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河道追跡

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河道追跡
河道追跡
自然の洪水は,幅や勾配もめまぐるしく変わる川の中を,刻々と変
わる流量がながれる極めて複雑な現象です。また吉野川は上流に多く
の無堤部があり,洪水の規模によっては氾濫しています。
これらの実現象を再現するために,不定流計算と氾濫計算を組み合
わせたモデルを構築しています。これにより上流無堤部の氾濫が再現
できるとともに,将来の築堤などによる影響の予測が可能となります。
1) 不定流計算
吉野川では,河道形状による変化や時間の経過による流量の変化を
再現できる一次元の不定流モデルを使用しています。
水位
H
(Q)
(流量)
氾濫
地盤高
t
時間
一次元不定流計算は,断面データ,流入ハイドログラフ,河口水位,
粗度係数等の基礎データをもとに計算を行い,各段面毎のハイドログ
ラフ,水位等を求めるものです。
2) 氾濫計算
河道の 能力 を上回る 洪 水が 発生すると 河岸を 乗り 越え周 辺地 域に
溢水し,氾濫します。
氾濫の形態は,氾濫原の地形特性及び洪水の規模によって,河川沿
いに氾濫水が流下する流下型氾濫,河川水位の上昇と相まって浸水深
は上昇するが浸水区域 は著しく変 化し ない貯 留型 氾濫および氾濫 水
が四方に拡散する拡散型氾濫に大別されます。
吉野川では氾濫域を地盤高を底高とする 250m×250mの平面メッ
シュタンクで表現し,隣接するメッシュ間の水位差によって氾濫流を
計算しています。
河道内の洪水流を追跡する不定流計算と,氾濫計算を組み合わせる
ことにより,河道の水位と氾濫域の水位を同時に計算できます。
メッシ ュタ ンクの底 高 とし てメッシュ 内の平 均地 盤高を 適切 に与
えることにより,氾濫流の拡がり,深さ,湛水時間などを求めること
ができます。
また河道とメッシュタンクの境界に堤防高の条件(ある高さまでは
流れのやりとりがないという条件)を与えれば将来の築堤による下流
への影響が予測できます。
さらに有堤部では築堤として与えてある堤防高の条件(ある高さま
では流れのやりとりがないという条件)を取り除けば,破堤時の氾濫
の状況を予測することができます。
3) 河道追跡計算モデル図
池田
73.4k
井の内谷川
71.6k
加茂谷川
65.4k
62.8k
半田川
53.2k
42.2k
岩津
不定流計算︵氾濫を考慮︶
穴吹川
54.6k
50.4k
49.0k
41.4k
野村谷川
井口谷川
曽江谷川
伊沢谷川
36.6k
35.6k
大久保谷川
33.0k
日開谷川
26.2k
中央橋
鮎喰川
中野谷川
鍋倉谷川
中藪
37.4k
川田川
河内谷川
56.4k
55.8k
貞光川
小川谷川
6.0k
河口
九頭宇谷川
4) 河道追跡計算のイメージ
D
Q3
Q
支川が合流する区間では,上流
からの流量に加えて支川からの
流入量を考慮します。
Q2=Q1+Q3
Q1
Q2
A
t
上流側断面と下流側断面に
大きな変化のないよころで
Q1
は,流速はほぼ一定で,
Q1(流入量)≒Q2(流入量)
となります。
Q2
河口における潮位変化
B
不定流計算
C
F
計算の条件として川の Q
上流端では,毎時の流
入する流量を与えます。
河口
A
上流からの流入
H
D
計算の条件として
河口での毎時の潮
位を与えます。
t
P
E
Q3
F
氾濫計算
t
Q1
B
上流側断面と下流側断面に大きな変
化のあるところでは,流速も変化し
ます。流入出量も上下流で変化し,
Q1(流入量)>Q2(流出量)の場合,
差分だけ断面間で貯留します。一方,
Q1(流入量)<Q2(流出量)の場合,
差分だけ断面間で貯留量が減少しま
す。
C
P
Q2
E
Q1
Q2
Q3
水位上昇が続くとやがて河道の器に入
りきらなくなった洪水は器の外にこぼ
れます。これが氾濫(越流)となります。
Q2=Q1−Q3
内水地域などポンプ排水によっ
て強制的な流入量があるところ
では,上流からの流量に加えて
ポンプからの排水量を考慮しま
す。
Q2=Q1+Q3
氾濫した水は高いところから低いところへ向かって流れます。
氾濫水がどのように流れていくかを計算するため,流域を仮
想の升(メッシュ)に区切り,隣り合った周囲の升と水位と比
較することにより氾濫流の移動量を計算します。(氾濫計算)
5) 河道追跡計算事例
○河川改修による影響検討
将来,治水対策として河道の掘削や築堤を行えば当該地点の河道の
流下能力が増大して氾濫を防止できる反面,下流へ流下する流量は大
きくなります。
このような現象は,前述した不等流計算および氾濫計算のモデルで
表現することができます。
すなわち,築堤や河道掘削などの条件をモデルに組み込むことによ
り,将来の流出形態の変化を予測することが可能になります。
水位
H
(Q)
(流量)
築堤により氾濫しない分だけ下流
のピークが増大する
氾濫による下流のピーク
の低減
氾濫時
t
時間
○善入寺島による洪水ピークの低減効果
河口から約30㎞に位置する善入寺島では,吉野川の川幅が上下流
に対して広く,また中規模以上の出水では洪水流は善入寺島に乗り上
げ,氾濫流として流下するため洪水流のピーク流量はわずかに減少し
ます。
(流量)
Q
流入ハイドロ
低減流量
ΔQ
善入寺島や川幅の広
がった場所では洪水
流は一時的に貯留さ
れます。
流入ハイドロ
時間
t
平成11年7月洪水(善入寺島)
昭和49年9月洪水氾濫再現計算結果図
S49.9 洪水当時に築堤されていた箇所
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