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1 - 日本経済研究センター

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1 - 日本経済研究センター
日 本 経 済 研 究 セ ンタ ー
Japan Center for Economic Research
http://www.jcer.or.jp
Table of Contents
2013/1
「2050年の日本」を長期予測グローバルな連...
2013/1
11月に「オーラルヒストリー 日経センター5...
2013/1
円高是正はどこまで進むか?
2013/1
安倍マジックの限界
2013/1
選挙のメッセージと新政権
2013/1
海士町を行く(中)―人口定着には教育が重要
2013/1
損失回避と財政破綻
2013/1
知的財産権なきイノベーション
2013/1
ローマ・クラブ『成長の限界』から40年
2013/1
日銀の独立性と安倍自民党総裁
2013/1
温暖化防止の国際交渉スタート、巨大需要創出へ...
2013/1
「ルネサス・民主党」はどこへ行くのか
2013/1
インドが担う4つの機能――輸出、R&D、そし...
2013/1
「4つの柱」・年明けに向けた展開―キーワー...
2013/1
第39回(中間報告)中期経済予測(2012−...
2013/1
第3回円城寺次郎記念賞 受賞者講演「経済学と...
2013/1
シンガポールからの元スカラー生、テオ・ギン・...
2013/1
1月−2月のセミナー(東京・大阪)
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本記事は日本経済研究センターの会報ページを印刷したものです。無断複製、無断転載を禁じます。
2013年01月号
設立50年 今年の日本経済研究センター
「2050年の日本」を長期予測
グローバルな連携・発信も多彩に
日本経済研究センターは2013年12月、社団法人としての設立から50年を迎えます。
「産・官・学の橋渡し」の役割を担う経済シンクタンクという創設時からの理念は、日本経
済の混迷が深まる今、改めて重要度を増しています。その理念を受け継ぐ意志も込め、当セ
ンターは50年の「スローガン」を「Bridge to the Future 」とし
ました。2050年の世界経済・日本経済の展望、そのとき日本が「一流国」であるためい
ま、何をすべきかの政策提言を柱に、設立以来力を入れてきた海外の研究機関・大学との連
携や対外発信も充実し、会員企業・団体の皆様と共に、希望のもてる「明日の日本」づくり
に貢献します。
長期予測、「経済一流国」維持の方策も探る
2050年にも日本は一流国でいられるか――。日本経済にはこれから、超高齢化や世界
最悪に膨らんだ政府債務が待ち構え、未来は平坦ではありせん。昨年末の安倍晋三政権発足
により、長らく続いたデフレからの脱出の入口に立ったかに見えますが、弱々しい成長のも
とでは結局、衰退の道を歩むことになります。直面する課題を克服するには、日本が経済で
「一流国」の立場を堅持する必要があるというのが私たちの考えです。健全な成長を続ける
には何が必要か。「2050年長期予測」プロジェクトはこのための大きな構想を描くこと
を目標としています。
大きく3つの方向で準備しています。1つめは、2050年の世界経済と日本経済を展望
することです。急速に経済力を拡大した新興国はこの先も持続的な成長を見込めるのか。先
端分野での強さが際立つ米国、衰退の影がちらつく日本の行方はどうなるのか。これらにつ
いて、生産性の向上を生み出す土壌とも言える経済開放の進展度、雇用システムの柔軟性な
どから考えていきます。
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2つめは国際金融システムのあり方です。サブプライム危機のような金融の暴走や欧州債
務危機など、国際金融は常に、大きな混乱に見舞われるリスクを抱えています。現在はこう
した危機への備えが十分とは言えません。国際通貨基金(IMF)の役割を拡大し、リスク
を防圧する新たな枠組みを構想しようと考えています。
3つめは、「人」と働き方です。日本は世界最速で進む人口減少に歯止めをかけなければ、
税・社会保障など制度設計が成り立ちません。そのために今、何を政策として行うべきか。
限られた人口でも潜在力を発揮するには、どのような雇用・人材育成の仕組みが必要か、女
性の労働参加率を高めることなどをあわせて考えていきます。
センターでは本年早々にまず改めて問題提起を行い、提言の大きな方向を示します。4月
をメドに中間報告をした上で、11月に最終報告として公表する予定です。
夏に国際シンポジウム、海外研究機関とも連携深める
経済予測、政策提言とともに、「グローバリスト」として知られる大来佐武郎元理事長以
来の伝統がある「国際連携」についても、設立50年の節目となる事業を展開する計画です。
設立50年を記念した国際シンポジウムについては、8月7日、米国を代表する国際金融
論、経済史の研究者であるバリー・アイケングリーン(Barry Eichengree
n)カリフォルニア大学バークレー校教授らを招いて、「2050年予測」プロジェクトで
も世界経済の枠組みを考える上での課題になっている国際通貨体制の行方について議論する
シンポジウムを開催する予定です。人民元の国際化、ユーロ危機、ドル一極体制などが論点
になります。このほか、国内外の経済の発展への貢献が期待される分野、例えば、行動経済
学、開発経済学の有力研究者を海外から招聘することを計画しています。
海外の研究機関や大学との連携も深めていきます。センターは昨年11月、米国最大のシ
ンクタンクであるブルッキングス研究所と都内で北東アジアの経済、政治体制をめぐって国
際シンポジウムを共催しました。これに続き、ブルッキングス研究所が2月20日にワシン
トンで開く日本経済に関するカンファレンスにセンターから2人の研究者を講師として派遣
する予定です。今年秋に開催予定の日本経済新聞社と米国の戦略国際問題研究所(CSIS)
による国際シンポジウムや、「日経・CSISバーチャルシンクタンク」の運営にも昨年ま
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でと同様、協力します。さらに海外、とりわけアジアの大学との連携を進めるべく、協議を
始めました。会員の皆様のグローバル化に対応し、研究体制・対外ネットワークを充実させ
ていきます。
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設立50年 今年の日本経済研究センター
11月に「オーラルヒストリー 日経センター50
年史」
日本経済研究センターが設立以来、展開してきた様々な活動(短期・中期・長期の経済予
測、委託研究生・研究員の受け入れ、景気討論会・シンポジウム・各種セミナーの開催、海
外からの学者の招聘、海外機関との共同研究、各種の研究プロジェクト、雑誌の編纂・発行、
日経・経済図書文化賞、研究奨励金など)が日本における経済政策の形成、経済成長を支え
るうえでどのような役割を果たしてきたのか。センター50年の歩みを、センターと縁の深
かった著名な研究者やセンターOBのエコノミスト、元職員などの「証言」を通じて克明に
たどるのが目的です。創設以来、10∼40周年と、これまでも大きな節目がありましたが、
センターが本格的な「所史」をまとめるのは、今回が初めてです。
センターを舞台に活躍した、あるいはセンターが輩出した研究者・エコノミストは非常に
数が多く、センターの歩みはそのまま、1960年代に主流だったマルクス経済学に代わっ
て近代経済学が普及していく「日本の近代経済学の受容史そのもの」といって過言ではあり
ません。そこでセンターでは、50周年史をいわゆる「社史(所史)」で終わらせず、歴史
的価値のある1次資料として次の世代に残すため、通常の周年史編纂の形とは異なる、オー
ラルヒストリーとして50年史を記録・作成することにしています。
昨年8月から小峰隆夫研究顧問(法政大学教授)を中心に、外部から岡崎哲二(東京大学
教授)、寺西重郎(一橋大学名誉教授/日本大学教授)、中林真幸(東京大学准教授)の各
氏ら、さらにオーラルヒストリー分野で経験が豊かな松島茂(東京理科大学教授)、中村尚
史(東京大学教授)の各氏らのアドバイスを得ながら、進め方や取り上げる内容、人選など
について企画を練っています。
11月からはまず金森久雄名誉顧問(元センター理事長・会長)のほか、昨年、円城寺次
郎賞の審査委員長を務めた今井賢一(一橋大学名誉教授)氏らのインタビュー取材をはじめ
ており、1∼2月には新野幸次郎(元神戸大学学長)、宮崎勇(元経済企画庁長官)、野田
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一夫(多摩大学名誉学長)、篠塚英子(人事院人事官)の各氏、さらに貝塚啓明氏、嶋中雄
二氏ら、6月末までに20人程度の経済学者、エコノミストのインタビューを計画していま
す。
実際にインタビューをはじめてみると、ご本人の直接の印象や思いが聞けるのは勿論、設
立を巡る逸話、エピソードなどにも触れる、貴重な機会となっています。
金森名誉顧問へのインタビューでは、金森氏の代名詞のひとつともなっている、短期の経
済予測手法である「段階的接近法」の命名の経緯や、短期、中期、長期の全部の予測を主査
として担当しての感想などが語られ、大変興味深いインタビューとなりました。『50年史』
の刊行出版にあわせたシンポジウムの開催なども検討しており、今後のインタビューの進捗
状況やそのエッセンスも適宜紹介していきたいと考えています。 (50周年史編集委員会)
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岩田一政の万理一空
円高是正はどこまで進むか?
主要国の実質実効為替レートの推移
衆議院選挙は、自民党の圧勝に終わった。円レートは85円台を伺う展開になった。シカ
ゴ先物市場では、円の売りポジションが14万枚も積み上がっている。日本銀行が一層の金
融拡大に舵を切るとの期待があるようだが、先物市場の売りポジションは、永続的なもので
はなく、その取り崩しリスクがあることに注意すべきだ。
また、企業の国際競争力に大きな影響を与えるのは、対ドルの円レートではなく、すべて
の貿易相手国を対象とし、物価変動の影響を除いた「実質実効為替レート」だ。実質実効為
替レートでみた円高は、どの水準まで是正されるべきなのであろうか。換言すると、均衡の
実質実効円レートはいくらかという問いに答える必要がある。
1970年以来の日本、アメリカ、ドイツ、韓国の実質実効為替レートの推移を観察する
と、興味深い事実が浮かび上がってくる(文末図1参照)。
第一に日本は、ドルの減価を相殺する形で大きく変動してきたが、一貫して円高基調で推
移していることだ。ある韓国のセミナーで朴英哲(Park Yung Chul)高麗大
学教授から、私は「何故、日本は単独でこんなに突出した円高を続けているのか」という質
問を受けた程である。韓国など事実上のドル・ペッグを採用してきたアジア諸国と比べると、
日本の円高は突出している。
日本は、2001年から2007年春の時期を除くとドルが大きく減価する時期に、調整
弁の役割を果たし、大幅な増価を繰り返してきた。2001年から2007年春の時期は、
日本銀行が量的緩和を採用し、2003年から2004年春にかけて財務省は35兆円もの
大介入を行なった。量的緩和が終了した2006年3月以降も円キャリー取引が拡大したた
め円安傾向が持続した。
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しかし、円キャリー取引は持続せず反転し、急激かつ大幅な円高に転じた。2007年以
降、円の実質実効為替レートは27%も増価した。この増価幅はスイス・フランを上回って
いる。
第二に、これに対してドルは、1985年に一時的に1970年の水準に回帰したが、そ
れ以外の時期は、ドル安基調で推移している。とりわけ、2002年以降、リーマン・ショ
ック直後の一時期を除くと、ドルの実質実効為替レートは33%も減価している。
第三に、ドイツの実質実効為替レートは、驚異的とも言える程に一貫して1970年と同
じ水準で推移している。仮に、為替レートが国内と外国の物価上昇率の差で決定される「購
買力平価」が成立しているとすれば、実質実効為替レートは一定値で推移するはずだ。ドイ
ツの為替レートは、あたかも「購買力平価」が常に成立しているかのような安定性を示して
いる。
さらに、驚くべきことは、図には示していないが、ドイツの交易条件も1970年以来ほ
ぼ一定の水準で推移していることだ。以下で述べるように、交易条件の逆数が均衡実質実効
為替レートを示すとの観点からすると、ドイツは、均衡実質実効為替レートからほとんど乖
離することがなかったということになる。もちろん、1999年のユーロ導入は、ドイツの
実質実効為替レートを安定化するよう機能したであろう。しかし、ユーロ導入以前でもドイ
ツの実質実効為替レートが安定していることは注目に値する。
均衡為替レートからの乖離幅
日本経済研究センターでは、最近の短期経済予測において、「経済行動から推測される均
衡為替レート」(Behavioral Equilibrium Exchange R
ate: BEER)を計測した。経済のファンダメンタル要因から決定される実質実効均
衡為替レートはどのような水準にあるのか、為替レートに影響を与えるファンダメンタル変
数を直接用いて実質均衡為替レートを計測した。
この均衡レートは、ピーターソン国際経済研究所が計測している「基本的な均衡為替レー
ト」(Fundamental Equilibrium Exchange Rate:
FEER)が、国内で完全雇用が成立している場合の基調的なネットの資本流入と整合的
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な為替レートに着目するのに対して、現実のファンダメンタル要因に着目し、現実の実質為
替レートは均衡レートに回帰する傾向があるとの前提で計測を行うものである。
経済の実物面では、(1)輸出価格と輸入価格の比率である交易条件と(2)貿易財に対
する非貿易財の相対価格の内外格差の2つの変数が、実質均衡レートに大きな影響を与える
ファンダメンタル変数に選ばれている。
後者の非貿易財の貿易財に対する相対価格の内外格差は、「バラッサ=サミュエルソン効
果」と呼ばれている。外国に比べて非貿易財の貿易財に対する相対価格が大きく上昇する経
済では実質為替レートに増価圧力が加わりやすい。高度成長期から1970年代にかけての
日本では、貿易財の生産性上昇が非貿易財の生産性上昇率を大きく上回ったために、非貿易
財の相対価格が上昇し、円高圧力が発生しやすかった。
他方で、経済の金融面では、資本フローに大きな影響を与える変数として(1)内外の実
質金利差、(2)対外純資産の名目GDP比率、(3)リスクプレミアム(公的債務残高の
対名目GDP比率の内外差)が取り上げられている。
以上の5つの説明変数による計測では、円の実質実効レートは、足元で均衡値から13%
過大に乖離しているとの結論が得られている。この計測では、通常の議論とは異なり、19
95年の円高と比べて今回の円高の時期の方が、より大幅に過大評価されているとの結論が
得られた。同様に2000年代前半は、均衡値と比べると過小に評価されていたことになる
(文末図2参照)。
交易条件からみた均衡為替レート
ところで、「経済行動から推測される均衡為替レート」のモデルでは、財・サービス市場
においては、交易条件と「バラッサ=サミュエルソン効果」が実質実効為替レートの決定に
大きな影響を与えるということを意味している。
仮に、経済に存在する財とサービスがすべて貿易の対象になる貿易財であったとすると、
実質実効為替レートは、交易条件の逆数に等しい。交易条件は、「バラッサ=サミュエルソ
ン効果」とともに、財・サービス市場の均衡条件から決定されるものである。
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日経センターの計測結果では、「バラッサ=・サミュエルソン効果」は、均衡実質レート
に対して統計的に有意な影響を与えていない。貿易財と非貿易財の相対価格の代理変数とし
て消費者物価と生産者価格、または卸売価格の比率を採用していることも影響している可能
性がある。
しかし、同時に、日本の貿易相手国経済の発展段階が大きく異なることを考慮すれば、す
べての貿易相手国との間での貿易財と非貿易財の相対価格の格差、または生産性上昇率格差
が、一定の方向で日本の均衡レートに影響を与える可能性は低いであろう。貿易相手国の数
