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IFRS Outlook 増刊 第75号 2010年6月(PDF:325KB)
第 75 号 2010 年 6 月 IFRS outlook 増刊号 IASB と FASB による 単一の収益認識モデルの提案 概要 重要ポイント ▶ こ の共同提案は、ほぼすべて の販売取引に関して、単一の収 益認識モデルを適用する ▶ 収益は、契約上の物品 又はサ ービスの支配が顧客に移転さ れた時点で、個々の要素(履行 義務)ごとに認識される ▶ ▶ 提 案されたモデルは、現行の IFRS に比べてより多くのガイダ ンスを提供している 当該提案によって、以下の基準 及び解釈指針は新しい基準に 置き換えられる I AS 第 11 号「工事契約」 I AS 第 18 号「収益」 IFRIC 第 13 号「カスタマー・ロイ ヤリティ・プログラム」 IFRIC 第 15 号「不動産の建設 に関する契約」 IFRIC 第 18 号「顧客からの資産 の移転」 S IC 第 31 号「収益-宣伝サー ビスを伴うバーター取引」 ▶ コ メント受付期間は、2010 年 10 月 22 日までである 2010 年 6 月 24 日、国際会計基準審議会(以下、IASB)と米国財務会計基準 審議会(以下、FASB)(総称して以下、両審議会)は、公開草案「顧客との契約 における収益認識」(以下、ED)を公表した。提案されたモデルは、顧客に対し て約束した物品及びサービスを提供する契約に関して、その収益認識の金額、 時期及び不確実性を決定するにあたり、企業が適用すべき原則を規定してい る。 今回の提案により、取引の内容によっては、会計処理は大きく変わらないもの の、すべての企業がこの新しいガイダンスによって何らかの影響を受けると考 えられる。 当該提案はまた、複数要素契約など一定の取引に関して、現行 IAS 第 18 号 「収益」に比してより詳細なガイダンスを導入している。会計方針選択のヒエラ ルキーを用いて、複数要素契約に関して USGAAP のガイダンスを用いている IFRS 適用企業についても、これによる影響を検討する必要がある。なぜなら、 提案されたモデルは IFRS と USGAAP 双方の基本原則を一本化し、現行 USGAAP に存在する業種特有のガイダンス数を減少させることになるためで ある。 製品保証や条件付対価など、販売取引において一般的な一部の要素につい ても、提案されたガイダンスによって、その会計処理に影響が生じる。 モデルの全体像 提案されたモデルは、以下に示す 5 つのステップ から構成され、企業は当該ステップに基づき、収益 として認識すべき適切な金額及び時期を決定す る。 1. 顧客との契約の識別 2. 契約における独立した履行義務の識別 3. 取引価格の決定 4. 取引価格の独立した履行義務への配分 5. 各履行義務の充足時点における収益の認識 両審議会は、新しい基準の適用初年度において、 企業は表示されるすべての期間に関して、新しい ガイダンスを遡及適用することを提案している。ED には最終基準の発効日に関する提案は含められ ていない。代わりに、当該発効日については、現在 開発作業中であり、2011 年までに完了する見込 みのすべての主要な共同プロジェクトに関して、そ の発効日を審議する新たなプロジェクトの一環とし て、まとめて検討されることになる。 適用範囲 ED は、顧客との契約における収益の会計処理に 関して、新たなガイダンスを規定している。提案さ れたガイダンスは、以下の項目を除く、すべての顧 客との契約に適用される。 • リース契約 • 保険契約 • 金融商品 • 一定の非貨幣性資産の交換取引 さらに ED は、通常の企業活動から生じるアウトプ ット(製品等)に該当しない一部の非金融資産の売 却取引(たとえば、有形固定資産又は無形資産の 売却)に関しても、提案モデルの認識及び測定原 則を適用するべきことを規定している。 現行 IFRS との相違点 IAS 第 18 号は、収益の認識時期の決定にあたり、 「リスク及び経済価値」の移転を重視している。一 方、提案されたモデルは「支配」の移転を重視して おり、特に現在、進行基準を用いて収益認識を行 っている企業に関しては、これにより異なる結果が 2 生じる可能性がある。履行義務を識別し、取引対 価を個々の独立販売価格に基づき当該履行義務 に配分することを要求する当該提案は、現行の IFRS に比してより多くのガイダンスを提供してい る。 