した不殺生(アヒンサー)で、菜食主義はもちろん、生命を持ち
再生可能であるとして玉ネギなど球根野菜も食べない。また、出家者は空気中の小さな虫を
吸い込まないよう常に小さな白いマスクを着用し、路上に座る場合は手にしたホウキで地面
を掃き清める。この教義のため、ジャイナ教徒は農業に従事することができず、その多くが
宝石商などのビジネスを手掛けており、比較的富裕な層が多い。
教団は、「無所有」を徹底し一切の衣服を着用しない「空衣派(裸行派)」と、白衣を着
用し托鉢用の鉢を持つ「白衣派」に分かれている。今でもインド各地では、空衣派の出家者
らが日中全裸で大通りを行進する姿を目にすることがあり、外国人を驚かせる。
(日本経済研究センター主任研究員)
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現地発・米国経済を読む 田原健吾
米国内で広がる「公平」を求める動き
ニューヨークでは9月から、ウォール街近くのズコッティ公園を拠点に、経済格差や高い
失業率など、現状に不満を持った人々が集まり、“Occupy Wall Street
”と呼ばれる抗議活動を続けている。この動きは米国内の各都市に広がり、さらに欧州やア
ジアなどでも同様のデモが起こっている(文末写真参照)。
格差の度合いは歴史的高水準
「我々は99%(We are the 99%)」というメッセージは、彼らの一つの
不満を表している。1%の富裕層がより豊かになり、とりわけ2008年の金融危機の際に
税金を使って救済された金融機関が、経営幹部に高い報酬を支払っている一方で、残りの大
多数の国民はいまだに金融危機の後遺症に苦しんでいるという不満だ。米内国歳入庁のデー
タに基づくピケッティ、サエズ両氏の研究(※1)によれば、国全体の所得(キャピタル・
ゲイン含む、課税前)の約21%は上位1%層のものである(2008年時点)。この上位
1%層が全体の所得に占める割合は、1970年代以降、傾向として上昇してきており、こ
こ数年の2割超というのは、世界恐慌の起こった1920年代後半以来の高水準である(文
末図1参照)。
他のOECD加盟国と所得格差の程度を比較してみても、米国の税引き後所得の格差は大
きい。累進課税や所得移転が格差を縮小する役割を果たしているが、その再分配効果が、米
国は他国に比べ小さい(文末図2参照)。
所得の差は、より高い所得を求めて努力するインセンティブをもたらすという意味で、経
済成長に欠かすことのできない要素ではある。事後的に税や所得移転で再分配するという方
法もあるが、いずれにせよ再分配されることを見越した労働者のインセンティブは低下して
しまう。こうしたインセンティブの視点から、経済成長と所得の公平性とは、両立の困難な
トレードオフの関係にあると考えられる。
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2011年11月号
しかし、所得格差が常に経済成長を促す必要悪かというと、必ずしもそうではないようで
ある。IMFのバーグ氏らの研究(※2)では、所得格差の小さい国の方が、経済成長が長
続きする傾向があることが示された。その因果関係は明らかではないが、格差が成長を阻害
しうる経路としては、昨年来の「アラブの春」のように政治の不安定をもたらすことや、格
差が大きいと財政政策などについて合意形成が難しくなることが挙げられる。とすれば、経
済成長のために所得格差に目をつぶるというトレードオフではなく、経済成長のためにも格
差を抑えることが望ましい場合もあるということになる。
格差を是正する政策は、上述したように時としてインセンティブを歪め成長を阻害するた
め、一概に所得再分配政策が望ましいとは言えないが、例えばバーグ氏らは、ターゲットを
絞った補助金や貧困層への教育機会の提供等は、格差を縮小し、かつ経済のパイも拡大する
両得の政策となりうるのではないかと提案している。
大統領は「バフェット・ルール」提案
オバマ大統領は現在、「バフェット・ルール」と呼ばれる富裕層への課税を提案している。
年収百万ドル以上の富裕層が、それ以下の層よりも必ず高い所得税率を支払うよう定めるル
ールだ。この名前は、投資家のウォーレン・バフェット氏が、彼の昨年支払った税額は所得
のたった17.4%と、彼の秘書の支払った税率より低いとし、富裕層はもっと課税される
べきだと主張していることにあやかっている。同様の主張は、欧州を含む一部の富裕層にも
広がった。
同氏の主張に対し、ウォールストリートジャーナル紙(※3)は、対象となる年収百万ド
ル以上の所得層は、平均で23.3%と、50万ドル未満の各所得階層よりも高い税率を支
払っているとし、一概に「百万長者」の税率が低いと考えるのは間違いだと指摘している(
ただし上位400人の平均税率は、キャピタル・ゲインや配当等の収入=最高税率15%=
の割合が大きいことから、18%とやはり低い)。また、実際に百万ドル以上の所得層への
