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両審議会は、キャッシュ・フローの配分 について決定、保険契約の経過

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両審議会は、キャッシュ・フローの配分 について決定、保険契約の経過
保険IFRSアラート
2012年7月
両審議会は、キャッシュ・フローの配分
について決定、保険契約の経過保険料
の表示について協議を継続
重要ポイント
• 両審議会は、投資要素もしくは財又は
サービスが保険契約からアンバンドル
される場合の、
キャッシュ・フローの帰
属方法について決定に至った
• スタッフは、
ビルディング・ブロック・ア
プ ロ ー チ に お ける経 過 保 険 料アプ
ローチの利用について、
さらに検討を
進めることになるだろう
概 要
2012 年 6 月 13 日に開催された合同会議を通じて、国際会計基準審議会(以下、IASB)
及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB)
(以下、両審議会)は、IASB の公開草案「保
険契約」
(以下、ED)及び FASB のディスカッション・ペーパー
「保険契約に関する予備的
見解」
(以下、DP)における決定について再審議を行った。合同会議での議題は以下のと
おりである:
1. 構成要素を保険契約からアンバンドルする場合の、キャッシュ・フローの配分
2. ビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA)を用いて測定される保険契約に係る
経過保険料の表示
IASB は、別途教育的セッションを開催し、新契約費を損益として認識する時期及び新契
約費の財政状態計算書における表示方法について検討を行った。
構成要素を保険契約からアンバンドルする場合の、
キャッシュ・フローの配分
両審議会は、
アンバンドルされた構成要素(つまり、保険負債と分離し他の基準に基づい
て別個に測定される要素)について、
キャッシュ・インフロー及びキャッシュ・アウトフロー
を保険者がどのように配分すべきかを討議した。両審議会は、5 月の会議で、投資要素及
び保険に該当しない財又はサービスといった特定の構成要素をどのような場合に保険契
約からアンバンドルするかを判断するための要件を決定した ¹ 。
スタッフは、保険者は以
下の 3 段階のプロセスを通じて、
アンバンドルされた構成要素に対してキャッシュ・フロー
を配分すべきであると提案した:
(1)キャッシュ・フローを、投資要素に単独ベース
(別個の契約として発行したかのように
扱うこと)
で配分する
(2)その他の対価、割引又は割増の金額は、収益認識の公開草案と整合するように、保険
要素又は財及びサービスのどちらか片方、
あるいはその両方に配分する
(3)複数のアンバンドルされた構成要素に関連するすべてのキャッシュ・アウトフロー
は、合理的かつ整合的基準に従って配分し、
それぞれの構成要素に係る会計基準に
基づき測定する
¹ 我々が公表した保険 IFRS アラート 2012 年 6 月
「両審議会は、
OCI、投資要素のアンバンドリング及び新契約費の認識について検
「両審議会は、保険料配分アプローチについて決定」
を参照されたい。
討」及び保険 IFRS アラート 2012 年 3 月
審議会メンバーの一部は、
アンバンドル
する前の保険契約(つまり契約全体)の価
格設定に含まれる割引の影響の配分方
法に関して懸念を表明した。保険者が割
引の影響を投資要素に配分する場合、投
資要素に係るキャッシュ・フローが、当該
投資要素を個別の契約として発行した場
合のキャッシュ・フローと整合しなくなる
ことが指摘された。
また、
ユニット・リンク
型契約及び投資信託によく見られる運用
管理手数料のすべてを保険要素に帰属
させるべきかについて、疑問を呈するメ
ンバーもいた。
スタッフは、投資要素の単
独ベースでの発行当初の価額と、投資要
素の帳簿価額との間に差異が生ずること
は適切ではないとした。
しかし、結果とし
て、契約開始時の損失が保険要素に生じ
てしまう可能性がある。
審議会メンバーは、たとえば、繰延新契約
費について保険契約の基準を適用する
場合と収益認識の基準を適用する場合
が生じるなど、異なる測定基準が同種の
費用に適用されてしまう可能性があるこ
とから、上述の 3 番目のプロセスにおい
て、
「合理的かつ整合的」
という用語を使
うことについて懸念を表明した。審議会
メンバーは、
スタッフに対して、単一の構
成要素に帰属するキャッシュ・フローにつ
いては、複数の構成要素に配分する必要
はないことを明確にするよう求めた。
スタッフは、
「合理的かつ整合的」
という
用語の趣旨の明確化を含め、提案の修正
に同意した。両審議会は、最終的に以下
について同意した:
i. 保険者は、キャッシュ・フローを投資
要素及び組込デリバティブに対して
単独ベースで帰属させるべきである。
これは、保険者が投資要素又は組込
デリバティブについて、別個の契約と