が増えれば増える程、バラッサ=サミュエルソン効果が均衡レートに与える効果は符号を含
めて曖昧なものになる可能性がある。
そこで、交易条件によって決定される実質実効為替レートが、財・サービス市場における
均衡レートを意味するとの仮定を置き、現実の実質実効為替レートの過大評価の度合いを計
測してみた。
日本は、他の貿易相手国と比べてエネルギーの対外依存度が極めて高い。企業の国際競争
力が問題になるのは、主として工業品であるとの想定の下では、エネルギー輸入の影響を除
いた輸入物価を用いた交易条件を対象とすることも十分に意味があると考えられる。
そこで、交易条件として、通常の輸出物価と輸入物価の比率をとった変数と、輸出物価と
エネルギー関連輸入を除いた輸入物価を用いた変数の二つのケースを計測した。
ところで、均衡レートの計測には多くの場合、初期時点の選択により計測結果が大きく異
なるという問題がある。現実に、2つの交易条件の逆数と実質実効為替レートの乖離幅は、
初期時点の値によって大きく変化する。この初期時点選択の恣意性を排除するために、計測
では1980年から2012年にかけての乖離幅の平均値からの乖離をもって、均衡からの
乖離として計算した。
通常の交易条件を用いた場合には、円の実質実効為替レートは3割程度割高ということに
なる。エネルギー輸入を除いた計測では、15%程度の過大評価ということになる(文末図
3参照)。
後者の結果は、日経センターの試算したBEERとほぼ同じである。興味深いことに、2
つの計測方法で結果が大きく乖離するようになるのは、2005年以降である。この時期以
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降、原油などの商品相場が金融資産化したことが影響している可能性がある。アメリカが強
い金融緩和策をとった場合、原油価格が敏感に反応するようになった結果であると考えられ
る。
この実質実効為替レートの均衡からの乖離幅を名目の円レートに直ちに換算することは、
正確な計算方法とはいえない。しかし、仮に1ドル=80円を出発点とし、15%の過大
評価を適用するとすれば、90円台前半が均衡に向けた円高是正の一つの目安になるであろ
う。
(日本経済研究センター 理事長)
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新井淳一の先を読む
安倍マジックの限界
将軍はいつも前回の戦争と戦おうとする。同様に政府は前回の景気後退と戦おうとする
(ロバート・スキデルスキー 何がケインズを復活させたか 日本経済新聞出版社)
ある国の首相が議会でこんな演説をしたことがある。「わが国は社会経済の基本的変化に
正面から立ち向かうのをあまりにも長い間、先のばししてきました。金融緩和と減税と財政
支出の拡大をすればそれだけで不況から脱出できると思っていたのです。はっきり申し上げ
てその選択肢はもはやないのです。残念ながらやりかたを変えないと、この国の余命はいく
ばくもない状態です」。
国民の前で「国の余命が尽きる」と率直に語ったのは英国の元首相ジェームズ・キャラハ
ン氏だ。1978年、長年にわたる英国経済の停滞、いわゆる英国病が最悪の状況にあった
時のことだ。それから1年もたたない間にサッチャー政権が誕生、規制緩和、民営化など矢
継ぎ早に構造改革を推進、連続20年を超える成長の時代を開いたことはよく知られている。
総選挙を経て自民党・公明党政権が誕生した。安倍首相の第一声がキャラハン演説のよう
であればうれしいのだが、残念ながら選挙戦での演説では、金融のさらなる緩和と公共事業
の拡大が中心で、構造改革にほとんど触れなかった。キャラハン氏が「このままでは余命い
くばくもない」といった道具立てを一段と大きな声で語ったに過ぎない。本当にこれでよい
のだろうか。将軍が前回の戦争と戦うように、自公政権は体質が変わってしまった日本経済
に相変わらず昔ながらの手を打とうとしているのではないか、という懸念がついて回るので
ある。
むろん、安倍政権が志向する超金融緩和や公共事業の推進が短期的には日本の景気に多少、
プラスになることは事実だろう。円安になれば輸出産業が息をつけるし、トンネルの天井崩
落事件に象徴される古ぼけた道路や港湾は安全対策が実施される。現に日経平均は安倍政権
の誕生をはやして大幅上昇だ。
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しかし、それだけで日本経済が抱える病根が全て解決するわけでない。少子高齢化、企業
の海外脱出、国債残高の増大、電機・機械・自動車などの日本を支えたリーディング産業の
疲弊、生産性の低いサービス業や農業の存在など、日本経済が抱える諸課題の解決には構造
対策を抜きにしては何もできない。金融の超緩和と公共事業の効能を頭から否定はしないが、
平行して日本経済の体質を根本から変える政策を実行しなければならない。それを欠くと結
果は国債残高の膨張だけが残り、逆に日本経済の危機の引き金を引くことになりかねないの
である。
この世で一番むずかしいのは、新しい考えを受け入れることではなく、古い考えを忘れるこ
とだ
(ジョン・メイナード・ケインズ)
リーマン・ショック以降の先進国経済に共通するのは、経済の体質が、需要をつければ回
復するケインズ型不況でなく、金融危機と公的債務危機の混在する新型不況であることだ。
ユーロ危機が典型だが、米国経済の立ち直りがいつになく遅いのも、金融機関の経営が健康
を取り戻していないからだ。日本の金融は米欧に比べれば問題は少なく、当面の日本経済を
新型不況というには異論もあろうが、日本国債のかなりの部分を日本の金融機関が持ってい
ることを考えれば、何かのきっかけで金利が上昇するだけで金融機関は大きな含み損を抱え
る。その意味では、日本も将来の新型不況の有力な候補者であり、欧州連合(EU)や米国
と同じ悩みを抱えていることは、確かだろう。
日本経済がケインズ型の需要不足に基づく不況なら安倍新首相の処方箋で十分である。し
かし、国家債務の大きさが危険なところまで来ていて財政の出動が極端に制限される新型不
況に対してはあまり効果があるとは思えない。ケインズ自身が言っているように「古い考え」
を捨てきれるかどうかなのである。仮にケインズがいま生きていたら、ひたすら需要をつけ
るだけの対策はやめるべきだというような気がする。少なくとも国債を増やす形で需要をつ
けるなら、長い目で見てそれがマイナスにならない方策を同時に実行する必要があるからだ。
新政権が実行する必要がある構造対策の第1は高齢世代と若者世代の税金や社会保障など
に関する世代間格差の是正だろう。明大世代間政策研の試算によると、厚生年金の生涯受け
取り総額から社会保険料の生涯支払い額を差し引くと、1940年生まれは3090万円の
受け取り超であるのに対し、2010年生まれは2840万円の支払い超だ。一生のうちに
政府に支払う税・社会保険料の総額と政府から受け取る社会保障給付や教育、公共事業から
の便益の総額比較に対象を広げると、2008年度の60歳以上世代が4000万円の受け
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取り超。一方、20歳未満世代のそれは8000万円の負担超だ。その差は1億2000万
円である。
世代から世代への移行を円滑に進めるのも国家の重要な役割と見れば、この格差を放置し
ておいてよいはずはない。しかも、これを放置すれば、社会保障の歳出膨張につながり、社
会保障制度の崩壊や国家債務の急増によるソブリンリスクを招く。新政権がいち早く手を打
たないといけないのは誰の目にも明らかである。昨年冬、米誌「ニューヨーカー」に載った
漫画の中で初老の男性が銀行の窓口でこう申し込む。「孫息子の未来を担保にローンを組み
たい」。生涯で1億2000万円の格差は言ってみればこの漫画の通りだろう。
第2は企業が日本のなかで円滑・自由に活動できる諸方策とでもいおうか。法人税の引き
下げから将来の成長分野である医療・介護などの産業を育てるための規制緩和、エネルギー
体制の確立、国内総生産(GDP)の7割を占めるサービス業の生産性向上などの諸々の戦
略の立て直しである。内需主導の大切さが言われてから随分な時がたつが、日本経済の体質
は基本的には自動車・電機、素材など輸出産業主導のままだ。グローバル経済に振り回され
る輸出だけでなく、これからは輸出と内需の2本足で行く必要がある。
第3は環太平洋経済連携協定(TPP)の加盟交渉の推進である。総選挙での自民党のT
PP戦略は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」というものだった。支持
基盤の農村票への配慮ということか、歯切れはよくなかったが、安倍総裁自身が「国益が守
られれば当然交渉する」と述べているように頭から参加反対ではない。「おコメは例外にで
きるという読みの裏返し」と自民党の本音を解釈する向きもあるが、それならば、まず交渉
参加をきちんと表明して欲しい。
TPPに入らなくても中韓との自由貿易協定(FTA)や東アジア中心に16カ国が参加
する地域包括的経済連携協定(RCEP)で交渉すればよいとの意見もあるが、中韓などア
ジアの国が日本との交渉に同意したのは、日本がTPP交渉に参加すると見たからである。
TPPに入らない日本なら魅力はないと肝心の中韓FTA交渉などが進まなくなる恐れがあ
るのである。
今年、話題の本に英エコノミストの「2050年の世界」(文芸春秋社)がある。その中
にこんな下りがある。「2050年の国家の姿は老齢の有権者が政治的影響力に乗じて勝手
なまねをするという悲観的な見方もある。もし、そうなれば悪夢のような未来が現実になる。
だが、投票は私益のみを目的とするものではないし、老齢者も常に子孫と未来に心を配るだ
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ろう。改革がなぜ必要かを政治家が説明できれば、2050年の国家はより機動力のある適
応性の富んだものになるだろう」。
そう、政治家が説明できれば、なのである。衆院選は自民党の圧勝に終わった。参院で否
定された法案を覆すことが可能な3分の2のポストの確保。文字通りの大勝である。だが、
圧倒的な勝利には圧倒的な責務が伴うのも政治の世界の常識である。構造政策は未来への投
資でもある。未来への投資を恐れた国が栄えた験しはない。要は新政権が改革を説明できれ
ば違った日本が生まれるのである。にもかかわらず、来年夏の参院選が念頭にあって無難な
運営に終始すれば、日本は改革ができない国と海外からレッテルを張られてしまう。勝ち方
が見事だったのだ。金融と公共事業だけで日本の株価をつり上げる、いってみれば安倍マジ
ックというところだが、当然のことながらそれだけでは限界がある。
(日本経済研究センター研究顧問)
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竹中平蔵のポリシー・スクール
選挙のメッセージと新政権
総選挙が終わった。今回、事前の世論調査で自民党の大勝、民主党の大敗が見込まれてい
たが、結果はまさにこうした予想が見事なほどに的中した結果になった。一方、第三極の成
果について、評価はやや分かれるようだ。当初、維新の会の大躍進を予想する調査が続き、
その後これが後退していたが、結果は日本維新の会が54議席、みんなの党が18議席――。
維新の会に関しては、比例票で民主党を上回っており、国政進出を果たした政党の初の選挙
としては大きな成果ということもできる。
選挙を受けて安倍新政権が発足するが、選挙で示された国民のメッセージをどのように受
け止め、新政権は当面何を目指すべきなのか、考えたい。
世論調査の功罪
本論に入る前に、選挙の世論調査に関し一点指摘しておきたい。最近は内閣や政党の支持
率に関する世論調査が頻繁に行われる。利用する有権者としては大変利便性が高いと感じる
が、一方で弊害もある。それは、「期待は自己実現する」というメカニズムが働くからだ。
経済でも、「期待」が形成されるとその期待の下に企業や個人が行動するため、結果的に期
待された結果が実現してしまうことがある。選挙においても、一旦「この政党が勝つ」とい
う調査が出れば、自分の票を「死に票」にしないために勝ちそうな政党に票が集まる。内閣
支持率も、他人が支持していないなら自分もしない、という行動がとられる。従って、何ら
かのバイアスがかかった調査が先に示されると、それが世論を作ってしまう可能性が否定で
きないのだ。
実は今もっとも頻繁に行われ利用されている政党支持率調査は、某テレビ局の首都圏電話
調査で、毎週発表されている。確かに便利な面もあるが、対象が首都圏に限定され、かつ固
定電話に出られる人のみを対象にしており、社会全体の動向を住めるサンプルとは言い難い。
また他の調査についても、質問の設定によって結果が多様に変化することが知られている。
18
2013年01月号
従って、そもそもこのようなアンケート調査については、それを実施する側にそれなりの慎
重さが求められるのだ。
新内閣の下でも、すぐに内閣支持率の調査が行われ、それが大きな影響力を持つことにな
る。言うまでもなく民主主義である以上、内閣は国民の支持動向を重視しなければならない。
しかしそれが、偏向した形で活用されてはならないだろう。
アーリー・サクセス
さて、選挙結果のメッセージをどう読むか、という本題に戻ろう。自民党は大勝したが、
一方で自民党が積極的に支持されたわけではないことが分かる。比例票の得票を見ると、自
民党は1662万票。これは日本維新の会1226万、民主963万と比べて断トツに高い
数字ではない。それでも自公両党で議席の3分の2を確保した理由として、次の3点があげ
られよう。
①全国に政治基盤を持つのは自民・民主のみであり、国民は結局その中で選択を行わざるを
得ない
②2大政党制を前提とした小選挙区では、民主が負ければ自民が勝つ(前回はその逆だった)
という結果をもたらす
③小政党が乱立したため、第三極の得票が分散した
安倍政権は熱気の中でスタートするが、半年後には参院選挙が控えている。そこで大きな
勝利を収めない限り衆参のねじれが続き、安定した政権基盤を作ることはできない。しかし、
先に述べたような世論調査は、今後も頻繁に行われることになるだろう。政府与党は、必ず
しも積極的に支持されてはいない今の状況を少しでも改善し、せめて悪化させずに半年後の
選挙を迎えることが必要だ。しかしそのためには、相当の努力が求められるだろう。最大の
ポイントは、政権としての「アーリー・サクセス」(早い時期に成功事例を作ること)を実
現できるかどうかだ。
一般に、政策が決定されそれが効果を生むためには、相当の期間を要する。大きな法律改
正マターなら2年は必要だし、予算は1年、他の場合も最低半年の期間が要るだろう。こう
したなかで、実は短期に効果が期待できるものが2点ある。
19
2013年01月号
第一は、人々の期待に働きかけることだ。期待の重要性は世論調査に関しても述べたが、
国民や市場関係者が「これで今後は良くなる」という期待を形成できれば、それを先取りし
た経済行動が展開され、早い時期に成果が表れることが可能になる。この点で、人事は極め
て重要だ。国民から見て評価の高い人材を登用すれば、それが内閣のパフォーマンスに関す
る高い期待をもたらす。その意味で、閣僚などの人事は大きなメッセージ性を持つ。
第二は、政府の複雑な手続きを要さない政策を実施すること。その典型は、金融政策だろ
う。そもそも多くの国で政府から中央銀行を切り離しているのは、金融には高い専門性が求
められること、金融の意思決定は瞬時に行われねばならないこと、という理由に基づく。
このように見てゆくと、選挙の期間中から安倍自民党総裁が金融緩和を強く求めたこと、
しかも物価目標の設定を掲げたことは、新政権のアーリー・サクセスを演出する戦略として、
極めて理に叶っていることがわかる。物価目標の最大のポイントは、そもそも政府・中央銀
行の強い意志を示すことによって人々の期待に働きかける作用がある(P.クルーグマンに
よる)点にある。
もちろん、金融政策が安易に政治に影響されてはならない。政策手段をどのように選択す
るか、これこそは金融専門家としての中央銀行に委ねられねばならない(いわゆる手段の独
立性)。
各国中央銀行の独立性を様々な要素を勘案し指標化したFry氏*の研究によれば、日銀
は世界のなかで見ても相当に独立性の高い中央銀行とされている。その日銀が、自ら積極的
な政策行動を回避し続けたのちに、政府の強い声に屈する形で金融緩和し、さらに物価目標
を検討するという姿を示したことを、Fry氏はどのように見るのだろうか。 *Fry, M. J. (1990) "Can a Central Bank Be
come Insolvent?" mimeo. Fiscal Affairs De
p. IMF.