増税を行えば、投資収益への増税が投資を抑制してしまうか、あるいは納税者が節税に努め
るか海外へ逃げてしまうだろうと、否定的だ。
エコノミスト誌(※4)は、税負担の現状が著しく不公平とは言い切れないとしながらも、
財政赤字の削減には増税も必要であり、歳出削減はより低い所得階層に影響を及ぼすため、
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2011年11月号
富裕層により多く課税すること自体は理にかなっているとしている。但し、その増税の仕方
としては、限界税率を引き上げるのではなく、住宅ローン金利や雇用主負担の医療保険など
数多く存在する税控除を廃止して、税体系をシンプルにする方が、比較的インセンティブを
損なうことなく実質的に富裕層に多く課税できるという意味で、望ましいと提案する。
デモは追い風になるか
本稿で論じたように、効率性(成長)と公平性(格差)を巡る議論に簡単な結論は出ない。
富裕層を支持基盤とする共和党が効率性を志向する傾向にあるのに対し、民主党は公平性を
志向する傾向にある。その意味で、ウォール街デモや一部の富裕層による増税を求める動き
は、来年の大統領選で再選を目指すオバマ大統領にとって追い風になる可能性はある。例え
ば共和党の大統領予備選に立候補しているハーマン・ケイン氏などは、デモ参加者は成功者
に対して「嫉妬している」と冷ややかな一方で、オバマ大統領は、デモは「金融システムへ
の国民の不満の広がりを示している」と、一定の理解を示す発言をしている。
ただ、ウォール街デモが民主党にとって、共和党のティーパーティーのような役割を果た
すかというと、今のところエコノミスト誌(※5)は否定的に見ている。第1に、オバマ大
統領は左派寄りに偏りすぎると再選が難しくなると認識しており、デモの動きを取り入れる
のに積極的ではない。第2に、彼らはデモという行為そのものに執着しすぎており、現実的
に変化を起こすための政治的な動きがまだ見られない、と指摘している。ズコッティ公園で
掲げられている主張は、クリーン・エネルギー政策に賛成するものや、“End the Fed”という極端なものまで、現状に不満を持っている点では共通しているものの、求め
るところは必ずしも一様でない印象を受けた。政治的にも必ずしも民主党支持者が集まって
いるというわけでもないようだ。ただ、フィナンシャル・タイムズ紙(※6)は、抗議活動
の要求が明確でないことが、逆に一つの強みとなっていると主張している。現状への不満か
ら若者たちが民主的かつ平和的に抗議しているという行動自体が、広く民衆の心をつかむこ
とになるからだ。
格差を縮小すべきとの世論が勢いづいている中で、現状では、富裕層向け増税を含む雇用
創出法案の審議入りが10月11日に上院で否決され、いまだに妥協を見いだせない状況が
続いている。今後は法案を細分化し、個々の内容について可決を目指す見通しだ。政治の膠
着が、不公平感の高まりと同時に、経済成長にも妨げとなることが懸念される。
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2011年11月号
※1 研究論文およびデータはサエズ教授のウェブサイトから入手可能。 http://elsa.berkeley.edu/~saez/
※2 Berg, A.G. and J.D. Ostry “Equality an
d Efficiency: Is there a trade−off betwee
n the two or do they go hand in hand?” Fi
nance & Development, September 2011. この記事
に彼らの主な研究成果がまとめられている。
※3 The Wall Street Journal, 2011年9月20日付
※4 The Economist, 2011年9月24−30日号
※5 The Economist, 2011年10月8−14日号
※6 Financial Times, 2011年10月7日付
(日本経済研究センター研究員、米コンファレンスボード出向)
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2011年11月号
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2011 年 11 月号
研究リポート(サマリー)
都道府県別成長率予測
第 37 回改訂中期経済予測(2011-2020 年)
2010-20 年の成長率 1 位愛知県、2 位東京都、3 位群馬県
―輸出や事業所サービス依存度で明暗
2011 年 10 月 13 日発表、中期予測班
大震災の影響を織り込んで見直した中期経済予測(改訂 37 回) に基づき、都道府県別
の実質産出額、従業者数の伸び率を予測した。同改訂中期予測に沿い推計した日本全体の