なお、提案されたモデルにおける一部の規定は、 現在の会計処理とは大きく異なる結果をもたらす 可能性が高い。以下ではこれらの事項を中心に説 明する。 顧客との契約の識別 提案された収益認識モデルを適用するために、企 業は、まず契約を識別する必要がある。提案され たガイダンスでは、契約は書面、口頭又は黙示的 な場合があり、企業のビジネス慣行も契約の存在 の有無を決定するにあたり、影響を生じさせる場合 があるとされている。 ED ではまた、提案されたガイダンスの規定は、顧 客との単一の契約に適用される場合が通常である が、収益認識の目的上、企業は複数の契約を結合、 又は単一の契約を分割する必要があるとされてい る。同様に契約の修正に関しては、当初の契約と 当該修正の相互依存の程度に応じて、それを当初 の契約と一体で扱う場合と独立した契約として扱 われる場合がある。 独立した履行義務の識別 区分可能な物品及びサービス 提案されたモデルでは、約束したすべての物品及 びサービスを識別するために、企業は、自身の通 常のビジネス慣行とともに、契約条件を評価する 必要がある。たとえば、90 日間の製品保証を提供 する確立されたビジネス慣行が存在する場合は、 仮に顧客との契約において保証を受ける権利を顧 客に対して明示的に与えていなかったとしても、製 品保証の提供が約束したサービスに該当する可能 性が高い。 企業は、約束した物品及びサービスを独立した履 行義務として扱うべきかを判定する必要がある。 提案されたモデルでは、約束したすべての物品及 びサービスを識別するために、企業は、自身の通 常のビジネス慣行とともに契約条件を評価する必 要がある。 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案 提案されたモデルでは、約束した物品及びサービ スに関して、その物品又はサービスが「区分可能」 な場合にのみ、それらを独立した履行義務として 扱うべきとしている。提案されたモデルでは、以下 のいずれかの場合には、物品又はサービスは区 分可能であるとしている。 • • 企業又は他の企業が、同一又は類似の物品 又はサービスを個別に販売している、 又は 企 業は、以下の条件を共に満たすことから、 当該物品又はサービスを販売することが可能 と考えられる • 当該物品又はサービスは、それ自体で、 又は(他の企業より)市場で入手可能な 他の物品及びサービスと一体となって、 用役を提供するものである • 当該物品又はサービスは、異なるリスク を反映した他と区別される利益率を有し、 企業は当該物品又はサービスを提供す るために必要な資源を独立して識別でき る。 いる潜在的な製品の欠陥を補修する目的の保証 は、独立した履行義務には該当しない。この場合 において企業は、物品又はサービスを提供する履 行義務自体が充足されているかを評価する必要が ある。一方、顧客が物品の支配を獲得した後に生 じる欠陥を補修する目的の保証は、独立した履行 義務に該当する。 しかし、どちらの種類の保証であっても、収益のう ちの一定額が繰り延べられる場合があることに変 わりはない。潜在的な欠陥を補修する目的の保証 については、潜在的な欠陥が存在すると見込まれ る製品(又は製品の一部)に関して、企業は収益を 繰延べる必要がある。繰延べられた金額は、(欠 陥のない状態で)当該製品の支配が移転されたと みなされる時点(たとえば、実際に欠陥製品の補 修を顧客の要請に基づき実施した時点)で、事後 的に収益として認識される。保証が独立した履行 義務とみなされる場合(支配の移転後に生じる欠 陥を補修することが保証の目的の場合)は、当該 保証サービス(履行義務)に配分された収益(取引 対価)は、当初は繰延べられ、保証サービスが提 供される期間にわたって収益として認識される。 EY のコメント EY のコメント 複数要素契約に関するこのガイダンスは、現行 の IFRS には無いものであり、多くの企業に対し て重要な変更を及ぼす可能性がある。特に、進 行基準を用いて収益認識を行っている企業の実 務に大きな変化があると考えられる。現在、多く の企業において、ある契約全体を一つの会計単 位として識別している場合が多い。提案されたモ デルでは、このような企業は、契約における複数 の履行義務を識別することになる可能性が高 い。 収益認識の時期は、製品保証条項が含まれる すべての取引に関して、当該保証が独立した履 行義務とみなされるか否かにかかわらず、影響 を受けることになる。なぜなら、現在の実務にお いては通常、収益はその全額を認識するととも に、保証義務を履行するための増分費用を負債 (引当金)として計上しているためである。 