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金沢大学医学部附属病院薬剤部(Vol.25)
現在、新病棟の建築が進む金沢大学医 学部附属病院。その薬剤部は、学部生や 大学院生の実習教育に非常に熱心である ● 薬 剤 部 ・ 薬 局 訪 問 ● 第 25 回 金 沢 大 学 医 学 部 附 属 病 院 ・ 薬 剤 部 医徹イ 療底ン 事的シ 故なデ 防調ン 止査ト を・・ 推分レ 進析ポ でー ト な ど の とともに、リスクマネジメントでも先進的 な試みを行っています。その幅広い取り 組みについて、薬剤部長の宮本先生と副 薬剤部長の古川先生にお話をうかがいま した。 ヒヤリ・ハット事例をデータベース 化して、対策を進めている ます。たとえば「この患者さんは眠 前にこの薬を飲んでいるから夜間の 巡回では注意が必要」というように具 ネジメントに非常に積極的に取り組 体策が考えられます。ルート・トラブ まれているとうかがいましたが? ルや投与速度の間違いなどは薬剤師 宮本 ひとつの医療事故の裏には29 の力ではどうにもなりませんが、我々 のエラーがあり、さらにその裏には が関与できる部分がわかることは、非 300のミスが潜んでいるといわれま 常に大きな意義があると思います。 す。ですから、医療事故を減らそうと ます。では、どのようなミスが起きて 病棟薬剤師の業務は、ほぼ全病棟 におよぶ いるのか、その実態を知ろうというこ こちらで行った「似ている薬剤調 思ったら、まずミスを防ぐ必要があり とで、「インシデント・レポート」、つ 査」は話題になりましたね。 まりヒヤリ・ハット事例の提出が全医 宮本 はい、テレビでも紹介していた 療スタッフに義務づけられました。そ だき、この活動が他でも定着しつつあ の報告を、医師2名、ナースと薬剤師 るのは嬉しい限りです。その他の試 各1名からなる委員が分析し、対策を みとしては、古川先生 が 中心になっ とっています。ヒヤリ・ハット事例の て「処方支援ウィンドウ」を作成・導 報告を行っている病院はありますが、 入しています。 いるところは少ないと思います。 薬剤に関係するものとして、ど また、当院では、ほとんどの病棟に 病棟薬剤師が出向いていますので、 病棟での薬品管理や投与、特に注射薬 のような問題が多かったのですか? や抗がん剤などの投与がチェックでき 宮本 ます。これなどもかなり医療事故の 病棟でのインシデントとして は注射・点滴に関するものが一番多 1 (医学部附属病院教授) こちらでは、薬剤部がリスクマ 病院全体でデータベース化までして 〔 金沢大学医学部附属病院 〕 石川県金沢市宝町13ー1 ●病 床 数:832床 ●外来患者数:1日平均約1,600名 ●外来患者への処方箋発行枚数:1日平均約550枚 うち院外処方箋発行枚数:1日平均約310枚 ●薬 剤 師:42名(うち5名はCRCと兼任) 薬剤部長 宮本謙一先生 防止に貢献していると思います。 く、25%程度ありました。また、興 確かに、薬剤師がチェックさえし 味深かったのは、患者さんの転倒・転 ていれば、という事故が目立ちます。 落の原因として薬剤が関係している 宮本 と思われるものが17%ほどあったこ 者さんの情報交換をしていますし、医 とです。原因がある程度わかれば、 局のカンファレンスにも出ます。で ナースにしても何らかの対策がとれ すから、間違った投薬指示が出れば、 病棟薬剤師は毎朝ナースと患 インシデント・レポート登録・検索システム 1 2 インシデント・レポート サマリー入力・検索画面 それが誤りだと気づくはずです。 3 検索画面:「調剤」で検索 検索結果:サマリーが出るようになっており、原因の洗い 出しと対策に結びつけることができる。 かも翌日はそのまま通常の勤務につ また、私は臨床試験管理センターの また、病棟に薬剤の在庫があると危 きますから、32時間連続で仕事をす センター長をしているのですが、当院 険度はかなり増大します。そこで当 ることになり、事故防止の観点からみ では薬剤の適用外使用を“院内治験” 院では6年前から24時間を通した注 ても好ましい状況ではありません。 として申請してもらい、I RB(院内治 射薬の個人別セットと、その24時間 供給を行っています。 これは我々だけの問題ではなく、 験審査委員会)の審査の対象とするこ ほとんどの大学病院ではドクターも とを積極的に進めています。厳しい 含めてこのような勤務を続けていま 審査がありますから医療倫理の面で 担は大きくなりませんか? す。そこで、国立大学の薬剤部長会 もプラスになり、インフォームドコン 宮本 そうですね。ただでさえ、当院 議では文部省に改善の要望を提出し セントもさらに徹底できるようにな は夜間の外来数が多く、夜間の処方箋 ているのですが、なかなか実現が難 りました。これも、広い意味でリスク 量も恐らく日本一多いんですね。し しいのが現状です。 マネジメントだと思います。 しかし、そうなると薬剤師の負 処方オーダー時の3文字入力化は明確な根拠がもとになっている 副薬剤部長 古川裕之先生 字で不都合はないと判断しました。 ません。このシステムなら調査の終了 また3文字入力でも、注意が必要な 日を入力するだけで、調査対象期間を 紛らわしい薬剤は2つか3つしかあり 通して「この薬剤は市販直後調査対象 ようなものなのでしょうか? ませんので、それに対しては間違えよ 薬剤です…」とウィンドウに出せます。 古川 “必要な時に必要な情報を”とい うがないように工夫しました。それに いろいろ発展できるわけですね。 うのが基本コンセプトです。つまり、 加えて、2文字しか入力しないと、 「該 古川 アイデアは誰にでもあるでしょ 特定の情報提供が必要な薬剤を処方す 当する薬剤はありません」とメッセー うが、行動を起こすことが大切。特に る時に、画面上でメッセージを伝える ジが出るようにしています。 リスクマネジメントは、それに加えて 「処方支援ウィンドウ」とはどの ことができるというものです。再診時 確かに文字数を増やせばいいに決 のDO処方時にも、該当薬剤があれば まっていますが、どこが妥当な線なの ウィンドウが開き警告を発します。ま か、しっかり調査して根拠を明示する た、本院では2001年2月より薬剤名 ことが必要だと思います。 3文字以上の入力システムに改良しま した。 かが重要だと思います。 ※画面:処方支援ウィンドウと処方時の3文字入力化 画面上にはどのような情報が出る 3文字入力時 のですか? なぜ3文字なのですか? 古川 他のセクションといかに協力していく 古川 基本的に投与の際の注意点です 2文字ですと同定率は20数% が、このシステムは多目的でして、今 ですが、3文字にすれば50%を超えま 度始まる市販直後調査にも対応できま す。しかし4文字でも数%しか上がら す。調査は発売日から6カ月間ですが、 ないということがわかったために3文 ドクターは何が対象薬剤なのかわかり 2文字入力時 処方支援ウィンドウ 薬剤毎に設定 2