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研究室概要
1.細胞特異性材料の創製と再生医療への展開 ①再生医療とは? ②細胞スフェロイド(cell spheroid)とは? 再生医療とは、失われた細胞や組織を再生して補う医療であり、臓器移植の 際の深刻なドナー不足を解消する画期的な医療として、近年注目されていま す。 ES細胞の分化誘導などの生物学的なアプローチに対し、材料方面からのア プローチに関する研究も近年急速な進歩をとげています。 たとえば、Vacanti兄弟とR.Langerによる「耳マウス」 は強烈なインパクトと共に「Tissue Engineering」とい う言葉を世間に広く知らしめました。実際に背中につ いている耳は耳として機能するものではないですが、 それでも、再生医療における材料の重要性は示され ました。 当研究室では、「細胞スフェロイド」というものを作成し、 これを再生医療へ応用することを目標としています。 vs 細胞のカタマリのことです。細胞は通常、単層(シート)の状態で底面に接着しますが、そ の底面に何らかの仕掛けをすることで、細胞は底面に接着することなく、細胞同士で凝集 し、カタマリを形成します。これを細胞スフェロイドとよんでいます。 人間の組織は単層状で成り立っているわけではありません。細胞がカタマリで存在したと き、その組織としての機能が十分に発揮されるわけです。つまり、細胞スフェロイドを培養 するということは、単層状態で細胞培養するときよりも、その組織本来の機能を高くもつこ とが期待されるわけです。 ④細胞と界面 cell pr o tein ③スフェロイドは小さいほうがいい! cell protein 細胞スフェロイドをつくる研究は数多くされてきましたが、従来の方法では、 大きなスフェロイド(mmオーダー)しかつくることができませんでした。ス フェロイドが大きいと、内部の細胞まで十分に栄養や酸素が行き届かず、 やがて内部から壊死してしまうことが知られています。これがいままでの 細胞スフェロイドの問題点でした。 細胞接着機構の 物理化学的計測 ・表面張力 ・接触角 ・表面電位 ・含水率 ・粘弾性 など それでも、細胞スフェロイドを長期間培養するためには? スフェロイドひとつひとつを小さくして、細胞内部まで必要な栄養や酸素 が届くようにしてやればよいのです。 当研究室では・・ 細胞を接着させない表面 (細胞非接着表面) 細胞が基板や材料に接着するときの機構は、①基材に タンパクが接着②基材に接着したタンパクに細胞が接着 という順序です。ですから、細胞の接着を考えるときには、 まずはタンパクが接着する界面を考えなければなりませ ん。この界面を目的に合わせて制御する研究は工学的 には非常に進んできていますが、それがなぜよいのか、 など、その詳しい機構については、まだまだ理学的見地 からの解明が必要です。界面でどのようなことが起こっ ているのかを、正しく理解することで、はじめて有効な界 面をつくることができるのです。 こうしてできた細胞スフェロイドを、それぞれ目 的に合わせて、インプラント可能な形に成形し ます。 しかも、アレイ状にパターンをつくることにより、一度に大 量の小さな(直径100µm)スフェロイドをつくることに成 功しています。細胞の種類も、ラット肝細胞、ウシ関節軟 骨細胞などさまざまな細胞でスフェロイドアレイを作成で きることが確認できました。 細胞を接着させる表面 (細胞接着表面) 細胞が基板や材料と接触する界面に着目し、その界面 に、高分子を用いて、細胞が接着する表面と接着しない 表面をパターン状につくることに成功しました。このよう にしてつくった基板の上に細胞を播種すると、細胞が通 常の層状接着ではなく、自主的にスフェロイドとなって接 着することがわかりました。 細胞スフェロイド 100µm ウシ関節軟骨細胞スフェロイドアレイ 2.高感度ヘルスケアデバイス創製のための界面設計 ①細胞の界面 細胞の最表層のようすは、図に示すように、本来、 とても緻密な構造になっています。細胞はいろいろ な種類のものを認識しなければならないので、そ れぞれについて鍵をもっています。こうして「特異 的」な認識は行われるのです。 糖タンパク質 ルス ウィ 細菌 細胞 細胞 細胞表面の糖鎖▲は、別の細胞や感 染性の細菌、ウィルス、毒素、ホルモン など、多くの分子の接着部位となって います。 糖鎖がウイルスなどの分子を認識する と、めぐりめぐって、発熱や炎症などの 症状となって現れます。 細胞最表面のようす ②界面を再現 ② 何かを達成するためには、「相手を良く知れ」といいます。 たとえば、病気になったかどうかを正確に診断するために も、その原理、つまり、細胞レベルでどのようなことが起 こっているのかを正確に知ることが必要です。 そこで、当研究室では、細胞界面で起こっていることを正確に把握するために、 人工的に細胞の界面の一部を再現し、糖鎖が何かを認識したときに生じる 様々な変化を測定し、診断に応用しようと考えています。 ③ ① たとえば、金属をベースにした 界面をつくれば、既存の装置を 組み合わせて、より高感度な診 断装置をつくることができます。 当研究室では、①界面をつくる②認識側をつくる③認識 物(レポーター粒子)と界面の相互作用を解析する、を トータル的に研究していきます。 分散状態 凝集状態 逆に,コロイドの界面に糖鎖を生やして,標的分子を認識させると、 ナノ粒子型診断材料に応用することが出来ます。