産業別見通し(改訂産業見通し)を、各都道府県の産業構造に投影した。
<ポイント>
① 加工型製造業が多く立地する地域では、輸出増の恩恵を受け生産が伸びやす
い。最も高い伸びが見込めるのは愛知県で、輸送機械が引き続きリード役に
なる。逆に建設、農林水産業などへの依存度が高い地域は伸び悩む。
② 2位は東京都。輸出からの直接の恩恵は限られるが、社内業務の外注化拡大
に伴い対事業所サービスが伸びる。サービス業は雇用吸収力が高いため、東
京都は従業者数の伸び率で全都道府県中、唯一プラスになる見通し。
③ 加工型製造業の生産が伸びる地域でも、同製造業では労働生産性が改善する
ため、従業者数は必ずしも増加しない。
生産・雇用伸び率(2010-20 年)上位5県
1
2
3
4
5
実質産出額
愛知県
東京都
群馬県
三重県
広島県
1.7
1.5
1.5
1.4
1.4
1
2
3
4
5
従業者数
東京都
大阪府
神奈川県
福岡県
沖縄県
0.1
▲0.3
▲0.3
▲0.3
▲0.4
(数値は2010-20年の平均増減率%、▲は減)
詳細は
http://www.jcer.or.jp/research/middle/detail4236.html をご参照ください。
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2011 年 11 月号
セミナーリポート
<AEPR 特別セミナー>変わりつつある北朝鮮と世界
2011 年 10 月 7 日開催
マーカス・ノーランド・ピーターソン国際経済研究所副理事長、
シニアフェロー
国民に自由もたらす関与を―市場の発展通じて情報を拡大
<要旨>
北朝鮮を逃れてきた脱北者への調査により、北朝鮮の統制的な中央経済体制は既に崩壊していること
が分かった。国民は日常的に警察に理由もなく逮捕されており、釈放されるために賄賂が必要となるな
ど、腐敗が進んでいる。
女性を中心に賄賂を払って、市場で取引をする人たちが増えている。国民の間では外国メディアへの
アクセスが広がっている。しかし、北朝鮮の国民の間には、政権への不満が募っていても、組織的な抵
抗は見られず、国民はバラバラである。
北朝鮮への関与としては、対話や人道支援などの伝統的な関与のほかに、非国有企業に融資するなど
の商業的関与が考えられる。市場が発展することで、国民が物質的に豊かになるだけでなく、市場の中
で自由を獲得することができる。情報も入ってくる。市場を通じて強権的な政府に説明責任を迫ること
にも意味がある。
※詳細は
http://www.jcer.or.jp/seminar/sokuho/index.html#20111007
をご参照くださ
い。
46
2011 年 11 月号
最近掲載のセミナーリポート
開 催 日
タ イ ト ル
講 師
10 月 7 日
<AEPR 特別セミナー>変わりつつあ
る北朝鮮と世界
「国民に自由もたらす関与を―市場
の発展通じて情報を拡大」
マーカス・ノーランド・ピーターソン国
際経済研究所副理事長、シニアフェ
ロー
10 月 6 日
債務問題と欧州経済の展望
「「財政恐慌」で欧州経済メルトダウン
の恐れ―“2 つのユーロ”に分けよ」
10 月 1 日
「働きたい会社-従業員価値を高め
るには」研究会
特別講演会・ディスカッション-不確
実な時代の人材戦略
「あらゆる選択肢の動員を」
9 月 22 日
9 月 15 日
9 月 15 日
9 月7 日
世界経済の展望と日本の針路
「sunk cost ゼロからの復興―歴史的
教訓に学ぶ復興政策」
大震災後の日本―過去の危機から
学ぶもの
「カギ握るバランスシート調整―新た
な「資本」生み出す努力を」
ポスト胡錦濤の中国政治と日中関係
の展望
「中国、「社会」の近代化が課題―理
解され信頼される国を目指せ」
産業としての再生可能エネルギー
―太陽光発電を中心に
「太陽電池は次代の基幹エネルギー
-低コストで 200 兆円市場も」
HP 掲載項目
浜矩子・同志社大学大学院ビジネス
研究科教授
【基調講演】
ピーター・キャペリ・ペンシルベニア
大学ウォートン・スクール経営学教
授、同校人材研究センター所長
【パネルディスカッション】
ピーター・キャペリ・ペンシルベニア
大学ウォートン・スクール経営学教
授、同校人材研究センター所長
加藤丈夫・元富士電機会長
清家 篤・慶應義塾大学商学部教
授、慶應義塾長
司会)守島基博・一橋大学大学院商
学研究科教授
竹中平蔵・日本経済研究センター研
究顧問
高田 創・みずほ総合研究所常務執
行役員チーフエコノミスト
朱 建栄・東洋学園大学人文学部教
授
桑野幸徳・太陽光発電技術研究組
合理事長
(注)タイトル欄の上段はセミナータイトル、「 」内太字は抄録の大見出し。
詳細は以下のサイトをご覧下さい。
(聴くゼミ:音声)http://www.jcer.or.jp/seminar/kikusemi/index.html
