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激変しつつある大西洋LNG市場を概観する -米国からのLNG輸出を

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激変しつつある大西洋LNG市場を概観する -米国からのLNG輸出を
更新日:2011/6/21
石油調査部:市原 路子
激変しつつある大西洋LNG市場を概観する
-米国からのLNG輸出を見据えて-
(米国エネルギー省、英国エネルギー気候変動省、BP統計他)
・LNG需要に関して、北米と欧州は好対照である。欧州は北海ガスの生産減退でLNG輸入が急増中、
米国は一転して輸入どころかLNGによるガス輸出が現実的なものになっている。
・カタール等中東からのLNGはアジアだけでなく、欧州や米国にも大容量で輸出され始めた。
・低コストガスが増えた米国でガス価格は低迷するが、欧州とアジア圏では現在高値で推移。そのため
少量であるが米国からのLNG輸出(再輸出)が増えている。
・許認可取得も順調であり、米国メキシコ湾からのLNG輸出(国産ガス)が一段と現実味を帯びている。
1.米国本土からのLNG輸出計画
米国からのLNG輸出が現実味を一段と帯びて
いる。5月 20 日、米国エネルギー省は、審査中で
あった Sabine Pass CheniereLNG基地(受け入
れ能力:28 百万トン/年)からの国産ガス輸出に関
して全世界を輸出対象とすることを認めた。この
事業は稼働中の同受入基地に液化プラントを増
設することで、価格が高いアジア等に国産ガスを
LNGで輸出できるようにする計画である。
図1.北米のLNG受入基地及び輸出計画(位置)
表1.Cheniere 社によるアジアへのLNG輸出の経済性(例示)
Henry Hub 価格
(米国ガス価格)
液化費用
基地燃料代
フレート代
仕向け地価格
アジア向け
4ドルケース
6.5 ドルケース
1.75 ドル
0.4 ドル
2.8 ドル
8.95 ドル
1.75 ドル
0.65 ドル
2.8 ドル
11.70 ドル
なお、6月 20 日時点の Henry Hub 価格は 4.3 ドル/百万 Btu
(参考)欧州向け
4ドルケース
6.5 ドルケース
1.75 ドル
0.4 ドル
1ドル
7.15 ドル
1.75 ドル
0.65 ドル
1ドル
9.9 ドル
Cheniere ホームページ より
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
同基地を所有するCheniere社が 2010 年6月にテキサス州周辺のガス資源を輸出しようと提案。同年 9
月にFTA諸国(自由貿易協定締結国)に対してのみ輸出が認められたが、その後、同社は非締結国へ
の輸出許可を求めていた。現在、本計画は、FERC(連邦エネルギー規制委員会)にて環境影響評価を
受けているところ。Cheniereは、2011 年内に基地の利用権(液化及び気化施設を利用する権利)の売買
契約を正式に締結するとともに、2012年に着工し2015年に輸出開始を目指している。本件は、既報の通
り内政面などいくつかの懸案事項を抱えながらも、強力に事業が推進されている。他のメキシコ湾岸の
基地でも同様の計画1が検討されており、先行するSabine Pass基地での計画進展が注視されている。
既報:石油天然ガス資源情報 2010 年 10 月 「米国:メキシコ湾岸におけるLNG輸出計画」を参照。
今後、大西洋LNG市場への理解も一層求められることから、本稿では、米国や英国など大西洋でのL
NG輸入状況や価格について各所データに基づき現状を眺めていく。
2.大西洋LNG市場
まずは米国と英国についてである。両国ともに産ガス国でもある。加えて英国は北海(英国、オランダ、
ノルウェー)油ガス田や欧州大陸からのパイプライン網を通じてガス輸入され、米国はカナダ及びメキシ
コからのパイプラインで大規模にガス輸入されている。両国ともに国内のインフラ網が発達しガス市場は
流動的で、需給を反映したガス価格(現物、先物)でそれぞれ取り引きされている。LNGのみに依存す
る日本や韓国と比べて構造的に大きく異なる。
近年、それらに加えて需給ギャップがさらに広がるためLNG供給が不可欠との見通しであった。両国
ともにLNG受け入れ基地が次々完成し、総受入能力は英国 3300 万トン、米国 1 億トンを超えた。
現在、英国ではLNG輸入が急増している(図2)。2009 年の輸入量 730 万トン、2010 年 1300 万トンで
ある。輸入増加は、国内ガス生産が減退していることと国内ガス価格が上昇してことが主因とみられる。
輸入されるLNGの価格は、国産ガスと競合するため国内ガス価格(NBP:National Balancing Point)に概
ね見合った水準である(図3)。
一方、米国は東部沿岸を中心に一部輸入されている(図4)ものの、当初見込みに反して前述の通り、
LNG輸出が検討されているところである。
1 テキサス州の Freeport 基地(ConocoPhillip 他所有)はエネルギー省に対して 2010 年12 月17 日に国産ガスのLNG輸出許可を申請、またルイジアナ州の Lake
Charles LNG受入基地(BG他所有)も 2011 年5月6 日に同申請を提出している。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
(万t/月)
イエメン
200 米国
180 ナイジェリア
160 エジプト
140 豪州
120 トリニダードトバゴ
100 カタール
80 ノルウェー
60 アルジェリア
英国のLNG輸入量
40 20 0 2005年1月
2006年1月
2007年1月
2008年1月
2009年1月
2010年1月
2011年1月
データ:英国エネルギー気候変動省
図2.英国:増える輸入量とカタール産LNG (2006 年~2011 年 3 月)
図3.英国のガス価格(NBP)とLNG輸入価格
出所:EU委員会ウェッブサイト“ Market Observatory for Energy 2010 Oct.-Dec.”