製品保証 物品の販売において、製品保証が付されることは 一般的である。これらの製品保証は、提供される 保証の目的に応じて独立した履行義務になる場合 とならない場合がある。提案されたモデルでは、保 証に関連する義務に関して、収益は当初繰延べら れ、保証サービスの提供に応じて事後的に収益と して認識される。保証義務を果たすために費消さ れるコストは、その発生時点で費用計上される。 提案されたモデルは、保証を 2 種類に区別してい る。物品が顧客に移転された時点で既に存在して 取引価格の決定 提案されたガイダンスは、取引価格を「第三者のた めに回収する金額(たとえば、税金)を除き、物品 またはサービスの移転と交換に、企業が顧客から 受領する又は受領すると見込まれる対価の金額」 と定義している。多くの場合、取引価格は固定され ており、支払いは企業が約束した物品又はサービ スの支配を移転するのとほぼ同時に行われるため、 取引価格の決定は容易である。 しかし、取引の中には、取引価格の一部が変動す る(すなわち、価格が将来事象に依存する)場合が ある。提案されたモデルはこのような取引に関して、 企業が合理的な見積りを行う能力を有する場合に は、企業はその見積取引価格に基づき収益を認識 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案 3 する必要があると規定している。取引価格の合計 に関する企業の見積りは、契約の起こり得る結果 (シナリオ)と各結果の発生可能性を適切に考慮し たものでなければならない。一方、企業が合理的 な見積りを行う能力に欠ける場合には、(当初に収 益として認識される)取引価格は、固定又は合理 的に見積ることが可能な対価の金額に限定され る。 特定の取引においては、対価の支払いが前払い で行われるか、物品又はサービスが提供されてか らかなり遅れて行われるため、支払時期が顧客へ の物品又はサービスの移転時期と一致しない場合 がある。どちらの場合であっても、企業は取引金額 の合計に関して貨幣の時間価値を考慮する必要 がある(収益を割引現在価値で計上する)。 取引価格の決定にあたり、企業はまた、対価の回 収可能性(すなわち、顧客の信用リスク)、現金以 外の対価(たとえば、顧客が企業に対して契約の 実行を容易にするために原材料や備品を提供する 場合)、及び顧客に対して企業が支払う対価(たと えば、取引価格の割引)を考慮する必要がある。た とえば、提案されたモデルにおいて企業は、履行 義務の充足時において、起こりうる結果に関する 発生可能性を加重平均する方法に基づき、回収さ れると見込まれる対価を評価する必要がある。こう して算定された金額が取引価格の合計の決定に 用いられる。また、回収されると見込まれる金額に 関してその回収可能性が変動したこと、又は実際 の回収額が異なったことによる事後的な収益計上 金額の変動は、その他の収入又は費用(すなわち、 収益以外)として認識される。 多くの企業にとって、これらの項目に関する取引価 格の調整は、現行実務を大きく変えるものとなる。 EY のコメント 企業が条件付対価を含む契約を締結する場合、 当該条件付対価の金額を合理的に見積る能力 を有する企業にとっては、条件付対価に関連す る収益の認識時期が、現在よりも早まることにな る。 4 独立した履行義務への取引価格の配分 履行義務が識別され、取引価格が決定された後、 企業は提案されたモデルに基づき、当該取引価格 を各履行義務に対して、それぞれの独立販売価格 の比率、すなわち、相対的な独立販売価格に基づ き配分することが求められる。 入手可能な場合には、個別に販売される物品又は サービスの観察可能な価格は、独立販売価格の 最も信頼のおける証拠を提供する。しかし、多くの 場合、容易に観察可能な独立販売価格は存在しな い。このような場合、企業は独立した販売を前提と して、個々の履行義務について販売されると見込 まれる金額を見積る必要がある。提案されたモデ ルは、独立販売価格の見積りにあたって利用しう る 2 種類のアプローチ例、すなわち、「マージン加 算見積原価ア プロ ーチ ( expected cost plus a margin approach)と「調整見積市場価格アプロー チ(adjusted market expected approach)」を示し ている。後者はたとえば、当該物品又はサービス に対して市場参加者が自発的に支払うであろう金 額として決定される。 提案されたモデルにおいて、独立販売価格は必ず 契約開始時点で決定される必要がある。