(読むゼミ:抄録)http://www.jcer.or.jp/seminar/sokuho/index.html
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ピッ
ピックアップセミナー
東京
12月7日 12:00 ∼ 13:30
東京
*会費:3000円(当日ご持参ください) *会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
12月16日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
会員会社・部長昼食会
グローバル化と
日本のものづくりの課題
世界経済の現状と行方
藤本 隆宏・東京大学大学院経済学研究科教授、
河野 龍太郎・BNPパリバ証券
チーフエコノミスト
東京大学ものづくり経営研究センター長
公益社団法人
日本経済研究センター
〒100-8066 東京都千代田区大手町1−3−7 日本経済新聞社東京本社ビル11階
総務・事業本部
総 務 グ ル ー プ
経 理 グ ル ー プ
会 員 グ ル ー プ
事業グループ(セミナー)
03(6256)7710
03(6256)7708
03(6256)7718
03(6256)7720
研究本部
予 測 ・ 研 修 グ ル ー プ
研 究 開 発 グ ル ー プ
国際・アジア研究グループ
広 報 ・ 企 画 グ ル ー プ
03(6256)
7730
03(6256)
7740
03
(6256)
7750
03
(6256)
7713
グローバル研究室
中 国 研 究 室
ライブラリー
(茅場町支所) 〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2−6−1 日経茅場町別館2階 03(3639)
2825
大阪支所 〒540-8588 大阪府大阪市中央区大手前1−1−1 日本経済新聞社大阪本社8階 06(6946)
4257
03(6256)7732
03(6256)7744
参加ご希望の皆様へ
会場の席数に限りがございますので、当センターホームページ(http://www.jcer.or.jp/)または裏面のFAX申込書
で事前お申し込みをお願いします。
セミナーの日時は講師の都合などで変更する場合もありますので、当センターホームページでご確認ください。
■会費
■場所
会員無料(会員証をご提示ください)
一般は1回8,000円
東京:日本経済新聞社東京本社(東京都千代田区大手町1 3 7)
日経茅場町カンファレンスルーム(東京都中央区日本橋茅場町2 6 1)
大阪:日本経済新聞社大阪本社8階・日 経 セ ン タ ー 会 議 室(大阪府大阪市中央区大手前1 1 1)
(地図はホームページをご覧ください)
■入場
先着順(セミナー開始の30分前より受付を始めます)
■お問い合わせ(電話) 東京:
(03)6256−7720/大阪:
(06)6946−4257
東京
11月1日 15:30 ∼ 17:00
東京
11月9日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
日銀短観の現状と課題
―リーマン危機後の経験を踏まえて
短観は、企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運
営に資することを目的に実施する統計調査です。1957年に
開始されましたが、リーマン破綻後の金融危機の広がりを
受け、幾つか課題も明らかになりました。短観の総括を担
当する小早川氏に、中長期的にみた標本設計面での課題や
統計精度向上に向けた取り組みをご紹介いただきます。
小早川 周司・日本銀行調査統計局経済統計課長
1990年一橋大学経済学部卒、97年英国オックスフォード大学
経済大学院博士課程修了。日本銀行ニューヨーク事務所駐在、
OECD経済局勤務などを経て、2010年から現職
東京
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
<シリーズ>新興国と日本⑦
インド進出企業のための税務・会計
日系企業の進出が再び加速するインドは巨大市場として
のチャンスがある一方、複雑な間接税体系など、ビジネス
を展開する上で多くの問題もあります。新しく導入される
間接税制度や、物品・サービス税の一本化への対策、
「LLパ
ートナーシップ制度」など、公認会計士としてインドで日系
企業をサポートする岩瀬氏が、実例を挙げながら解説します。
岩瀬 雄一・Fair Consulting Indiaマネージングディレクター、
公認会計士、税理士
2000年あずさ監査法人東京事務所入所、米国会計基準・日本
会計基準監査業務、株式公開業務に従事。07年10月KPMGイン
ド事務所赴任を経て、11年1月から現職
11月7日 18:30 ∼ 20:00
