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サッカーの苦手意識を払拭させる体育授業の試み
サッカーの苦手意識を払拭させる体育授業の試み 教育実践高度化専攻 小学校教員養成特別コース P08053A 尾崎智洋 I 研究報告書の構成 める時期である。それに伴い、男女それぞれの運 序章 はじめに 動に対する志向の差異が、言動や行動の端々及ぴ 第I章 本研究における定義付け 意志決定の場で現れてくる時期である。 第1節 サッカーに対する苦手意識が生じる要 それが顕著に現れたのが、体育授業のサッカー 因とは に対してである。当学級の女子児童の中には、サ 第2節小学校体育科におけるサッカー型単元 ッカーをあまり好きではない、あるいは苦手意識 の意義と役割 を持っている児童が学級活動や普段の言動の中 第I1章単元構想及び実施した単元計画 から多く見られた。 第皿章 質問紙調査結果の分析と考察 苦手意識の原因としては、足でボールを扱うこ 第1節 質問紙調査のねらいと実施 とに慣れていない技能面での難しさから心理的 第2節事前質間紙調査の結果と考察 な圧力や恐怖感を感じることや、身体能力の差異 第3節 中間質問紙調査の結果と考察 から生じる劣等感から苦手意識を持っ場合、さら 第4節 事後質問紙調査の結果と考察 にサッカーというスポーツの持つ固有の運動量 第W章 個人変容調査結果の分析及び考察 の多さが体力面で劣る児童にとっては苦痛であ 第1節 好き・嫌いの個人変容調査結果の分析 ることなどが考えられる。 及び考察 以上のことから、サッカーに対する苦手意識を 第2節得意・苦手の個人変容調査結果の分析 変容させるためには、まずボールに慣れること、 及び考察 そしてボールの操作技能を高めてボールに対す 第V章 授業実践の振り返り及び単元計画と単 る恐怖心を失くしていくこと、さらに遊びを通じ 元構想の課題点 てボールを足で蹴る活動は楽しいと感じさせる 第1節 授業実践の振り返り ことだと仮説を立てた。さらに授業を通じて学ん 第2節授業の考察 だ遊びを、普段の家での遊びに還元していくこと 第3節 単元計画と単元構想の課題点 が出来れば、サッカーに対する意識や技能も向上 終章 研究の成果及び課題と改善案の提示 するのではないかと考えた。 当学級の特徴は、男女数が男子児童7名・女子 児童16名と女子児童の方が多く比率に偏りのあ II 研究の概要 る学級であることである。この点を、学級の大半 (1)問題の所在と研究の目的 小学校第4学年では、仲間集団の形成が見られ、 を占める女子も楽しめる授業を構想する上で十 また第二次性徴前の男女の発育差異が表れはじ 分に考慮した。 一112一 そこで本研究においては、先述した仮説を元に あることである。逆に単調な手立ての場合は、そ した単元授業を実施し、事前・中間・事後の質問 れほど意欲が高まっていない。つまり、単元構想 紙調査結果を分析し、その変容過程を検証してい の想定より、児童は難易度の高い手立てを要求し く。そして、その検証結果からサッカーに対する ていることがわかる。 苦手意識を払拭するために必要なことを明らか ただ、単元当初から単元終末に向けて意欲が低 にするとともに、よりよい実践の在り方を模索し 下していく傾向が見られた。 ていくことを目的とした。 その要因を探っていくと、ゲームの時間数の不 足や授業展開に児童同士の関わり合いの場を持 (2)研究の対象と方法 たせる工夫が不足していたことがわかってきた。 ①連携協力校の第四学年配属学級の児童23名に 他にも、指導計画を重視した教師主導の授業展 対して、単元構想から立案された単元計画を実 開になってしまい、児童の欲求を汲み取った授業 施する。 展開がなされなかった点に挙げられる。 ②全三回の質問紙調査(事前・中間・事後)を通 さらに、児童の意欲を促進させる評価言が不足 じて、児童の苦手意識の変容を汲み取る。 していた点も挙げられる。 ③授業実践を振り返り、授業及ぴ単元計画と単元 以上の点から、単元授業の構想を具体的な指導 構想の課題と改善点を検証する。 に代えて適用するカが現時点で不足していたた め、児童の苦手意識を払拭するまでに至らなかっ II 研究の成果 たのが現状といえる。 (1)質問紙調査結果から 事前・中間・事後の質問紙調査結果から明らか 皿 今後の課題 になったことは、単元を通じて苦手意識の変容に 質問紙調査の結果から、単元の手立てが苦手意 効果的であることだ。特に、難易度の易しい手立 識を変容させるための方策として有用であるこ て(基礎練習・ボールけり遊び)を組み込んだた とがわかった。今後は、その効果を高めるために め、女子児童など運動技能・能力の低い児童ほど 具体的な指導方法や指導技術を高めて、児童の学 伸びを感じた単元授業となった。 習意欲を喚起する指導力を磨いていくことが課 逆に、運動が得意な児童にとっては、難易度が 題である。 易しすぎて、活動内容に満足のいかなかったこと が明らかとなっている。 【参考文献】 また、授業で取り扱ったボール遊びを普段の児 ・高田典衛『体育授業入門』大修館書店,1976 童の遊びへ還元していくことは、児童の意識調査 ・根本正雄他『運動が苦手な子もみんな熱中する 課題ゲーム集』明治図書,2000 から容易ではないことがわかった。 ・松田聡『これまでに開発されたサッカー型r課 題ゲーム」の批判的検討』論文資料,2008 (2)授業実践の分析 各授業を分析して特徴的だったのが、動きの複 雑な手立ての場合に、児童の意欲が高まる傾向の 一113一 修学指導教員 松下 健二