履行義務 に配分される取引金額は、物品及びサービスが提 供されるにつれて、顧客に対して追加で割引を行う など、取引価格の見積りが変更されれば、これに 伴って更新される。しかし、配分計算に使用された 独立販売価格は、契約開始後の独立販売価格の 変動を反映するよう更新されることはない。 EY のコメント 個別に販売されない物品及びサービスが履行 義務として識別された場合、企業はその見積独 立販売価格を決定する必要があるが、当該作業 の実施は、企業にとって多くの労力を要すること がある。 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案 各履行義務の充足時点における収益の 認識 提案されたモデルは、個々の履行義務に配分され た収益(取引価格)は、顧客が対象となる物品又は サービスの支配を獲得した時点で(収益として)認 識することを要求している。顧客は、「物品又はサ ービスの使用を指示し、かつそこから便益を得るこ とができる現在の能力を有する時点で、当該物品 又はサービスに対する支配を獲得する。」 取引価格の決定にあたり、企業はまた、対価の回 収可能性、現金以外の対価、及び顧客に対して企 業が支払う対価を考慮する必要がある。多くの企 業にとって、これらの項目に関する取引価格の調 整は、現行実務を大きく変えるものとなる。 多くの場合、顧客がいつの時点で支配を獲得した かを判定するのは、比較的容易である。しかし、そ れ以外の場合においては、こうした判定がより複 雑になることもある。特定の物品又はサービスに 対する支配を顧客がいつの時点で獲得したかを企 業が判定できるように、提案されたモデルでは、顧 客が支配を獲得したことを示す以下の指標を提供 している。 • 顧 客が物品又はサービスに対する支払いを 行う無条件の義務を負っている • 顧客が物品又はサービスの法的所有権を有 している • 顧 客が物品又はサービスを物理的に占有し ている • 物 品又はサービスのデザイン又は機能が顧 客専用のものであるため、企業にとっては、こ れを他の用途に転用することが難しいため、 当該物品又はサービスはほとんど価値を有し ない可能性がある場合 ED は、上記の一部の指標は、取引によっては関 連性が低い場合もあることを認識している。さらに、 いずれの指標も単独で、顧客が物品又はサービス の支配を獲得したか否かを決定付けるものではな い。 この場合、企業は当該買戻権に関する負債も同時 に計上する。一方、企業が資産を買戻す無条件の 義務(先物)又は権利(コール・オプション)を有する 場合には、顧客は当該資産に対する支配を獲得し ていないことから、このような取引は販売ではなく (よって、収益は認識されない)、リース(当初販売 価格を下回る金額で企業が買い戻す場合)又は金 融取引(当初販売価格と同額又はそれを上回る金 額で企業が買い戻す場合)として会計処理される。 収益の認識時期は、約束した物品又はサービスに 対する支配が、いつの時点で顧客に移転したかの 判定に直接左右される。たとえば、契約が物品の 提供を約する場合(一定の顧客に特有な物品を除 く)、企業は、当該物品が顧客に対して移転された 時点で収益を認識する可能性が高い。一方、契約 にサービスの提供が含まれる場合、関連する収益 は当該サービスの提供期間にわたって認識される 可能性が高い(当該サービスに対する支配が継続 的に移転することを前提とする)。 EY のコメント 物品の提供を含む長期契約の収益認識に関し て、現在、進行基準を用いている企業は、契約 上の特定の履行義務に関する支配の移転が、 契約期間にわたって継続的に行われるのではな く、特定の一時点で行われるものと判定すること になる可能性がある。 不利な履行義務 ある履行義務を充足するために要する直接費用が、 当該履行義務に配分された取引対価の金額を上 回ると企業が判断した場合、提案されたモデルで は、このような履行義務を不利なものとして扱うこ とが要求されている。履行義務が不利と判断され た場合、企業は、直接費用が、配分された取引価 格を上回る金額について、負債と対応する費用を 認識する必要がある。不利な契約に関する負債は、 直近の見積りに基づき、各報告期間の期末日に再 測定される。これによる変動は、利得又は追加費 用として認識される。 ED は、買戻条項付きの契約において、顧客が資 産に対する支配を獲得したか否かの判定について も規定している。提案されたモデルでは、顧客が企 業に対して資産の買戻しを請求できる能力を有す る場合には、顧客は当該資産に対する支配を獲得 しており、したがって売上が計上される必要がある。 