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腱板損傷に対する『Cuff-Y exercise』の適応

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腱板損傷に対する『Cuff-Y exercise』の適応
TheShoulder Joint, Vol. 17, No. 1, 52同57, 1993.
腱板損傷に対する『Cuff-Y exercise』の適応
昭和大学藤が丘病院整形外科
上 里 元・山 本 龍 二
安 楽 岩 嗣・山 本 研 一
保 刈 成・鈴 木 一 秀
内 川 友 義・大 島 和
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院整形外科
筒 井 廣 明
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部
山 口 光 國
Indications of a『Cuff-Y Exercise.]
for a Cuff Lesion
by
H. Uesato, R. Yamamoto, I. Am
S. Hokari, K. Suzuki, T. Uchikawa and Y. Ohshima
Dept. of伽伽paedic Surg.
Showa Univ. Fujigaoka Rehabilitation Hospital
M. Yamaguchi
Dept. of Physiotherapy Showa Univ. Fujigaoka Rehabilitation Hospital
Various dameg,飴of the shoulder give rise to a rotator cuff lesion.
should be selected for a functional pathogenesis.
15 normal shoulders and 20 cases of cuff le唱ion were studied.
activity was analysed electromyographically.
A r曲abilitation technique
We investigated how to select each exercise.
The balance of the muscle’s
From the results, we selected a well- adapted exer­
c1se.
The rotater cuff had a compen銅tory function. In those ca隠s which recovered, a well-adapted
exercise improved their functional balance.
Exercises for the rotator cuff should aim at accelerating the compensatory function or correcting
the imbalance of白e muscle’s activity.
key words : shoulder joint (肩関節), cuff l回on (震板損傷), cuff exercise (臆板訓練), rehabilitation
(リハビリテーション)
は
じ
め
め, 治療としてのリハピリテーションはその病態に合
に
わせた 適切な方法と, 負荷量を決定し,Outer muscle
臆板損傷を引 き起こす病態は単一ではなく症例によ
に対するInner muscle (臆板)の相対的な 機能の向上
って異なるが,それらの主な 原因を我々はInner mus­
を計る必要があると考えた. そこで我々の考案した 肩
cleである腿板と,三角筋,大胸筋に代表されるOutぽ
関節の 機能的 レ線診断法である『Scapula 45撮影法』
muscleとのImbalanceにあると考えている. そのた
と臆 板の選択的 な 機 能 回復のための訓 練 で ある
- 52 一
肩関節
rcuff-Y Ex.Jを用いて,主として筋電図学的検討か
1 7巻1号 52-57,
1993.
極,大胸筋・三角筋・練下筋には表面電極を用いて
ら鍵板損傷の訓練の選択方法を検討したので報告す
Rotational ex., Abductional ex., Adductional ex. お
る.
よび負荷抵抗値を変化させたIsometric contruction
対象 症
時の筋電図を測定し,そのデータを日本光電の Neuro
例
packIVで取り込み,SONYのK
S-616のデータレコ
対象は当院整形外科を受診し,臆板損傷と診断され
た20例20関節について検討を行い,健常者15名を対象
ーダに保存し,キッセイのBIMUTAS にて解析を行
った(図 3' 4 ).
とした.
(訪l僻方法の選択)
検討
(鍵板機能の診断)
方
筋電図で得られた結果を基に
して各症例毎に 『Cuff-YEx.J田
町 の中から運動パター
法
ン と負荷量を決定した. Rotational ex. は基本的な運
膿板損傷の各症例に対し,機
動の biofeedback糠下筋の訓練に用い,線上筋に対す
能的肩関節撮影法であるrscapula45 撮影法JI)の4枚
る Abductional ex.,
のレ線像を用い,各条件下での肩甲上腕の適合状態へ
は,筋篭図からのOuter muscleの関与の少ない運動
Adductional ex.の選択に際して
の影響および関節禽の回旋角度の変化から肩甲上腕,
方法を選択した. 文,負荷抵抗の決定に関しては筋電
肩甲胸郭の 両機能を診断した(図1)..板繊能の診断は
図よりOuter muscleとInner muscleのバラン スの
こ の撮影法を用いて,主として腿板機能により影響を
状態を検討し,imbalanceを起こ さない範囲での負荷
受ける上腕骨頭と関節禽の適合状態を 『Cuff indexJ
量を設定した(図5.).
