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Title
Increased blood flow in the anterior humeral circumflex artery
correlates with night pain in patients with rotator cuff tear( 内容
と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
寺林, 伸夫
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第965号
Issue Date
2015-02-18
Type
博士論文
Version
none
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/50898
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
[
伸
]
氏名(本籍)
寺
林
夫(岐阜県)
学位の種類
博
士(医学)
学位授与番号
甲第
学位授与日付
平成
学位授与要件
学位規則第4条第1項該当
学位論文題目
Increased blood flow in the anterior humeral circumflex artery
965
27
年
号
2
月
18
日
correlates with night pain in patients with rotator cuff tear
審 査 委 員
(主査)教授
湊
口
(副査)教授
岩
間
信
也
亨
教授
星
博
昭
論文内容の要旨
夜間痛は,肩腱板断裂患者における主症状の一つであり,体動での痛み以外に,深夜・明け方の
疼痛や,肩を温めたり坐位になる事で疼痛改善がみられるという特徴的な症状を呈する。しかしそ
の病因に関しては未だ不明である。肩腱板修復術中にしばしばみられる関節内滑膜炎の所見は,滑
膜炎に伴う局所血流の変化が疼痛発症に関与している可能性を示唆している。本研究の目的は,超
音波ドップラ法を用いて,肩関節周囲血管血流を評価し,肩腱板断裂患者における関節包栄養血管
の血流変化が夜間痛の有無で相違があるかを検討し解析することである。
【対象と方法】
2010 年 8 月から 2011 年 7 月までに肩関節痛を主訴として当院を初診した患者 106 名中,超音波
画像診断にて肩腱板断裂と診断された患者 47 名を対象とした。肩関節に愁訴のない 20 名の健康成
人を比較対照とした。夜間痛の定義として,坐位になりたくなるような疼痛とし,寝返り・患側肩
圧迫による物理的刺激による痛みは除外した。肩腱板断裂患者のうち,夜間痛を伴う群は 34 例,
夜間痛を伴わない群は 13 例であった。Andary らの報告で肩関節包は,前上腕回旋動脈,後上腕回
旋動脈,肩甲上動脈,肩甲回旋動脈の 4 本によって栄養されている。本研究では測定血管として,
肩関節包栄養血管の一つで関節包前方・側方を栄養し,骨性ランドマークとして最適な結節間溝内
を走行し超音波検査にて再現性良く同定できる前上腕回旋動脈上行枝と,その本幹である上腕動脈
とした。超音波ドップラ法による血流測定方法は,被験者を坐位にて 5 分間安静の後,前上腕回旋
動脈上行枝においては,肘関節 90 度屈曲位,前腕回外位,上腕動脈は肘関節 90 度屈曲位,肩関節
45 度外転位を測定肢位とし,両血管の血流をカラードップラ法にて同定し,血管長軸像を描出後ド
ップラ入射角が 60 度以下となる部位でパルスドップラ法を用いて収縮期流速を示す peak systolic
velocity (PSV), 血管抵抗を示す resistance index (RI)を患側・健側(比較対照群は利き手側・非
利き手側)で測定した。 患側・健側(比較対照群 :利き手側・非利き手側 )の血流について
Mann-Whitney U 検定を用いて統計学的検討を行った。
【結果】
上腕動脈の PSV は,夜間痛を伴う群で患側 69.4±21.0 cm/s,健側 70.4±22.5cm/s,夜間痛を伴
わない群で患側 77.7±23.2 cm/s,健側 74.1±23.0cm/s,比較対照群で利き手側 75.5±27.7 cm/s,
非利き手側 73.9±22.8cm/s であり全ての群において患側・健側(比較対照群:利き手側・非利き手
側)での有意差は認めなかった。前上腕回旋動脈上行枝の PSV は,夜間痛を伴う群で患側 34.9±
16.5cm/s,健側 15.8±6.5cm/s と有意差を認めた(p<0.001)。夜間痛を伴わない群で患側 22.6±
10.7cm/s,健側 18.6±7.9cm/s,比較対照群で利き手側 12.7±5.0 cm/s,非利き手側 13.4±4.8cm/s
でありともに有意差を認めなかった。前上腕回旋動脈上行枝の RI は,夜間痛を伴う群で患側 0.7±
0.09,健側 0.78±0.11 で有意差を認めた(p<0.01)。夜間痛を伴わない腱板断裂群は,患側 0.7±0.1,
健側 0.67±0.16,比較対照群は利き手側 0.73±0.1,非利き手側 0.75±0.14 でありともに有意差を
認めなかった。
【考察】
肩腱板断裂の夜間痛の病因として,これまでにインピンジメントや肩峰下圧の変化,皮膚温の変
化,滑膜炎などが報告さ れている。肩関節痛と滑 膜血流の関係についてパ ワードップラ法や
Dynamic MRI を用いた研究が報告されていることから,本研究では,肩腱板断裂患者において夜
間痛の有無で関節内滑膜炎の評価を,超音波ドップラ法を用いて患側・健側の血流速の相違で解析
した。関節内滑膜炎の状態を評価するために,これまで報告されている滑膜血流のパワードップラ
法でのシグナル分布を評価する方法では,半定量的かつ炎症の程度によっては評価困難であるため,
定量的なデータを得る方法として,本研究では直接的な滑膜血管の評価を行うのではなく,関節包
栄養血管である前上腕回旋動脈の血流をパルスドップラ法にて定量的に測定した。前上腕回旋動脈
が分枝する前の上腕動脈での PSV においてはすべての群で患側・健側,(比較対照群:利き手側・
非利き手側)での変化は認めず,夜間痛を伴う群においてのみ患側の前上腕回旋動脈の PSV が健側
より上昇を認めた。そのためこの血流速上昇は選択的な反応であることが示唆された。さらに関節
リウマチにおける研究で,Terslev らが炎症状態においては滑膜血管の拡張期血流速が相対的に上
昇することより RI が低下すると報告しており,本研究において夜間痛を伴う群では患側にて健側
より RI の低下を認めたことは,関節内滑膜炎の存在が示唆される。この結果から,夜間痛を伴う
肩腱板断裂患者では,滑膜炎による関節包への前上腕回旋動脈の血流変動が,夜間痛の病因に関与
していることが強く示唆された。
論文審査の結果の要旨
申請者
寺林伸夫は,肩腱板断裂における夜間痛の病因解明を目的に,関節包栄養血管の一つで
ある前上腕回旋動脈の血流速を解析した。前上腕回旋動脈の収縮期血流速が,夜間痛を有する腱板
断裂において健側より患側で上昇することを明らかにした。本研究の成果は,肩腱板断裂における
夜間痛の病態解明および新規治療法の開発につながり,整形外科学の発展に少なからず寄与するも
のと認める。
[主論文公表誌]
Nobuo Terabayashi, Tsuneo Watanabe, Kazu Matsumoto, Iori Takigami, Yoshiki Ito, Masashi
Fukuta, Haruhiko Akiyama, Katsuji Shimizu: Increased blood flow in the anterior humeral
circumflex artery correlates with night pain in patients with rotator cuff tear
Journal of Orthopaedic Science 19, 744-749 (2014).
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