米国方式に単位換算すると、20€/MWh=8.37 ドル/百万Btu、10 ドル/百万Btu=23.9€/MWh に換算される(1ドル=0.7 ユーロ(2011年6月20日時点))。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
米国のLNG輸入量
(万トン/月)
140
トリニダードトバゴ
エジプト
ナイジェリア
ノルウェー
ペルー
カタール
イエメン
120
100
80
60
40
20
0
Jan‐2008
Jan‐2009
Jan‐2010
Jan‐2011
データ出所:米国エネルギー省統計局
図4.米国:新たなソースからのLNG輸入
(2008 年 1 月~2011 年 3 月)
欧州大陸では既輸入国のスペインに加えてイタリアとフランスでLNG輸入が増加している(図5)。両
国では、米英と同様にLNG受入基地(イタリア:Adriatic LNG, フランス:Fos-Cavaou、受入能力共に約
600 万トン)が新設され、今後も増強される。2010 年の輸入量は英国も含めて欧州全体で 5500 万トンを
超え2年前に比べ倍増している。カタールからのLNGが急激に増え、2010 年時点で全体の 35%を占め
ている(図6)。国別LNG価格は、欧州平均よりもベルギーで下回り、フランス、イタリアで平均を上回って
いる(図 7)。
輸入増加の背景として、2009 年頃はLNG供給増に伴ってスポット価格が全般的に弱含み、ドイツ等
のパイプラインガスに対し割安感が広がったため(図8)LNG輸入が好調であったとの指摘もあるが、現
在は、北アフリカ混乱もあり欧州のLNG及びガス価格は上昇基調のため割安感は薄れている。依然とし
て増加傾向である。
2011 年 6 月、オランダ(ロッテルダム)に初めて Gate LNG 輸入基地(受入能力 8.7 百万トン)が完成し
試運転を開始したため、欧州大陸沿岸でのLNG受入能力がさらに増強される見通しである。
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欧州諸国のLNG輸入先
イエメン 米国
0%
1%
トリニ
ダード
8%
ペルー
1% ベルギー
0%
ノルウェー
5%
カタール
35%
アルジェリア
24%
オマーン
0%
ナイジェリア
20%
リビア
0%
図5.欧州EU諸国でのLNG輸入量の推移(注意:月次データ)
赤道ギニア
0%
エジプト
6%
図6.欧州LNG輸入分布(2010 年)
EU委員会と BP 統計より
図7.国別の欧州LNG輸入価格
図8.欧州での主要なガス価格
共にEU委員会ウェッブサイト“ Market Observatory for Energy 2010 Oct.-Dec.”