して発行したかのように測定すること
を意味している。
したがって、保険者
は、いかなる内部相互補助、割引又は
割増の効果も投資要素に含めない。
2
ii. 投資要素及び組込デリバティブに関
連したキャッシュ・フローを除外した
後で:
a. 対価、割引又は割増の金額は、公開草
案「顧客との契約から生じる収益」の
提案に従って、保険要素及びサービ
ス要素、
もしくは保険要素又はサービ
ス要素のどちらか片方に帰属させる
べきである。
b. 単一の構成要素に直接関連する(費
用及び新契約費を含む)キャッシュ・
アウトフローは、当該構成要素に帰
属させるべきである。複数の構成要
素 に 関 連 するキャッシュ・アウトフ
ローは、保険者が当該構成要素を別
個の契約として発行した場合に生じ
ると見込まれるコストを反映した、合
理的かつ整合的な基準に基づいて、
これら構 成 要 素 に配 分 すべきであ
る。キャッシュ・アウトフローを各構成
要素に帰属させた後は、保険者は、当
該構成要素に適用される認識及び測
定の要求事項に従ってそれらのコス
トを会計処理する。
Ernst & Young の見解
投資要素を保険契約からアンバンドル
する場合の費用の配分に関する両審議
会の決定は、財又はサービスをアンバン
ドルする場合の費用の配分とは抜本的
に異なる。財又はサービスをアンバンド
ルする際の基準は、収益認識のガイダン
スに含まれる決定事項を反映したもの
になっている。
これらの構成要素から生
ずるキャッシュ・フローは、
アンバンドル
される構成要素に対し、履行義務の相対
価値に基づいて配分される。投資要素が
アンバンドルされる場合に、内部相互補
助、割引又は割増の効果をすべて保険要
素に帰属させるという両審議会の決定
の結果、投資要素のアンバンドリング後
の保険要素の収益性は、財及びサービ
スの要素がアンバンドルされる場合と比
較して、単独で発行された類似の保険契
約の収益性から一層乖離することになる
だろう。
保険IFRSアラート 2012年7月
上述のキャッシュ・フローの配分案によ
り、保険要素の収益性が向上(運用管理
手数料)
したり、低下(割引)
したりする傾
向がより強まることが見込まれる。
また、
利益の発生パターンへも影響が及ぶ可
能性がある。たとえば、投資要素に関連し
て測定される年間運用管理手数料は、契
約期間にわたって定額法で認識される
場合が多いと考えられるが、当該手数料
が保険要素に帰属すれば、
それらはマー
ジンに合わせて認識されることになり
(IASB の場合はサービスの提供パター
ンに基づき、
FASB の場合はリスクから
の解放に基づく)、定額法による償却パ
ターンとは一致しない可能性がある。
ま
た、割引の場合には、保険者は保険要素
が不利な契約となる可能性に注意する
必要があるだろう。
BBAにおける経過保険料の表示
両審議会は意思決定を伴わない教育的
セッションを開き、包括利益計算書にお
ける BBA アプローチが適用される保険
契約の表示について討議した。ED/DP
案では、要約マージン・アプローチが提
案されたが、両審議会は 2011 年 10 月
の会議で、保険契約が報告企業の事業の
重要な割合を占めている場合には、取引
量の情報を包括利益計算書に表示すべ
きであると決定した。会議で挙げられた、
取引量の情報を表示する理由には、他の
業 界 の 損 益 計 算 書と保 険 料 配 分アプ
ローチ
(以下、PAA)
との比較可能性の確
保が含まれる。
取引量の情報を提供し、PAA とより整合
させるために、要約マージン・アプローチ
に対し、下記のとおり3 つの対案が提示
された:
1. 引受保険料アプローチ – 契約期間に
わたって見込まれる収益が、契約当初
に認識される
2. 未収保険料アプローチ – 保険契約者
への保険料の請求に基づいて収益を
認識する
3. 経過保険料アプローチ – 契約期間に
わたる予想損失及びマージンの認識
に対応させ、義務の履行の完了に基
づいて収益を認識する
公式にはいずれの提案について承認も
却下もしなかったが、両審議会は経過保
険料アプローチの提案に焦点を合わせ
ていた。一部の審議会メンバーは、契約
が 発 行され 又 は 保 険 料 の 受 領 のスケ
ジュールが決まれば収益認識の要件を満
たすという点について懸念を表明した。
経過保険料アプローチの提案では、保険
料収益は保険期間にわたって見込まれる
保険金の発生及びマージンの解放(さら
に、
IASB に関してはリスク調整も含まれ
る)に比例して認識されることになる。
こ
の提案の目的は、保険契約について受領
した対価を、保険者の時間の経過に伴う
義務の履行に応じて、収益として配分す
ることにある。
この配分は、
BBA に基づく
負債の測定要素を用いて決定されること
になるだろう。
審議会メンバーの多数が、経過保険料ア
プローチの提案をさらに検討することを
支持する一方で、一部のメンバーは、利
用者が、注記としてよりも財務諸表本体
上での取引量の情報の方が有用と考える
かどうかについては懐疑的であった。他
のメンバーは、導入のためのコストが利
用者の便益を上回るかどうかという点で