(日本経済研究センター 研究顧問)
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2013年01月号
小峰隆夫の地域から見る日本経済
海士町を行く(中)―人口定着には教育
が重要
前回に引き続いて、島根県隠岐の海士町(あまちょう)の話である。前回は、海士町の成
功要因として、第1に、山内現町長のリーダーシップ、第2に、財政的に追い詰められた切
迫感、第3に、冷凍システムCAS(キャス、Cell Alive System)に象
徴される最新技術の導入という三つを指摘した。今回これに付け加えるのは「人」である。
「よそ者」の力
「人」の力を考えるとき、現地の人々の力が最も重要であることは言うまでもない。しか
し、外の人、いわゆる「よそ者」の力が重要であることも間違いない。この点、海士町には
Iターン者(地域とは無縁の移住者)が多いという特徴がある。
このよそ者が生み出す効果は大きい。海士町では、よそ者の力によって、島にそれまで存
在していたものに新たに光が当てられ、ブランド化して成長産業になるという例がいくつも
出ている。
例えば、海士町には「商品開発研修生」という制度がある。これは、町が月5万円の給与
と家賃1万円の住宅を提供して、島外の人を募集し、「よそ者」の視点で特産品の開発やコ
ミュニティ作りに挑戦してもらうという制度だ。この中から生まれたヒット商品の第1弾が
「島じゃ常識『さざえカレー』」である。それまで島で日常的に食されていたさざえ入りの
カレーを商品化したものだが、かなりのヒットとなり、2012年度の売り上げ目標は30
00万円だという。
同じようなヒット商品が「岩がき」である。これは脱サラしてIターンで海士町にやって
きたSさんのアイデアによるものだ。Sさん夫婦は、当初ダイビング・ショップを経営して
いたのだが、隣の島が岩がきの養殖に成功したという話を耳にし、「この島でも出来るので
21
2013年01月号
はないか」と考えて、97年から養殖事業を始めた。
Sさんたちは生産だけでなく、販売にも力を入れた。首都圏のレストランや料亭に的を絞
り営業活動を展開した。この間相当の苦労があったようだが、次第に出荷が増え、2000
年に4万個だった出荷量は、間もなく50万個に達するという。「春香」というブランドで、
2012年度の売り上げ目標は7000万円である。
そして、この岩がきの産地と消費地を結ぶのに大きな力を発揮したのが前回紹介したCA
Sという冷凍システムである。
要するに、現地の人の目から見ると、特に大きな価値を見出せないような地域資源でも、
外の人の目から見ると魅力的なものに映るということである。こうした「外の目から見た地
域資源の発見」という効果は、観光地でもしばしば起きることである。特に、海外からの観
光客が地域資源を発見する例が目立つ。例えば、北海道のニセコは、オーストラリア人によ
ってそのすばらしさが伝えられ、今では外国人用のコンドミニアムが建設され、地元倶知安
町は、全国一の地価上昇率を記録するほどになった。オーストラリアは地球の裏側なので、
オーストラリアの人々からすると「夏にスキーが楽しめる」地として魅力的だったことも大
きな要因だったようだ。
高校の維持に力を注ぐ
Iターン者の受け入れは「入ってくる人」を増やそうという作戦である。地域活性化のた
めには、もう一つ「出て行く人」を減らすことも必要となる。
ここでも海士町は、高校を維持するという面で大きな成果を上げている。離島に限らず、
過疎が進む地域では、高校進学が地元を離れる大きな契機になりやすい。普通、小学校、中
学校は地元に通うことが出来るが、地元に高校がない場合、どうしても遠隔地の高校に通わ
ざるを得なくなり、この時点で親元を離れることになる。その後、大学でさらに遠くに行っ
てしまうという構図になりやすい。
残念ながら教育には「規模の経済性」が強く作用する。すなわち、学校経営を維持するた
めには、ある程度の生徒の集積がなければならない。生徒が少ないと、生徒1人当たりの先
生の数が多くなり、生徒1人当たりの設備も割高になるからだ。
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2013年01月号
すると、せめて地元の高校を維持することが人口流出を防ぐ上で、極めて重要な鍵となる。
海士町がある島前(どうぜん)地区(三つの島からなる地区)にある高校は島前高校一つだ
けなのだが、少子化の進展により、この高校の存続が危なくなってきた。1997年には7
7人だった入学者の数は、2008年には28人にまで減少した。このまま減っていき、入
学者が2年連続で20人以下になると、統廃合の対象になってしまう。
唯一の高校がなくなると、高校進学のためには島外に出て行くしかない。子供が出て行く
と、親もついでに見切りをつけて移住してしまう可能性もある。Iターンの人も、子どもの
教育機会が心配で、来なくなるかもしれない。こうした危機感に駆られて、海士町では島前
高校の魅力度アップに取り組み始めた。
具体的には、高校に地域づくりのリーダーを養成する「地域創造コース」と少人数指導で
難関大学進学を目指す「特別進学コース」を設けたり、学習支援のために公営の塾を設けた
り、全国から生徒を集めるため、寮費や食費の補助が付いた「島留学」制度などを始めた。
こうした努力の結果、入学志願者数は県外からの応募者も含めて59人にまで増加した。
そして、それまで1学級50人だった募集定員は、2012年度から2学級80人となった。
少子化が進行する離島において、高校の定員が増えるのは極めて珍しいことである。
前回紹介した山内町長は、我々とのインタビューで、「島外の応募者が増えて、肝心の島
内の子供が入れないようなことになったら心配だ」とさえ漏らしていた。
(日本経済研究センター 研究顧問)
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大竹文雄の経済脳を鍛える
損失回避と財政破綻
財政破綻の危機感がなくなった?
衆議院選挙の政策論議を見ていても、日本の財政についての危機感はあまり感じられない。
実のところ、消費税の増税が決まって、日本の財政問題は解決すると思っている人が多いの
ではないだろうか。むしろ、増税しなくても、景気さえ回復すれば、やっていけるのではな
いか、と思っている人が多いように思える。そういう国民の声を反映してか、衆議院選挙に
おいても、消費税増税をやめて景気対策を重視すべきだという議論もなされた。しかし、実
際のところ、日本の公的債務は莫大なものになっていて、消費税が10%に増税されたとこ
ろで、公的債務を解消するには程遠いことはあまり認識されていない。
日本の政府債務の対GDP比率は214%もある。公的債務の対GDP比率が拡大しない
ためには、少なくとも、国債の償還や利払い以外の政府支出額(政策的経費)が税収額より
も小さくなっている必要がある。この税収額と政策的経費の差がプライマリーバランスと呼
ばれるものだ。金利と経済成長率が等しければ、プライマリーバランスがゼロの場合で、公
的債務の対GDP比率は一定になる。ところが、2011年のプライマリーバランスの対G
DP比は約7%の赤字である。政府の予測によれば、2016年度でも2.8%の赤字が残
るとされている。つまり、今後も日本の政府債務の対GDP比率は上昇を続けていくという
ことだ。
低い国債金利
債務危機に陥ったギリシャでも公的債務の対GDP比は約170%、イタリアは約120
%である。日本はそれよりも高い債務比率にあるのだ。ところが、私たち日本人は、財政状
況が悪化していることを実感することはない。だからこそ、日本人は国債を安心して買って
いる。私たち一人一人が国債を買っているという実感がなくても、日本の金融機関は資金の
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2013年01月号
運用先として大量に国債を購入しているのである。金融機関に国債購入意欲があるために、
国債金利は1%よりも低い水準で推移している(文末図1参照)。つまり、1%以下という
低い金利であっても日本の国債はほぼ確実に償還してもらえるという確信があるから、日本
の金融機関が購入するのである。そのような日本の金融機関に安心してお金を預けているの
が、私たち日本人である。日本の財政は破綻しないことを私たちが確信しているからこそ、
国は低金利で国債が発行できるのである。
低金利だから安心なのか?
では、低金利で国債が発行できているということは、財政が破綻しないということの証拠
になるのだろうか。「財政が破綻しないと人々が信じているから低金利で国債が発行される」
ということと、「低金利で国債が人々に購入されているから財政が破綻しない」ということ
とは違う。人々の財政破綻の可能性に対する予想が正しく、国債金利が低ければ、財政破綻
の可能性が低いということになるが、現時点での人々の予想が正しくても、新たな情報が入
って来ればその予想が変わることも多い。
図2(文末参照)に、ユーロ圏の国の中で財政危機が伝えられる国について、最近の国債
金利の推移を示した。
この図でわかることは、ギリシャの財政赤字に関する統計が真実でなかったことが発覚し
た2009年10月以前は、どの国の国債金利も5%程度であったということだ。財政危機
が発覚してから国債の金利は上昇しはじめ、2012年3月2日は、37.1%という水準
にまで上昇した。イタリアについては、財政状況に大きな変化がなかったにも関わらず、2
011年11月には7.26%まで国債金利が上昇した。同じような財政赤字の水準であっ
たとしても、将来の国債の償還可能性について疑問が発生すれば、国債の金利はその時点で
上昇を始める。国債の金利の上昇というのは、国債の市場価値の下落を意味する。
財政破綻が生じた国について膨大な歴史的データを集めて分析したラインハートとロゴフ
の『国家は破綻する』という本によれば、財政破綻をインフレによって解消した国では、財
政破綻によるインフレの発生が始まるのは、実際に財政が破綻する1年半ほど前からにすぎ
ないとされている。
25
2013年01月号
国債金利の動きや、インフレと財政破綻の分析からわかることは、現在インフレがなく、
国債金利が低いからと言って、5年先、10年先に財政が破綻する可能性がないとは言えな
いということだ。
現在の日本の国債金利が低いのは、次のいずれかの理由からだろう。
第一に、国際的にみると日本の租税負担率が低いので、まだまだ増税の余地があると信じ
られている。第二に、将来財政支出の削減が行われると信じられている。第三に、経済成長
がおこり、現在と同じ税率であっても税収そのものが増えると信じられている。おそらく、
第一と第二の理由が大きなものだと考えられる。このような期待に基づいているわけなので、
その期待が裏切られる情報が入れば、国債の金利は上昇する可能性が高い。
しばしば、日本はギリシャと違って、国債を保有しているのが日本人なので、ギリシャの
ような財政破綻は生じないと言われる。しかし、現在国債を保有している日本人が、日本政
府の国債償還力に疑いを持ち始めれば、国債以外の資産をもつことになる。国債を売却して、
外国の株式や国債を持ち始めれば、日本の国債の金利が高騰して、価格が下落することは同
じである。
資産価格というのは、将来の収益の予測から成り立っているので、その予測が明日になっ
て変わってしまえば、明日の資産価格は大きく変化する。国債もまったく同じである。将来
の日本の財政状況が改善しそうにないという予想が、明日から広まれば、その時になって財
政破綻がリアリティをもって感じられるようになる。しかし、それでは大きな経済危機を防
ぐには遅すぎるのではないだろうか。
損失回避と財政破綻
客観的にみれば、日本の財政は、人々がいつ財政破綻の可能性を信じ始めて、破綻状態に
陥ってもおかしくない状態にある。それにも関わらず、私たちは、債務返済にまじめに取り
組もうとしないのはどうしてだろうか。これは、行動経済学で知られている損失回避で説明
できるように思う。損失回避とは、損失による価値の減少を、利得による価値の上昇よりも、
人々は非常に大きく感じることを言う。
そのため、人々は次のような行動をとってしまう。少しの損失を確実に被る選択肢と、現
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2013年01月号
状を維持できる可能性もあるけれど大きな損失を被る可能性もあるという選択肢に直面した
人を考えよう。多くの人は、確実に損失を被るという選択肢を避けて、現状を維持できる可
能性があるギャンブルに賭けてしまうのだ。
具体的には、次のような選択課題だ。2万円をもらった人が、
「そのまま、2万円を手に入れることができるか、それとも2万円を返却するのかを決める
半々の確率のくじを引いてください。でも、1万円払ってもらえれば、そのくじを引かなく
ていいですよ。」と言われた場合である。
最初から考えると、1万円払っても手元に1万円残るので、十分に得なはずだ。しかし、
多くの人々は、2万円を一旦手にしたら、それを失いたくなくなってしまうので、現状を維
持できる可能性を狙って、ギャンブルをしてしまう。現在の日本もそれに近いのではないだ
ろうか。一旦に手に入れた低い税率の暮らしを守るために、将来の経済成長というギャンブ
ルをしようとしているように見える。
こうした損失回避行動は、生物学的にも説明がつくように思う。損失局面で、現状を維持
できる可能性に賭けないで、確実に損失を被る方を全員が選ぶ生物がいたとしたら、その種
は環境の変化によって全員が滅亡する可能性がある。しかし、現場維持の可能性があるギャ
ンブルを選んでいたとすれば、大きな損失を被って生存できない個体もいれば、ギャンブル
に成功して生存できる個体もいる。そうすれば、損失回避の選択をした種は、生物としては、
生存し続けることが可能である。
財政破綻についても、このような危機に直面した場合に、損失回避の特性によって、将来
の経済成長を信じて低税率、高歳出を続けるというギャンブルをすれば、それで成功する国
もあれば、失敗して滅亡する国もある。人類としては生き残りに成功する。確かに、生物と
して人間をみれば、それでいいのかもしれないが、そういう覚悟が私たちにできているのだ
ろうか。
(日本経済研究センター 研究顧問)
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齋藤潤の経済バーズアイ
知的財産権なきイノベーション
経済成長を持続するためには、イノベーションが重要であることは言うまでもありません。
シュムペーターがその意義を強調したことはつとに有名です。その他にも、例えば産業組織
論で有名なボーモールは、イノベーションを連続的に生み出すからこそ、資本主義は「成長
マシーン」になったと論じています。では、そのイノベーションを連続的に引き出すために
は、何が必要なのでしょうか。
【イノベーション促進策としての知的財産逳】
現在の模範解答となっているのは、知的財産権を確立するということです。イノベーショ
ンには多額の研究開発投資が必要であるにもかかわらず、それが生み出す新しい知識には競
合性がないので、何か工夫をしないと、誰でもそれを対価なしで利用でき、イノベーション
を行うインセンティブがなくなってしまいます。
そこで、新しい知識に知的財産権を与えることにより、一定期間独占的にその知識を利用
し、費用を回収できるようにするというわけです。確かに、理屈にはかなっており、そのこ
とをもってイギリスで産業革命が起きたことを説明しようとする試みもあります。
しかし、考えてみると、独占的な権利を与えることには問題があるというのがミクロ経済
学の教えるところです。それによって社会的な厚生が損なわれているはずです。それは分か
っていても、イノベーションのもたらす長期的な利益を重視して、「必要悪」として知的財
産権を認めるというのが、模範解答の考え方です。
【知的財産逳なきイノベーション】
近年、このような考え方に挑戦するような考え方が出てきています。例えば、知識を独占
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2013年01月号
することを認めることの弊害が大きいということを強調する考え方の登場です(Mache
le Boldrin and David K. Levin)。例えば、ジェームス・
ワットは、1769年に蒸気機関に関する特許を取得した後、その延長に奔走し、ライバル
のイノベーションを妨害したとのことです。この立場からは、ワットの特許が切れて初めて
この分野での新しい発明が次々と出てくるようになったことが、特許の問題点を示している
ということになります。
もし知的財産権に頼らないとすると、どうすればいいのでしょうか。発明に対する「賞金」
でもいいのではないかという考え方もあり得ます。確かに、ノーベル賞のような賞金付きの
賞を、発明に対してもっとタイムリーに出せれば、それは誘因になるはずです。もっとも、
発明をどう評価するか、その賞金の額はどう決めるのか、その財源はどう調達するのか、と
いった問題があることも事実ですが。
しかし、実は、その賞金も無用であったという事実が、経済史の中から掘り起こされつつ
あります。
まず、特許をとらない発明が非常に多くあったという事実です。確かに、コカコーラの例
が示すように、特許をとれば製法を公開しなければならないので、企業秘密にとどめること
はありそうなことです。しかし、このことを示すデータはなかなかなかったのですが、19
世紀の世界博覧会のカタログを調べ、出品されたもののなかで、特許をとったのはごく一部
だったということが明らかにされました(Petra Moser)。それによると、18
51年にロンドン・水晶宮で開催された世界博覧会では、出品された発明品の89%が特許
を取っていなかったそうです。もしこれが一般化できるとすれば、特許がイノベーションを
引き起こすということは簡単には言えないことになります。
これ以外の事実も、掘り起こされています。19世紀前半の英国コーンウォール地方では、
揚水エンジンについて、開発者が自らの工夫を公開し合い、協力しながら、改良をしていっ
たという事実があったことが分かってきました(Alessandro Nuvolari)。
19世紀半ばの英国クリーブランド地方でも、溶鉱炉の改良に際して、同様のことがあった
ようです。このように、多くの人たちの共同作業としての「集団的発明」(Robert C. Allen)という行為が認められるのです。
実は、このような事例は、昔だけの話ではありません。最近においてもその例をみること
ができます。Linuxというプログラムは、ソース・コードを公開し、それをもとに多く
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2013年01月号
のプログラマーが知恵を出し合い、発展をとげたものです。彼らは、報酬を受け取ることを
前提にしておらず、その成果としてのプログラムも多くの場合、無料で公開されています。
これは特許をとることなく行われた例ですが、さらにこの方向性を発展させ、特許をとった
上で、そのライセンスにソース・コードの公開等を義務付けるという「コピーライト」なら
ぬ「コピーレフト」運動もあります(iPS細胞の特許にこれを適用したら、どのような効
果があることでしょうか)。
このような、「オープン・ソース・イノベーション」は、これまでの知的財産権の有効性
の議論を超えたイノベーションだと言えます。
【イノベーションをもたらす環境:再考】
知的財産権を前提としない、このようなイノベーションをどのように考えればいいのでし
ょうか。一見経済的な利益とは無縁のように見えるため、どうしてそのようなイノベーショ