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案 5 EY のコメント 不利な履行義務に関する規定は、IAS 第 37 号 「引当金、偶発債務及び偶発資産」に定められ る現行規定に類似している。しかし、ほとんどの 企業は現在、不利な契約か否かを判定する際 に、契約全体を一つの会計単位として扱ってい る。上記提案においては、企業は個々の履行義 務単位で判定を行う必要があるため、現在の契 約単位よりもかなり小さい単位で判定が求めら れることになる可能性がある。 ED は、契約に直接関連するコストの例(たとえば、 直接労務費及び直接材料費)に加え、発生時に費 用処理すべきコストの例(たとえば、契約獲得コス ト及びすでに充足された履行義務に関連するコス ト)を示している。 このガイダンスに基づき認識されたすべての資産 は、減損の必要性を毎期検討(帳簿価額が、残存 する履行義務に配分された取引価格の金額から、 当該履行義務の充足のために直接関連する費用 を控除した金額を超過するか否か)し、企業が関連 する物品又はサービスの支配を移転した時点で、 売上原価において費用として認識される。 非金融資産の売却 開示規定 ED では、提案されたガイダンスは、売却対象とな る非金融資産が通常の企業活動から生じるアウト プット(製品等)に該当しない場合であっても、一部 の非金融資産の売却に対して適用されるとしてい る。これには、無形資産の売却と有形固定資産 (不動産を含む)の売却が含まれる。その結果、提 案されたモデルはこれらの資産の売却から生じる 利得(すなわち、収益ではない)に関して、その認 識及び測定に関するガイダンスを提供するものと なっている。 ED は多くの新しい開示規定を追加している。基本 となる開示目的は、「財務諸表の利用者が顧客と の契約における収益及びキャッシュ・フローに関し て、その金額、時期及び不確実性を理解すること ができるように」、定量的及び定性的情報を提供す ることにある。当該原則に基づき、ED は、企業の 顧客との契約に関連して多くの開示を要求してい る。これには、以下が含まれる。 提案されたモデルでは、企業は、買手がこのような 資産に対する支配を獲得した時点で当該資産の 認識を中止し、取引価格と資産の帳簿価額の差額 で当該取引から生じる利得又は損失を認識する。 物品又はサービスの販売と同様に、取引価格の決 定には多くの要因を考慮する必要があり、取引価 格として認識する金額は合理的に見積ることがで きる金額に制限される。 • 「 経済的要因によって、収益及びキャッシュ・ フローの金額、時期及び不確実性にどのよう な影響が生じるかを最も適切に表すカテゴリ ー」ごとに区分した収益の開示 • 契約資産及び契約負債の総額に関する期首 と期末残高の調整表 • 企 業の顧客との契約に関する履行義務の説 明。これには、義務の充足が契約の開始日よ り一年超と見込まれた履行義務に関して、期 末日時点で残存する履行義務に配分された 取引価格の金額(予想される義務の充足時 期ごとに区分開示)が含まれる。 • 不 利な履行義務について認識された負債の 合計額に関する期首と期末残高の調整表 契約コスト 提案されたモデルでは、契約上の履行義務の充足 に関連して発生するものの、他の基準書(たとえば、 IAS 第 2 号「棚卸資産」、IAS 第 16 号「有形固定資 産」又は IAS 第 38 号「無形資産」)において資産化 の要件を満たさないコストは、以下の要件を満たす 場合にのみ個別の資産として認識する必要がある とされている。 6 • 契約又は交渉中の特定の契約に直接関連し ている • 将 来の履行義務の充足のために使用される 企業の資源を創出又は向上させるものである • 将来において回収が見込まれる ED はまた、企業に対して、この提案された収益認 識モデルを適用する際に行った重要な判断に関す る開示も要求している。これには、履行義務の充 足時期ならびに合計の取引価格の決定及び配分 に影響を与えた判断が含まれる。 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案 EY のコメント 上記提案は、IAS 第 18 号における現在の要求 事項と比して、非常に多くの開示を要求してい る。 提案されたモデルでは、顧客が企業に対して資 産の買戻しを請求できる能力を有する場合に は、顧客は当該資産に対する支配を獲得してお り、したがって売上が計上される必要がある。