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(1項)( PDFファイル ,745KB)
よりよき研修とするために
~評価のポイント~
H16 人 権 ア ク ト イ ン 栃 木 安 足 地 区 集 会 よ り
よりよき研修とするためには、事業
全体をふりかえり、適切な評価をする
第 Ⅲ 章 の 構 成
ことが大切です。しかも、評価は、企
画の段階から始まります。
Ⅲ -1
評価のポイントを考えよう
ここでは、ある人権教育担当者が、
先輩から様々なアドバイスを受けなが
Ⅲ -2
チェックリストを活用しよう
ら評価の在り方を学んでいくストーリ
ー で 構 成 し な が ら 、『 チ ェ ッ ク リ ス ト
Ⅲ -3
学習のふりかえりを大切にしよう
の活用』と『ふりかえりの技法』を取
り上げ、評価のポイントを例示してい
きます。
- 31 -
Ⅲ-1
よりよき研修とするために
評価のポイントを考えよう
今年から人権教育を担当することになったAさん。
人権教育指導者養成研修の計画を作成し、課内会議に提案し
ましたが、いろいろな質問を受け、問題点が指摘されました。
どうしてこのようなことになってしまったのでしょうか。
参加者の意識や考
えを事前に調べる
ことはできます
か?
ねら いを達成するた
めに 、講師にどのよ
うな ことを依頼しま
すか?
人権問題に関す
る地域の課題は、
何ですか?
この学習目標に
したのは、どの
ような理由から
ですか?
この事業におけ
る評価計画は、
どのように考え
ていますか?
参加者一人一人
を大切にするた
めに、どのよう
なことに配慮し
ますか?
そこで、Aさんは、いろいろな先輩を訪ね、アドバイスを受けることにしました。
まず、Aさんは、社会教育主事として活躍している先輩を訪ね、社会教育事業における
評価のポイントを調べてみることにしました。
評価の目的
現段階の計画が達成されているかを確認し、次の段
階の計画に生かして、計画及び事業の見直しや改善
を図る資料であり、プログラムをより効果的なもの
へ、事業や組織をよりよいものへと進化し続けるた
めのものである。
企画の段階から評価は始まります。評価を十分に活用するためには、分析から改善へ
の流れを事前に準備しておくことが大切です。
そして、結果(アウトプット)と成果(アウトカム)を確認していきます。この事業
を実施した結果、どのような成果を挙げることができたのか・・・。
事業担当者は、成果への責任者という重要な役割を担っているのです。
- 32 -
事
前:診断的評価
・ 学 習 を 編 成 す る に 当 た り 地 域 や 学 習 者 の 実 態 を 把 握 し た 上 で 、学 習 目 標 や 学 習 計 画 を 立 て ま す 。
中
間:形成的評価
・毎回の学習がどのように行われたかを評価するものであり、学習や学習プログラムの向上を図
るために行います。
事
後:総括的評価
・学習が完了した時点で学習の総括のために行い、目標を達成できたかどうかを判定します。
自 己 評 価 ・・・・・事業担当者自身による評価
参 加 者 評 価・・・・・学習者による評価
第 三 者 評 価・・・・・他の職員や講師、学習支援者などによる評価
いつ
何を
だれが
どのように
企画・計画の段階
診断的評価
↓
自己評価
参加者評価
準備中
↓
形成的評価
実施中
↓
事 業
主催者
実施者
第三者評価
実施計画の修正
終了直後
↓
終了後
しばらくたってから
参加者
利用者
関係者
専門家
総括的評価
記録
↓
<測定>
↓
<解釈>
↓
確認
次の事業の改善
①学習者の特性や学習活動自体に関するもの
・学習者の属性など(性別、年齢分布、居住地域等)
・学習者の出席状況や学習活動時の態度、特性など
②学習成果に関するもの
・学習者の知識・技術の習得程度など
・学習者の行動変容など
・学習者の属する団体や地域社会の変化など
③学習活動を支援する条件整備に関するもの
・学習目標、学習内容、学習方法、学習期間、参加費など
・指導助言の内容など
・学習支援のためのボランティアなど
・学習教材・教具など