ンが起こるかが大いなる謎となります。果たして、このようなイノベーションは、利他的な
精神から生まれてくるものなのか、一部の「小さな努力の積み重ね型」分野だからこそ可能
なものなのか、これ以外の産業一般でも期待できるようなものなのか。
一つの可能性は、知的財産権とは無縁のところで、経済的な利益が生じている可能性です。
コーンウォールやクリーブランドの場合、鉱山所有者は複数の鉱山に関する権益を有してい
たので、地域全体としての生産性の向上を期待していたこと、それによって鉱山の埋蔵量の
価値が引き上げられたという効果もあったこと、などが誘因となっていたと推測されていま
す。また、「オープン・ソース・イノベーション」の場合も、プログラマーはそこで名声を
得て、それによって有利な雇用機会を得ることができたようですし、大企業の方も、それに
よって周辺事業で利益を上げることができたということがあったようです。
もし、そうだとすると、知的財産権は一つの形態であって、それ以外の形態も含め、イノ
ベーションによって経済的な利益が得られることこそが大事だということになります。その
ような状況は、自由な活動が許され、知恵や工夫を生かす場が保証されて初めて実現される
ことになるはずです。技術の内容の変化などを踏まえながら、イノベーションを促進するた
めの政策も、より広範に、よりダイナミックに考える必要があるように思います。
(日本経済研究センター研究顧問)
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2013年01月号
小島明のGlobal Watch
ローマ・クラブ『成長の限界』から40
年
ワシントンDCの無名の出版社からローマ・クラブの報告書『成長の限界』が薄っぺらな
ペーパーバックで出版されたのは1972年3月のこと。それからちょうど40年にあたる
2012年1月にルーマニアのブカレストで開かれたローマ・クラブ総会は、過去40年の
クラブの歩みを総括するとともに「次の40年」の課題を議論した。
ローマ・クラブは1970年に設立された民間組織で、世界各国の科学者、経済学者、政
策立案者、教育者や企業経営者などで構成し、公害、環境破壊、貧困、天然資源の枯渇化な
ど人類が直面する脅威を緩和、回避することを目的に、その方法を探り、解決策の実現のた
めに研究、啓蒙活動をしている。1968年に最初の会合をローマで開催したのでこの名前
となったが、スイス法人である。
ある年代以上の人には昔懐かしいグループだが、いまでも新たな問題に挑戦しながら活動
を続けている。日本は日本経済研究センターの理事長だった故大来佐武郎氏らがメンバーと
して活躍した時期があるが、近年は日本での動きは低調だった。しかし、ローマ・クラブ本
部の働きかけもあり、2012年に各界有志により同クラブの日本支部を設置し、日本の活
動が再開された。筆者もコア委員会のメンバーに加わり、2012年10月ブカレスト総会
に参加した。
『成長の限界』報告が発表されると、世界の産業界から抗議と非難の声を受け、ゼロ成長
論グループ、反成長のグループだとのレッテルを貼られたが、同クラブは反成長の原理主義
ではなく成長の「質」、あり方に問題があるとし、様々な提言を行ってきた。
現在も変わらぬ基本的な問題認識は、人類による地球、自然への負荷は、経済活動のあり
方を変えないかぎり地球が吸収できる限度を超えてしまうということである。『成長の限界』
報告の翌年、1973年に石油危機が発生したことから、ローマ・クラブへの世界的な注目
度が一気に高まった。1992年に改訂版『限界を超えて』、2004年にシリーズ3作目
32
2013年01月号
で30年後の改訂版『成長の限界:30年後』を刊行し、40年目の2012年に“205
2:A Global Forecast for the Next Forty Ye
ars”が発表された。
40周年総会での新たな議論
ブカレスト総会では40年前の『成長の限界』の共著者であるヨルゲン・ランダースが執
筆した“2052”報告、A・ウィクマンによる”Bankrupting Nature
”、 B・リーター著“Money and Sustainability”というロー
マ・クラブの新しい3つの報告を中心に議論が展開された。
再三言及され強調されたことは、資本主義経済・市場経済と民主主義政治における短期指
向(short−termism)の克服であり、それと関連したグローバルなガバナンス
の改善・強化だった。short−termismという言葉は、米国においてリーマン・
ショックをきっかけとした金融偏重の経済への批判、目先の利益ばかり追求する金融業、そ
の象徴としてのウォール街への抗議デモのなかでしきりと言及されてきた。
“Money and Sustainability”報告について40年前に『成長
の限界』報告の共著者であるデニス・メドウズはこんな指摘をしている。「この報告に接す
るまで、私は金融システムのことをほとんど考えなかった。なぜなら、金融システムは中立
的であり、人間社会にとって不可欠な制度であり、あたり前のものと思っていたからだ。し
かし、いまは全く異なった見方をするようになった。現行の金融システムは5つの面でsu
stainability とは相容れないものだと思う。つまり、現行の金融システムは
過度な景気変動をもたらし、目先指向を生み、不断の成長を必要とし、富の集中と社会資本
の破壊をもたらす」。
国際通貨基金(IMF)によると、1970−2010年に銀行危機が145回、金融危
機が208回、政府債務危機が72回と、年平均10回以上のシステミックな危機があり、
IMF加盟国の4分の3を超える国々が被害を受け、多くの国が数回にわたって危機に見舞
われてきた―との指摘があった。
こうした観点から、「金融システムの改革だけで危機が回避されるわけではないが、他の
様々な危機回避策の前提条件として金融システムを見直す必要がある」との声が多かった。
33
2013年01月号
今回のブカレスト総会はルーマニア中央銀行が会場となり、総会締めくくりの晩餐会も同
中央銀行の大広間で行われた。また、同中央銀行のM・イザクレスク総裁が特別講演し、欧
州の政府債務危機、金融危機について論じ、金融制度における不完全な規制を総点検する必
要があると強調した。
新しい経済絍の構築
ローマ・クラブは地球の危機回避への対応策としてゼロ成長、あるいは反成長の発想を退
けている。「De−growthでは問題は解決しない。成長の質が重要であり、国内総生
産(GDP)で物事を考える発想を転換する必要がある」という見方である。
ブカレスト総会に向けて用意されたバックグラウンド資料には”Towards a N
ew Economy―What is Needed? ”と題する作業グループ報告が
加えられていた。
そこでは、現在の経済学が時代遅れであり、現実の課題に対応できないでいるとし、その
理由が現在の経済学の思考そのものにあると批判している。報告はまた、「3つの分断」(
triple divorce)、つまり①生産と雇用の分断の拡大②金融と実体経済の分
断、それと③economyとecologyの分断―が問題だと指摘している。
報告はこう論じている。「新しい経済学は原理主義者のドグマではなく、理性的な思考に
より構築されなければならない。市場は効率的だとする新自由主義哲学はジャングルの法則
の別名でしかない。目指すべき経済学は数学的な厳密さではなく、人類の福祉である。現在
の経済学はともかく成長は望ましく、あらゆる形の成長も望ましいとする間違った会計シス
テムに基づいている。現在の会計基準では、戦争、汚染、犯罪、石油価格上昇、テロ、伝染
病、自然災害、水資源不足、森林破壊といったものの経済的な利益と、栄養状況の改善、住
宅、教育、保健、社会の調和などを向上させようとする活動と同列に扱っている。ボトルに
入った水に毎年600億ドルを支出する今の世界が本当に豊かさを増進した世界なのか」「
雇用も急を要する優先課題である。人的資本は使用されないままでいると急速に劣化してし
まう“なまもの”である。人的資本の未利用は膨大な社会的コストとなり、平和と社会の安
定にとって、一国においても、グローバルなレベルにおいても重大な脅威となる。この問題
に速やかに対応することによってのみ、深刻な環境問題に人々の関心を向けさせることがは
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2013年01月号
じめて可能になる。金融危機にメディアの関心は向いているが、それだけでなく雇用問題に
も目を向けるべきだ。失業の増大こそが最大のかつ直近の危機である」。
フォーリン・アフェアーズ誌のローマ・クラブ批判論文
米国の有力外交誌、フォーリン・アフェアーズ誌2012年7/8月号に強烈なローマ・
クラブ批判の論文が載った。”Environmental Alarmism, The
n and Now: The Club of Rome’s Problem−and
Ours”と題する論文で、『成長の限界』報告40周年にぶつけた刺激的な論文である。
筆者はボジョーン・ロンボーグというデンマークのコペンハーゲン・ビジネス・スクール
の准教授で、気候変動問題では懐疑論をぶってきた一匹狼的と言われるデンマーク人学者で
ある。同氏はこの論文で、ローマ・クラブが警告した資源の枯渇もなく、資源の面からも、
その他の面からも「成長の限界を迎えることはなかった。ローマ・クラブの『成長の限界』
報告はいたずらに世界に恐怖心をもたらしただけであり、現実に起こったことは同報告の予
測とは全く違っている」と論じている。
同氏はまたローマ・クラブ報告の予測が外れたのは人間の創意工夫、イノベーション能力
を軽視したためであると指摘している。
指摘されるようにイノベーションは極めて重要である。現在の世界経済・社会はさまざま
な難しい問題を抱えている。地球環境問題、格差問題、失業、とりわけ若者の失業問題等々。
日本だけが経済停滞や若者雇用の問題を抱えているわけではない。ノーベル経済学賞受賞者
であるジョセフ・E・スティグリッツ米コロンビア大学教授は新著”The Price of Inequality”(邦訳『世界の99%を貧困にする経済』)で格差、富の極
端な集中、不平等の蔓延など現状を激しく糾弾している。
とりわけ、リーマン・ショックを象徴とする金融の暴走は米国式“金融資本主義”の限界
だとする議論も引き起こしている。そこでの本質的な問題は、ローマ・クラブが議論してい
る短期指向であり短期的な思考である。つまりshort−termismの問題である。
この点、1997年のアジア金融危機に際して、ヘッジファンドで稼ぎまくり、マレーシ
アのマハティール元首相から「諸悪の根源」呼ばわりされたジョージ・ソロス氏が短期指向
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2013年01月号
の金融に問題あり、と声高に議論し、対応策として金融を規制するべきだと主張したことを
思い起こす。彼がアジア危機の翌年、1998年に出版した著作は、「金融市場は実体経済
から切断され、理論的な均衡点からいくらでも乖離し、実体経済を振り回す」という本質的
な欠陥があると論じた。
金融資本主義の膨張は1990年代以降、顕著な現象となってきたが、その新しい現実に
対応した経済学が生まれていないことが今日の世界経済の問題だとも言えよう。
ローマ・クラブは、そうした経済の変化、時代環境の変化に即応する格好で、新しい視点
を提示し、世界的な規模での論議を活発化させようとしているようである。
そんなことをブカレスト総会に参加して感じるとともに、日本においては政権がくるくる
変わるばかりで本質的な構造改革ができず、課題を将来世代に先送りするだけであること、
活発な世界の議論に日本がしっかり参加しておらず、内向き指向を強めていることに強い懸
念を感じた次第である。 (日本経済研究センター参与)
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2013年01月号
深尾光洋の金融経済を読み解く
日銀の独立性と安倍自民党総裁
安倍自民党総裁による日銀への圧力
2012年12月23日付の日経新聞電子版によれば、自民党の安倍晋三総裁はテレビ番
組で、日銀が次回の金融政策決定会合でインフレターゲットの設定を見送れば、日銀法改正
に踏み切る可能性に言及し、設定されなければ日銀法を改正してでもインフレターゲットを
設けると述べた。さらに、日銀が物価の安定だけでなく、雇用の拡大も金融政策の運営目標
に位置づけるべきだとの見解を示した。これは、一定期間内に2%程度のインフレ率と雇用
の改善を達成できない場合には、将来その責任を日銀に負わせることを意味する。
日銀は日本経済にとって重要な金融政策を運営する組織であり、その幹部には金融政策を
一定の目標に沿って運営する権限を持つと同時に、その政策のパフォーマンスに対して責任
を負うのは当然である。しかし今回の安倍総裁による日銀に対する、恫喝に近い圧力のかけ
方には、重大な問題があると考える。
日本銀行の独立性の背景
安倍総裁の発言は、従来の政府と日銀の間の慣行からみると、相当強引なやり方だとの印
象を禁じ得ない。選挙の時期に強い影響を受ける政治から中央銀行による金融政策運営をあ
る程度独立させることで、選挙のタイミングによる金融政策の大きなブレを避ける制度にし
ておくことは、先進諸国が過去の苦い経験から学んできた一つの知恵である。短期的には景
気を良くして雇用を拡大するが、長い目で見るとインフレ率を高くしたり、資産バブルを生
んで将来の金融システムを不安定にしたりするような政策を採用する誘惑は、多くの政治家
にとって強いものがある。しかし長い目で見れば、経済の健全な成長にはマイナスになると
いう副作用を伴う。
日銀は、過去に大きな政策運営上の失敗を犯してきた。1972−73年のいわゆる「大
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2013年01月号
インフレ」は、1971年から73年にかけての固定相場制末期における円相場の切り上げ
に対して、過度の金融緩和を行ったことが原因であった。この大インフレについての日銀の
責任は、第一次石油危機によるインフレ圧力に紛れて、半分うやむやになってしまった。し
かし筆者が日銀在職中に行った日本経済全体の物価に対するコスト分析によれば、当時の企
業物価インフレの大部分は、需要超過により企業のマークアップ率が引き上げられた利潤イ
ンフレと、その後の賃金の大幅上昇による国内コストプッシュインフレであり、原油価格上
昇によるコスト部分は全体の五分の一程度にすぎなかった。また、1980年代後半の資産
価格バブルは、1985年前後の大幅な円高に対応して過度の金融緩和を行った結果、不動
産融資が急激に拡大したのがその背景にあった。こうした苦い経験をふまえて行われたのが、
1997年に行われた日本銀行法の大改正である。
日本銀行法の規定と問題点
日銀の政策目標設定に関する関連条文は以下の通りである。
第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金
融の調節を行うことを目的とする。
2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金
決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを
通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
第三条 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかに
するよう努めなければならない。
第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであるこ
とを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡
を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
以上の条文を言い換えれば、日銀は金融政策運営に責任を負っており、金融資産を売買す
る公開市場操作や銀行に対する貸し出しを行い、その金利や金額を調整することで、物価と
金融システムの安定を達成することで、経済の安定と拡大を目指す役割を担っている。しか
し、その目標の設定に関して政府と日銀の関係は明確には規定されておらず、日銀は政府と
十分な意思疎通を図ること、日銀は金融政策に関する意志決定の内容と過程を国民に開示す
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2013年01月号
ることが規定されているにすぎない。
主要先進国における金融政策運営の実態を見ると、その目標については、中央銀行は政府
や議会と緊密に議論して設定している。政策金利の変更やオペなどの金融政策手段とインフ
レ率の変動には1年から2年前程度のラグがあるため、数年程度先のインフレ率を目標にす
るか、数年間の平均的なインフレ率を目標にすることが多い。
インフレ率を数%程度引き下げる場合には、金利の引き上げやマネタリーベースの削減が
相当に効果的なため、2年程度でほぼ目標を達成することは可能であろう。他方、すでにデ
フレに陥って金利がゼロ%に近い日本経済のような状況においては、外為市場での大規模介
入で円安誘導を行う以外には、即効性のあるデフレ解消手段は見あたらないのが実情である。
実際、内閣官房参与に内定した浜田宏一氏と筆者が2010年10月に、このコラムで行っ
た紙上討論でも、浜田氏は円安誘導によるデフレ脱却を提言している。しかし、日本による
円安誘導は米ドルやユーロを押し上げることと同じであり、失業率が高止まりしている米欧
諸国の強い反発を招くことは必至である。政府が欧米諸国と調整の上、財務省と日銀が協力
して円安誘導を行うことの了解を取り付ければ2%のインフレ目標達成は実現可能なものと
なるだろう。しかしそれなしでは、日銀にとって自力での実現が非常に困難なインフレ目標
を無理矢理達成することが求められることになる。
過激な衍融政策運営の副喷用
どんな人物が金融政策を行うにしても、自力で達成が不可能に近い政策目標の達成を義務
づけると、相当危険の伴う政策運営を避けることはできない。例えば、株式、REIT、長
期国債を日銀が無制限に買い入れたり、政府が大規模な公共投資を実施するために発行する
低利の長期国債を日銀が引き受たりすることである。こうした政策を行えば、資産価格を直
接押し上げる効果があるため、景況感を一時的に改善しうるし、短期的には円安をもたらす
だろう。問題は、こうした政策の効果の大きさを事前に測ることが困難なため、物価や資産
価格の上昇が過度になった場合には、機動的にこれらの資産を売却して、膨張したマネタリ
ーベース(銀行券と日銀当座預金の合計)を回収できる体制を準備する必要がある。また、
政府債務が膨大になった現状に置いて、大量の国債発行により公共投資を行うことは、政府
の信用を毀損するリスクが高いものとなるだろう。
無理な利益や売り上げ目標達成を目指した会社経営者が闇雲なM&Aに走って失敗し、株
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2013年01月号
主に大きな損害をもたらすエピソードは時折見られるが、日銀がそのような行動をする場合
の国民経済に与える悪影響は甚大なものになるだろう。
(日本経済研究センター参与)
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小林光のエコ買いな?