*会費:会員無料・一般2000円 *会場:日経東京本社ビル2階 SPACE NIO
東京
11月9日 15:30 ∼ 17:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
<第6回 イブニング・マーケット・セミナー>
日本経済復活の可能性
ソーシャルメディアをどう使うか
―クラウド時代の企業情報戦略
引いては寄せる波のように、世界経済には次々と難題が
スマートフォンや多機能携帯端末の普及により、「フェ
持ち上がってきます。円高圧力にもさらされ、浮上のきっ
イスブック」「ツイッター」といったソーシャルメディア
かけがつかめない日本経済ですが、転機が訪れるとすれば、
の利用が広がっています。本セミナーでは、ソーシャルメ
その原動力は何でしょうか。6回目の日経ヴェリタスとの
ディアやクラウドサービスの課題や効果的な利用方法など
共催セミナーでは、武者リサーチの武者陵司代表を招いて
について、情報通信分野を担当する日経新聞の論説委員が
議論します。
解説します。
武者 陵司・武者リサーチ代表
関口 和一・日本経済新聞社論説委員兼産業部編集委員
1973年横浜国立大学経済学部卒、大和証券入社。97年ドイツ
証券、2005年同副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイ
ザー就任。09年から現職
1982年一橋大学法学部卒、日本経済新聞社入社。88年フルブ
ライト研究員として米ハーバード大学留学。ワシントン支局な
どを経て現職
東京
11月14日 12:00 ∼ 13:30
東京
*会費:3000円(当日ご持参ください) *会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
大阪
大震災からの復興を考える時、福澤諭吉の言った、科学
12月5日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
会員会社・部長昼食会
高齢化とグローバル化のもとでの
震災復興
12月2日 14:00 ∼ 15:30
日経センター中期経済予測説明会
エネルギー・国際分業・財政
―再構築迫られる日本経済
という意味の「実学」
、正しい判断力という意味の「公智」
、
震災そして円高の進行、日本経済はエネルギー供給の見
困難な人を思いやるという意味の「徳心」という概念は示
直しに加え、サプライチェーンや国際分業体制の再構築を
唆に富みます。少子高齢化と経済のグローバル化という大
迫られています。財政も立て直しが急務。足元では海外景
きな構造変化のもとで復興を実現するカギは、付加価値生
気に影が差すなど逆風が強まっています。日本経済は課題
産性の向上です。今後の方向性を示していただきます。
にどう対処し、どんな軌道を歩むのか。大震災やその後に
生じた経済環境の変化を織り込み展望します。
清家 篤・慶應義塾大学商学部教授、慶應義塾長
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。同大学商学部
教授、商学部長などを経て、2009年から現職。東日本大震災復
興構想会議委員
岩田 一政・日本経済研究センター理事長(東京会場のみ)
坪内 浩・日本経済研究センター主任研究員
東京
東京
大阪
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
11月22日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
11月24日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
12月6日 13:30 ∼ 15:00
未来を切り拓く非正規雇用改革
非正規雇用者の比率は三分の一まで高まりましたが、雇
用の安定性や処遇面でなお正規雇用者との格差が存在しま
す。労働市場の二極化によって社会的一体性が損なわれ、
日本の「強み」が失われることも懸念されます。「ポスト
日経センター短期経済予測説明会
予測期間:2011年10−12月期∼2014年1−3月期
3・11」のフレームワークの中で、長期的な視点から、非
正規雇用問題について提言していただきます。
鶴 光太郎・経済産業研究所上席研究員兼プログラムディレクター
愛宕 伸康・日本経済研究センター短期経済予測主査
東京
11月28日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
消費重視の成長戦略
1984年東京大学理学部卒業、オックスフォード大学大学院経
済学博士号取得。経済企画庁(現内閣府)
、日本銀行金融研究
所研究員などを経て、2001年から現職
東京
12月6日 15:30 ∼ 17:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
2012年の米国の政治経済展望