として計測し,訓練前,訓練後の腿板機能の診断を行
結
った(図 2).
(筋電図学的検討)
果
各症例に対して施行した訓練結果をスパイク表示で
各症例に対し,練上筋に針電
積分値を示したグラフにて示すと,Abductional ex.で
は,図6-aに示す通り訓練前には三角筋が練上筋に
対して優位に働いているのに対し,適切な負荷量での
訓練を繰り返すことにより図6-bのように棟上筋の
相対 的 な 筋 活動量 の 増 加 が 見 ら れ て く る.
Ad­
ductional ex.においても訓練前に練上筋の収縮がほ
とんど見られず,大胸筋が優位に働いているのに対し,
IJI順後では 大胸筋の筋収縮が抑え られ.線上筋の筋活
動量の婚加が見られてくるこ とにより,両者の imbal­
aneeは是正が 得 ら れ た と 考 え た(図 7). 又,
図1
図2
- 53一
I tゼaw:乍l
唱;.;.,立て'.•j.尺也よm
ocapc>ln pl.m•lニ日明よ,,_,,,,
図5
-54ー
肩 関節
1 7巻1号 52-57, 199 3.
Rotational ex.では寄|練前に 大胸筋及び三角筋が主と
に目的とする筋 収縮が得 ら れやすい訓練方法及び
して筋収縮を起こしているのに対し, 訓練後では練下
Outer muscleとの balanceのとれている最 大負荷量
筋の筋活動量が増加し, 大胸筋及び三角筋の筋収縮は
を決定している. 文,
『S capula45
抑 え られている(図 8 ). 以上のように我々は経時的に
練前,訓練後のレ線像を比較すると, 訓練前はS capula
筋電図をとることにより,rcuff-YEx .Jを施行する際
plane上45・挙上位において,骨頭は関節禽に対し上昇
b.
a
図6
図7
図8
-55
撮影法』により訓
The S houlder Joint, Vol. 1 7, No. 1 , 52-57, 199 3.
図9
傾向を示し, Cuff indexは増加しているのに対し, 訓
文
練後では骨頭と関節禽の適合性は保たれ, Cuff index
も正常化している(図9 ).
1)
献
筒 井 康 明 ほか:臆板後能の客観的レ線織影法一
rscapula 45撮影法』について. 肩関節, 16- 1 : 109
考
察
-113, 1992.
2)
我々は, 肩関節の動作時の安定性は主として臆板に
よる求心力とOuter muscleによる明断力とのバラン
3)
筒井魔明ほか:スポーツによる肩腫板損傷の評価と
保存療法. 日本盤形外科スポーツ医学会誌,11: 181-
スにより成り立っていると考えている. 臆板とOuter
185, 1992
muscleとの機能的なImbalanceの発生は, 肩関節の
4)
動作時の不安定性を引き起こし, これは同時に関節禽
Frank W. Jobe, et al.: Painful athletic injuries of
the shoulder.
上においてはよ腕骨頭のプレを生じさせる. このプレ
Clin. Orthop. and Related Research,
173 : 117-124, 1983.
5)
は関節周囲組織への機械的刺激となり, 結果的に関節
Frank W. Jobe, et al.: Rehabilitation of shoulder
joint instabilities.
周囲組織の解剖学的,組織学的損傷, すなわち鍵板損
傷へと発展していくと推測している.
筒井康明ほか:肩関節不安定症に対する鍵板機能司ii
練. 肩関節, 16- 1 : 140-145, 1992.
Orthop. Olinics North Am, 18 :
473-482, 1987.
そこで我々は,
6)
W. Z. Burkhead, et al.: Treatment of instability of
治療として損傷された鍵板に対する anatomicalな修
出e shoulder with an exercise program. J. Bone J.
復ではなく, 原因となっているImbalanceをまず補正
Surg, 74・890-896, 1992.