温暖化防止の国際交渉スタート、巨大需
要創出への第一歩
平成22年版防災白書によると、過去10年間の世界の災害は1970年代に比べて被害
額や被災者数で3倍以上に増えている。地球の気候変化や植生の減少などが極端な気象災害
を生み、そして人口増と都市への集中が被害を大きくする。これらの要因の結果、被害が甚
大化する傾向が生まれていることは間違いあるまい。人口増加はさらに続く。国連の推計で
は、2050年には今日の3割増の人口を地球は養わないとならないとされている。人口以
上に増加のスピードが激しいのが資源などの消費量である。国際エネルギー機関(IEA)
の推計では、エネルギー消費量に関して同じく4割増が予測されているのは、人口より15
年早い2035年である(文末図1参照)。
地球が今日よりも汚れ、恵みの乏しいものになっていくことは、残念ながら不可避であろ
う。戦争の回避、平和の維持などと並び、「地球の管理」がますます重要度の高い課題にな
っている。このような中、「京都議定書」の次のステップとなる地球環境政策に関する国際
交渉が本格化することになった。
ポスト京都、新興国の参加ルールを議論
日本国内は、解散総選挙の政局ムードで、地球に目を向ける余裕を誰もが持っていず、報
道も控え目だったが、2012年11月26日から12月8日まで中東カタールのドーハで
は、サッカーではなく、地球を守るための将来の国際ルールづくりを巡った外交交渉が行わ
れていた。気候変動枠組み条約の第18回締約国会議(COP18)である。
1997年に京都議定書を採択した同条約の締約国会議は、COP3であったので、もう
15年の歳月が流れた。1992年採択の気候変動枠組み条約の下で、それまでは、抽象的
なものにとどまっていた温暖化防止の内容を、先進国に関しては具体的な数値目標を伴った
削減義務に変えたのが京都議定書であった。加速する地球温暖化の傾向に実効ある歯止めを
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2013年01月号
かけるべく、まずは先進国に先導役を果たすことを促したものだった。この意味で、人類社
会は地球温暖化防止の取組みに、既に2つの時代を経験している。
ドーハのCOP18は、次の第3ステップ、先進国はもとより、新興国を含め、世界の各
国に応分の具体的な義務を求める新しい段階に向けた外交交渉の作業計画を決めた。201
4年には将来決めるべき国際ルールの下書き文書(交渉テキスト)の項目を決め、2015
年には交渉の対象となる文書をまとめる、とのスケジュールが決まった。交渉の出口につい
ては、既に昨年の南アフリカ、ダーバンにおけるCOP17の決定により、2020年から
新国際ルールの下で世界の新しい対策が始まることとなっている。
これまでは世界のCO2排出量ベースで見ればせいぜい2割強、3割弱しかカバーしてい
なかった京都議定書に替えて、100%カバーに近い国際ルールが、2020年には実行に
移されることになる。
風力発電や太陽光発電、そして、エネルギー需給のスマート化は、一歩先を行った欧米で
既に経済上の大きな話題になっているが、もうしばらくすれば、世界を覆う重要案件になっ
てくるという訳である。
温暖化防止対畍は世界のGDP1%ビジネス
経済的なインパクトはどの位であろうか。
地球の温暖化を防ぐための省エネ技術、そして非化石燃料を使う、再生可能エネルギー利
用技術は今後のエコビジネスの勝ち馬の典型であるが、こうしたものを含め、各種のエコビ
ジネスの市場規模は、2020年には世界全体で、およそ3兆ドル近くになると推計されて
いる〈(国連環境計画(UNEP)など〉。
英国のニコラス・スターン卿が取りまとめた、地球温暖化対策はコストではなく便益の方
が大きいとした「スターンレポート」では、世界が地球温暖化の進行を止めるために支払う
費用は、推計に幅があるものの平均的にはGDPの1%程度という。現在の世界の名目GD
Pはおよそ70兆ドルであるので、この推計では、地球温暖化対策がらみの市場規模は、現
在では年間0.7兆ドル、その後、経済成長率以上に伸びていくと思われる。国内の推計で
も、環境関連ビジネスは既に70兆円弱あり、さらに50兆円程度の上積みが可能であろう
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2013年01月号
と言われている(政府の新成長戦略などによる)。このように地球温暖化関連を中心にした
内外のエコ市場は、まとまった大きさになる。
日本は低燃費のバイブリッド車や実用化された電気自動車を始め、このエコ市場で売れる
様々な製品や技術を擁している。東日本大震災を経験して、国民は環境や安全に強い需要を
有しており、好機到来だ。
しかし、産業界の主流は、2012年10月から始まった地球温暖化対策税制(化石燃料
に課税する環境税)に反対するだけで、環境問題を他人事視し続けているようにみえる。そ
の負担増の面だけを見て、利益を享受するビジネス機会ととらえてコミットすることを避け
ているように感じるのは筆者のうがった見方であろうか。
確実に成長が見込める市場、それも相当なボリュームの市場の誕生を理解できない(ある
いは理解しない)のは、現状維持を最優先にし、企業家の進取の気性を失う「サラリーマン
化」が進行してしまったからか?地球環境の危機を見ぬふりで済まそうと思う理性や知性し
か持ち合わせていないのか?そのどちらか、あるいはその両方なのかもしれない。
日本の産業界が進取の精神を失おうが関係なく、先に紹介したようなスケジュールで、国
際社会はルールづくりを始める。欧米と新興国の間では、世界の経済秩序の設計、世界経営
も睨んだ熱い戦いが続こう。日本が対応できなくても、あるいはいなくても、世界は先に進
んでいく。京都議定書の京都メカニズム(温暖化ガスの排出量取引など)の例を見ても、今
や環境対策は経済とは切り離せなくなっている。2020年からの国際ルールは、京都議定
書以上に経済的な意義を持とう。
そうした経済的な利害、場合によっては危険を孕むかもしれない重要な国際ルールづくり
を、自説に従ってブロックする実力は、もはや日本の産業界にはない。京都議定書の第二約
束期間における国際法上の排出枠から逃れた日本政府には、国際世論の道義に訴える訴求力
もなくなっている。内弁慶のまま、井の中の蛙のまま、指をくわえているのが、今の日本で
ある。
他に有力なビジネスの当てがあるわけでもないのに、折角の巨大需要に棹差せないのは残
念至極である。環境を種に世界を経営しようという豪の者が現れるのを期待したい。
(日本経済研究センター 研究顧問)
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西岡幸一の産業脈診
「ルネサス・民主党」はどこへ行くのか
4分の1に凋落
民主党とルネサスエレクトロニクス。一見、何の関係もないように見える二つの組織だが、
この3年ほどの間の凋落ぶりは目を見張る。
まず政権を離れた民主党。マスコミの事前調査では一致して「民主党惨敗」という予想だ
ったが、その通りになった総選挙。解散前と比べて所属する衆院議員は4分の1に激減した。
3年余り前の前回選挙後と比べるなら約5分の1だ。
一方、ルネサス。前身のルネサステクノロジーの時代を含めて8年連続(12年度は予想
)の赤字だから、凋落は最近始まったことではないが縮小スパイラルは加速。経営立て直し
に向け、産業革新機構にゲタを預けて自らはまな板の鯉だ。
同機構はトヨタ自動車、日産自動車、デンソーなど産業界の有力8社と第3者割当増資で
1500億円を共同出資し、もともと親企業である日立製作所、三菱電機、NECの3社の
出資比率は約4分の1になる。共同出資の一株当たり価格は、300円という足もとの株価
の3分の1弱の120円。3年前の最安値と比べると4分の1という大バーゲンだ。
相似形の「ルネサス・民主党」
興味深いことにこの両者、目を凝らすと凋落の原因がどこか似ている。「コンクリートか
ら人」とマニフェストを掲げた民主党は、肝心の財源調達が絵に描いた餅に終わり政権構想
の根底が崩れた。
ルネサスが掲げたのはさしずめ「シリコンからソフト」だ。経営規模を拡大して技術基盤
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2013年01月号
や資金調達力を強化し、シリコンの加工量で勝負するのではなく、IP(知的財産)や設計
力やソフトの質で優位に立とうと目論んだ。しかし国内家電、ITメーカーの不振でシステ
ムLSIがさっぱり伸びずスローガンは空振りに終わった。
そもそも背伸びした目標を立てて世論や産業界を引きつけながら、具体的に実現する戦略
が突き詰められていない。民主党では財源確保であり、沖縄の基地移転問題などだ。ルネサ
スも体質転換を図る「100日プロジェクト」などを掲げたが、3年連続赤字という実績が
すべて。マイコンシェアは世界1という看板が懐のお札の量につながっていない。
異質なグループの集合体でリーダーシップが不在、という点も酷似している。右から左ま
で自民党よりも広いイデオロギーの幅を持つ民主党と常に親元3社の母斑が浮かび上がるル
ネサス。どちらも数だけ多くて一枚岩になれず、それでいて個々の議員や工場の競争力は弱
い。
異質の構成分子をまとめる時間と妥協の調整コストばかりが肥大する構図が目立つ。いっ
たい何のために合体したのか、目的自体に疑問符が付く。当然の帰結としてガバナンスが貫
徹されず、意思決定が遅い。
3.11という天災に見舞われたのも同じ。大地震により、政治カレンダーや経営計画で
思い描いた構想に、著しい誤算を生じた。
さて、民主党はさしあたり来夏の参院選に党勢挽回をかけるが、ルネサスはどこへ行くの
か。
資金注入は十分か
まず見極めなくてはならないのは、今回の革新機構主導の資金注入が十分であるかどうか。
主導権を握る機構の出資比率を固定すれば、一株価格をどう決めるかで調達資金量は決まる。
足もと株価の60%ものディスカウントになる120円ではなく、20%減の240円にす
れば機構の負担金は倍になり、ルネサスが入手する資金量も倍になる。むろん機構とすれば、
再生に失敗しても損失が少なく、逆に成功すればリターンが膨大になるようなるべく低価格
になるのが望ましい。しかし、120円は割安すぎて資金量としては不十分ではないか。
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2013年01月号
DCF法や一株当たり純資産など、一株価格の根拠になる算定法はどれも仮定や再建計画
の実現可能性に依存するので、逆に言えばどう設定しても理屈は付けられる。ルネサスが参
考にしたコンサルティング会社の弾き出した数字は38円から265円という。
獲得資金量は与件として、リーダーシップが明確になると、それこそ山積する課題にメス
を入れていかなければならない。
従業員一人あたりの生産性、つまり売り上げの低さも処方箋を示すべき喫緊の課題だ。1
0月末での7500人の退職についでさらに5000人、18工場の半減などが挙げられて
いるが実行できるか。仮に実行できても3万人程度で8000億円(システムLSI事業を
分離しないとしても、人員減に伴う商品統合などで現実には7000億円程度か)の売り上
げでは大きく競争力が強化されたとは言えない。縮小スパイラルを反転させる売り上げ増が
必要だ。
ソフト会社などのM&Aで加算するのも一法だが、問われているのはルネサスの技術陣を
基盤にした有機的成長力だ。これまでのリストラや人員、技術、制度などの摺り合わせで心
身ともに疲弊しきっているか、負け戦の連続にもめげずにモチベーションが温存され、まだ
反発力が秘められているか、この綱引きだ。
マイコン専業の有効性は
マイコン専業会社の有効性も議論されなくてはならない。仮に近い将来、システムLSI
事業を分離して、マイコンをメインにアナログ・パワー系半導体をサブにした5000億円
くらいの規模から再出発して高収益会社に変身できるか。そのためには世界のマイコンシェ
ア30%弱、車載マイコンのシェア40%強という看板のうち、車載向けを収益的にもドル
箱に変えることが不可欠だ。品質基準をはじめ日本車メーカーの無理難題をこなせば、確か
に日本車メーカーに不可欠な半導体サプライヤーになるが、新興市場を視野に入れて、世界
車メーカーにとって不可欠な存在になることの方が優先するべきだろう。出資企業との連携
関係の強化をはき違えてはいけない。
パナソニック、ソニー、シャープなど有力家電、IT企業を需要先にしていた電子部品会
社はどこも苦境に喘いでいる。勝ち馬と信じて乗ってきたのが一転、落馬したのに対して、
車載需要は山谷があってもトレンドは圧倒的な勝ち馬。それを大きな事業領域とするのに赤
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2013年01月号
字に喘いでいるのは現在の事業モデルの刷新を迫っている。つまり見かけのリストラ、人件
費圧縮で自動的に展望が開けるものではない。
マイコンはシステムの構想力や設計力が死命を制する。最先端のプロセス開発競争から一
歩引いたルネサスとすればまさにここが存立基盤。車載用も中核のエンジン制御用などを除
けば十分にフリースケールやインフィニオンなど欧米メーカーが代替しうる。大きなシェア
はかえって打たれやすい隙が多い、と心得るべきだろう。
現実には、先に与件とした資金の調達がカギになる。今回の機構などの出資で打ち止めで
はなく、さらなるリストラと事業開拓の2方面の資金が必要になる。産業界や投資家から、
それに応えてもらえるだけの信認を「本物の100日プロジェクト」断行で獲得するのが肝
要だ。
(日本経済研究センター研究顧問)
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山田剛のINSIDE INDIA
インドが担う4つの機能
――輸出、R&D、そして第三国狙う拠
点として多面的展開が可能に
2005年度から07年度まで3年連続して9%以上の高成長を達成したインド経済だが、
2012年度(13年3月期)は6%すら達成が危うい状況だ。この背景には、輸出先であ
る欧米経済の不調や原油などの素材・資源高、インフレ抑制を最優先した高金利政策による
設備投資意欲の減退と高額耐久消費財の販売低迷、電力などのインフラや工業用地の不足、
そして汚職の多発や規制緩和の遅れによる対印投資マインドの冷え込みなどが挙げられる。
折しも日本では製造業を中心にミャンマーやインドネシア、バングラデシュなどへの注目度
が高まり、インドも安閑としていられなくなってきている。
それでも、インドブームは沈静化したのか?という問いにはノーと答えていいだろう。日
本企業も大人数の投資ミッションを組んでデリーやバンガロールを訪問する段階はすでに卒
業し、各社とも独自に着々と投資計画を進めるようになった。大手メディアではインドのリ
スクを強調する論調が目立つが、買い物客でにぎわうバザールや新たに登場したカフェ、フ
ァストフード店、エステサロンなど、消費の現場を歩いてみれば、インド経済は統計数字以
上に活況を見せていることがわかる。都市近郊の農村では庭先に複数の乗用車が並ぶところ
も少なくない。延べ9億件に達している携帯電話加入者のうち、すでに3分の1強は農村部
住民であり、その伸び率はすでに都市部を上回っている。
数字に出ないインド経済の底力
個人所得税の納税者はわずか4000万人強(人口比約3%)。所得さえ把握できない労
働やビジネスのボリュームは無視できない規模に達している。インドの統計当局も多少はこ
の点を考慮してエンピツをなめているかも知れないが、まだまだ財布のヒモが固いインド人
が、総貯蓄率約32%(2010年度)という数字以上にカネを溜め込んでいることを想像
すれば、インド経済の潜在力の大部分はまだ水面下にあるといえそうだ。
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2013年01月号
立案から実際の事業開始まで相当のタイムラグがあるとはいえ、2012年10月までの
1年間で、日本企業は新たに約380カ所もの拠点をインド国内に新・増設している(在印
日本大使館調べ)。プレスリリースやコンファーム可能な報道をもとに工場、現地法人、駐
在員事務所の設立、インド企業の買収や資本参加など、日本企業による実態のある対印投資
案件をピックアップしてみると、2012年だけでも約130件が確認できた(図表1)。
これは文句なしに史上最高である。
※図表1「日本企業による最近の主なインド事業展開事例」は会員限定PDFをご覧くだ
