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大手商社に負けない 競争力を維持するためには、 迅速な
今日から始める、 顧客志向の 組織づく り 大手商社に負けない 3 迅速な経営判断を可能にす 競争力を維持するためには、 る 顧客志向のはじめかた Microsoft Dynamics CRM Case 明光電子 情報統合が不可欠。 明光電子は、半導体や電子部品の商社として、調達のみならず、製品開発、実装、 検査までをサポートし、顧客企業から高く評価されている。同社は、「唯一無二の 統合商社∼電子の統合サービス業」を掲げ、顧客のニーズに、迅速かつきめ細か く応えている。数十万点の在庫をリアルタイムで管理できるシステムも早くから構 築してきた。十川(そがわ)正明社長は、「中堅中小企業が大手に勝つには、情 報化を進め、コア業務を磨いていかなければならない」と語る。同社の取り組みや 制作/東洋経済メディア制作部 今後の展望を聞いた。 「専門商社の顔と便利屋の顔」の 二面性を併せ持つユニークな企業 従業員数78名 (2012年9月現在) ――。キラリと光る少数精鋭の優良企業がある。神 奈川県横浜市に本社がある明光電子だ。 同社は半導体や電子部品の商社である。東日本大震災やタイの洪水などの影響もあり、 日本のモノづくり企業を取り巻く環境は楽観できない。この状況下では、商社である同社 も苦戦しているのではないかと尋ねると、代表取締役の十川正明氏は「むしろ引き合いが 急増しています。製品開発の上流から参加してほしいという声だけでなく、逆に、梱包用 の段ボールの印刷、さらには在庫管理までやってほしいという要望もあります」と語る。 半導体や電子部品の商社は数多くある。上場企業も含め、大手もしのぎを削る世界だ。 その中で、明光電子が顧客から支持されている理由はどこにあるのか。 「当社が狙うのは、 いわゆるニッチな市場。お客様の製品も大量生産ではなく多品種少量生産です。誰でも できる仕事なら、よそにやってもらえばいい。当社はうちにしかできない仕事しかやりませ ん」と十川社長は屈託がない。 むろん、それを実現するための取り組みには並々ならぬ力を注いできた。たとえば、仕 入れ先との信頼関係の構築である。同社の仕入れ先は国内外に700社を超えるというが、 創業当初から各分野のナンバーワン企業と直接取引することにこだわってきた。その結果、 同社は現在、さまざまな分野のトップメーカー約300社と直接取引をしており、さらにそ のうち80%は互いに競合しないというから驚く。 「メーカーとしっかりした関係ができているため、お客様の技術者から問い合わせがあっ たときに、ベストな部品を自信を持って提案できます。このため、お客様は、試作から量 産までのQCD (品質、価格、納期)を見越して、早い段階で安心して選んでいただけます」 と十川社長は胸を張る。 「 『専門商社の顔と便利屋の顔』の二面性を併せ持つ」と表現する同社のビジネスモデル 代表取締役 十川 正明 氏 にも注目したい。同社では、顧客の製品開発から積極的に関与する一方で、数十万点の 取り扱い製品について「1個からでも」見積もりや納品に応えてきた。日常のニーズに応 える「便利屋」の顔があるため、数年後の新製品開発を支援する「専門商社」として の取り組みも可能になるわけだ。電子部品が使われる市場は刻一刻と変化しているが、 この中で、同社が長年にわたり安定した経営を継続できている理由もここにある。 今日から始める、 顧客志向の 組織づく り 3 顧客志向のはじめかた Microsoft Dynamics CRM Case 明光電子 企業紹介: 1979年創業。 福岡に拠点を構え、 主に九州を中心にICおよび電子部品の専門商社として事業 を展開。 顧客の要望に迅速かつきめ細かく応えるをモットーに、 商社機能の提供だけでなく製品 開発や実装、 検査などのサポートも手掛けるようになる。 「専門商社の顔と便利屋の顔」 の二面 性を強みとしながら顧客の支持を拡大。 現在では横浜、 大阪、 北関東、 八王子にも拠点をおく 自社の強みをさらに発揮するために、 情報統合を推進 明光電子は電子部品商社の中でもひときわ存在感を発揮しているが、課題がないわけ ではなかった。 「数年後の成果につながりそうなプロジェクトの種や日々の受注状況など、 さまざまな情報が営業担当者の机の引き出しに保管されていて本人にしか分からない状態 でした。かねてから、これらの情報をリアルタイムに共有し、自社の経営状況の把握や提 案活動に生かしたいと考えていました」 。 十川社長は、部品在庫を出荷のたびにリアルタイムでチェックできるシステムを手作業 で開発してきた経験を持つ。それだけに、 「数日遅れで紙の報告書が上がってきても役に 立たない」と早くから感じていたという。 情報企画部長の川路渉氏は次のように説明する。 「一人ひとりが個別に持つ情報を、極 力『見える化』したいと考えました。これまでは、営業部門が使っているシステムだけでも、 事務処理用のオフコンやイントラネット、メールなどのほか、紙の報告書や価格表などがあ り、それぞれを別々に運用していました。これらを、お客様ごとにひも付けて統合すること が狙いです」 。 その実現のために同社が選んだのが「Microsoft Dynamics CRM」だった。川路氏 は選定の理由を「オフコンなど既存のシステムとの親和性が高いこと、さらに、当社が目 指す方向に沿って拡張やカスタマイズが容易にできる点です」と説明する。 同社では昨年9月、帝国データバンクの顧客・取引情報一元管理システム「BIMA (ビー マ) 」を導入した。同システムは「Microsoft Dynamics CRM」と組み合わせることで、 リアルタイムに企業情報を更新し、きめ細かな顧客分析ができるため、営業担当者の業務 は大幅に軽減した。 情報企画部 部長 川路 渉 氏 十川社長はさらに「お客様に関するあらゆるワークフローの情報を全社で共有できるよ うにしたい」と語る。昨年11月には、 「Microsoft Dynamics CRM」を活用し、顧客 への訪問履歴や商談メモなどをメール形式で上長や社長に配信し、決済や承認などに活 用できる仕組みも始めた。今後はERPパッケージの導入も進めていく計画だ。また、タ ブレット端末の活用などにより、データの入力、閲覧をさらに便利にするとともに、ペーパー レス化も進めていく。十川社長は、 「少数精鋭で、お客様にスピーディーに質の高い提案 を行うためには、情報統合が不可欠です」と力を込める。 企業の生き残り戦略が厳しさを増す中で、競争力向上のために何をすべきか。同社の 取り組みは、一つの有効な選択肢を示していると言えるだろう。日本のモノづくり企業を 支えるオンリーワン商社の活躍に、今後とも注目したい。