・学習施設・設備など
・学習者の受け入れ(募集方法)など
④地域社会への影響に関するもの
・他の学習集団や他の学習施設・機関への影響など
・地域社会への貢献度など
評 価 の 目 的 は 、 よ り よ い も の へ と 進 化 し 続 け る た め の も の で す か ら 、「 企 画 Plan → 実 施
Do → 確 認 Check → 行 動 Action 」 の サ イ ク ル に 沿 っ て 評 価 を 積 み 重 ね る こ と が 、 特 に 重 要
となります。
- 33 -
次に、Aさんは、人権教育を担当している先輩を訪ね、人権教育事業における評価のポ
イントを調べてみることにしました。
事 業 計 画 を 立 て る に 当 た り 、『 じ ん け ん 学 び ガ イ ド ( 栃
木 県 教 育 委 員 会 生 涯 学 習 課 H15.3 )』を 参 考 に し て い ま す 。
そして、この事業の学習と人権教育の3つの内容との
関 連 を 明 確 に し 、「 人 権 教 育 の 視 点 」 を ど の よ う に 設 定
するかがポイントとなります。
参考 『じんけん学びガイド・じんけん実践ガイド 』 http://www.pref.tochigi.jp/syougai-gakusyuu/jinken_gaido.html
○○公民館
第
4
回
学 習 目 標
「人権学習入門講座」学習展開計画
対象:地域住民
学 習 テ ー マ 「ノーマライゼーションの世の中を目指して」 ~ 障 害 者 の 人 権 ~
・障害のあるなしにかかわらず、だれもが共に生活できる社会(ノーマライゼーシ
ョン)の実現に向け、正しい理解と認識を深める。
人 権教育の視点
豊かな人間性
・個性を認め合う心や他人を思いやる心を育てる。
人 権 意 識
・障害者に対しての先入観や固定観念に気付き、共生社会の実現に向けて日常生活
の中で一人一人が実行できることを考え合う。
人権が尊重
された雰囲
気や環境
・ 会 場 内 に 人 権 啓 発 ポ ス タ ー を 掲 示 し 、障 害 者 の 人 権 に つ い て 学 ぶ 意 識 付 け を 図 る 。
会 場 図
最後に、Aさんは、チェックリストを活用している先輩を訪ね、評価の具体的な方法を
調べてみることにしました。
評価者は、データの分析・検討をもとに判断を行い、最終的に総括的
評 価 を 行 い ま す 。そ の た め に は 、判 断 基 準 の 設 定 が ポ イ ン ト と な り ま す 。
学習成果には量的なものと質的なものが含まれており、それらを評価の
計画段階までに設定することは難しいものです。
そこで、私は、下記のような「チェックリスト」を作成し、評価に役
立てています。
№
1-1
1-2
1-3
評価時期
企画・計画
企画・計画
企画・計画
3-1
3-2
3-3
準備
準備
準備
評価基準
1 2 3 4 A B
1 2 3 4 A B
1 2 3 4 A B
合計/ 平均/
参加者評価 学習場所の照明・室温は適切だったか
1 2 3 4 A B
第三者評価 掲示物等、部屋の環境は学習にふさわしかったか 1 2 3 4 A B
自己評価 学習に必要な教材教具を準備できたか
1 2 3 4 A B
合計/ 平均/
評価対象
評 価 の 観 点
自己評価 社会教育計画に沿って事業が計画されたか
自己評価 研修を開催する意図・目的を明確にできたか
自己評価 学習目標が明確で実現可能なものだったか
1:不満
2:やや不満
3:満足した
4:たいへん満足した
A:分からない
B:該当しない
チェックリストを作成するポイントは、まず、何をチェックしたらよいかを見付け、評価の観点
を明確にすることにあります。
- 34 -
チェックリストの作成手順
【第1段階】考えられる観点をでき
るだけたくさん考える
【第2段階】評価時 期ごとに分類
し、さらに付け足す
・学習目標が明確で実現可能なものだっ
たか
・価値ある学習内容であったか
・学習プログラムが参加者に適していた
か
・指導者は、学習者とコミュニケーショ
ンをとっていたか
・PRの期間は適切だったか