さい。
http://www.jcer.or.jp/international/insideindia20121221.html
つまり、日本企業は今日明日の経済情勢に左右されることなく、5年、10年といった長
期的な視点でインドでのビジネス展開に取り組んでいるのだ。後手に回ることの多い経済政
策や需要に追い付かないインフラ整備、経済の足を引っ張る政治と政治家など、リスクを冷
徹に見極めることは非常に重要だが、インドのような突っ込みどころ満載の国で「リスク」
から入っては何もビジネスなどできない。
ここで筆者は日本企業にとってインドが担う「4つの機能」を提示してみたい。近年、業
種や立地先などが急速に多様化する日本企業の対印進出パターンを分析していても、ほとん
どがこの4つに分類できる。
Ⅰ.文句なしの巨大市場
人口12億2000万人超。しかも2025年までに2億∼4億人が新たに中間層の仲間
入りをするとみられるインドは、文字通り巨大な内需を抱えた有望市場だ。日本企業では自
動車や自動車部品、家電といったところに目を奪われがちだが、最近では消費財メーカーの
進出が加速、外食産業や広告代理店などのサービス業も続々進出している。製造業の場合、
日本の約9倍に及ぶ広大な国土のインドには人口100万人以上の都市圏が約90もあるた
め、商品の輸送やアフターサービスまで考えると多拠点展開は不可避だ。輸出シフト、とい
う側面もあるが、郊外にオラガダム、スリペルムブドゥルなどの有力工業団地を抱えるチェ
ンナイを筆頭とするタミルナドゥ州への進出件数は、2010年に商都ムンバイを抱えるマ
ハラシュトラ州を逆転し、デリー首都圏に迫りつつある(図表2)。
50
2013年01月号
※図表2「日本企業のインド進出状況」は会員限定PDFをご覧ください。
http://www.jcer.or.jp/international/insideindia20121221.html
製造業、たとえば縫製業の場合、もしインドを「低賃金の生産拠点」と位置づけているの
ならば、もはや電気代や労賃などでベトナムや中国などにはかなわない。世界第2位の生産
量を持つ綿花や羊毛、絹など豊富な原材料と、比較的優秀なデザイナーを安く雇用できると
いう利点に着目すべきだろう。つまり、インドはチープレーバー頼みの国ではなく、より付
加価値の高い事業展開を目指すことができる生産拠点の候補である、ということだ。
最近の特筆すべき事例として、日系企業による農業関連分野への相次ぐ進出が挙げられる。
大塚アグリテクノは12年10月、西部ラジャスタン州に農薬大手のインセクティサイド・
インディアと合弁による研究所を設立すると発表。エス・ディー・エス・バイオテックは1
2月、印同業シュリー・ラームサイズ・ケミカルズ社を買収して農薬や機能性肥料の製造販
売、研究・開発に乗り出すことを決めた。7億人近い農民を抱えるインドでは政治的配慮か
ら農業所得は非課税とされ、食品加工産業など農業関連産業にはさまざまな政府支援策が用
意されている。ユニークなビジネスモデルさえ確立できれば大きなチャンスがある。
インド政府の政策が商機に直結する分野もある。直接・間接含めて8000万人以上を雇
用し、工業用原料として綿花やジュートなどの買い入れが増えれば農民の収入向上にもつな
がる繊維産業は、政治的に重要なセクターであり、農業と同様これまでにも輸出金融の金利
補助などの優遇策が導入されてきた。2014年春に総選挙を控えた13年度予算でも大規
模な支援が見込まれており、中身次第では外資系の繊維関連産業にも恩恵がもたらされる。
同様に初等・中等教育の強化を掲げている政府が仮に文具の無償配布を断行したりすれば、
日本の小・中学生に相当する義務教育年齢層約2億人分の巨大な調達需要が発生する。
2011年に地場文具メーカー・カムリンを買収したコクヨ、12年3月にリンク・ペン
&プラスチックスへ資本参加した三菱鉛筆などが、13年度予算案をじっと注視しているこ
とは想像に難くない。
Ⅱ.アフリカ、欧州をにらむ輸出拠点
乗用車首位のマルチ・スズキを猛追する韓国・現代自動車は、11年度のインドでの生産
51
2013年01月号
台数約63万台のうち24万台余を欧州などに輸出した。同社は最初から輸出に有利なチェ
ンナイ郊外を立地先に選んでいる。マルチも将来の輸出拡大をにらんでアラビア海に面した
西部グジャラート州に新工場用地を取得した。南部チェンナイ郊外のオラガダムに進出し、
2010年からマイクラ(日本名マーチ)などを現地生産している日産自動車の場合は11
年度に生産した約13万台のうち約10万台を輸出するなど、当初から輸出志向を鮮明にし
ている。
生産能力の有効活用、という側面もあるが、2012年4月にはトヨタのインド子会社ト
ヨタ・キルロスカ・モーターが戦略小型車エティオスの南アフリカ向け輸出を開始。同年ホ
ンダ・カーズ・インディアが小型車ブリオの南ア向け輸出を本格化させている。
さらにホンダはタイへ、トヨタはブラジルへと、それぞれインドからの部品輸出も拡大さ
せており、将来的にはインドがグローバルな生産ネットワークにおける部品供給の一角を担
う可能性も秘めている。そして、互いの経済関係強化でコンセンサスが出来ているインド・
パキスタンが貿易規制緩和に踏み出せば、パキスタンをはじめとした南アジア域内への輸出
も有望となってくる。
このように、日本企業もインドを「欧州やアフリカ、中東などを見据えた輸出拠点」とし
て位置づけた戦略を展開しはじめている。
Ⅲ.インド人の頭脳を活用した研究/開発拠点
ミャンマーやカンボジアなどの新・新興国と比較して、インドに大きな優位性があるのが
研究・開発(R&D)拠点としての可能性だろう。入試の競争率が60倍近い技術系大学の
最高峰・インド工科大(IIT)を筆頭に、理科系人材の供給には定評がある。有名大学卒
業生でも即戦力となるのは一握りだが、年俸千万円を超えるような日本人研究者よりは当然
ながらまだまだはるかに安いコストで雇用できる。医薬品や家電はもちろん、スイスのネス
レなどのように、インドで販売する乳製品や飲料などの商品開発を手がけるR&Dセンター
を開設する例もある。インドでの事業展開に不可欠な「現地化」を推進するためのインド仕
様商品の開発を手がけるのはもちろん、インドで欧米向け商品の設計・開発に取り組む、と
いう活用法も十分検討に値する。
2011年以降、マルチ・スズキや第一三共、日立製作所、パナソニックなどが相次いで
52
2013年01月号
インド国内にR&D拠点を新設・拡充。12年も先述の大塚アグリの他に、デンソーがデリ
ー郊外のグルガオンにテクニカル・センターを設立、リコーもバンガロールにR&D子会社
リコー・イノベーションズを設立しており、この分野も要注目だ。
Ⅳ.第三国市場に打って出る前線基地に
そして、4番目の機能が、アフリカなど難度の高い市場を開拓するための前線基地だ。か
のマハトマ・ガンディーが南アフリカで弁護士をやっていたように、インドおよびインド人
は歴史的にアフリカや中東にコネクションがある。日本企業はインドの現地法人を通じて、
またはインド企業との提携によって、独力でやるよりも比較的容易にこれらの市場を開拓で
きる、との期待も高まる。実際には時間がかかると思われるが、ひとつの可能性を示す事例
がある。
第一三共が傘下に収めたインド製薬最大手のランバクシー・ラボラトリーズは12年春、
「インド初の新薬」とされるマラリア治療薬をインドで発売。近くこれをマラリア多発地帯
であるアフリカ向けに本格販売する計画だ。これは、日本企業がインド子会社を経由してア
フリカ市場への進出を目指すという意味において、画期的なケースと言えるだろう。
このような多機能かつ高付加価値な事業展開という点を考えれば、あらためてインドの持
つ可能性が見直されるだろう。四半期ベースで年率10%を超える高成長を達成したころと
比較すれば確かに「低迷」かもしれないが、さまざまな逆風に見舞われた2012年度でさ
え5%台後半の成長は達成できるのである。近年は経済成長の足を引っ張ることの多いイン
ドの「民主主義」だが、その民主主義のおかげで「激変リスク」が最小限で済んでいる、と
の評価もできる。
2000年代後半の高成長に比べるといくぶん謙虚になり、徐々にではあるが投資フレン
ドリーになりつつあるインドこそ、いまは「買い」なのではないだろうか。
(日本経済研究センター主任研究員)
53
2013年01月号
林秀毅の欧州債務危機リポート
「4つの柱」・年明けに向けた展開
―キーワードは「財政対応力」
青写真から工程表へ
欧州危機が転機を迎えている。
11月下旬、合意されたギリシャの追加支援策は、過剰な財政赤字の是正を実質2年先送
りする面が強かった。スペインのカタロニア州選挙の結果も、スペインの政治安定性への懸
念を深めた。さらに欧州中央銀行(ECB)は来年のユーロ圏成長見通しをマイナスに引き
下げ、マイナス金利の導入にも含みを持たせた。しかしこれらの動きにもかかわらず、市場
は冷静な反応を示した。ECBによる無制限の国債買取りへのコミットなどに支えられ、欧
州連合(EU)・ユーロ圏による今後の制度構築に関心が向き始めている。
今般ファンロンパイ欧州理事会議長が「真の経済通貨統合へ向けて」という工程表案を明
らかにした。10月に同議長による「中間報告」を受け、11月下旬にはEU委員会から「
青写真」が発表されていた。
これまでの「青写真」と今回の案は、諸方策の実現タイミングを三段階に分けている点で
は共通している。一方、政策の実現目標タイミングは今回大幅に前倒しされ、①2013年
まで、②2014年まで(表現がややあいまいだが各々年末を指すと思われる)、③それ以
降に大きく分けられている。
今後、12月13・14日のEU首脳会議でこの「工程表」が決定され、来年年明け以降
に向けた具体的なスケジュールが示されることになろう。ここで政策の内容については、銀
行危機・財政危機・景気の悪化という「3つの悪循環」への対策に加え、「民主主義の正当
性と信頼性」という政治面を加えた4つの分野への取り組みが示されている。以下、これら
の各点について検討したい。
54
2013年01月号
「銀行同盟」の実現スケジュール
まず「銀行同盟」の内、ECBによる単一の銀行監督(SSM)の実現は、従来から最優
先課題と位置付けられている。2013年初めまでに必要な法的枠組みが決定され、同3月
末までに欧州安定メカニズム(ESM)が銀行に対する直接の資金注入が可能となる。
遅くとも2014年1月から単一の銀行監督がフル稼働する大枠が示されている。これに
備え2013年末までに、自己資本規制を含む共通の規則が定められる。この点については、
大手銀行と中小銀行の取扱いに差がないか(ECBによる直接の監督対象になるか、各国監
督機関の所管になるか等)という点が注目される。
次に、「銀行同盟」の残る二つの要素である銀行破綻整理基金と預金保険についてはどう
か。従来、これらについては具体的な組織のあり方や実現タイミングは必ずしも明確ではな
かった。
今回の案は、単一の銀行監督には単一の銀行破綻整理メカニズムが必要であると強調する
一方、各国の預金保険のメカニズムは調和されるべきと述べるにとどまっている。また単一
の銀行破綻整理メカニズムは2013年中に実現するべきとしているが、預金保険について
そのような期限は設定されていない。
それでは具体的に、銀行破綻整理の組織はどのような形になるのか。従来から、単一の監
督者となるECBが、さまざまな利害の絡む銀行破綻整理を同時に行うことには問題がある
という見方が多い。また今回の案では、欧州安定メカニズム(ESM)が単一の破綻整理機
関に資金を提供する可能性を指摘している。
以上から、今回銀行の破綻整理のため新たな組織が設立され、ECBと密接に連携するこ
とが想定されているのではないか。今後具体的にどのような形で議論が進むか、さらに注視
すべきだろう。
55
2013年01月号
「財政対応力(Fiscal Capacity)」が最大の焦
珿に
次に、財政統合への取り組みはどうなっているだろうか。この点については、二段階のシ
ナリオが想定されている。
まず2013年中に実施される短期的な課題として、各国の財政規律を一段と高める取り
組みが挙げられている。この点は、従来からEU加盟国間の財政協約(Fiscal Co
mpact)などの形で合意されてきた。今後さらに、ユーロ導入国の財政計画について、
立案の段階から相互チェックを行う規則(“Two−Pack”と名付けられている)を定
めるとしている。ただしこれらの案は、各国ごとの財政政策を前提としている従来の枠組み
の延長線上にあるにすぎず、財政統合に向けた新たな取り組みということは難しい。
一方、2014年以降の中期的な課題として、今回「財政対応力(Fiscal Cap
acityを仮訳)」という考え方が提案された。その特徴は第一に、既存のESMなどが
危機対応を目的にしているのとは対照的に、危機に対し予防的な対処する仕組みを作ろうと
している点にある。この背景には、従来、危機対応が市場の動きに対し後追いになってきた
ことを反省し、危機に対し早期に対応することにより、ESMなどへの負担を緩和する狙い
があると考えられる。
第二の特徴は、この考え方が、ユーロ圏の特定国に対する無条件・無制限の資金移転を念
頭に置いているのではない、と強調している点にある。ドイツが従来からユーロ共同債の導
入がギリシャなどの財政規律を体化させてきたと反発してきたことを念頭に置いたものだろ
う。
それでは、「財政対応力」を念頭に置いた具体的な制度設計は、どのようなものになるか。
そこでは新たな基金の設立(*)が想定されている。第一に、資金は各国の景気変動などマ
クロ的要因か、あるいは失業保険などミクロ的な要因のどちらに応じて供給されるか、とい
う問題がある。第二に資金規模と財源について、ユーロ圏各国から集めるか、独自に調達す
るか、という問題がある。今回の提案は以上の点について、折詳細な検討が必要としており、
2014年に向けた一層の議論が注目される。
*岩田一政の万里一空「ユーロ加盟国の国債格下げと質の良いユーロ共同債の発行」(20
56
2013年01月号
12年1月)で紹介されているドイツによる「減債基金」の提案が、今回案のたたき台にな
っているといえる。
http://www.jcer.or.jp/column/iwata/index335.html
「経済政策の統合」と「民主主義の正当性と信頼性」
以上のような銀行同盟と財政統合への取り組みと比較すると、残る二つの分野の取り組み
は後回しになっていると言わざるを得ない。
まず経済政策の統合は、財政統合への取り組み次第という面が強い。言い換えれば、財政
統合の進展がないままに、経済政策の相互サーベイランスなどを行っても、実効性のある取
り組みにはつながらない。当面は財政協約に基いた経済政策の協調、中期的には上に述べた
危機予防のための新たな基金設立に応じた形で議論が進められていくものと思われる。
一方、政治面では、EU議会の権限強化を今後も持続的に行っていくことが主な内容にな
っている。欧州危機が深まり、危機対応について直接選出されたEU議会の発言力が依然弱
いことに市民の不満が強まっている可能性がある。
EU市民の最大の関心事は雇用の回復にある。銀行同盟と財政統合を軸に、各国の経済政
策の協調などにより雇用の回復が実現するまで、依然遠い道のりと言わなければならないだ
ろう。
(日本経済研究センター 特任研究員)
57
2013 年 1 月号
研究リポート(サマリー)
第 39 回(中間報告)中期経済予測(2012-25 年度)
産業地図の変容と日本の成長力-忍び寄る「双子の赤字」
2012 年 12 月 2 日発表
中期予測班
日本経済研究センターは、2025 年度までの第 39 回中期経済予測をまとめた。従来に比べ 5 年先
の 2025 年までを展望した本予測によれば、日本経済は 20 年代に向け成長率が一段と低下し、財政
と国際(経常)収支が共に赤字となる“双子の赤字”に陥る公算が大きい。それに伴い金利上昇や
財政危機リスクが顕在化する可能性も高まる。開国など抜本的な成長力向上策や税・社会保障制度
の一体改革が、焦眉の急である。
<ポイント>
①製造業の海外生産シフトなどにより日本経済に占める高生産性セクターのウエートが低下する。
一方で高齢化やサービス経済化の進展に伴って医療・介護等の低生産性セクターのウエートが高ま
るため、成長率に下押し圧力がかかる。また、労働力人口が減少するため働き手の面からも成長率
が下押しされる。平均成長率は 10 年代の 0.8%から 20 年代前半は 0.4%になる。