するべきであろうと考えている. 更に臆板機能を向上
させる訓練は,Outer musclesに対するInner muscles
質 問
(鍵板)の相対的な機能診断を正確に行い, 機能が低
筋電図で評価したとあるが, 筋篭図の放射パターン
信州 大学
中土
幸男
下している麓板を選択的に賦活させることが重要だと
で評価しているが, 客観的評価のためには数値化する
考えており, 画一的な負荷量の選択では, 機能低下を
などの処理が必要であると思うが, いかがか?
起こしている臆板に対してはむしろimbalanceを助
質 問
長させることになりかねない叫.我々は『 S capula45 撮
新潟市立外科研究所
田島
達也
影法jによってOuter musclesとInner musclesのバ
Outer MuscleとInner Muscleのアンバランスが障
ランスの状態を診断し, 筋電図によるImbalanceの診
害の原因となることを強調されましたが, 症例によっ
その結果
ては S upr a S pinatusの筋力は精強せ ずDeltoidのみ
断と訓練方法, および負荷量の決定を行い,
をもとに『 Cuff-Y Ex.Jを施行している. この診断方
の筋力が増強するような場合, 障害は少なくなる手術
法及び訓練方法により, 比較的短期間に相対的な臆板
方法はないのですか?unbalance群ではますます un­
機能を向上させることが出来, 臨床的に良好な成績を
balanceが強くなり障害が 大きくなることになります
得ることが出来た.
が…・..
Fnu
F町U
肩関節
質
問
北海道大学 鈴木
17巻 1号
52-57, 1993.
主動作筋であるOuter musclesが活動しない範囲
克憲
1)症状改善する 機序は, 筋力増加か , cordination
か.
での回旋, 内・外転運動を行わせる事が, 本 臆板 機能
習II練の基本であり, Biofeedbackが不可能な症例につ
2 ) isometricでのcuffの教育が active motionで
のcordinationと必ず しも一致しないの
ではない
いては,Cuff-Y exerciseの
対象外となります.
③鈴木先生に
か?
肩関節の機能的な imbalanceが存在す る事に より,
動作時の関節寓上での上腕骨頭のプレが機械的刺激と
質
問
東京大学 勝本
弘
なって 症状が出現すると考えており, 症状 改善はあく
Cuff ex.を行う場合, 筋篭図を用いた biofeedback
ex.は行っていますか?
までも imbalanceの是正にある. 文, 確かに active
mortion下ではどうしてもOuter musclesが優位と
なり,条件は一致しないが,運動の前後 にisometricで
質
問
日本大学 大減
博
の臆板再教育を行えば症状出現せずにコンディシzニ
Cuff-Y Ex.とは筋肉に対しての強化だけのexer­
ciseなのか?
Impingementの
症例では,後 方の関節包
ングが可能と考える.
④勝本先生に
の拘綜等の問題もありStrengthening,Stretchingの
両者のExerciseを一般的に行われるが.
biofeedbackの効果判定に筋電図を用いておりま
す.
⑤
質
問
神戸大学
橋本
語辞
大城先生に
Cuff-Y exerciseは臆板の再教育訓練であり, 強化訓
glenoidと humeral headの適合性の問題はなかっ
練ではありません. Outer musclesとInner muscles
たか?特にCuff-Y exerciseをしても改善の認められ
のimbalanceの是正を目的 と し て い ま す. 又,
な かった症例でその傾向はなかったか?
Impingementの症例に対してはStretchingによりで
きるだけ正常に近い可動域を確保した後に行っており
回
①
答
昭和大学藤が丘病院
上里
元
ます.
中土先生に
⑤
橋本先生に
筋電図のデーター, に 関しては, データー, 解析以
loose shoulderの症例に対しても,Cuff-Yexercise
前に数値化が可能であるが,逆に客観性を求める為に,
を行っていますが, 下方へのinstabilityが 強い 症例で
解析後スパイク表示をしています.
は訓練後も関節の適合性が今一つで, 症状改善にも時
②
間を要した症例を経験した.
田島先生に
-57-
Fly UP