米国方式に単位換算すると、20€/MWh=8.37 ドル/百万Btu、10 ドル/百万Btu=23.9€/MWh に換算される(1ドル=0.7 ユーロ(2011年6月20日時点))。
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3.欧米市場に大量流入するカタールLNG
1)欧州
2011 年初めに年間 7700 万トンの生産体制に入ったカタールは、アジア向けのみならず、欧州向け、
米国向けの各方面にLNG輸出が増加している。前掲の図2の通り、英国は月間約 170 万トンのLNG輸
入量うち 8 割がカタール産で、カタールにとっても英国は最大の輸出国である(図 9)。BP統計によると、
2010年時点のカタールLNG輸出は 5530 万トンでアジア向けと欧州向けがほぼ同規模でそれぞれ約
2500 万トン。残りが米国、南米等向けであった(図9)。カタールはメジャーと共同で英国、イタリア及び米
国に大型のLNG受入基地を建設し順次稼働開始していることから、足元、それぞれへの輸出が増えて
いる状況である。
Qatar National Bank のアニュアルレポート(2010)によると、7700 万トン/年のカタールのLNG販売契
約のうち 4000 万トン弱/年が仕向け地を変更できる Diversion 条項が付与されているという。年間 7700 万
トンのうちアジア向けが長期契約ベースで年間約 2500 万トン規模、中国、日本向けの一部(400 万トン)
を除きすべて仕向け地が定められている。
欧米向けはスペインやベルギーなど一部において Diversion 条項のない取引契約であるが、残りの多
くはスーパーメジャーが契約相手先で Diversion 条項が盛り込まれた契約とみられる。現在のところ、これ
らは欧米に輸出されているとみられるが、カタール側の輸出戦略や市況によって仕向け先も変動があり
うる。
BP統計によると、2009 年に稼働したイエメンLNGは輸出の3分の2が太平洋向けで、残りが大西洋圏
(図 10)。
台湾
5%
米国
2%
カタールLNGの輸出先(2010年)
5530万トン
ス
イタリア
3%
8% ベルギー
8%
ポルトガル
0%
スペイン
7%
韓国
14%
日本
13%
インド
14%
その他(米
州諸国)
3% フラン
英国
18%
トルコ
3%
これまで、オマーン及びUAEからのL
NGはほとんどアジア顧客向けであった
が、新たな中東LNGは大西洋市場、太平
洋市場に供給され始めた。また、大西洋
市場でのカタール産LNGの拡販に伴い、
欧米が主要輸出先であった赤道ギニアや
ナイジェリアのLNGがアジア市場に流入
データ出所:BP統計(2011年)
中国 UAE
2% 0%
している動きも見受けられる。
図9.カタール産LNGの輸出先(2010 年)
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イエメンLNGの輸出先 (2010年)
400万トン
メキシコ
3%
チリ
2%
米国
20%
韓国
41%
フランス
1%
日本
3%
インド
7%
スペイン
3%
中国
13%
英国
クゥエー 5%
ト
2%
データ出所:BP統計(2011年)
図10.イエメン産LNGの輸出先(2010 年)
2)米国メキシコ湾岸でのLNG輸入
米国では、2008 年以降、LNG受入基地が相次ぎ稼働を開始したものの国内での生産が好調なため
輸入量は受入能力に対して超低率に留まる。LNG輸入量は 2008-9 年が年間 1000 万トンを若干上回
ったが、2010 年の実績はそれを下回る。
一方で、供給ソースはカタールが過半を占めるまでに(図 11)シェアが伸びている。米エネルギー省
による輸入データを精査すると、冒頭の Sabine Pass(2008 年稼働)基地と ExxonMobil/Qatar Petroleum
の Golden Pass(2010 年稼働)基地は、カタールのLNG受入が大多数である。また Freeport 及び
Cameron 基地はスポットでペルー
メキシコ湾岸でのLNG輸入(輸入国)
115万トン
エジプト
5%
イエメン
6%
トリニダード
4%
産LNGを受け入れている(位置は
冒頭地図)。2008-9 年頃まで主な
輸入国であったナイジェリアやエジ
プトから入れ換わりつつある。
ペルー
30%
カタール
55%
図 11.米国メキシコ湾岸でのLNG
輸入(供給国分布:直近4カ月)
米国エネルギー省 2011年1月~2011年4月メキシコ湾岸での輸入量(東海岸での輸入分は除く)
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5.LNG価格
2009年頃まで米国と英国のガス価格はほぼ同水準で推移していたが、2010 年年央以降、欧州全体に
おける需要増や北アフリカ諸国の混乱を背景に英国のガス価格は上昇し、石油価格に連動するドイツや
日本の価格に近づいている(図 12)。
一方で、米国ガス価格は引き続き低迷しており、米国への輸入LNGは概ね国内価格、若干上乗せし