②10 年に約 1 億 2,800 万人だった人口は 25 年には約 1 億 2,000 万人にまで減少し、3.3 人に 1 人
が高齢者になる。それに伴い、10 年に 705 万人だった医療・介護等の従業者数は 25 年には 1,005
万人に増加、6 人に 1 人が医療・介護分野で働くという産業地図の変容が進む。一方、製造業の従
業者数は 921 万人から 719 万人に減少する。
③東日本大震災を契機に日本の貿易・サービス収支は赤字になった。今後も製造業の海外生産シフ
トと供給力の低下による製品輸入の増加に加え、化石燃料価格の上昇や原子力発電の火力代替によ
る化石燃料輸入の増加などにより赤字幅が拡大する。その結果、20 年頃には所得収支の黒字を上回
って経常収支も赤字化する(25 年度で 16.7 兆円の赤字)
。
④消費税率の引き上げにより、国・地方の基礎的財政収支の国内総生産(GDP)比のマイナス幅は
一旦縮小するが、税率を 10%に引き上げるだけでは黒字にできない。20 年代は団塊世代が 75 歳以
上になり医療・介護など社会保障費の増加が続くこと、またデフレにより名目成長率が伸び悩み税
収も改善しないため、赤字幅は再び拡大し、25 年度には 26.7 兆円となり、累積債務残高は 1,387
兆円と名目 GDP の 285.2%に達するだろう。
⑤日本経済は 20 年代初めに財政と国際(経常)収支の赤字が共存する“双子の赤字”に直面する。
25 年度の基礎的財政赤字が GDP 比 5.5%、経常赤字は同 3.4%と、80 年代米国の最悪期と並ぶかそ
れを上回る水準に達する。これまで家計の豊富な金融資産が、金融機関を通じて国債の消化を下支
えしてきたが、政府債務が膨らみ続けると国内消化にも限界が訪れる。これは海外から借り入れを
しなければならなくなることを意味しており、海外投資家が政府債務の規模に応じた高い財政リス
クプレミアムを要求すれば、金利が急騰し、日本が財政危機に陥る危険性がある。
58
2013 年 1 月号
⑥世界経済の予測の結果、低迷が続く欧米や日本の世界経済に占めるシェアは縮小する一方、比較
的高成長を続ける新興国の存在感が高まる。日本の世界 GDP に占める名目 GDP のシェアは、11 年の
8.5%から 25 年の 4.4 %に縮小する一方、中国が 10.6%から 15.7%まで拡大し、世界第一位の経
済規模の米国(25 年で 16.3%)に迫る。
図
忍び寄る「双子の赤字」
詳細は http://www.jcer.or.jp/research/middle/detail4525.html をご参照ください。
59
2013 年 1 月号
セミナーリポート
第 3 回円城寺次郎記念賞
受賞者講演
「経済学と政策の架け橋―気鋭のエコノミストの視点」
大橋
弘・東京大学大学院経済学研究科教授
田中知美・アリゾナ州立大学助教授
(司会)松井彰彦・東京大学大学院経済学研究科教授
理論と実証のバランスが重要
―政策論議できる「場」の構築、急務に
<要旨>
① 経済学が政策に対して最も有用だと思われる点は問題の定式化であり、政策案の設計・評価に関わ
る部分だ。そこでは特に、因果関係の立証が重要な点を研究成果に基づいて説明し、これまで「常
識」とされていた視点を再考することが課題になる。
② 行動経済学は既存の経済学の上に構築されたものであり、経済学と別物ではない。研究対象を無作
為に分けることにより、因果関係を厳密に検証しやすい点に特徴がある。労力はかかるものの、未
知の分野に踏み込み、分析結果を経済理論と照らし合わせて新たな因果関係を見つけ出すという、
従来の経済学にはない魅力があり、学問的な貢献も期待できる。
③ 経済学と政策を架橋する上では理論と実証のバランスをうまくとることが必要だ。また、ある程
度政策を論議する「場」が設定されないと、そうした有為な人材は育たない。したがって特定の
政策テーマに対して若手に積極的に発言をさせるような「場」をつくる必要があるのではないか。
詳細は http://www.jcer.or.jp/seminar/sokuho/index.html#20121205 をご参照ください。
60
2013 年 1 月号
最近掲載のセミナーリポート
開催日
タ イ ト ル
講 師
12 月12 日
≪株価座談会≫波乱の世界経済と日本株
―2013 年前半の相場展望
神山直樹・メリルリンチ日本証券日
本株チーフストラテジスト、柏原延
行・みずほ投信投資顧問執行役員運
用戦略部長、司会)中野義一・日本
経済新聞社編集局次長兼証券部長
12 月10 日
「国際規範」になり始めた CRS 経営
―国連や ISO が企業に求める姿
牛島慶一・日立製作所 CRS 推進部
「国際基準で人権尊重の明確化を
部長代理
―国連グローバル・コンパクト広まる」
12 月6 日
2013 年の貿易と日本経済
「貿易赤字の拡大に一定の歯止め
―輸出持ち直し、景気も底入れ」
三輪裕範・伊藤忠経済研究所長
12 月5 日
グローバル化進む世界の株式市場と日本
「競争力強化へ総合取引所化が必要
―経営統合のメリット生かしたい」
米田道夫・大阪証券取引所社長
12 月5 日
第 3 回円城寺次郎記念賞 受賞者講演
「経済学と政策の架け橋
―気鋭のエコノミストの視点」
大橋弘・東京大学大学院経済学研究
科教授、田中知美・アリゾナ州立大
学助教授、司会)松井彰彦・東京大
学大学院経済学研究科教授
11 月26 日
2 期目のオバマ政権と米国経済の展望
「金融危機の克服に導かれた再選
―オバマ政権はアジア重視へ」
今村卓・丸紅米国ワシントン事務所
長
11 月19 日
習近平の中国―政治・経済の課題
「まず『社会の民主化』に重点
―10%前後の高成長は終焉」
関志雄・野村資本市場研究所シニア
フェロー、朱建栄・東洋学園大学人
文学部教授、司会)室井秀太郎・日
本経済研究センター主任研究員
詳細は
掲載項目
( 聴くゼミ:音声)http://www.jcer.or.jp/seminar/kikusemi/index.html
(読むゼミ:抄録)http://www.jcer.or.jp/seminar/sokuho/index.html
61
シンガポールからの元スカラー生、テオ・ギン・スウィ氏
台湾・韓国を訪問して積極的に論文発表
アジアの若手研究者を招聘する「日経アジア・スカラシップ」プログ
ラムによる客員研究員として、日経センターに滞在して研究活動をとも
にした元スカラー生は 14 人にのぼる。最近の仕事内容や研究活動など、
帰国後の消息を尋ねてみた。初回はシンガポールの大学で教鞭をとるテ
オ・ギン・スウィ氏。
――現在の肩書きを教えて下さい。
シンガポールの南洋理工大学(NTU:Nanyang Technological University)の人文・社会科
学学部の経済学科で准教授をしています。
――今はどんな仕事をしていますか?
学部の学生向けに「産業組織論」
「ゲーム理論と社会科学への応用」を講義しています。一学
期おきの講義で、週に 3 時間教えるものです。また、学科の国際関連のコーディネーターもし
ており、
交換留学を希望する学生に対し、
コース選択や大学の選定などの手助けをしています。
次の学期には、応用経済学専攻の修士課程の学生向けに「産業組織論」を教えることになって
います。
――最近はどんな活動をしていますか?
海外の学会で積極的に発表しています。まず、2012 年 6 月に台湾の中央研究院で開かれた
第 13 回公共経済理論学会で、日経センターに滞在中に書いた論文「R&D の国際化に関する理
論分析と日本企業への応用」を発表しました。発表の合間に、故宮博物館も見学して、台北見
物を楽しみました。
それから、9 月 20-21 日に開かれた「NTU 産業組織ワークショップ」の主催者としても活動
しました。オーストラリアのクイーンズ大、中国浙江大学との共同ワークショップで、3 大学
共同で開催するのはこれが初めてです。発表者は全部で 12 人にのぼり、シンガポール側の発
表者にはシンガポール国立大やシンガポール経営大学からの参加者も含まれています。
翌月には韓国・ソウルを訪問し、NTU と韓国の漢陽大学による第 4 回共同シンポジウムに
出席しました。漢陽大学の担当者はとてもよくしてくれて、素敵な韓国料理を堪能しました。
――最近、ひげを生やしているようですね。
ええ、特に理由があるわけではないのですが、口ひげを生やしています。まだ、剃っていま
せんよ。
(国際・アジア研究グループ)
Teo Gin Swee
シンガポールの南洋理工大学准教授。日経センターの客員研究員として 2011 年 5 月-
2011 年 8 月に滞在した。
62
ピッ
ピックアップセミナー
東京
1月15日 12:00 ∼ 13:30
大阪
2月6日 14:00 ∼ 15:30
*会費:3000円(当日ご持参ください)
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
会員会社・部長昼食会
新体制下の中国経済と
今後の日米中関係
第二期オバマ政権とアジア
―歴史的文脈から考える
瀬口 清之・キヤノングローバル戦略研究所
西崎 文子・東京大学大学院総合文化研究科教授
公益社団法人
研究主幹
日本経済研究センター
〒100-8066 東京都千代田区大手町1−3−7 日本経済新聞社東京本社ビル11階
総務本部
総 務 ・ 広 報 グ ル ー プ
経 理 グ ル ー プ
03(6256)7710
03(6256)7708
事業本部
会 員 グ ル ー プ
事業グループ(セミナー)
03(6256)7718
03(6256)7720
研究本部
予 測 ・ 研 修 グ ル ー プ
研 究 開 発 グ ル ー プ
国際・アジア研究グループ
中
国
研
究
室
グ ロ ー バ ル 研 究 室
ライブラリー
(茅場町支所) 〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2−6−1 日経茅場町別館2階 03(3639)
2825
大阪支所 〒540-8588 大阪府大阪市中央区大手前1−1−1 日本経済新聞社大阪本社8階 06(6946)
4257
03
(6256)7730
03
(6256)7740
03
(6256)7750
03
(6256)7744
03
(6256)7732
参加ご希望の皆様へ
会場の席数に限りがございますので、当センターホームページ(http://www.jcer.or.jp/)または裏面のFAX申込書
で事前お申し込みをお願いします。
セミナーの追加や日時の変更の場合もありますので、当センターホームページでご確認ください。
■会費
■場所
■入場
会員無料、一般は1回8,000円
東京:日本経済新聞社東京本社(東京都千代田区大手町1 3 7)
日経茅場町カンファレンスルーム(東京都中央区日本橋茅場町2 6 1)
大阪:日本経済新聞社大阪本社8階・日 経 セ ン タ ー 会 議 室(大阪府大阪市中央区大手前1 1 1)
(地図はホームページをご覧ください)
先着順(セミナー開始の30分前より受付を始めます)
■お問い合わせ(電話) 東京:
(03)6256−7720/大阪:
(06)6946−4257
東京
1月9日 14:00 ∼ 15:30
東京
1月16日 15:00 ∼ 16:30
*日英同時通訳付き
*定員100名、先着順
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
*会場:日経東京本社ビル6階・カンファレンスルーム
新春特別セミナー
2013年の日本経済 再生への展望
経済再生のために一連の懸案を解決し、反転攻勢へとア
欧州危機から銀行・財政同盟へ
―日本企業・市場への示唆
クセルを踏む―。世界経済が減速する中で迎える新年は、
日本の「実行力」がこれまで以上に問われそうです。デフ
欧州は、ユーロ圏内の銀行監督の一元化への道を踏み出
レ脱却と財政健全化に決着をつけ、エネルギー選択、自由
しました。さらに、財政統合へ進み、財政規律も働かせる
貿易拡大、国際人材の育成などの課題克服に取り組むこと
ことができるのでしょうか。欧州危機の解決へ向けた課題
が欠かせません。2013年のセミナーのトップを切って、岩
は何か。債券・為替市場や日本との経済連携協定交渉へは
田理事長が日本経済の針路を提言します。
どう影響するか。長く日本・EUの経済関係に関する研究
と政策立案にかかわっているロタハー氏が論じます。
岩田 一政・日本経済研究センター理事長
アルブレヒト・ロタハー・駐日EU代表部政治経済部公使参事官
東京
1月15日 12:00 ∼ 13:30
*会費:3000円(当日ご持参ください)
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
1978年米イェール大学経済学修士、82年ロンドン・スクー
ル・オブ・エコノミクス経済学博士。駐日EC代表部一等秘書
官、駐オーストリアEU代表部一等参事官などを経て、2012年
から現職
モデレーター)林 秀毅・日本経済研究センター特任研究員
会員会社・部長昼食会
第二期オバマ政権とアジア
―歴史的文脈から考える
大阪
1月10日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
世界では新興国が台頭し、米国では分裂が進むなど、4
年前とは、国内も国外も様子が一変しています。その中で、
オバマ政権は外交の軸足を中東からアジア太平洋へと移し
世界経済のシナリオ、日本経済の課題
つつあります。大きな歴史の流れの中で、米国の位置づけ
はどのように変わってきたか、そして米国はアジアでどの
ような役割を果たそうとしているのか。米国外交史が専門
の西崎氏がお話しします。
世界経済の不確実性は高まっており、米・欧・中の経済
の先行きは見通しにくい状況が続いています。新年最初の
セミナーでは、世界経済にはどのようなシナリオが想定で
きるのか、その下で日本経済はどのような政策課題に直面
西崎 文子・東京大学大学院総合文化研究科教授
しているのかについて、齋藤研究顧問が論じます。
1985年一橋大学法学研究科博士前期課程修了、米イェール大
学大学院歴史学Ph.D.。成蹊大学法学部教授などを経て、2012年
から現職
齋藤 潤・日本経済研究センター研究顧問、
慶應義塾大学大学院商学研究科特任教授
大阪
1月17日 12:30 ∼ 14:00
東京
1月25日 15:30 ∼ 17:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
*会費:3000円(当日ご持参ください)
*会場:リーガロイヤルホテル(大阪市北区中之島5-3-68)
*定員になり次第締め切ります
日経センター・大阪昼食会
実務に生かす『行動経済学』
人々の行動や人間の特性を科学的に分析して、現実の人
間行動により近い経済学を構築している『行動経済学』が
注目を集めています。行動経済学の成果を用いると、企業
の実務や国の政策の改善に応用できる可能性があります。
日本におけるこの分野の代表的な研究者の一人である大竹
研究顧問が『行動経済学』とは何か、実務で活用できる事
例を交えて職場の課題改善に役立つヒントをお話しします。
中東新興市場と日本
―新たなビジネスチャンスを探る
中国からASEAN、南アジアへと新たな市場やものづく
り拠点を求めて展開する日本企業が、中東に目を向け始め
ています。民主化や経済改革はどこまで進むのか、市場と
しての可能性や投資環境をどう見るべきか。湾岸アラブ諸
国、トルコ、エジプトなど各国のビジネスチャンスとリス
クについて、中東情勢に詳しい畑中氏が解説します。
*大竹文雄・研究顧問による≪JCERゼミナール≫実務に生かす『行動
経済学』
(全3回)を1月から開催します。詳細・お申し込みは当セ
ンターHPから(http://www.jcer.or.jp/seminar/renzoku/index.html)
。
畑中 美樹・国際開発センターエネルギー・環境室研究顧問、
大竹 文雄・日本経済研究センター研究顧問、
1974年慶應大学経済学部卒、富士銀行(現みずほ銀行)入行。
中東経済研究所、国際経済研究所を経て、2000年国際開発セン
ター。06年から現職
大阪大学社会経済研究所教授
東京
インスペックス代表取締役専務
1月21日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
技術革新と雇用
―日本の不安の原点を考える
IT技術が熟練労働をも代替するようになり、努力して
技能を習得しても将来役にたたなくなる可能性が高まって
