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降着流の不安定性研究会:熱―粘性的円盤不安定性モデルの30年
(Accretion flow instabilities: 30 years of the thermal-viscous disc instability model)
開催期間 2012年9月4-7日 開催地 ポーランド ワルシャワ 東京大学 及び 長崎大学
名誉教授 尾崎洋二
2012年9月4−7日にワルシャワ(ポーランド)のニコラス・コペルニクス天文学センターで開催された「降着流の不安定性研
究会:熱―粘性的円盤不安定性モデルの30年」という研究会に出席し、招待講演を行った。研究会出席にあたっては、主催者
側から旅費の約半額を出して頂いたが、残り半額は貴財団の旅費支援を頂くことが出来、深く感謝している。
この研究会は、宇宙で生起する激しい天体現象でそのエンジンの働きをする降着流の不安定性についての研究会であった。宇
宙には、X線星、ガンマ線バーストなど激しく活動し、莫大なエネルギーを放射する天体がある。これら天体のエンジンの役割
を果たしているのが、降着円盤である。降着円盤というのは、超高密度星(白色矮星、中性子星、ブラックホール)の周りを
取り巻くガス円盤で、重力の大きな中心天体へガスが回転しながら降り積もって行き、その際莫大なエネルギーが放射される
現象である。この降着流はしばしば不安定で激しい時間変動を引き起こす。降着流の不安定性について最初に明らかになった
のは、矮新星爆発についてである。矮新星爆発の降着円盤不安定性モデルは、私が1974年に提案したのが最初であり、その後
1980年代になって、ドイツのマイヤー夫妻、ポーランドのスマック教授、 日本の嶺重と尾崎らによって、その円盤不安定の
物理メカニズムは「熱―粘性的不安定性」であることが明らかにされた。今回の研究会は降着円盤の不安定性についての研究
会で、特に矮新星爆発について現在の標準モデルになっている「熱―粘性的円盤不安定性モデル」提案より30年を迎えるのを
記念して開かれた研究会であった。また、上記の提案者の一人であるポーランドのニコラス・コペルニクス天文学センターの
スマック教授(元IAU副会長)の業績を記念する会でもあり、円盤不安定モデルを提案した当事者であるマイヤー博士夫妻や
私などが招待された。
研究会では、私は A brief history of the disk instability model for the dwarf nova outburst という題で、矮新星爆発
の降着円盤不安定性モデルの発展の歴史について総合講演した。また、これらの研究に携わったドイツのマイヤー博士夫妻、
ポーランドのスマック教授、アメリカのカニゾ博士らとともに、私自身も講演会の壇上で round table discussions と呼ばれ
る形のパネルディスカッションに参加した。私自身は、2004年に大学を退官して以来、研究には携わっていなかったが、今研
究会に出席するため、最近のこの分野の進展について調べた。その結果、最近の「系外惑星探査」目的のケプラー衛星で矮新
星の光度曲線の詳しい観測がなされていることを知った。そして、1989年に私が提案した「おおぐま座SU型矮新星」のスー
パーアウトバーストとスーパーハンプを説明する「熱―潮汐不安定性モデル」と呼ばれるモデルがあるが、このモデルはケプラ
ー衛星による新しい観測結果もうまく説明できることが判明し、私自身は大いに満足している。ということで、貴財団からの
旅費援助でこのような研究会に出席出来たことを、大いに感謝している。
招待講演を行う筆者
パネルディスカッションに参加した筆者;左から2人目
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