―ワシントンからの報告
米国経済は景気後退を回避できるのでしょうか。党派対
東日本大震災の痛手から立ち直ろうとしている日本経済
立に明け暮れる政治は、高失業や財政赤字という難題の解
は、海外経済の変調と円高の波に襲われています。海外の
決策を打ち出せるのでしょうか。そして秋に控える大統領
需要に依存する成長戦略が問題で、人口が減少するために
選と議会選の展望はどうなるのでしょうか。米国政治の現
今後は増加しないと考えられてきた消費を重視する戦略こ
場で最先端を追っている今村氏が一時帰国し、2012年の米
そが、日本経済復活のカギを握っているというお話をして
国の政治経済展望と日本への影響を解説します。
いただきます。
今村 卓・丸紅米国会社ワシントン事務所長
櫨 浩一・ニッセイ基礎研究所研究理事、チーフエコノミスト
1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、92年ニッセイ基礎研究
所入社、2011年から現職
1989年一橋大学商学部卒、丸紅入社。93年世界銀行国際経済
局出向、丸紅経済研究所チーフエコノミストなどを経て、2008
年から現職
東京
12月7日 12:00 ∼ 13:30
東京
12月16日 13:30 ∼ 15:00
*会費:3000円(当日ご持参ください) *会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
会員会社・部長昼食会
グローバル化と日本のものづくりの課題
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
世界経済の現状と行方
米国は景気減速が著しく、欧州債務危機の解決への道筋
はなかなか見えてきません。これまで高成長を達成してき
急激な円高を背景に、国内現場が過度に閉鎖されるリス
た新興国は、高インフレに悩みつつ景気失速も懸念されま
クが高まっています。日本企業がグローバル長期最適の経
す。その中で日本は、円高下で財政再建と経済成長を遂げ
営を行うためにも、国内の「良いものづくり現場」を残し
ていく必要があります。世界はこの危機をどのように乗り
ていくことは必須で、それは日本の経済安全保障のために
こえたらよいか、2012年の展望をお話いただきます。
も重要です。以上のような意見を持つ藤本氏に、経営戦略
や国の政策の課題を話していただきます。
河野 龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミスト
藤本 隆宏・東京大学大学院経済学研究科教授、
1987年横浜国立大学経済学部卒、住友銀行入行。大和投資顧
問、第一生命経済研究所などを経て、2000年から現職。総合資
源エネルギー調査会基本問題委員会委員、東日本大震災復興構
想会議検討部会専門委員
東京大学ものづくり経営研究センター長
1979年東京大学経済学部卒、三菱総合研究所入社。ハーバー
ド大学ビジネススクール経営学博士号取得。90年東京大学経済
学部助教授、98年同大学院経済学研究科教授
.
大阪
11月10日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
東京
12月8日 13:30 ∼ 15:00
景気点検講座
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
大阪
12月中旬の予定
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
「景気点検講座」は日本銀行大阪支店のご協力で、5月
と11月に景気を定点観測するセミナーです。経済動向や物
価情勢の現状・見通しなどタイムリーな情報を、日本銀行
の担当者が解説します。(
「聴くゼミ」「読むゼミ」資料の
ホームページ掲載は致しません)
世界経済の潮流2011 Ⅱ
菅野 浩之・日本銀行大阪支店営業課長
1991年東北大学法学部卒業、日本銀行入行。95年京都大学大
学院法学研究科修了、金融市場局調査役、金融機構局企画役な
どを経て、2011年から現職
嶋田 裕光・内閣府参事官(海外経済担当)
大阪
11月17日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
東京
12月15日 15:30 ∼ 17:00
韓国のFTA戦略と経済動向
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
韓国経済はリーマンショックから目覚ましい回復を見せ
日銀短観ポイント説明会
12月15日公表の日銀短観で示される企業の景況感や経営
計画の動向について、11月22日の当センター短期経済予測
公表後の内外経済情勢や、研修生による経済分析「経済百
ました。ウォン安に加え産業のグローバル化に積極的に取
り組んだ結果とも言えますが、財政問題等により先進諸国
