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日本語版(161KB)

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日本語版(161KB)
2005 年 6 月 27 日-28 日
IASB 御中
6 月 SAC アジェンダに関するコメント
(社)日本経済団体連合会
企業会計部会長
日立製作所
取締役会議長
監査委員長
八木 良樹
1
日本経団連の企業会計部会長を務めております、日立製作所取締役会議長、
監査委員長の八木であります。今回の SAC には欠席致しますが、日本の財務諸
表作成者の立場で、各アジェンダについての意見を次頁以下に報告申し上げる
ものです。
2
○アジェンダ4 業績報告
1.私は、本件に関しては2001年10月のSAC以来、5度にわたり、本
プロジェクトに関して、IASB提案の方向に明確に反対意見を述べてきた。
私は、作成者が市場関係者に提供する財務情報として純利益が最も重要であ
ると確信しており、よって包括利益を業績と捉えることに明確な反対意見を
申し上げてきた。
その後、2004年 2 月から本年 2 月に開催された4度のSACにおいて
は業績報告が独立の正規のアジェンダとしてテーマアップされたことはなく、
今回、突然、議題とされたことについては、大変に愕いている。
2.業績そのものの定義や純利益あるいはリサイクルの取扱いなど、概念フレ
ームワークに直結する重要な議論を先送りする、セグメントAとBに分ける
進め方に大きな問題がある。
3.本プロジェクトに関して、本年4月に日本、EU、米国の19の主要企業
CFOが、基本的な懸念を含む意見書をIASB及びFASBの議長に提出
しているが、これらを十分に斟酌願いたい。
4.単一の当期利益及び包括利益計算書(パラグラフ2のc、及びf)
(1)セグメントAプロジェクトにおける下記の決定には強く反対する
(2の c)当期利益をサブトータルとし、包括利益をボトムラインとする様
式を強制すること
(2の f)1 株当たり利益の計算は、従来どおりのEPSを求めるが、併せ
てCPSの開示を容認すること
(2)その理由
①業績として経営者が開示すべき重要事項は当期利益であることを前提に
現行の損益計算書の表示基準は定められているが、これに格別の問題が
生じているとは考えていない。
②2の c と f が同時に基準化されれば、投資家の混乱を招くことは必須で
ある。
サブトータルとして当期利益とボトムラインの包括利益との何れが業績
であるのか、即ち作成者の業績責任は何れにあるのかが、明確に開示さ
れない欠陥があるためである。
また、利用者においてEPSとCPSとの単純な取り違えが発生する懸
念も大きい。私どもの作成者としての経験から包括利益は、経営者の支
配の及ばない要因により大きく変動する特徴があることも留意されるべ
きである。
③退職給付会計についての懸念もある。
3
IASBでは、数理差異を損益計算を通さずに未処分利益剰余金に直接
貸借記する手続を容認している。(これは当期利益の計算としても疑義
がある)
一 方 、 米 国 で は 退 職 給 付 費 用 計 算 は P B O ( projected benefit
obligation)によって行い、ABO(accumulated benefit obligation)
によって追加最小負債をOCI(other Comprehensive income)に計
上する。
このような複数の負債概念に基づく会計基準の相違が存在する現時点に
おいて、それぞれの基準に基づいて算定された包括利益の有用性に大き
な疑問がある。
④従って、基本的な業績概念、即ち 包括利益は業績たりうるのか、1株
当たり情報の対象は何か、リサイクリングの要否などの検討が未了の内
は、少なくとも次の2点を求める。
ⅰ)損益計算書のボトムラインを当期利益とすることを強制し、包括利
益の注記を求める。(包括利益はその意義等が未検討であって損益
計算書のボトムラインとして開示する適格がない。)
ⅱ)CPSの開示を禁止する。
○アジェンダ 6 収益認識
1.アジェンダについても2002年11月以来3度意見を表明している。基
本的に現行のいわゆるB/S・P/L混合アプローチに格別の問題は生じ
ていない旨を強調してきた。
アジェンダ6によれば、新しい概念モデルが必要であるとIASB、FA
SBともに意見が一致しているとある。収益認識はまさに基本的な会計基準
であり、変更することによる各種の大きなインパクトが予想される。過去か
ら現在まで行われ定着した慣行に大きな変更を加える場合には、これらのイ
ンパクトに十分な配慮が必要である。(ex.情報の有用性が大きく改善す
るか否か、実務上の困難性、作成者コスト)
2.アジェンダ6のパラグラフ 11 によれば、米国FASBは、履行義務を企業
間取引市場における公正価値で測定しないアプローチを模索することを決定
したとあるが、これにより、履行義務は、履行価額、すなわち、契約価額に
よって測定されることとなる。この点は、私は、一歩改善かと判断する。
私は、契約発生時収益の導入に反対であり、添付されたモデルの
Alternative3を支持する。
3.私の考え方は、これまでと全く変更はなく、改めて昨年11月SACにお
いて提示したコメントを示したい。
4
<2004 年 11 月SACに提示したコメント>
私は、2002 年 11 月と 2004 年 6 月の SAC において、本件についてコメントを
提出した。
あらためて、次の事項をコメントとして提出する。
1. 現在の資産負債アプローチと収益費用アプローチとの混合アプローチか
ら資産負債アプローチのみによって律することに変更するほどの問題点
が生じているのか実証的な検証を行うべきである。
2. 販売契約等に係る資産負債を決算日において公正価値基準によって評価
し、損益の基礎とする方法は、現行基準の大きな変更であり、十分な理論
面と実践的側面からの吟味が求められる。 金融商品とは異なり、製造業
が契約上負担するオブリゲーションの金額は、個々の製造業者が有する研
究開発力や製造技術力によって大きく異なるのが実態であるにも拘らず、
8 項(a)には、このような実態をおおよそ反映できない、第三者に引き
受けられうる価額で測定する方法や顧客から受け取る対価をもって測定
する方法が検討されていると記述されている。 私どもは、作成者として
これらの何れの測定方法にも賛同できない。
3. 検討されている手法を実践するための作成者の実務作業負担は現行基準
に比して大きく増大する懸念があるが、この増加したコストは、最終的に
は投資家によって負担される。 この増加するコストと期待されるベネフ
ィットのバランスが不明確である。
4. 本プロジェクトは、2002 年 6 月に検討を開始して 2 年半もの時間を費やし
ているが、未だにディスカッションペーパー等の公表に至っていない。
IASB と FASB 両審議会の共同プロジェクトであるが、具体的な成案の目途
は立っているのであろうか。 IASB のルールであるサンセットレビューを
検討する時期に至っているのではないか。 サンセットレビューは FASB
との行動プロジェクトに対しても適用されるべきであると考えるが、如何
か。
以
5
上
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