きました。日本では正規・非正規雇用間の賃金格差が大き
いため、熟練労働を機械と非正規労働とで代替するような
技術革新が重視されがちです。これが、デフレや雇用不安
の背景にあると考えられます。こうした観点から科学技
術・労働・金融政策への含意を論じます。
東京
1月28日 18:30 ∼ 20:00
*会員無料、一般2000円
*日経東京本社ビル2階 SPACE NIO
≪イブニング・マーケット・セミナー≫
2013年以降の世界景気の注目点
米国の「財政の崖」問題、欧州の債務危機、中国の景気
減速、新興国の回復力の乏しさと、世界経済は2013年もさ
まざまな課題に直面しそうです。その振幅によっては、日
本のデフレ脱却シナリオが修正を迫られる恐れがあります。
海外経済の何をリスクととらえ、どんな準備をしておくべ
大守 隆・東京都市大学環境情報学部教授
きか。日銀で海外調査の中核を担う竹内氏を講師に迎え、
1974年東京大学工学部卒、オックスフォード大学経済学博士。
大阪大学経済学部教授、UBS証券チーフエコノミスト、APEC
経済委員会議長などを経て、2011年から現職
多角的に議論します。
東京
1月22日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
大阪
竹内 淳一郎・日本銀行国際局国際調査課長
1989年京都大学経済学部卒、日本銀行入行。国際局、香港事
務所、調査統計局、人事局、国際局国際調査課投資・市場調査
グループ企画役などを経て、2012年9月から現職
1月25日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
日本経済の新年の課題
年末に内閣府がまとめる「日本経済2012−2013」に基づ
き、2012年の日本経済を振り返ります。さらに、デフレが
長引き、空洞化の懸念も深刻化している日本経済の状況を、
長期的に国際比較をまじえながら分析し、今後の課題を考
えます。
増島 稔・内閣府参事官(経済財政分析−総括担当)
1986年東京大学経済学部卒、経済企画庁(現内閣府)入庁。
経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部参事官、計量分析
室参事官などを経て、2012年から現職
東京
2月5日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経東京本社ビル6階・カンファレンスルーム
グローバル経済の展望と日本の課題
2013年と、その先のグローバル経済を展望するうえで、
カギとなる要素は何でしょうか。新興国経済の減速、長引
く欧州危機、米国発のシェールガス革命、そして、日中韓
の相次ぐ指導者交代……。こうした注目点を解説しながら、
日本の針路を考えます。
竹中 平蔵・日本経済研究センター研究顧問
大阪
2月6日 14:00 ∼ 15:30
東京
2月8日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
新体制下の中国経済と今後の日米中関係
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
大阪
2月15日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
尖閣問題で再び表面化した日中外交摩擦は、東アジア経
≪日経センター「アジア研究」報告≫
済の協調発展を阻害し、世界経済にも悪影響を及ぼすこと
ASEAN経済と企業戦略
が懸念されています。中国経済および日米中関係に詳しい
瀬口氏が、中国経済の先行きと習近平政権の課題、米国の
ASEAN経済が企業の注目を集めています。中間所得層
アジア政策、日本の対中・対米戦略など、経済と政治の両
の勃興に伴う消費市場の拡大、2015年の経済共同体構築に
面から日米中関係を論じます。
向けた域内の貿易・投資の自由化、さらに開国に舵を切っ
たミャンマーなどの今後の発展にも関心が寄せられていま
瀬口 清之・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
す。本セミナーではASEAN経済の現状、経済共同体の概
1982年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。米国ランド研究
所フェロー、北京事務所長、国際局企画役などを経て、2009年
から現職。10年アジアブリッジ(株)設立
解説します。
要・見通し、さらにASEAN域内における企業動向などを
浦田秀次郎・日本経済研究センター特任研究員、早稲田大学大学院
アジア太平洋研究科教授(東京会場のみ)
東京
2月7日 14:00 ∼ 16:00
*日英同時通訳付き
*会場:日経東京本社ビル6階・カンファレンスルーム
石川 幸一・亜細亜大学アジア研究所教授(東京会場のみ)
牛山 隆一・日本経済研究センター主任研究員
GSR研究会特別セミナー
新興国における
グローバル企業の社会的責任
企業が社会から期待されている役割とは何でしょうか。
そして、歴史的、文化的な背景の異なる新興国に企業が進
出した場合には、どう違ってくるのでしょうか。日本経済
東京
2月13日 13:30 ∼ 15:00
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
中国経済の行方
―中速成長への意図的な舵取り
研究センターでは、グローバルな視野から企業の社会的責
任を考える研究会(GSR研究会)の活動を続けてきました。
30年近く続いた10%台の高度成長が終わり、中国は新た
この国際セミナーでは、日本を代表するグローバル企業の
な局面に入ってきました。習近平新体制は、潜在成長率が
ひとつ、第一三共のトップとアジアの新興国から招いた講
低下する中で、持続可能な経済成長への発展モデルの転換
師が議論します。
と、所得格差の是正といった様々な課題を抱えています。
若手中国人アナリストが、今後の中国経済の行方を展望し
庄田 隆・第一三共代表取締役会長
ニーブズ・コンフェサー・アジアマネジメント大学(フィリピン)教授
ラジブ・クマール・前インド商工会議所連盟専務理事
モデレーター)近藤 まり・同志社大学大学院ビジネス研究科教授
東京
2月22日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経東京本社ビル6階・セミナールーム2
大阪
2月25日 14:00 ∼ 15:30
*会場:日経大阪本社ビル8階・日経センター会議室
日経センター短期経済予測説明会
予測期間:2013年1−3月期∼2015年1−3月期
愛宕 伸康・日本経済研究センター短期経済予測主査
ます。
李 雪連・丸紅経済研究所シニアアナリスト
2001年外交学院卒、NEC-AS入社。05年早稲田大学アジア太
平洋研究科修士課程修了、丸紅入社。11年から現職
参加者募集
丸の内インドビジネス講座
インドビジネスに関係する企業の方を対象とした講座を開催します。インドビジネスを展開するの
に必要な政治、経済、ビジネスおよび生活・文化にわたる実践的情報を、体系的かつ集中的に習得す
るプログラムです。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。
◆主 催:サン・アンド・サンズ グループ
共 催:日本経済研究センター、丸の内インド・エコノミック・ゾーン
後 援:日印協会
◆日 時:全7回/2013年1月23日㈬、1月30日㈬、2月6日㈬、2月13日㈬、2月20日㈬、2月27日㈬、3月6日㈬
第1∼6回 午前8時30分∼10時(8時開場、お飲物をご用意しております)。
第7回 午後6時∼8時(意見交換会)
◆会 場:東京21cクラブ コラボレーションスペース(千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階)
◆対 象:駐在員教育及び赴任前研修を含め、インドビジネスに関心ある日本企業の方
◆定 員:50名
◆受講料:全7回受講を原則として、企業単位で下記のとおり申し受けます。
1社で複数名、参加される場合は割引となります。但し、割引が適用されるのは、同時にお申し
込み頂いた場合に限ります。
日本経済研究センター会員は、1社で3名以上参加される場合、1名増ごとに3万円増のところ、
1名増ごとに2万円増に割引いたします。
1名参加
2名参加
3名参加
4名参加
日本経済研究センター会員
6万円
10万円
12万円
14万円
非会員
6万円
10万円
13万円
16万円
*受講登録された方がご欠席の場合、代理出席も可能です。
*請求書をお送りいたします。
*個別受講の場合は、1回の受講につき、1名1万2千円です。意見交換会のみの場合は1名5千円です。
(複数名参加の割引は適用されません)
講義内容 *内容詳細はホームページ(http://www.jcer.or.jp/seminar/renzoku/index.html)をご覧ください。
開催日
タイトル
講 師
第1回
インド経済
1月23日
山田 剛/日本経済研究センター主任研究員
松本 勝男/国際協力機構 南アジア第一課長
第2回
インド政治
1月30日
広瀬 崇子/専修大学法学部政治学科教授
第3回
日印関係
2月6日
榎 泰邦/元駐インド日本国大使
サンジーヴ・スィンハ/サン・アンド・サンズ グループ代表
第4回
藤崎 照夫/元ホンダ シエル社長
インド人を理解するために
2月13日
須田アルナ/株式会社サオラ社長
林 博之/税理士法人トーマツ インド室担当 パートナー
第5回
インドビジネスの実践課題 ゴエル・シャラッド/税理士法人トーマツ インド室シニアマネージャー
2月20日
斉藤 暢子/税理士法人トーマツ インド室マネージャー
第6回
訴訟社会インドに備える
2月27日
小川 浩賢/小島国際法律事務所
ZEUSシニアパートナー日本担当弁護士
第7回
意見交換会
3月6日
ゲストスピーチ、及び参加者と講師を囲んでの自由懇談
*講師・テーマは変更になる可能性があります。
◆お申し込み方法:右記のサイトよりお申込みください。http://goo.gl/mgVQv
申込み締め切り 2013年1月11日㈮
◆問い合わせ先:サン・アンド・サンズ コンサルタンツ TEL:03−3287−7360
03(6256)7925
大阪のセミナーは… 06(6947)5414
東京のセミナーは…
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2013 年1• 2月の催し
TOKYO
月
ホームページまたはFAXでお申し込みください。
ホームページ
http://www.jcer.or.jp/
FAX ご希望のセミナーに○をしていただき、必要事項を
ご記入のうえ、このページをお送りください。
*詳細はホームページをご参照ください。*■は会員限定セミナーです。 ご希望のセミナーに○をしてください。
日
曜日
開催時間
9
水
14:00∼15:30
15
火
12:00∼13:30
16
水
15:00∼16:30
月
13:30∼15:00 技術革新と雇用―日本の不安の原点を考える
大守 隆 氏
火
13:30∼15:00 日本経済の新年の課題
増島 稔 氏
金
15:30∼17:00 中東新興市場と日本―新たなビジネスチャンスを探る
畑中美樹 氏
28
月
18:30∼20:00
5
火
14:00∼15:30 グローバル経済の展望と日本の課題
7
木
GSR研究会特別セミナー
14:00∼16:00 新興国におけるグローバル企業の社会的責任
2 8
金
13:30∼15:00
水
13:30∼15:00 中国経済の行方―中速成長への意図的な舵取り
金
14:00∼15:30 日経センター短期経済予測説明会
1 21
22
25
参加希望
新春特別セミナー
2013年の日本経済 再生への展望
岩田一政
会員会社・部長昼食会
第二期オバマ政権とアジア―歴史的文脈から考える
西崎文子 氏
欧州危機から銀行・財政同盟へ―日本企業・市場への示唆
アルブレヒト・ロタハー 氏・林 秀毅
≪イブニング・マーケット・セミナー≫
2013年以降の世界景気の注目点
竹内淳一郎 氏
竹中平蔵
庄田 隆 氏・ニーブズ・コンフェサー 氏・ラジブ・クマール 氏・近藤まり 氏
13
22
OSAKA
月
セミナー名
≪日経センター「アジア研究」報告≫
ASEAN経済と企業戦略
浦田秀次郎・石川幸一 氏・牛山隆一
李 雪連 氏
愛宕伸康
*詳細はホームページをご参照ください。*■は会員限定セミナーです。 ご希望のセミナーに○をしてください。
日
曜日
10
木
14:00∼15:30 世界経済のシナリオ、日本経済の課題
1 17
木
12:30∼14:00
金
14:00∼15:30 日本経済の新年の課題
増島 稔 氏
水
14:00∼15:30 新体制下の中国経済と今後の日米中関係
瀬口清之 氏
2 15
金
14:00∼15:30
25
月
14:00∼15:30 日経センター短期経済予測説明会
25
6
開催時間
セミナー名
参加希望
齋藤 潤
日経センター・大阪昼食会
実務に生かす『行動経済学』
大竹文雄
≪日経センター「アジア研究」報告≫
ASEAN経済と企業戦略
1 •2月のセミナー参加申込
牛山隆一
愛宕伸康
会 社 名
所属・役職
氏 名
TEL
*皆様の個人情報は上記セミナーに関する確認のほか、
日経センターの事業のみに使用いたします。
Mail
FAX
公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
http://www.jcer.or.jp
役 員
2010年(平成22年)4月1日(公益社団法人としての登記日) 事業
設立
代表理事
会長
杉田 亮毅
内外の財政、金融、経済、産業、経営等の諸問題に関する調
代表理事
理事長
岩田 一政
査、研究を行い、あわせて会員相互の研修を図り、日本経済
理事
新井 淳一
槍田 松瑩
大田 弘子
喜多 恒雄
小峰 隆夫
長谷川 閑史
御手洗 冨士夫
吉川 洋
監事
田村 達也
本田 敬吉
開始 1963年12月23日
目的
の発展に寄与することを目的としています。
上記の目的に沿って、主に次のような事業を展開しています。
事業
1
内外の財政、金融、経済、産業、経営等の諸問題に関する調査、研究
2
経済予測・分析・研修
3
セミナー・討論会・研究会等の開催
4
ライブラリー・情報サービス
5
研究奨励金の交付
研究顧問
新井
大竹
小林
小峰
齋藤
竹中
西岡
名誉顧問
金森 久雄
香西 泰
研究主幹
斎藤 史郎
普通会員、アカデミー会員(自治体、大学)、特別会員、名誉
会員
会員で構成してい ます。
会費、寄付金などで運営しています。
運営
日本経済研究センター 直通電話番号
総務本部
研究本部
03(6256)7710
役員秘書 03(6256)7700
経理グループ 03(6256)7708
総務・広報グループ
事業本部
予測・研修グループ 03(6256)7730
淳一
文雄
光
隆夫
潤
平蔵
幸一
事 務 局
研究開発グループ 03(6256)7740
事務局長
国際・アジア研究グループ 03(6256)7750
茅場町支所
事務局長補佐
兼総務本部長
石塚 慎司
事務局長補佐
兼事業本部長
村井 浩紀
研究本部長
猿山 純夫
大阪支所長
石塚 慎司
会報編集長
石塚 慎司
会員グループ 03(6256)7718
事業グループ 03(6256)7720
ライブラリー
03(3639)2825
大阪支所 06(6946)4257
グローバル研究室 03(6256)7732
源関 隆
所在地
東京・大手町
茅場町支所 (ライブラリー) 大阪支所
〒100-8066
〒103-0025
〒540-8588
東京都千代田区大手町1-3-7
日本経済新聞社11階
東京都中央区日本橋茅場町2-6-1
日経茅場町別館2階
大阪府大阪市中央区大手前1-1-1
日本経済新聞社8階
JCER
検索する
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日本経済研究センターでは、経済予測
T E L: 03(6256)7710
FAX: 03(6256)7924
T E L: 03(3639)2825
FAX: 03(3639)2879
T E L: 06(6946)4257
FAX: 06(6947)5414
や研究レポート、会報などの情報を
ホームページで公開しています。
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