経済が軒並み不調に陥る中、今後の推移が注目されます。
EU、米国などとのFTAを締結し、輸出主導に特化する韓
国経済の光と影について展望していただきます。
葉箱」の紹介も交えながら解説します。
奥田 聡・日本貿易振興機構アジア経済研究所動向分析研究グループ長
愛宕 伸康・日本経済研究センター短期経済予測主査
1992年UCLA経済学修士。1985年アジア経済研究所入所、対外
経済政策研究院(韓国)招請研究員などを経て、2011年から現職
大阪
11月22日 10:40 ∼ 12:40
大阪
*会員、一般とも入場無料
*会場:神戸大学出光佐三記念六甲台講堂(神戸市灘区六甲台2−1)
*定員:400名(先着順受付、定員になり次第締め切り)
12月8日 12:30 ∼ 14:00
*会費:3000円(当日ご持参ください)
*会場:リーガロイヤルホテル2階・ダイヤモンドルーム(大阪市北区中之島5-3-68)
*定員になり次第締め切り
日経センター・神戸大学景気討論会
日経センター・大阪昼食会
日本とアジアの今後の経済見通しについて
これからの日本
債務問題で低迷する先進国に比べ、東アジアは世界経済
低成長が続く日本経済は震災復興だけでなく、財政再建、
の成長を牽引する役割を一層強めています。日本とアジア
円高、デフレ、産業の空洞化といった課題が山積していま
の景気見通しと経済発展について、神戸大学と共催で活発
す。問題解決の手段はあるのか、日本はこの先どう変わっ
な議論を行います。
ていくべきなのか、前日銀総裁の福井氏が日本経済の将来
について語ります。
講師(順不同)
福井 俊彦・キヤノングローバル戦略研究所理事長
松林 洋一・神戸大学大学院経済学研究科教授
1958年東京大学法学部卒業、日本銀行入行。高松支店長、調
査統計局長、副総裁などを歴任後、98年富士通総研理事長、
2003年日本銀行総裁を経て、08年12月から現職
金京 拓司・神戸大学大学院経済学研究科教授
飯塚 信夫・神奈川大学経済学部准教授
可部繁三郎・日本経済研究センター主任研究員
司会)羽森 茂之・神戸大学大学院経済学研究科教授
●聴くゼミ
・読むゼミ
ご利用できます
が
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ミ)を公開しております。聴くゼミ・読むゼミは会
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聴くゼミ
開催日
セミナー名
9月15日
ポスト胡錦濤の中国政治と日中関係の展望
9月15日
大震災後の日本―過去の危機から学ぶもの
9月22日
世界経済の展望と日本の針路
9月28日
次世代の中国とどう付き合うか
朱 建栄・東洋学園大学人文学部教授
高田 創・みずほ総合研究所常務執行役員チーフエコノミスト
竹中平蔵・日本経済研究センター研究顧問
宮本雄二・前駐中国大使
10月 6日
債務問題と欧州経済の展望
10月 7日
<AEPR特別セミナー>変わりつつある北朝鮮と世界
10月 7日
TPPの本質と日本の成長戦略
浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授
マーカス・ノーランド・ピーターソン国際経済研究所副理事長、シニアフェロー
吉野文雄・拓殖大学海外事情研究所教授
読むゼミ
公開状況
(10月19日時点)
03(6256)7925
大阪のセミナーは… 06(6947)5414
東京のセミナーは…
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2011年11 • 12月の催し
TOKYO
月
日
1
7
9
11 9
14
22
28
2
6
6
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8
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日
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11 22
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5
12 8
ホームページ
http://www.jcer.or.jp/
FAX ご希望のセミナーに○をしていただき、必要事項を
ご記入のうえ、このページをお送りください。
*詳細はホームページをご参照ください。*■は会員限定セミナーです。 ご希望のセミナーに○をしてください。
曜日
火
月
水
水
月
セミナー名
日本経済復活の可能性
武者陵司 氏
<シリーズ>新興国と日本⑦
インド進出企業のための税務・会計
岩瀬雄一 氏
ソーシャルメディアをどう使うか―クラウド時代の企業情報戦略
関口和一 氏
会員会社・部長昼食会
高齢化とグローバル化のもとでの震災復興
月
消費重視の成長戦略
清家 篤 氏
愛宕伸康