た5ドル~8 ドル内で流入している。したがって、現状、カタールやイエメンのLNGは仕向け地によって
価格が異なっている。
図 12.主要なガス消費国のLNG及びガス価格(日本、ドイツ、英国、米国)
IEA 2011 年 6 月 「World Energy Outloot 2011」 Special Report “Are We Entering A Golden Age of Gas?” P74 より
6.米国からのLNG輸出
米国では、LNGを輸入する他方で、メキシコ湾からの輸出が限定的であるが散見される(図13)。これ
は、一旦輸入された LNG が、米国内需要や他地域の価格面からアジアや欧州に転送されているもので
ある。2010 年から散見され、2011 年に入って4カ月間で8カーゴみられ、欧州、インド及び韓国に輸出さ
れている(表2)。エネルギー省の発表によると、輸出価格(FOB)は約 6~7 ドル/百万 Btu 台である。現
状、ガス価格は、米国で4ドル/百万 Btu 台、英国で 9 ドル/百万 Btu 台、アジア圏で 10 ドル/百万 Btu を
超えていることからフレートを加算しても国内供給するよりも経済性が見込めるものとみられる。地域間で
の価格差が十分あれば、今後も欧州やアジアに米国からLNGがスポットベースで流れる可能性があ
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る。
原油価格(WTI)
25.00 ガス価格(ヘンリーハブ)
米メキシコ湾からの再輸出カーゴ(FOB価格)
20.00 米アラスカからの日本向けLNG(着ベース価格)
15.00 10.00 5.00 Apr‐11
Feb‐11
Mar‐11
Jan‐11
Dec‐10
Oct‐10
Nov‐10
Sep‐10
Jul‐10
Aug‐10
Jun‐10
Apr‐10
May‐10
Mar‐10
Jan‐10
Feb‐10
Dec‐09
Oct‐09
Nov‐09
Sep‐09
Jul‐09
Aug‐09
Jun‐09
Apr‐09
May‐09
Mar‐09
Jan‐09
Feb‐09
0.00 データ:米国エネルギー省ホームページ
なお、ConocoPhillips 等の現操業者はアラスカのLNG輸出を近く終了予定している。
図 13.米国でのガス及びLNG輸出価格(単位:ドル/百万 Btu)
表2.2011 年の現在までのLNG再輸出カーゴ(2011 年1月~4月:8 カーゴ)
FOB価格
出航
輸出者
行き先
出荷ターミナル
数量(BCF)
Cheniere
英国
Sabine Pass
2.8
7.25
Chevron
スペイン
Sabine Pass
3.0
7.30
Chevron
インド
Sabine Pass
3.4
7.00
ConocoPhillips
韓国
Freeport
3.1
6.69
2月
ConocoPhillips
インド
Freeport
3.1
7.40
3月
Cheniere
英国
Sabine Pass
3.0
7.90
Cheniere
韓国
Sabine Pass
2.9
7.60
Sempra LNG
スペイン
Cameron
2.9
6.95
1月
(単位:ドル/百万Btu)
4月
(データ:米国エネルギー省より)
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
7.結び
最近のLNG需要に関して、北米と欧州は好対照である。双方ともに 2010 年前後を目途に輸入能力を
増強してきたが、域内生産が減少する欧州は輸入LNGで補填を急ぐが、米国本土は一転してシェール
ガスからの生産が伸び国内価格は低迷、輸入どころか域外へのLNG輸出が現実化しつつある。
ただし一旦LNG輸出が始まれば、米国ガス価格は強含むと予想する意見もある。これに関して、冒頭
の輸出許可を発行した米国エネルギー省は、現時点では国内の資源/供給潜在力は輸出量に対して十
分に大きいと結論づけたが、その一方で、今後の環境規制、国内のガス需要あるいは掘削技術など
様々な要因によって将来の需給状況は変化しうるとしてこれらの動向を注視し、状況に応じて本輸出の
インパクトや同様の他輸出事業の申請を改めて評価していくと条件を付け加えている。
また、価格構造の変動要素としては、カタールのLNG輸出大国が、どのような輸出戦略を地域ごとに
展開するのかも今後影響を与える可能性がある。
最後に、本論では大西洋圏の輸入状況や価格に関して最新状況を紹介してきたが、米国からアジア
へのLNG輸出の合理性如何に関しては、地域間での市場構造的な相違だけでなく、供給コスト面にも
起因するとの見方がある。インフラが整った米国陸上でのガス開発/LNG に比べて、太平洋圏では沖合
や遠隔地でのグリーンフィールド(新規)のLNG開発が増えることから、輸送費を勘案してもアジア圏で
両者が競合するとの捉え方である。
– 10 –
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