疑念を示していた。ただし彼らは、かつ
て、他の分野の検討において、新しい表示
方法の提案が、必ずしも導入当初におい
ては、財務諸表の利用者に対して意図し
ていた利益をもたらさなかったことも
あったことを理由に、従来とは異なるアプ
ローチを完全に排除すべきではないとい
うことを認識した。実際のところ、利用者
が、新しい報告要件を理解し、適用開始
時にその真価が明らかではない新たな
開示から利益を享受するためには、
しば
しば時間を要してきたのも事実である。
両審議会は、
スタッフが示した事例を検
討し、引き続き経過保険料アプローチの
提案を検討するために、
その仕組みにつ
いて詳細を明らかにするよう求めた。
ま
た両審議会は、IASB の保険ワーキング・
グループの意見も求める意向である。
ス
タッフはその会議において、経過保険料
アプローチに関する、多数の問題を検討
する可能性が高いだろう² 。
これらの問題
には、適切な会計単位、新契約費との相
互作用、保険金以外のコストの取扱い、保
険料を開始時点でロック・インすべきか、
及び、最終的に、財務諸表の利用者への
便益が、経過保険料の算定のために必要
な追加情報を捕捉するための運用コスト
を上回って余りあるものかどうかが含ま
れる。
Ernst & Young の見解
両審議会は、教育的セッションを通じて
その提案を承認することはなかった。両
審議会が経過保険料に対して関心を示
していることから、最終的には、マルチラ
インの保険者の包括利益計算書の複雑
さを低減し、包括利益計算書における一
体的な表示につながる可能性がある。両
審議会が未収保険料アプローチや引受
保険料アプローチではなく、経過保険料
アプローチが好ましいという意向を鮮明
にしている主な理由は、経過保険料アプ
ローチの方が収益認識の提案のコンセ
プトにより近いためである。
新契約費の認識及び表示
IASB は 個 別 に、意 思 決 定 を 伴 わ な い
セッションを開催し、新契約費及びその
回収の認識のタイミングについて検討を
行った。
この論点は、経過保険料アプロー
チの提案に関する議論に関連するもので
あった。
IASB は、新契約費を別建ての資
産として表示するか、又は繰延マージン
に対する負債の控除項目とするかという
点、
さらに包括利益計算書における新契
約費の認識方法について討議を行った。
一部の IASB メンバーは、新契約費の発
生により、関連する保険料収益を認識す
ることになる提案に対して懸念を表明し
た。彼らは、
これらの費用の発生パターン
は、契約に基づく保険者の業績とは関連
しておらず、なぜそこから収益が生じるの
か理解できないと指摘した。
そこで IASB
は、残余マージンの解放パターンに基づ
いて、
この費用をカバーする保険料の金
額を収益として認識しつつ、新契約費を
発生時に認識するという代替案を検討し
た。マージンの解放にしたがって、新契約
費をカバーする保険料の一部を認識する
方が、収益認識の原則をより良く反映す
るというのが多数の IASB メンバーの見
解であった。一部の審議会メンバーは、業
務上の複雑さを避けるべく、新契約費を
発生時にすべて費用処理するという考え
を再検討したが、
この意見は多くの賛同
を得るには至らなかった。
Ernst & Young の見解
意思決定はなかったものの、
IASB は 5
月の会議で FASB が行った提案と整合
を図る方向に向かっているように見え
る。両審議会の主な懸念は、経過保険料
アプローチによれば、発生した新契約費
を即座に保険料収益に認識することに
なる点にあるように思われる。繰延新契
約費を別の資産から除外すれば、
この資
産について特別な減損判定の導入の必
要はなくなるだろう。ただし、最終的に
は、いかなる決定も経過保険料の表示に
関する今後の討議次第で決まることにな
るだろう。
次のステップ
IASB は、2012 年後半に、保険契約に関
する改訂公開草案又は最終基準書のレ
ビュー・ドラフトを公表する予定であり、
公表日程についてもいずれ決定する予定
である。
また、FASB も同時期に公開草案
を公表する予定である。
両審議会は、
8 月の休暇の直前に行われ
る 7 月の審議会で、保険に関する次回の
討議を行う予定である。
この会議では、
マージンの表示及び新契約費の取扱い
などが取り上げられるものと見込まれる。
² 翻訳版の公表時点において、保険ワーキング・グループの
会議はすでに開催されている。
保険IFRSアラート 2012年7月
3
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Tel: 03 3503 1523
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新日本有限責任監査法人|金融アドバイザリー部|エグゼクティブディレクター
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Tel: 03 3503 1762
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