こ の場合、企業は当該買戻権に関する負債も同 時に計上する。 今後の対応 両審議会は、このプロジェクトに多くの時間を費や しており、18 ヶ月前のディスカッション・ペーパー (予備的見解)の公表以後、多くの重要な意思決定 を行ってきた。提案されたモデルの潜在的影響及 び、すべての企業に対して重要な影響を及ぼす可 能性を考慮すると、企業は、提案されたガイダンス が、自社にとって具体的にどのような影響を与える 可能性があるかも含め、提案事項の内容を理解し、 両審議会に対して当該提案に関するフィードバック を提供することが重要であると我々は考えている。 さらに、本稿では提案されたモデルの概要につい て説明しているが、企業が当該提案事項をより詳 細に理解するための一助となるために、今後、より 詳細な資料を提供する予定である。■ ED のコメント提出期限は、2010 年 10 月 22 日である。 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案 7 Ernst & Young ShinNihon LLC アーンスト・アンド・ヤングについて アーンスト・アンド・ヤングは、アシュアランス、 税務、トランザクション・アドバイザリー・サービ スなどの分野における世界的なリーダーです。 全世界の14万4千人の構成員は、共通のバリ ュー(価値観)に基づいて、品質において徹底し た責任を果します。私どもは、クライアント、構 成員、そして社会の可能性の実現に向けて、プ ラスの変化をもたらすよう支援します。詳しく は、www.ey.com にて紹介しています。 「アーンスト・アンド・ヤング」とは、アーンスト・アンド・ヤ ング・グローバル・リミテッドのメンバーファームで構成 されるグローバル・ネットワークを指し、各メンバーファ ームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責 任会社であり、顧客サービスは提供していません。 新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、アーンスト・アン ド・ヤングのメンバーファームです。全国に拠点 を持ち、日本最大規模の人員を擁する監査法 人業界のリーダーです。品質を最優先に、監査 および保証業務をはじめ、各種財務関連アドバ イザリーサービスなどを提供しています。アーン スト・アンド・ヤングのグローバル・ネットワーク を通じて、日本を取り巻く世界経済、社会にお ける資本市場への信任を確保し、その機能を 向上するため、可能性の実現を追求します。詳 しくは、www.shinnihon.or.jp にて紹介してい ます。 アーンスト・アンド・ヤングのIFRS (国際財務 報告基準)グループについて 国際財務報告基準(IFRS)への移行は、財務 報告における唯一最も重要な取り組みであり、 その影響は会計をはるかに超え、財務報告の 方法だけでなく、企業が下すすべての重要な判 断にも及びます。私たちは、クライアントにより よいサービスを提供するため、世界的なリソー スであるアーンスト・アンド・ヤングの構成員とナ レッジの精錬に尽力しています。さらに、さまざ まな業種別セクターでの経験、関連する主題に 精通したナレッジ、そして世界中で培ったp最先 端の知見から得られる利点を提供するよう努め ています。アーンスト・アンド・ヤングはこのよう にしてプラスの変化をもたらすよう支援します。 © 2010 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 8 本書又は本書に含まれる資料は、一定の編集を経た 要約形式の情報を掲載するものです。したがって、本 書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考 目的の利用に限られるものとし、特定の目的を前提と した利用、詳細な調査への代用、専門的な判断の材 料としてのご利用等はしないでください。本書又は本 書に含まれる資料について、新日本有限責任監査法 人を含むアーンスト・アンド・ヤングの他のいかなるグ ローバル・ネットワークのメンバーも、その内容の正確 性、完全性、目的適合性その他いかなる点についても これを保証するものではなく、本書又は本書に含まれ る資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発 IASB と FASB による単一の収益認識モデルの提案生したいかなる損害についても一切の責任を負いませ ん。