・学習に必要な教材教具を準備できたか
・指導者との打合せは十分であったか
・学習場所の交通の利便性はよかったか
・学習場所の照明・室温は適切だったか
・個人情報に配慮していたか
・掲示物等、部屋の環境は学習にふさわ
しかったか
・指導者は、指導に熱意を感じられたか
・テキストが有効な学習教材だったか
・日数、定員、対象は適切だったか
・学習者の継続的な行動変容の可能性は
どうか
・習得した知識・技能をもとに活用する
力がついたか
・出席状況はどうだったか
・スタッフは、各自の役割を明確にでき
たか
・参加者のねらいや期待を全体で共有す
る機会をもてたか
企画・計画の評価
・ 学 習目 標 が 明確 で 実現 可 能な もの だ
ったか
・ プ ログ ラ ム の実 施 が参 加 体験 型の 手
法及び理論に従っていたか
・ 学 習プ ロ グ ラム が 参加 者 に適 して い
たか
・日数、定員、対象は適切だったか
・ 学 習場 所 の 交通 の 利便 性 はよ かっ た
か
準備の評価
・ PR の期間は適切だったか
・ 学 習場 所 の 照明 ・ 室温 は 適切 だっ た
か
・個人情報に配慮していたか
・参加者の特性を把握できたか
・ 学 習に 必 要 な教 材 教具 を 準備 でき た
か
学習活動の評価
・ 指 導者 は 、 学習 者 とコ ミ ュニ ケー シ
ョンをとっていたか
・ 参 加者 の 興 味・ 関 心を 高 める 内容 だ
ったか
・ 学 習者 の 継 続的 な 行動 変 容の 可能 性
はどうか
・ 習 得し た 知 識・ 技 能を も とに 活用 す
る力がついたか
・ テ キス ト が 有効 な 学習 教 材だ った か
・ 参 加者 の ね らい や 期待 を 全体 で共 有
する機会をもてたか
・ 指 導者 の言 葉遣 いは 適切 だった か
運営の評価
・ 指 導者 と の 打合 せ は十 分 であ った か
・ ス タッ フ は 、各 自 の役 割 を明 確に で
きたか
・出席状況はどうだったか
評価の方法
【第 3 段階
企画・計
□
□
・
・
□
・
・
□
□
・
・
□
・
・
□
・
・
準備の評
□
□
・
・
□
・
・
□
・
□
・
・
・
□
□
・
・
□
次に、それぞれのチェック項目をだれに評価してもらうかを整理する段階となります。例えば、
「答えやすいふりかえりカードだったか」という観点なら、アンケートによって参加者に評価して
もらいます。
このように、データ収集には、観察法・インタビュー法・質問紙法(アンケート、ふりかえりシ
ー ト 等 )・ ポ ー ト フ ォ リ オ ( 学 習 者 の 作 成 し た 作 品 を も と に す る ) 等 の 様 々 な 技 法 が あ り 、 最 も 適
した方法を選択します。
そして、企画の段階、計画の段階、準備の段階、実施の段階で、チェックを積み重ね、どの部分
が十分で、どの部分が不十分であったかを明らかにしています。
こうして、チェックリストをもとに企画や計画の修正を加えるこ
とが、指導者養成研修のような連続講座においては、特に大切な評
価のポイントであると思います。次回の学習をよりよくするための
見直し(形成的評価)は、事業担当者の責任ではないでしょうか。
事業終了後しばらくたって、総括的評価を行うに当たっても、チ
ェックリストは有効です。私は、評価結果を右の図のようなグラフ
にして事業全体のふりかえりに役立てています。
このようなチェックシートを事業ごとに作成するのはたいへんです。そこで、人権教育の各種事
業ですぐに使えるようある程度共通したものにしています。評価基準に「B:該当しない」を入れ
てあるのは、そのためです。
参考
『自然体験活動プログラム評価ハンドブック』
自然体験活動推進協議会
2001
『学習プログラムの革新ー学習者がつくる学びの世界ー』白石克己・金藤ふゆ子・廣瀬隆人/編
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ぎょうせい 2001
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