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41名の 病棟“リンク薬剤師”を中心に 薬剤事故の未然防止を徹底する
● 薬 剤 部 ・ 薬 局 訪 問 41名の 病棟“リンク薬剤師”を中心に 薬剤事故の未然防止を徹底する 埼玉県西部、秩父連峰を望む田園地帯にある特定機能病院とし て高度医療を担う埼玉医科大学附属病院は、1972年に県内で 初めて設立された医科大学の附属病院として開設されました。 1892年に創設された前身の毛呂病院時代から50年にわたっ ● 第 19 回 埼 玉 医 科 大 学 附 属 病 院 ・ 薬 剤 部 て、薬剤業務の発展・改革を一手に担って来られた薬剤部長の 田島數子先生から、薬剤管理指導業務への取り組みを中心にお聞 きしました。 かずこ 薬剤部長:田島數子先生 (医学博士) 4年間以上教育を受けた専任薬剤師 るようになり、現在は感染病棟を除 を全病棟に配置 く全25科と手術室に合計41名を配 ■□■薬剤管理指導業務がたいへん 置しています。 進んでいると伺いました。その経緯 ■□■41名とは多いですね。どう と現状を教えてください。 いう体制を組んでいるのですか? 田島 田島 1990年に埼玉県内で初めて 100点業務の認可を受けました。 は1名)配置する専任制を敷いていま 耳鼻咽喉科・眼科からスタートし、 す。ベテランと若手という組合せで、 外科病棟に移った時、医師、看護婦 1名は午前中は薬局内で調剤などに さん20∼30人を相手に薬剤師が薬 あたってから病棟に上がる体制です。 の管理を行う必要性を訴えました ■□■病棟に上がるために、薬剤部 が、ほとんど納得してもらえません 内ではどんな教育をおこなっていま でしたね。それでも依頼状だけは出 すか? してもらい、強引に病棟に上がって 田島 取り組んだものです。 いきますが、それまでは経験年数毎の 1科ずつ説得しながら開拓してい 〔 埼玉医科大学附属病院 〕 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38 ●病床数:1,483床(一般1,246床、精神237床) ●外来患者数:1日平均約2,160名 ●外来患者への処方箋発行枚数:1日平均約1,300枚 ●薬剤部:薬剤部長以下 85名 1 各病棟に2名ずつ(1部の病棟 4、5年目くらいから病棟に 教育プログラムに従って勉強しても き、薬剤師に向けられていた冷たい らっています。1年目の薬剤師には、 目が少しずつ緩和されていきまし 3年目の人が講義、2年目には4年 た。最終的には、私たちの努力と実 目、3年目には部門のトップが講義 績が認められ、病棟の方から薬剤部 するというように、お互いに学びな に上がってほしいという依頼を受け がら教える方式をとっています。 います。調剤・監査した注射薬は必 らいます。これは、薬剤師に限らず、 薬剤ミスを明らかにすることが大事 ず誰かが監査しなければならない。 医師でも看護婦さんでも全職員に義 ■□■薬剤管理指導業務での現在の そばに誰もいない時は、連れてきて 務づけています。 “ヒヤリ・ハット” 課題は何ですか? おこなうという意味です。 を全て明らかにすることが、事故を “ヒヤリ・ハット”の段階で 田島 それは医療安全対策です。病 また、注射薬、内服薬それぞれの 未然に防ぐために大事なことです。 棟 担 当 薬 剤 師 と し て は 、医 師 、 安全対策手順をつくっています。医 看 護 婦 と一 緒 に なって医 療 事 故を 師が処方箋に記載してから、医師・ 将来は、 防止することが課題です。院長から、 看護婦さんが患者さんに投与する 薬剤師の24時間3 交替制も 患者さんのために医師と看護婦、薬 まで、用法、用量、配合変化、患者さ ■□■そのほかに安全対策で重要な 剤師の3者が連携してリスク管理を んの名前などを具体的に“誰が” “ど ことがありますか? 徹底する方針が出され、病棟薬剤師 の段階”でチェックするかを定めて 田島 は医師や看護婦さんなどとリンクし います。 者さん毎に1本渡しを実施していま ているということから「リンク薬剤 ■□■最近の報道では、医療事故、 す。これは事故防止のために必要な 師」という呼び方になりました。 とくに薬剤の事故が目立ってきま 管理方法です。その他、薬剤のチェッ したが…… ク方法にしてもシステムを随時作り する服薬指導や薬歴管理だけでな 田島 変えて改善するようにしています。 く、薬剤に対して全て責任を持つと を誇りに思っています。それは全病棟 そうした積み重ねが、事故を起こさ いう薬剤師本来の役割を果たさなけ に薬剤師を配置していることと、2 ない基盤になるのだと思います。 ればなりません。また、リンクとは、 人で管理していることが強味です。 薬剤部内のスタッフとの連携の意味 それでも患者さんにダメージを与え がいます。調剤薬局が整備されてい 合いもあり、薬剤部全員の協力体制 ない段階での“ヒヤリ”としたり“ハッ ないことや患者さんの希望で院内で が条件です。調剤、監査で100%安 と”したりするミスは生じます。 処方しています。しかし、近い将来 「リンク薬剤師」は、患者さんに対 当院では、ミスが少ないこと 注射薬は20年以上前から患 現在、薬剤部には85名の薬剤師 全管理してこそ、病棟業務が成り立 そ の“ ヒヤリ・ハット ”を厳 しく は院外処方に切り替えなければなら つのです。薬剤部内の二重監査を徹 チェックして、過ちが2度と起きな ないでしょう。その時には、薬剤師 底 す る 方 法 の 一 つ と し て 、部 内 に いようにしなければなりません。た の数を減らさずに24時間3交替制 “相互に確認。注射薬は1人で出して とえば、注射器が袖に触れて壊れた にしようと考えています。そうなれ はいけない”という立て札を立てて というケースでも必ず届出をしても ば、安全対策がさらに充実できます。 病棟内の情報にはいつもアンテナを張っておく 10年前に病棟業務を開拓したとき、まずどうすれば信頼されるかと考えました。 早朝のカンファレンスや看護婦さんの申し送り、教授回診などに出席しながら、病 棟内での看護婦さんの声、医師の声、患者さんの様子の変化など、情報は全て見逃 さないように心掛けました。 病棟専任薬剤師の役割が認められてきたころに、専用の部屋を設けたらどうかと いうお話がありましたが、従来通り、ナースステーションの一角の方が情報のアン テナを張りやすいと思い、継続していくことにしました。 今年から治験コーディネーター(CRC)として、新しい仕事に取り組んでいます が、病院薬剤師の役割は今後も拡大し、新しいことに挑戦していく機会が増えると 感じています。 (談) 治験コーディネーター 課長:石井正幸先生 2