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総 括 - 大阪商工会議所
総 括 拡大 EU ビジネス環境視察団 団長 大阪商工会議所 副会頭 今 井 清 輔 大阪商工会議所は、近畿商工会議所連合会と共催で、2004 年 10 月 9 日から 20 日まで の 12 日間、総勢 20 名からなる「拡大 EU ビジネス環境視察団」をチェコ、ポーランド、 ハンガリー、オーストリア、イタリアの5カ国に派遣した。 2004 年 5 月、新たに 10 カ国を加え 25 カ国に拡大した欧州連合(EU)は、人口 4 億 5 千万人、世界 GDP の 4 分の 1 を占める巨大市場となり、わが国はじめ各国から注目を集 めている。拡大 EU 市場の実情を把握し、新加盟の中東欧諸国を足がかりに、大阪企業が この世界最大の単一市場でどのようにビジネス・チャンスを見出し得るか、その可能性を 探ることが、本視察団の目的であった。 大阪商工会議所は、国際ビジネス委員会主管により「拡大 EU ビジネス研究会」を 2003 年度に設けた。中東欧諸国とビジネス経験のある会員企業の実務者を中心とする同研究会 は、約 9 カ月にわたる研究を経て、拡大を続ける欧州市場への会員企業の関わり方のガイ ダンスとすべく、報告書を取りまとめた。この研究会での議論を、実際に現地にて確認し ようとの試みが、今回の視察団の派遣であった。 EU 新加盟国の中心である中欧3カ国では、現地政府や日系企業駐在員との懇談、合弁 企業や現地企業、さらに流通施設などの視察を行い、各国経済の実情把握と投資関連情報 の収集に努めた。 チェコ、ポーランド、ハンガリーでは、比較的安価で訓練の行き届いた労働力が高学歴 人材とともに豊富に存在し、伝統的に技術力に優れ、インフラ整備が急速に進展している 点などが、現地政府から強調された。特に、ポーランドでは全国平均の失業率が 20%に達 することから、長期にわたって熟練労働力を廉価で速やかに調達可能であるとの説明であ ったが、街でホームレスを見かけることは無く、兼業農家をどのように扱うかという統計 と実際とのずれがあるように感じた。 一方、財政赤字は各国とも旧共産国の手厚い福祉政策のため、EU 基準を大幅に上回っ ており、通貨統合は 5∼6 年先になるとの見通しであった。 今回の EU の拡大は、まさに欧州の東方への広がりであり、その東側の国境は旧ソ連邦 と接する。そこで、EU 新加盟の国々は、ロシア・CIS 諸国を含めた広義の欧州のほぼ中 心に存する戦略的位置付けを、流通面等で最大限に活かしたいとしている。実際、ポーラ ンドの現地企業では、日本製部品を加工した製品を、バーター方式でロシアやウクライナ に輸出している。 2 日本大使館や JETRO はじめ日系企業の駐在員、あるいは西欧企業やアジアからの進出 企業も、中欧 3 カ国への進出メリットは、各国強調の諸点にあると評価していた。一方で、 EU 加盟により、今後、人件費が上昇するとの懸念が一般的である。このため、生産性の 一層の向上、現地調達比率の引き上げなど、コスト削減の努力を強めることの重要性が強 調された。 また、歴史的に中東欧への窓口であったオーストリアの役割が、EU の拡大により、周 辺の EU 未加盟諸国との橋渡し役へと変化しつつある状況が、梅津・駐墺大使より解説さ れた。 さらにミラノでは、JETRO と懇談するとともに、「ミラノにおける関西展 2004」の視 察を行った。関西の自治体や経済団体が主催したこの展示会には、大阪・関西企業が自社 の製品や技術を展示し、モノづくりの力量やデザイン力をアピールした。 EU は、地域的広がりと制度的深まりを通じて、今後一層の拡大が予想される。拡大を 続ける EU との間にどのような商機を見出し得るのか、引続き動向を注視する必要があろ う。本視察団を通じて、欧州経済の実情を、EU 新加盟国と従来からの加盟国の双方で確 認することができたが、まだまだ同地域理解の一歩を踏み出したに過ぎない。今次視察を 契機として、今後も欧州と会員企業とのビジネス連携の方途を探って行きたい。この意味 において、会員各位には、本報告書が欧州におけるビジネス展開の上で、何等かご参考に 供せば幸甚である。 最後ながら、本視察団派遣に際して格別のご支援を頂戴したチェコ、ポーランド、ハン ガリー、オーストリア各国政府、外務省大阪分室、日本貿易振興機構(JETRO)大阪本部 はじめ関係各位に厚くお礼申し上げたい。 2004 年 12 月 3