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EU-ASIA経済政策フォーラム2014
社会保障を存続させるために何をすべきか
インド、ポーランド、日本、ドイツにおける年金制度の最近の動向
概要
アジアとヨーロッパの多くの国は、現行の社会保障制度を存続するのが極めて困難な状況に置かれています。当フォーラムで
は、年金制度改革が国内で求められているインド、ポーランド、日本、ドイツからエコノミストを招き、改革の背景とその内容につ
いて発表していただきます。その後、それぞれの制度、改革案の評価すべき点や課題を議論します。
<インド>
インドネシアやブラジルといった他の新興国に比べ、インドでは、年金基金制度の確立が遅れました。2004年に2つを除く全て
の州で公務員に対する給付制度が導入され、2009年にようやく全国民に国民年金制度が導入されました。インドでは年少人
口が多く、労働者数が増えており、彼らへの年金支給が将来問題になると考えられます。2015年までに国民年金基金の資産
額は1750億ドルまで増えると予測されます。民間投資家の間では、国民年金制度は歓迎されておらず、2013年の最新の年
金法案は、現行の年金制度を変えようとしています。新法案は、インドの労働者が個人年金へ加入することを可能にしています。
また、新法案では、インド年金市場の26%まで外資が参入できるとしています。この法案は、確定給付型年金(国民年金制度)
からリスクと不透明さを拭えない確定拠出年金への移行を明確に打ち出しています。このように、今インドでは年金制度改革が
求められており、今春予定されているインドの総選挙での争点にもなっています。
<ポーランド>
ポーランドは、個人年金へ移行させようとするインドと反対方向に舵を切っています。共産主義の終焉後、ポーランドでは、年金
制度においても資本市場の恩恵があるという考え方が広く受け入れられてきました。90年代の終わり、ポーランド政府をはじめ
東ヨーロッパ諸国は、チリ政府が打ち出した定年制に準じた年金政策を打ち出しました。労働者は、給与から社会保障税を支払
い、政府はその掛け金を一定の割合で民間ファンドに移し、株式や債券で運用させました。残念ながらこの制度は、ポーランド
の高齢化を見据えたものではありませんでした。また、そもそも世界株式市場の景気が上向くという前提で打ち出された制度で
した。高齢化による給付金の増加と相まって、民間ファンドでの掛け金の運用は、多額の運用損をもたらしました。ポーランド政
府は、この状況を打開しようと近年大幅な改革を行っています。今年2月には年金政策を転換し、500億ドルを民間ファンドから
国家管理下に移しました。
<日本>
年金への掛け金を民間ファンドに運用させることへ不信が広がるポーランドとは逆に、日本は積極的なステップを踏み出そうと
しているように見受けられます。政府の審議会は、日本の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に、運用
の多様化を薦めています。現在、GPIFは世界でもっとも運用額の大きい年金基金で、日本の年金積立金の80%を運用してい
ます。オーストラリア、アメリカ、イギリス、カナダなどとは異なり、日本の年金積立金は、株式ではなく、ほとんど国内債によって
運用されています。日本政府の金融緩和によって、地方債の利回りは著しく低く、日本は世界のどの国よりも高齢化が早いスピ
ードで進んでいるため、GPIFはハイリターンなしには長期的に年金給付金を確保することができない状況に置かれています。
そのためGPIFには、より収益が見込める海外の運用先や、よりリターンが望めるリスクの高い金融商品での運用を増やすこと
が求められています。
<ドイツ>
日本とは異なる定年制度によって、ドイツの年金資産(債権、株式)は2013年度GDPの14%を占めています。それに対して、
日本は65%です。個人年金への加入は過去20年で増加しました。しかし、大体において、年金政策は、いまだに公的年金を
柱としています。日本と同様にドイツでも高齢化が急速に進んでおり、1960年から2009年の間に、年金受給期間の平均が1
1
0年から18年に延びました。公的年金の給付は、ドイツの国家予算の約30%を占めます。給付金増加への対応として、政府は
段階的に定年を引き上げ始めました(2012年時点で65歳、2029年までに67歳に引き上げる予定)。今年1月に発表された
新しい年金制度法案では、45年以上社会保険料を払っている雇用者は、63歳から定年退職できるとしています。また、1992
年以前に生まれた子供を持つ母親への年金給付金の増加を提案しています。この年金制度案には、2020年までに800億ド
ル以上の費用が見込まれているため、批判が集まっています。
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