櫨 浩一 氏
日経センター中期経済予測説明会
エネルギー・国際分業・財政―再構築迫られる日本経済
火
未来を切り拓く非正規雇用改革
火
2012年の米国の政治経済展望―ワシントンからの報告
水
小早川周司 氏
<第6回 イブニング・マーケット・セミナー>
日経センター短期経済予測説明会
予測期間:2011年10−12月期∼2014年1−3月期
金
参加希望
日銀短観の現状と課題―リーマン危機後の経験を踏まえて
火
岩田一政・坪内 浩
鶴 光太郎 氏
今村 卓 氏
会員会社・部長昼食会
グローバル化と日本のものづくりの課題
藤本隆宏 氏
木
世界経済の潮流2011 Ⅱ
嶋田裕光 氏
木
日銀短観ポイント説明会
愛宕伸康
金
世界経済の現状と行方
OSAKA
月
ホームページまたはFAXでお申し込みください。
河野龍太郎 氏
*詳細はホームページをご参照ください。*■は会員限定セミナーです。 ご希望のセミナーに○をしてください。
曜日
セミナー名
参加希望
木
景気点検講座
菅野浩之 氏
木
韓国のFTA戦略と経済動向
奥田 聡 氏
火
木
月
木
日経センター・神戸大学景気討論会
日本とアジアの今後の経済見通しについて(会場:神戸大学)
日経センター短期経済予測説明会
予測期間:2011年10−12月期∼2014年1−3月期
愛宕伸康
日経センター中期経済予測説明会
エネルギー・国際分業・財政―再構築迫られる日本経済
坪内 浩
日経センター・大阪昼食会
これからの日本
福井俊彦 氏
中旬の予定 世界経済の潮流2011 Ⅱ
11•12月のセミナー参加申込
嶋田裕光 氏
会 社 名
所属・役職
氏 名
TEL
*皆様の個人情報は上記セミナーに関する確認のほか、
日経センターの事業のみに使用いたします。
Mail
FAX
公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
http://www.jcer.or.jp
設立
目的
事業開始 1963年12月23日
内外の財政、金融、経済、産業、経営等の諸問題に関する調
査、研究を行い、あわせて会員相互の研修を図り、日本経済
の発展に寄与することを目的としています。
事業
役員
2010年(平成22年)4月1日(公益社団法人としての登記日)
代表理事
会長
新井 淳一
代表理事
理事長
岩田 一政
理事
喜多 恒雄
杉田 亮毅
長谷川 閑史
深尾 光洋
御手洗 冨士夫
南 直哉
八代 尚宏
吉川 洋
監事
田村 達也
本田 敬吉
上記の目的に沿って、主に次のような事業を展開しています。
1
内外の財政、金融、経済、産業、経営等の諸問題に関する調査、研究
2
経済予測・分析・研修
3
セミナー・討論会・研究会等の開催
4
ライブラリー・情報サービス
5
研究奨励金の交付
会員
普通会員、アカデミー会員(自治体、大学)、特別会員、名誉
運営
会費、寄付金などで運営しています。
会員で構成してい ます。
研究顧問
大竹
小島
小峰
竹中
深尾
名誉顧問
金森 久雄
香西 泰
日本経済研究センター 直通電話番号
総務事業本部
事務局
研究本部
総務グループ 03(6256)7710
予測・研修グループ 03(6256)7730
役員秘書 03(6256)7700
研究開発グループ 03(6256)7740
経理グループ 03(6256)7708
国際・アジア研究グループ 03(6256)7750
会員グループ 03(6256)7718
広報・企画グループ 03(6256)7713
事業グループ 03(6256)7720
会報編集 03(6256)7713
グローバル研究室 03(6256)7732
中国研究室 03(6256)7744
文雄
明
隆夫
平蔵
光洋
事務局長
事務局長補佐
兼総務
事業本部長
金子 豊
石塚 慎司
研究本部長
猿山 純夫
大阪支所長
府川 浩
茅場町支所 03(3639)2825
茅場町支所長
長坂 秀子
大阪支所 06(6946)4257
会報編集長
牛山 隆一
ライブラリー
所在地
東京・大手町
茅場町支所 (ライブラリー) 大阪支所
〒100-8066
〒103-0025
〒540-8588
東京都千代田区大手町1-3-7
日本経済新聞社11階
東京都中央区日本橋茅場町2-6-1
日経茅場町別館2階
大阪府大阪市中央区大手前1-1-1
日本経済新聞社8階
T E L: 03(6256)7710
FAX: 03(6256)7924
T E L: 03(3639)2825
FAX: 03(3639)2879
T E L: 06(6946)4257
FAX: 06(6947)5414
JCER
検索する
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日本経済研究センターでは、経済予測
や研究レポート、会報などの情報を
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